説明

2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよびフッ化水素の共沸性組成物

【課題】2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよびフッ化水素の三成分系の共沸組成物および共沸混合物様組成物を提供する。
【解決手段】フッ化水素約1から約50重量%と、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの混合物から実質的になる有機部分約50から約99重量%(ここで、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは前記有機部分の約50から約90重量%の量で存在し、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンは前記有機部分の約10から約50重量%の量で存在する)とからなる共沸組成物または共沸混合物様組成物を提供する。上記共沸組成物および共沸混合物様組成物は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)製造の中間体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2008年4月9日に出願した米国仮特許出願第61/043,451号の優先権の利益を主張するものである。
本発明は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)およびフッ化水素(HF)の三成分系の共沸組成物および共沸混合物様組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造中間体として有用な、上記三成分系の共沸組成物および共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタンのようなクロロフルオロカーボン類(CFCs)は、冷媒、発泡剤およびガス滅菌用希釈剤として使用されてきた。近年、完全にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン類は、地球のオゾン層に有害であるという懸念が世界的に抱かれてきた。従って、成層圏に対してより安全である、これらの物質の代替品が望まれている。その結果、塩素置換基がより少ない、または塩素置換基を含まない、フッ素置換炭化水素を使用する取り組みが世界的になされている。これに関しては、オゾン層破壊係数が低い、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)および2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)が、冷凍(冷房)システム中のジクロロジフルオロメタンおよび発泡剤としてのトリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボンの代替品として検討されている。HFC類、すなわち炭素、水素およびフッ素のみを含有する化合物の製造は、溶剤、発泡剤、冷媒、洗浄剤、エアロゾル噴射剤、熱伝達媒体、誘電体、消火剤組成物および動力サイクル作動流体として使用される、環境に望ましい製品を提供するための注目すべき主題となってきた。フッ化水素と種々のハイドロクロロカーボン化合物を反応させることにより、HFC類等のフルオロカーボンを製造することは、当技術分野で知られている。このようなHFC類は、非オゾン層破壊性であるので、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)またはクロロフルオロカーボン類(CFCs)より環境的にはるかに有利であると考えられるだけでなく、不燃性(難燃性)であり、上記の塩素含有化合物と比べて無毒である。
【0003】
HCFO−1233xfおよびHCFC−244bbは、その明細書が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0007488号公報(特許文献1)および第2007/0197842号公報(特許文献2)に記載されるように、当技術分野でよく知られている、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造における中間体である。HFO−1234yfは、効果的な冷媒、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体誘電体、滅菌剤担体、重合媒体、微粒子除去流体、担体流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤および動力サイクル作動流体であると開示されている。
【0004】
実質的に純粋なHFO−1234yfの製造における重要な中間体は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)およびフッ化水素の三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物であることが今や判明した。この中間体は、一度形成されると、その後に既知の抽出方法により、その構成要素に分離できる。三成分系の共沸組成物および共沸混合物様組成物は、HFO−1234yf製造の中間体として使用されるだけでなく、更に、電子産業において半導体エッチング用の非水系エッチング液混合物として、ならびに金属から表面の酸化物を除去するための組成物としても有用である。更に、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)およびフッ化水素の三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物の形成は、HCFO−1233xfおよびHCFC−244bbの混合物を、ハロカーボン、例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、または1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン等の別の成分から分離するのに有用である。別の成分からHCFO−1233xfおよびHCFC−244bbの混合物を分離することが望ましい場合、HFを添加してHCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびフッ化水素の三成分系の共沸性混合物を形成し、次に、蒸留または他の既知の手段等により、別の成分をこの三成分系共沸性混合物から除去する。この三成分系の共沸組成物および共沸混合物様組成物は、次に、その構成要素への分離に利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0007488A1号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0197842A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を提供する。
【0007】
本発明は、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンから実質的になる三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物も提供する。
【0008】
本発明は、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンから実質的になる三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を含む組合せも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フッ化水素約1から約50重量パーセントと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの混合物から実質的になる有機部分約50から約99重量パーセントとから実質的になる共沸組成物または共沸混合物様組成物であって、この有機部分の混合物中の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、有機部分の約50から約90重量パーセントの量で存在し、この有機部分の混合物中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが、有機部分の約10から約50重量パーセントの量で存在し、この共沸性組成物(共沸組成物または共沸混合物様組成物)が、約1.03×10Pa(15psia)から約7.45×10Pa(108psia)の圧力(絶対圧)で約0℃から約61℃の沸点を有する、共沸組成物または共沸混合物様組成物を更に提供する。
【0010】
本発明は、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含むブレンドを形成することを含む、三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成するための方法を更に提供する。
【0011】
本発明は、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンから実質的になるブレンドを形成することを含む、三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成するための方法を更に提供する。
【0012】
本発明は、フッ化水素約1から約50重量パーセントと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの混合物から実質的になる有機部分約50から約99重量パーセントとから実質的になるブレンドであって、この有機部分の混合物中の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、有機部分の約50から約90重量パーセントの量で存在し、この有機部分の混合物中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが、有機部分の約10から約50重量パーセントの量で存在するブレンドを形成することを含み、この共沸性組成物(共沸組成物または共沸混合物様組成物)が約1.03×10Pa(15psia)から約7.45×10Pa(108psia)の圧力(絶対圧)で約0℃から61℃の沸点を有する、三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成する方法を更に提供する。
【0013】
本発明は、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび少なくとも1種の他の成分を含有する混合物から除去するための方法であって、フッ化水素を前記混合物に十分な量で添加して、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成すること、および、その後に三成分系の共沸性組成物(共沸組成物または共沸混合物様組成物)を他の成分から分離することを含む方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
HCFC−244bb前駆体を調製する方法では、反応物質はフッ化水素を用いてフッ素化される。これは、例えば、CFCC1=CH(HCFO−1233xf)をHFを用いて液相または気相で触媒的にフッ素化することにより実施でき、HCFC−244bbを産生する。このような方法は米国特許出願公開第2007/0007488号公報および第2007/0197842号公報に開示される(特許文献1及び2)。上記前駆体の反応生成物は、HCFC−244bb、未反応のHCFO−1233xfおよびHF、ならびに他の副生成物を含む。副生成物を除去すると、HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物が形成される。この三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、次に、その構成要素への分離に利用可能である。HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの共沸組成物または共沸混合物様組成物は、フッ素化反応器への再利用としても有用である。つまり、例えば、HCFC−244bbを製造するための工程で、HCFO−1233xfおよびHCFC−244bbの一部を、HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの共沸組成物または共沸混合物様組成物として回収でき、次にこの組成物を反応器に再利用できる。
【0015】
HCFO−1233xf前駆体を調製する方法では、反応物質はフッ化水素を用いてフッ素化される。これは、例えば、CCl=CClCHC1をHFを用いて気相で触媒的にフッ素化することにより実施でき、HCFO−1233xfを産生する。このような方法は、明細書が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0197842号公報に開示される(特許文献2)。上記前駆体の反応生成物は、HCFO−1233xf、HCFC−244bb等の過フッ素化種、未反応のHF、および他の副生成物を含む。副生成物を除去すると、HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物が形成される。この三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、次に、その構成要素への分離に利用可能である。HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの共沸組成物または共沸混合物様組成物は、米国特許出願公開第2007/0007488号公報および第2007/0197842号公報に開示されているように、HCFO−1233xfフッ素化反応器への供給原料としても有用である(特許文献1及び2)。つまり、例えば、HCFO−1233xfを製造するための工程で、HCFO−1233xfおよびHCFC−244bbの一部を、HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの共沸組成物または共沸混合物様組成物として回収でき、次にこの組成物をHCFO−1233xfフッ素化反応器に転送して供給することができる。
【0016】
HCFC−244bbおよびHCFO−1233xfの混合物は、HFと共に共沸混合物および共沸(混合物)様混合物を形成する。流体の熱力学的状態は、その圧力、温度、液体組成および蒸気組成により規定される。真の共沸組成物の場合、液体組成と蒸気相は、所与の温度および圧力の範囲で本質的に等しい。実際的な言い方をするならば、これは成分が相変化の間に分離できないことを意味する。本発明の目的では、共沸混合物は、周辺組成の混合組成物の沸点に対して最大または最小の沸点を示す液体混合物である。共沸組成物または共沸混合物様組成物は、2種以上の異なる成分の混合物であり、所与の圧力下において液体形態の場合、実質的に一定の温度で沸騰し、その温度は各成分の沸騰温度よりも高い、または低い場合があり、沸騰している液体組成物と本質的に同一である蒸気組成物を提供する。本発明の目的では、共沸性組成物(共沸組成物あるいは共沸混合物)とは、共沸混合物様組成物を含むように規定され、共沸混合物様組成物とは共沸混合物のような挙動を示す組成物、すなわち一定の沸騰特性、または沸騰もしくは蒸発で分別しない傾向を有する組成物を意味する。従って、沸騰または蒸発の間に形成される、その蒸気組成は、元の液体組成と同じまたは実質的に同じである。それゆえ、沸騰または蒸発の間に、液体組成が、仮に変化したとしても、最小限または無視できる程度しか変化しない。これは、沸騰または蒸発の間、液体組成がかなりの程度変化する、非共沸混合物様組成物と対照的である。従って、共沸組成物または共沸混合物様組成物の必須の特徴は、所与の圧力で、液体組成物の沸点が一定であり、沸騰組成物の上方にある、その蒸気組成は本質的に沸騰している液体組成物の組成であること、すなわち液体組成物の各成分の分別が起こらないことである。共沸液体組成物または共沸混合物様液体組成物が異なる圧力で沸騰を受ける場合、この共沸性組成物(共沸組成物または共沸混合物様組成物)の各成分の沸点および重量パーセントの両方が変化することがある。従って、共沸組成物または共沸混合物様組成物は、その成分間に存在する関係という点から、または各成分の組成範囲という点から、または特定の圧力での不変の(一定の)沸点を特徴とする組成物の各成分の正確な重量パーセントという点から規定することができる。
【0017】
本発明は、共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成するのに有効な量のHCFO−1233xfおよびHCFC−244bbおよびフッ化水素を含む組成物を提供する。有効な量とは、他の成分と組み合わされた場合、共沸組成物または共沸混合物様混合物を形成する各成分の量を意味する。本発明の組成物は、好ましくは、HCFO−1233xfおよびHCFC−244bbおよびフッ化水素のみの組合せから実質的になる、三成分系の共沸混合物である。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物の重量に基づいて、HFを約1から約50重量パーセント、好ましくは約5重量パーセントから約40重量パーセント、より好ましくは約10重量パーセントから約35重量パーセント含有する。
【0019】
本発明の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、そこで、共沸組成物または共沸混合物様組成物の重量に基づいて、HCFC−244bbおよびHCFO−1233xfの組合せから本質的になる有機部分を、約50から約99重量パーセント、好ましくは約60重量パーセントから約95重量パーセント、より好ましくは約65重量パーセントから約90重量パーセント含有する。
【0020】
好ましい実施形態では、共沸組成物または共沸混合物様組成物の有機部分、すなわちHCFC−244bb/HCFO−1233xfの混合物は、共沸組成物または共沸混合物様組成物の有機部分の重量に基づいて、HCFO−1233xfを約50から約90重量パーセント、好ましくは約51.5重量パーセントから約86.5重量パーセント、より好ましくは約53重量パーセントから約83重量パーセント含有する。
【0021】
好ましい実施形態では、共沸組成物または共沸混合物様組成物の有機部分、すなわちHCFC−244bb/HCFO−1233xfの混合物は、共沸組成物または共沸混合物様組成物の有機部分の重量に基づいて、HCFC−244bbを約10から約50重量パーセント、好ましくは約13.5重量パーセントから約48.5重量パーセント、より好ましくは約17重量パーセントから約47重量パーセント含有する。
【0022】
本発明の組成物は、好ましくは、約1.03×10Pa(15psia)から約7.45×10Pa(108psia)の圧力(絶対圧)で、約0℃から約61℃の沸点を有する。1つの実施形態では、本発明の組成物は約2.55×10Pa(37psia)の圧力(絶対圧)で、約23℃の沸点を有する。別の実施形態では、本発明の組成物は約1.03×10Pa(15psia)の圧力(絶対圧)で、約0℃の沸点を有する。別の実施形態では、本発明の組成物は約7.45×10Pa(108psia)の圧力(絶対圧)で、約61℃の沸点を有する。
【0023】
本発明の別の実施形態では、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)および2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、ならびに、例えば、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)および/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を調製する際の製造工程から生じ得る別の成分を含有する混合物から除去できる。これは、フッ化水素を2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)および別の成分の混合物に添加することにより実施される。フッ化水素は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)およびフッ化水素の共沸性組成物(共沸組成物または共沸混合物様組成物)の形成に十分な量で混合物に添加され、その後この共沸性組成物は別の成分から、例えば、蒸留または当技術分野で認められている他の分離手段により分離される。1つの実施形態では、別の成分自体は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)またはフッ化水素と個別に、または2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)およびフッ化水素の混合物と共沸性混合物を形成しない。別の実施形態では、別の成分は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)またはフッ化水素と個別に、または2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)およびフッ化水素の混合物と共沸性混合物を形成する。典型的な不純物は、HCFC−244bbまたはHCFO−1233xfと混和可能な、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンまたは1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン等の他のハロカーボンを含む。
【0024】
下記の非制限的な実施例は、本発明を例示するのに役立つ。
【実施例】
【0025】
実施例1
44.4重量パーセントのHCFC−244bbおよび55.6重量パーセントのHCFO−1233xfからなる有機物の混合物と、3重量パーセントのHFを含有する17.0kg(37.4ポンド)の原料を蒸留塔に装填した。混合物は均一であった。蒸留塔は、37.9リットル(10ガロン)リボイラー、内径5.08cm(2インチ)の244cm(8フィート)プロパック塔、およびシェルアンドチューブ式コンデンサー(多管式凝縮器)で構成されていた。この塔は約30の理論段数を有していた。蒸留塔には、温度、圧力および差圧の発信機が装着されていた。蒸留を、約1.59×10から1.72×10Pa(23から25psig)の圧力(ゲージ圧)で実施した。留出物をサンプリングして、HF濃度を測定するために滴定し、定期的な間隔でGC(ガスクロマトグラフィー)により分析した。分析結果は、HF/HCFC−244bb/HCFO−1233xfの三成分系共沸混合物を示した。この共沸混合物のHF濃度は、0.1NのKOHによる滴定を用いて、約25から33重量%であると分析された。GCの面積%に基づく有機物濃度は、HCFC−244bbが約17から21GC面積%、HCFO−1233xfが約79から83GC面積%であった。この組成物の場合、1.59×10から1.72×10Pa(23から25psig)の圧力(ゲージ圧)において、塔頂温度は約23℃であった。
【0026】
実施例2
以下の実施例では、2リットルリボイラー、内径2.54cm(1インチ)×長さ122cm(4フィート)のヘリコイル充填塔、およびシェルアンドチューブ式コンデンサー(多管式凝縮器)で構成される、Monel蒸留塔を使用した。この塔には、温度、圧力および差圧の発信機が装着されていた。約51重量パーセントのHCFC−244bbおよび約49重量パーセントのHCFO−1233xfからなる有機物の混合物と、3.2重量%のHFを含有する1000gの原料を蒸留装置に装填した。混合物は均一であった。蒸留を、4.83×10から2.00×10Pa(7から29psig)の圧力(ゲージ圧)で実施した。留出物サンプルの分析は、1.24×10Pa(18psig)を超える圧力(ゲージ圧)で一定の結果を示した。GCにより測定された有機組成物は、HCFC−244bbが約21から23GC面積%、HCFO−1233xfが約79から77GC面積%であり、留出物中のHF濃度は、0.1NのNaOHによる滴定を用いて、約25から29重量%HFであることが分かった。サンプル中のHF量の急激な減少が発生し、HCFC−244bb/HCFO−1233xf/HFの三成分系の共沸混合物を示唆した。
【0027】
実施例3
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)および2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)(50/50%)の混合物とHFを含む三成分系組成物をブレンドして、異なる組成の三成分系不均一共沸混合物を形成した。混合物の蒸気圧を、約0、25、および61℃で測定し、以下の結果が認められた。表1は、約0℃、25℃および61℃の一定温度における、HCFO−1233xf、HCFC−244bbおよびHFの蒸気圧測定を、種々の重量パーセントのHFを有する組成物の関数として示すものである。このデータは、この範囲のフッ化水素濃度では、このHCFO−1233xf/HCFC−244bb/HF混合物が不均一であることも示した。
【0028】
【表1】

【0029】
このデータは、HCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)およびHFの三成分系混合物の蒸気圧は、HCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)の蒸気圧およびHF単独の蒸気圧、すなわち、表1の最初の列および最後の列に示されるように、HFが0.0重量%でHCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)が100.0重量%の場合、ならびにHCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)が0.0重量%で、HFが100.0重量%の場合の蒸気圧より高いのでこの混合物が共沸混合物または共沸混合物様であることも示す。
【0030】
実施例4
三成分系(HCFO−1233xf/HCFC−244bb)(50/50%)/HF混合物の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、気液液平衡(VLLE;Vapor-Liquid-Liquid equilibrium)実験によっても確認された。13gのHCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)を、7.8gのHFと混合して、23℃で不均一混合物(目視観察)を形成した。蒸気組成物をサンプリングした。結果は、蒸気組成が23℃で約18±2重量%HFであることを示した。
【0031】
実施例5
三成分系(HCFO−1233xf/HCFC−244bb)(50/50%)/HF混合物の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、気液液平衡(VLLE)実験によっても確認された。38.9gのHCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)を、37.3gのHFと混合して、23℃で不均一混合物(目視観察)を形成した。蒸気組成物および有機物が多い層をサンプリングした。結果は、蒸気組成が23℃で約14±2重量%HFであり、実施例4に記載した他の2相領域実験で得られた結果と一致することを示す。
【0032】
実施例6
三成分系(HCFO−1233xf/HCFC−244bb)(50/50%)/HF混合物の共沸組成物または共沸混合物様組成物は、気液液平衡(VLLE)実験によっても確認された。9gのHCFO−1233xf/HCFC−244bb(50/50%)を、15gのHFと混合して、23℃で均一混合物(目視観察)を形成した。蒸気組成物をサンプリングした。その結果から、蒸気組成物は23℃で約31±2重量%HFであることが示される。この観測結果は、単一相(均一)領域の場合の実施例1および2と一致する。
【0033】
本発明は、好ましい実施形態を参照して、詳細に説明および記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更および改良を実施できることが、本技術分野の通常の当業者に容易に理解されよう。請求項は、開示された実施形態、上記で検討したこれらの代替、およびこれらに対する全ての等価物を網羅すると解釈されることを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンから実質的になる、三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物。
【請求項2】
フッ化水素約1から約50重量パーセントと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの混合物から実質的になる有機部分約50から約99重量パーセントとから実質的になる、共沸組成物または共沸混合物様組成物であって、前記有機部分の混合物中の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、前記有機部分の約50から約90重量パーセントの量で存在し、前記有機部分の混合物中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが、前記有機部分の約10から約50重量パーセントの量で存在し、前記共沸組成物または共沸混合物様組成物が、約1.03×10Pa(15psia)から約7.45×10Pa(108psia)の圧力で約0℃から約61℃の沸点を有する、前記共沸組成物または共沸混合物様組成物。
【請求項3】
共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成する方法であって、
フッ化水素約1から約50重量パーセントと、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの混合物から実質的になる有機部分約50から約99重量パーセントとから実質的になるブレンドであり、前記有機部分の混合物中の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、前記有機部分の約50から約90重量パーセントの量で存在し、前記有機部分の混合物中の2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンが、前記有機部分の約10から約50重量パーセントの量で存在するブレンドを形成することを含み、これにより約1.03×10Pa(15psia)から約7.45×10Pa(108psia)の圧力で約0℃から約61℃の沸点を有する共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成することを含む、前記方法。
【請求項4】
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよびフッ化水素の共沸組成物または共沸混合物様組成物をフッ素化反応器に供給する工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの共沸組成物または共沸混合物様組成物から、圧力スイング蒸留により分離する工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび少なくとも1種の他の成分を含有する混合物から除去するための方法であって、
フッ化水素を前記混合物に十分な量で添加して、フッ化水素、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を形成すること、および、その後に前記三成分系の共沸組成物または共沸混合物様組成物を少なくとも1種の他の成分から分離することを含む、前記方法。

【公開番号】特開2009−249632(P2009−249632A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−93153(P2009−93153)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】