説明

2型糖尿病の遺伝的リスク検出法

【課題】2型糖尿病の遺伝的リスク検出法等の提供。
【解決手段】2型糖尿病に関する13の遺伝子多型のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出する、2型糖尿病のリスクを判断するための遺伝子検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2型糖尿病の遺伝的リスク検出法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者は非常な勢いで増加しており、全世界では1億7千万人の患者がいると言われている(非特許文献28:関連文献については末尾にまとめて示す)。大規模調査の結果によれば、この割合で患者の増加が続くと、2010年までには更に50%も糖尿病患者が増えるとの予測もある(非特許文献29)。糖尿病患者の90%以上は、2型糖尿病であり、この疾患の特徴は、インスリン分泌不全は比較的軽度でインスリン抵抗性が主体であるものから、インスリン抵抗性は比較的軽度でインスリン分泌不全が主体であるものまで様々である(非特許文献30)。2型糖尿病の病因については、非エステル化脂肪酸の生産過剰、炎症性サイトカインの生産過剰、アディポカインの生産過剰、インスリン抵抗性に関連するミトコンドリアの機能低下、糖毒性、脂質毒性、あるいはβ細胞の機能低下によるアミロイドの生成などを含め様々なものが提唱されている(非特許文献28)。デスクワーク中心のライフスタイルや栄養過多の食事も糖尿病発症の誘引になっているが、2型糖尿病の家族歴があると発症率が2.4倍高いことから、遺伝的要因も2型糖尿病の発症に関与していることが分かってきた(非特許文献28)。2型糖尿病は、多数の遺伝子が関与する多因子疾患である。そのため、遺伝子の組合せによって、ある集団の耐糖能のレベルが変化し、2型糖尿病の罹患率に影響を与えるとされている。遺伝連鎖解析(非特許文献1〜5)と候補遺伝子解析(非特許文献6〜10)によって、2型糖尿病に関するいくつかの遺伝子座位と候補遺伝子が見出されているが、2型糖尿病の発症に関する遺伝的要因については未だ十分に解明されていない。更に、遺伝的要因と集団間のライフスタイルや環境要因の相違を考慮すると、各集団において、2型糖尿病に関与する遺伝子多型を検討することが重要である。
【0003】
ところで、体脂肪の量と分布は、民族間および性別により相違がある。同じ肥満指数(BMI)を持つ男性と女性とを比べると、男性では全脂肪量は少ないけれど、腹部の脂肪量が多いことが知られている。腹部の脂肪、特に内臓脂肪は、インスリン感受性に対する負の予測因子であるが、腹部の脂肪とインスリン感受性の関係は男性と女性によって異なる(非特許文献31)。内因性の性ホルモンが、2型糖尿病の性差に関与しているのかも知れない。メタ分析によれば、内因性のテストステロンおよび性ホルモン結合グロブリンの量は、いずれも2型糖尿病の性差に関連していた(非特許文献32)。これらの知見によれば、2型糖尿病の病因について、性差に関連する調査を行うことが重要であることが示唆される。
このように、2型糖尿病に関与する遺伝要因については、未だ十分に解明されているとは言えない状況にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我々は、4853名の日本人について、2型糖尿病に関し、123個の候補遺伝子に存在する148個の遺伝子多型の大規模研究を行った結果、凝固因子III遺伝子(coagulation factor III)の-603A→G多型が2型糖尿病に関連していることを見出した(非特許文献33)。我々は、内因性の性ホルモンという代謝要因に加えて、2型糖尿病に関連する遺伝的要因に性差があるのではないかという仮説を立てた。そこで、2型糖尿病の発症に関連する遺伝的多型を同定するために、男性と女性とについて別々に大規模研究を行った。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2型糖尿病について、遺伝的リスクを判断するための一材料を得るための遺伝子検出法等を提供すること、および性別に応じて、2型糖尿病の遺伝的リスクを判断するための遺伝子検出法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、2型糖尿病に関し、4853名(男女の層別を行わない解析)または4854名(男女の層別を行った解析)の日本人について、123個の候補遺伝子中の148カ所の遺伝子多型に関する大規模研究の結果として得られたものである。本研究の目的は、2型糖尿病に関与する遺伝子多型を同定し、この知見に基づいて、ある者に対して2型糖尿病を予防するための有用な情報を与えることである。
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明に係る2型糖尿病のリスク検出法は、F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
このとき、群を形成するときに使用する分散については、統計上の分散値、或いは標準偏差値(SD)、パーセントによる区分などを用いることができる。なお、遺伝子多型については、必ずしも上記13個には限られず、これら13個の多型のうちの任意の1個〜12個、或いは本明細書中で示される上記13個の他の多型を含む14個以上で実施することもできる。
【0007】
本明細書中において、多型の記載方法は、次の通りである。原則として、各遺伝子について、「多型が生じている位置、データベースに登録されている塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)→多型塩基」の順で記載する。例えば、「F3の−603A→G」は、F3遺伝子について、−603位のAがGとなっている多型を意味している。但し、挿入あるいは欠失多型については、「多型が生じている位置/データベースに登録されている数とその塩基→塩基数及び塩基」の順で記載する。例えば、「IPF1の−180/3G→4G」は、IPF1遺伝子について、−180位の3個の連続するGが、4個の連続するGとなる多型を意味している。また、場所の指定がない多型(例えば、PKD1−likeのG→A)については、表1〜表5に記載のdbSNPのアクセス番号から、その内容を容易に理解することができる。また、順方向(forward strand)に読んでA/G多型としてデータベースに記録されている場合であっても、逆方向(reverse strand)で読むとT/C多型となる。多くの文献について、「T/C」多型として記載されている場合には、データベース中の記録であるA/G多型と異なることがある。
【0008】
一般に多型は、集団(例えば、日本人集団、西洋人集団など)が異なると、その種類・頻度が異なることが知られている。このため、日本人以外の集団において、2型糖尿病との関係が指摘されている多型であっても、必ずしも日本人集団においてそのような関連が認められるわけではない。このため、従来の報告については、集団または疾患が異なる場合には、必ずしも日本人における多型および2型糖尿病との関連が裏付けられるわけではない。
【0009】
また、第2の発明に係る2型糖尿病の遺伝的リスク検出法は、F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする。
また、第3の発明に係る2型糖尿病の遺伝的リスク検出法は、F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)、NPPAの664G→A、CETPの1061A→G、PCK1の−232C→G、AGERのG→A(Gly82Ser)、CCL5の−403G→A、APOA5の−1131T→C、F12の46C→Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする。
【0010】
更に、別の発明に係る2型糖尿病のリスク検出法は、男性の場合には、THBS2の3949T→G、ADIPOQの62G→T、F3の−603A→G、NPPAの664G→A(Val7Met)、CETPの1061A→G(Ile405Val)、PCK1の−232C→G、ABCA1の2583A→G(Ile823Met)、AGERのG→A(Gly82Ser)、AKAP10のA→G(Ile646Val)、CD14の−260C→T、IPF1の−108/3G→4Gのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を評価因子とし、女性の場合には、PON1のA→G(Arg160Gly)、F3の−603A→G、CCL5の−403G→A、APOA5の−1131T→C、F12の46C→Tうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2型糖尿病について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法等が提供される。この発明を用いることにより、2型糖尿病に対する予防が可能となり、2型糖尿病が原因となって引き起こされる疾患、例えば糖尿病性血管障害(心筋梗塞、脳血栓、末梢血管障害)、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症などの予防につながる。こうして、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0013】
<試験方法>
研究対象1.性差による層別解析を行わない場合
研究対象は、4853名(男性2688名、女性2165名)の日本人であった。彼らは、研究参加施設(岐阜県立岐阜病院、岐阜県立多治見病院、岐阜県立下呂温泉病院、弘前大学病院、黎明郷リハビリテーション病院)に、2002年10月から2005年3月までに来院した者であった。1489名(男性969名、女性520名)の2型糖尿病患者は、空腹時血糖値が6.93mmol/L以上(126mg/dL以上)、またはヘモグロビンAlcが6.5%以上、または糖尿病薬を服用している者であった。2型糖尿病の確定は、WHOの判定基準に従った(非特許文献11、12)。
1型糖尿病、若年者の成人発症型糖尿病、その他の代謝障害・内分泌障害、及び重篤な肝障害或いは腎障害を患っている者については、今回の研究対象から外した。また、二次性糖尿病を生じる薬剤を服用している患者も、今回の研究対象から外した。
【0014】
3364名(男性1719名、女性1645名)のコントロール者は、毎年の健康診断のために参加病院の外来を受診した者であった。コントロール者は、空腹時血糖値が6.05mmol/L(110mg/dL)未満であり、かつヘモグロビンAlcが5.6%未満であった。また、コントロール者については、糖尿病や糖尿病薬服用の既往歴がなかった。研究プロトコールはヘルシンキ宣言に従い、三重大学医学部、弘前大学医学部、岐阜県国際バイオ研究所、および参加病院の倫理委員会によって承認された。各参加者に対しては書面によるインフォームドコンセントを得た。
研究対象2.性差による層別解析を行った場合
上記研究対象1に、2型糖尿病の女性患者1名を含む4854名の日本人による大規模研究を行った。それ以外の条件は、上記研究対象1に同じであった。
【0015】
多型の選択
公開データベースの使用および本発明者の鋭意検討により、123個の候補遺伝子を選択した。これらの遺伝子は、膵β細胞の機能、末梢でのインスリン感受性、肝臓グルコース生産、脂質及び脂肪組織代謝、その他の代謝因子に加えて、血圧の制御、内分泌機能の制御、血管に関する生物学、単球・マクロファージに関する生物学、リンパ球及び白血球に関する生物学、凝固及び線溶系、並びに血小板機能に関与するものであった。本発明者は、これら123個の遺伝子に存在する148個の多型を選択した。これらの多型の多くは、プロモーター領域、エクソン、イントロンのスプライシングの供与部位或いは受容部位に多く位置しており、多型の結果として、コードされたタンパク質の機能または発現に変化を与える可能性があるものであった。これら148個の多型は、下記表1〜表5に示した。なお、表中においては、左欄から順に、座位(Locus)、遺伝子名(Gene)、簡易記載(Symbol)、多型(Polymorphism)、多型データベース登録番号(dbSNP)を示している。なお、多型データベース登録番号が無い場合には、NCBI遺伝子バンクに登録されている番号を示した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
【表5】

【0021】
遺伝子多型の検出方法
7mLの静脈血を50mmol/L EDTA(ジナトリウム塩)を含むチューブに採取し、ゲノムDNAをキット(ゲノミックス社製)によって分離した。147個の多型の遺伝子型は、PCRと配列特異的オリゴヌクレオチドプローブをサスペンジョン・アレイ・テクノロジー(SAT:Luminex 100)と組み合わせて使用する方法によって決定した(G&Gサイエンス株式会社)。プライマー、プローブ、その他の条件は、下表6に示した。表6は左から順に、遺伝子表記(Gene Symbol)、多型(Polymorphism)、センスプライマー(Sense primer)、アンチセンスプライマー(Antisense primer)、プローブ1(Probe 1)、プローブ2(Probe 2)、アニーリング温度(Annealing)、およびサイクル数(Cycles)を示した。また、詳細な方法については、既報のもの(非特許文献13)を基本として、適宜に増幅条件を変えて行った。なお、2型糖尿病との関連が認められなかった多型を検出するための条件については記載を省略した。
【0022】
【表6】

【0023】
PCR−SSOP−Luminex法
方法の詳細については、非特許文献13に記載の通りである。以下には、この方法の概要について説明する。
図1には、Luminex100フローサイトメトリーで検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示した。マイクロビーズ(図中の符号(A))は、直径が約5.5μm程度であり、ポリスチレン製である。ビーズ表面には、特異的な塩基配列を認識するプローブが結合されている。各ビーズには、一種類のプローブが結合されている。このマイクロビーズには、赤色色素と赤外色素との割合を変化させることにより、図中の符号(B)に示すように、最大で100種類のものを混合した状態で、各ビーズの同定が行えるようになっている。複数種類のプローブを備えたマイクロビーズ(但し、各マイクロビーズには一種類のプローブのみ)を適当な割合で混合し、100ビーズ/μLとなるようにしたビーズミックスを調製した(図中の符号(C))。
【0024】
図2には、PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示した。
<増幅反応(Amplification)>
目的とするDNAを増幅するPCR反応には、5’末端をビオチンでラベルしたプライマーを用いた。1.5mM塩化マグネシウムを含む1xPCR溶液(50mM KCl、10mM Tris−HCl、pH8.3)、2%DMSO、0.2mM dNTPs、及び0.1μM〜10μMプライマーセットを混合し、Taq DNAポリメラーゼ(50U/mL)と50ng〜100ngのゲノムDNAを加えて25μLとした。PCR反応は、95℃で10分間処理の後、94℃で20秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を1サイクルとし、これを50サイクル繰り返した。機器としてGeneAmp9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いた。
【0025】
<ハイブリダイゼーション(Hybridization)>
増幅したDNAを変性した後、ビーズミックスとハイブリダイズさせた。96ウエルプレートの各ウエルに、5μLの増幅反応後のPCR増幅液、5μLのビーズミックス、及び40μLのハイブリダイズ用緩衝液(3.75M TMAC、62.5mM TB(pH8.0)、0.5mM EDTA、0.125% N−ラウロイルザルコシン)を添加し、全量50μLとした。この混合液を添加した96ウエルプレートについて、95℃で2分間の変性、及び52℃で30分間のハイブリダイゼーションを行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、増幅したDNAを認識するプローブを有するビーズ(1)のみが、DNAと結合する様子が示されている。
【0026】
<ストレプトアビジン−フィコエリトリン反応(SA−PE Reaction)>
次に、上記ビーズミックス−DNAをSA−PEと反応させた。ハイブリダイゼーション反応の後、各ウエルに100μLのPBS−Tween(1xPBS(pH7.5)、0.01% Tween−20)を添加し、1000xgで5分間の遠心を行い、上清を取り去ることで、マイクロビーズを洗浄した。各ウエルに残ったマイクロビーズに、それぞれ70μLのSA−PE溶液(PBS−Tweenにより、市販品(G&Gサイエンス株式会社製)を100倍希釈したもの)を添加し混合した後、52℃で15分間の反応を行った(GeneAmp9700サーマルサイクラーを用いた。)。
図2中には、ビーズ(1)のプローブにのみビオチン化DNAが結合しているので、そのビオチンにSA−PEが結合する様子が示されている。
【0027】
<測定(Measurement)>
次に、反応後のサンプルはLuminex100を用いて、ビーズ種類の同定と、そのビーズにPEが結合しているか否かを判定した。測定は2種類のレーザを使用して行い、ビーズの種類は635nmレーザにより同定し、PE蛍光は532nmレーザを用いて定量した。オリゴビーズに結合したDNAは1測定あたり各々のビーズを最低50個ずつ測定し、定量されたPEの蛍光強度の中央値(MFI)を使用した。
図2中には、各ビーズ(1)〜(3)が同定され、かつビーズ(1)にのみPEが測定されたことから、ビーズ(1)に結合させたプローブが認識するDNAが増幅された様子が示されている。
【0028】
統計解析
<性別による層別解析を行わない場合>
臨床データは、2型糖尿病患者群(Type 2 diabetes mellitus)とコントロール群(Controls)との間で、対応のないスチューデントt検定により比較した。質的データは、カイ二乗検定によって比較した。対立遺伝子頻度は遺伝子カウント法によって概算し、ハーディ・ワインベルク平衡にあてはまるかどうかを判断するためにカイ二乗検定を使った。各常染色体上の遺伝子多型における遺伝子型分布は、2型糖尿病患者群とコントロール群との間でカイ二乗検定(3x2)によって比較した。X染色体上にある遺伝子多型については、対立遺伝子頻度をカイ二乗検定(2x2)によって比較した。
【0029】
危険率(p)が6%未満で(p<0.06)2型糖尿病と関連した多型は、交絡因子を含む多項ロジスティック回帰分析法により解析した。このとき、交絡因子については、年齢(age)、性別(sex:女性=0、男性=1)、喫煙状態(smoking:非喫煙者=0、喫煙者=1)、および各遺伝子型を独立変数とし、2型糖尿病を従属変数とした。各遺伝子型は、優性、劣性、および2つの付加(付加1および2)遺伝モデルに従って評価し、p値、オッズ比、および95%信頼区間を計算した。
【0030】
各遺伝モデルは2つの群から構成される。優性モデルは「変異型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」対「野生型のホモ接合体」、劣性モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体とヘテロ接合体の結合群」、付加1モデルは「ヘテロ接合体」対「野生型のホモ接合体」、付加2モデルは「変異型のホモ接合体」対「野生型のホモ接合体」である。また、2型糖尿病に対する遺伝子型または他の交絡因子の効果を確認するために、ステップワイズ変数増加法により解析を行った。モデルへの包含の基準レベルを0.25とし、モデルからの除外の基準レベルを0.1とした。
【0031】
2型糖尿病と遺伝子型の多重比較の結果を得る際に、タイプIエラーを避けるために統計的有意性に関する厳密な基準(p<0.001)を採用した。その他の臨床的バックグラウンドデータについては、危険率5%未満(p<0.05)は統計的に有意であると見なした。統計的有意性は、両側検定によって試験した。統計解析は、JMPソフトウェア・バージョン5.1(SASインスティテュート社製)によって実行した。
<性別による層別解析を行う場合>
基本的には、上記<性別による層別解析を行わない場合>と同じ統計解析に従った。但し、多項ロジスティック回帰分析法の交絡因子については、年齢(age)、BMI、喫煙状態(smoking:非喫煙者=0、喫煙者=1)、および各遺伝子型を独立変数とし、2型糖尿病を従属変数とした。
また、2型糖尿病と遺伝子型の多重比較の結果を得る際に、タイプIエラーを避けるために統計的有意性に関する基準として、p<0.005を採用した。
上記以外については、<性別による層別解析を行わない場合>と同じ統計解析を行った。
【0032】
1.性別による層別解析を行わない場合
<試験結果>
4853名の研究対象に関する背景データを表7に示した。表には、左欄より順に、特徴(Characteristics)、2型糖尿病患者(Type 2 diabetes mellitus)、およびコントロール者(Controls)を示している。また、特徴欄は、上より順に、対象者数(No. of subjects)、年齢(Age)、性別(男性/女性)(Sex(male/female))、肥満指数(Body mass index)、現在または過去の喫煙率(Current or former smoker)、高血圧(Hypertenshion)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、空腹時血糖(Fasting plasma glucose)、及びヘモグロビンAlc(HbA1c)を示している。
【0033】
【表7】

【0034】
年齢と肥満指数のデータは、平均±SDで示した。喫煙率については、一日あたり10本以上を吸った場合を喫煙とした。高血圧については、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の者、或いは降圧剤を服用している者とした。高コレステロール血症については、血清総コレステロール値が5.72mmol/L(220mg/dL)以上、または脂質降下薬を服用している者とした。表中、*はコントロールとの間で、p<0.001の危険率で有意であったことを意味している。
【0035】
男性の割合、肥満指数、喫煙率、高血圧、及び高コレステロール血症については、2型糖尿病患者はコントロールに比べて有意に高かった。
次に、2型糖尿病のリスク診断を行うために必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・性別・喫煙について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、2型糖尿病に関するリスク診断を行えることが分かった。
【0036】
<2型糖尿病のリスク診断システム>
表8には、2型糖尿病のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、因子(Variable)、p値(P value)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、最下段には、従来の危険因子(Conventional risk factors)と、今回の研究で見出された遺伝因子(Genetic risk factors)のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
【0037】
【表8】

【0038】
後述のステップワイズ変数増加法で危険率が0.05未満(P<0.05)であった遺伝子多型群および年齢・性別・喫煙を独立因子(交絡因子)とし、2型糖尿病を従属因子として多項ロジスティック回帰分析を行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を各因子について算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な2型糖尿病のリスクを予測することができる。多項ロジスティック回帰分析の結果、従来の危険因子としては性別(男性の方が高リスク)が、遺伝因子としては、F3、ADIPOQ、ACE、CD14、ABCA1、PON1、CX3CR1、IPF1、THBS2、F7、PPP1R3A、PECAM1、PKD1−likeの各遺伝子多型が2型糖尿病に関連した。従来の危険因子では最小オッズ比が1.00で最大オッズ比が1.73、遺伝因子では最小オッズ比が0.33で最大オッズ比が13.36であった。したがって、従来の危険因子と遺伝因子を総合すると、最小オッズ比が0.33で最大オッズ比が23.11であり、70倍の差が認められた。
【0039】
本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニックまたは健診センターにおいて希望者に対して従来の危険因子と今回の遺伝因子に関する検査を行い、2型糖尿病の発症リスクの予測を行う。従来の危険因子と遺伝因子全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を3段階以上(例えば、5段階)に分ける。例えば、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また、平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。
実際に本研究において、リスク値の分布は、リスクが高い群では2型糖尿病患者群が12.4%でコントロール群が3.9%、リスクがやや高い群では2型糖尿病患者群が31.5%でコントロール群が14.3%、平均的リスクの群では2型糖尿病患者群が52.6%でコントロール群が64.8%、リスクがやや低い群では2型糖尿病患者群が3.6%でコントロール群が17.1%、リスクが低い群では2型糖尿病患者群が0%でコントロール群も0%であった。他の方法として、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。実際に本研究における2型糖尿病患者群の分布は、リスクが高い群は15.3%(コントロール群は5.0%)、リスクがやや高い群は38.8%(コントロール群は20.0%)、平均的リスクの群は39.7%(コントロール群は50.1%)、リスクがやや低い群は5.6%(コントロール群は20.0%)、リスクが低い群は0.7%(コントロール群は5.0%)であった。
なお、本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に加齢・肥満も2型糖尿病に影響すると考えられるのでこれらを含めることもできる。
【0040】
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけ高リスク群またはやや高リスク群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・飲酒の減量・食事療法即ちカロリー制限・運動療法・ストレス解消・睡眠不足解消など)を行うことにより2型糖尿病の一次・二次予防を積極的に推進する。特に多量の飲酒、高カロリー・高脂肪食、運動不足などの生活習慣は、一般的に2型糖尿病の原因と考えられているため、遺伝的に2型糖尿病のリスクが平均より高いと予測された場合は、生活習慣の改善により2型糖尿病のリスクを減少させるようにクライアントに説明する。特に2型糖尿病の家族歴のある人への適用が有効である。本システムにより2型糖尿病のオーダーメイド予防が可能になり、2型糖尿病に起因する種々の疾患、即ち糖尿病性血管障害(心筋梗塞、脳血栓、末梢血管障害)、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症などの予防につながる。ひいては、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止や今後の医療費削減などにつながり、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0041】
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、16個の遺伝子多型が2型糖尿病との関連を示した(p<0.05)。詳細を表9示した。表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、および危険率(p)を示している。
【0042】
【表9】

【0043】
これらの多型については、2型糖尿病との関連について更に詳細に分析した。年齢、性別、および喫煙頻度を補正した多項ロジスティック回帰分析を行ったところ、凝固因子III(F3)の−603A→G多型が劣性モデル及び付加2モデルにおいて、2型糖尿病の発生に有意に(p<0.01)関連した。このとき、F3の−603G対立遺伝子は2型糖尿病に対する危険因子となっていた。詳細を表10に示した。
【0044】
【表10】

【0045】
表においては、左欄より順に、遺伝子表記(Gene symbol)、多型(Polymorphism)、優性モデル(Dominant)における危険率(p)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、劣性モデル(Recessive)における危険率(p)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加1モデル(Additive 1)における危険率(p)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加2モデル(Additive 2)における危険率(p)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)をそれぞれ示している。多項ロジスティック回帰分析は、年齢、性別、および喫煙の有無について補正して行った。また、表中、危険率が0.001未満(p<0.001)のデータについては、太字で示した。2型糖尿病との関連が最も強いF3の−603A→G多型では、2型糖尿病においては、AA遺伝子型が64.7%、AG遺伝子型が29.3%、GG遺伝子型が6.0%であり、コントロールにおいては、AA遺伝子型が64.8%、AG遺伝子型が31.6%、GG遺伝子型が3.5%であった。また、これらの多型の遺伝子型分布については、コントロール及び2型糖尿病のいずれにおいてもハーディ・ワインバーグ平衡を満たしていた。
【0046】
次に、2型糖尿病に対する13個の多型の遺伝子型、年齢、性別、および喫煙の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表11に示した。表中には、左欄より順に、因子(Variable)、p値(p value)、寄与率(R2)を示している。統計的有意性が高い順に、性別(Sex)、F3遺伝子型(劣性モデル)が有意であり(p<0.001)、各要因が独立して2型糖尿病に影響を与えることが分かった。
【0047】
【表11】

【0048】
<考察>
本発明者は、2型糖尿病との関連が疑われる123個の候補遺伝子について、148カ所の多型を調べた。4853人の被験者について大規模研究を行ったところ、F3の−603A→G多型が、日本人の2型糖尿病と有意に関係していた。従来には、F3遺伝子を含む染色体領域(1p22-21)が、日本人において2型糖尿病との関連を示すという報告は認められなかった(非特許文献14〜16)。また、F3について、2型糖尿病の素因となる遺伝子であるとの報告も見られない。
【0049】
F3(組織因子または組織トロンボプラスチン)は、47kDaの分子量を示す膜貫通型糖タンパク質であり、結合因子VIIaに反応して凝固因子Xを活性化して因子Xaに変化させ、外因性凝固系カスケードを開始させる。F3は、循環中の白血球や内皮細胞には通常には発現されていないが、血管内の炎症性サイトカイン、成長因子、せん断応力、バルーンによる障害によって白血球や内皮細胞から発現される(非特許文献17)。肥満マウスと痩せマウスとを比較することで、F3のmRNAは脂肪組織を含むいくつかの組織中で多く発現されることが判った(非特許文献18、19)。このことは、肥満や2型糖尿病などのインスリン抵抗性の状態では、高インスリン血症によって、局所的に多くの組織でF3の発現を誘導することを意味しているのかも知れない。
【0050】
単球におけるF3の発現量は、健常群に比べて糖尿病患者群の方が多いことが知られている(非特許文献20)。健常者とコントロールが良好で合併症を起こしていない2型糖尿病患者との両群において、同数程度の細胞由来微粒子が確認されているが、2型糖尿病患者においては、F3を発現しているヘルパーT細胞・顆粒球・血小板由来の微粒子が多く認められることが知られている(非特許文献21)。血中F3濃度については、2型糖尿病患者の方が健常者よりも高く、更に心血管障害を併発した糖尿病患者では、そうでない糖尿病患者よりも高いことが知られている。
【0051】
このことから、F3濃度は血管合併症に関与しているのかも知れない(非特許文献22、23)。実際、F3の−603A→G多型は心筋梗塞に関与しており、このとき−603G対立遺伝子が危険因子であることが判っている(非特許文献24)。膵島移植後には、移植組織に対して血液を介した速やかな炎症反応(instant blood-mediated inflammatory reaction:IBMIR)がよく見られることが知られている(非特許文献25)。この文献の著者らは、F3がランゲルハンス島の内分泌細胞によって発現・分泌されること、及びインビトロ系においてはIBMIRが抗F3抗体及び不活性化VIIaによって阻害されることから、IBMIRがF3によって引き起こされると結論しており、F3活性を阻害することにより、膵島移植後の急速な炎症反応が抑えられるのではないかと述べている。
【0052】
F3の発現は、細胞型特異的プロモーターの活性によって、転写レベルで増加する。F3の転写は、血管内皮細胞と単球においてはAP−1とNF−κB部位によって、上皮細胞・平滑筋細胞・及び単球においてはEgr−1とSp1部位によって、誘導が行われる(非特許文献17)。F3のプロモーター領域では多くの多型が知られている。−1812C→T、−1322C→T、−1208D/I、−603A→Gの4個の多型は連鎖不平衡であること、及び−1442G→C、−21C→Tの2個の多型は希であることが知られている(非特許文献26)。−1208位のD/I(欠失/挿入)多型においては、D(欠失)ホモ接合体を有する者は、I(挿入)ホモ接合体を有する者に比べると、血液中のF3濃度が低いことが知られている(非特許文献26)。
【0053】
−603A→G多型は、単球においてF3−mRNA量の増加に関係しており、AA遺伝子型を持つ者に比べると、G対立遺伝子を持つ者の方が、F3−mRNA量が多いことが知られている(非特許文献27)。本研究によれば、F3の−603A→G多型は2型糖尿病の発症に有意に関係しており、このとき−603G対立遺伝子が危険因子であることが判った。これはF3の多型が2型糖尿病と関係することを示す初めての報告である。我々が得た結果は、従来の3つの知見、すなわち(1)血中及び各種細胞中のF3濃度が糖尿病患者では増加すること、(2)F3の増加割合は、糖尿病患者で心臓疾患を併発した患者・膵島移植患者において多くなること、及び(3)−603A→G多型のG対立遺伝子を持つ者ではF3の発現量が多いこと(非特許文献20〜23、25)、について矛盾するものではなかった。
【0054】
2.性別による層別解析を行った場合
<試験結果>
4854名の研究対象に関する背景データを表12に示した。表には、左より順に、特徴(Characteristic)、男性(Men)における2型糖尿病患者(Type 2 diabetes mellitus)、コントロール者(Controls)、およびP値(P)、女性(Women)における2型糖尿病(Type 2 diabetes mellitus)、コントロール者(Controls)、およびP値(P)を示している。また、特徴については、上より順に、対象者数(No. of subjects)、年齢(Age)、喫煙率(Smoking)、肥満指数(Body mass index)、収縮期血圧(Systolic blood pressure)、拡張期血圧(Diastolic blood pressure)、血中総コレステロール(Serum total cholesterol)、血中中性脂肪(Serum triglycerides)、血中HDLコレステロール(Serum HDL-cholesterol)、空腹時血糖(Fasting plasma glucose)、及びヘモグロビンAlc(HbA1c)を示している。
【0055】
【表12】

【0056】
対象者数および喫煙率以外のデータについては、平均±SDで示した。男性の場合には、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、血中総コレステロール、血中中性脂肪、空腹時血糖、およびヘモグロビンAlcは、コントロール者に比べて2型糖尿病患者の方が高かった。一方、年齢とHLDコレステロールについては、コントロール者に比べて2型糖尿病の方が低かった。
女性の場合には、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、血中総コレステロール、血中中性脂肪、空腹時血糖、およびヘモグロビンAlcは、コントロール者に比べて2型糖尿病患者の方が高く、HDLコレステロールについては、コントロール者に比べて2型糖尿病患者の方が低かった。
次に、2型糖尿病のリスク診断を行うために必要な因子を抽出するため、遺伝子多型および年齢・性別・喫煙について、ステップワイズ変数増加法による解析を行った(詳細については後述する)。その結果、次に説明するように、2型糖尿病に関するリスク診断を行えることが分かった。
【0057】
<2型糖尿病のリスク診断システム>
表13には、2型糖尿病のリスク診断システムに関する詳細を示した。表には、左欄より順に、男性(Men)における因子(Variable)、p値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))、および女性(Women)における(Variable)、p値(P)、オッズ比(95%信頼区間)(OR(95%CI))を示した。また、遺伝因子(Genetic risk factors)のオッズ比を乗じた総合リスク(Total risk)を示した。
【0058】
【表13】

後述のステップワイズ変数増加法で危険率が0.05未満(P<0.05)であった遺伝子多型群および年齢・BMI・喫煙を独立因子(交絡因子)とし、2型糖尿病を従属因子として、男女別に多項ロジスティック回帰分析を行い、P値、オッズ比、95%信頼区間を算出した。したがってこれらの因子は独立したものであり、オッズ比の積(かけ算)により総合的な2型糖尿病のリスクを男女別に予測することができる。多項ロジスティック回帰分析の結果、男性では遺伝因子として、THBS2、ADIPOQ、F3、NPPA、CETP、PCK1、ABCA1、AGER、AKAP10、CD14、IPF1の各遺伝子多型が2型糖尿病に関連した。これらの多型の組み合わせにより最小オッズ比が0.28で最大オッズ比が9.37であり、33倍の差が認められた。また女性では遺伝因子として、PON1、F3、CCL5、APOA5、F12の各遺伝子多型が2型糖尿病に関連した。これらの多型の組み合わせにより最小オッズ比が0.69で最大オッズ比が5.72であり、8倍の差が認められた。
【0059】
本研究成果の臨床的な意義について以下に述べる。病院、クリニックまたは健診センターにおいて希望者に対して遺伝子多型に関する検査を行い、2型糖尿病の遺伝的な発症リスクの予測を男女別に行う。遺伝子多型全体のオッズ比の積の分布からリスクの程度を男女別に3段階以上(例えば、5段階)に分ける。例えば、コントロール群のリスク値の大きい順に全体を5%、20%、50%、20%、5%に区分し、リスク値の最も大きい5%の群をリスクが高い群、次の20%の群をリスクがやや高い群、次の50%の群を平均的リスクの群、次の20%の群をリスクがやや低い群、リスク値が最も小さい5%の群をリスクが低い群とする。また、他の方法として、平均±1SDの範囲を平均的リスク群とし、平均+1SDから平均+2SDをやや高リスク群、平均+2SD以上を高リスク群とする。また平均−1SDから平均−2SDをやや低リスク群、平均−2SD以下を低リスク群とする。本研究では有意な関連が認められなかったが、一般的に加齢・肥満も2型糖尿病に影響すると考えられるのでこれらの因子を含めることもできる。
【0060】
結果については、医師等の有資格者の判断を含めてカウンセリングを行い、とりわけ高リスク群またはやや高リスク群に属する場合には生活習慣の改善(禁煙・飲酒の減量・食事療法即ちカロリー制限・運動療法・ストレス解消・睡眠不足解消など)を行うことにより2型糖尿病の一次・二次予防を積極的に推進する。特に2型糖尿病の家族歴のある人への適用が有効である。本システムにより男女別に2型糖尿病のオーダーメイド予防が可能になり、2型糖尿病に起因する種々の疾患、即ち糖尿病性血管障害(心筋梗塞、脳血栓、末梢血管障害)、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎障害などの予防につながる。ひいては、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止や今後の医療費削減などにつながり、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0061】
<統計解析>
次に、上記リスク判断システムを開発するに至った統計解析の結果について説明する。
カイ二乗検定により、男性については14個の遺伝子多型が、女性については7個の遺伝子多型が、それぞれ2型糖尿病との関連を示した(p<0.06)。詳細を表14に示した。表においては、左欄より順に、男性(Men)における遺伝子表記(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)、並びに女性(Women)における遺伝子表記(Gene)、多型(Polymorphism)、および危険率(P)を示している。
【0062】
【表14】

【0063】
これらの多型については、2型糖尿病との関連について更に詳細に分析した。年齢、BMI、および喫煙率を補正した多項ロジスティック回帰分析を行ったところ、男性の場合には、トロンボスポンジン2(THBS2)の3949T→G多型が劣性モデルにおいて、F3の−603A→G多型が劣性モデルにおいて、ナトリウム利尿ペプチド前駆体A(NPPA)の664G→A(Val7Met)多型が劣性モデルにおいて、それぞれ2型糖尿病に有意に(p<0.01)関連した(表15を参照)。また、女性の場合には、パラオキソナーゼ1遺伝子(PON1)のA→G(Arg160Gly)多型が優性モデル及び付加1モデルにおいて、F3の−603A→G多型が劣性モデル及び付加2モデルにおいて、それぞれ2型糖尿病に有意に(p<0.01)関連した(表16を参照)。
【0064】
【表15】

【0065】
【表16】

【0066】
表においては、左欄より順に、遺伝子(Gene)、多型(Polymorphism)、優性モデル(Dominant)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、劣性モデル(Recessive)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加1モデル(Additive 1)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)、付加2モデル(Additive 2)における危険率(P)・オッズ比(OR)・95%信頼区間(95% CI)をそれぞれ示している。多項ロジスティック回帰分析は、年齢、BMI、および喫煙率について補正して行った。また、表中、危険率が0.005以下(p≦0.005)のデータについては、太字で示した。
【0067】
次に、2型糖尿病に関連する多型の遺伝子型(カイ二乗解析によって同定されたもの)、年齢、BMI、および喫煙の影響について、ステップワイズ変数増加法により解析した。結果を表17に示した。表中には、左欄より順に、男性(Men)における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)、女性(Women)における因子(Variable)、P値(P)、寄与率(R2)を示している。男性においては、統計的有意性が高い順に、BMI、THBS2遺伝子型(劣性モデル)、ADIPOQ遺伝子型(優性モデル)が有意であり(p<0.005)、各要因が独立して2型糖尿病に影響を与えることが分かった。また、女性においては、統計的有意性が高い順に、PON1遺伝子型(優性モデル)、年齢が有意であり(p<0.005)、各要因が独立して2型糖尿病に影響を与えることが分かった。
【0068】
【表17】

【0069】
<考察>
2型糖尿病と関連する遺伝子多型について、性別により異なるか、あるいは男女に共通のものがあるか、などの点については未だ検討されていない。本発明者は、2型糖尿病との関連が疑われる148カ所の多型について、男性または女性に分けた解析を行った。今回の大規模研究によって、男性についてはTHBS2の3949T→G多型が、女性についてはPON1のA→G(Arg160Gly)多型が、それぞれ2型糖尿病と有意に関連していた。これらの結果は、日本人においては、2型糖尿病に関連する遺伝子多型が性別により異なっていることを示している。
【0070】
トロンボスポンジンは、細胞−細胞及び細胞−マトリックスの情報伝達に関与する細胞外糖タンパクのファミリーに属している(非特許文献34)。多くの脊椎動物において、それぞれ異なる遺伝子からの産物を代表する5個のファミリーメンバー(THBS1〜THBS5)が知られている。THBS1とTHBS2は、分子量が約145kDaのサブユニットからなる三量体であり、THBS3からTHBS5は分子量が約100kDaのサブユニットからなる五量体である(非特許文献35)。THBS2欠損マウスは、コラーゲン繊維の生産、皮膚のもろさ、腱および靱帯の強度において異常を示すことが知られているが、THBS2が結合組織において構造的に如何なる役割を果たしているかについては知られていない(非特許文献36)。THBS2遺伝子における3’非翻訳領域(3’UTR)の3949T→G多型は、心筋梗塞に関連しており、このときG遺伝子型が防御因子であることが知られている(非特許文献37,38)。今回の我々の研究では、男性の場合には、THBS2のT→G多型(3’UTR)が2型糖尿病と関連しており、このときG遺伝子型が防御因子であることが分かった。しかしながら、詳細なメカニズムについては依然として不明のままである。
【0071】
血中パラオキソナーゼ1(PON1)は、有機リン酸エステルの加水分解を行うカルシウム依存性エステラーゼであり、肝臓・腎臓・および小腸を含む臓器に広く分布している。またPON1は、HDLと結合して血中にも存在する。PON1は、有機リン酸エステルの解毒機能と、LDLの酸化予防機能があると言われている(非特許文献39)。PON1欠損マウスは、有機リン系農薬のクロルピリホスオキソン及びクロルピリホスの毒性に対する感受性が増加する。PON1欠損マウスから精製されたHDLはLDLの酸化を止めることができず、同マウスから精製されたHDL及びLDLは、野生型マウスから精製されたHDL及びLDLに比べると、酸化されやすかった。更に、PON1欠損マウスに高脂肪食を与えると、野生型マウスに比べて、アテローム性動脈硬化に掛かりやすかった(非特許文献40)。血中パラオキソナーゼ活性は、非糖尿病患者群に比べると、糖尿病患者では、減少することが分かっている(非特許文献41,42)。PON1のA→G(Gln192Arg)多型は、2型糖尿病において冠動脈疾患に関連し、このときG遺伝子型が危険因子であることが分かっている(非特許文献43)。PON1のプロモーター領域中にある−107T→C多型は、単独で或いはA→G(Gln192Arg)多型との組合せで、2型糖尿病患者の冠動脈疾患に関連するとの報告がある(非特許文献44)。我々の研究結果によれば、PON1のA→G(Arg160Gly)多型は、女性においては、2型糖尿病と有意に関連しており、このときG遺伝子型が危険因子であることが分かった。しかしながら、分子機構については、依然として不明のままである。
【0072】
このように本実施形態によれば、2型糖尿病について、遺伝的リスクおよび発症リスクを判断するための検出法を提供することができる。この実施形態を用いることにより、2型糖尿病の予防が可能となり、2型糖尿病が原因となって引き起こされる糖尿病性血管障害(心筋梗塞、脳血栓、末梢血管障害)、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症などの疾患の罹患率を減少させることにより、高齢者の健康寿命延長・QOL向上・ねたきり防止ならびに今後の医療費削減など、医学的・社会的に大きく貢献できる。
【0073】
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【非特許文献41】Abbott CA, Mackness MI, Kumar S, Boulton AJ, Durrington PN (1995) Serum paraoxonase activity, concentration, and phenotype distribution in diabetes mellitus and its relationship to serum lipids and lipoproteins. Arterioscler Thromb Vasc Biol 11:1812-1818.
【非特許文献42】Letellier C, Durou MR, Jouanolle AM, Le Gall JY, Poirier JY, Ruelland A (2002) Serum paraoxonase activity and paraoxonase gene polymorphism in type 2 diabetic patients with or without vascular complications. Diabetes Metab 28:297-304.
【非特許文献43】Pfohl M, Koch M, Enderle MD, Kuhn R, Fullhase J, Karsch KR, Haring HU (1999) Paraoxonase 192 Gln/Arg gene polymorphism, coronary artery disease, and myocardial infarction in type 2 diabetes. Diabetes 48:623-627.
【非特許文献44】James RW, Leviev I, Ruiz J, Passa P, Froguel P, Garin M-CB (2000) Promoter polymorphism T(-107)C of the paraoxonase PON1 gene is a risk factor for coronary artery disease in type 2 diabetic patients. Diabetes 49:1390-1393.
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】Luminex100で検出するマイクロビーズの微細構造と特徴を示す図である。
【図2】PCR−SSOP−Luminex法の手順の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型と、性差とを評価因子とし、各評価因子のオッズ比を乗じた発症リスクを計算し、この発症リスクを平均と分散またはパーセント区分に応じて3つ以上の複数の群を作成し、各群に応じて発症のリスクを検出することを特徴とする2型糖尿病のリスク検出法。
【請求項2】
F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)のうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする2型糖尿病の遺伝的リスク検出法。
【請求項3】
F3の−603A→G、ACEの−240A→T、PON1の532A→G、CD14の−260C→T、ADIPOQの62G→T、ABCA1の2583A→G、CX3CR1の926C→T、IPF1の−180/3G→4G、THBS2の3949T→G、F7の11496G→A、PPP1R3Aの2711G→T、PECAM1の2201G→A、PKD1−likeのG→A(Gly243Asp)、NPPAの664G→A、CETPの1061A→G、PCK1の−232C→G、AGERのG→A(Gly82Ser)、CCL5の−403G→A、APOA5の−1131T→C、F12の46C→Tのうちの少なくとも1個または2個以上の遺伝子多型を検出することを特徴とする2型糖尿病の遺伝的リスク検出法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−267728(P2007−267728A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288909(P2006−288909)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年(平成18年)8月1日 クレタ大学医学部発行の「分子医薬の国際雑誌」に発表
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(399077674)G&Gサイエンス株式会社 (21)
【出願人】(500572649)財団法人岐阜県国際バイオ研究所 (10)
【Fターム(参考)】