説明

2−ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法

本発明は、2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
【化1】

[式中、Xは塩素または臭素であり;
R2は水素、メチルまたはエチルであり;
R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]
の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を製造する方法に関し、該方法は、式II
【化2】

[式中、R2はメチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させることを含む。
【背景技術】
【0002】
2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体は、農薬活性化合物または殺微生物剤の調製のための重要な中間物質であり、例えばストロビルリン合成において使用される。例えば、ストロビルリン系のジモキシストロビン(dimoxystrobin)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)およびオリサストロビン(orysastrobin)は、これらの化合物を用いることにより容易に製造することができる。
【0003】
用語「ジモキシストロビン」、「トリフロキシストロビン」、「クレソキシムメチル」および「オリサストロビン」は、特定の農薬活性化合物または殺微生物剤のISO名であって、医薬活性物質のINN名と同様のものである。ISO名は、ある特定の構造を有する化合物を明確に指定する。化合物のISO名、それらの構造およびそれらのIUPAC名、CAS名は、それぞれ、例えば、http://www.alanwood.net/pesticides/、または“The Pesticide Manual”, 14th Edition, 2006 The British Crop Production Councilに記載されている。個々の物質はさまざまな商品名で市販されている。
【0004】
さらに、2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体は、殺虫活性を有する化合物である、置換p-トリフルオロメチルフェニルエーテルの合成における中間物質としても使用することができる(WO 2007/000098 A1およびCN 101205187 A)。
【0005】
近年公開された2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法において、式A
【化3】

のフタリドに基づく経路が説明されている(概略はCN 101139308に記載されており、合成の各工程の詳細は、例えばDE 10007695 A、DE 19959066、WO 01/42182、WO 01/42185、EP 0676389 A、EP 0619300 A、WO 96/16023、EP 0493711A、EP 254 426 AおよびEP 253213 Aに開示されている)。合成は、式Aのフタリドを>100℃の温度で塩化チオニルにより開環する工程およびそれに続く毒性のシアン化ナトリウムとの反応を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2007/000098 A1
【特許文献2】CN 101205187 A
【特許文献3】CN 101139308
【特許文献4】DE 10007695 A
【特許文献5】DE 19959066
【特許文献6】WO 01/42182
【特許文献7】WO 01/42185
【特許文献8】EP 0676389 A
【特許文献9】EP 0619300 A
【特許文献10】WO 96/16023
【特許文献11】EP 0493711A
【特許文献12】EP 254 426 A
【特許文献13】EP 253213 A
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】http://www.alanwood.net/pesticides/
【非特許文献2】“The Pesticide Manual”, 14th Edition, 2006 The British Crop Production Council
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、効率がよく、かつ/または工程の少ない、大規模合成に適した製造経路、特に2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造経路を提供することであった。
【0009】
本発明のさらなる目的は、近年の既存の経路に使用されるものよりも毒性の少ない遊離体(educts)(出発物質)を使用することができる製造経路を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的は、3-イソクロマノンを出発物質とする、式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法により解決された。
【0011】
農薬合成の中間物質として有用な2-(クロロ-またはブロモメチル)フェニルアセテートのイソクロマノンを出発物質とする合成については、当技術分野において言及されている(WO 97/48671を参照されたい)。しかしながら、そこに記載された方法は本発明の特定の方法を開示していない。
【0012】
WO 93/07116には、イソクロマノンを出発物質とする2-ヒドロキシメチルフェニル酢酸誘導体の合成が記載されている。
【0013】
本発明は、式I
【化4】

[式中、Xは塩素または臭素であり;
R2は水素、メチルまたはエチルであり;
R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]
の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を製造する方法に関し、該方法は、式II
【化5】

[式中、R2は水素、メチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
i-プロピルという用語は、イソプロピル(-CHMe2)と同一であると理解される。n-プロピルは、直鎖プロピル基であると理解される。
【0015】
式Iの化合物は、E/Z異性体の混合物である。好ましくは、E異性体が、≧85%のE異性体および≦15%のZ異性体の割合で、より好ましくは≧90%のE異性体および≦10%のZ異性体の割合で、最も好ましくは≧95%のE異性体および≦5%のZ異性体の割合で存在する。
【0016】
好ましくは、R1はメチルまたはエチルであり、より好ましくはメチルである。好ましくは、Xは塩素である。好ましくは、R2はメチルまたはエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0017】
下記の表Iに記載される式Iの化合物が特に好ましい。
【表1】

【0018】
表Iの化合物の中では、化合物I-1、I-2、I-3およびI-4が好ましく、I-1および1-2が最も好ましい。
【0019】
好ましい組合せを達成するために、当業者は、以下に概要を示す通りの各遊離体(出発物質)を使用するであろう。
【0020】
好適なハロゲン化チオニルは、例えば、塩化チオニルまたは臭化チオニルである。好適なハロゲン化オキサリルは塩化オキサリルまたは臭化オキサリルである。好適な混合物は、塩化チオニルと塩酸との混合物、臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化オキサリルと塩酸との混合物、臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物である。ハロゲン化チオニル(またはハロゲン化オキサリル)とそれぞれの酸との比は、1000:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:10、より好ましくは1:3〜1:5である。
【0021】
好ましいハロゲン化剤は、ハロゲン化チオニルまたはハロゲン化チオニルと塩酸もしくは臭化水素酸との混合物である。塩素化には、塩化チオニル、または塩化チオニルと塩酸との混合物が好ましい。臭素化には、臭化チオニル、または臭化チオニルと臭化水素酸との混合物が好ましい。
【0022】
ハロゲン化剤がハロゲン化チオニルまたはハロゲン化オキサリルである場合、式IIの化合物とハロゲン化剤とのモル比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:3〜1:15、最も好ましくは1:5〜1:10である。
【0023】
ハロゲン化チオニル(またはハロゲン化オキサリル)とそれぞれの酸との混合物を使用する場合、式IIの化合物とハロゲン化チオニル(またはハロゲン化オキサリル)とのモル比は、1:1〜1:20、より好ましくは1:3〜1:15、最も好ましくは1:3〜1:5である。
【0024】
好ましくは、式IIの化合物とアルコールとのモル比は、1:10〜1:100、好ましくは1:10〜1:60、より好ましくは1:20〜1:50である。
【0025】
場合により、反応混合物は、さらに不活性有機溶媒を含んでもよい。有用な溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびベンゾトリフルオリド;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ペンタン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素;脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサンおよびシクロペンタン;エーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチルエーテルおよびジイソプロピルエーテル;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。好ましい溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。
【0026】
反応の圧力は、通常0〜100 barである。反応を大気圧でおこなうことが好ましい。反応を大気圧でおこなう場合、反応温度は、通常-20〜100℃、好ましくは-10〜40℃、より好ましくは-10〜30℃である。
【0027】
式IIにおいてR2がメチルまたはエチルである化合物は、式IV
【化6】

のオキシムを、当業者に公知の方法により、例えば、不活性有機溶媒中でアルキル化剤および塩基と反応させることにより得ることができる。
【0028】
好適なアルキル化剤は当業者に周知である。好適なアルキル化剤の例は、硫酸ジメチル、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル、ジアゾメタンおよび硫酸ジエチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、塩化エチルである。好ましいアルキル化剤は、硫酸ジメチルおよびヨウ化メチルであり、より好ましくは硫酸ジメチルである。
【0029】
好適な塩基は当業者に周知である。好適な塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい塩基は炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムであり、より好ましくは炭酸カリウムである。有用な溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびベンゾトリフルオリド;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ペンタン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素;脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサンおよびシクロペンタン;エーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチルエーテルおよびジイソプロピルエーテル;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。好ましい溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。高い収率を達成するために、溶媒としてトルエンを使用することが好ましい。
【0030】
反応の圧力は通常0〜6 barである。反応を大気圧でおこなうことが好ましい。反応を大気圧でおこなう場合、反応温度は通常0〜100℃、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜25℃である。
【0031】
本発明はまた、本明細書に記載した通りの式I [式中、Xは塩素または臭素であり;R2は水素、メチルまたはエチルであり;R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法であって、
該製造方法が、式III:R1-OH [式中、R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、式II [式中、R2はメチルまたはエチルである]のアルキルオキシムを開裂させることを含み、
該製造方法が、さらに、式IVのオキシムを反応させて式IIのアルキルオキシムを得る本明細書に記載の方法を含み、
該方法において、式II [式中、R2はメチルまたはエチルである]の化合物は、式IVのオキシムを不活性有機溶媒中でアルキル化剤および塩基と反応させることにより得られ、ここで、不活性有機溶媒は好ましくはトルエンである、
前記製造方法を含む。
【0032】
式IVの化合物は、
a) 式V
【化7】

の3-イソクロマノンを、アルコールおよび塩基の存在下でニトロソ化剤と反応させ、
b) 反応が完了した後に、pHをpH≦3、好ましくはpH≦1に調節する
ことを含む方法により得ることができる。
【0033】
好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールまたはi-プロパノールであり、より好ましくはメタノールまたはエタノール、最も好ましくはメタノールである。
【0034】
好適な塩基としては、アルコラートが挙げられるが、これに限定されない。好ましいアルコラートは、Na+、Li+またはK+アルコラートであり、好ましくは対応するNa+またはK+アルコラート、最も好ましくはNa+アルコラートである。
【0035】
より好ましくは、アルコラートはアルコールに対応する。好ましい実施形態は、
Na+またはK+CH3O-/ HOCH3
Na+またはK+CH3CH2O-/ HOCH2CH3
Na+またはK+CH3CH2CH2O-/ HOCH2CH2CH3
Na+またはK+(CH3)2CH2O-/ HOCH2(CH3)2
であり、より好ましくは、
Na+またはK+CH3O-/ HOCH3
Na+またはK+CH3CH2O-/ HOCH2CH3
であり、さらに好ましくは、
Na+またはK+CH3O-/ HOCH3
であり、最も好ましくは、
Na+CH3O-/ HOCH3
である。
【0036】
pHの調節は、0以下のpKaを有する好適な酸により、好ましくは好適な鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸)により、より好ましくは塩酸によりおこなう。
【0037】
好適なニトロソ化剤は、例えば、亜硝酸アルキル、例えば、亜硝酸n-ブチル、亜硝酸tert-ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸n-ペンチルおよび亜硝酸イソペンチルである。
【0038】
反応の圧力は、通常0〜6 barである。反応を大気圧でおこなうことが好ましい。反応を大気圧でおこなう場合、反応温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。
【0039】
本発明はまた、本明細書に記載される通りの式I [式中、Xは塩素または臭素であり;R2は水素、メチルまたはエチルであり;R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法であって、
該製造方法が、式III:R1-OH [式中、R1はメチル、エチル、i-プロピルまたはn-プロピルである]のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、式II [式中、R2はメチルまたはエチルである]のアルキルオキシムを開裂させることを含み、
該製造方法が、さらに、式Vの3-イソクロマノンを反応させて式IVのオキシムを得る本明細書に記載の方法を含み、該方法において、
a) 式Vの3-イソクロマノンをアルコールおよび塩基の存在下でニトロソ化剤と反応させ、
b) 反応が完了した後に、pHをpH≦3、好ましくはpH≦1に調節する、
前記製造方法を含む。
【0040】
本発明はまた、式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造のための、式Vの3-イソクロマノンの使用を含む。本発明の成果は、式Vの3-イソクロマノンを出発物質とする、本明細書に定義した通りの(すなわち、メトキシイミノ基を有する)式Iの化合物の合成経路を提供したことである。
【0041】
WO 97/48671には、式Vの3-イソクロマノンが開裂して式I’
【化8】

の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を形成することが開示されている。WO 97/48671に開示される式I’の化合物には、本発明の式Iの化合物に特徴的なメトキシイミノ基が存在しない。WO 97/48671は、式I’の化合物が、一般的な構造が与えられているストロビルリン系殺菌剤の合成に好適であると主張しているが、WO 97/48671には化合物にメトキシイミノ基を導入する方法が開示されていない。
【0042】
式I’の化合物にオキシム化反応をおこなった場合、これにより目的とするオキシムは十分な収率では生成せず、複雑な混合物が得られるのみで、そのためアルキル化工程に進むことは不可能である。したがって、WO 97/48671は、3-イソクロマノンを出発物質として本発明の式Iの化合物を得るための方法を当業者に開示しているとは言えない。
【0043】
式Vの3-イソクロマノンは他の官能基を持たないため、容易に開裂する。驚くべきことに、本発明の式IIの化合物が、反応性の置換基を有するにもかかわらず、開裂して式Iの化合物を生成することが見いだされた。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明は、式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造のための式Vの3-イソクロマノンの使用であって、式II
【化9】

[式中、R2はメチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させることを含む、前記使用を含む。
【0045】
さらなる実施形態において、式IにおいてR2がメチルまたはエチルである2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体は、式IにおいてR2が水素である2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を出発物質として、式IにおいてR2が水素である化合物を不活性有機溶媒中でアルキル化することにより、製造することができる。好適なアルキル化剤は当業者に周知である。好適なアルキル化剤の例は、硫酸ジメチル、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル、ジアゾメタンおよび硫酸ジエチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、塩化エチルである。好ましいアルキル化剤は、硫酸ジメチルおよびヨウ化メチルであり、より好ましくは硫酸ジメチルである。
【0046】
好適な塩基は当業者に周知である。好適な塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい塩基は炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムであり、より好ましくは炭酸カリウムである。有用な溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびベンゾトリフルオリド;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ペンタン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素;脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキサンおよびシクロペンタン;エーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチルエーテルおよびジイソプロピルエーテル;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。好ましい溶媒としては、芳香族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン;脂肪族(ハロゲン化)炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンおよび四塩化炭素、ならびに極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが挙げられる。これらの溶媒の混合物も使用することができる。
【0047】
反応の圧力は通常0〜6 barである。反応を大気圧でおこなうことが好ましい。反応を大気圧でおこなう場合、反応温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。
【0048】
本発明はまた、式IにおいてR2がメチルまたはエチルである2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法であって、該方法が、
a) 式Vの化合物を上記の条件下でニトロソ化剤と反応させ、得られた式IVのオキシムを上記の条件下でアルキル化し、得られた式IIのアルキルオキシムを上記の条件下で開裂させること、または
b) 式Vの化合物を上記の通りにニトロソ化剤と反応させ、得られた式IVのオキシムを上記の通りに開裂させた後、得られた式IにおいてR2が水素である2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を上記の通りにアルキル化すること
を含む、前記方法を含む。
【0049】
本発明はさらに、ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、クレソキシムメチル、オリサストロビンからなる群より選択されるストロビルリン系殺菌剤の製造方法であって、該方法が、
(1) 式IIIのアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、式IIのアルキルオキシムを開裂させ;
(2) 得られた式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を反応させてストロビルリンまたはそれぞれのストロビルリン前駆体を得る
ことを含む、前記方法を含む。
【0050】
2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を出発物質とする上記のストロビルリンの製造方法は一般に当業者に公知である。
【0051】
例えば、オリサストロビンは、WO 97/15552に記載される方法に従って、式Iの化合物を用いて調製することができる。当業者は、本発明の開示を用いて、この合成の修正法を容易に使用することができる。
【0052】
ストロビルリン系のクレソキシムメチルおよびジモキシストロビンは、WO 2008/125592 A1に記載される方法に従って、式Iの化合物を用いて、それぞれのフェノール誘導体による置換反応により調製することができる。当業者は、本発明の開示を用いて、この合成の修正法を容易に使用することができる。
【0053】
ストロビルリン系のトリフロキシストロビンは、DE19508573 AおよびCN 1793115 Aに記載される方法に従って、式Iの化合物を用いて、それぞれの3-トリフルオロメチルアセトフェノンオキシムによる置換により調製することができる。当業者は、本発明の開示を用いて、この合成の修正法を容易に使用することができる。
【0054】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これにより限定されない。
【実施例】
【0055】
実施例1:イソクロマノンのニトロソ化によるイソクロマン-3,4-ジオン4-オキシム(4-(ヒドロキシイミノ)イソクロマン-3-オンと同一である)の合成
イソクロマノン(純度99%、149.7g、1.00 mol)のメタノール(280 mL)中の懸濁液に、14〜16℃で90分間かけてナトリウムメトキシド(30%メタノール溶液、270.0 g、1.50 mol)を滴加し、得られた混合物を15℃で90分間攪拌した。この混合物に、9〜13℃で6.5時間かけて亜硝酸イソブチル(純度94%、137.1 g、1.25 mol)を加え、混合物を8℃で一晩攪拌した。変換をHPLCによりモニターした。反応が完了した後、4 M塩酸を加えてpH<1に調節し、次いで、得られた懸濁液を4℃で一晩攪拌した。濾過により粗生成物を集めて、冷蒸留水(2×500 mL)により洗浄し、45℃以下で減圧乾燥した。イソクロマン-3,4-ジオン-4-オキシムが無色の固体として得られた(145.9 g、90.4 HPLC面積%、収率74%)。
【0056】
1H-NMR (DMSO-d6):δ= 13.3 (s, 1H), 8.34 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.54-7.41 (m, 3H), 5.46 (s, 2H) ppm; 13C-NMR (DMSO-d6):δ= 162.3, 140.2, 133.2, 130.2, 129.0, 127.9, 125.4, 125.0, 68.3 ppm; mp = 179〜182℃。
【0057】
実施例2:イソクロマン-3,4-ジオン4-オキシムのメチル化によるイソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)(4-(メトキシイミノ)-イソクロマン-3-オンと同一である)の合成
イソクロマン-3,4-ジオン4-オキシム(90.4 HPLC面積%、145.8 g、0.74 mol)および炭酸カリウム(153.4 g、1.11 mol)のトルエン(1000 mL)中の懸濁液を室温で1時間攪拌した後、硫酸ジメチル(141.4 g、1.11 mol)を26℃で2.5時間かけて滴加した。得られた混合物を室温で24時間攪拌した。反応が完了した後、攪拌しながら混合物に蒸留水(1000 mL)を加えた。有機相を分離し、蒸留水(500 mL)により洗浄し、30〜50 mbarおよび50℃以下で減圧乾燥した。イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)が明るい橙色の固体として得られた(160.1 g、88.7 HPLC面積%、定量的収率、ジアステレオマー比 = 58:42)。
【0058】
1H-NMR (CDCl3,内部標準としてTMS)(主要な異性体):δ= 8.27-8.24 (m, 1H), 7.48-7.40 (m, 2H), 7.31-7.27 (m, 1H), 5.35 (s, 2H), 4.22 (s, 3H) ppm; 13C-NMR (CDCl3,内部標準としてTMS)(主要な異性体):δ= 162.2, 140.5, 133.0, 131.0, 130.0, 128.4, 125.4, 124.8, 69.1, 65.5 ppm.
【0059】
実施例3:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)のメタノール溶液への塩化チオニルの添加による(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(CLMO)の合成
イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)(88.7 HPLC面積%、160 g、0.74 mol、ジアステレオマー比 = 58:42)のメタノール(890 g、27.74 mol)溶液に、15〜20℃で5時間かけて塩化チオニル(889.5 g、7.40 mol)を滴加し、混合物を室温(20〜25℃)で一晩攪拌した。変換をHPLCによりモニターした。反応が完了した後、溶媒を30〜50 mbarおよび55℃以下で減圧蒸発させた。得られた残渣(216 g)をトルエン(500 mL)に溶解し、蒸留水(300 mL)を加え、混合物を室温で攪拌した。相を分離し、有機相を30〜50 mbarおよび55℃以下で減圧蒸発させて、粗生成物を無色のオイルとして得た(179 g、56.7 HPLC重量% CLMO、収率54%)。粗生成物をメタノール(89 g)から再結晶して、(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステルCLMOの無色の結晶を得た(64.7g、94.7 HPLC重量%、収率34%)。
【0060】
1H-NMR (CDCl3, 内部標準としてTMS):δ= 7.50-7.47 (m, 1H), 7.43-7.35 (m, 2H), 7.18-7.14 (m, 1H), 4.42 (s, 2H), 4.03 (s, 3H), 3.85 (s, 3H) ppm; 13C-NMR (CDCl3, 内部標準としてTMS):δ= 163.2, 149.0, 135.5, 130.2, 129.8, 129.6, 128.6, 128.4, 63.8, 53.0, 44.0 ppm.
【0061】
実施例4:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)へのHClメタノール溶液および塩化チオニルの添加による(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(CLMO)の合成
新しく調製した気体HCl (21 g)のメタノール(20 g)溶液(気体HClを-10℃で挿入した)に、-10℃で、イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)(89.5 HPLC面積%、14.8 g、0.069 mol)のメタノール(82.9 g)溶液を滴加した。添加が完了した後、塩化チオニル(4.6 g、38 mmol)を0℃未満で滴加し、得られた混合物を一晩攪拌した。HPLCにより、>97% HPLC面積%のイソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)の変換が示された。溶液は、HPLC面積%で純度72%の(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステルを含んでいた。後処理は実施例3と同様にして実施することができる。
【0062】
実施例5:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)のエタノール溶液への塩化チオニルの添加による(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸エチルエステルの合成
合成は、溶媒としてエタノールを使用して、実施例3に記載された方法により実施した。
【0063】
1H-NMR (CDCl3、内部標準としてTMS):δ= 7.51-7.47 (m, 1H), 7.43-7.34 (m, 2H), 7.18-7.14 (m, 1H), 4.44 (s, 2H), 4.33 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.04 (s, 3H), 1.32 (t, J = 7.1 Hz, 3H) ppm. 13C-NMR (CDCl3, 内部標準としてTMS):δ= 162.8, 149.3, 135.5, 130.4, 129.7, 129.6, 128.6, 128.3, 63.8, 62.2, 44.0, 14.1 ppm.
【0064】
実施例6:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)へのHClエタノール溶液および塩化チオニルの添加による(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸エチルエステルの合成
合成は、溶媒としてエタノールを使用して、実施例4に記載された方法により実施した。
【0065】
実施例7:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)への臭化チオニルの添加による(2-ブロモメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(BRMO)の合成
イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)(5.6 g、0.028 mol)のメタノール(27 g)溶液に、10〜20℃で1時間かけて臭化チオニル(45.4 g、0.22 mol)を滴加し、得られた混合物を室温で一晩攪拌した。反応をHPLCによりモニターした。混合物を減圧濃縮すると粗残渣(14.2 g)が得られた。少量の残渣(3.2 g)をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、(2-ブロモメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステルを無色の固体として得た(0.8 g)。
【0066】
1H-NMR (CD2Cl2, 内部標準としてTMS):δ= 7.50-7.46 (m, 1H), 7.43-7.35 (m, 2H), 7.16-7.12 (m, 1H), 4.34 (s, 2H), 4.02 (s, 3H), 3.83 (s, 3H) ppm; 13C-NMR (CD2Cl2, 内部標準としてTMS):δ= 163.4, 149.2, 136.3, 131.1, 130.5, 130.1, 129.2, 128.8, 64.1, 53.2, 31.3 ppm.
【0067】
実施例8:イソクロマン-3,4-ジオン4-(O-メチル-オキシム)のメタノールおよびジクロロメタン中の溶液への塩化チオニルの添加による(2-クロロメチル-フェニル)-ヒドロキシイミノ-酢酸メチルエステルの合成
イソクロマン-3,4-ジオン4-オキシム(純度98%、3.5 g、0.02 mol)のメタノール(35 g)およびジクロロメタン(32 g)中の溶液に、20〜30℃で、塩化チオニル(24.0 g、0.2 mol)を滴加した。得られた混合物を室温で3日間攪拌した。反応をHPLCによりモニターした。反応が完了した後、混合物を減圧濃縮し、粗残渣を得た(5.5 g)。この残渣の一部(5.1 g)をMTBEに溶解し、水により洗浄した。混合物を濃縮し、得られた残渣をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製して、(2-クロロメチル-フェニル)-ヒドロキシイミノ-酢酸メチルエステルを無色の固体として得た(3.4 g)。
【0068】
実施例9:(2-クロロメチル-フェニル)-ヒドロキシイミノ-酢酸メチルエステルのメチル化による(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(CLMO)の合成
合成は、実施例2に記載される方法に従って実施した。
【0069】
実施例10:(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(CLMO)からのオリサストロビンの合成
(2E,3Z,4E)-ペンタン-2,3,4-トリオンO2,O3-ジメチルトリオキシムおよびその(2E,3Z,4Z)-異性体の溶液(DMF中36.8%)(101.7g、0.200 mol)を、20℃で、ナトリウムメトキシドの溶液(メタノール中30%)(39.5 g、0.219 mol)により処理した。20℃で15分置いた後、メタノールを40℃で減圧蒸留により除去した。
【0070】
次に、(2-クロロメチル-フェニル)-[(E)-メトキシイミノ]-酢酸メチルエステル(CLMO)の溶液(DMF中45%)(113.4g、0.200mol)を、40〜50℃で15分以内に残渣に加えて、反応混合物を50℃で3時間攪拌した。アミド化工程のために、メチルアミン(18.6 g、0.600 mol)のメタノール(65.7 g)溶液を混合物に加えて、得られた反応混合物を50℃で3時間攪拌した。次に、メチルアミンおよびメタノールを50℃で減圧蒸留により除去した。トルエンにより抽出し、水により洗浄した後、トルエンを蒸留により除去して74.9 gの粗残渣を得た。粗残渣を50℃でメタノール(248 g)および水(186 g)の混合物に溶解した後、-5℃に冷却して結晶化させた。得られた結晶を濾過した後、メタノール/水混合物により洗浄し、次いで水によりすすいだ。固体を70℃で減圧乾燥して、48.5 gの固体を得た。これは95%のオリサストロビンのEEE-異性体および4.5%のそのEEZ-異性体を含んでいた。
【0071】
1H-NMR (CD2Cl2, 内部標準としてTMS)(主要な異性体):δ= 7.41-6.95 (m, 4H), 5.03 (s, 2H), 3.89 (s, 3H), 3.88 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 2.76 (d, J = 5.0 Hz, 3H), 1.97 (s, 3H), 1.86 (s, 3H) ppm; 13C-NMR (CD2Cl2, 内部標準としてTMS)(主要な異性体):δ= 163.0, 153.7, 152.2, 151.5, 150.7, 136.0, 130.8, 129.2, 129.2, 129.2, 128.0, 76.0, 63.3, 63.2, 61.9, 26.2, 14.7, 10.3 ppm; mp = 95〜96℃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、Xは塩素または臭素であり;
R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピルであり;
R2は水素、メチルまたはエチルである]
の2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を製造する方法であって、該方法が、式II
【化2】

[式中、R2はメチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1は上に定義した通りである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させることを含む、前記方法。
【請求項2】
R1がメチルまたはエチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン化剤がハロゲン化チオニルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化剤が、塩化チオニルと塩酸との混合物、または臭化チオニルと臭化水素酸との混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式IIにおいてR2がメチルまたはエチルであるアルキルオキシムの製造方法であって、該方法が、式IV
【化3】

のオキシムを不活性有機溶媒中でアルキル化剤および塩基と反応させることを含み、ここで、不活性有機溶媒がトルエンである、前記方法。
【請求項6】
式IVのオキシムを反応させて式IIのアルキルオキシムを得るための請求項5に記載の方法をさらに含む、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項7】
式IVのオキシムの製造方法であって、該方法が、
a) 式V
【化4】

の3-イソクロマノンを、アルコールおよび塩基の存在下でニトロソ化剤と反応させ;
b) 反応が完了した後に、pHをpH≦3に調節する
ことを含む、前記方法。
【請求項8】
式Vの3-イソクロマノンを反応させて式IVのオキシムを得るための請求項7に記載の方法をさらに含む、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項9】
式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を製造するための、式Vの3-イソクロマノンの使用。
【請求項10】
式II
【化5】

[式中、R2はメチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させることを含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
式IにおいてR2がメチルまたはエチルである2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を製造する方法であって、式IにおいてR2が水素である化合物を不活性有機溶媒中でアルキル化剤と反応させることを含む、前記方法。
【請求項12】
式Iの2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体の製造方法であって、該方法が、
a)請求項7に従って式Vの化合物をニトロソ化剤と反応させ、請求項5に記載される通りに得られた式IVのオキシムをアルキル化し、請求項1〜4のいずれか1項に記載される通りに得られた式IIのアルキルオキシムを開裂させること、または
b)請求項7に記載される通りに式Vの化合物をニトロソ化剤と反応させ、得られた請求項5の式IVのオキシムを請求項1〜4のいずれか1項に記載される方法に従って開裂し、次いで得られた請求項1の式IにおいてR2が水素である2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体をアルキル化して、請求項1の式IにおいてR2がメチルまたはエチルである2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を得ること
を含む、前記方法。
【請求項13】
ジモキシストロビン、トリフロキシストロビン、クレソキシムメチル、オリサストロビンからなる群より選択されるストロビルリン系殺菌剤の製造方法であって、該方法が、
(1a) 式II
【化6】

[式中、R2はメチルまたはエチルである]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させること;または
(1b) 式II
【化7】

[式中、R2は水素である]
のアルキルオキシムを、式III
R1-OH (III)
[式中、R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはi-プロピルである]
のアルコールと、ハロゲン化チオニル、ハロゲン化オキサリル、ならびに臭化チオニルと臭化水素酸との混合物、塩化チオニルと塩酸との混合物、または塩化オキサリルと塩酸との混合物、および臭化オキサリルと臭化水素酸との混合物からなる群より選択されるハロゲン化剤との存在下で、開裂させ;次いで得られた2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体をアルキル化すること;
(2) 得られた2-ハロゲノメチルフェニル酢酸誘導体を反応させてストロビルリンを得ること
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2012−516868(P2012−516868A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548656(P2011−548656)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051144
【国際公開番号】WO2010/089267
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】