説明

2−アミノピリミジン−4−オン及びAβ−関連の病理を治療又は予防するためのその使用

本発明は、下の構造式(I):
【化1】


の新規化合物及びその医薬上許容しうる塩、組成物及び使用方法に関する。これらの新規化合物は、認知障害、アルツハイマー病、神経変性及び認知症の治療又は予防を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、その医薬組成物に関する。さらに、本発明は、Aβ−関連の病理(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症を含む認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症を治療及び/又は予防するための治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのグループは、β−セクレターゼ活性を有するアスパラギン酸プロテイナーゼを確認し、そして単離した(Hussain等,1999;Lin等,2000;Yan等,1999;Sinha等,1999 及び Vassar等,1999)。また、β−セクレターゼは、文献中でAsp2(Yan等,1999)、β部位APP切断酵素(Beta site APP Cleaving Enzyme)(BACE)(Vassar等,1999)又はメマプシン−2(Lin等,2000)としても知られている。BACEはESTデータベース分析(Hussain等,1999);発現クローニング(Vassar等,1999);予測された線虫タンパク質の公開データベースからヒト相同物の同定(Yan等,1999)及びヒト脳からタンパク質を精製するための阻害剤の最終的な使用(Sinha等,1999)等の多くの実験的なアプローチを用いて確認されている。従って、3つの異なる実験的アプローチを用いる5つのグループが、同じ酵素を確認し、BACEがβ−セクレターゼである確実な事例を作った。特許文献:WO96/40885、EP871720、米国特許第5,942,400号及び同第5,744,346号、EP855444、US 6,319,689、WO99/64587、WO99/31236、EP1037977、WO00/17369、WO01/23533、WO0047618、WO00/58479、WO00/69262、WO01/00663、WO01/00665、US 6,313,268にも記載されている。
【0003】
BACEは、N−末端触媒領域、膜貫通領域、及び小さな細胞質領域からなる成熟酵素、ペプシン様アスパラギン酸プロテイナーゼであることがわかった。BACEは、pH 4.0〜5.0で最適活性を有し(Vassar等,1999)、そしてペプスタチンのような標準ペプシン阻害剤によって僅かに阻害される。膜貫通及び細胞質領域を除いた触媒領域が基質ペプチドに対して活性を有することがわかっている(Lin等,2000)。BACEは、部分的に活性なプロ酵素として合成され、そして脳組織中で大量に発現される膜結合1型タンパク質である。それは、高いβ−セクレターゼ活性を示すと考えられ、そしてアミロイド−β−タンパク質(Aβ)の製造における律速段階であると考えられる。従って、それは、アルツハイマー病の病理において、そしてアルツハイマー病を治療する薬物の開発において特に興味深い。
【0004】
Aβすなわちアミロイド−β−タンパク質は、アルツハイマー病の特徴である脳プラークの主要成分である(Strooper等,1999)。Aβは、APPと称するクラスI膜貫通タンパク質、すなわちアミロイド前駆体タンパク質の特異的な切断によって形成された39〜42残基ペプチドである。Aβ−セクレターゼ活性は、残基Met671とAsp672(APPの770aaアイソフォーム番号)との間でこのタンパク質を切断してAβのN−末端を形成する。ペプチドの第2の切断は、γ−セクレターゼと関連しており、AβペプチドのC−末端を形成する。
【0005】
アルツハイマー病(AD)は、世界中で2千万人を超える人々が苦しんでいると推定され、もっとも一般的な形の認知症であると考えられる。アルツハイマー病は、凝集したタンパク質分解生成物の大量の沈着物−アミロイドプラーク及び神経原線維もつれが脳内に蓄積される進行性の認知症である。アミロイドプラークは、アルツハイマー患者に見られる精神的退化の原因であると考えられる。
【0006】
アルツハイマー病を発症する可能性は、年齢と共に高まり、先進国の老年人口が高まるにつれて、この疾患はよりいっそう大きな問題になる。これに加えて、アルツハイマー病には家族性関連があり、その結果、スウェーデン変異(ここでは、突然変異したAPPがBACEにとっての著しく改善された基質を形成する)として知られているAPPの二重突然変異を有するすべての人は、ADを発症する可能性、そしてまた早期の年齢でそれを発症する可能性が非常に高い(また、APP−スウェーデンを含むトランスジェニック齧歯動物に関連するUS 6,245,964及びUS 5,877,399参照)。また、そのため、これらの人に予防的なやり方で使用できる化合物を開発する強い必要性がある。
【0007】
APPをコードする遺伝子は、染色体21に見いだされ、それはダウン症候群において過剰コピー(extra copy)として見いだされる染色体でもある。ダウン症候群の患者は、早期の年齢でアルツハイマー病になる傾向があり、40歳を超えるほとんどすべての者がアルツハイマー型の病理を示す(Oyama等,1994)。これは、これらの患者に見出されるAPP遺伝子の過剰コピーによると考えられ、これによりAPPが過剰発現し、そのためAPPβのレベルが高められてこの個体群で見られるアルツハイマー病の高い有病率が生じる。従って、BACEの阻害剤は、ダウン症候群の患者におけるアルツハイマー型病理の軽減に有用でありうる。
【0008】
従って、BACE活性を軽減又は遮断する薬物は、脳内又はAβ若しくはその断片が沈着する他の場所で、Aβレベル及びAβ断片のレベルを低下させ、従ってアミロイドプラークの形成及びAD又はAβ若しくはその断片の沈着を伴う他の疾患の進行を遅らせる(Yankner,1996;Strooper及びKonig,1999)。従ってBACEは、Aβ−関連の病理(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症を含む認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症を治療及び/又は予防する薬物を開発するための重要な候補物質である。
【0009】
従って、本明細書に記載された化合物のような阻害剤を通してBACEを阻害することによってAβ及びその部分の沈着を阻害することは有用である。
【0010】
多くのグループが、Aβの沈着を阻害する治療上の可能性に刺激を受けてセクレターゼ酵素を単離して特徴づけ、そしてその潜在的阻害剤を確認した(例えば、WO01/23533 A2、EP0855444、WO00/17369、WO00/58479、WO00/47618、WO00/77030、WO01/00665、WO01/00663、WO01/29563、WO02/25276、US5,942,400、US6,245,884、US6,221,667、US6,211,235、WO02/02505、WO02/02506、WO02/02512、WO02/02518、WO02/02520、WO02/14264、WO05/058311、WO05/097767、WO06/041404、WO06/041404、WO06/0065204、US2006287294、WO06/138265、WO06/138217、WO06/138230、WO06/138264、WO06/138266、WO06/099379、US20070004786、US20070004730、WO07/011833、WO07/011810参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の化合物は、当分野で知られている潜在的な阻害剤と比較して改善された性質、例えば改善されたhERG選択性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書において、構造式Iの新規化合物:
【化1】

[式中、
Pは、ピリジン環であり;
Qは、結合又はCH2CH2であり;
R1は、シアノ、ハロゲン、C1-6アルキル及びメトキシから独立して選ばれ;
mは、1又は2である]
が、遊離塩基又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物として提供される。
【0013】
さらに、本発明は、医薬上許容しうる賦形剤、担体又は希釈剤と共に活性成分として治療上有効量の式Iの化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、式Iの化合物とBACE酵素を接触させることを含む、BACEの活性を調節する方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、患者に治療上有効量の式Iの化合物を投与することを含む、患者におけるAβ関連の病理を治療又は予防する方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、薬剤として使用するための本明細書に記載された化合物を提供する。
【0017】
本発明の一態様において、式Iの化合物:
【化2】

[式中、
Pは、ピリジン環であり;
Qは、結合又はCH2CH2であり;
R1は、シアノ、ハロゲン、C1-6アルキル及びメトキシから独立して選ばれ;
mは、1又は2であり;
但し、以下の化合物は除く;
2−アミノ−6−[3−(5−ブロモピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン;
2−アミノ−6−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン]
が、遊離塩基又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物として提供される。
【0018】
本発明の別の態様において、C1-6アルキルがメチルを表す、式Iの化合物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様において、Qが直接結合を表す、式Iの化合物が提供される。
【0020】
本発明の別の態様において、mが1であり、そしてR1がシアノ、メトキシ又はハロゲンである、式Iの化合物が提供される。
【0021】
この態様の一実施態様においてR1は、ハロゲンであり、前記ハロゲンは、ピリジン環の2位に結合したクロロである。
【0022】
本発明の別の態様において、mが2であり、そしてR1は1つのハロゲン及び1つのメチルを表す、式Iの化合物が提供される。
【0023】
この態様の一実施態様において、前記ハロゲンは、ピリジン環の6位に結合したフルオロである。
【0024】
本発明の別の態様において、mが2であり、そしてR1が2つのハロゲン原子を表す、式Iの化合物が提供される。
【0025】
この態様の一実施態様において、前記2つのハロゲン原子は、以下のハロゲンの組み合わせ:ピリジン環の2−及び3−位に結合したクロロ;ピリジン環の2−位に結合したフルオロ及び5−位に結合したブロモ;ピリジン環の2−位に結合したクロロ及び5−位に結合したフルオロ;ピリジン環の2−位に結合したフルオロ及び5−位に結合したクロロのいずれかを表す。
【0026】
本発明の別の態様において、QがCH2−CH2を表す、式Iの化合物が提供される。
【0027】
この態様の一実施態様において、mは1であり、そしてR1はハロゲン又はメトキシ、例えばピリジン環の2−位に結合したクロロから選ばれる。
【0028】
この態様の別の実施態様において、mは、2であり、そしてR1は2つのハロゲン原子、例えばピリジン環の2−位に結合したフルオロ及び5−位に結合したクロロを表す。
【0029】
本発明の別の態様において、
前記化合物が遊離塩基又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物として:
5−[3−(2−アミノ−1,4−ジメチル−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)フェニル]ニコチノニトリル塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2,3−ジクロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−ブロモ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロ−5−フルオロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オントリフルオロ酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(6−フルオロ−5−メチルピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−{2−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−メトキシピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−{2−[3−(6−メトキシピリジン−2−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;及び
2−アミノ6−{2−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
である、式Iの化合物が提供される。
【0030】
式Iのいくつかの化合物は、立体中心及び/又は幾何異性体中心(E及びZ異性体)を有することができ、そして本発明が、全てのこのような光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、アトロプ異性体及び幾何異性体を包含するは理解すべきである。
【0031】
本発明は、上記定義された式Iの化合物と同様にその塩の使用に関する。医薬組成物に使用するための塩は、医薬上許容しうる塩であるが、他の塩は、式Iの化合物の製造に有用でありうる。
【0032】
本発明は、式Iの化合物のいずれか及びすべての互変異性体形態に関することを理解すべきである。
【0033】
本発明の化合物は、薬剤として使用することができる。いくつかの実施態様において、本発明は、薬剤として使用するための式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤として使用するために本明細書に記載された化合物を提供する。いくつかのさらなる実施態様において、Aβ−関連の病理は、ダウン症候群、β−アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、MCI(「軽度認知障害」)、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、アルツハイマー病に関連する神経変性、血管由来の混合型認知症(dementia of mixed vascular origin)、変性由来の認知症(dementia of degenerative origin)、初老期認知症、老年認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症である。
【0034】
いくつかの実施態様において、本発明は、Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤の製造における、式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体を提供する。さらにいくつかの実施態様において、Aβ関連の病理には、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症(dementia of mixed vascular and degenerative origin)、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症が含まれる。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明は、BACEを本発明の化合物と接触させることを含む、BACEの活性を阻害する方法を提供する。BACEは、高いβ−セクレターゼ活性を示すと考えられ、そしてアミロイド−β−タンパク質(Aβ)の産生における律速段階であると考えられる。従って、本明細書に提供される化合物のような阻害剤を通してBACEを阻害することは、Aβ及びその部分の沈着を阻害するのに有用である。Aβ及びその部分の沈着は、アルツハイマー病のような疾患と関係があるため、BACEは、Aβ関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する)認知症のような疾患に関連する神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症の治療及び/又は予防として薬剤開発の候補物質である。
【0036】
いくつかの実施態様において、本発明は、治療上有効量の式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体を哺乳動物(ヒトを含む)に投与することを含む、Aβ関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症の治療方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施態様において、本発明は、治療上有効量の式Iaの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体を哺乳動物(ヒトを含む)に投与することを含む、Aβ関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症の予防方法を提供する。
【0038】
いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体並びに認知及び/又は記憶増強剤を哺乳動物(ヒトを含む)に投与することによる、Aβ関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症の治療又は予防方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施態様において、本発明は、式Iの化合物、又はその医薬上許容しうる塩、互変異性体若しくはインビボ加水分解可能な前駆体、ここにおいて構成メンバーは本明細書に提供されており、並びにコリンエステラーゼ阻害剤又は抗炎症剤を哺乳動物(ヒトを含む)に投与することによる、Aβ−関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症並びにパーキンソン病に関連する認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症の治療又は予防方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の化合物及び非定型抗精神病薬を哺乳動物(ヒトを含む)に投与することによる、Aβ−関連の病理、(例えばダウン症候群)及びβ−アミロイドアンギオパチー、(例えば制限されるわけではないが脳アミロイドアンギオパチー)、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、(例えば制限されるわけではないがMCI(軽度認知障害))、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、(アルツハイマー病若しくは血管及び変性由来の混合型認知症、初老期認知症、老年認知症及びパーキンソン病に関連する認知症を含む認知症のような疾患に関連する)神経変性、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症、又は本明細書に記載された他のいずれかの疾患、障害若しくは状態の治療又は予防方法を提供する。非定型抗精神病薬には、オランザピン(ジプレキサとして市販されている)、アリピプラゾール(アビリファイとして市販されている)、リスペリドン(リスパダールとして市販されている)、クエチアピン(セロクエルとして市販されている)、クロザピン(クロザリルとして市販されている)、ジプラシドン(ジオドンとして市販されている)及びオランザピン/フルオキセチン(シンビアックスとして市販されている)が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0041】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物で治療される哺乳動物又はヒトは、特定の疾患又は障害、例えば本明細書に記載されたものと診断された。これらの場合、治療される哺乳動物又はヒトは、このような治療の必要がある。しかしながら、診断を予め実施する必要はない。
【0042】
また、本発明は、活性成分として本明細書における本発明の1つ又はそれ以上の化合物を、少なくとも1つの医薬上許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤と共に含む、医薬組成物を含む。
【0043】
本出願に記載された定義は、本出願を通して使用される用語を明らかにするものである。「本明細書」なる用語は、明細書全体を意味する。
【0044】
本発明における種々の化合物は、特定の幾何異性体又は立体異性体の形態で存在することができる。本発明は、シス−及びトランス異性体、R−及びS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、そのラセミ混合物、並びにそれらの他の混合物、を含む全てのこのような化合物を考慮しており、これらは本発明の範囲内に包含される。アルキル基のような置換基では、さらなる不斉炭素原子が存在することができる。全てのこのような異性体と同様にそれらの混合物は、本発明に包含されるものとする。本明細書に記載された化合物は、不斉中心を有することができる。非対称的に置換された原子を含む本発明の化合物は、光学活性な又はラセミ体の形態で単離することができる。ラセミ体の分割によるか、光学活性な出発物質からの合成によるか、又は光学活性試薬を用いる合成のような光学活性な形態を製造する方法は当分野でよく知られている。必要に応じて、ラセミ体物質の分離は、当分野で知られている方法によって実施することができる。オレフィン、C=N二重結合、及びその他の多くの幾何異性体は、本明細書に記載された化合物中に存在することができ、そして全てのこのような安定な異性体は、本発明において企図される。本発明の化合物のシス及びトランス幾何異性体は、記載されており、そして異性体の混合物として又は分離された異性体形態として単離することができる。特定の立体化学又は異性体形態が具体的に示されてなければ、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体の形態及び全ての幾何学的異性体形態が意図されている。
【0045】
置換基への結合が、環中の2個の原子をつなぐ結合を交差して示されている場合、このような置換基は、環上のすべての原子に結合することができる。置換基が所定の式の化合物の残りの部分にどの原子を経て結合するか示されずに記載されている場合、このような置換基は、このような置換基中のすべての原子を経て結合することができる。置換基、置換基の位置及び/又は変数の組み合わせは、このような組み合わせが安定化合物を生じる場合のみ許容される。
【0046】
本明細書に使用されるように、単独で又は接尾辞若しくは接頭辞として使用される「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有するか又は特定の炭素原子数が提示されている場合、その特定の数を意図する分枝鎖及び直鎖脂肪族飽和炭化水素基の両方を含むものとする。例えば、「C1-6アルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキルを表す。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル及びヘキシルが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0047】
本明細書に使用されるように、「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードのことである。
【0048】
本明細書に使用される「医薬上許容しうる」は、健全な医学上の判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に相応したそれらの化合物、物質、組成物及び/又は剤形について本明細塩で言及するために使用される。
【0049】
本明細書に使用される「医薬上許容しうる塩」は、親化合物がその酸性又は塩基性塩を製造することによって改質された、開示された化合物の誘導体のことである。医薬上許容しうる塩の例としては、アミンのような塩基性残基の無機又は有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ又は有機塩;及び類似のものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。医薬上許容しうる塩には、例えば非毒性無機又は有機酸から形成された親化合物の、慣用の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、このような慣用の非毒性塩には、塩酸のような無機酸から誘導されたものが含まれる。
【0050】
本発明の医薬上許容しうる塩は、慣用の化学的方法によって塩基性又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、水中若しくは有機溶媒中、又はその2つの混合物中でこれらの化合物の遊離酸又は塩基形態を化学量論量の適当な塩基又は酸と反応させることによって製造することができ;一般にジエチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒体が使用される。
【0051】
本明細書に使用される「インビボ加水分解可能な前駆体」は、カルボキシ又はヒドロキシ基を含む式(I)の化合物のインビボ加水分解可能な(又は切断可能な)エステルを意味する。例えばアミノ酸エステル、C1-6アルコキシメチルエステル、例えばメトキシメチル;C1-6アルカノイルオキシメチルエステル、例えばピバロイルオキシメチル;C3-8シクロアルコキシカルボニルオキシC1-6アルキルエステル、例えば1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル、アセトキシメトキシ、又はホスホルアミド酸環式エステルである。
【0052】
本明細書に使用される「互変異性体」は、水素原子の移動により生じる平衡が存在する他の構造異性体を意味する。例えば、生成した化合物がケトン及び不飽和アルコールの両方の性質を有するケト−エノール互換異性である。
【0053】
本明細書に使用される「安定な化合物」及び「安定な構造体」は、反応混合物から有用な程度の純度に単離して、有効な治療剤へ処方する際に存続するのに十分に強い化合物を指すものとする。
【0054】
本発明の化合物は、さらに水和物及び溶媒和物を含む。
【0055】
本発明は、本発明の同位体的に標識化された化合物をさらに含む。「同位体的に」又は「放射性標識化された」化合物は、1つ又はそれ以上の原子が自然界で典型的に見出される(すなわち、自然に存在する)原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられた又は置換された本発明の化合物である。本発明の化合物に組み込むことができる適切な放射性核種としては、2H(重水素としてDとも記される)、3H(トリチウムとしてTとも記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが含まれるが、これらに制限されるわけではない。本放射性標識化された化合物中に組み込まれる放射性核種は、その放射性標識化された化合物の特異的な用途に左右される。例えば、インビトロの受容体標識化及び競合アッセイでは、3H、14C、82Br、125I、131I、又は35Sを組み込む化合物が一般に最も有用である。放射性画像化の用途では、11C、18F、125I、123I、124I、131I、75Br、76Br又は77Brが一般に最も有用である。
【0056】
「放射性標識化された化合物」は、組み込まれた少なくとも1つの放射性核種を有する化合物であると理解される。いくつかの実施態様において、放射性核種は、3H、14C、125I、35S及び82Brからなる群より選択される。
【0057】
本明細書に定義される抗認知症治療は、単独の治療として適用することができるし、又は本発明の化合物に加えて、慣用の化学療法を伴うことができる。このような化学療法は、1つ又はそれ以上の以下の分類の薬剤:アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、抗炎症剤、認知及び/又は記憶増強剤又は非定型抗精神病薬を含むことができる。
【0058】
このような合同治療は、治療の個々の成分を同時に、逐次的に又は別々に投与することによって実施することができる。このような組み合わせ製品では、本発明の化合物が使用される。
【0059】
本発明の化合物は、経口的に、非経口的に、口腔に、膣に、直腸に、吸入により、吹送により、舌下に、筋肉内に、皮下に、局所的に、鼻腔内に、腹腔内に、胸腔内に、静脈内に、硬膜外に、クモ膜下腔内に、脳室内に及び関節への注射によって投与することができる。
【0060】
特定の患者に最も適当な個々の処方計画及び投与量レベルを決定する際、投与量は、投与経路、疾患のひどさ、患者の年齢及び体重並びに主治医によって通常考えられる他の要因に応じて左右される。
【0061】
認知症の治療に使用するための本発明の化合物の有効量は、温血動物、特にヒトにおいて認知症の症状を徴候的に緩和する、認知症の進行を遅らせる、又は認知症の症状を有する患者においてさらに悪化する危険性を軽減するのに十分な量である。
【0062】
本発明の化合物から医薬組成物を製造する際、不活性な医薬上許容しうる担体は、固形又は液体であることができる。固形形態の製剤としては、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤及び坐剤が含まれる。
【0063】
固形担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤又は錠剤崩壊剤としても作用できる1つ又はそれ以上の物質であることができ;また、それは封入材料であることもできる。
【0064】
散剤では、担体は、微粉砕された活性成分との混合物中にある微粉固体である。錠剤では、活性成分は、必要な結合性を有する担体と適切な比率で混合され、そして所望の形状及びサイズで成形される。
【0065】
坐剤組成物を製造するには、低融点ワックス、例えば脂肪酸グリセリド及びカカオ脂の混合物を最初に溶融し、そして例えば撹拌によって活性成分をその中に分散させる。次いで、溶融した均質混合物を、都合のよいサイズの型へ注ぎ、冷却して凝固させる。
【0066】
適切な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、砂糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂、などが含まれる。
【0067】
いくつかの実施態様において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物の治療処置(予防的治療を含む)のための式Iの化合物又はその医薬上許容しうる塩を提供し、それは、通常標準薬務に従って医薬組成物として処方される。
【0068】
また、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、本明細書に言及された1つ又はそれ以上の疾患状態の治療において有益な1つ又はそれ以上の薬物を含むか又は併用投与(同時に又は逐次的に)することができる。
【0069】
組成物なる用語は、活性成分又は医薬上許容しうる塩と医薬上許容しうる担体との製剤を含むものとする。例えば、本発明では、当分野で知られている手段によって、例えば、錠剤、カプセル剤、水性又は油性液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、点鼻薬、坐剤、微粉砕された散剤又は吸入用のエアゾル若しくはネブライザー、及び非経口使用(静脈内、筋肉内又は注入を含む)のための滅菌水性若しくは油性の液剤又は懸濁剤又は滅菌乳剤の形態に処方することができる。
【0070】
液体形態の組成物としては、液剤、懸濁剤及び乳剤が含まれる。活性化合物の滅菌水又は水−プロピレングリコール溶液は、非経口投与に適した液体製剤の例として挙げることができる。また、液体組成物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の液剤に処方することができる。経口投与用の水性液剤は、活性成分を水に溶解し、そして所望の適切な着色剤、着香剤、安定剤及び増粘剤を加えることによって製造することができる。経口使用のための水性懸濁剤は、微粉砕された活性成分を水中で粘稠材料、例えば天然合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、及び医薬組成物分野に知られている他の懸濁化剤と共に分散させることによって製造することができる。
【0071】
医薬組成物は単位剤形であることができる。このような形態では、組成物は、活性成分の適当な量を含む単位用量に分割される。単位剤形は、包装された製剤、製剤の個別量を含んでなるパッケージ、例えば、パケット状の錠剤、カプセル剤及びバイアル又はアンプル中の散剤であることができる。また、単位剤形は、カプセル、カシェ剤若しくは錠剤それ自体あることもでき、又はそれは適当な数のこれらの包装された形態のいずれかであることができる。
【0072】
組成物は、いずれかの適切な投与経路及び手段のために処方することができる。医薬上許容しうる担体又は希釈剤には、経口、直腸、鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下及び硬膜外を含む)投与に適した製剤中で使用されるものが含まれる。製剤は、単位剤形で都合よく存在することができ、そして、薬学の当分野でよく知られた方法のいずれかによって製造することができる。
【0073】
固形組成物として使用することができるのは、慣用の非毒性固形担体として含まれ、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルク、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、などである。液体の医薬上投与可能な組成物は、例えば、上に定義された活性化合物及び場合により医薬補助剤を、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール、などのような担体中に溶解、分散などして、それによって溶液又は懸濁液を形成して製造することができる。また、所望により、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、などを含むことができる。このような剤形を製造する実際の方法は、当業者に知られているか、又は明らかである;例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 15th Edition, 1975参照。
【0074】
本発明の化合物は、種々のやり方で誘導体化することができる。本明細書に使用される化合物の「誘導体」には、塩(例えば医薬上許容しうる塩)、すべての複合体(例えば包接錯体又は化合物との包接化合物、例えばシクロデキストリン、又はMn2+及びZn2+のような金属イオンとの配位錯体)、遊離酸又は塩基、化合物の多形形態、溶媒和物(例えば水和物)、プロドラッグ又は脂質、カップリングパートナー及び保護基が含まれる。「プロドラッグ」は、例えばインビボで生物活性化合物に転化されるすべての化合物を意味する。
【0075】
本発明の化合物の塩は、生理学上十分に許容され非毒性であることが好ましい。塩の多くの例は、当業者に知られている。全てのこのような塩は本発明の範囲内にあり、そして化合物への言及は、化合物の塩形態を含む。
【0076】
化合物がアミン官能基を含む場合、これは、例えば、当業者によく知られている方法に従ってアルキル化剤との反応によって第四級アンモニウム塩を形成することができる。このような第四級アンモニウム化合物は、本発明の範囲内にある。
【0077】
また、アミン官能基を含む化合物は、N−オキシドを形成することができる。本明細書におけるアミン官能基を含む化合物に対する言及は、N−オキシドをも含む。
【0078】
化合物がいくつかのアミン官能基を含む場合、1つ又は複数の窒素原子を酸化してN−オキシドを形成することができる。N−オキシドの特定の例は、第三級アミン又は窒素を含む複素環の窒素原子のN−オキシドである。
【0079】
N−オキシドは、対応するアミンを酸化剤、例えば過酸化水素又は過酸(例えばペルオキシカルボン酸)で処理することによって形成することができ、例えばJerry MarchによるAdvanced Organic Chemistry, 4th Edition, Wiley Interscience, pagesを参照のこと。より詳しくは、N−オキシドは、L. W. Deady (Syn. Comm. 1977, 7, 509−514)の手法によって製造することができ、ここでは、例えばジクロロメタンのような不活性溶媒中で、アミン化合物をm−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)と反応させる。
【0080】
化合物がキラル中心を含む場合、化合物の全ての個々の光学的形態、例えば鏡像異性体、エピマー及びジアステレオ異性体、並びにそれらの化合物のラセミ混合物は、本発明の範囲内である。
【0081】
化合物は、多くの異なる幾何異性体及び互変異性体の形態で存在することができ、そして化合物に対する言及は、全てのこのような形態を含む。疑問を回避するため、ここで、化合物がいくつかの幾何異性体又は互変異性体形態の一つで存在することができ、一つしか具体的には記載又は示されていない場合、それでも、他の全てものは本発明の範囲によって包含される。
【0082】
投与する化合物の量は、治療する患者により変化し、そして1日当たり約100ng/kg体重〜100mg/kg体重、そして好ましくは1日当たり10pg/kg〜10mg/kgで変化する。例えば、投与量は、本開示及び当分野の知識から当業者によって容易に確定することができる。従って、熟練技術者は、本発明の方法で投与すべき組成物中の化合物及び場合により添加剤、ビヒクル及び/又は担体の量を容易に決定することができる。
【0083】
本発明の化合物は、インビトロでベータセクレターゼ(BACEを含む)活性を阻害することが示された。ベータセクレターゼの阻害剤は、Aβペプチドの形成又は凝集を抑止するのに有用であり、そのため、アルツハイマー病及びAβペプチドの高められたレベル及び/又は沈着と関連する他の神経変性疾患の治療において有益な効果を有することが示された。従って、本発明の化合物は、アルツハイマー病及び認知症と関連する疾患の治療に使用することができると考えられる。このため、本発明化合物及びそれらの塩は、加齢に伴う疾患、例えばアルツハイマー病、並びに他のAβ関連の病理、例えばダウン症候群及びβ−アミロイドアンギオパチーに対して活性であることが期待される。本発明の化合物は、単一の薬剤としても使用されることが最も多いと予想されるが、広い範囲の認知欠陥増強剤と組み合わせて使用することもできる。
【0084】
一般的な方法
使用した出発物質は、商業的な供給源から入手可能であるか又は文献の手法に従って製造した。
マイクロ波加熱は、2450MHzで連続的な照射を生じるCreator, Initiator 又は Smith Synthesizer Single−modeマイクロ波空洞中で実施した。
【0085】
1H NMRスペクトルは、300MHz、400MHz、500MHz、又は600MHzのいずれかで記載した重水素化溶媒中で記録した。400MHzのスペクトルは、特に明記しない限り、Z−勾配を有する3mmフローインジェクションSEI 1H/D−13Cプローブヘッドを備えた、Bruker av400 NMR分光計を使用して、試料注入用のBEST 215液体ハンドラを使用して、又はZ−勾配を有する4−核プローブヘッドを備えたBruker DPX400 NMR分光計を使用して得た。600MHz 1H NMRは、Z−勾配を有する5mm TXI プローブヘッドを備えたBruker DRX600 NMR分光計を使用して記録した。500MHz 1H NMRは、Varian Inova(magnet:Oxford AS500)500NMR分光計を使用して記録した。化学シフトは、TMSから低磁場及び高磁場のppmで得た。共鳴多重度は、一重線、二重線、三重線、四重線、多重線及びブロードについてそれぞれs、d、t、q、m及びbrで示した。
【0086】
LC−MS分析は、Waters X−Terra MS,C8−カラム(3.5μm,100mm×3.0mm 内径)を備えたWaters LCMSで記録した。移動相系は、A:水/アセトニトリル(95:5)中の10mM酢酸アンモニウム及びB:アセトニトリルからなる。流速1.0mL/分で、4−5分で0%から100%Bへの直線勾配による運転を適用した。質量分析器は、エレクトロスプレーイオン源(ESI)を備えており、陽又は陰イオンモードで運転した。キャピラリー電圧は3kVであり、そして質量分析器はm/z 100−700の間で典型的に走査した。
【0087】
別法として、LC−MS HPLC条件は、以下の通りであった:カラム:Agilent Zorbax SB−C8 2mm ID X 50mm 流速:1.4mL/分 勾配:3分かけて95%Aから90%B、1分保持し、1分かけて95%Aへ傾斜させ、そして1分保持した。ここで、A=0.1%ギ酸入り水中2%アセトニトリル、そしてB=0.1%ギ酸入りアセトニトリル中2%水。UV−DAD 210−400nm質量スペクトル(MS)は、大気圧化学(APCI又はCI)又はエレクトロスプレー(+ESI)イオン化による自動システムを使用して運転した。一般に、親質量が観察されたスペクトルのみ報告した。同位体分裂により、複数の質量スペクトルピークが生じた分子については最も低い質量の主要イオンを報告した(例えば、塩素が存在するとき)。
【0088】
薄層クロマトグラフィ(TLC)は、Merch TLC−プレート(シリカゲル60 F254)上で実施し、そしてスポットはUVで視覚化した。フラッシュクロマトグラフィは、メルクシリカゲル60(0.040−0.063mm)を使用して、又はRediSepTM標準相フラッシュカラムを用いるコンビフラッシュ(R) コンパニオンTM系を使用して実施した。
【0089】
化合物は、Advanced Chemistry Development, Inc. (ACD/Labs), Toronto ON, Canada, www.acdlabs.com, 2004からのソフトウェアACD/Name、バージョン8.08又は9.0を使用して命名した。
【0090】
実施例
本発明の化合物の多くの非限定的な実施例を以下に記載する。
【0091】
実施例1
tert−ブチル(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エノエート
【化3】

テトラヒドロフラン(150mL)中のtert−ブチルジメチルホスホノアセテート(21.9mL,0.111mol)の−78℃の撹拌溶液にヘキサン中のn−ブチルリチウム(1.6M,72.0mL,0.116mol)を加え、そして反応液を−78℃で10分間撹拌した。この混合物に3'−ブロモアセトフェノン(13.4mL,0.100mol)を加え、そして反応液を室温に温まるのにまかせて18時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧下で除去して固形物を得た。ヘキサン(300mL)を加え、そして固形物を1時間磨砕した。混合物をセライトで濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮して標題化合物28.9gを得た。これを次の反応に直接用いた:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6):δ1.47 (s, 9 H); 2.44 (s, 3 H); 6.05 (s, 1 H); 7.36 (t, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.53 (m, 2 H); 7.71 (s, 1 H).
【0092】
実施例2
(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エン酸
【化4】

トリフルオロ酢酸:ジクロロメタン(1:1,300mL)中の粗tert−ブチル(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エノエート(28.9g)の溶液を室温で15分間撹拌し、そして溶媒を減圧下で除去した。粗固形物をヘキサン(400mL)中で磨砕し、濾過し、そして真空下で乾燥して標題化合物8.87g(収率38%)を得た:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6):δ2.46 (s, 3 H); 6.11 (s, 1 H); 7.37 (t, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.53 (m, 2 H); 7.72 (t, J = 1.5 Hz, 1 H).
【0093】
実施例3
(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エノイルクロリド
【化5】

ジクロロメタン(10mL)中の(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エン酸(1.0g,4.15mmol)の懸濁液に塩化オキサリル(434μL,4.98mmol)、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(15μL,0.207mmol)を加え、そして反応液を室温で撹拌した。2時間後、溶媒を減圧下で除去して標題化合物を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6):δ2.51 (s, 3 H); 6.44 (s, 1 H); 7.29 (t, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.43 (d, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.57 (d, J = 8.7 Hz, 1 H); 7.63 (t, J = 1.8 Hz, 1 H).
【0094】
実施例4
(2E)−3−(3−ブロモフェニル)−N−シアノ−N−メチルブタ−2−エナミド
【化6】

テトラヒドロフラン(100mL)中の臭化シアン(4.24g、40.0mmol)の−60℃の撹拌溶液に炭酸ナトリウム(6.36g,60.0mmol)を加え、続いてテトラヒドロフラン中のメチルアミンの溶液(2.0M,20.0mL,40.0mmol)を滴加した。浴温度を−20℃未満に2時間保持した。セライトを通して窒素ブランケット下で反応液を冷濾過し、そしてテトラヒドロフラン(100mL)中の(2E)−3−(3−ブロモフェニル)ブタ−2−エノイルクロリド(5.19g,20.00mmol)の溶液を濾液に加えた。この混合物にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.2mL,24.0mmol)を加え、そして反応液を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、そして生成した油を高真空下に一夜置いた。粗化合物をシリカゲルカラム上でジクロロメタンにより溶出して精製して標題化合物4.29g(収率75%)を得た:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6):δ2.44 (s, 3 H); 3.22 (s, 3 H); 6.65 (s, 1 H); 7.42 (t, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.58 (d, J = 8.4 Hz, 1 H); 7.65 (d, J = 7.8 Hz, 1 H); 7.76 (t, J = 1.8 Hz, 1 H).
【0095】
実施例5
6−(3−ブロモフェニル)−2−イミノ−1−(4−メトキシベンジル)−3,6−ジメチルテトラヒドロピリミジン−4−(1H)−オン
【化7】

N,N−ジメチルホルムアミド(50mL)中の(2E)−3−(3−ブロモフェニル)−N−シアノ−N−メチルブタ−2−エナミド(12.77g,45.75mmol)の溶液に、4−メトキシベンジルアミン(14.9mL,114.38mmol)を加えた。4時間後、溶媒を減圧下で除去し、そして生成した粘稠な油を高真空下に一夜置いた。シリカゲル上で連続カラムクロマトグラフィを用いて粗化合物を精製した。ジクロロメタン及びメタノール(2.5:97.5)/ジクロロメタン、メタノール/ジクロロメタン(5:95)で溶出する第1の精製により粗生成物18.96gを得た。ジエチルエーテル、酢酸エチル、メタノール/酢酸エチル(5:95)、メタノール/酢酸エチル(10:90)で溶出する第2の精製により標題化合物15.48グラム(収率81%)を得た:1H NMR(300MHz, DMSO−d6/TFA−d):δ1.65 (s, 3 H); 3.20 (s, 3 H); 3.30 (d, J = 16.5 Hz, 1 H); 3.58 (d, J = 16.8 Hz, 1 H); 3.78 (s, 3 H); 4.97 (dd, J = 4.8 Hz, 2 H); 6.96 (d, J = 8.7 Hz, 2 H); 7.34 (m, 4 H); 7.57 (m, 2 H); MS (APCI+) m/z 416.08 [M+1]+.
【0096】
実施例6
2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン
【化8】

アセトニトリル(150mL)中の6−(3−ブロモフェニル)−2−イミノ−1−(4−メトキシベンジル)−3,6−ジメチルテトラヒドロピリミジン−4−(1H)−オン(15.48g,37.18mmol)溶液に水(50mL)、続いて硝酸セリウムアンモニウム(61.15g,111.55mmol)を加え、そして反応液を18時間撹拌した。セライト(32g)、続いて炭酸水素ナトリウム(31.23g,371.8mmol)を加え、そして反応液を2時間撹拌した。1時間後、さらなるセライト(15g)を加えた。セライトを通して反応液を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮した。生成した橙色固形物を高真空下に置いた。溶離剤としてメタノール/ジクロロメタン/酢酸(15:85:0.1)を用いてシリカゲルカラム上で粗精製を行った。生成した橙色固形物をメタノールで磨砕して標題化合物の第1のバッチを得た。減圧下で濾液から溶媒を除去し、そして生成した橙色固形物をエタノールで磨砕して標題化合物の第2のバッチを得た。バッチを合わせて標題化合物8.75g(収率79%)を得た:1H NMR(300MHz,DMSO−d6 /TFA−d):δ1.64 (s, 3 H);
3.14 (s, 3 H); 3.19 (d, J = 16.5 Hz, 1 H); 3.49 (d, J = 16.2 Hz, 1 H); 7.39 (m,
2 H); 7.55 (m, 1 H); 7.67 (s, 1 H); MS (APCI+) m/z 296.0 [M+1]+.
【0097】
実施例7
5−[3−(2−アミノ−1,4−ジメチル−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)フェニル]ニコチノニトリル塩酸塩
【化9】

ホウ酸トリイソプロピル(0.33mL,1.44mmol)を無水テトラヒドロフラン(5mL)中の5−ブロモニコチノニトリル(0.088g,0.48mmol)の撹拌溶液に加えた。生成した溶液を−70℃に冷却し、そしてn−ブチルリチウム(0.59mL,ヘキサン中2.5M,1.49mmol)を滴加した。混合物を−70℃で1時間撹拌し、次いで室温に温まるのにまかせた。水性塩酸(1.2mL,2M,2.4mmol)を加え、そして混合物を5分間撹拌し、続いて水性炭酸ナトリウム(2.4mL,2M,4.8mmol)を添加した。さらに10分間撹拌した後、2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン(0.100g,0.34mmol)及び[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリドジクロロメタン付加物(0.047g,0.057mmol)を加え、そして生成した混合物を65℃で一夜加熱した。溶媒を蒸発させ、そして溶離剤としてアセトニトリル/トリエチルアミン(95:5)を用いてシリカゲルカラム上で残留物を精製した。溶離剤として(アセトニトリル中0.1M水性酢酸アンモニウム(10〜50%アセトニトリル))を用い、XTerraカラム(19×300mm)を用いる分取HPLCによってさらなる精製を行って塩基0.022gを得た。塩基をクロロホルム及びメタノールに溶解し、そして塩酸(ジエチルエーテル中4M)を加え、続いて沈殿するまでジエチルエーテルを添加した。濾過により固形物を集め、そして70℃で真空乾燥して標題化合物10mg(収率8.3%)を得た:1H NMR(DMSO−d6, 400MHz)δ 10.43 (s, 1 H), 9.24 (d, J = 2.3 Hz, 1 H), 9.05 (d, J = 1.8 Hz, 1 H), 8.71 (t, J = 2.0 Hz, 1 H), 8.72−8.62 (m, 2 H), 7.92 (s, 1 H), 7.82 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.59 (t, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.50 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 3.58 (d, J = 16.3 Hz, 1 H), 3.22 (d, J = 16.6 Hz, 1 H), 3.09 (s, 3 H), 1.67 (s, 3 H).
【0098】
実施例8
2−アミノ−6−[3−(2,3−ジクロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン酢酸塩
【化10】

2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン(0.100g,0.34mmol)、(2,3−ジクロロピリジン−4−イル)ボロン酸(0.090g,0.47mmol)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリドジクロロメタン付加物(0.027g,0.034mmol)及び水性炭酸ナトリウム(0.59mL,2M,1.18mmol)をテトラヒドロフラン及び水(9:1,3mL)の混合物中に溶解し、そしてマイクロ波照射により140℃で10分間加熱した。溶媒を蒸発させ、残留物を水とジクロロメタン(3×10mL)との間で分配した。合わせた抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして溶媒を真空で除去して0.1g.を得た。溶離剤として0.1M酢酸アンモニウム緩衝液/アセトニトリル(25−65%アセトニトリル)を用い、XTerraカラム(19x300 mm)を使用して残留物を分取HPLCにより精製した。生成物を含む画分を集め、真空で蒸発させ、そして真空室中25℃で一夜かけて乾燥して標題化合物21mg(収率15%)を得た:1H NMR(DMSO−d6, 400MHz)δ8.44 (d, J = 4.8 Hz, 1 H), 7.62−7.59 (m, 1 H), 7.57 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 7.50−7.44 (m, 2 H), 7.36 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 3.00 (s, 3 H), 2.92 (d, J = 16.1 Hz, 1 H), 2.78 (d, J = 16.1 Hz, 1 H), 1.89 (s, 3 H), 1.41 (s, 3 H).
【0099】
実施例9
2−アミノ−6−[3−(5−ブロモ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン酢酸塩
【化11】

2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン及び(5−ブロモ−2−フルオロピリジン−3−イル)ボロン酸から出発して実施例8に記載したように標題化合物を合成して標題化合物5mg(収率3%)を得た:1H NMR (DMSO−d6, 400 MHz)δ8.40−8.38 (m, 1 H), 8.34 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1 H), 7.73−7.69 (m, 1 H), 7.57−7.53 (m, 1 H), 7.51−7.42 (m, 2 H), 3.00 (s, 3 H), 2.91 (d, J = 15.8 Hz, 1 H), 2.78 (d, J = 16.1 Hz, 1 H), 1.89 (s, 2 H), 1.41 (s, 3 H).
【0100】
実施例10
2−アミノ−6−[3−(2−クロロ−5−フルオロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オントリフルオロ酢酸塩
【化12】

2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン及び(2−クロロ−5−フルオロピリジン−4−イル)ボロン酸から出発して実施例8に記載したように標題化合物を合成した。溶離剤として0.1%トリフルオロ酢酸緩衝液/メタノール(20−60%メタノール)を用いてXTerraカラム(19x300 mm)を使用し、分取HPLCによって精製して標題化合物16mg(収率5%)を得た:1H NMR (DMSO−d6, 400 MHz)δ10.33 (br s, 1 H), 8.66 ( br s, 2 H), 8.57 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.80 (d, J = 5.8 Hz, 1 H), 7.73−7.69 (m, 1 H), 7.69−7.64 (m, 1 H), 7.60 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.57−7.53 (m, 1 H), 3.53 (d, J = 16.6 Hz, 1 H), 3.21 (d, J = 16.3 Hz, 1 H), 3.08 (s, 3 H), 1.67 (s, 3 H).
【0101】
実施例11
4−(3−ブロモフェニル)ブタン−2−オン
【化13】

エタノール(150mL)中の2,4−ペンタンジオン(15.8mL,0.154mol)に炭酸カリウム(19.35g,0.140mol)、続いて3−ブロモベンジルブロミド(35.00g,0.140mol)を加え、そして混合物を還流下に加熱した。18時間還流した後、反応液を冷却し、そして濾過により塩を除去した。濾液を蒸発させ、そして酢酸エチル及び水(200:100mL)を加えた。酢酸エチル層を水性塩酸(1M、100mL)で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で1回、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で1回洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルを減圧下で除去し、そして生成した黄色の油を高真空下に置いた。油を、濾過用漏斗(0.5kg)中、シリカゲル上で5%刻みの勾配0−100%ヘキサン/ジクロロメタンそれぞれ1000mLにより溶出して精製した。精製した生成物を減圧下で溶媒を除去して標題化合物18.5g(収率58%)を得た:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6)δ2.10 (s, 3 H), 2.79 (s, 4 H), 7.22 − 7.24 (m, 2 H), 7.35 − 7.39 (m, 1 H), 7.43 (s, 1 H).
【0102】
実施例12
tert−ブチル(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−3−メチルペンタ−2−エノエート
【化14】

テトラヒドロフラン(100mL)中tert−ブチルジメチルホスホノアセテート(19.5mL,89.6mmol)の−78℃の撹拌溶液にヘキサン中のn−ブチルリチウム(1.6M,35.8mL,89.6mmol)を加え、そして反応液を−78℃で25分間撹拌した。この混合物に4−(3−ブロモフェニル)ブタン−2−オン(18.50g,81.46mmol)を加え、そして反応液を室温に温まるのにまかせて1.5時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧下で除去して固形物を得た。これにヘキサン(300mL)を加え、そして固形物を1時間磨砕した。セライトを通して混合物を濾過し、そして濾液を減圧下で濃縮して標題化合物を得た。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6)δ1.42 (d, J = 3.2 Hz, 9 H), 1.86 (d, J = 1.3 Hz, 1 H), 2.12 (d, J = 1.1 Hz, 2 H), 2.37 − 2.43 (m, 2 H), 2.73 − 2.78 (m, 2 H), 5.58 − 5.60 (m, 1 H), 7.24 (d, J = 5.2 Hz, 2 H), 7.35 − 7.40 (m, 1 H), 7.45 (d, J = 5.4 Hz, 1 H).
【0103】
実施例13
(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−3−メチルペンタ−2−エン酸
【化15】

トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(1:1,100mL)中の粗tert−ブチル(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−3−メチルペンタ−2−エノエートの溶液を室温で15分間撹拌し、そして減圧下で溶媒を除去した。粗固形物をヘキサン(100mL)中で磨砕し、濾過し、そして真空下で乾燥して標題化合物18.48g(収率84%)を得た:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6)δ1.88 (d, J = 1.3 Hz, 1 H), 2.14 (d, J = 1.1 Hz, 2 H), 2.43 (t, J = 8.1 Hz, 2 H), 2.71 − 2.80 (m, 2 H), 5.62 (d, J = 1.1 Hz, 5 H), 5.66 (s, 5 H), 7.25 (d, J = 4.5 Hz,
2 H), 7.35 − 7.42 (m, 1 H), 7.47 (s, 1 H).
【0104】
実施例14
(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−N−シアノ−N,3−ジメチルペンタ−2−エナミド
【化16】

ジクロロメタン(100mL)中の(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−3−メチルペンタ−2−エン酸(18.48g,68.66mmol)の0℃の撹拌溶液に塩化オキサリル(7.2mL,82.10mmol)続いてN,N−ジメチルホルムアミド(0.266mL,3.43mmol)を加え、そして反応液を1時間冷却を維持し、室温に温め、そしてさらに1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して対応する酸塩化物21.78gを得た。テトラヒドロフラン(100mL)中の臭化シアン(14.55g,0.137mmol)の−78℃の撹拌溶液に炭酸ナトリウム(21.84g,0.206mmol)を加え、続いてテトラヒドロフラン中のメチルアミン(2.0M,68.7mL,0.137mol)の溶液を滴加した。混合物を−78℃で1.5時間撹拌した。反応液を、セライトを通して窒素ブランケット下で冷濾過し、そしてテトラヒドロフラン(100mL)中の上記で形成された酸塩化物(19.75g,0.0686mmol)の溶液を濾液に加えた。この溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(14.4mL,0.082mol)を加え、そして反応液を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、そして生成した油を高真空下に一夜置いた。粗化合物をシリカゲルカラム上でジクロロメタンにより溶出して精製して標題化合物16.64g(収率79%)を得た:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6)δ1.99 (d, J = 1.3 Hz, 1 H), 2.14 (d, J = 1.1 Hz, 2 H), 2.52 (dd, J = 3.8, 2.0 Hz, 2 H), 2.79 (t, J = 7.7 Hz, 2 H), 3.13 (s, 3 H), 6.22 (d, J = 6.6 Hz, 1 H), 7.24 − 7.27 (m,
2 H), 7.37 − 7.41 (m, 1 H), 7.49 (s, 1 H); MS (APCI+) m/z 307) [M+1]+.
【0105】
実施例15
6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−2−イミノ−1−(4−メトキシベンジル)−3,6−ジメチルテトラヒドロピリミジン−4−(1H)−オン
【化17】

N,N−ジメチルホルムアミド(50mL)中の(2E)−5−(3−ブロモフェニル)−N−シアノ−N,3−ジメチルペンタ−2−エナミド(15.00g,48.83mmol)の溶液に4−メトキシベンジルアミン(12.8mL,97.66mmol)を加えた。4時間後、溶媒を減圧下で除去し、そして生成した粘稠な油を高真空下に一夜置いた。粗化合物をシリカゲル上でジクロロメタン/メタノール(95:5)で溶出するクロマトグラフィで精製して準純粋な標題化合物20.45gを得、それをそのまま次に用いた:1H NMR (300 MHz, DMSO−d6/TFA−d)δ1.34 (s, 3 H), 1.93 (dd, J = 65.3, 6.0 Hz, 2 H), 2.55 − 2.64 (m, 2 H), 3.05 (dd, J = 24.0, 16.8 Hz, 2 H), 3.27 (d, J = 17.3 Hz, 3 H), 3.80 (d, J = 12.3 Hz, 3 H), 4.87 (dd, J = 36.4, 18.5 Hz, 2 H), 6.97 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 7.14 − 7.34 (m, 6 H), 7.38 (d, J = 1.6 Hz, 1 H); MS (APCI+) m/z 444 [M+1]+.
【0106】
実施例16
2−アミノ−6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン
【化18】

アセトニトリル(132mL)中の6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−2−イミノ−1−(4−メトキシベンジル)−3,6−ジメチルテトラヒドロピリミジン−4−(1H)−オン(20.27g,45.62mmol)の溶液に水(33mL)、続いて硝酸セリウムアンモニウム(75.03g,136.86mmol)を加え、そして反応液を18時間撹拌した。セライト(40g)、続いて炭酸水素ナトリウム(38.0g、452mmol)を加え、そして反応液を1時間撹拌した。さらなるセライト(20g)を加え、そしてセライトを通して反応液を濾過し、セライトをアセトニトリルで洗浄し、そして濾液を減圧下で濃縮した。生成した黄色のゴムをエタノールに溶解し、濾過によって塩を除去し、そして溶媒を減圧下で除去した。生成した固形物をジエチルエーテル中で磨砕し、そして黄褐色の固形物を高真空下に置いた。物質を酢酸エチル(500mL)と飽和塩化ナトリウム/水溶液(1:1,500mL)との間で分配した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして溶媒を減圧下で除去した。粗物質を溶離剤としてジクロロメタン/メタノール/酢酸(90:10:0.1)で溶出するシリカゲルカラムのクロマトグラフィにかけた。溶媒を減圧下で除去し、そして物質を高真空下に一夜置いて標題化合物13.3g(収率90%)を得た:1H NMR(300MHz, DMSO−d6/TFA−d)δ1.33 (s, 3 H), 1.86 (m, 2 H), 2.64 (t, J = 8.5 Hz, 2 H), 2.79 (d, J = 16.4 Hz, 1 H), 2.94 (d, J = 16.4 Hz, 1 H), 3.20 (s, 3 H), 7.26 (d, J = 5.0 Hz, 2 H), 7.40 (td, J = 4.5, 1.9 Hz, 1 H), 7.49 (s, 1 H); MS (APCI+) m/z 324 [M+1]+.
【0107】
実施例17
2−アミノ−6−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン塩酸塩
【化19】

2−アミノ−6−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン(100mg,0.338mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)及び水(200μL)の混合物に5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−ボロン酸(83mg,0.473mmol)、炭酸ナトリウム(125mg,1.18mmol)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(30mg,0.0367mmol)を加えた。反応液に140℃で10分間マイクロ波を照射した。混合物が室温に達したときに、水(10mL)を加え、そして混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。相を分離し、そして有機相を飽和炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で洗浄し、硫酸カルシウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮した。溶離剤として0.1%トリフルオロ酢酸緩衝液/メタノール(20−60%メタノール)を用い、XTerraカラム(19x300 mm)を使用する分取HPLCにより残留物を精製した。精製画分を合わせてアセトニトリルを減圧下で除去した。沈殿が得られるまで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を残りの溶液に加え、そして混合物を酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機相を硫酸カルシウムで乾燥し、次いで減圧下で濃縮して白色固形物を得た。固形物をメタノール(0.5mL)中に分割し、そしてジエチルエーテル中の塩酸(2M、200μL)を加えた。沈殿が得られるまで、ジエチルエーテルを加えて標題化合物35mg(収率27%)を得た:1H NMR (400 MHz, DMSO−d6)δ10.78 (s, 1 H) 8.85 (s, 2 H) 8.27 − 8.49 (m, 2 H) 7.48 − 7.80 (m, 4 H) 3.50 (d, J = 16.2 Hz, 1 H) 3.21 (d, J = 16.2 Hz, 1 H) 3.08 (s, 3 H) 1.64 (s, 3 H); MS (AP+) m/z 347 [M+1]+.
【0108】
実施例18〜23の化合物は、実施例17に記載したように合成した。
実施例18
2−アミノ−6−[3−(6−フルオロ−5−メチルピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン塩酸塩
【化20】

1H NMR (400 MHz, DMSO−d6)δ10.71 (s, 1 H) 8.82 (s, 2 H) 8.39 (s, 1 H) 8.23 (dd, J = 9.6, 1.77 Hz, 1 H) 7.83 (s, 1 H) 7.67 (d, J = 7.6 Hz, 1 H) 7.52 (t, J = 7.7 Hz, 1 H) 7.44 (d, J = 7.8 Hz, 1 H) 3.55 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 3.21 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 2.31 (s, 3 H) 3.07 (s, 3 H) 1.64 (s, 3 H); MS (ES+) m/z 327 [M+1]+.
【0109】
実施例19
2−アミノ−6−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オン塩酸塩
【化21】

1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ10.84 (s, 1 H) 8.88 (s, 2 H) 8.49 (d, J = 5.3 Hz,
1 H) 7.96 (d, J = 11.9 Hz, 2 H) 7.78 − 7.86 (m, 2 H) 7.53 − 7.60 (m, 2 H) 3.58 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 3.22 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 3.07 (s, 3 H) 1.64 (s, 3 H); MS (ES+) m/z 329 [M+1]+.
【0110】
実施例20
2−アミノ6−{2−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩
【化22】

2−アミノ−6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オンから出発した:1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ9.92 (s, 1 H) 8.46
(d, J = 5.0 Hz, 3 H) 7.85 (d, J = 1.0 Hz, 1 H) 7.72 − 7.79 (m, 2 H) 7.68 (d, J
= 7.6 Hz, 1 H) 7.44 (d, J = 7.6 Hz, 1 H) 7.38 (d, J = 7.6 Hz, 1 H) 2.89 − 2.98
(m, 1 H) 3.16 (s, 3 H) 2.78 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 2.68 − 2.76 (m, 2 H) 1.90 (dd, J = 11.2, 5.68 Hz, 2 H) 1.32 (s, 3 H); MS (ES+) m/z 357 [M+1]+.
【0111】
実施例21
2−アミノ−6−[3−(5−メトキシピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩
【化23】

1H NMR (400 MHz, DMSO−d6)δ10.91 (s, 1 H) 8.91 (s, 2 H) 8.70 (d, J = 1.3 Hz, 1 H) 8.46 (d, J = 2.5 Hz, 1 H) 8.03 (s, 1 H) 7.96 (s, 1 H) 7.79 (d, J = 7.3 Hz, 1 H) 7.49 − 7.60 (m, 2 H) 3.99 (s, 3 H) 3.56 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 3.24 (d, J = 16.4 Hz, 1 H) 3.08 (s, 3 H) 1.65 (s, 3 H); MS (ES+) m/z 325 [M+1]+.
【0112】
実施例22
2−アミノ−6−{2−[3−(6−メトキシピリジン−2−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩
【化24】

2−アミノ−6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オンから出発した:1H NMR (400 MHz, DMSO−d6)δ10.11 (s, 1 H) 8.54 (s, 2 H) 7.88 − 7.98 (m, 2 H) 7.72 − 7.81 (m, 1 H) 7.54 (d, J = 7.3 Hz, 1 H) 7.40 (t, J = 7.6 Hz, 1 H) 7.30 (d, J = 7.6 Hz, 1 H) 6.77 (d, J = 8.3 Hz, 1 H) 3.95 (s, 3 H) 3.16 (s, 3 H) 2.91 − 2.99 (m, 1 H) 2.70 − 2.82 (m, 3 H) 1.82 − 1.94 (m, 2 H) 1.32 (s, 3 H); MS (ES+) m/z 353 [M+1]+.
【0113】
実施例23
2−アミノ−6−{2−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩
【化25】

2−アミノ−6−[2−(3−ブロモフェニル)エチル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4−(3H)−オンから出発した:1H NMR (400 MHz, DMSO−d6) δ10.11 (s, 1 H) 8.54 (s, 2 H) 8.31 (d, J = 1.3 Hz, 1 H) 8.27 (dd, J = 8.6, 2.5 Hz, 1 H) 7.53 (s, 1 H) 7.41 − 7.49 (m, 2 H) 7.33 − 7.38 (m, 1 H) 3.16 (s, 3 H) 2.88 − 2.96 (m, 1 H) 2.69 − 2.81 (m, 3 H) 1.84 − 1.93 (m, 2 H) 1.31 (s, 3 H); MS (ES+) m/z (375) [M+1]+.
【0114】
実施例24
(6−メトキシピリジン−2−イル)ボロン酸
【化26】

2−ブロモ−6−メトキシピリジン(2g,10.6mmol)及びトリイソプロピルボレート(2.4g、12.8mmol)をトルエン(15mL)中で混合した。混合物を−78℃に冷却し、そしてヘキサン中のn−ブチルリチウム(2.5M,5.1mL,12.76mmol)を10分の間に滴加した。混合物を−78℃で5時間撹拌し、−20℃まで温まるのにまかせ、そして水性塩酸(2M,10mL)を加えた。有機層と水層とを分離し、そして水層を水性臭化水素酸塩(48%)でpH 4に酸性化した。標題化合物0.13g(収率8%)を濾過し、そしてさらに特性評価することなく次の工程で直接使用した。
【0115】
実施例25
(5−メトキシピリジン−3−イル)ボロン酸
【化27】

3−ブロモ−5−メトキシピリジンから出発して実施例24に記載したように標題化合物を合成し、そしてさらに特性評価することなく次の工程で使用した。
【0116】
アッセイ
以下のアッセイの少なくとも一つで化合物を試験した:
β−セクレターゼ酵素
IGEN切断−、蛍光−、TR−FRET−及びBiaCoreアッセイに使用する酵素を、以下の通り記載する:
ヒトβ−セクレターゼ(AA 1−AA 460)の可溶性部分をASP2−Fc10−1−IRES−GFP−neoK哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。遺伝子をIgG1(アフィニティー標識)のFc領域に融合し、HEK 293細胞中に安定にクローニングした。精製したsBACE−Fcをトリス緩衝液(pH 9.2)中に保存し、そして純度95%を有した。
【0117】
IGEN切断アッセイ
酵素を、40mM MES pH 5.0中で1:30に希釈した。保存基質(Stock substrate)を40mM MES pH 5.0中で12μMに希釈した。化合物をジメチルスルホキシド中で所望の濃度に希釈した(アッセイ中のジメチルスルホキシドの最終濃度は、5%である)。アッセイは、Greinerからの96穴PCRプレート(#650201)中で実施した。ジメチルスルホキシド(3μL)中の化合物をプレートに加え、次いで酵素を加え(27μL)、そして化合物と共に10分間プレインキュベートした。基質(30μL)を用いて反応を開始した。酵素の最終的な希釈度は、1:60であり、そして基質の最終濃度は、6μMであった。室温で20分間反応させた後、反応混合物10μlを除去して、それを0.2M Trizma−HCl(pH 8.0)中で1:25に希釈することによって反応を停止した。化合物を希釈し、Biomek FXによって又は手作業によってプレートに加え、次いで液体の残り全ての処理をBiomek 2000機器で実施した。
【0118】
全ての抗体及びストレプトアビジンをコーティングしたビーズを、0.5%BSA及び0.5%Tween20を含むPBS中で希釈した。ネオエピトープ抗体の1:5000希釈溶液50μLを反応混合物の1:25希釈溶液50μLに加えることによって生成物を定量化した。次いで、0.2mg/ml IGENビーズ(Dynabeads M−280)を含むPBS(0.5%BSA,0.5%Tween20)100μL及びルチニル化ヤギ抗ウサギ(Ru−GαR)抗体の1:5000希釈溶液を加えた。ネオエピトープ抗体の最終的な希釈度は、1:20,000であり、Ru−GARの最終的な希釈度は、1:10,000であり、そしてビーズの最終濃度は、0.1mg/mlであった。室温で振盪しながら2時間インキュベーションした後、Abbiochemialアッセイプログラムを備えたIGEN機器(BioVeris)で混合物を読取った。
【0119】
蛍光アッセイ
酵素を、40mM MES pH 5.0中で1:25に希釈した。保存基質(Dabcyl)を40mM MES pH 5.0中で30μMに希釈した。酵素及び基質保存溶液を、保存プレートに置くまで氷上に保持した。Biomek FX機器を使用して全ての液体処理を実施した。酵素(9μL)をジメチルスルホキシド中の化合物1μLと共にプレートに加え、そして10分間プレインキュベートした。化合物について用量応答曲線を試験する時、純粋のジメチルスルホキシド中で希釈を行った。基質(10μL)を加え、そして反応は、暗所にて室温で25分間進行した。アッセイは、丸底、低容積、非結合表面のCorning 384穴(Corning #3676)中で行った。酵素の最終希釈度は、1:50であり、そして基質の最終濃度は、15μM(Km 25μM)であった。生成物の蛍光は、標識化Edansペプチドについてのプロトコールを使用してVictor IIプレートリーダー上、励起波長360nm及び放射波長485nmで測定した。ジメチルスルホキシド対照により100%活性レベルを定め、そして0%活性は、酵素の排除によって定めた(代わりに40mM MES pH 5.0緩衝液を使用する)。
【0120】
TR−FRETアッセイ
反応緩衝液(NaAcetate,chaps,トリトンx−100,EDTA pH4.5)中で酵素(切断型)を6μg/mL(保存液1.3mg/ml)に、そして基質(ユウロピウム)CEVNLDAEFK(Qsy7)を200nM(保存液60μM)に希釈した。全ての液体処理でBiomek FXを使用し、そして酵素及び基質溶液は、Biomek FX中に置くまで氷上に保持した。酵素(9μl)をプレートに加え、次いでジメチルスルホキシド中の化合物1μlを加え、混合し、そして10分間プレインキュベートした。次いで、基質(10μl)を加え、混合し、そして反応は暗所にて室温で15分間進行した。停止液(7μl,NaAcetate pH9)の添加により反応を停止した。生成物の蛍光は、Victor IIプレートリーダー上、励起波長340nm及び放射波長615nmで測定した。アッセイは、丸底、低容積、非結合表面のCostar 384穴(Corning #3676)中で実施した。酵素の最終濃度は、0.3nMであり;基質の最終濃度は、100nM(Km〜250nM)であった。ジメチルスルホキシド対照により100%活性レベルを定め、そして0%活性は、ペプチド基質のみの添加によって定めた。また、用量応答アッセイでは対照阻害剤を使用し、575nMのIC50を有した。
【0121】
β−セクレターゼ全細胞アッセイ
HEK293−APP695の生成
ヒト完全長APP695のcDNAをコードするpcDNA3.1プラスミドを、製造者(Invitrogen)のプロトコールに従ってリポフェクタミントランスフェクション試薬を使用してHEK−293細胞に安定にトランスフェクションした。コロニーは、0.1〜0.5mg/mlのゼオシンで選択した。限定希釈クローニングを実施して均質細胞系を生成した。社内で開発されたELISAアッセイを使用して条件培地中のAPP発現及び分泌されたAβのレベルによりクローンを特徴づけた。
【0122】
細胞培養
ヒト野生型APPを安定に発現するHEK293細胞(HEK293−APP695)を、4500g/Lグルコース、GlutaMAX及びピルビン酸ナトリウムを含み、10%FBS、1%非必須アミノ酸及び0.1mg/ml選択抗生剤ゼオシンで補充されたDMEM中で、37℃で培養した。
【0123】
Aβ40放出アッセイ
細胞を80〜90%集密で収穫し、そして0.2×106 細胞/mL,100mL細胞懸濁液/穴の濃度で黒色透明な底面の96穴ポリ−D−リシンコーティングプレート上へシードした。37℃、5%CO2で一夜インキュベーションした後、細胞培地を、ペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ100U/mL,100μg/mL)を有し、そして1%の最終的なジメチルスルホキシド濃度で試験化合物を含む細胞培養培地で置き換えた。細胞を、37℃、5%CO2で24時間試験化合物に暴露した。放出されたAβの量を定量するため、100μL細胞培地を丸底ポリプロピレン96穴プレート(アッセイプレート)に移した。細胞プレートを下のATPアッセイに記載されたATPアッセイ用に保存した。0.5%BSA及び0.5%Tween−20入りのDPBS中にウサギ抗Aβ40抗体0.5μg/mL及びビオチン化モノクローナルマウス6E10抗体0.5μg/mLを含む一次検出溶液50μLをアッセイプレートの各穴に加え、そして4℃で一夜インキュベートした。次いで、ルテニル化ヤギ抗ウサギ抗体0.5μg/mL及び0.2mg/mlのストレプトアビジンコーティングダイナビーズを含む二次検出溶液50μLを各穴に加えた。プレートを室温で1〜2時間勢いよく振盪した。次いで、IGEN M8分析器中で電気化学発光カウントについてプレートを測定した。Aβ標準曲線は、ペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ100U/mL,100μg/mL)入りの細胞培養培地中で濃度20、10、2及び0.2ngのAβ/mL)で標準を使用して得た。
【0124】
ATPアッセイ
上記のように、Aβ40検出のため細胞プレートから100μL培地を移した後、全細胞のATPを測定するCambrex BioScienceのViaLightTM Plus細胞増殖/細胞毒性キットを用いて、細胞毒性を分析するためにプレートを使用した。製造者のプロトコールに従ってアッセイを実施した。簡潔には、細胞溶解試薬50μLを各穴に加えた。プレートを室温で10分間培養した。再構成されたViaLightTM Plus ATP試薬100μLを添加して2分後、Wallac Victor2 1420マルチラベルカウンター中で発光を測定した。
【0125】
BACE Biacoreプロトコール
センサチップ製造:
BACEは、Biacore3000機器においてペプチド遷移状態同配体(TSI)又はペプチドTSIのスクランブルバージョン(scrambled version)のいずれかをBiacore CM5センサチップ表面に取り付けることによって検定した。CM5センサチップの表面は、ペプチドを結合するために使用できる4つの明確はチャネルを有する。スクランブルペプチドKFES−スタチン−ETIAEVENVをチャネル1に結合し、そしてTSI阻害剤KTEEISEVN−スタチン−VAEFを同じチップのチャネル2に結合した。2つのペプチドを20mM 酢酸Na pH 4.5中、0.2mg/mLで溶解し、次いで、溶液を14K rpmで遠心分離してすべての粒子を除去した。O.5M N−エチル−N'(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)及び0.5M N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)1対1混合物を5uL/分で7分間注射することによってデキストラン層上のカルボキシル基を活性化した。次いで、対照ペプチドの保存溶液を5uL/分で7分間チャネル1に注射し、次いで、1Mエタノールアミンを5uL/分で7分間注射することによって、残っている活性化カルボキシル基を遮断した。
【0126】
アッセイプロトコール
BACE Biacoreアッセイは、BACEをpH 4.5の酢酸Na緩衝液中で0.5μMに希釈することによって行った(使用緩衝液からジメチルスルホキシドを除く)。希釈したBACEをジメチルスルホキシド又は5%ジメチルスルホキシド最終濃度でジメチルスルホキシド中に希釈した化合物と混合した。BACE/阻害剤混合物を4℃で1時間インキュベートし、次いで、CM5 Biacoreチップのチャネル1及び2上に20μL/分の速度で注射した。信号は、チップに結合したBACEとして応答単位(Ru)で測定した。チャネル2におけるTSI阻害剤に結合するBACEからある種の信号を得た。BACE阻害剤が存在すると、BACEに結合してチップ上でペプチドTSIとの相互作用を阻害することによって信号が軽減された。チャネル1に対するすべての結合は、非特異的であり、チャネル2の応答から差し引いた。ジメチルスルホキシド対照を100%として定め、そして化合物の効果をジメチルスルホキシド対照のパーセント阻害として報告した。
【0127】
hERGアッセイ
細胞培養
(Persson, Carlsson, Duker, & Jacobson, 2005)によって記載されたhERG発現チャイニーズハムスター卵巣K1(CHO)細胞を、加湿環境(5%CO2)において、L−グルタミン、10%ウシ胎仔血清(FCS)及び0.6mg/ml ハイグロマイシン(全てSigma−Aldrich)を含むF−12ハム培地中、37℃で準集密に成長させた。使用前に、Versene 1:5,000(Invitrogen)の予備加温した(37℃)アリコート3mlを使用して単層を洗浄した。この溶液を吸引した後、インキュベーター中でさらに2mlのVersene 1:5,000 と共に37℃で6分間フラスコをインキュベートした。次いで、フラスコの底を穏やかに叩いて細胞を分離し、次いでカルシウム(0.9mM)およびマグネシウム(0.5mM)(PBS; Invitrogen)を含むダルベッコのリン酸緩衝食塩水10mlをフラスコに加え、そして15ml遠心分離管に吸引した後遠心分離した(50g,4分間)。生成した上澄みを捨て沈殿物をPBS 3ml中で穏やかに再懸濁した。細胞懸濁液のアリコート0.5mlを除去し、そして細胞再懸濁容積をPBSで調整して所望の最終的な細胞濃度を得ることができるように、生細胞の数(トリパンブルー排除に基づく)を自動読取装置(Cedex; Innovatis)で測定した。それが、このパラメーターを参照する場合に引用したアッセイにおけるこの時点での細胞濃度である。イオンワークスTM HT(IonWorksTM HT)において電圧オフセットを調整するのに用いたCHO−Kv1.5細胞を、同じやり方で使用するために維持して調製した。
【0128】
電気生理学
この装置の原理及び操作は、(Schroeder, Neagle, Trezise, & Worley, 2003)に記載されている。簡潔には、技術は、位置への吸引を使用して各穴で記録を試みる384穴プレート(パッチプレートTM(PatchPlateTM))に基づいており、2つの単離された流体室を分離する小さな穴上に細胞を保持する。シーリングを行ってから、パッチプレートTMの下側の溶液を、アンホテリシンBを含むものに変える。これは、各穴の孔を覆っている細胞膜のパッチを透過することができ、そして実質的に穿孔全細胞パッチクランプ記録(perforated, whole−cell patch clamp recording)の作成ができる。
【0129】
エッセンインストゥルメント(Essen Instrument)からのAβ−試験イオンワークスTMHTを使用した。この装置には溶液を暖める能力がないため、以下の通り室温(〜21℃)で操作した。「緩衝液」の位置のリザーバーに、PBS 4mlを装填し、そして「細胞」の位置のそれに上記のCHO−hERG細胞懸濁液を装填した。試験化合物(その最終試験濃度より3倍上で)を含む96穴プレート(V−bottom, Greiner Bio−one)を「プレート1」の位置に置き、そしてパッチプレートTMをパッチプレートTMの場所に固定した。各化合物のプレートを12本のカラム中に設置し( laid−out)、10本の8ポイント濃縮効果曲線を作成可能にし;プレート上の残りの2本のカラムは、アッセイベースラインを定めるためのビヒクル(vehicle)(最終濃度0.33%DMSO)及び100%阻害レベルを定めるための過最大遮断濃度のシサプリド(最終濃度10μM)で占められている。次いで、イオンワークスTM HTのフルイディックス−ヘッド(fluidics−head)(F−ヘッド)により、PBS 3.5μlをパッチプレートTMの各穴に加え、そしてその下側を、以下の組成(mM):K−グルコネート100,KCl 40,MgCl2 3.2,EGTA 3及びHEPES 5(全てSigma−Aldrich; pH 7.25−7.30, 10M KOHを使用)を有する「内部」溶液で灌流させた。準備刺激及び脱バブリング後、エレクトロニクス−ヘッド(E−ヘッド)を、次いでパッチプレートTMの周囲に移動して孔試験(hole test)を実施した(すなわち、電圧パルスをかけて各穴の孔が開いているかどうかを測定する)。次いで、F−ヘッドにより、上記細胞懸濁液3.5μlをパッチプレートTMの各穴に分配し、細胞を200秒間かけて、各穴の孔に到達させてシールした。この後、E−ヘッドをパッチプレートTMの周囲に移動させて各穴で得られたシール抵抗(seal resistance)を測定した。次に、パッチプレートTMの下側の溶液を以下の組成(mM):KCl 140、EGTA 1、MgCl2 1及びHEPES 20(10M KOHを使用してpH 7.25−7.30)+100μg/mlのアンホテリシンB(Sigma−Aldrich)を有する「アクセス」溶液に変えた。パッチ穿孔を9分間実施した後、同時にE−ヘッドをパッチプレートTM48穴の周囲に移動させてプレ−化合物hERG電流測定(pre−compound hERG current measurements)を得た。次いで、F−ヘッドにより、化合物プレートの各穴からの溶液3.5μlをパッチプレートTM上の4穴に加えた(最終的なDMSO濃度は、すべての穴で0.33%であった)。これは、化合物プレートの最も希釈された穴から最も濃縮された穴に移動してすべての化合物のキャリーオーバーの影響を最小限にすることによって達成した。約3.5分間インキュベーションした後に、次いでE−ヘッドをパッチプレートTMの全ての384−穴周辺に移動させてポスト−化合物hERG電流測定(post−compound hERG current measurements)を得た。このようにして、非累積的濃度−効果曲線を作成することができここで、受け入れ基準の提供は、穴の十分なパーセンテージで達成され(下記参照)、試験化合物の各濃度の効果は、1〜4個の細胞の記録に基づく。
【0130】
プレ−及びポスト−化合物hERG電流(pre− and post−compound hERG current)は、−70mVで20秒保持する期間、160ミリ秒の刻みで−60mVへ(リークの見積もりを得るため)、100ミリ秒の刻みで−70mVに戻す、1秒の刻みで+40mVへ、2秒の刻みで−30mVへ、そして最終的に500ミリ秒の刻みで−70mVへからなる単一電圧パルスによって誘起した。プレ−及びポスト−化合物電圧パルスの間に膜電位が固定されることはなかった。電流は、電圧パルスプロトコールの開始時の+10mV刻み中に誘起された電流の見積もりに基づいてリークを差し引いた。イオンワークスTM HT中のすべての電圧オフセットは、2つのやり方の1つで調整した。化合物の効力を測定する場合、脱分極性ランプ電圧をCHO−Kv1.5細胞に適用し、そして電流トレースにおける変曲点があった電圧を記した(すなわち、ランププロトコールでチャネル活性化が見られた点)。これが生じた電圧を、慣用の電気生理学における同じ電圧コマンドを使用して予め測定し、−15mV(示してないデータ)であることが見出され;従って、この値を参照点として用いて、オフセット電位をイオンワークスTM HTソフトウェアに入れることができた。hERGの基本的な電気生理学的性質を測定する場合、イオンワークスTM HT中でhERGテール電流逆転電位を測定し、それを慣用の電気生理学で見出されるものと比較し(−82mV)、次いで、イオンワークスTM HTソフトウェアで必要なオフセット調整を行うことよってすべてのオフセットを調整した。電流信号は、2.5kHzでサンプリングした。
【0131】
プレ−及びポスト−スキャンhERG電流量(Pre− and post−scan hERG current magnitude)は、イオンワークスTM HTソフトウェアによって−70mVでの最初の保持期間中の電流の40ミリ秒の平均をとり(ベースライン電流)そしてこれをテール電流応答のピークから差し引くことによって、リークからトレースを差し引いて自動的に測定した。各穴で誘起される電流についての許容基準は以下の通りである:プレ−スキャンシール抵抗>60MΩ、プレ−スキャンhERGテール電流振幅>150pA;ポスト−スキャンシール抵抗>60MΩ。hERG電流阻害の程度は、ポスト−スキャンhERG電流を各穴についてのそれぞれのプレ−スキャンhERG電流によって割ることで評価した。
【0132】
結果
本発明の化合物について典型的なIC50値は、約1〜約10,000nMの範囲であった。実施例における生物学データを、下の表1に示す。
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基としての式I:
【化1】

[式中、
Pは、ピリジン環であり;
Qは、結合又はCH2CH2であり;
R1は、シアノ、ハロゲン、C1-6アルキル及びメトキシから独立して選ばれ;
mは、1又は2であり;
但し、以下の化合物は除く;
2−アミノ−6−[3−(5−ブロモピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン;
2−アミノ−6−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン]
の化合物又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物。
【請求項2】
C1-6アルキルがメチルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが直接結合を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり、そしてR1がシアノ、メトキシ又はハロゲンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R1はハロであり、ハロゲンはピリジン環の2位に結合したクロロである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
mは2であり、そしてR1は1つのハロゲン及び1つのメチルを表す、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項7】
ハロゲンは、ピリジン環の6位に結合したフルオロである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
mは2であり、そしてR1は2つのハロゲン原子を表す、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項9】
2つのハロゲン原子は、ハロゲンの以下の組み合わせ:ピリジン環の2及び3位に結合したクロロ;ピリジン環の2位に結合したフルオロ及び5位に結合したブロモ;ピリジン環の2位に結合したクロロ及び5位に結合したフルオロ;ピリジン環の2位に結合したフルオロ及び5位に結合したクロロのいずれかを表す、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
QはCH2−CH2を表す、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
mは1であり、そしてR1はハロゲン又はメトキシから選ばれる、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
ハロゲンは、ピリジン環の2位に結合したクロロである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
mは2であり、そしてR1は2つのハロゲン原子を表す、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
2つのハロゲン原子は、ピリジン環の2位に結合したフルオロ及び5位に結合したクロロを表す、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
遊離塩基又はその医薬上許容しうる塩、溶媒和物若しくは塩の溶媒和物として以下から選ばれる化合物:
5−[3−(2−アミノ−1,4−ジメチル−6−オキソ−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−4−イル)フェニル]ニコチノニトリル塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2,3−ジクロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−ブロモ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロ−5−フルオロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オントリフルオロ酢酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(6−フルオロ−5−メチルピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−{2−[3−(2−クロロピリジン−4−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−[3−(5−メトキシピリジン−3−イル)フェニル]−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;
2−アミノ−6−{2−[3−(6−メトキシピリジン−2−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩;及び
2−アミノ−6−{2−[3−(5−クロロ−2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]エチル}−3,6−ジメチル5,6−ジヒドロピリミジン−4(3H)−オン塩酸塩。
【請求項16】
活性成分として治療上有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を、医薬上許容しうる賦形剤、担体又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物の薬剤としての使用。
【請求項18】
Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤としての請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
Aβ−関連の病理が、ダウン症候群、β−アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、MCI(「軽度認知障害」)、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、アルツハイマー病に関連する神経変性、混合型血管由来の認知症、変性由来の認知症、初老期認知症、老年認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症である、Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤としての請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
Aβ−関連の病理が、ダウン症候群、β−アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、MCI(「軽度認知障害」)、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、アルツハイマー病に関連する神経変性、混合型血管由来の認知症、変性由来の認知症、初老期認知症、老年認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症である、Aβ−関連の病理を治療又は予防する薬剤の製造における請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
BACEを請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを含むBACEの活性を阻害する方法。
【請求項23】
患者に治療上有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、哺乳動物におけるAβ−関連の病理を治療又は予防する方法。
【請求項24】
Aβ−関連の病理は、ダウン症候群、β−アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、MCI(「軽度認知障害」)、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、アルツハイマー病に関連する神経変性、混合型血管由来の認知症、変性由来の認知症、初老期認知症、老年認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物はヒトである、請求項23の方法。
【請求項26】
治療上有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物及び少なくとも1つの認知増強剤、記憶増強剤又はコリンエステラーゼ阻害剤を患者に投与することを含む、哺乳動物におけるAβ−関連の病理を治療又は予防する方法。
【請求項27】
Aβ−関連の病理は、ダウン症候群、β−アミロイドアンギオパチー、脳アミロイドアンギオパチー、遺伝性脳出血、認知障害に関連する障害、MCI(「軽度認知障害」)、アルツハイマー病、記憶喪失、アルツハイマー病に関連する注意欠陥症状、アルツハイマー病に関連する神経変性、混合型血管由来の認知症、変性由来の認知症、初老期認知症、老年認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上性麻痺又は皮質基底核変性症である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物がヒトである、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2009−532464(P2009−532464A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504154(P2009−504154)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000322
【国際公開番号】WO2007/114771
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【出願人】(506025512)アステックス・セラピューティクス・リミテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ASTEX THERAPEUTICS LIMITED
【Fターム(参考)】