説明

2−イミノ−4−チアゾリジノン誘導体および2,4−チアゾリジンジオン誘導体の製造方法

【課題】5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(一般名:リボグリタゾン)又はその塩を、工程数が少なく、かつ高収率で得ることができる製造方法を提供すること。
【解決手段】2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを還元して2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルとし、これと5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミンとを、含水溶媒中で反応させて5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオンを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下式(IV)で示される5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(一般名称:リボグリタゾン)又はその塩の製造方法、及びその新規中間体に関する。
【化7】

【背景技術】
【0002】
本発明の製造方法に係る前記の式(IV)の化合物は、優れたインスリン抵抗性改善作用を有しており、糖尿病治療薬として有用な物質である。
従来、式(IV)の化合物を製造する方法として、その中間工程において、4−(2−ブロモ−2−ブトキシカルボニルエチル−1−イル)フェノキシ酢酸メチルとチオ尿素とを反応させて、2−[4−{(チアゾリジン−2、4−ジオン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸エチルを得、これと5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミンとを反応させて目的の5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(一般名称:リボグリタゾン)を得る方法等が開示されている(特許文献1、非特許文献1)。
一方、上記の中間工程において得られる2−[4−{(チアゾリジン−2、4−ジオン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルは、2−[4−{(チアゾリジン−2、4−ジオン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを還元して得る方法が開示されている(特許文献2)。
しかし、前記の方法は、悪臭を有する化合物を使用する問題や、還元に多量の金属触媒を使用する問題があり、収率の点でも満足とは言い難い。
【0003】
【特許文献1】特開平09−29597号公報
【非特許文献1】ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),第43巻,第16号,p.3052−3066(2000)
【特許文献2】特表2002−524563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、糖尿病治療薬として有用な5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオンを、工程数が少なく、かつ高収率で得ることができる製造方法と、そのために有用な合成中間体である2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステル及びその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルが極めて容易に接触還元できること、そしてこの反応を利用すると所期の目的を達成することができることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明によれば、
1.式(I)
【化8】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを還元して式(II)
【化9】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを製造する方法、
2.式(II)
【化10】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステル、
3.式(II)
【化11】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルと、式(III)
【化12】

で表わされる5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミンとを、含水溶媒中で反応させて式(IV)
【化13】

で表わされる5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン又はその塩を製造する方法、を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明で使用する2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸およびその低級アルキルエステル(I)は、ベンジリデン部位の二重結合の還元が容易であり、選択的に還元できる。したがって、本発明によれば、廃液処理が困難な金属化合物を多量に用いる必要がない。
また、本発明において前記還元工程を採用することにより、工程数が少なく、かつ収率よく、目的の5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(IV)又はその塩を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸およびその低級アルキルエステル(II)の製造
本発明において使用する前記の式(I)の化合物は、後述の参考例1〜4に記載の方法により製造することができる。
式(I)の化合物を還元して式(II)の化合物を得るための還元反応は、通常適当な溶媒中で適当な触媒の存在下に接触還元することにより行われる。適当な溶媒としては、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エ−テル類(例えば、ジオキサン,ジメトキシエタン,テトラヒドロフランなど)、有機酸類(例えば、蟻酸、酢酸, プロピオン酸、ブタン酸など)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、あるいはこれらの混合溶媒などが用いられる。一方、触媒としては、担持された、又はされていない、いわゆる不均一系の遷移金属を主成分とする触媒(例えば、パラジウム黒、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−炭酸バリウム、酸化白金、白金−炭素、ロジウム炭素、ルテニウム炭素、ラネーニッケルなど)が用いられる。還元反応における反応温度は、通常0〜200℃、好ましくは室温〜80℃である。還元反応における反応時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜24時間である。還元反応は、常圧でも進行するが、反応促進のために15.0MPa 以下、さらに0.2〜1.0MPaの加圧下に行うことが好ましい。また、還元反応は無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸など)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸類など)の存在下に行ってもよい。この際に使用する酸類の量は、式(I)の化合物に対し、通常0.01〜3倍モル、好ましくは0.1〜1.5倍モルである。
また、本発明に係る式(II)の化合物には結晶多形が存在し、それぞれ異なった結晶形として単離することができる。
なお、前記反応後、生成した式(II)の化合物は単離することなく、次の5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミン(III)との反応および加水分解反応を同一反応系内で行う工程に導いてもよい。
【0009】
(2)2−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(IV)又はその塩酸塩(塩酸リボグリタゾン)の製造
式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応は、特に困難なく、通常の方法により行うことができる。たとえば、通常適当な溶媒中または無溶媒下で適当な鉱酸あるいは適当な有機酸類の存在下または非存在下に行なわれる。使用される溶剤としては、反応に影響を与えなければ特に限定はなく例えば、水、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノールなど)、酸類(酢酸、プロピオン酸など)、またはこれらの混合溶剤が好適に用いられる。適当な鉱酸あるいは適当な有機酸類としては、鉱酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸など)、有機酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの芳香族スルホン酸類など)、またはこれらの鉱酸あるいは有機酸類は適宜の割合で混合して用いても良い。本反応工程は通常20℃〜還流温度、好ましくは50℃〜150℃で行なわれ、反応時間は通常1〜100時間である。
なお、式(IV)の化合物又はその塩酸塩は通常の分離精製方法(例えば、濃縮、中和、塩酸塩化、晶析、抽出、再結晶、クロマトグラフィーなど)により単離精製することができる。
【0010】
本発明に係る実施例で使用の2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステル(I)は、オーガニック シンセシス,合冊版 第3巻(Org. Synth., Coll. Vol.3)p.751−752、及び特許第2558473号公報に記載の方法を参考にして、下記参考例1〜4により製造した。
【0011】
[参考例1]2−(4−ホルミルフェノキシ)酢酸メチルの合成
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(73.3g)をアセトニトリル(360mL)およびメタノール(60mL)の混合溶媒に溶解し、炭酸カリウム(83g)を加えて懸濁し、ブロム酢酸メチル(76.5g)を加えて加熱撹拌下に5時間還流した。室温まで冷却した後、不溶物を濾過して濃縮し、残留物に酢酸メチルと水を加えて溶解し、分層した。分離した有機層を5%炭酸カリウム水溶液で洗浄、次いで、水洗した後、乾燥し、濃縮することにより、2−(4−ホルミルフェノキシ)酢酸メチルの油状物(72.5g:収率74.7%)を得た。
IR(ペースト法)cm−1:2736、1750,1694、1205、1082
H−NMR(CDCl:TMS)δppm:3.82(3H、s)、4.73(2H、s)、7.01(2H、dd)、7.85(2H、dd)、9.90(1H、s)
MS m/z:195[(M+1)
【0012】
[参考例2]2−(4−ホルミルフェノキシ)酢酸エチルの合成
前記参考例1におけるメタノールに代えてエタノールを使用し、参考例1と同様にして2−(4−ホルミルフェノキシ)酢酸エチルの油状物を得た(収率87.7%)。
IR(ペースト法)cm−1:2754、1754,1672、1204、1079
H−NMR(CDCl:TMS)δppm:1.30(3H、t)、4.28(2H、q)、4.72(2H、s)、7.02(2H、dd)、7.85(2H、dd)、9.90(1H、s)
MS m/z:209[(M+1)
【0013】
[参考例3]2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸メチル[(I):Rがメチル基の化合物]の合成
メタノール(330mL)に2−イミノ−4−チアゾリジノン(21.7g)を懸濁し、2−(4−ホルミルフェノキシ)酢酸メチル(33g)およびピペリジン(11.6g)を加えた混合物を攪拌下に9時間加熱還流した。一夜室温で攪拌した後、水(100mL)を加えて、約60℃で30分間攪拌し、冷却して結晶を濾取し、含水メタノールで洗浄した。得られた結晶を乾燥することにより、2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸メチルの結晶(41.5g:収率83.5%)を得た。
mp265〜272℃
IR(ペースト法)cm−1:3204、1770、1671、1601、1511、1281、1082
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:3.72(3H、s)、4.90(2H、s)、7.09(2H、dd)、7.53(2H、dd)、7.57(1H、s)、9.14(1H、bs)、9.40(1H、bs)
MS m/z:293[(M+1)
【0014】
[参考例4]2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸エチル[(I):Rがエチル基の化合物]の合成
前記参考例3におけるメタノールに代えてエタノールを使用し、参考例3と同様にして2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸エチルの結晶(48.5g:収率79.2%)を得た。
mp255〜270℃
IR(ペースト法)cm−1:3171、1746、1681、1672、1603、1506、1274、1087
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:1.22(3H、t)、4.18(2H、q)、4.87(2H、s)、7.09(2H、dd)、7.53(2H、dd)、7.57(1H、s)、9.15(1H、bs)、9.41(1H、bs)
MS m/z:307[(M+1)
【実施例】
【0015】
[実施例1] メタンスルホン酸(2.9g)のギ酸(55mL)溶液に参考例4で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸エチル(9.2g)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(2.8g)加えた混合物を、0.5MPa〜0.7MPaの水素加圧下に45〜50℃で4時間攪拌した。反応終了後、触媒を濾去し、更にエタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、残留物を20%エタノール水溶液(50mL)に溶解し、28%アンモニア水で中和して晶析させた。さらに懸濁液を加熱攪拌した後、冷却して結晶を濾取し、水洗し、乾燥することにより2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸エチル[(II):Rがエチル基の化合物]の白色結晶(7.2g:収率77.8%)を得た。
mp173〜176℃
IR(ペースト法)cm−1:3254、1767、1745、1678、1661、1283、1212、1084
H−NMR(DMSO−d6:TMS)δppm:1.20(3H、t)、2.84(1H、dd)、3.30(1H、dd)、4.16(2H、q)、4.55(1H、dd)、4.74(2H、s)、6.84(2H、dd)、7.15(2H、dd)、8.70(1H、bs)、8.93(1H、bs)
MS m/z:309[(M+1)
【0016】
[実施例2] メタンスルホン酸(2.88g)のギ酸(62mL)溶液に参考例3で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸メチル(8.8g)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(1.76g)加えた混合物を、0.4MPa〜0.6MPaの水素加圧下に40℃で6時間攪拌した。反応終了後、触媒を濾去し、更にメタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて、濃縮し、残留物に水(88mL)を加えて懸濁撹拌した。10〜20℃で10%水酸化ナトリウム水溶液(40mL)を滴下した後、室温で約1時間撹拌した。得られた溶液を水冷撹拌し、濃塩酸(7mL)を滴下して晶析させた。その後、結晶を濾取し、水洗した後、乾燥することにより2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸[(II):Rが水素原子の化合物]の結晶(8.1g:収率96.3%)を得た。
mp236〜239℃
IR(ペースト法)cm−1:3287、3162、2538、1719、1683、1638、1512、1297、1234、1080
H−NMR(DMSO−d:TMS)δppm:2.84(1H、dd)、3.30(1H、dd)、4.55(1H、dd)、4.64(2H,s)、6.83(2H、d)、7.14(2H、d)、8.77(1H、s)
MS m/z[(M+1)]:281
MS m/z[(M−1)]:279
【0017】
[実施例3] 実施例1で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸エチル[(II):Rがエチル基の化合物](4.0g)、5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミン(1.52g)、1,4−ジオキサン(20mL)、水(5mL)および濃塩酸(20mL)の混合液を60時間、加熱還流した。反応混合物を冷却撹拌した後、析出物をろ取した。この析出物を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)と酢酸エチル(20mL)の混液中、約40℃で約5時間、懸濁撹拌した。室温で一夜放置後、不溶物をろ取し、水洗して得られた粗生成物をN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に加熱溶解し、更に活性炭を加えて脱色した。活性炭を濾去した後、溶剤を約15mlまで濃縮し、メタノール(32mL)を加えて冷却撹拌して晶析させた後、結晶をろ取し、メタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより、5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(IV)(リボグリタゾン)の結晶(2.8g:収率70.4%)を得た。
mp277−280℃
IR(ペースト法)cm−1:2562、1878、1744、1705
H−NMR(DMSO−d6:TMS)δppm:3.06(1H、dd)、3.32(1H、dd)、3.81(3H,s)、3.82(3H,s)、4.89(1H、dd)、5.34(2H,s),6.83(1H、dd)、7.07(2H、d)、7.13(1H、d)、7.19(2H,d)、7.52(1H、d)、12.06(1H、s)
MS m/z:398[(M+1)
【0018】
[実施例4] 実施例1で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸エチル[(II):Rがエチル基の化合物](4.0g)、5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミン(1.98g)、1,4−ジオキサン(20mL)、水(5mL)および濃塩酸(25mL)の混合液を60時間、加熱還流した。反応混合物を冷却撹拌した後、析出物をろ取した。この析出物をメタノール(30mL)中、約65℃で約0.5時間、懸濁撹拌した。冷却撹拌した後、結晶をろ取し、メタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより、5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(塩酸リボグリタゾン)の結晶(4.8g:収率85%)を得た。
mp253−263℃
IR(ペースト法)cm−1:2730、2690、1754、1698
H−NMR(DMSO−d6:TMS)δppm:3.10(1H、dd)、3.34(1H、dd)、3.90(3H,s)、4.03(3H,s)、4.92(1H、dd)、5.70(2H,s),7.17(2H、d)、7.18(1H、dd)、7.25(2H,d)、7.56(1H、d)、7.73(1H、d)、12.12(1H、s)
MS m/z:398[(M+1)](リボグリタゾンとして)
【0019】
[実施例5]1)メタンスルホン酸(6.73g)のギ酸(123mL)溶液に参考例3で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸メチル(20.5g)を溶解し、10%パラジウム炭素(50%含水)(9.9g)加えた混合物を、0.5MPa〜0.7MPaの水素加圧下に40℃で5時間攪拌した。反応終了後、触媒を濾去し、更にメタノールで触媒を洗浄した。濾液と洗液を合わせて、濃縮し、残留物を50%含水メタノール(120mL)に溶解した。次いで、28%アンモニア水で中和し晶析させ、さらに懸濁液を加熱攪拌した後、冷却して結晶を濾取し、水洗し、乾燥することにより2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸メチル[(II):Rがメチル基の化合物]と2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸[(II):Rが水素原子の化合物]の混合結晶(18.4g)を得た。
2)上記1)で得られた2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸メチル[(II):Rがメチル基の化合物]と2‐[4−{(2−イミノ−4−チアゾリジノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸[(II):Rが水素原子の化合物]の混合物(4.02g)、5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミン(1.52g)、1,4−ジオキサン(20mL)、水(5mL)および濃塩酸(25mL)の混合液を52時間、加熱還流した。反応混合物を冷却撹拌した後、析出物をろ取した。この析出物をメタノール(30mL)中、約65℃で約0.5時間、懸濁撹拌した。冷却撹拌した後、結晶をろ取し、メタノールで洗浄した。その後、乾燥することにより、5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩(塩酸リボグリタゾン)の結晶(5.7g)を得た。
mp253−263℃
IR(ペースト法)cm−1:2729、2690、1754、1698
H−NMR(DMSO−d6:TMS)δppm:3.10(1H、dd)、3.34(1H、dd)、3.90(3H,s)、4.02(3H,s)、4.92(1H、dd)、5.70(2H,s),7.17(2H、d)、7.18(1H、dd)、7.25(2H,d)、7.55(1H、d)、7.73(1H、d)、12.12(1H、s)
MS m/z:398[(M+1)](リボグリタゾンとして)
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、公知化合物2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルから短工程且つ簡便な方法により糖尿病治療薬として有用な5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン(リボグリタゾン)等を、工業的に有利に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチレン}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを還元して式(II)
【化2】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルを製造する方法。
【請求項2】
式(II)
【化3】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステル。
【請求項3】
式(II)
【化4】

(式中、Rは前記と同意義を示す。)で表わされる2−[4−{(2−イミノ−4−チアゾリノン−5−イル)メチル}フェノキシ]酢酸又はその低級アルキルエステルと、式 (III)
【化5】

で表わされる5−メトキシ−N−メチル−1,2−フェニレンジアミンとを、含水溶媒中で反応させて式(IV)
【化6】

で表わされる5−[4−(6−メトキシ−1−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルメトキシ)ベンジル]チアゾリジン−2,4−ジオン又はその塩を製造する方法。

【公開番号】特開2009−221147(P2009−221147A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67291(P2008−67291)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】