説明

2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩

本発明は、L−酒石酸塩一水和物及び無水物等の新規(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩に関する。この塩は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬として有用である。他の態様において、本発明は、これらの塩の治療方法における使用及び本発明の塩を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L−酒石酸塩一水和物及び無水物等の新規(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩に関する。この塩は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬として有用である。
【0002】
他の態様において、本発明は、これらの塩の治療方法における使用及び本発明の塩を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンは、WO97/30997(NeureSearch AIS)に開示されている。そこでは、クエン酸塩が調製された(実施例15)。
【0004】
しかしながら、商業用途にとっては、安定性、溶解性、非吸湿性、生体利用効率及び明確な融点及び再現可能な結晶形等の優れた取扱い適性の最適な組み合わせを有する生理学的に許容される塩を所有することが重要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その第1の態様において、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩の無水及び水和形態から選択される塩を提供する。
【0006】
本発明は、その第2の態様において、治療有効量の本発明の塩を、少なくとも1つの医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明は、さらなる態様において、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応する、ヒトを含む哺乳動物の病気、障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のための医薬組成物の製造のための本発明の塩の使用を提供する。
【0008】
本発明は、さらなる態様において、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応する、ヒトを含む動物の生体の病気、障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のための方法に関するものであり、その方法は、それを必要としている前記動物の生体に治療有効量の本発明の塩を投与するステップを含む。
【0009】
本発明のその他の目的は、当該技術に熟達した者には以下の詳細な説明及び実施例から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩
本発明は、その第1の態様において、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩の無水及び水和形態から選択される塩を提供する。
【0011】
1つの実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩の無水及び水和形態から選択される。
【0012】
2番目の実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩一水和物である。
【0013】
さらなる実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩の無水の形態である。
【0014】
さらなる実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態II)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする。
【表1】

【0015】
さらなる実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態III)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする。
【表2】

【0016】
さらなる実施形態において、その塩は、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態IV)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする。
【表3】

【0017】
上記の実施形態の任意の2つ以上の組み合わせは、本発明の範囲内とみなされる。
【0018】
水和物の形態
本発明の塩は、無水の形態又は水和物の形態で提供することができる。水和物の形態としては、一水和物、二水和物、半水和物、三水和物、四水和物などが挙げられる。
【0019】
標識化合物
本発明の塩は、それらの標識化された形又は非標識の形で使用することができる。本発明において、「標識」とは、前記塩の容易な定量的検出を可能にする重要な塩に対するマーカーを結合することを意味する。
【0020】
本発明の標識化した塩は、診断ツール、放射性トレーサ、又はさまざまな診断方法におけるモニタリング剤、及びインビボでのレセプター画像として役立ち得る。
【0021】
その本発明の標識塩は、標識として少なくとも1つの放射性核種を好ましくは含有する。陽電子放出核種は、使用の最大の候補である。本発明において、放射性核種はH(重水素)、H(三重水素)、13C、及び14Cから好ましくは選択する。
【0022】
調製方法
本発明の塩は、化学合成の従来法、例えば実施例に記載されているもの、により調製することができる。本出願に記載されている方法のための出発材料は既知であるか又は市販の化学物質から従来法により容易に調製することができる。
【0023】
さらに、本発明の1つの塩は、従来法を用いて本発明の別の塩に転化することができる。
【0024】
本明細書に記載されている反応の最終生成物は、従来技術、例えば、抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどにより単離することができる。
【0025】
生物活性
本発明の塩は、例えばWO97/30997に記載されているようなシナプトソーム中のモノアミン類のドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込みを阻害するそれらの能力について試験することができる。これらの試験において観察されるバランスのとれた活性に基づいて、本発明の塩は、病気若しくは障害若しくは状態が、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応するヒトを含む哺乳動物の病気若しくは障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のために役立つと考えられる。
【0026】
特別の実施形態において、本発明の塩は、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続くうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、一般的な病状による気分障害、薬物誘発性気分障害、偽痴呆、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖のないパニック障害、広場恐怖のあるパニック障害、パニック障害の経歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、痴呆、高齢の痴呆、老人性痴呆症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群痴呆コンプレックス、高齢化における記憶機能障害、特定恐怖症、対人恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、薬物乱用、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、飲酒癖、アルコール依存症、疼痛、慢性疼痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、片頭痛の痛み、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、うつ病が伴う疼痛、線維筋痛、関節炎、変形性関節症、関節リューマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性腸痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、脳卒中後痛、薬剤誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、黄体期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、緊張性尿失禁、急迫性尿失禁、夜尿、性機能障害、早漏、勃起不全、勃起障害、摂食障害、拒食症、睡眠障害、自閉症、無言症、抜毛癖、発作性睡眠、脳卒中後うつ病、脳卒中誘発性脳傷害、脳卒中誘発性神経傷害又はジルドゥラトゥーレット病の治療、予防又は軽減のために役立つと考えられる。
【0027】
薬剤有効成分(API)の適切な用量は、1日当たり約0.1から約100mgAPI、より好ましくは1日当たり約0.1から約10mgAPI、最も好ましくは1日当たり約0.5から約5mgAPI以内であるが、それは正確な投与方法、それが投与される形式、考えられる適応症、対象及び特に関与する対象の体重と、さらに担当する医者又は獣医の選択及び経験によって決まると現在のところは考えられる。
【0028】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の塩を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0029】
治療で使用するための本発明の塩は、生の塩の形で投与することができるものの、有効成分を1つ又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝液、希釈剤及び/又はその他の常用の製薬助剤と共に医薬組成物中に導入するのが好ましい。
【0030】
したがって本発明は、好ましい実施形態において、本発明の塩を、1つ又は複数の医薬的に許容される担体、並びに、場合により、その他の当技術分野で既知であって使用されている治療及び/又は予防薬成分と共に含む医薬組成物を提供する。その担体(1つ又は複数)は、製剤の他の成分と相容性であり、その受給者に対して有害ではないという意味で「許容」されなければならない。
【0031】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、鼻、肺、局所(ほう側及び舌下を含む)、経皮、膣又は非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、大脳内、眼球内注射又は注入)投与に適するもの、或いは粉末及び液体アエロゾル投与を含む吸入又はガス注入によるか或いは持続放出製剤による投与に適する形のものであり得る。持続放出製剤の適当な例としては、本発明の塩を含有している固体の疎水性ポリマーの半透性の基質が挙げられ、その基質は、成型した物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形状をしている。
【0032】
したがって、本発明の塩は、従来の補助剤、担体、又は希釈剤と共に、医薬組成物及びそれの単位用量の形状にする。該形状としては、固体、特に錠剤、充填剤入りカプセル、粉末及びペレットの形状、並びに液体、特に水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、及び同じものを充填したカプセルがすべて経口使用に、直腸投与用には座薬、非経口使用のためには無菌注射剤溶液が挙げられる。上記医薬組成物及びそれの単位用量の形状は、さらなる活性化合物又は原理のあり又はなしで、従来の成分を従来の割合で含むことができ、上記単位用量の形状は、採用すべき所望の1日投与量の範囲と釣り合いのとれた任意の適切な有効量の有効成分を含有することができる。
【0033】
本発明の塩は、各種経口及び非経口の剤形で投与することができる。
【0034】
本発明の塩から医薬組成物を調製するために、医薬的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固形製剤としては、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、カシェ剤、座薬、分散性顆粒等が挙げられる。固体の担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料として作用することもできる1つ又は複数の物質であり得る。
【0035】
粉剤において担体は微粉化した固体であり、微粉化した有効成分との混合物となっている。
【0036】
錠剤においては、有効成分は、必要な結合能力を有する担体と適当な割合で混合し、所望の形状及び大きさに成形する。
【0037】
粉剤及び錠剤は、好ましくは5又は10から約70パーセントまでの活性化合物を好ましくは含有する。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター、及び同種のものである。「製品」という用語は、活性化合物のカプセルを提供する担体としてのカプセル化材料との製剤を含むことを意味しており、その有効成分は、担体と共に又は単独で、担体により取り囲まれており、したがってそれと合体している。同様に、カシェ剤及び菓子錠剤が含まれる。錠剤、粉剤、カプセル、丸薬、カシェ剤、及び菓子錠剤は、経口投与に適する固形として使用することができる。
【0038】
座薬を調製するためには、脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物等の低融点ワックスを最初に融解し、有効成分をその中に攪拌しながら均一に分散させる。その融解された均一な混合物を、次に手ごろな大きさの型に注ぎ、冷却して、それにより凝固させる。
【0039】
経膣投与に適する組成物は、有効成分に加えて当技術分野で適当であることが知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ペースト、フォーム又はスプレーとして与えられる。
【0040】
液体製品としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョン、例えば水又は水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化することができる。
【0041】
本発明による塩は、したがって、非経口投与用(例えば、注射、例えばボーラス注入法又は連続輸液)に製剤化することができ、アンプル、予め薬液を充填してある注射器、小容量の輸液に入った単位用量の形態で又は保存剤が添加されている複数投与容器に入れて提供する。その組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルジョン等の形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤等の処方剤を含有することができる。別法では、その有効成分は、使用前に、適当な媒体、例えば無菌の発熱物質を含まない水を含む構造のために無菌固体の無菌単離によるか溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末の形態をとることができる。
【0042】
経口使用に適する水溶液は、有効成分を水に溶解し、適当な着色料、香料、安定化剤及び増粘剤を必要に応じて添加することにより調製することができる。
【0043】
経口使用に適する水性懸濁液は、微粉化した有効成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁化剤等の粘稠な材料と共に水中に分散させることによって製造することができる。
【0044】
また、使用する少し前に経口投与用の液体の形の製品に転化することができる固形の製品も含まれる。そのような液体の形としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む。有効成分のほかに、上記製品は、着色料、香料、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含むことができる。
【0045】
表皮に対する局所的投与について、本発明の塩は、軟膏、クリーム若しくはローションとして、又は経皮貼布として製剤化することができる。軟膏及びクリームは、例えば、適当な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加した水性又は油性の基材と共に製剤化することができる。ローションは、水性又は油性基材と共に製剤化することができ、一般に、さらに1つ又は複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤を含有する。
【0046】
口の中の局所的投与に適する組成物としては、香味を付けた基材、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に有効成分を含む菓子錠剤;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基材に有効成分を含むトローチ剤;及び液状担体中に有効成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0047】
溶液又は懸濁液は、常法、例えば点滴器、ピペット又はスプレーにより鼻腔に直接適用する。組成物は、単回投与又は複数回投与の形で提供することができる。
【0048】
気道に対する投与は、また、有効成分を、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適当なガスなど適当な高圧ガスによる加圧型パックに入れて提供するアエロゾル製剤を用いて成し遂げることができる。そのエアロゾルは、好都合なことに、レシチン等の界面活性剤も含有することができる。薬の投与量は、計量バルブを取り付けることによって制御することができる。
【0049】
別法では、有効成分は、乾燥粉末、例えば、適当な粉末基材、例えばラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のデンプン誘導体及びポリビニルピロリドン(PVP)などの中の塩の粉末混合物の形で提供することができる。好都合なことに、その粉末の担体は、鼻腔中でゲルを形成する。その粉末組成物は、単位用量の形態、例えばゼラチンの例えばカプセル又はカートリッジ、又は粉末を、吸入器を用いて投与することができるブリスター包装として提供することができる。
【0050】
鼻腔投与用組成物を含む気道への投与を対象とした組成物において、活性化合物は、一般に例えば5ミクロン以下程度の小さい粒径を有する。上記粒径は、当技術分野で知られている方法、例えば微粉化により得ることができる。
【0051】
必要な場合、有効成分を持続放出させるようにした組成物を用いることができる。
【0052】
薬剤製品は、単位用量の形態をしているのが好ましい。上記形態においてその製品は、有効成分の適切な量を含有する単位用量に細かく分割されている。その単位用量の形態は、パッケージ化された製品であることができ、そのパッケージは、製品の離散量を含有しており、例えば、ガラス瓶又はアンプル中にパッケージ化された錠剤、カプセル、及び粉剤などである。また、その単位用量の形態は、それ自体が1個のカプセル、錠剤、カシェ剤、又は菓子錠剤であることもでき、或いはそれは、これらいずれかの適当な数をパッケージ化したものであってもよい。
【0053】
経口投与のための錠剤又はカプセル並びに静脈内投与及び連続輸液のための液体は、好ましい組成物である。
【0054】
製剤及び投与に関する技術のさらなる詳細は、最新版の「レミングトンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Maack Publishing Co.,イーストン、米国ペンシルベニア州)の中で見出すことができる。
【0055】
治療的に有効な投与量とは、症状又は状態を改良する有効成分の量を指す。治療効力及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬理学的手法によって測定することができる。治療効果と毒性効果の間の投与量の比は、治療指数であり、比LD50/ED50により表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0056】
投与される投与量は、勿論、治療される個人の年齢、体重及び病状、並びに投与法、剤形及び療法に注意深く適応させなければならず、求められる結果、及び正確な投薬量は、勿論開業医によって決められるべきである。
【0057】
実際の投薬量は、治療される病気の性質及び重傷度に依存し、医者の裁量の範囲内であり、求められる治療効果を生む本発明の特定の状況に至るまでの投薬量の滴定により変動し得る。しかしながら、個々の投与量当たり約0.1から約10mg、好ましくは約0.5から約5mgの有効成分を含有する医薬組成物が治療上の処置のためには適当であるものと現在のところ考えられる。
【0058】
有効成分は、1日当たり、1回又は数回の投薬量で投与することができる。満足のいく結果が、ある場合には静脈内で0.1μg/kg、経口で1μgの低さの投薬量で得ることができる。投薬量範囲の上限は、静脈内で約10mg/kg、経口で100mg/kgであると現在のところ考えられる。好ましい範囲は、静脈内で約0.1μg/kgから約10mg/kg/日まで、経口で約1μg/kgから約100mg/kg/日までである。
【0059】
治療の方法
別の態様において、本発明は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応する、ヒトを含む動物の生体の病気、障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のための方法であって、それを必要としている上記ヒトを含む動物の生体に有効量の本発明の塩を投与するステップを含む方法を提供する。
【0060】
適当な投薬量の範囲は、通常どおり、正確な投与方法、投与される形式、その投与が導く適応症、関与する対象及びその関与する対象の体重と、さらに担当する医者又は獣医の選択及び経験によって決まる。
【0061】
(実施例)
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、請求されている本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0062】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンクエン酸塩
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンのクエン酸塩を、WO 97/30997(実施例15)に記載されているようにして合成した。
【0063】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン
クエン酸塩を水に溶解し、塩基水溶液でpHを10〜13に調製し、続いてトルエンで抽出することにより遊離の塩基を得た。トルエン相を回収し、乾燥し、乾燥するまで蒸発させた。これにより、油状物としての遊離の塩基が残った。
【実施例2】
【0064】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩一水和物(形態I)
エタノール水溶液中の加熱した(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンに、L−酒石酸を加えた。その温かい混合物を活性炭で処理してろ過した。そのろ過液を冷却し、(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンを、L−酒石酸塩一水和物として単離した。
【0065】
形態Iは、下に示す粉末のX線回折パターンの主要ピークにより特徴付けられる:
【表4】

【実施例3】
【0066】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物(形態III)
この形態は、加熱脱水により調製した。(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩一水和物(形態I)をTGA(熱重量分析)AlOるつぼ中で125℃まで10℃/分で加熱した。その塩を放冷した後TGAの炉を開けた。加熱及び冷却中その炉は50ml/分の乾燥窒素でパージした。
【0067】
形態IIは、下に示す粉末のX線回折パターンの主要ピークにより特徴付けられる:
【表5】

【実施例4】
【0068】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態III)
この形態は、加熱脱水により調製した。(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩一水和物(形態I)をTGA(熱重量分析)AlOるつぼ中で160℃まで10℃/分で加熱した。その塩を放冷した後TGAの炉を開けた。加熱及び冷却中その炉は50ml/分の乾燥窒素でパージした。
【0069】
形態IIIは、下に示す粉末のX線回折パターンの主要ピークにより特徴付けられる:
【表6】

【実施例5】
【0070】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態IV)
この形態は、新たに調製した形態IIを水を含まないエタノール中に懸濁させて調製した。その懸濁物質の分離を24時間後に行い、その後真空下で乾燥させた。
【0071】
形態IVは、また、形態IIを用いて説明したのと同じ手順により形態IIIの懸濁液からも得ることができる。
【0072】
明らかに、形態IVは、物理的に不安定であった。形態IVの継続的調製により、形態IVと形態IIIとの混合物となり、形態IVを製造するのが困難であることを示した。
【0073】
形態IVは、下に示す粉末のX線回折パターンの主要ピークにより特徴付けられる:
【表7】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン酒石酸塩の無水物及び水和物の形態から選択される塩。
【請求項2】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩の無水物及び水和物の形態から選択される請求項1記載の塩。
【請求項3】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩一水和物である請求項1記載の塩。
【請求項4】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩の無水物の形態である請求項1記載の塩。
【請求項5】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態II)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする、請求項4記載の塩。

【請求項6】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態III)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする、請求項4記載の塩。

【請求項7】
(1R,2R,3S,5S)−2−メトキシメチル−3−(3,4−ジクロロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタンL−酒石酸塩無水物の多形(形態IV)であって、その粉体X線回折パターンにおいて以下の主要なピークを特徴とする、請求項4記載の塩。

【請求項8】
治療有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の塩を、少なくとも1つの医薬的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の塩の、薬剤の製造のための使用。
【請求項10】
中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応する、ヒトを含む哺乳動物の病気、障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のための医薬医薬組成物の製造のための、請求項9記載の使用。
【請求項11】
病気、障害又は状態が、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続くうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、一般的な病状による気分障害、薬物誘発性気分障害、偽痴呆、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖のないパニック障害、広場恐怖のあるパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、痴呆、高齢の痴呆、老人性痴呆症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群痴呆コンプレックス、高齢化における記憶機能障害、特定恐怖症、対人恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、薬物乱用、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、飲酒癖、アルコール依存症、疼痛、慢性疼痛、炎症性痛覚、神経因性疼痛、片頭痛の痛み、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、うつ病が伴う疼痛、線維筋痛、関節炎、変形性関節症、関節リューマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性腸痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、脳卒中後痛、薬剤誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、黄体期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、緊張性尿失禁、急迫性尿失禁、夜尿、性機能障害、早漏、勃起不全、勃起障害、摂食障害、拒食症、睡眠障害、自閉症、無言症、抜毛癖、発作性睡眠、脳卒中後うつ病、脳卒中誘発性脳傷害、脳卒中誘発性神経傷害又はジルドゥラトゥーレット病である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に反応する、ヒトを含む動物の生体の病気、障害若しくは状態の治療、予防又は軽減のための方法であって、それを必要としている前記動物の生体に治療有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の塩を投与するステップを含む、方法。

【公表番号】特表2007−509030(P2007−509030A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521585(P2006−521585)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051651
【国際公開番号】WO2005/011694
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】