説明

2型腫瘍症(NEOPLASMS−II)の診断法

本発明は、一般に、DNAまたはRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変化が腫瘍の発症、発症素因および/または進行を示すという点で、核酸分子に関するものである。特に、本発明は、DNAまたはRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変化が大腸腫瘍、例えば、腺腫もしくは腺癌の発症および/または進行を示すという点で、核酸分子に向けられる。本発明のDNAまたは発現プロファイルは、結腸直腸腫瘍、例えば、結腸直腸腺癌の診断および/またはモニタリングに関するものを含むがこれらに限定されない適用の範囲において有用である。したがって、関連する局面において、本発明は、1種もしくはそれ以上の核酸分子マーカーのDNAにおける修飾またはRNAもしくはタンパク質発現プロファイルについてスクリーニングすることにより、腫瘍の発症、発症素因および/または進行について対象をスクリーニングする方法に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、DNAまたはRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変化が腫瘍の発症、発症素因および/または進行を示すという点で核酸分子に関するものである。特に、本発明は、DNAまたはRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変化が大腸腫瘍、例えば、腺腫もしくは腺癌の発症および/または進行を示すという点で核酸分子に向けられる。本発明のDNAまたは発現プロファイルは、結腸直腸腫瘍、例えば、結腸直腸腺癌の診断および/またはモニタリングに関するものを含むがこれらに限定されない適用範囲において有用である。したがって、関連する局面において、本発明は、DNAまたは1種もしくはそれ以上の核酸分子マーカーのRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変調についてスクリーニングすることにより、腫瘍の発症、発症素因および/または進行について対象をスクリーニングする方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書において著者により言及された文献の詳細な目録は、本明細書の最後にアルファベット順で示している。
【0003】
いずれの先行文献(またはそれに由来する情報)または既知のいずれの主題に対する本明細書中における言及も、先行文献(またはそれに由来する情報)または既知の主題が本明細書に関連する当分野における一般的な知識の一部を形成するという認識または容認または何らかの示唆として受け取られるものではなく、また受け取られるべきではない。
【0004】
腺腫は、腺組織に由来するか、または明確に規定された腺構造を示す上皮起源の良性腫瘍(すなわち、新生物)である。いくつかの腺種は、認識可能な組織構成要素、例えば、線維性組織(線維腺腫)および上皮構造を示し、一方で、他のもの、例えば、気管支腺種は、臨床症候群を生じ得る活性化合物を産生する。
【0005】
腺腫は、進行すると侵襲性腫瘍になり得て、そのとき腺癌と呼ばれる。したがって、腺癌は、身体の多くの器官の構成部分である腺構造から生じる悪性上皮腫瘍と定義される。腺癌なる用語はまた、腺増殖パターンを示す腫瘍に適用される。これらの腫瘍は、それらが産生する物質に基づいて(例えば、粘液分泌性および漿液性腺癌)またはそれらの細胞の顕微鏡的配置パターンに基づいて(例えば、乳頭および濾胞状腺癌)、下位区分され得る。これらの癌腫は、固形または嚢胞性(嚢胞腺癌)であり得る。各器官は、さまざまな組織型を示す腫瘍を産生し得て、例えば、卵巣は、粘液性および嚢胞腺癌を産生し得る。
【0006】
異なる器官における腺腫は、異なる作用をする。一般に、腺腫内に存在する癌腫(すなわち、癌の要部は、良性病変部内で発症する)の全体的な可能性は、約5%である。しかしながら、これは、腺腫のサイズに関連する。例えば、大腸(特に、結腸直腸)において、腺腫内での癌の出現は、1 cm未満の腺腫で稀である。そのような発症は、4 cmよりも大きな腺腫において40〜50%であると概算され、特定の組織学的変化、例えば、絨毛変化もしくは高度異形成を示す。より高度な異形成を有する腺腫は、より高い癌の発生率を有する。任意の特定の結腸直腸腺腫において、器官での現在の癌の存在もしくは将来的な癌の発症の予測因子は、サイズ(とりわけ、9mm以上)、管状形態から絨毛形態への変化、高度異形成の存在および「鋸歯状腺腫」として記載された形態学的変化を含む。任意の特定の個体において、加齢、結腸直腸腺腫もしくは癌の家族性発症、男性もしくは腺腫の多発性のさらなる特徴(癌に関するリスク因子と呼ばれる)は、将来的に増加した癌のリスクを予測する。腺腫の存在およびそのサイズ以外のものは、客観的に定義されておらず、数およびサイズ以外のそれらのすべては、誤って観察されやすく、問題となる特徴の正確な定義に関して混乱を招く。そのような因子は、評価し、定義することが困難であり得るので、癌についての現在もしくは将来的な危険の予測因子としてのそれらの値は、不正確である。
【0007】
一旦、散発性腺腫が発症すると、新規の腺腫が出現する割合は、26ヶ月以内で約30%である。
【0008】
結腸直腸腺腫は、特に豊かな国々において増加した発生率を示す1つのクラスの腺腫を示す。腺腫の原因および腺癌への進行は、なお、集中的な研究の対象である。今日までに、遺伝学的な素因に加えて環境的な要因(例えば、食事)が、この状態の発症において役割を果たしていることが推測されている。多くの研究が示しているのは、関連する環境要因は、高脂肪食、低繊維、低い野菜摂取、喫煙、肥満、運動不足および高精製炭水化物と関連することである。
【0009】
結腸腺腫は、異形成上皮の局在化した領域であり、それは、最初に、1個またはいくつかの腺窩を含み、表面から隆起はしないが、通常、増殖および/またはアポトーシスの不均衡から生じる増加したサイズの成長と共に、隆起を生じ得る。腺腫は、いくつかの方法で分類され得る。1つは、それらの肉眼的外観によるものであり、主要な記述子(descriptors)は、隆起の度合い、すなわち、平坦無茎性(すなわち、隆起型ではあるが、明確な茎を有さない)または有茎性(すなわち、茎を有する)を含む。他の肉眼的な記述子は、結腸/直腸における最大の次元での実寸および実数を含む。小腺腫(5mmもしくは10mm未満)は、滑らかな黄褐色の表面を示すが、有茎性およびとりわけ大きな腺腫は、敷石状もしくは分葉状の赤褐色の表面を有する傾向がある。より大きな無茎性腺腫は、より繊細な絨毛表面を示し得る。他の組の記述子は、病理組織学的分類を含み; 臨床値の主要な記述子は、ある程度の異形成(低または高)(浸潤性の癌の要部が存在するか否かにかかわらない)、管状腺形成から絨毛腺形成へのある程度の変化(したがって、分類は、管状、絨毛または管状絨毛である)、混合型異形成変化ならびにいわゆる「鋸歯状」腺腫およびそのサブ集団の存在を含む。腺腫は、それらが直腸および遠位結腸においてより共通する傾向があるが、結腸および/または直腸の任意の部位に位置し得る。これらのすべての記述子は、数およびサイズの例外を除いては、相対的に主観的であり、観察者間の不一致を生じやすい。
【0010】
腺腫のさまざまな記述的特徴は、検出された任意の特定の腺腫の腫瘍性状態を確認するために、および結腸直腸腺腫または癌を発症するヒトの将来的なリスクを予測するために有用である。癌もしくは新規腺腫の発症についての増加した将来的なリスクを示す個体における腺腫の特徴または腺腫の数は、下記を含む: 最も大きなサイズの腺腫(とりわけ、10mmまたはそれ以上)、ある程度の絨毛変化(とりわけ、少なくとも25%の該変化および特に100%の該変化)、高度異形成、数(3もしくはそれ以上の任意のサイズまたは組織学的状態)または鋸歯状腺腫特徴の存在。サイズもしくは数以外のものは、客観的ではなく、主観的であり、観察者間の不一致を生じやすい。将来的な腫瘍(したがって、「リスク」)のリスクについてのこれらの予測因子は、それらが、リスク率ならびに将来的な大腸内視鏡検査の必要性および頻度を決定するために使用されるので、実際に極めて重要である。したがって、より正確なリスク分類は、大腸内視鏡検査の作業負荷を減少させ、費用対効果を高め、不必要な手順からの合併症のリスクを減少させ得る。
【0011】
腺腫は、一般に、無症候性であり、したがって、それらが、浸潤的な特徴を示して癌になる前の段階で、それらを診断および処置するのを困難にしている。より大きな腺腫は、より小さな腺腫よりも悪性転化を示しやすいが、腺腫の肉眼的形態に基づく癌の存在もしくは非存在を予測することは、技術的に不可能である。無茎性腺腫は、同じサイズの有茎性腺腫よりも悪性腫瘍のより高い発生を示す。いくつかの腺腫は、排泄物中に観察されるか、もしくは検出可能であり得る血液欠失を生じ; それは、ときどき肉眼により検出可能であるが、それが生じるとき、しばしば顕微鏡的である(すなわち、「肉眼で検出できない」)。より大きな腺腫は、より小さな腺腫よりも出血しやすい傾向がある。しかしながら、排泄物中の血液はまた、肉眼で発見できるか否かにかかわらず、非腺腫状態を示し得るので、腺腫の正確な診断は、除去(すなわち、ポリープ切除)または生検による組織の獲得、ならびにその後の病理組織学的解析と組み合わせた非常に侵襲的な手順、例えば、大腸内視鏡検査の適用なしには困難である。
【0012】
したがって、現在、腺腫の原因を明らかにし、腺腫を患っている可能性の高い人々において大腸内視鏡検査の指示を可能にする診断のためのより情報的な診断プロトコールまたは補助法を開発する必要性が存在する。これらの腺腫は、迅速、慣用、かつ正確な腺腫診断を可能にする特定のプロトコールで、高リスク、進行性であり得るか、またはこれらのどちらでもない場合もある。さらに、大腸内視鏡検査後に、すべての腺腫が、とりわけ、多発性腺腫を患うヒトから除去されたことを確認することは困難であり得る。正確なスクリーニング試験は、腫瘍を大腸から確実に除去するための、早期の2回目の大腸内視鏡検査を受ける必要性を最小限にし得る。したがって、腺腫についての分子マーカーの同定は、腺腫および癌の原因を理解し、有用なスクリーニング試験の開発を含む腺腫の診断を改良し、腺腫の組織学的段階を明らかにし、腺腫の分子状態に基づいて、患者の結腸直腸腫瘍についての将来的なリスクを特徴づけて、腺腫の処置を促進するための手段を提供する。
【0013】
今日までの研究は、結腸直腸腫瘍の発症を生じる遺伝子突然変異の同定に焦点を当ててきた。しかしながら、本発明の完成に至る研究において、健全な個体においても発現する遺伝子のDNAまたはそのRNAもしくはタンパク質発現プロファイルにおける変化が、大腸の腫瘍、例えば、腺腫および腺癌の発症を示すことが決定された。さらに、大腸の腫瘍に関連して、1種もしくはそれ以上のこれらの差異的に発現する遺伝子についてのスクリーニングに基づく診断が為され得ることが決定された。またさらに関連する局面において、腫瘍性組織が本発明の方法により、またはいくらか他の方法により同定される限りにおいて、本発明はさらに、該組織を腺腫または癌として特徴づける方法を提供することが決定された。また他の局面において、これらの遺伝子の割合が、腫瘍性組織との関連ではなく、非腫瘍性組織との関連で生じる遺伝子発現により特徴づけられることが決定され、それにより、非腫瘍性もしくは正常コントロール参照レベルに対して行われる相対的な解析を必要としない定性解析の開発を促進した。したがって、本願発明者等は、腺癌および腺腫発症の診断および/またはこれらの型の腫瘍の発症により特徴づけられる状態のモニタリングを促進する一連の遺伝子を同定した。
【発明の概要】
【0014】
発明の要約
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」なる用語およびその変形は、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を除外するのではなく、示された整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を包含することを意味するものと理解される。
【0015】
本明細書で使用される「由来する」なる用語は、特定の整数もしくは整数の群が、必ずしも特定の起源から直接得られるのではなく、特定の起源から生じたことを示すものとして認識されるべきである。さらに本明細書で使用される「ある」、「および」および「その」は、内容が明らかに他のものを示していない限り複数物を含む。
【0016】
他に定義がなければ、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0017】
本明細書は、PatentIn Version 3.4プログラムを用いて作成されたアミノ酸およびヌクレオチド配列情報を含み、それは、本明細書の最後に目録として提供される。各々のアミノ酸およびヌクレオチド配列は、数字表示<210>、それに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)により、配列表中において同定される。長さ、配列の型(アミノ酸、DNAなど)および各配列についての由来生物は、各々、数字表示分野<211>、<212>および<213>で提供された情報により示される。本明細書で示されるアミノ酸およびヌクレオチド配列は、配列番号の表示、それに続く配列識別子(例えば、配列番号1、配列番号2など)により同定される。本明細書で示される配列番号は、配列表中の数字表示分野<400>で提供される情報と相関し、それに続いて配列識別子(例えば、<400>1、<400>2など)が示される。すなわち、本明細書で詳述される配列番号1は、配列表中の<400>1で示される配列と相関する。
【0018】
本発明の1つの局面は、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

および/または
(ii)
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0019】
本発明の他の局面は、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表11】

および/または
(ii)
【表12】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0020】
また他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表13】

および/または
(ii)
【表14】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0021】
また他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表15】

および/または
(ii)
【表16】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0022】
さらにまた他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表17】

および/または
(ii)
【表18】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0023】
さらにまた他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表19】

および/または
(ii)
【表20】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0024】
さらなる局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表21】

および/または
(ii)
【表22】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0025】
さらに他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表23】

および/または
(ii)
【表24】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0026】
また他のさらなる局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表25】

および/または
(ii)
【表26】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0027】
また他のさらなる局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表27】

および/または
(ii)
【表28】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0028】
関連する局面において、本発明は、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表29】

【表30】

【表31】

および/または
(ii)
【表32】

【表33】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0029】
本発明の他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表34】

【表35】

および/または
(ii)
【表36】

【表37】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌細胞または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0030】
また他の局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表38】

および/または
(ii)
【表39】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物の発現レベルが、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0031】
さらなる局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表40】

および/または
(ii)
【表41】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0032】
また他のさらなる局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表42】

および/または
(ii)
【表43】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌細胞または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0033】
さらなる他の局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該細胞または細胞集団中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表44】

【表45】

および/または
(ii)
【表46】

【表47】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0034】
また他の局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表48】

および/または
(ii)
【表49】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0035】
また他の局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表50】

および/または
(ii)
【表51】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0036】
また他の局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表52】

および/または
(ii)
【表53】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0037】
また他の局面において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表54】

および/または
(ii)
【表55】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0038】
また他の局面において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表56】

および/または
(ii)
【表57】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルが、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0039】
また他の局面において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表58】

および/または
(ii)
【表59】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0040】
本発明のさらなる局面は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表60】

および/または
(ii)
【表61】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、バックグラウンド腫瘍組織レベルよりも実質的に高くないレベルでの(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物の発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0041】
本発明の関連する局面は、
(i) 上記の任意の1種もしくはそれ以上の腫瘍マーカー遺伝子に対応するヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%の同一性を示す配列または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(ii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(iii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド; または
(iv) (i)の核酸分子によりコードされる任意の1種もしくはそれ以上のタンパク質またはその誘導体、断片もしくはホモログに結合可能なプローブ
の複数を含む分子アレイであって、(i)の該マーカー遺伝子もしくは(iv)のタンパク質の発現レベルが、大腸に由来する細胞または細胞サブ集団の腫瘍性状態を示す、分子アレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、アルコールデヒドロゲナーゼIB (クラスI)βポリペプチドのグラフ表示である。
【図2】図2は、正常および腫瘍組織ならびに細胞株におけるMAMDC2およびGPM6Bのメチル化のグラフ表示である。パネルAは、入力DNAレベルについて標準化するためにCAGE遺伝子の増幅を用いて、メチル化特異的PCRにより評価されたMAMDC2遺伝子のメチル化レベルを示す。各点は、個々の組織サンプルまたは細胞株を示す。サンプルは、18個の結腸直腸癌組織、12個の結腸直腸腺腫、22個の対応正常結腸直腸組織、6個の他の正常組織および細胞株、ならびに6個の大腸癌細胞株由来のDNAを含んでいた。パネルBは、COBRAアッセイにより評価されたGPM6B遺伝子のメチル化の相対的レベルを示す。メチル化のレベルを0(制限酵素消化なし)〜5(完全な制限酵素消化)で点数化した。各点は、単一組織サンプルを示す。サンプルは、14個の結腸直腸癌組織、11個の結腸直腸腺腫および22個の対応正常組織を含んでいた。
【図3】図3は、hCG_1815491からの予測されるRNA変異型の略図を示す。エクソン配列を位置づけるために、ヒト第16染色体上のマップ領域8579310〜8562303からのcDNAクローンを用いた。矢印: PCRにより個々のRNA変異型の測定を可能にするために、オリゴヌクレオチドプライマーを設計した。スプライス接合部を覆うプライマーを、実際のオリゴヌクレオチドプライマー配列には含まれないスパニングイントロン配列として示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、部分的に、大腸細胞集団を腫瘍性状態に関して、特に、それらが悪性であるか、または前癌状態であるか特徴づける遺伝子発現プロファイルの解明に基づく。この知見は、現在、コントロール発現パターンおよびレベルと比較したこれらの分子の発現の下方調節についてのスクリーニングに基づいて、大腸腫瘍の発症または発症素因についてスクリーニングするか、または大腸に由来する細胞集団を特徴づける一般的な方法の開発を促進している。この目的を達成するために、正常なもしくは非腫瘍性レベルと比較した対象遺伝子の発現レベルを評価することに加えて、これらの一部が病的状態で発現していないことを決定し、それにより、試験バックグラウンドとの比較のみの評価を必要とすることに基づく単純な定性試験の開発を促進している。
【0044】
本発明によると、上記の遺伝子を発現する細胞が腫瘍性であるか否かに依存して、それらの発現レベルが異なる変化を示すという点で、該遺伝子が変調することが決定される。遺伝子「発現産物」または「遺伝子の発現」についての言及は、転写産物(例えば、プライマリーRNAもしくはmRNA)または翻訳産物、例えば、タンパク質についての言及であることが理解されるべきである。この点において、産生される発現産物(すなわち、RNAもしくはタンパク質)のレベルにおける変化、遺伝子が関連するクロマチンタンパク質における変化、例えば、アミノ酸9位もしくは27位のリジン上でメチル化(抑制的修飾)されたヒストンH3の存在、または発現を下方調節するように作用するDNA自身における変化、例えば、DNAのメチル化の変化についてスクリーニングすることにより、遺伝子の発現レベルにおける変化を評価することが可能である。これらの遺伝子およびそれらの遺伝子発現産物は、それらがRNA転写産物、発現を下方調節するように作用するDNAにおける変化またはコードされたタンパク質のいずれであるかに関わらず、集合的に「腫瘍マーカー」と呼ばれる。
【0045】
したがって、本発明の1つの局面は、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表62】

【表63】

【表64】

【表65】

【表66】

【表67】

および/または
(ii)
【表68】

【表69】

【表70】

【表71】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0046】
1つの態様において、該発現は、メチル化、特に、高メチル化に影響を与えるDNA変化についてスクリーニングすることにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0047】
「大腸」についての言及は、大腸の6つの解剖上の領域のうちの1つに由来する細胞についての言及として理解されるべきであり、該領域は、回腸の末端領域から開始され、これらは、下記のものである:
(i) 盲腸;
(ii) 上行結腸;
(iii) 横行結腸;
(iv) 下行結腸;
(v) S状結腸; および
(vi) 直腸。
【0048】
「腫瘍」についての言及は、病変、腫瘍または他の封入もしくは非封入塊または増殖の他の形態についての言及として理解されるべきであり、腫瘍性細胞を含む。「腫瘍性細胞」は、異常な増殖を示す細胞についての言及として理解されるべきである。「成長」なる用語は、その最も広い意味で理解されるべきであり、増殖についての言及を含む。この点において、異常な細胞増殖の例は、細胞の制御不能増殖である。他の例は、細胞における失敗したアポトーシスであり、その結果、通常の寿命を延長することとなる。腫瘍性細胞は、良性もしくは悪性細胞であり得る。好ましい態様において、対象となる腫瘍は、腺腫または腺癌である。本発明を任意の1つの理論または作用形態に限定することなく、腺腫は、一般に、上皮組織に由来するか、または明確に定義された上皮構造を示す上皮起源の良性腫瘍である。これらの構造は、腺のような外観を呈し得る。それは、例えば、良性腺腫から悪性腺癌への進行と共に生じる腺腫内の悪性細胞集団を含み得る。
【0049】
好ましくは、該腫瘍性細胞は、腺腫または腺癌であり、さらに好ましくは、結腸直腸腺腫もしくは腺癌である。
【0050】
上記のサブ段落(i)および(ii)において詳述された遺伝子および転写産物の各々は、それらのコードされるタンパク質と同様に、当業者に既知であり得る。腫瘍マーカーとしてのこれらの遺伝子の発現産物および転写産物の同定は、Affymetrix HGU133Aor HGU133B遺伝子チップを用いた差異的発現解析により生じた。この目的を達成するために、各チップを、約45,000個のプローブセットにより特徴づけ、それは、ゲノムから転写されるRNAを検出する。平均して約11個のプローブ対は、RNA転写産物の重複もしくは連続した領域を検出する。一般に、本明細書に記載されたRNA転写産物がAffymetrixプローブセットにより同定可能な遺伝子は、十分に既知である特徴づけられた遺伝子である。しかしながら、プローブセットのいくつかが、まだ定義されていないRNA転写産物を検出する限りにおいて、これらの転写産物は、“Affymetrixプローブxにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物”として示される。ある場合において、多くの遺伝子は、単一のプローブセットで検出され得る。しかしながら、これは、対象遺伝子もしくは転写産物の発現レベルを検出し得る方法について、限定することを意図するものではないと理解されるべきである。第1の例において、対象遺伝子産物はまた、Affymetrix遺伝子チップ上に存在する他のプローブセットにより検出され得るものと理解されるであろう。単一プローブセットについての言及は、単に、関心のある遺伝子転写産物の識別子として包含される。しかしながら、転写産物についての実際のスクリーニングの観点で、Affymetrixプローブがしばしば標的とする3'末端の600bpの転写産物領域だけでなく、転写産物の任意の領域に向けられたプローブもしくはプローブセットを利用し得る。
【0051】
したがって、上記の遺伝子および転写産物ならびにそれらの転写および翻訳発現産物の各々についての参照は、これらの分子のすべての形態およびその断片もしくは変異型についての参照として理解されるべきである。当業者により認識されているとおり、いくつかの遺伝子は、個体間でアレル変異型を示すものとして既知である。したがって、本発明は、本発明の診断的適用の観点で、実際の核酸配列間の少数の遺伝学的変異型が個体間で存在し得るか、または1個体内で対象となる遺伝子の2もしくはそれ以上のスプライス変異型が存在し得る事実にも関わらず、同じ結果を達成する変異型にまで拡張されるものと理解されるべきである。したがって、本発明は、RNAのすべての形態(例えば、mRNA、プライマリーRNA転写産物、miRNAなど)、cDNAおよび代替的スプライシングまたは他の任意の突然変異から生じるペプチドアイソフォーム、多型またはアレル変異型まで拡張されるものと理解されるべきである。それはまた、単量体、多量体、融合タンパク質または他の複合体として存在しようとも、任意のサブユニットポリペプチド、例えば、産生され得る前駆体型についての言及を含むように理解されるべきである。
【0052】
この目的を達成するために、本発明に包含される遺伝子の観点で、そのような変異型の存在を決定するための手段、および同様に特徴づけるための手段が実施例6に記載されている。本発明の遺伝子がAffymetrixプローブセットを参照することにより記載されている程度まで、表6は、各プローブセットが標的とする核酸配列の詳細を提供する。この情報に基づいて、当業者は、該配列が部分を形成するという観点で、通常の手順により遺伝子を同定し得る。また、これを実施するための典型的なプロトコールを実施例6に概略する。
【0053】
試験の対象である「個体」は、任意のヒトもしくは非ヒト哺乳類であり得るものと理解されるべきである。非ヒト哺乳類の例は、霊長類、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバ)、研究室試験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)および捕獲野生動物(例えば、シカ、キツネ)を含む。好ましくは、哺乳類は、ヒトである。
【0054】
本発明の方法は、生物学的サンプル中の腫瘍マーカーのレベルとこれらのマーカーのコントロールレベルの比較に基づく。「コントロールレベル」は、「正常なレベル」であり得て、それは、腫瘍性ではない対応する大腸細胞もしくは細胞集団により発現されるマーカーのレベルである。
【0055】
正常な(または「非腫瘍性の」)レベルは、試験対象と同じ個体に由来する組織を用いて決定され得る。しかしながら、これは、関連する個体についてかなり侵襲的であり得て、したがって、問題となる患者以外の個体から得た個々の、もしくは集合的な結果を反映する標準結果と比較して試験結果を解析することは、より簡便であり得ることが理解されるであろう。この後者の形態は、関心のある試験サンプルである単一の生物学的サンプルの収集および解析を必要とするキットの設計を可能にするので、実際に、好ましい解析法である。正常レベルを提供する標準結果は、当業者に既知の任意の適当な手段により計算され得る。例えば、正常組織の集団は、本発明の腫瘍マーカーのレベルの観点で評価され得て、それにより、すべての将来の試験サンプルが解析される基準値もしくは値の範囲を提供し得る。また、正常レベルは、特定のコホートの対象から、該コホートに由来する試験サンプルの観点での使用のために決定され得るものと理解されるべきである。したがって、年齢、性別、民族性もしくは健康状態のような特性の観点において異なるコホートに対応する多くの基準値もしくは範囲が決定され得る。該「正常レベル」は、個別的なレベルまたは一連の範囲のレベルであり得る。正常レベルと比較したときの対象遺伝子の発現レベルの減少は、組織が腫瘍性であることを示す。
【0056】
任意の1つの理論もしくは作用形態に本発明を限定することなく、上記の遺伝子もしくは転写産物の各々は、大腸の腫瘍性細胞と非腫瘍性細胞の間において、単独で、もしくは組み合わせで差異的に発現し、その結果、大腸腫瘍の存在について診断的であるが、これらの遺伝子のいくつかの発現は、特に重要なレベルの感受性、特異性ならびにポジティブおよびネガティブな予測値を示すことが見出された。したがって、好ましい態様において、これらの遺伝子の1種もしくはそれ以上の発現レベルをスクリーニングし、評価し得る。この目的を達成するために、任意の1つの理論もしくは実施方法に本発明を限定することなく、下記のマーカーは、本明細書に例示された方法により評価したとき、非腫瘍性組織と比較して3-11倍低いレベルで腫瘍性組織において発現することが決定された。
【0057】
【表72】

【0058】
【表73】

【0059】
【表74】

【0060】
【表75】

【0061】
したがって、特に、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表76】

および/または
(ii)
【表77】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0062】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0063】
他の態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表78】

および/または
(ii)
【表79】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0064】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0065】
また他の態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表80】

および/または
(ii)
【表81】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0066】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0067】
また他の好ましい態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表82】

および/または
(ii)
【表83】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0068】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0069】
また他の好ましい態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表84】

および/または
(ii)
【表85】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0070】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0071】
さらなる態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表86】

および/または
(ii)
【表87】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0072】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0073】
さらなる他の態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表88】

および/または
(ii)
【表89】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0074】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0075】
また他のさらなる態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表90】

および/または
(ii)
【表91】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0076】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0077】
また他のさらなる態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表92】

および/または
(ii)
【表93】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0078】
好ましくは、該コントロールレベルは、非腫瘍性レベルである。
【0079】
本発明のこれらの局面によると、該大腸組織は、好ましくは、結腸直腸組織である。
【0080】
1つの態様において、該発現は、メチル化、特に、高メチル化に影響を与えるDNA変化についてスクリーニングすることにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0081】
本発明の検出法は、任意の適当な生物学的サンプルで行われ得る。この目的を達成するために、「生物学的サンプル」についての言及は、動物に由来する生物学的材料の任意のサンプル、例えば、細胞物質、生体液(例えば、血液)、糞便、組織サンプル(例えば、生検サンプル)、外科的サンプルまたは動物の体内に導入され、次いで、除去される液体(例えば、腸洗浄により回収される溶液)を含むがこれらに限定されないサンプルについての言及として理解されるべきである。本発明の方法により試験される生物学的サンプルは、直接試験され得るか、または試験前にいくつかの型の処理を必要とし得る。例えば、生検または外科的サンプルは、試験前に均一化を必要とし得るか、またはそれは、個々の遺伝子の定性的発現レベルのインサイチュ試験のために切片化を必要とし得る。あるいは、細胞サンプルは、試験前に透過化を必要とし得る。さらに、生物学的サンプルが液体型でない場合(そのような形態が試験のために必要とされるとき)、それは、サンプルを可動化するために、試薬、例えば、バッファーの添加を必要とし得る。
【0082】
腫瘍マーカー遺伝子産物が生物学的サンプル中に存在する限り、生物学的サンプルを直接試験し得るか、または生物学的サンプル中に存在する全ての、もしくはいくらかの核酸物質を試験前に単離し得る。また他の例において、サンプルは、部分的に精製されているか、または解析前に濃縮されたものであり得る。例えば、生物学的サンプルが極めて多様な細胞集団を含む程度まで、特に関心のあるサブ集団について濃縮することが望ましくあり得る。標的細胞集団またはそれに由来する分子を試験前に調製すること、例えば、生ウイルスを不活化すること、またはゲルに流すことは、本発明の範囲内である。また、生物学的サンプルは、新鮮なまま集められるか、または試験前まで貯蔵される(例えば、凍結による)か、もしくは試験前まで処理され得る(例えば、培養による)。
【0083】
どの型のサンプルが本明細書に開示された方法による試験のために最も適当であるかの選択は、状況の性質に依存し得る。好ましくは、該サンプルは、糞便(排泄物)サンプル、腸洗浄、外科的切除、組織または血液サンプルである。
【0084】
関連する局面において、上記の特定のマーカーは、癌発生と比較して、腺腫発生をより示すものである(逆もまた然り)ことが決定された。これは、当業者が本発明の方法により検出された腫瘍の潜在的な性質をより明確に特徴づけることを可能にしたので、極めて貴重な知見である。
【0085】
したがって、関連する局面において、本発明は、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表94】

【表95】

【表96】

および/または
(ii)
【表97】

【表98】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0086】
本発明のこの局面の他の好ましい態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表99】

【表100】

および/または
(ii)
【表101】

【表102】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌細胞または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0087】
この局面によると、該コントロールレベルは、好ましくは、非腫瘍性レベルであり、該大腸組織は、結腸直腸組織である。特に、該生物学的サンプルは、排泄物サンプルまたは血液サンプルである。
【0088】
1つの態様において、該発現は、メチル化、特に、高メチル化に影響を与えるDNA変化についてスクリーニングすることにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0089】
関連する局面において、本発明のマーカーのサブ集団は、正常レベルよりも低いレベルで発現するのみならず、それらの発現パターンは、バックグラウンドコントロールの発現レベルを超えた発現レベルが腫瘍性組織において検出されないという事実により特徴づけられることが決定された。したがって、この決定により、コントロールバックグラウンドレベルと比較してマーカー発現を検出するように簡単に設計される定性スクリーニング系の開発が可能となった。したがって、本発明のこの局面において、該「コントロールレベル」は、「バックグラウンドレベル」である。
【0090】
したがって、この局面において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表103】

および/または
(ii)
【表104】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0091】
最も好ましい態様において、該遺伝子または遺伝子産物は、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表105】

および/または
(ii)
【表106】

から選択される。
【0092】
好ましくは、該腫瘍は、腺腫または腺癌であり、該消化管組織は、結腸直腸組織である。
【0093】
また他の態様において、これらのマーカーのさらなるサブ集団は、腺腫発生のより強い特徴を有し、一方で、他のマーカーは、癌発生に特徴的であることが決定されている。したがって、対象の腫瘍の特徴づけに関連して、定性指標情報を取得する簡便な方法を提供する。
【0094】
この態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表107】

および/または
(ii)
【表108】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0095】
また他の好ましい態様において、個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表109】

および/または
(ii)
【表110】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌細胞または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0096】
好ましくは、該大腸組織は、結腸直腸組織である。
【0097】
より好ましくは、該生物学的サンプルは、排泄物サンプルまたは血液サンプルである。
【0098】
1つの態様において、該発現は、メチル化、特に、高メチル化に影響を与えるDNA変化についてスクリーニングすることにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0099】
上記したとおり、本発明は、大腸に局在する腫瘍性細胞もしくは細胞集団についてスクリーニングするように設計される。したがって、「細胞もしくは細胞集団」についての言及は、個々の細胞もしくは細胞の集団として理解されるべきである。該細胞の集団は、拡散した細胞の集団、細胞懸濁液、封入された細胞の集団または組織の形態を取る細胞の集団であり得る。
【0100】
「発現」についての言及は、核酸分子の転写および/または翻訳についての言及として理解されるべきである。この点において、本発明は、RNA転写産物(例えば、プライマリーRNAもしくはmRNA)の形態を取る腫瘍マーカー発現産物をスクリーニングする観点で例示されている。「RNA」についての言及は、任意のRNAの形態、例えば、プライマリーRNAもしくはmRNAについての言及を包含するものとして理解されるべきである。いかなる手段によっても本発明を限定することなく、増加もしくは減少したRNA合成を生じる遺伝子転写の変調はまた、タンパク質産物を産生するためのこれらのいくつかのRNA転写産物(例えば、mRNA)の翻訳と相関し得る。したがって、本発明はまた、細胞もしくは細胞集団の腫瘍性状態の指標として、腫瘍マーカータンパク質産物の変調したレベルもしくはパターンについてスクリーニングすることに向けられる検出方法まで拡張される。1つの方法は、mRNA転写産物および/または対応するタンパク質産物についてスクリーニングすることであるが、本発明は、この点に限定されるものではなく、腫瘍マーカー発現産物の任意の他の形態、例えば、プライマリーRNA転写産物についてのスクリーニングにまで拡張されることが理解されるべきである。
【0101】
マーカーの発現の下方調節についてスクリーニングするという観点で、また、DNAレベルにおける検出可能な変化は、遺伝子発現活性における変化の指標であり、したがって、発現産物レベルにおける変化の指標であることは当業者に既知である。該変化は、DNAメチル化における変化を含むが、これらに限定されない。したがって、本明細書における「発現レベルをスクリーニングすること」およびこれらの「発現レベル」とコントロール「発現レベル」の比較についての言及は、転写に関連するDNA要因、例えば、遺伝子/DNAメチル化パターンを評価することについての言及として理解されるべきである。
【0102】
また、クロマチン構造における変化が遺伝子発現における変化の指標であることは当業者に既知である。遺伝子発現のサイレンシングは、しばしば、クロマチンタンパク質の修飾、すなわち、実施例で十分に検討されたとおり、ヒストンH3の9位および27位のいずれかまたは両方におけるリジンのメチル化と関連し、一方で、活性なクロマチンは、ヒストンH3のリジン9のアセチル化により示される。したがって、抑制的もしくは活性的修飾を有するクロマチンと遺伝子配列の結合は、遺伝子の発現レベルを評価するために使用され得る。
【0103】
任意の特定の状況において、最も適当なスクリーニング法を決定することは、当業者の常識の範囲内である。この目的を達成するために、細胞により分泌されるか、または膜に結合する発現産物をコードすることが既知である遺伝子を、下記の表に詳述する。分泌されるか、または膜に結合する腫瘍マーカーについてのスクリーニングは、診断的スクリーニング産物の設計の観点で特別な利点を提供し得ることが理解されるであろう。
【0104】
【表111】

【0105】
【表112】

【0106】
【表113】

【0107】
【表114】

【0108】
【表115】

【0109】
【表116】

【0110】
「核酸分子」についての言及は、デオキシリボ核酸およびリボ核酸分子ならびにそれらの断片についての言及として理解されるべきである。したがって、本発明は、生物学的サンプル中のmRNAレベルについて直接スクリーニングするか、または関心のあるmRNA集団から逆転写された相補的なcDNAについてスクリーニングすることまで拡張される。DNAまたはRNAについてのスクリーニングに向けられる方法を設計することは、当業者の常識の範囲内である。上記したとおり、本発明の方法はまた、対象となるmRNAから翻訳されるタンパク質産物またはゲノムDNA自体についてスクリーニングすることにまで拡張される。
【0111】
1つの好ましい態様において、遺伝子発現のレベルは、タンパク質産物をコードする遺伝子についての言及により測定され、より好ましくは、該発現レベルは、タンパク質レベルで測定される。したがって、本発明が上記の表に詳述されたマーカーについてのスクリーニングに向けられる限り、該スクリーニングは、好ましくは、コードされるタンパク質に向けられる。
【0112】
他の特に好ましい態様において、該遺伝子発現は、ゲノムDNAのメチル化を解析することにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0113】
上記したとおり、本発明は、発現した核酸分子(例えば、mRNA)の検出の観点で例示されているが、それはまた、対象となる遺伝子のタンパク質産物についてのスクリーニングに基づく検出法を包含するものと理解されるべきである。本発明はまた、1種もしくはそれ以上の生物学的サンプル中のタンパク質および/または核酸分子を同定することに基づく検出法を包含するものと理解されるべきである。これは、関心のある腫瘍マーカーのいくつかがタンパク質産物をコードしない遺伝子もしくは遺伝子断片に相当し得る場合に、特に重要であり得る。したがって、上記の場合には、タンパク質について試験することができず、対象となるマーカーは、転写発現プロファイルまたはゲノムDNAにおける変化に基づいて評価されなければならないであろう。
【0114】
「タンパク質」なる用語は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質(タンパク質断片を含む)を包含するものとして理解されるべきである。タンパク質は、グリコシル化されているか、またはグリコシル化されていないものでもよく、および/またはタンパク質と融合、連結、結合もしくは共役した一連の他の分子、例えば、脂質、糖質または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を含んでいてもよい。本明細書の「タンパク質」についての言及は、アミノ酸配列を含むタンパク質および他の分子、例えば、アミノ酸、脂質、糖質または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質と結合したタンパク質を含む。
【0115】
本発明の腫瘍マーカーによりコードされるタンパク質は、多量体型であり得て、これは、2種もしくはそれ以上の分子が共に結合していることを意味する。同じタンパク質分子が共に結合するとき、該複合体は、ホモ多量体である。ホモ多量体の例は、ホモ二量体である。少なくとも1種のマーカータンパク質が少なくとも1種の非マーカータンパク質と結合するとき、該複合体は、ヘテロ多量体、例えば、ヘテロ二量体である。
【0116】
「断片」についての言及は、対象とする核酸分子またはタンパク質の部分についての言及として理解されるべきである。これは、特に、対象とするRNAが、消化管の環境のために分解されやすいか、または断片化されやすいので、排泄物サンプル中の変調したRNAレベルについてスクリーニングするという観点で関連する。したがって、実際には、対象とするRNA分子の断片を検出し得て、該断片は、適当な特異的プローブの使用により同定される。
【0117】
腫瘍、例えば、腺腫もしくは腺癌の「発症」についての言及は、異形成を示す個体の1個もしくはそれ以上の細胞についての言及として理解されるべきである。この点に関して、腺腫または腺癌は、異形成細胞塊が発現したとき、十分に発症していると考え得る。あるいは、腺腫または腺癌は、相対的に少ない異常細胞分裂のみが診断時において生じているとき、極めて早期の段階であり得る。本発明はまた、個体の腫瘍、例えば、腺腫もしくは腺癌の発症素因の評価にまで拡張される。いかなる手段によっても本発明を限定することなく、変調した腫瘍マーカーのレベルは、腫瘍を発症する個体の素因、例えば、腺腫もしくは腺癌または他の腺腫もしくは腺癌の将来的な発症を示し得る。
【0118】
本発明の他の関連する局面において、腺腫であるか、または癌であるかという観点で、大腸の腫瘍性組織の特徴づけを可能にするマーカーが同定された。この進展により本願は、現在利用されている伝統的な方法以外の方法を用いて、組織を特徴づける簡便で正確な方法を提供する。
【0119】
本発明のこの局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該細胞もしくは細胞集団中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表117】

【表118】

および/または
(ii)
【表119】

【表120】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0120】
他の局面において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表121】

および/または
(ii)
【表122】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0121】
好ましくは、該消化管組織は、結腸直腸組織である。
【0122】
1つの態様において、該発現は、メチル化、特に、高メチル化に影響を与えるDNA変化についてスクリーニングすることにより評価される。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0123】
「腺腫コントロールレベル」または「癌コントロールレベル」についての言及は、腺腫または消化管癌それぞれの集団における該遺伝子発現のレベルについての言及として理解されるべきである。「正常レベル」に関して上記したとおり、対象となるレベルは、個別的なレベルまたは一連の範囲のレベルであり得る。したがって、腺腫コントロールレベル」または「癌コントロールレベル」の定義は、大腸細胞の腫瘍性集団による遺伝子発現との関連で、「正常レベル」に対応する定義を含むのとして理解されるべきである。
【0124】
本発明のこの局面において、対象となる解析は、腫瘍性細胞の集団に関して行われる。これらの細胞は、いかなる方法で得てもよく、例えば、腸洗浄により、もしくは消化管サンプル、例えば、排泄物サンプルから集められた、脱落させた(sloughed off)腫瘍性細胞であってもよい。あるいは、対象となる細胞は、生検または他の外科的技術により取得され得る。
【0125】
いかなる手段によっても本発明のこの局面を限定することなく、この局面の本発明のいくつかのマーカーは、腫瘍性細胞のレベル以下の特に有意なレベルで発現することが決定された。例えば、本明細書に例示された方法により評価されたとき、下記のマーカーの観点で、3倍〜9倍減少した発現レベルが観察された(それは、消化管腺腫を示す)。
【0126】
【表123】

【0127】
他の例において、本明細書の例示的な方法により評価されるとき、3〜5倍の減少した発現レベルが、消化管癌を示す下記のマーカーに関して観察された。
【0128】
【表124】

【0129】
この態様によると、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表125】

および/または
(ii)
【表126】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0130】
他の態様において、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表127】

および/または
(ii)
【表128】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0131】
好ましくは、該消化管組織は、結腸直腸組織である。
【0132】
さらにより好ましくは、該生物学的サンプルは、組織サンプルである。
【0133】
他の好ましい態様において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表129】

および/または
(ii)
【表130】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0134】
また他の好ましい態様において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表131】

および/または
(ii)
【表132】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0135】
また他の好ましい態様において、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表133】

および/または
(ii)
【表134】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法に向けられる。
【0136】
好ましくは、該消化管組織は、結腸直腸組織である。
【0137】
さらにより好ましくは、該生物学的サンプルは、組織サンプルである。
【0138】
また他の関連する局面において、本発明のこの局面のマーカーの一部は、腫瘍性組織において実質的にバックグラウンドレベルを超えたレベルで検出可能ではない場合に、これらのマーカーが癌性組織を示すという点で、腫瘍性組織特徴づけの定性的マーカーとして有用であることが決定された。
【0139】
この局面によると、本発明は、個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表135】

および/または
(ii)
【表136】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、バックグラウンド腫瘍組織レベルよりも実質的に高くないレベルでの(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物の発現が、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す方法を提供する。
【0140】
好ましくは、該消化管組織は、結腸直腸組織である。
【0141】
さらにより好ましくは、該生物学的サンプルは、組織サンプルである。
【0142】
最も好ましい態様において、本発明の方法は、好ましくは、本発明のマーカーによりコードされるタンパク質またはゲノムDNAのDNAメチル化における変化についてのスクリーニングに向けられる。他の態様において、発現は、抑制的修飾、例えば、ヒストンH3のリジン9もしくは27のメチル化を有するクロマチンタンパク質とDNAの結合により評価される。
【0143】
好ましい方法は、腫瘍発症もしくはその素因を診断する目的で、腫瘍マーカー発現産物もしくはDNA変化を検出することであるが、該マーカーレベルの逆の変化の検出が、特定の状況下、例えば、腫瘍状態、例えば、腺腫もしくは腺癌発症を調節することに向けられた治療的もしくは予防的処置の有効性をモニターするために望ましくあり得る。例えば、対象となるマーカーの減少した発現が、個体が腺腫もしくは腺癌発症により特徴づけられる状態を発症したことを示す場合に、例えば、治療レジメンの実施後のこれらのマーカーレベルの増加についてのスクリーニングは、対象となる個体の状態の回復またはその改善の他の形態を示すために利用され得る。
【0144】
したがって、本発明の方法は、腫瘍発症のリスクがあると考えられる個体の1回限りの試験(one off test)として、もしくは継続的モニターとして、または腫瘍発症を阻害するか、もしくは遅延させることに向けられる治療的もしくは予防的処置レジメンの有効性のモニターとして有用である。これらの状況において、任意の1個もしくはそれ以上のクラスの生物学的サンプル中における腫瘍マーカー発現レベルの変調のマッピングは、個体の状態または現在使用中である治療的もしくは予防的レジメンの有効性に関する重要な指標である。したがって、本発明の方法は、それらの正常レベル(上記したとおり)、バックグラウンドコントロールレベル、癌レベル、腺腫レベルと比較して、または該個体の生物学的サンプルから決定されたより以前の1個もしくはそれ以上のマーカー発現と比較して、個体中のマーカー発現レベルの増加もしくは減少についてモニタリングすることにまで拡張されるものと理解されるべきである。
【0145】
生物学的サンプル中の対象となる発現腫瘍マーカーを評価する方法は、当業者に既知の任意の適当な方法により達成され得る。この目的を達成するために、異種細胞集団(例えば、腫瘍生検もしくは異種出発集団から濃縮された細胞集団)または組織切片を調べる場合に、当業者は、関心のある1個もしくはそれ以上のマーカーの発現レベルの存在または下方調節を検出するために、広範な技術、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、イムノアッセイなどによる発現プロファイルの評価(下記で詳述する)を利用し得ることが理解される。しかしながら、異種細胞集団または細胞の異種集団が見出される体液、例えば、血液サンプルをスクリーニングする場合に、特定のマーカーの発現レベルの非存在もしくは減少は、サンプル中に存在する非腫瘍性細胞によるマーカーの固有の発現のために検出不能であり得る。すなわち、細胞のサブ集団の発現レベルの減少は、検出不能であり得る。この状況において、本発明の1個もしくはそれ以上のマーカーの発現レベルの腫瘍性細胞集団における減少を検出するより適当なメカニズムは、間接的な手段、例えば、エピジェネティック変化の検出によるものである。
【0146】
任意の1つの理論または作用形態に本発明を限定することなく、発生の間、遺伝子発現は、遺伝子配列における任意の変化なしに、異なる細胞系で発現についての遺伝子の利用を変化させる過程により制御され、これらの状態は、細胞分裂を介して承継され得る(いわゆる、エピジェネティック承継と呼ばれる過程)。エピジェネティック承継は、DNAメチル化(5-メチルシトシン(5meC)を生じるシトシンの修飾)の組み合わせにより、およびDNAをパッケージするヒストン染色体タンパク質の修飾により決定される。したがって、CpG部位におけるDNAのメチル化ならびにヒストンH3リジン9の脱アセチル化およびリジン9もしくは27におけるメチル化のような修飾は、不活性なクロマチンと関連し、一方で、DNAメチル化の欠如、ヒストンH3リジン9のアセチル化という逆の状態は、開裂クロマチンおよび活性化遺伝子発現と関連する。癌において、この遺伝子発現のエピジェネティック制御が、しばしば、破壊されることが見出される(Esteller & Herman, 2000; Jones & Baylin, 2002)。腫瘍抑制もしくは転移抑制遺伝子のような遺伝子は、しばしば、DNAメチル化により抑制されることが見出され、一方で、他の遺伝子は、低メチル化状態で、不適当に発現し得る。したがって、癌における発現の減少もしくは欠失を示す遺伝子の中で、これは、しばしば、該遺伝子のプロモーターもしくは制御領域のメチル化により特徴づけられる。
【0147】
非常に多くの正常なDNAの存在下においてさえ、さまざまな方法が特定の遺伝子の異常なメチル化DNAの検出のために利用可能である(Clark 2007)。したがって、免疫組織化学を用いた方法以外にタンパク質もしくはRNAレベルの検出が困難であり得る遺伝子の発現欠失は、しばしば、遺伝子プロモーターの高メチル化DNAの存在により、腫瘍サンプルおよび癌患者の体液で検出され得る。同様に、DNA低メチル化は、その発現が癌で高められる特定の遺伝子の検出のために使用され得る。癌におけるエピジェネティック変化およびクロマチン変化はまた、修飾されたヒストンと特定の遺伝子の改変された結合で明らかであり(Esteller, 2007); 例えば、抑制される遺伝子は、しばしば、リジン9で脱アセチル化され、メチル化されたヒストンH3と結合することが見出される。改変されたヒストンを標的とする抗体の使用は、特定のクロマチン状態と結合したDNAの単離および癌診断におけるその潜在的な使用を可能にする。
【0148】
特に、対象となる生物学的サンプルが多くの非腫瘍性細胞で汚染されていないとき、遺伝子発現レベルにおける変化を検出する他の方法は、下記を含むがこれらに限定されない:
【0149】
(i) インビボ検出
分子イメージングは、腸組織における改変されたマーカーの発現を曝露することが可能なイメージングプローブもしくは試薬の投与後に使用され得る。
【0150】
分子イメージング(Moore et al., BBA, 1402:239-249, 1988; Weissleder et al., Nature Medicine 6:351-355, 2000)は、現在、「古典的」診断イメージング技術、例えば、X線、コンピューター断層撮影(CT)、MRI、ポジトロン断層法(PET)もしくは内視鏡検査を用いて視覚化されている巨視的特徴(macro-features)と相関する分子発現のインビボイメージングである。
【0151】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)による、細胞内のRNA発現の下方調節の検出、または定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(QRTPCR)もしくは競合的RT-PCR 産物のフローサイトメトリー定量のような技術による、細胞からの抽出物のRNA発現の下方調節の検出(Wedemeyer et al., Clinical Chemistry 48:9 1398-1405, 2002)。
【0152】
例えば、アレイ技術によるRNAの発現プロファイルの評価(Alon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA: 96, 6745-6750, June 1999)。
【0153】
「マイクロアレイ」は、固相支持体の表面上に形成された、好ましくは、個別的な領域(各々は、限定された領域を有する)の直線的もしくは多次元アレイである。マイクロアレイ上の個別的な領域の密度は、単一固相支持体の表面上で検出される標的ポリヌクレオチドの総数により決定される。本明細書で使用されるときDNAマイクロアレイは、標的ポリヌクレオチドを増幅させるか、もしくはクローン化させるために使用されるチップもしくは他の表面上に置かれたオリゴヌクレオチドプローブのアレイである。アレイにおける各々の特定のプローブ集団の位置は、既知であるので、標的ポリヌクレオチドの同定は、該マイクロアレイにおける特定の位置へのそれらの結合に基づいて決定され得る。
【0154】
最近のDNAマイクロアレイ技術の発展により、単一の固相支持体上での複数の標的核酸分子の大規模アッセイが可能となっている。米国特許第5,837,832号(Chee et al.)および関連する特許出願は、サンプル中の特定の核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出のために、一連のオリゴヌクレオチドプローブを固定することを開示している。関心のある組織から単離された関心のある標的ポリヌクレオチドは、DNAチップとハイブリダイズし、特定の配列が、個別的なプローブ位置で、標的ポリヌクレオチド選択およびハイブリダイゼーションの程度に基づいて検出される。1つの重要なアレイの使用は、異なる遺伝子発現の解析における使用であり、そこでは、異なる細胞もしくは組織(しばしば、関心のある組織)とコントロール組織での遺伝子発現プロファイルが比較され、各組織の遺伝子発現における任意の差異が同定される。そのような情報は、特定の組織型で発現する遺伝子の型の同定および発現プロファイルに基づく状態の診断に有用である。
【0155】
1つの態様において、関心のあるサンプルからのRNAを逆転写にかけ、標識化cDNAを取得する。米国特許第6,410,229号(Lockhart et al.)を参照のこと。次いで、cDNAを、既知の順序でチップ上もしくは他の表面上に並べた既知の配列のオリゴヌクレオチドもしくはcDNAとハイブリダイズさせる。他の態様において、RNAを生物学的サンプルから単離し、cDNAプローブを連結したチップとハイブリダイズさせる。標識化cDNAがハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの位置は、cDNAに関する配列情報を提供し、一方で、標識化ハイブリダイズRNAもしくはcDNAの量は、関心のあるRNAもしくはcDNAの相対的な量の概算を提供する。Schena, et al. Science 270:467-470 (1995)を参照のこと。例えば、ヒト癌における遺伝子発現パターンを解析するためのcDNAマイクロアレイの使用は、DeRisi, et al. (Nature Genetics 14:457-460 (1996))に記載されている。
【0156】
好ましい態様において、対象となる核酸に対応する核酸プローブが作成される。バイオチップに結合した核酸プローブは、生物学的サンプル中の核酸と実質的に相補的であるように設計され、その結果、標的配列と本発明のプローブの特異的ハイブリダイゼーションが生じる。この相補性は、標的配列と本発明の一本鎖核酸のハイブリダイゼーションを妨害するいくつかの塩基対ミスマッチが存在し得るという点で、完全であることを必要としない。ヌクレオチドレベルにおける遺伝子の全体的な相同性は、約40%またはそれ以上、おそらくは約60%またはそれ以上、およびよりおそらくは約80%またはそれ以上であり、さらに、約8-12個またはそれ以上のヌクレオチドの対応する連続した配列であることが期待される。しかしながら、突然変異の数が極めて多く、最も低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下でさえ、ハイブリダイゼーションが生じない場合には、該配列は、相補的な標的配列ではない。したがって、本明細書中の「実質的に相補的な」は、プローブが、通常の反応条件、特に、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする程に標的配列と十分に相補的であることを意味する。
【0157】
一般に、核酸は、一本鎖であるが、部分的に一本鎖および部分的に二本鎖であり得る。プローブの鎖の数は、標的配列の構造、組成および特性により決定される。一般に、オリゴヌクレオチドプローブは、約6、約8、約10、約12、約15、約20、約30〜約100塩基長の範囲であり、約10〜約80塩基長が好ましく、約15〜約40塩基長が特に好ましい。すなわち、一般に、遺伝子全体は、プローブとして滅多に使用されない。ある態様において、数百塩基までのより長い核酸が使用され得る。プローブは、当業者に既知の条件下で、相補的な鋳型配列とハイブリダイズするのに十分に特異的である。プローブ配列とそれらの相補性鋳型(標的)配列(それらは、ハイブリダイゼーションの間、ハイブリダイズする)間のミスマッチの数は、BLAST(デフォルト設定)で決定された場合、一般に、15%を超えず、通常は、10%を超えず、好ましくは、5%を超えない。
【0158】
オリゴヌクレオチドプローブは、核酸で通常見出される自然発生的な複素環塩基(ウラシル、シトシン、チミン、アデニンおよびグアニン)、ならびに修飾化塩基および塩基類似体を含み得る。プローブと標的配列のハイブリダイゼーションに適合させた任意の修飾化塩基もしくは塩基類似体は、本発明の実施において有用である。プローブの糖もしくはグリコシド部分は、デオキシリボース、リボース、および/またはこれらの糖の修飾化形態、例えば、2'-O-アルキルリボースを含み得る。好ましい態様において、糖部分は、2'-デオキシリボースであるが、標的配列とハイブリダイズするプローブの能力と適合する任意の糖部分が使用され得る。
【0159】
1つの態様において、プローブのヌクレオシド単位は、当業者に既知のとおり、リン酸ジエステル骨格により結合する。さらなる態様において、ヌクレオチド間の結合は、プローブの特異的ハイブリダイゼーションと適合した当業者に既知の任意の結合(ホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルファメート(例えば、米国特許第5,470,967号)およびポリアミド(すなわち、ペプチド核酸)を含むが、これらに限定されない)を含み得る。ペプチド核酸は、Nielsen et al. (1991) Science 254: 1497-1500、米国特許第5,714,331号、およびNielsen (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10:71-75に記載されている。
【0160】
ある態様において、プローブは、キメラ分子であり得て、すなわち、1個以上の型の塩基もしくは糖サブユニットを含み得て、および/または同じプライマー中で1個以上の型の結合が存在し得る。プローブは、当分野で既知のとおり、その標的配列とのハイブリダイゼーションを促進する部分、例えば、挿入剤および/または副溝結合剤を含み得る。塩基、糖およびヌクレオシド間骨格の変化、ならびにプローブ上における任意のペンダント基の存在は、配列特異的な方法でその標的配列と結合するプローブの能力に適合し得る。多くの構造的修飾がこれらの結合内で可能である。有利には、本発明によるプローブは、シグナル増幅を可能にするような構造的特徴を有していてもよく、該構造的特徴は、例えば、Urdea et al. (Nucleic Acids Symp. Ser., 24:197-200 (1991))またはEuropean Patent No. EP-0225,807に記載されたものと同様の分岐DNAプローブである。さらに、プローブを形成するさまざまな複素環塩基、糖、ヌクレオシドおよびヌクレオチドを製造するための合成法、ならびに特定の所定の配列のオリゴヌクレオチドの製造は、十分に開発されており、当業者に既知である。オリゴヌクレオチド合成のための好ましい方法は、米国特許第5,419,966号の開示を包含する。
【0161】
複数のプローブが、標的核酸中の多型および/または二次構造、データの冗長などを説明するために、特定の標的核酸について設計され得る。ある態様において、配列あたり2個以上のプローブが使用されるとき、重複プローブまたは単一標的遺伝子の異なる切片に対するプローブが使用される。すなわち、2個、3個、4個もしくはそれ以上のプローブが使用され、特定の標的についての冗長で構築される。プローブは、重複していてもよく(すなわち、いくつかの配列を共有する)、または遺伝子の異なる配列に特異的である。複数の標的ポリヌクレオチドが本発明により検出されるとき、特定の標的ポリヌクレオチドに対応する各プローブもしくはプローブ群は、マイクロアレイの個別的な領域に位置する。
【0162】
プローブは、溶液中に、例えば、ウェル中に、もしくはマイクロアレイの表面上にあり得るか、または固相支持体に結合していてもよい。使用され得る固相支持体材料の例は、プラスチック、セラミック、金属、樹脂、ゲルおよび膜を含む。固相支持体の有用な型は、プレート、ビーズ、磁性材料、マイクロビーズ、ハイブリダイゼーションチップ、膜、結晶、セラミックおよび自己組織化単層を含む。1つの例は、二次元もしくは三次元マトリックス、例えば、複数のプローブ結合部位を含むゲルもしくはハイブリダイゼーションチップを含む(Pevzner et al., J. Biomol. Struc. & Dyn. 9:399-410, 1991; Maskos and Southern, Nuc. Acids Res. 20:1679-84, 1992)。ハイブリダイゼーションチップは、極めて大きなプローブアレイを構築するために使用され得て、それは、次いで、標的核酸とハイブリダイズされる。チップのハイブリダイゼーションパターンの解析は、標的ヌクレオチドの同定を助け得る。該パターンは、手動で、もしくはコンピューターで解析され得るが、ハイブリダイゼーションによる位置塩基配列決定は、それ自身、コンピューター解析および自動化のために役立つことは明らかである。他の例において、蛍光ビーズに基づく方法と組み合わせた、固相構造支持体上のAffymetrixチップが使用され得る。また他の例において、cDNAマイクロアレイが使用され得る。この点に関して、Lockkart et al (すなわち、インサイチュで固相上のAffymetrix合成プローブ)により記載されたオリゴヌクレオチドが特に好ましく、すなわち、それは、フォトリソグラフィーである。
【0163】
当業者に理解されているとおり、核酸は、さまざまな方法で、固相支持体に結合もしくは固定化され得る。本明細書中の「固定化される」は、核酸プローブと固相支持体間の連結もしくは結合が、結合、洗浄、解析および除去の条件下で十分に安定的であることを意味する。結合は、共有的もしくは非共有的であり得る。本明細書中の「非共有結合」およびその文法的同等体は、1個もしくはそれ以上の静電気的、親水的および疎水的相互作用を意味する。ストレプトアビジンのような分子の支持体への共有的結合およびビオチニル化プローブのストレプトアビジンへの非共有的結合は、非共有結合に含まれる。本明細書中の「共有結合」およびその文法的同等体は、2つの部分、すなわち、固相支持体とプローブがσ結合、π結合および配位結合を含む少なくとも1個の結合により結合することを意味する。共有結合は、プローブと固相支持体間で直接形成されるか、または架橋剤により、もしくは固相支持体もしくはプローブもしくは両方の分子上における特定の反応基の包含により形成され得る。固定化はまた、共有的および非共有的相互作用の組み合わせを含み得る。
【0164】
核酸プローブは、共有結合、例えば、カップリング剤を用いた結合によるか、または共有もしくは非共有結合、例えば、静電気的相互作用、水素結合もしくは抗体-抗原カップリングによるか、またはその組み合わせにより、固相支持体に結合し得る。典型的なカップリング剤は、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、Staphylococcus aureusプロテインA/IgG抗体Fc断片、およびストレプトアビジン/プロテインAキメラ(T. Sano and C. R. Cantor, Bio/Technology 9:1378-81 (1991))、またはこれらの薬剤の誘導体もしくは組み合わせを含む。核酸は、光開裂性結合、静電気的結合、ジスルフィド結合、ペプチド結合、ジエステル結合またはこれらの種類の結合の組み合わせにより、固相支持体と結合し得る。アレイはまた、選択的に放出可能な結合、例えば、4,4'-ジメトキシトリチルもしくはその誘導体により、固相支持体と結合し得る。有用であることが見出されている誘導体は、3もしくは 4 [ビス-(4-メトキシフェニル)]-メチル-安息香酸、N-スクシンイミジル-3もしくは4 [ビス-(4-メトキシフェニル)]-メチル-安息香酸、N-スクシンイミジル-3もしくは4 [ビス-(4-メトキシフェニル)]-ヒドロキシメチル-安息香酸、N-スクシンイミジル-3もしくは4 [ビス-(4-メトキシフェニル)]-クロロメチル-安息香酸、およびこれらの酸の塩を含む。
【0165】
一般に、プローブは、当業者に理解されているとおり、さまざまな方法でバイオチップに結合する。本明細書に記載されているとおり、核酸は、最初に合成され、次いで、バイオチップに結合するか、またはバイオチップ上で直接合成され得る。
【0166】
バイオチップは、適当な固相基質を含み得る。本明細書中の「基質」または「固相支持体」または他の文法的同等体は、核酸プローブの連結もしくは結合に適した個別的な個々の部位を含むように修飾され得て、少なくとも1個の検出法に適合する任意の材料を意味する。本発明の固相支持体は、ヌクレオチドハイブリダイゼーションおよび合成を支持するのに適当な任意の固相材料および構造であり得る。好ましくは、固相支持体は、プライマーが固定化され、逆転写反応が行われ得る、少なくとも1個の実質的に剛性(rigid)な表面を含む。基質は、ポリヌクレオチドマイクロアレイ構成要素と安定的に結合し、プラスチック、セラミック、金属、アクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン、フッ化炭素、ナイロン、シリコンラバー、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフメラート、コラーゲン、グリコサミノグリカン、およびポリアミノ酸を含むさまざまな材料から製造され得る。基質は、二次元または三次元の形態であり得て、例えば、ゲル、膜、薄膜、ガラス、プレート、シリンダー、ビーズ、磁性ビーズ、光ファイバー、織り繊維などであり得る。好ましいアレイの形態は、三次元アレイである。好ましい三次元アレイは、タグ化ビーズの集合物である。各タグ化ビーズは、それに結合する異なるプライマーを有する。タグは、色彩(Luminex, Illumina)および電磁場(Pharmaseq)のようなシグナル化手段により検出可能であり、タグ化ビーズ上のシグナルは、離れていても検出され得る(例えば、光ファイバーを用いて)。固相支持体のサイズは、DNAマイクロアレイ技術のために有用な標準的なマイクロアレイサイズのいずれかであり得て、該サイズは、本発明の反応を行うために使用される特定の装置に適合するように合わせることができる。一般に、基質は、光学的検出を可能にし、検知可能な(appreciably)蛍光を発しない。
【0167】
1つの態様において、バイオチップの表面およびプローブは、次の2つの結合のために、化学的官能基で誘導体化され得る。したがって、例えば、バイオチップは、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基を含むがこれらに限定されない化学的官能基で誘導体化され、とりわけ、アミノ基が好ましい。これらの官能基を用いて、プローブ上の官能基でプローブを結合させ得る。例えば、アミノ基を含む核酸は、例えば、当分野で既知のリンカーを用いて、アミノ基を含む表面上に結合し得て; 例えば、ホモもしくはヘテロ二機能性リンカーが既知である。さらにいくつかの場合において、さらなるリンカー、例えば、アルキル基(置換されたヘテロアルキル基を含む)が使用され得る。
【0168】
この態様において、オリゴヌクレオチドは、当業者に既知のとおり合成され、次いで、固相支持体の表面に結合する。当業者に理解されているとおり、5'もしくは3'末端が固相支持体に結合するか、または結合は、内部ヌクレオチドによるものであり得る。さらなる態様において、固相支持体への固定化は、非常に強力ではあるが、非共有的であり得る。例えば、ストレプトアビジンで共有的に被覆された表面に結合するビオチニル化オリゴヌクレオチドが作製され、その結果、結合が生じ得る。
【0169】
アレイは、任意の簡便な方法に基づいて、例えば、ポリヌクレオチドマイクロアレイの構成要素を前もって形成させ、その後、それらを表面に安定に結合させることによって作製され得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは、当業者に既知のとおり、表面上で合成され得る。多くの異なるアレイの形態およびそれらの製造方法は、当業者に既知であり、WO 95/25116およびWO 95/35505 (フォトリソグラフィー技術)、米国特許第5,445,934号(フォトリソグラフィーによるインサイチュ合成)、米国特許第5,384,261号(機械的標的化フローパス(mechanically directed flow paths)によるインサイチュ合成; ならびに米国特許第5,700,637号(スポッティング、プリンティングまたはカップリングによる合成)に開示されており、それらの全体を引用により本明細書の一部とする。DNAとビーズを結合させるための他の方法は、DNAの末端に結合した特定のリガンドを使用して、リガンド結合分子とビーズを結合させる。考えられるリガンド結合パートナー対は、ビオチン-アビジン/ストレプトアビジン、またはさまざまな抗体/抗原対、例えば、ジゴキシゲニン-抗ジゴキシゲニン抗体を含む(Smith et al., Science 258:1122-1126 (1992))。DNAの支持体への化学的共有結合は、標準的なカップリング剤を用いて、ホスホアミデート結合を介して、DNA上の5'リン酸と被覆化ミクロスフィアを結合させることにより達成され得る。固相基質にオリゴヌクレオチドを固定化させる方法は、十分に確立されている。Pease et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(11):5022-5026 (1994)を参照のこと。固相基質にオリゴヌクレオチドを結合させる好ましい方法は、Guo et al., Nucleic Acids Res. 22:5456-5465 (1994)に記載されている。固定化は、インサイチュDNA合成(上記のMaskos and Southern)によるか、またはロボット配列技術と組み合わせた、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドの共有結合(上記のGuo et al.)により達成され得る。
【0170】
バイオチップアレイにより代表される固相技術に加えて、遺伝子発現はまた、液相アレイを用いて定量化され得る。そのような系の1つは、キネティックポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。キネティックPCRは、特定の核酸配列の同時の増幅および定量を可能にする。特異性は、標的部位を囲む一本鎖核酸配列に選択的に結合するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーに由来する。このオリゴヌクレオチドプライマーの対は、標的配列の各鎖上で、特異的な非共有結合複合体を形成する。これらの複合体は、逆方向で、二本鎖DNAのインビトロ転写を促進する。反応混合物の温度サイクルは、個々の鎖における核酸のプライマー結合、転写、および再融解の連続したサイクルを生じる。その結果、標的dsDNA産物の指数関数的増加が生じる。この産物を、挿入染料剤または配列特異的プローブの使用により、リアルタイムで定量化し得る。SYBR(r) Green 1は、dsDNAに選択的に結合する挿入染料剤の一例であり、蛍光シグナルの同時の増加を生じる。例えば、TaqMan技術で使用される配列特異的プローブは、蛍光色素およびオリゴヌクレオチドの逆末端に共有的に結合したクエンチング分子からなる。プローブは、2つのプライマー間の標的DNA配列に選択的に結合するように設計される。DNA鎖がPCR反応の間に合成されるとき、蛍光色素は、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によりプローブから切断され、シグナル発光が生じる。プローブシグナル法は、挿入染料剤を用いた方法よりも特異的であり得て、各々の場合に、シグナル強度は、産生されるdsDNA産物に比例する。各々の型の定量法は、マルチウェル液相アレイで使用され得て、各ウェルは、関心のある核酸配列に特異的なプライマーおよび/またはプローブを示す。組織もしくは細胞株のメッセンジャーRNA調製物を用いて使用されるとき、プローブ/プライマー反応のアレイは、関心のある複数の遺伝子産物の発現を同時に定量化し得る。Germer et al., Genome Res. 10:258-266 (2000); Heid et al., Genome Res. 6:986-994 (1996)を参照のこと。
【0171】
(iv) 例えば、イムノアッセイによる、細胞抽出物中の変調腫瘍マーカータンパク質レベルの測定。
【0172】
生物学的サンプル中のタンパク質様腫瘍マーカー発現産物についての試験は、当業者に既知である多くの適当な方法のうちの任意の1つにより行われ得る。適当な方法の例は、組織切片、生検サンプルまたは体液サンプルの抗体スクリーニングを含むが、これらに限定されない。
【0173】
抗体に基づく診断法が使用される限り、マーカータンパク質の存在は、多くの方法、例えば、ウエスタンブロッティング、ELISAもしくはフローサイトメトリー法により決定され得る。これらは、当然に、シングルサイトおよびツーサイトもしくは非競合型の「サンドウィッチ」アッセイ、ならびに伝統的な競合的結合アッセイを含む。これらのアッセイはまた、標識化抗体の標的への直接的な結合を含む。
【0174】
サンドウィッチアッセイは、有用かつ通常使用されるアッセイである。サンドウィッチアッセイ技術の多くの変形が存在し、そのすべては、本発明に包含されることを意図する。簡潔には、一般的なフォワードアッセイ(forward assay)において、非標識抗体を固相基質に固定し、試験されるサンプルを、結合した分子と接触させる。適当な時間、すなわち、抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間、インキュベーションした後、検出可能シグナルを産生できるレポーター分子で標識化した、抗原に特異的な二次抗体を加えて、抗体-抗原-標識化抗体の他の複合体を形成するのに十分な時間、インキュベートする。すべての未反応物質を洗浄し、抗原の存在を、レポーター分子により産生されるシグナルの観察により決定する。該結果は、可視的シグナルの単純な観察により定性的であり得るか、またはコントロールサンプルと比較することにより定量的であり得る。フォワードアッセイにおける変更は、同時のアッセイを含み、そこでは、サンプルおよび標識化抗体を結合抗体に同時に加える。これらの技術は、当業者に既知であり、容易に想到できるわずかな変更のすべてを含む。
【0175】
一般的なフォワードサンドウィッチアッセイにおいて、マーカーもしくはその抗原性部分についての特異性を有する一次抗体は、固相表面に共有的もしくは受動的に結合する。固相表面は、一般に、ガラスまたはポリマーであり、最も通常使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンである。固相支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、またはイムノアッセイを行うのに適当な他の任意の表面の形態であり得る。結合工程は、当該分野で既知であり、一般に、架橋、共有結合または物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験サンプルについての調製で洗浄される。次いで、試験されるサンプルのアリコートを固相複合体に加えて、抗体中に存在する任意のサブユニットの結合を可能にするのに十分な時間(例えば、2-40分)および適当な条件下(例えば、25℃)でインキュベートする。インキュベーション後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、抗体の一部に特異的な二次抗体と共にインキュベートする。二次抗体を、二次抗体の抗原への結合を示すために使用されるレポーター分子と結合させる。
【0176】
別の方法は、生物学的サンプル中の標的分子を固定化し、次いで、固定化した標的をレポーター分子で標識されるか、もしくは標識されていない特異的抗体に曝すことを含む。標的の量およびレポーター分子シグナルの強度に依存して、結合した標的は、抗体で直接標識化することにより検出され得る。あるいは、一次抗体に特異的な二次標識化抗体を、標的-一次抗体複合体に曝して、標的-一次抗体-二次抗体の第3の複合体を形成する。複合体をレポーター分子により放出されるシグナルにより検出する。
【0177】
本明細書で使用される「レポーター分子」は、その化学的な性質により、分析的に同定可能なシグナルを提供する分子を意味し、それは、抗原結合抗体の検出を可能にする。検出は、定性的もしくは定量的であり得る。この型のアッセイで最も通常使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォアまたは放射性核種を含有する分子(すなわち、放射性同位体)および化学発光分子である。
【0178】
酵素免疫測定法の場合において、酵素は、一般に、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により二次抗体と結合する。しかしながら、容易に認識されるとおり、さまざまな異なる結合技術が存在し、それは、当業者により容易に利用可能である。通常使用される酵素は、とりわけ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、βガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。特定の酵素と共に用いられる基質は、一般に、対応する酵素による加水分解時における、検出可能な色彩変化の産生について選択される。適当な酵素の例は、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼを含む。また、蛍光基質を使用することが可能であり、それは、上記した発色基質ではなく蛍光産物を産生する。すべての場合において、酵素標識化抗体を一次抗体ハプテン複合体に加えて、結合させ、次いで、過剰な試薬を洗浄する。その後、適当な基質を含む溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に加える。基質は、二次抗体と結合した酵素と反応して、定量的視覚シグナルを生じ、それはさらに、通常、分光光度法で定量化され、サンプル中に存在する抗原量の指標を提供し得る。「レポーター分子」はまた、細胞凝集または凝集の阻害、例えば、ラテックスビーズ上における赤血球細胞の凝集または阻害などの使用にまで拡張される。
【0179】
あるいは、蛍光化合物、例えば、フルオレセインおよびローダミンを、抗体の結合能を変えることなく抗体に化学的に結合させ得る。蛍光色素標識化抗体は、特定の波長の光の照射により活性化されると、光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導し、その後、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色彩での光を放出する。EIAの場合には、蛍光標識化抗体は、一次抗体-ハプテン複合体に結合し得る。非結合試薬を洗浄後、残った第3の複合体を適当な波長の光に曝し、ここで、観察される蛍光は、関心のあるハプテンの存在を示す。免疫蛍光およびEIA技術は、当分野で十分に確立されており、本発明の方法のためにとりわけ好ましいものである。しかしながら、他のレポーター分子、例えば、放射性同位体、化学発光もしくは生物発光分子がまた使用され得る。
【0180】
(v) 例えば、免疫組織化学により、細胞表面上のタンパク質腫瘍マーカーの変調した発現を決定すること。
【0181】
(vi) 上記の(iv)および(v)で詳述したものに加えて、任意の適当な機能性試験、酵素学的試験または免疫学的試験に基づいて変調したタンパク質発現を決定すること。
【0182】
当業者は、通常の手順により、特定の方法を特定の型の生物学的サンプルに適用することの妥当性を決定し得る。
【0183】
いかなる手段によっても本発明を限定することなく、上記したとおり、遺伝子発現レベルは、当分野で既知のさまざまな方法により測定され得る。例えば、遺伝子転写もしくは翻訳産物が測定され得る。遺伝子転写産物、すなわち、RNAは、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、run-offアッセイ、ノザンブロットまたは当分野で既知の他の方法により測定され得る。
【0184】
ハイブリダイゼーションアッセイは、一般に、一本鎖RNA転写産物にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブの使用を含む。したがって、オリゴヌクレオチドプローブは、転写されたRNA発現産物に相補的である。典型的には、配列特異的プローブは、RNAまたはcDNAにハイブリダイズすることに向けられ得る。本明細書で使用される「核酸プローブ」は、相補的な配列にハイブリダイズするDNAプローブまたはRNAプローブであり得る。配列特異的ハイブリダイゼーションが生じるようなプローブの設計方法は、当業者に既知である。当業者はさらに、遺伝子についての遺伝子発現の量の測定が特定のRNAを産生するように転写されたので、配列特異的ハイブリダイゼーションの定量法について既知である。
【0185】
ハイブリダイゼーションサンプルは、核酸プローブと特定の遺伝子発現産物の特異的ハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な条件下で維持される。本明細書で使用される「特異的ハイブリダイゼーション」は、ほぼ正確なハイブリダイゼーション(例えば、ミスマッチがあったとしてもほとんどない)を示す。特異的ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件下、または中程度のストリンジェンシー条件下で行われ得る。1つの態様において、特異的ハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシーである。例えば、特定の高ストリンジェンシー条件は、完全に相補的な核酸と低い相補性を有する核酸を区別するために使用され得る。核酸ハイブリダイゼーションについての「高ストリンジェンシー条件」、「中程度のストリンジェンシー条件」および「低ストリンジェンシー条件」は、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel, F. et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons, (1998)の2.10.1-2.10.16頁および6.3.1-6.3.6頁に記載されており、その全体の技術は、引用により本明細書の一部とする。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する正確な条件は、イオン強度(例えば、0.2.times.SSC, 0.1.times.SSC)、温度(例えば、室温、42℃、68℃)およびホルムアミドのような不安定化剤またはSDSのような変性剤、ならびに核酸配列の長さ、塩基組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチ割合および他の非同一な配列内に該配列の一部が生じる頻度のような因子に依存する。したがって、同等の条件は、2個の核酸分子間の同一性もしくは類似性の同様の程度を維持しながら、1個もしくはそれ以上のこれらのパラメーターを変えることにより決定され得る。典型的には、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%もしくは少なくとも約95%またはそれ以上互いに同一な配列が、互いにハイブリダイズするような条件が使用される。ハイブリダイゼーションが生じないストリンジェンシーのレベルからハイブリダイゼーションが最初に観察されるレベルまでハイブリダイゼーション条件を変えることにより、特定の配列がサンプル中の最も相補的な配列とハイブリダイズする(例えば、選択的に)ことを可能にする条件が決定され得る。
【0186】
中程度もしくは低ストリンジェンシー条件のための洗浄条件の決定を記載する例示的な条件は、Kraus, M. and Aaronson, S., 1991. Methods Enzymol., 200:546-556およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, (1998)に記載されている。洗浄は、その条件が、通常、ハイブリッドの最小レベルの相補性を決定するために設定される工程である。一般に、相同なハイブリダイゼーションのみが生じる最も低い温度から出発した場合、最終洗浄温度が減少する(SSC濃度を一定に保つ)各℃は、ハイブリダイズする配列間の最大ミスマッチ割合において1%までの増加を生じる。一般に、SSCの濃度を2倍にすることにより、Tmの約17℃の増加が生じる。これらの指針を用いて、洗浄温度は、探索されるミスマッチのレベルに依存して、高、中程度もしくは低ストリンジェンシーについて実験的に決定され得る。例えば、低ストリンジェンシー洗浄は、室温で10分間、0.2.times.SSC/0.1% SDSを含む溶液で洗浄することを含み; 中程度のストリンジェンシー洗浄は、42℃で15分間、0.2.times.SSC/0.1% SDSを含む前もって温めた溶液(42℃)で洗浄することを含み; そして高ストリンジェンシー洗浄は、68℃で15分間、0.1.times.SSC/0.1% SDSを含む前もって温めた溶液(68℃)で洗浄することを含む。さらに、洗浄は、当分野で既知のとおり、望まれる結果を得るために、繰り返し、もしくは連続して行われ得る。同等の条件は、当業者に既知のとおり、標的核酸分子と使用されるプライマーもしくはプローブ(例えば、ハイブリダイズする配列)間の相補性の類似の程度を維持しながら、1個もしくはそれ以上の例示されたパラメーターを変えることにより決定され得る。
【0187】
本発明の関連する局面は、
(i) 上記の任意の1種もしくはそれ以上の腫瘍マーカー遺伝子に対応するヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%の同一性を示す配列または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(ii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(iii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド; または
(iv) (i)の核酸分子によりコードされる任意の1種もしくはそれ以上のタンパク質またはその誘導体、断片もしくはホモログに結合可能なプローブ
の複数を含む分子アレイであって、(i)の該マーカー遺伝子もしくは(iv)のタンパク質の発現レベルが、大腸に由来する細胞または細胞サブ集団の腫瘍性状態を示す、分子アレイを提供する。
【0188】
好ましくは、該同一性%は、少なくとも、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。
【0189】
低ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションのために、少なくとも約1% v/v〜少なくとも約15% v/vのホルムアミドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、洗浄条件のために、少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含む。他のストリンジェンシー条件は、所望により適用され得て、例えば、中程度のストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションのために、少なくとも約16% v/v〜少なくとも約30% v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含み、洗浄条件のために、少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含み、高ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションのために、少なくとも約31% v/v〜少なくとも約50% v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含み、洗浄条件のために、少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含む。一般に、洗浄は、Tm = 69.3 + 0.41 (G + C) % [19] = -12℃で行われる。しかしながら、二本鎖DNAのTmは、ミスマッチ塩基対の数が1%増える毎に1℃減少する(Bonner et al (1973) J. Mol. Biol. 81:123)。
【0190】
好ましくは、対象となるプローブは、非特異的な反応の発生を最小限にする特異性のレベルで、それらが標的とする核酸分子またはタンパク質に結合するように設計される。しかしながら、すべての潜在的な交差反応または非特異的反応を除去することが可能ではない場合があり、これは、すべてのプローブに基づく系の潜在的な制限であることが理解されるであろう。
【0191】
対象となるタンパク質を検出するために使用されるプローブに関し、それらは、抗体およびアプタマーを含む任意の適当な形態を取り得る。
【0192】
核酸またはタンパク質プローブのライブラリーもしくはアレイは、豊富な、非常に価値のある情報を提供する。さらに、そのような配列の2種またはそれ以上のアレイもしくはプロファイル(アレイの使用により得られた情報)は、試験セットの結果を参照、例えば、他のサンプルもしくは蓄積された較正と比較するための有用な道具である。アレイを用いる場合、個々のプローブは、一般に、別々の場所に固定され、結合反応のために反応させられる。集合したセットのマーカーに関連するプライマーは、配列のライブラリーを作製するために、または他の生物学的サンプルからのマーカーを直接検出するために有用である。
【0193】
遺伝子マーカーのライブラリー(またはアレイ(ライブラリー中の少なくともいくつかの配列に対応する物理的に離れた核酸について言及されるとき))は、極めて望ましい特性を示す。これらの特性は、特定の条件と関連し、制御プロファイル(regulatory profiles)として特徴づけられ得る。本明細書で使用されるプロファイルは、マーカーがもともと由来する組織の診断情報を提供する一組のメンバーを意味する。多くの場合におけるプロファイルは、蒸着された配列から作製されたアレイ上の一連のスポットを含む。
【0194】
特徴的な患者のプロファイルは、一般に、アレイの使用により作成される。アレイプロファイルは、1個もしくはそれ以上の他のアレイプロファイルまたは他の参照プロファイルと比較され得る。比較結果は、疾患状態、発症状態、治療に対する受容性および患者についての他の情報に関連する豊富な情報を提供し得る。
【0195】
本発明の他の局面は、1種もしくはそれ以上の腫瘍マーカーを検出するための薬剤および最初の区画で該薬剤による検出を促進するのに有用な試薬を含む、生物学的サンプルをアッセイするための診断キットを提供する。例えば、生物学的サンプルを取得するためのさらなる手段がまた含まれ得る。薬剤は、任意の適当な検出分子であり得る。
【0196】
本発明はさらに、下記の非限定的な実施例により詳述される。
【実施例】
【0197】
実施例1
方法および材料
Affymetrix GeneChipデータ
遺伝子発現プロファイリングデータおよびそれに付随する臨床データを、GeneLogic Inc (Gaithersburg, MD USA)から購入した。解析した各々の組織について、44,928個のプローブセット(Affymetrix HGU133A & HGU133Bの組み合わせ)についてのオリゴヌクレオチドマイクロアレイデータ、実験的および臨床的記述子、ならびに組織学的調製物のデジタル処理により達成される顕微鏡画像を得た。定性コントロール解析を、製造者により示されたとおり、重要な定性コントロール測定を満たさないアレイを除去するために行った。
【0198】
転写発現レベルを、Microarray Suite (MAS) 5.0 (Affymetrix)およびRobust Multichip Average (RMA)標準化技術(Affymetrix. GeneChip発現データ解析基礎, Affymetrix, Santa Clara, CA USA, 2001; Hubbell et al. Bioinformatics, 18:1585-1592, 2002; Irizarry et al. Nucleic Acid Research, 31, 2003)により計算した。MAS標準化データを、標準定性コントロールルーチンを行うために使用し、すべての次の解析のために、最終データセットをRNAで標準化した。
【0199】
一変量差異的発現
差異的に発現した遺伝子転写産物を、RについてのBioconductorリポジトリからダウンロードされたlimmaライブラリーで実行されるモデレーテッド(moderated)t検定を用いて同定した(G. K. Smyth. Statistical Applications in Genetics and Molecular Biology, 3(1):Article 3, 2004; G K Smyth. Bioinformatics and Computational Biology Solutions using R and Bioconductor. Springer, New York, 2005)。有意推定(p値)を、Bonferonni補正を用いて、多重仮説検定について調整するように補正した。
【0200】
組織特異的発現パターン
仮定の「不活性化(turned off)」遺伝子発現についてのフィルターを構築するために、454個の組織全範囲にわたる44,928個のプローブセットすべてについての平均発現レベルを最初に調べた。発現のオン/オフ閾値を予測するために、44,928個の平均値を並べて、データセットに渡って30パーセンタイル(30th percentile)に相当する発現値を計算した。特定のサンプル中の多くの転写産物(推定上、30%以上)が転写的に抑制されるはずであることが理論化されたので、この任意の閾値を選択した。したがって、この閾値は、非特異的もしくはバックグラウンドシグナルとして予測されるものに向けられる保存的上限を示す。
【0201】
遺伝子識別名アノテーション
Affymetrixプローブセット名を正式な遺伝子識別名にマッピングするために、Bioconductorから利用可能なアノテーションメタデータを用いた。2007年3月15日にダウンロードされたEntrez Geneデータを用いて構築されたHgu133plus2ライブラリー1.16.0版を用いた。
【0202】
パフォーマンス特性の予測
本明細書で示した各表のマーカーの診断利用性(感受性、特異性、陽性適中率、陰性適中率、陽性尤度比、陰性尤度比を含む)を予測した。マーカーを発見するのに使用した同じデータでこれらの評価を計算し、したがって、それは、将来的なサンプルのパフォーマンス特性を潜在的に過大評価するものである。該評価の一般化可能性を改良するために、修飾化ジャックナイフリサンプリング技術を、各特性についてより偏らない値を計算するために使用した。
【0203】
結果
さまざまな一変量統計的検定をAffymetrixオリゴヌクレオチドマイクロアレイデータに適用し、結腸直腸腫瘍性組織と非腫瘍性組織を区別するのに使用され得るヒト遺伝子を明らかにした。さらに、結腸直腸腺腫と結腸直腸癌を区別するのに有用であるように思われる多くの遺伝子転写産物を同定した。また、分泌されるか、もしくは上皮細胞の細胞表面上に提示されるタンパク質産物のために、特定の診断的利用性を有し得るこれらの転写産物の一部を同定した。最後に、腫瘍性組織で特異的に発現し、非腫瘍性組織でバックグラウンドレベルよりも低いか、もしくは同程度のレベルで発現する転写産物の一部を同定した。
【0204】
腫瘍性組織において差異的に発現する遺伝子
全44,928個のプローブセットのGeneChipから、11,000個を超えるプローブセットが、保守的(Bonferroni)多重検定補正を用いたBioConductor (上記のG. K. Smyth, 2004)のlimmaパッケージを使用して、通常のt検定で差異的に発現していることを決定した。この一覧を、さらに、腫瘍性および非腫瘍性組織間の2倍もしくはそれ以上の発現変化を示すプローブセットのみを含むようにフィルターにかけると、560個のプローブセットが正常組織と比較して腫瘍性組織でより低い発現を示すことが見出された。
【0205】
これらの560個のプローブセットに、チップについて利用可能な最近のメタデータおよびアノテーションパッケージを用いて注釈をつけた。560個の発現減少プローブセットを、434個の遺伝子識別名にマッピングした。
【表137】

【0206】
結腸直腸腫瘍に特異的な仮説上のマーカー
差異的遺伝子発現パターンは、診断目的のために有用であるが、このプロジェクトはまた、腫瘍性結腸直腸上皮から消化管腔に流された診断的タンパク質を同定しようとすることである。候補タンパク質を発見するために、差異的に発現する転写産物の一覧を、結腸直腸腫瘍性組織で特異的に減少するマーカーを同定することを目的とする選択基準でフィルターにかけた。「オフ」遺伝子を同定するために、i) 理論的オン/オフ閾値以下の腫瘍性発現レベルおよびii) 少なくとも2倍以上の正常なシグナルを有する遺伝子を見出せるようにフィルター基準を設計した。腫瘍性組織で「不活性化する(turned-off)」例示的な転写の発現プロファイルを図1に示す。
【0207】
実施例2
腫瘍性組織と比較して非腫瘍性組織での高められたプローブセット
差異的発現解析を、161個の腺癌サンプル、29個の腺腫サンプル、42個の大腸炎サンプルおよび222個の非疾患性組織を含む454個の結腸直腸組織のRNA濃度を測定して、Affymetrix遺伝子チップデータ中の下方調節されたプローブセットを同定するために適用した。多重仮説検定のための保守的補正および2倍絶対倍率変化カットオフ(2-fold absolute fold change cut-off)を用いて、560個のプローブセットが非腫瘍性コントロールと比較して腫瘍性組織で減少した発現を示すことを決定した。転写ヌクレオチド配列に基づいて、560個のこれらのプローブセットを434個の推定上の遺伝子識別名にマッピングした。
【0208】
検証/仮説検定
これらの候補のRNA発現レベルを、別々に由来する臨床サンプルで測定した。特注で設計された「腺腫Gene Chip」を用いて、526個のプローブセットが、19個の腺腫、19個の腺癌、および30個の非疾患性コントロールを含む68個の臨床サンプルからのRNA抽出物とハイブリダイズした。34個のプローブセットは、特注設計に含まれなかったので、試験されなかった。526個の標的プローブセット(または、同じ遺伝子座標的と直接関連するプローブセット)のうちの459個が、同様に、別々に由来する組織で差異的に発現する(P < 0.05)ことが確認された。これらの459個のプローブセットの差異的発現解析の結果を表1に示す。
【0209】
560個のプローブセットがハイブリダイズすると考えられる434個の固有の遺伝子座のうちの372個について、さらに試験した。残りの62個の遺伝子識別名は、妥当性データで示されなかった。372個の遺伝子識別名のうちの328個は、少なくとも1個の差異的発現プローブセットによる妥当性データで示され、多くの識別名が推定上の遺伝子座にわたる領域に対する複数のプローブセットを含むことが観察された。標的遺伝子座に結合する完全なプローブセットの一覧を表2に示す
【0210】
結論
表1および2の各々で示した候補プローブセットおよび識別名は、非腫瘍性コントロールと比較して、腫瘍性結腸直腸組織でより低い発現を示した。
【0211】
実施例3
非腫瘍特異的プロファイルを証明するプローブセット
ディスカバリーデータ(discovery data)の解析の間、腫瘍と非腫瘍性表現型の間の新たな発現プロファイルが観察された。定量的に差異的に発現するプローブセットはさらに、定性的に差異的に発現することが仮定された。そのようなプローブセットは、腫瘍性組織において遺伝子発現活性の証拠を示さず、すなわち、これらのプローブセットは、非腫瘍性組織においてのみバックグラウンドレベルを超えて発現するように考えられる。この観察および生じた仮説は、下記の2つの原理に基づくものである:
1. ゲノムワイドGeneChip (例えば、U133)上に存在する多くのヒト転写産物は、結腸直腸粘膜であまり発現しない; そして
2. 該「オフ」プローブセットのための(標識化cRNAへの)マイクロアレイ結合強度は、技術的アッセイバックグラウンド、すなわち、非特異的オリゴヌクレオチド結合を反映する。
【0212】
非腫瘍特異的プローブセットを作製するために、差異的に発現するプローブセットの腫瘍性強度をチップ上のすべてのプローブセットからの仮説上のバックグラウンドシグナル閾値と比較した。「オン」転写産物が選択される候補プール中のすべてのプローブセットが、疾患性組織と比較して非疾患性組織において少なくとも2倍の過剰発現をすることを意図的に示す。これらの基準を組み合わせて、非腫瘍性組織で特異的な発現を示す、差異的に発現する転写産物のサンプルのサブセットを作成する。
【0213】
この解析は、約41個の遺伝子座に対応する42個のプローブセットが非腫瘍特異的転写発現プロファイルを示すことを証明した。
【0214】
検証/仮説検定
特注遺伝子チップ設計は、発見のために使用されたのと同じ原理を用いて、非腫瘍特異的プローブセットを検定するのを妨げる。特に、特注遺伝子チップは(意図的に)、仮説上の「オフ」/「非転写」遺伝子転写産物にハイブリダイズすることが予期される多くのプローブセットを含まない。これは、特注遺伝子チップ設計は、結腸直腸腫瘍性組織で差異的に発現する転写産物に対して非常に偏っているためである。
【0215】
したがって、通常の差異的発現検定(limma)を、非腫瘍性組織で特異的に発現するためのこれらの候補プローブセットに適用した。特注遺伝子チップ上の(42個のうち)37個のプローブセットのうち、33個のプローブセット(または、同じ遺伝子座に結合するプローブセット)が、38個の腫瘍性組織(腺腫および癌)と非腫瘍性コントロールの間で差異的に発現した。これらの検証実験の結果を表3に示す。
【0216】
さらに、遺伝子座にハイブリダイズすることが既知であるすべてのプローブセットを試験することを目的とし、その遺伝子座に対するプローブセットを本願で主張した。プローブセットにより標的とされる41個の推定上の遺伝子座のうち、33個の検証データが存在した。これらの33個の遺伝子識別名のすべて(100%)は、少なくとも1個のプローブセットとハイブリダイズすることが証明され、それは、腫瘍性組織において差異的に発現した。差異的に発現する方法で、各標的遺伝子座に結合するすべてのプローブセットを含むこれらの実験結果を表4に示す。
【0217】
実施例4
実施例2および3のための材料および方法
腫瘍性、正常および非腫瘍性疾患コントロールを含む454個の結腸直腸組織サンプルで測定された遺伝子発現プロファイリングデータを、GeneLogic Inc (Gaithersburg, MD USA)から購入した。各組織サンプルについて、全44,928個のプローブセット(HGU133AとHGU133Bの組み合わせ)を含むAffymetrix (Santa Clara, CA USA)オリゴヌクレオチドマイクロアレイデータ、実験的および臨床的記述子、ならびに組織学的調製物のデジタル保存顕微鏡画像を得た。これらのデータにディスカバリー法を適用する前に、統計的調査、整合性についての臨床記録の参照およびアレイの無作為サンプルの組織病理学的検査を含む広範な品質管理法を行った。許容可能な質的基準を満たさなかったマイクロアレイは、解析から除去された。
【0218】
仮説検定
候補転写バイオマーカーを、ディスカバリーの間に同定された候補RNA転写産物とハイブリダイズするように設計された25-merのオリゴヌクレオチドプローブセットの特注オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて試験した。差異的発現仮説を、30個の正常結腸直腸組織、19個の結腸直腸腺腫組織、および19個の結腸直腸腺癌組織を含む、独立して収集された臨床サンプルに由来するRNA抽出物を用いて試験した。各RNA抽出物は、厳密な品質管理基準を満たすことが確認された。
【0219】
結腸直腸組織サンプル
仮説検定のために使用されるすべての組織は、metropolitan Adelaide, Australia (Repatriation General Hospital and Flinders Medical Centre)の三次照合病院組織バンク(tertiary referral hospital tissue bank)から得られた。この研究のための組織バンクへのアクセスは、Research and Ethics Committee of the Repatriation General HospitalおよびEthics Committee of Flinders Medical Centreにより承認された。研究される各組織について、患者からインフォームドコンセントを得た。
【0220】
外科的切除後、サンプルを滅菌容器に入れて、手術室から集めた。手術による切除から手術室からの収集までの時間は変わり得るが、30分より多くはかからなかった。約125mm3 (5x5x5mm)のサイズのサンプルを、結腸領域により、および病変部から近位もしくは遠位により定義された肉眼で正常な組織(できるだけ病変部から)から得た。組織をクライオバイアルに入れ、その後すぐに液体窒素に沈めて、処理まで-150℃で貯蔵した。
【0221】
RNA抽出
RNA抽出は、製造者の指示にしたがって、Trizol(R)試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて行った。改良ドレメルドリルおよび滅菌使い捨て乳棒を用いて、300μLのTrizol試薬で各サンプルを均質化した。さらに200μLのTrizol試薬をホモジネートに加えて、サンプルを、室温で10分間インキュベートした。次いで、100μLのクロロホルムを加えて、サンプルを、ボルテックスで15秒間振とうさせ、さらに3分間、室温でインキュベートした。標的RNAを含む水性相を、40℃で15分間、12,000 rpmでの遠心分離により得た。その後、250μLのイソプロパノールを用いて、室温で10分間、サンプルをインキュベートすることにより、RNAを沈殿させた。精製されたRNA沈殿物を、40℃で10分間、12,000 rpmでの遠心分離により集めて、上清を捨てた。次いで、ペレットを1mLの75%エタノールで洗浄し、その後、ボルテックスにかけ、40℃で8分間、7,500gで遠心分離を行った。最後に、ペレットを、5分間空気乾燥させ、80μLの無RNase水に再懸濁した。次の溶解性を改善するために、サンプルを、55℃で10分間、インキュベートした。A260/280 nmでの光学密度を測定することにより、RNAを定量化した。RNA品質を、1.2% アガロースホルムアルデヒドゲルでの電気泳動により評価した。
【0222】
Gene Chip加工
結腸直腸腫瘍RNA抽出物についてのバイオマーカー候補に関連する仮説を検証するために、Affymertix (Santa Clara, CA USA)との共同により我々が設計した特注GeneChipを用いてアッセイした。これらの特注GeneChipsを、(Affy:WTAssay)に記載されたHU Gene ST 1.0アレイのために開発された標準的なAffymetrixプロトコールを用いて行った。
【0223】
統計学的ソフトウェアおよびデータ加工
ほとんどの解析のために、R 統計学環境(statistics environment) RおよびBioConductorライブラリー(BioConductor, www.bioconductor.org) (BIOC)を使用した。特注GeneChip上の遺伝子識別名にプローブセットIDをマッピングするために、Apr 18 12:30:55 2008 (BIOC)にダウンロードされたEntrez Geneデータを用いて集められたhgu133plus2ライブラリー2.2.0版を使用した。
【0224】
差異的発現バイオマーカーの仮説検定
組織クラス間の差異的発現を評価するために、2個のサンプル間の平均値についてのステューデントt検定またはlimmaライブラリー(Smyth)(limma)により提供されるロバスト変化(robust variant)を使用した。多重仮説検定による誤ったディスカバリーの影響を軽減するために、ディスカバリー工程でのP値に対するBonferroni調整(MHT:Bonf)を適用した。検定に関して、溶液中の誤ったディスカバリー率の制御を目的とする、Benjamini & Hochbergのわずかに弱い(slightly less)保守的多重仮説検定補正の検定(MHT:BH)を適用した。
【0225】
組織特異的遺伝子発現パターンの発見
遺伝子発現データを用いたディスカバリー法はしばしば多くの候補を生じるが、その多くは、研究室(laboratory practice)で検出が困難であり得るわずかな遺伝子発現差異を含んでいるので、市販用の製品として適当ではない。Pepe et al.は、「理想的な」バイオマーカーは、腫瘍組織において検出可能であるが、非腫瘍組織では検出されない(全く検出されない)ことを指摘している(Pepe:biomarker:development.)。この基準を満たす候補に対してディスカバリーを偏らせるために、定性的に非存在であるか、または存在する測定が、関心のある表現型のために診断的であるバイオマーカーについての候補をしぼる目的で、解析法を開発した。この方法では、チップにわたって、バックグラウンド/ノイズ発現の予測と比較して原型的な「活性化(turned-on)」もしくは「不活性化(turned-off)」パターンを示す候補を選択することを試みられる。そのようなRNA転写産物が、診断的潜在性を有する下流の翻訳タンパク質と相関し得るか、または診断的に使用され得る上流のゲノム変化(例えば、メチル化状態)を予測し得ることが理論化される。定量的な出力ではなく定性的な出力におけるこの焦点は、そのようなバイオマーカーの製品開発工程を簡便化し得る。
【0226】
この方法は、任意の特定の組織(例えば、結腸直腸粘膜)中の抽出されたRNAサンプルは、全ゲノムを測定するために設計されたGeneChip上におけるフルセットのプローブセットのうちの少ないサブセットに特異的に結合するという想定に基づくものである。この想定で、全ヒト遺伝子チップ上の最も多くのプローブセットが、特異的な、高い強度のシグナルを示さないことが予測される。
【0227】
この観察は、並べられた平均値、例えば、最も低い25%変位値と同等である理論上のレベルを選択することにより、チップにわたって、バックグラウンドまたは「非特異的結合」を概算するために利用される。この変位値は、あるレベルまで任意に設定され得て、それ以下では、シグナルがバックグラウンドを超えたRNA結合を示さないという妥当な想定がなされる。最後に、このバックグラウンド予測を、非腫瘍性組織サンプルについての実験の「OFF」プローブセットを予測するための閾値として使用する。
【0228】
逆に、1) この理論上の閾値レベルを超えて発現し、2) 腫瘍サンプル中でより高いレベルで差異的に発現するプローブセットが腫瘍特異的候補バイオマーカーであり得ることがさらに仮定される。この場合に、「倍率変化」の閾値の概念がまた、さらに、推定上の「ON」プローブセットにおける絶対的な発現の増加の概念を強調するために容易に適用され得ることが注目される。
【0229】
測定されたプローブセットのかなりのフラクションについての低いバックグラウンド結合の想定を考慮すると、この方法は、大規模GeneLogicデータおよびディスカバリーにおいてのみ使用された。GeneLogicディスカバリー中の仮定の「不活性化」バイオマーカーについてのフィルターを構築するために、454個の組織全範囲にわたる44,928個のプローブセットすべてについての平均発現レベルを予測した。次いで、44,928個の平均値を並べて、データセットに渡って25パーセンタイルに相当する発現値を計算した。特定のサンプル中の多くの(および推定上25%以上の)転写産物が、効率的な転写抑制のために低い濃度を示すので、この任意の閾値を選択した。したがって、この閾値は、非特異的、もしくはバックグラウンド発現であると予測されるものに向けられる保存的上限を示す。
【0230】
実施例5
DNAメチル化データ
プロモーター領域内のメチル化を検出するためのアッセイを開発し、8個の下方調節された遺伝子を表5に示す。DNAの亜硫酸水素塩処理法およびDNAメチル化レベルを決定するためのアッセイは、Clark et al. (2006)に記載されており、MSPおよびCOBRAを含む。
【0231】
5つのMSPアッセイは、表7に示したプライマー対を使用した。CAGE遺伝子の偏りのない増幅のためのコントロールPCRをインプットDNAの量を決定するために使用し、各遺伝子のメチル化レベルの定量のための参照を提供した。PCRのために、Biorad iQ SyBr Green Super Mix中の25 μLの反応物は、5ngの亜硫酸水素塩処理DNA(細胞株アッセイのために1 ngおよび臨床サンプルのために6 ng)および200nMのフォワードおよびリバースプライマーを含んでいた。PCRサイクル条件は、下記のとおりであった:
95.0℃、2分
その後、
95.0℃/15秒
Temp℃/30秒
72.0℃/30秒
を50サイクル。
【0232】
ここに、「Temp」は、表yyで示したとおり、各遺伝子について最適化した再アニーリング温度である。
【0233】
DF遺伝子について、95.0℃の融解温度を用いて3回の予備サイクルを行い、その後、より低い84.0℃の融解温度を用いて50サイクル行った(非特異的増幅を減らすために)。
【0234】
M.SssIメチラーゼでメチル化したDNA (100%メチル化されている)およびPhi29 DNAポリメラーゼを用いてインビボ増幅させたDNA(0%のメチル化)を用いて、標準曲線を作成した。
【0235】
COBRAを、表8で示した3個の遺伝子のために開発した。PCRを上記のとおり設定し、下記のサイクル条件を用いた:
95.0℃、2分
その後、
95.0℃/15秒
Temp℃/30秒
72.0℃/30秒
を50サイクル。
【0236】
PCR後、10 μLのPCR産物を適当な酵素で消化し(表8)、消化産物をゲル電気泳動で解析し、メチル化レベルを半定量的に決定した。
【0237】
8個の遺伝子のメチル化状態を、4個の結腸直腸癌細胞株、Caco2、HCT116、HT29およびSW480ならびに正常な血液DNAおよび正常な肺線維芽細胞株MRC5で決定した。メチル化のレベルを表5に要約する。8個すべての遺伝子のプロモーター領域は、試験された4個の結腸直腸癌細胞株のうちの2個または3個で強いメチル化を示す。MRC5でのDFのメチル化を除いて、すべては、正常な血液DNAおよび線維芽細胞株MRC5からのDNAにおけるメチル化の欠如もしくは低いレベルのメチル化を示した。
【0238】
これらの遺伝子のうちの2個(MAMDC2およびGPM6B)について、12個の腺腫、18個の癌および22個の対応する正常組織サンプルのセットまで解析を拡張した(図2AおよびB)。
【0239】
MAMDC2についての定量的解析は、12個の腺腫のうちの2個および18個の癌サンプルのうちの6個が、正常な組織サンプルで観察された最も高いレベルと比較して、高められたメチル化を示すことを証明した。GPM6Bのメチル化レベルを、半定量的COBRAアッセイにより決定し、制限酵素消化の目視検査に基づき、0〜5の段階で評価した。正常細胞から癌への進行で、プロモーターのメチル化が増加することに対する明確な傾向が示された(図2、パネルB)。
【0240】
下方調節された遺伝子の多くの例に関するこれらのデータは、結腸直腸癌細胞株および一次腫瘍組織における該下方調節がDNAメチル化と関連し得て、DNAメチル化アッセイが癌および正常組織を識別するのに使用され得ることを証明する。
【0241】
実施例6
Affymetrixプローブセットにより特定された関心のある核酸配列の遺伝子同一性の決定
オンラインで利用可能なBasic Local Alignment Search Tools [BLAST]、例えば、NCBI/BLASTを用いて、関心のある配列をBLASTにかける
(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)
(a) ウェブページ(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)上のBLAST ASSEMBLED GENOMES中の「Human」を選択
(b) デフォルト設定、すなわち、下記の設定のままにしておく:
・Database: Genome (all assemblies)
・Program: megaBLAST: compare highly related nucleotide sequences
・Optional parameters: Expect: 0.01, Filter: default, Descriptions: 100, Alignments: 100
(c) 「BLAST」ウィンドウに配列をコピー/ペースト
(d) 「Begin Search」をクリック
(e) 「View Report」をクリック。
【0242】
Open BLAST探索結果の評価
配列を「ブラストにかける(blasting)」と、有意な配列のマルチプルアライメントが同定され得る。
【0243】
同定された配列一致の遺伝子命名(gene nomenclature)の同定
(a) 同定されたヒットの1個に対するリンクをクリック
(b) 新たなページは、染色体上のヒットの位置を図式的に示す。どの遺伝子がヒットしているか明らかである。
(c) リンクをクリックして、「ヒット」配列を取り出す。
(d) 提供された「探索」ウィンドウ内の遺伝子を探索する。これは、該遺伝子についての遺伝子ヌクレオチドコーディネートを提供する。
【0244】
配列の乱雑度(promiscuity)の決定
(a) NCBI/BLASTツールを開く(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)
(b)「basic BLAST」の下の「nucleotide Blast」をクリック
(c) 「Query Sequence」ウィンドウに関心のある配列をコピー/ペースト
(d) 「Blast」をクリック。
【0245】
配列のnBLAST探索結果の評価
(a) Sequenceを用いたnBLAST実行は、マルチプルBlastヒットを生じ得て、その受託エントリー番号は、「Description」に示されている。
(b) これらのヒットが参照されるべきである。
【0246】
遺伝子内の配列の位置の決定
Ensemblデータベースは、オンラインデータベースであり、それは、選択された真核ゲノムの自動的な注釈を生じ、維持する(www.ensembl.orq/index.html)。
【0247】
遺伝子内の配列の位置の同定
(a) 「Search」をHomo Sapienに設定し、提供された探索分野(Ensemble.org/index.html)に「遺伝子名」を打ち込む
(b) 「Go」をクリック
(c) 注釈報告を得るために、「vega protein_coding Gene: OTTHUMG000000144184」リンクをクリック
(d) 代替的スプライシング部位データベースに関する情報を取り出すために、「Gene DAS Report」をクリック: 探索分野に「遺伝子名」を打ち込む。
・「遺伝子エントリー」をクリック
・「エビデンス」をスクロールダウン
・代替的スプライシング部位を参照
・エクソンとイントロンについてのコーディネートの一覧を得るために、「Confirmed intron/exons」をクリック
【0248】
代替的スプライシングおよび/または転写
AceView Databaseは、すべての公のmRNA配列の管理された(curated)非冗長な配列表示を提供する。該データベースは、NCBI: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/IEB/Research/Acembly/から利用可能である。
【0249】
Gene mRNA転写産物のさらなる調査
(a) 提供された「探索」分野に「遺伝子名」を打ち込む
(b) 「Go」をクリック
(c) 下記の情報は、AceViewの生じたエントリーから利用可能である:
・遺伝子が構築される(すなわち、mRNAの単離を含む実験的仕事から生じた)cDNAクローンの数
・該遺伝子より産生されることが予測されるmRNA
・非重複代替的エクソンの存在および検証された代替的ポリアデニル化部位
・切断の存在
・制御された代替的発現の可能性
・遺伝子の代替的スプライシングに参加するものとして記録されたイントロン
(d) 標準スプライシング部位移動。
【0250】
LOC643911/hCG_1815491に対する方法の適用
【0251】
方法および材料
RNAの抽出
製造者の指示にしたがって、Trizol(R)試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いてRNA抽出を行った。改良ドレメルドリルおよび滅菌使い捨て乳棒を用いて、300μLのTrizol試薬で各サンプルを均質化した。さらに200μLのTrizol試薬をホモジネートに加えて、サンプルを、室温で10分間インキュベートした。次いで、100μLのクロロホルムを加えて、サンプルを、ボルテックスで15秒間振とうさせ、さらに3分間、室温でインキュベートした。標的RNAを含む水性相を、40℃で15分間、12,000 rpmでの遠心分離により得た。その後、250μLのイソプロパノールを用いて、室温で10分間、サンプルをインキュベートすることにより、RNAを沈殿させた。精製されたRNA沈殿物を、40℃で10分間、12,000 rpmでの遠心分離により集めて、上清を捨てた。次いで、ペレットを1mLの75%エタノールで洗浄し、その後、ボルテックスにかけ、40℃で8分間、7,500gで遠心分離を行った。最後に、ペレットを、5分間空気乾燥させ、80μLの無RNase水に再懸濁した。次の溶解性を改善するために、サンプルを、55℃で10分間、インキュベートした。A260/280 nmでの光学密度を測定することにより、RNAを定量化した。RNA品質を、1.2% アガロースホルムアルデヒドゲルでの電気泳動により評価した。
【0252】
Gene Chip加工
Human Exon 1.0 ST GeneChipで解析するために、Affymetrix 2007 P/N 701880 Rev.4に記載されたプロトコールにしたがって、RNAサンプルをAffymetrix WT標的標識およびコントロールキット(part# 900652)を用いて加工した。簡潔には、最初のサイクルで、T7プロモーター配列でタグ化したランダムヘキサマープライマーおよびSuperScript II (Invitrogen, Carlsbad CA)を用いて、100ng リボソーム還元RNAからcDNAを合成し、その後、第2鎖cDNAのDNAポリメラーゼI合成を行った。次いで、アンチセンスcRNAを、T7ポリメラーゼを用いて合成した。次いで、2回目のサイクルで、SuperScript II、dNTP + dUTP、およびランダムヘキサマーを用いてcDNAを合成し、ウラシルを組み込んだセンス鎖cDNAを産生した。その後、この一本鎖ウラシル含有cDNAを、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)と脱プリン/脱ピリミジンエンドヌクレアーゼ1 (APE 1)の組み合わせを用いて断片化した。最後に、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)およびAffymetrix独自のDNA標識化試薬を用いて、DNAをビオチン標識した。アレイにおけるハイブリダイゼーションを、45℃で16-18時間、行った。
【0253】
ハイブリダイズしたGeneChipの洗浄および染色を、推薦されたプロトコールにしたがって、Affymetrix Fluidics Station 450を用いて行い、Affymetrix Scanner 3000でスキャンした。
【0254】
SYBR greenに基づく定量的リアルタイムPCR
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、さまざまなhCG_1815491転写産物の増幅および検出のために臨床サンプルから単離されたRNAで行われた。
【0255】
最初に、cDNAを、Applied Biosystems High Capacity Reverse transcription Kit (P/N 4368814)を用いて、2μgの全RNAから合成した。合成後、反応物を水で1:2に希釈し、40μlの最終量を得て、この希釈化cDNAの1μlを次のPCR反応に用いた。
【0256】
PCRは、12.5μlのPromega 2x PCR master mix (P/N M7502)、1.5μlの5μM フォワードプライマー、1.5μlの5μM リバースプライマー、7.875μlの水、0.625μlのSYBR green 1 pure dye (Invitrogen P/N S7567)の10,000xストックの1:3000希釈物、および1μlのcDNAを用いて、25μlの量で行われた。
【0257】
増幅のためのサイクル条件は、95℃、2分を1サイクル、95℃、15秒および60℃、1分を40サイクルであった。増幅反応は、Corbett Research Rotor-Gene RG3000またはRoche LightCycler480リアルタイムPCR装置で行われた。Roche LightCycler480リアルタイムPCR装置を増幅のために使用したとき、反応量を10μlまで減らし、384ウェルプレートで行った(すべての構成要素間の相対的な割合は、同じであった)。最終結果を、ΔΔCt法を用いて計算し、さまざまなhCG_1815491転写産物の発現レベルを内在性ハウスキーピング遺伝子HPRTの発現レベルと比較して計算した。
【0258】
エンドポイントPCR
エンドポイントPCRは、さまざまなhCG_1815491転写産物のために臨床サンプルから単離されたRNAで行われた。条件は、SYBR green染料が水で置換されていることを除けば、上記でSYBR greenアッセイについて記載されたものと同一である。増幅反応は、MJ Research PTC-200サーマルサイクラーで行われた。2.5μlの増幅産物を、100塩基対のDNA Ladder Markerと共に2% アガロースE-ゲル(Invitrogen)を用いて解析した。
【0259】
結果
hCG_1815491に関連する転写産物のヌクレオチド構造および発現レベルを、遺伝子チップ解析からのAffymetrixプローブセット238021_s_atおよび238022_atの診断的利用性の同定に基づいて解析した。
【0260】
遺伝子hCG_1815491は、現在、NCBIにおいて単一のRefSeq配列XM_93911として示されている。hCG_1815491のRefSeq配列は、83個のcDNAクローンからの89個のGenBank受託に基づく。2006年3月以前に、これらのクローンは、2個の重複遺伝子LOC388279およびLOC650242(後者はまた、LOC643911として既知である)を示すことが予測されていた。2006年3月に、ヒトゲノムデータベースを、クローン再配列に対してフィルターをかけ、ゲノムと共に並べて(co-aligned)、最小限に非冗長な方法でクラスター化した。結果として、LOC388272およびLOC650242が、1つの遺伝子名hCG_1815491に統合された(hCG_1815491に対するより初期の参照は、LOC388279、LOC643911、LOC650242、XM_944116、AF275804、XM_373688である)。
【0261】
NCBI近接参照NT_010498.15|Hs16_10655、NCBI 36 March 2006ゲノムにより定義されたとおりのヒト第16染色体上のゲノムコーディネート8579310〜8562303により特定されたRef Sequenceが、hCG_1815491を包含することを決定した。この遺伝子に由来する10個の予測されるRNA変異型を、マップ領域8579310〜8562303に位置するゲノムヌクレオチド配列と並べた。このアライメント解析は、少なくとも6個のエクソンの存在を明らかにし、そのうちのいくつかは、代替的にスプライシングされる。同定されたエクソンは、NCBI hCG_1815491 RefSeq XM_93911で特定された4個のエクソンとは対照的である。2個のさらなる推定上のエクソンをまた、Affymetrix Genechip HuGene Exon 1.0上に包含されるプローブセットを調べることによりRef Sequenceで同定し、標的ヌクレオチド配列は、Ref Sequenceに組み込まれていた。同定され、拡張されたhCG_1815491のエクソン-イントロン構造を、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを設計するために使用し、それにより、PCRに基づく方法論を用いて、Ref Sequenceから産生されたRNA変異型の発現の測定が可能となった(図4)。
【0262】

プローブセット表示は、HG-133plus2プローブセットIDおよびHuman Gene 1.0STアレイプローブidsを含む。後者は、Affymetrixにより提供されるHuman Gene 1.0STプローブタブファイル(http://www.affymetrix.com/Auth/analysis/downloads/na22/wtgene/HuGene-1_0-st-v1.probe.tab.zip)を用いて、Transcript Cluster IDに容易にマッピングされ得る。公に利用可能なソフトウェア、例えば、NetAffx (Affymetrixにより提供される)を用いて、Transcript Cluster IDはさらに、遺伝子識別名、染色体位置などにマッピングされ得る。
【0263】
表1
腫瘍性コントロールと比較して非腫瘍性組織においてより高く発現することを証明した、プローブセット。標的PS: Affymetrix HG-U133plus2プローブセットid; 識別名: 標的プローブセットidに対応する推定上の遺伝子識別名-複数の識別名は、複数の遺伝子標的にハイブリダイズするプローブセットの可能性を示す; Signif. FDR: 腫瘍性および非腫瘍性組織から抽出されたRNA間の平均差異検定について調整されたp値。調整は、多重仮説検定のためのBenjamini & Hochberg補正(Benjamini and Hochberg, 1995)を用いて行われる; D.value50: 受信者動作特性ROCの領域に対応する診断的有効性パラメーター予測。このパラメーターは、診断的利用性の簡易な予測を提供し、Saunders, 2006に記載されている; FC: 非腫瘍および腫瘍間の平均発現レベルの倍率変化; Sens-Spec: 同等の感受性および特異性を証明するROC曲線点に対応する診断的パフォーマンスの予測; CI (95): 感受性および特異性予測の95%信頼区間。
【0264】
表2
非腫瘍性組織と腫瘍性コントロール間のRNA濃度の差異を示す、本明細書で記載された遺伝子識別名に対応する複数のプローブセットの証拠。識別名: 遺伝子識別名; ValidPS_DOWN: AffymetrixプローブセットIDは、腫瘍性コントロールと比較して非腫瘍性RNA抽出物での統計学的に有意な過剰発現を証明する。Signif. FDR: 腫瘍性および非腫瘍性組織から抽出されたRNA間の平均差異検定について調整されたp値。調整は、多重仮説検定のためのBenjamini & Hochberg補正(Benjamini and Hochberg, 1995)を用いて行われる; D.value50: 受信者動作特性ROCの領域に対応する診断的有効性パラメーター予測。このパラメーターは、診断的利用性の簡易な予測を提供し、Saunders, 2006に記載されている; FC: 非腫瘍および腫瘍間の平均発現レベルの倍率変化; Sens-Spec: 同等の感受性および特異性を証明するROC曲線点に対応する診断的パフォーマンスの予測; CI (95): 感受性および特異性予測の95%信頼区間。
【0265】
表3
腫瘍性コントロールと比較して非腫瘍性組織で定性的に(定量的に加えて)高められたプロファイルを証明するプローブセット。標的PS: Affymetrix HG-U133plus2プローブセットid; 識別名: 標的プローブセットidに対応する推定上の遺伝子識別名-複数の識別名は、複数の遺伝子標的にハイブリダイズするプローブセットの可能性を示す; Signif. FDR: 腫瘍性および非腫瘍性組織から抽出されたRNA間の平均差異検定について調整されたp値。調整は、多重仮説検定のためのBenjamini & Hochberg補正(Benjamini and Hochberg, 1995)を用いて行われる; D.value50: 受信者動作特性ROCの領域に対応する診断的有効性パラメーター予測。このパラメーターは、診断的利用性の簡易な予測を提供し、Saunders, 2006に記載されている; FC: 非腫瘍および腫瘍間の平均発現レベルの倍率変化; Sens-Spec: 同等の感受性および特異性を証明するROC曲線点に対応する診断的パフォーマンスの予測; CI (95): 感受性および特異性予測の95%信頼区間。
【0266】
表4
腫瘍性組織と比較して非腫瘍性組織でRNA濃度の定性的変化を示す、本明細書で記載された遺伝子識別名に対応する複数のプローブセットの証拠。識別名: 遺伝子識別名; ValidPS_DOWN: AffymetrixプローブセットIDは、非腫瘍性コントロールと比較して腫瘍性RNA抽出物での統計学的に有意な過剰発現を証明する。Signif. FDR: 腫瘍性および非腫瘍性組織から抽出されたRNA間の平均差異検定について調整されたp値。調整は、多重仮説検定のためのBenjamini & Hochberg補正(Benjamini and Hochberg, 1995)を用いて行われる; D.value50: 受信者動作特性ROCの領域に対応する診断的有効性パラメーター予測。このパラメーターは、診断的利用性の簡易な予測を提供し、Saunders, 2006に記載されている; FC: 非腫瘍および腫瘍間の平均発現レベルの倍率変化; Sens-Spec: 同等の感受性および特異性を証明するROC曲線点に対応する診断的パフォーマンスの予測; CI (95): 感受性および特異性予測の95%信頼区間。
【0267】
本明細書中に記載された発明が、具体的に記載されたもの以外の変化および修飾を受けやすいことは、当業者に理解されている。本発明は、そのような変化および修飾のすべてを包含するものと理解されるべきである。本発明はまた、個々に、もしくは集合的に、本明細書で言及もしくは示された工程、特徴、組成物および化合物のすべて、ならびに該工程もしくは特徴の任意の2個もしくはそれ以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0268】
表1
【表138】

【0269】
【表139】

【0270】
【表140】

【0271】
【表141】

【0272】
【表142】

【0273】
【表143】

【0274】
【表144】

【0275】
【表145】

【0276】
【表146】

【0277】
【表147】

【0278】
【表148】

【0279】
【表149】

【0280】
【表150】

【0281】
表2
【表151】

【0282】
【表152】

【0283】
【表153】

【0284】
【表154】

【0285】
【表155】

【0286】
【表156】

【0287】
【表157】

【0288】
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【0289】
【表159】

【0290】
【表160】

【0291】
【表161】

【0292】
【表162】

【0293】
【表163】

【0294】
【表164】

【0295】
【表165】

【0296】
【表166】

【0297】
【表167】

【0298】
【表168】

【0299】
【表169】

【0300】
【表170】

【0301】
【表171】

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【表172】

【0303】
【表173】

【0304】
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【0305】
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【表176】

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【0309】
【表179】

【0310】
【表180】

【0311】
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【表183】

【0314】
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【0316】
【表186】

【0317】
【表187】

【0318】
【表188】

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【表190】

【0321】
【表191】

【0322】
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【0323】
【表193】

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【表194】

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【表195】

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【表196】

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【0329】
【表199】

【0330】
【表200】

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【表201】

【0332】
【表202】

【0333】
【表203】

【0334】
【表204】

【0335】
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【表206】

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表3
【表207】

【0338】
【表208】

【0339】
表4
【表209】

【0340】
【表210】

【0341】
【表211】

【0342】
【表212】

【0343】
【表213】

【0344】
表5
【表214】

【0345】
表6
【表215】

【0346】
【表216】

【0347】
【表217】

【0348】
【表218】

【0349】
【表219】

【0350】
【表220】

【0351】
【表221】

【0352】
【表222】

【0353】
【表223】

【0354】
【表224】

【0355】
【表225】

【0356】
【表226】

【0357】
【表227】

【0358】
【表228】

【0359】
【表229】

【0360】
【表230】

【0361】
【表231】

【0362】
【表232】

【0363】
【表233】

【0364】
【表234】

【0365】
【表235】

【0366】
【表236】

【0367】
【表237】

【0368】
【表238】

【0369】
【表239】

【0370】
【表240】

【0371】
【表241】

【0372】
【表242】

【0373】
【表243】

【0374】
【表244】

【0375】
【表245】

【0376】
【表246】

【0377】
【表247】

【0378】
【表248】

【0379】
【表249】

【0380】
【表250】

【0381】
【表251】

【0382】
【表252】

【0383】
【表253】

【0384】
【表254】

【0385】
【表255】

【0386】
【表256】

【0387】
【表257】

【0388】
【表258】

【0389】
【表259】

【0390】
【表260】

【0391】
【表261】

【0392】
【表262】

【0393】
【表263】

【0394】
【表264】

【0395】
【表265】

【0396】
【表266】

【0397】
【表267】

【0398】
表7: MSPプライマーおよびPCR条件
【表268】

【0399】
表8: COBRAプライマーおよびPCR条件
【表269】

【0400】
文献目録
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするか、または腫瘍の進行をモニタリングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

および/または
(ii)
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低いレベルの発現が、腫瘍性大腸細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す、方法。
【請求項2】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表11】

および/または
(ii)
【表12】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表13】

および/または
(ii)
【表14】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表15】

および/または
(ii)
【表16】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表17】

および/または
(ii)
【表18】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表19】

および/または
(ii)
【表20】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表21】

および/または
(ii)
【表22】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表23】

および/または
(ii)
【表24】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表25】

および/または
(ii)
【表26】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表27】

および/または
(ii)
【表28】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該腫瘍性細胞が腺腫または腺癌である、請求項1-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該腫瘍が腺腫であり、該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表29】

【表30】

【表31】

および/または
(ii)
【表32】

【表33】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該腫瘍が癌であり、該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表34】

【表35】

および/または
(ii)
【表36】

【表37】

から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該コントロールレベルが非腫瘍性レベルである、請求項1-13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
個体における大腸腫瘍の発症もしくは発症素因をスクリーニングするための方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表38】

および/または
(ii)
【表39】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルをスクリーニングすることを含み、ここで、バックグラウンドレベルを実質的に超えない(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物の発現レベルが、腫瘍性細胞または腫瘍性状態の発症素因を有する細胞を示す、方法。
【請求項16】
該腫瘍性細胞が腺腫または腺癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該腫瘍が腺腫であり、該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表40】

および/または
(ii)
【表41】

から選択される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
該腫瘍が癌であり、該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表42】

および/または
(ii)
【表43】

から選択される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該細胞もしくは細胞集団中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表44】

【表45】

および/または
(ii)
【表46】

【表47】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管癌コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子のより低い発現レベルが、腺腫細胞または腺腫状態の発症素因を有する細胞を示す、方法。
【請求項20】
個体の大腸に由来する腫瘍性細胞もしくは細胞集団を特徴付ける方法であって、該個体由来の生物学的サンプル中の
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表48】

および/または
(ii)
【表49】

から選択される1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物の発現レベルを評価することを含み、ここで、消化管腺腫コントロールレベルと比較して(i)群および/または(ii)群の遺伝子または転写産物のより低い発現レベルが、癌または癌性状態の発症素因を有する細胞を示す、方法。
【請求項21】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表50】

および/または
(ii)
【表51】

から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表52】

および/または
(ii)
【表53】

から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表54】

および/または
(ii)
【表55】

から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表56】

および/または
(ii)
【表57】

から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子、遺伝子群または転写産物:
【表58】

および/または
(ii)
【表59】

から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
該1種もしくはそれ以上の遺伝子または転写産物が、
(i) 下記のAffymetrixプローブセットIDにより検出される遺伝子または遺伝子群:
【表60】

および/または
(ii)
【表61】

から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
該細胞が結腸直腸細胞である、請求項1-26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
該生物学的サンプルが、排泄物サンプル、腸洗浄、外科的切除、組織生検または血液サンプルである、請求項1-27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
該発現レベルがmRNA発現またはタンパク質発現である、請求項1-28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
該発現レベルがゲノムDNAにおける変化についてのスクリーニングにより評価される、請求項1-28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ゲノムDNAにおける該変化がDNAメチル化における変化である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該発現レベルが、該遺伝子が関連するクロマチンタンパク質における変化についてのスクリーニングにより評価される、請求項1-28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
該個体がヒトである、請求項1-32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
(i) 請求項1-26のいずれか1項に記載した任意の1種もしくはそれ以上の腫瘍マーカー遺伝子に対応するヌクレオチド配列またはそれと少なくとも80%の同一性を示す配列または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(ii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸分子; または
(iii) 中程度のストリンジェンシー条件下で、任意の1種もしくはそれ以上の(i)の配列にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド配列、または該核酸分子の機能性誘導体、断片、変異型もしくはホモログを含む、核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド; または
(iv) (i)の核酸分子によりコードされる任意の1種もしくはそれ以上のタンパク質またはその誘導体、断片もしくはホモログに結合可能なプローブ
の複数を含む分子アレイであって、(i)の該マーカー遺伝子もしくは(iv)のタンパク質の発現レベルが、大腸に由来する細胞または細胞サブ集団の腫瘍性状態を示す、分子アレイ。
【請求項35】
請求項1-26に記載の1種もしくはそれ以上の腫瘍マーカーを検出するための薬剤および該薬剤による検出を促進するのに有用な試薬を含む、生物学的サンプルをアッセイするための診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【公表番号】特表2011−501674(P2011−501674A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530223(P2010−530223)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001565
【国際公開番号】WO2009/052567
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510115465)クリニカル・ジェノミックス・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CLINICAL GENOMICS PTY. LTD.
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】