2工程の燃焼プロセスにおける一次側での窒素酸化物の減少方法
窒素酸化物(NOx)の形成を一次側で減少させ、同時に、2段階の燃焼プロセスの排ガス中の一酸化二窒素(N2O)およびアンモニアスリップ(NH3)の形成を回避させ、ならびに酸素含有一次ガスによって貫流される、燃料床の上方の固定床焼却帯域および後接続された、付加的に酸素含有二次ガスが導入される排ガス焼却帯域を含むスラッジ品質を改善させる方法。」窒素酸化物の形成を一次側で工業用燃焼装置、例えば著しく高い効率を有する火格子燃焼装置中で減少させる簡単で確実に制御可能な方法を提案することが課題であり、この場合には、付加的な有害物質は、生成されないか、または燃焼ガスの熱容量のエネルギー的利用は、本質的には損なわれない。この課題は、燃料床表面と排ガス焼却帯域の前方との間の排ガス発熱量が、平均発熱量が1MJ/m3未満に調節され、排ガス焼却帯域の排ガスが流出した後の燃料床面の温度が少なくとも950℃であり、後方の火格子の半分の範囲内の燃料床の上方のガス温度が1000℃を上廻るように減少されることによって解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の請求項に記載された、窒素酸化物(NOx)の形成を一次側で減少させ、同時に、酸素含有一次ガスによって貫流される固定床焼却帯域および後接続された、付加的に酸素含有二次ガスが導入される排ガス焼却帯域を含む2段階の燃焼プロセスの排ガス中の一酸化二窒素(N2O)およびアンモニアスリップ(NH3)を回避させる方法に関する。その上、本発明は、火格子灰分中の塩化物濃度の減少によりスラグ品質を改善することに役立つ。
【0002】
殊に火格子燃焼装置中での燃焼プロセスの場合、空気窒素からの熱的窒素酸化物の形成(NOx形成)は、比較的に低い温度水準のために無視できる程度に少ない。窒素含有燃料を前記燃焼装置中で燃焼させる場合には、窒素酸化物は、本質的に燃料中で結合された窒素から形成される。
【0003】
燃焼火格子上での固体燃料、例えば廃棄物、バイオマスまたは石炭の燃焼は、理想的には順次に進行する部分プロセスの乾燥、脱ガスおよび炭素の焼却に区分されることができる。工業的な火格子燃焼においては、前記の部分プロセスは、重なり合っている。脱ガス段階中に炭化水素と共に最初に燃料窒素から形成された窒素化合物、殊にNH3(アンモニア)およびHCN(青酸)は、排ガス中に放出される。火格子の直ぐ上方での排ガス中の炭化水素の濃度は、なかんずく燃焼装置の主要な燃焼帯域の範囲内で、そこに局所的に一次空気を介して供給される酸素量が完全な排ガス焼却を実現させるためには十分ではないような高さである。燃料床から流出する排ガスは、前記帯域中で高い排ガス温度を示し、実際には、酸素不含である。前記条件下でガス化反応により、一酸化炭素(CO)および水素(H2)は形成される。それ故に、前記範囲内では、発熱量に富んだ排ガス成分、例えば炭化水素、一酸化炭素または水素の最も高い濃度が最初に燃料窒素から形成された窒素種、主にアンモニア(NH3)および青酸(HCN)ならびに極めて微少量の窒素含有有機化合物、例えばピリジンおよびアニリンと一緒に見出される。
【0004】
通常、酸素不足に帰因する前記の不完全燃焼の場合には、なお発熱量に富んだ排ガス中への二次空気の添加によって後燃焼が導入される。この場合には、局所的に極めて高い温度ピークを生じ、その際に冒頭に記載されたNH3化合物およびHCN化合物から酸化条件下で排ガスの焼却中に複雑な反応を経て最終的にNOまたはN2が形成される。目的は、前記プロセスの制御を、一次窒素種のNH3およびHCNが完全に分解され、かつ最終製品として有利にN2が窒素酸化物形成の負荷を生じ、同時にN2Oの形成が回避されるように、変更することである。
【0005】
[1]には、一次空気量の機能としての固体の焼却の場合には焼却速度に依存することが開示されている。燃焼特性、殊に発熱量に依存して、焼却速度は、一定の空気量で最大を示す。これに対して、一次空気量をこの最大を超えるようにさらに上昇させることは、燃料床の冷却を生じる。冷却と関連した、減少されたかまたは減速された、燃料からの揮発性含分の放出ならびに供給された一次空気を有する燃料ガスは、減少された局所的な放出、ひいては炭化水素、COおよびH2の減少された濃度を生じる。
【0006】
[2]および[3]には、高い一次空気供給量が同時に低い二次空気供給量(一次空気と二次空気との一定の総和)の際に原則的に燃焼排ガス中での低いNO値を生じるという付加的な検出に関連して前記の方法が開示されている。
【0007】
廃棄物燃焼装置中でのPCDD/F形成を減少させるための水の噴入が[4]中に提案されている。水噴入によって惹起された温度減少のためにNOx形成が減少されることも利点として見なされている。[4]中に記載された全ての排ガス温度は、排ガス焼却帯域中への入口前方の範囲に関連し、800〜950℃であるか、または970℃である。詳説されたNOx値およびNOx減少速度は、残念ながら述べられていない。別のN含有有害物質、殊にN2OおよびNH3についての記載も全くない。
【0008】
しかし、排ガス焼却帯域(二次燃焼帯域)からの流出後に排ガス温度が950℃未満に減少することは、N2O(笑気ガス)が例えば触媒を用いての付加的な処理工程の範囲内で強い温室ガスとして大気中に逃出する場合に、最初に形成されたNH3(アンモニア)および付加的にN2O(笑気ガス)の形成を生じる。
【0009】
しかし、[4]に記載された、水の添加による800〜950℃への温度減少は、圧接続された熱利用の際に、例えばボイラーの加熱時に性能の低下をまねく。
【0010】
同様の効果は、燃料を湿潤させることによって達成され、このことは、燃料の発熱量の減少をまねく。焼却速度の最大は、既に小さい一次空気量の際に超過する。固体の焼却は、長い火格子領域に亘って延在し、この場合ガス発熱量は、排ガス温度を排ガス焼却帯域中への侵入前に低い水準を生じる。この場合も前記の効果が生じる。
【0011】
この事実から出発して、本発明の課題は、殊に窒素酸化物形成の窒素含有有害物質を工業用燃焼装置中、例えば火格子燃焼装置中で著しく高い効率で一次側で減少させるための簡単で確実に制御しうる方法を提案することである。この場合、本方法によって別の有害物質、例えばN2Oが形成されず、NH3スランプが回避されおよび/または燃焼排ガスの熱容量のエネルギー的利用の際の重大な減少が全くなく、ならびにスラッジ品質の場合の減少が全くないことは、特に重要である。
【0012】
この課題は、第1の請求項の特徴を有する方法で解決される。本方法の好ましい実施形式は、従属請求項に記載されている。
【0013】
この課題を解決させるために、窒素酸化物の形成を、2工程の燃焼プロセス、即ち排ガス取出し口で固定床焼却帯域および後接続された排ガス焼却帯域を含む2工程の燃焼プロセスで一次側で減少させるための方法が提案されている。この場合には、固定床焼却帯域中で固体燃料の固有の燃焼が行なわれ、他方、排ガス焼却帯域中で不完全に燃焼された排ガス成分の後燃焼が行なわれる。通常、この種の燃焼プロセスの場合、酸素含有一次ガスは、固定床焼却帯域中に供給され、同様に後燃焼のための酸素含有二次ガスは、排ガス焼却帯域中に供給される。
【0014】
本発明の場合の本質的なことは、排ガス焼却帯域中への侵入前に、実際にそれによって窒素酸化物形成の重要な減少が実現され、他方で、排ガス温度が局所的に同時に、有害物質、例えばN2Oの形成およびNH3の不完全な分解が惹起されるようには幅広く減少されないように、燃料ガスの発熱量を意図的に減少させることである。このためには、排ガスの一定の状態を正確に維持することは、絶対に必要である。一面で、排ガスまたはその一部分は、窒素酸化物形成の制限のために一定の限界発熱量、特に1.5MJ/m3、さらに有利に1.0MJ/m3を超過してはならず、他面、排ガス温度は、排ガス焼却帯域は、1000℃未満、特に980℃未満、さらに有利に950℃を下廻ってはならず、実際にN含有有害物質、殊にN2OおよびNH3の制限のために、不可欠であるだけでなく、一定の範囲内でも不可欠である。その限りにおいて、排ガスの発熱量および温度を適当な方法によって意図的に制御するかまたは調節するだけでなく、この方法によって意図的に均一化することは、著しく重要である。
【0015】
1つの方法は、ガス−水混合物を排ガス焼却帯域の前方で噴入することである。この場合には、固定床焼却(燃料床上)の直後に排ガスの発熱量の意図的な減少を生じると同時に燃料床と排ガス焼却帯域との間でガスの均質化を生じ、即ち固体燃料それ自体の発熱量の減少は生じない。噴入は、有利に一面で僅かな体積流および高い速度を示す自由噴流によって行なわれる。
【0016】
従って、ガス−水混合物の噴入は、好ましくは直接排ガスの発熱量に影響を及ぼし、固体燃料それ自体には影響を及ぼさず、実際に発熱量の減少に関してだけでなく、発熱量の均一化に関しても影響を及ぼす。
【0017】
即ち、燃料床の直ぐ上方の範囲での排ガスの高い発熱量は、窒素酸化物の形成の高さと相関関係を有する。この場合、発熱量に富んだ排ガス成分CnHn(炭化水素)、COおよびH2の軸方向の濃度プロフィールの最大ならびにこの最大の幅広の分布、即ち火格子長に亘る高い積分の平均値は、記載された高いNO形成速度を生じさせる。その限りにおいて、本発明には、排ガスの発熱量を排ガス焼却前に減少させ、ならびに均一化し、それによって分布の最大および幅を劇的に減少させ、ひいてはNO形成を最少化するのに適した工業的方法が記載される。
【0018】
燃焼プロセスが火格子燃焼装置中で行なわれる場合には、燃料床としての火格子上の燃料は、連続的に全ての固定床焼却帯域を通過し、この場合この固定床焼却帯域は、個別的に順次に配置された固定床範囲に区分されている。最初に燃料が通過する固定床範囲は、前方の火格子の半分に設定され、他方、燃料は、燃焼が進行するにつれて後方の火格子の半分の次の固定床範囲内に置かれ、そこから固体の燃焼残留物用の出口に輸送される。
【0019】
この場合、固定床焼却帯域は、燃焼室内に配置されており、この場合それぞれの燃料床領域は、一次ガスの個別的な供給を装備している。酸素含有の二次ガスは、排ガス焼却帯域中、特に全ての燃料床領域用の共通の排ガス取出し口中に供給される。水−ガス混合物は、自由噴流中で直接に燃料床表面の上方の燃料ガス中に燃焼室中で、即ち排ガス焼却帯域の前方に噴入され、この場合この噴流は、全ての燃料床領域を軸方向に突き抜け、燃料ガスは、生成直後に捕捉され、かつ混合される。
【0020】
水−ガス混合物としては、原則的に水または水溶液とガスからなる全ての混合物、例えば水−空気混合物、水−排ガス混合物または水−水蒸気混合物が適している。水溶液は、本発明の範囲内で別の清浄化手段(例えば、清浄化洗浄器)からの溶解して再循環される有害物質を含有することができる。
【0021】
水−ガス混合物は、連続的に高い速度またはインパルス強さで噴入されるかまたはパルス化され、したがって噴流は、燃料床表面の上方のガス空間を全ての火格子帯域に亘って突き抜ける。噴流の発生のためには、15゜未満、特に3〜10゜の噴流角度を有する二物質流ノズルの使用が提供される。
【0022】
しかし、原則的には水含分とガス含分とは、別々のそれぞれの固有の一物質流ノズルにより噴入されてもよく、この場合、燃料ガスの前記均一化に関連して2つの一物質噴流は、噴入に相応する設計によって燃料ガスと燃焼室内で相互に衝突しかつ相互に混合されることが保証されうる。
【0023】
噴流により噴入される、水−ガス混合物のガス含分は、導入される全ての燃焼空気量の10%を超えてはならず、この場合この燃焼空気量は、本質的に一次空気流と二次空気流とから構成されている。よりいっそう高い含分は、例えば排ガス中への高められたダスト放出速度を生じさせる。原則的な制限は、水性含分の導入される質量流にも当てはまる。即ち、質量流が大量に増大すると、燃料ガスがますます著しく冷却され、一定の高さになると支障をきたし、ましてや排ガス焼却の消失をまねく。水の添加による燃料ガスの冷却は、一般に蒸気発生の際に排ガス熱の減少されたエネルギー的利用を生じ、したがってできるだけ僅かになるように維持することができる。
【0024】
排ガス焼却帯域の前方の温度は、常に970℃を上廻り、或いは排ガス焼却帯域の後方では、950℃を上廻り、したがって望ましくない有害物質、例えば温室ガスのN2Oまたは最初に形成されたNH3のスランプは、焼却された排ガス中で全く発生しない。
【0025】
排ガス焼却帯域の後方の温度が950℃を下廻ると、温度が減少するにつれてN2O濃度は、指数的に上昇する。N2Oは、強い温室ガスであり、したがって回避すべきである。また、950℃を上廻ると、最初に形成されたNH3は、排ガス焼却帯域中で実際に完全に分解されることが保証されている。
【0026】
特に、噴流により供給すべき水量は、排ガス中で必要とされるNO濃度によって排ガス焼却帯域の後方で(例えば、法的限界値)、即ち間接的に燃料ガス(排ガス)の平均化された温度により燃焼室中の排ガス焼却帯域の後方で測定され、かつ制御される。この場合、950℃の排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の最小温度は、上向きの水の質量流を制限する。
【0027】
前記の最小排ガス温度の1つを同時に保証する場合に排ガスの発熱量を減少させるための他の選択可能な方法または付加的な方法は、一次燃焼帯域中での燃焼の化学量論的量が0.6〜1.2、特に1.0未満、さらに有利に0.7〜0.9に調節されるように、一次ガス供給量の調節を含む。最小燃焼空気量および一次空気量は、排ガス組成(例えば、CO2、O2、H2O)および排ガス量から近似的に計算されることができる。
【0028】
このために他の選択可能な方法によれば、前記目的のためのもう1つの方法は、燃料床中での意図的に調節可能および/または制御可能な輸送速度の調節を含み、この場合、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも本質的に特に少なくとも50%高い輸送速度が存在し、その際、火格子上での固体(燃料)の滞留時間は、火格子灰分の焼却が99%を上廻るまで行なわれるように算定されている。この方法の基本思想は、固定床上で燃焼物が燃焼される際に生じる排ガス放出を、それぞれの燃料床領域の上方での排ガスが低い発熱量を有するように制御し、燃料床表面に亘って前記排ガス放出が分布することである。その限りにおいて、前記方法を用いると、発熱量に富んだガスの放出は、大きな火格子領域に亘って分布され、それによって軸線方向での排ガス発熱量プロフィールの最大値は、燃料床の上方で明らかに減少される。発熱量に富んだガスの放出の前記の空間的な拡大は、既に燃料床中で供給された一次空気で改善されたガス焼却を生じさせ、その理由は、局所的に大量の酸素が酸化に使用されるからであり(よりいっそう大きな火格子領域−空気m3/火格子面積m2=定数)、それによって軸線方向の発熱量プロフィールの積分の平均値の減少も生じる。
【0029】
全ての場合に、排ガス中での低い発熱量(貫流断面での排ガス発熱量プロフィールの平均値および最大値に対して)は、燃料床面積と原則的に低いNOxでの二次空気供給の前方での放出値との間で相関関係にある。従って、一般に低いガス発熱量は、二次空気供給の前方で達成しようと努力することができ、この場合には、提案された前記方法でそれぞれ単独でかまたは互いに組み合わせて燃料床ならびに良好なスラグ焼却および排ガス焼却からの低いダスト放出が保証される。それによって、殊に低いNOx放出値は、N2O形成の重大な上昇なしに達成可能であり、この場合には、最初に形成されたNH3のスランプが欠けることにより、排ガス焼却帯域中で十分に高い温度が二次空気供給の際に誘発される。
【0030】
本発明およびその好ましい実施形式は、特に次の枠組み条件を満たす:
一次空気数(化学量論的量)は、僅かなダスト放出を達成させるために、1.0未満、特に0.7〜0.9に調節される。
【0031】
二次ガスは、排ガス焼却帯域の後方で酸素過剰量が燃料の発熱量/燃料の湿分に依存して少なくとも6%、特に約10%のままであるように調節される。
【0032】
火格子上での燃料の全滞留時間は、良好なスラグ焼却が保証されるように算定されており、この場合には、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも高い輸送速度に調節される。
【0033】
僅かな水/空気量による燃焼室中での燃料ガスの軸方向での混合は、特に二物質流ノズルを用いて微細に分散された水で行なわれる。液体/ガス混合物からの自由噴流は、高いインパルス水準で燃焼室を軸方向(即ち、多くの場合に水平方向および全ての燃料床領域に亘って延在する)に突き抜ける。それによって、燃焼室中での排ガスの混合および発熱量の減少が生じる。
【0034】
水−ガス噴流の水量は、排ガス中の算出された、特に測定されたNOx濃度に依存して排ガス焼却帯域の後方またはボイラーの後方で制御される。
【0035】
最大の水量は、950℃の算出された、特に測定された、排ガス流の最小温度によって排ガス焼却帯域の後方で制限される。この場合、排ガス焼却帯域の前方での温度は、970℃を超えてはならない。
【0036】
ボイラーに後接続された熱利用に必要とされる熱量の損失は、僅かな水供給量の際に特に排ガス1Nm3当たり50g未満、更に有利に排ガスNm3当たり30g未満の限度で維持される。
【0037】
次に、本発明を実施例および図に基づきよりいっそう詳細に説明する。
【0038】
図1に示されているように、従来の火格子燃焼装置は、本質的に、燃料用の入口4とスラグまたは別の固体の燃焼生成物用の出口5(燃料輸送方向32参照)と燃焼室に後接続された、排ガス取出し口中の排ガス焼却帯域6とを備えた燃焼室3中での燃焼火格子2上の燃料床1からなる。燃料床1は、本質的に固体燃料からなる。燃焼室3は、全ての燃料床領域P1〜P4を被い、これらの燃料床領域には、燃焼床中の燃料が連続的に通過し、それぞれ燃焼床領域1つにつき個々の酸素含有一次ガス供給量7が火格子を貫流する。この場合、P1およびP2は、前方の火格子の半分を形成し、P3およびP4は、後方の火格子の半分を形成する。前記の酸素含有の二次ガス噴入9は、排ガス取出し口中の後接続された排ガス焼却帯域6中で行なわれる。
【0039】
固体燃料の燃焼8(図1中で、符号的な火炎だけで図示されている)の場所は、本質的に燃料床P2の範囲内に生じ、この場合、燃料床領域P1〜P4内では勿論、殊に燃料の燃焼進行および温度に帰因する異なる燃焼状態が存在する。図2a)〜f)は、燃料床領域P1〜P4を再度プロットした、燃料床1の直ぐ上方での燃焼室3中の排ガス成分酸素O2(a)、二酸化炭素CO2(b)、水H2O(c)、一酸化炭素(d)、有機炭化水素化合物(e)ならびに水素H2の例示的に測定された濃度プロフィールが記載されている。燃焼の場合には、揮発性燃料含分、殊に炭化水素CnHmの脱ガスが生じる(図2e参照)。この場合、主要燃料帯域の範囲(燃料床領域P2)内での排ガス中の炭化水素濃度は、局所的に供給される酸素(図2a)が完全な排ガス焼却を引き起こすには十分ではない高さである。酸素濃度は、場合によっては零に減少する。この場合には、有利にこの位置で発熱量に富んだ排ガス成分CnHm、COおよび水素(図2d、eおよびf)の最も高い濃度が見出され、実際に一次窒素種(NH3、HCNおよび微少量の窒素含有炭化水素)と共通であることが見出される。水(図2c)は、蒸発または乾燥によって形成されるかまたは炭化水素の部分的な燃焼によって形成され、好ましくは、燃料床からの主要燃焼帯域の前方ないし主要燃焼帯域中までの範囲内で起こり、次の燃料床領域(P4)中では最小に減少する。二酸化炭素(図2b)は、全ての燃焼床領域中での燃焼で焼却強さとほぼ比例して発生する。
【0040】
図3aおよび図3bは、それぞれ塵芥燃焼試験装置(TAMARA)につき測定された、ボイラー(mg/Nm3、O211%に規格化された)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドを、種々の影響ファクターの関数として記載したものである。排ガス焼却帯域(二次空気供給後)の後方の図3bでの排ガス温度は、双方の場合に一定に約1050℃±40℃に調節されていた。
【0041】
異なる燃焼パラメーター、例えば固体燃料の発熱量、一次空気数および火格子動力学を有する数多くの実験に基づいて、図3aには、ボイラー(mg/Nm3、O211%)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドが、燃料床上の排ガス発熱量の関数として記載され、実際に平均発熱量HuMittelwert H(MJ/m3で)、即ち火格子長により測定され(積分の平均値)、ならびに最大の発熱量HuMaximalwert12(MJ/m3で)により測定される。全ての燃焼パラメーターは、燃料床の上方の軸方向のガス発熱量プロフィールに影響を及ぼす。ガス発熱量プロフィールの最大値および幅は、NOx濃度と相関関係を有する。最も低いNO値は、低い平均発熱量および低い最大発熱量の際に観察される。従って、目的は、適当な方法で燃焼床面と二次噴入の前方との間で排ガス中の低いガス発熱量を調節することである。
【0042】
図3bには、ボイラー(mg/Nm3、O211%)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドが、化学量論的量(一次空気数17 寸法なし)の関数ならびに全ての火格子帯域中で同様に調節されたcm/分(家庭の塵芥Hu7〜8MJ/kg)火格子供給速度18bの関数として記載されている。また、この特性フィールドは、最も低い窒素酸化物濃度を有する明らかな範囲を有し、この場合には、図3aとは異なり、図示された特性フィールド中での窒素酸化物濃度の上昇は、直線的にではなく、近似的に指数的に行なわれる。化学量論的量が増加すると、好ましくは、窒素酸化物の形成は、ますます減少する。しかし、1.0を上廻る化学量論的量は、この範囲内で不所望にも上昇する、排ガス中へのダスト放出量およびそれと関連した、ボイラー汚染または集塵機中でのフライアッシュの高められた量のために回避されるべきであった。
【0043】
図4には、燃焼の際に生じる笑気ガス濃度19(mg/Nm3でのN2O形成、O211%)が排ガス焼却帯域の後方での℃での排ガス温度20に依存して記載されている。原則的には、排ガス焼却帯域の後方での約950℃の限界温度未満で、笑気ガス濃度の著しい上昇と共に計算することができる。従って、窒素含有有害物質の放出を減少させるために排ガス発熱量を減少させた場合には、排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度を前記の限界温度を上廻るように調節し、窒素化合物の減少された放出量、ひいては排ガス中または燃料中に残留された、結合された窒素の高い含量が高められた笑気ガス放出に転向しないことが当てはまる。
【0044】
排ガス中でのガス発熱量は、本発明の範囲内で空気分布/火格子動力学の相応する調節および燃焼室3中での個々の燃焼床領域(火格子帯域)P1〜P4からの排ガス流の軸方向での混合物によって二次ガス添加部9の前方で同時に水小液滴を添加しながら減少される。工業的には、これは、図5による実施例の範囲内で行なわれ、構造は、いずれにせよ水−ガス混合物の噴流14を有する二物質流ノズル13による図1に記載の構造形式に相当する。二物質流ノズル13は、燃焼室3の裏面から位置付けられている。噴流角度は、特に小さく、即ち15゜、特に10゜未満である。少ない空気量の流れ(排ガス通過量の最大10%、典型的には例えば400NmVhの燃焼床の上方での排ガス通過量の場合12〜15NmVh)は、高い圧力下で噴入される。そこから生じる高いインパルス水準(自由噴流の質量と速度との積)によって、自由噴流14は燃焼室3を突き抜け、二次ガス噴入9の際の排ガス焼却帯域6の前方の範囲内で燃焼室中の個々の燃焼床帯域または火格子帯域からの発熱量に富んだガスと発熱量の乏しいガスとの強力な混合を生じる。主要燃焼帯域の前方および後方での主要帯域からの酸素富有の発熱量に富んだガスと火格子帯域からの酸素富有の発熱量の乏しいガスとの混合によって、発熱量に富んだガス成分の部分的な焼却は、既に排ガス焼却帯域の前方で行なわれる。効率は、一次空気数および混合性能の等級に依存する。焼却によって火室温度は、上昇する。二物質流ノズル13で付加的に微細に噴霧された水は、燃焼8の範囲内に供給されることができる。それによって、排ガス中の発熱量は、実際に理想的な形式で水小液滴の蒸発エンタルピーだけ減少する。それによって、同時に排ガス焼却帯域の後方の温度は、減少される。
【0045】
供給された水−ガス混合物の最少量の流れと関連した効果的な混合の方法は、一次ガス化学量論的量、火格子動力学および二物質流ノズルの位置を調節することにより、他の選択可能な方法によれば、水およびガス用の前記の個々のノズルまたは自由噴流ノズルによっても個別的に燃焼室の幾何学的形状に対して最適化することができる。
【0046】
次に本発明を試験例につき詳説する。
【0047】
試験例1:
この試験例の試験は、最適な燃焼パラメーターの測定に使用された。
【0048】
この試験の場合、Hu約7〜8MJ/kgの下限の発熱量を有する塵芥を前記の塵芥燃焼試験装置TAMARA中で燃焼させた。ボイラーの後方での排ガス中の酸素含量は、乾式で約10体積%で一定であり、排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度は、同様に1050〜1100℃で一定である。一次空気の減少を二次空気の供給量を相応して制御して上昇させることにより補償し、この場合酸素の過剰量は、後燃焼室の後方で一定に保持された。試験を3つの種々の火格子速度で実施した。結果は、図3bに記載されている。
【0049】
一次空気数17(化学量論的量)および/または火格子供給速度18が上昇すると、排ガス中の窒素酸化物濃度10は、減少し(図3a参照)、実際に燃料床の上方の燃焼排ガスの発熱量は、減少する。その限りにおいて、例えば殊に高い火格子供給速度で1.0を超える範囲での一次空気数の上昇は、窒素酸化物形成のさらなる減少を全く生じないが、しかし、排ガス中への望ましくない高いダスト放出率をまねく。従って、1.0を超える一次空気数は、回避されるべきである。
【0050】
全ての火格子帯域中での高い火格子供給速度は、同時に燃焼火格子上で燃料床中での固体燃料の短い滞留時間を意味し、それによってスラッジ焼却品質も減少される(欠点)。
【0051】
他の試験は、好ましい低い窒素酸化物放出速度が殊に前方の火格子の半分で火格子供給速度の上昇と相関関係を有し、この場合この火格子の半分では、揮発性成分および一次窒素化合物NH3およびHCNの放出が起こる。火格子端部での火格子速度は、NOx形成に全く影響を及ぼさない。後方の火格子の半分での火格子速度は、殊にスラッジ焼却品質と相関関係を有する。燃料は、後方の火格子領域内で火格子供給速度が減少すると増加する、ますます完全な焼却のための時間を有し、それによってスラグの次第に向上する焼却品質を生じる。
【0052】
比較例2
第1の試験例と同様に、試験装置TAMARA中で燃焼を行なった。燃料の供給量を固体の燃焼含分が一定であるように調節し、それによって排ガス焼却帯域からの流出後に排ガス中の一定の酸素含分は、乾式で11〜11.5体積%を生じた。
【0053】
12MJ/kgから6MJ/kgへのHuBrennstoffの固体燃料の発熱量の減少は、燃料を湿潤させることによってこの試験例の範囲で行なわれた。燃焼可能な成分に対する一定の貨物輸送費(一定の炭素貨物輸送費)は、湿分の増加に相応して高められた燃料計量供給量によって補償された。
【0054】
一次空気数を一定に約1.0に調節し、同様に全ての燃焼床領域内での火格子供給速度を10cm/分に調節した。
【0055】
固体の焼却は、塵芥中の湿分が増加した際に火格子の大きな領域に亘って行なわれ、流れの下方へ移動する。同時に、燃料の発熱量HuBrennstoffが減少すると、燃焼室の温度は低下する。燃料床の上方での排ガス発熱量HuGasも同時に減少する(軸方向のプロフィールの積分中間値ならびに最大値)。排ガス焼却帯域からの流出後の排ガス中での測定された笑気ガス濃度19(N2O)および窒素酸化物濃度10は、同じ位置で測定された排ガス温度20に関連して図4中に記載されている。排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の温度は、水の搬入量の上昇と共に減少する。これは、予想されたように、NOx形成の重要な減少を生じる(窒素酸化物濃度10)。しかし、約950℃未満で笑気ガス濃度19の望ましくない重大な上昇をまねく。更に、燃料の湿潤は、原則的に火格子上での燃料の焼却時間の延長を生じる。また、スラグの品質は、減少された温度のために燃料床中で高い燃料湿分の際に低下する。従って、燃料の湿潤は、望ましくない。
【0056】
排ガス焼却帯域の後方での950℃未満の排ガス中での温度低下によるNOx形成の減少は、NxOの著しく上昇される形成と共に獲得される。それによって、950℃未満の排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の温度は、回避することができる。
【0057】
試験例3
ハウスダスト(Hausmuell)は、前記の試験装置TAMARA中で燃焼される。
【0058】
図6には、実験によりこの試験例で測定された、燃焼室の後方での排ガス中の窒素酸化物濃度10(NO)および酸素濃度15(O2)が記載されている。燃料供給量は、200kg/hであり(ハウスダストHu=9〜10MJ/kg)、排ガス流量は、約1000NmVhである。一次空気の化学量論的量は、約0.9であり、火格子速度は、約10cm/分である。基本状態Aにおいて、燃焼装置は、燃焼室中への水−ガス混合物の噴入なしに、即ち図1による装置に相応して作業する。二物質流ノズルにより単に空気が噴入される場合には、状態BおよびCが生じ、実際に4バールの場合に12NmVh(B)または5バールの場合に15NmVh(C)が生じ、このことは、全部のガス流の約1.5%に相当する。既にこの方法によって、約17%の程度の大きさの窒素酸化物の減少された形成が観察され(NO約300mg/Nm3から約250mg/Nm3)、この場合この値は、非本質的にのみ圧力量および空気量(前記のパラメーター範囲内)によって影響を及ぼされる。この結果、全体の方法に亘って一定量の酸素により、窒素酸化物形成の減少を、殊に軸方向での渦動、ひいては前記の燃焼床領域上での燃焼ガスの均一化によって実現させうることを推論することができる。
【0059】
しかし、実際に出発状態Aに対して66%までの窒素酸化物形成速度の本質的な減少(NO約300mg/Nm3から約100mg/Nm3へ)は、水の付加的な噴入によって達成される(図5参照)。状態B(4バールの際に12NmVh)に記載の空気噴入パラメーターから出発して、二物質流ノズルを介して付加的に水20 l/時間(状態D)、30 l/時間(状態E)、40 l/時間(状態F)ならびに50 l/時間(状態G)を噴入する。同時に、排ガス焼却帯域の後方での排ガスの温度は、1000℃超から900℃未満にまで低下する。この場合には、依然として不変の酸素濃度は、水流が増加するにつれて次第に僅かな窒素形成速度を生じ、この場合この還元工程は、絶対水量で常に僅かな結果を生じる。これは、NO減少の際のなお僅かな上昇だけは、比較的高いエネルギー損失によって許容されることを意味する。状態Aを2点間の調節で自由噴流を繰り返し中断すると、この還元方法の再現可能性を証明することができた(図6参照)。即ち、更に、状態Bを状態D〜Gへ窒素酸化物形成速度が減少することは、単に水計量供給による同時の混合の際(この場合、固体燃料ではない)の排ガスの付加的な発熱量の減少に帰因することができる。
【0060】
水の計量供給は、特に窒素酸化物濃度により制御される。排ガス中での高いエネルギー損失を回避させるために(後接続された熱利用の制限)、排ガス中での水計量供給量は、50g/m3未満、有利に30g/m3未満にある。
【0061】
二物質流ノズルでの高い水供給量の場合(水供給部での測定値21)、温度低下および水添加なしの測定値(参照測定値22)と比較してNOx形成の劇的な減少を生じる(図7aでの排ガス温度20に関連する窒素酸化物濃度10参照)。この場合、排ガス焼却帯域の後方(即ち、ボイラーの後方でも)での排ガス中の含水量は、50g/Nm3まで上昇し、これに対して排ガス焼却帯域の後方での温度は、低下する。図7bにも図示されているように、排ガス焼却帯域の後方で950℃を上廻ると、N2O形成(笑気ガス濃度19)は、観察されない。950℃を下廻るN2Oの形成は、排ガス温度20だけに依存し、含水量それ自体には、依存しない。窒素酸化物形成の傾向は、温度が低下すると、下向きの傾向を示す。参考例の調節と比較して、二物質流ノズルは、混合を生じ、特に二物質流ノズルでの水の供給は、排ガス焼却帯域の後方での同じ排ガス温度で原則的に僅かな窒素酸化物濃度を生じる(図7a参照)。このための原因は、排ガス焼却帯域の前方で燃料床の上方でのガス発熱量が減少することにある。
【0062】
連邦イミシオーン保護法第17条(Bundesimmissionsschutzverordnung)の記載によれば、200mg/Nm3の放出限界値(O211%の基準酸素含量の際に計算されたNO2として)が許容され、提案された方法では明らかにこの放出限界値を下廻っていてよい。排ガス焼却の劣化は、確認されず、このことは、CO測定により証明することができた。約1mg/Nm3の範囲の常に一定の値を測定した。970℃の排ガス温度を上廻ると二次空気の供給前におよび950℃を上廻ると二次空気の供給後に、N2Oは、検出不可能であった。
【0063】
記載された方法は、例えば一次空気/二次空気の分布の変化により、窒素酸化物減少の他の方法と組み合わせるべきであった([2]および[3]参照)。燃料床の高い輸送速度(即ち、前記の10cm/分を上廻る)を組み合わされた0.6〜1の範囲内、特に0.7〜0.9の範囲内の高い一次空気量(一次空気化学量論的量)の組合せは、極めて好ましい。単に前記の2つのパラメーターの組合せによって、排ガスの熱を維持するエネルギー的利用の減少なしに、約280mg/Nm3から約150mg/Nm3へのNO濃度の減少(即ち、45%を上廻るNO減少)を実現させる(ハウスダストに関して下方の発熱量Hu=7〜8MJ/kg)。
【0064】
更に、試験は、高い固定床輸送速度(即ち、記載された10cm/分より高い)が前方の火格子の半分の領域内で必要とされることを示した。後方の火格子領域は、相応して緩徐に運転されてよく、したがって火格子灰分中での残留炭素の焼却のための全体的に十分な時間が使用される。
【0065】
試験例4
前記の試験例の範囲内で、試験装置TAMARA中で約0.65の一次空気数および乾式で一定の約10体積%の排ガス(ボイラーの後方)中の酸素含量でハウスダスト燃焼(Hu=7MJ/kg)を行なった。個々の火格子領域内での火格子速度は、前記の試験例とは異なり同一でなく;この火格子速度は、燃焼床領域P1およびP2(前方の火格子の半分)内で22cm/分で一定であり、それぞれ燃焼床領域を有する後方の火格子の半分内でさらに減少する(P3:11cm/分、P:5cm/分)。その結果、前記の燃焼床領域P1〜P4内での固体燃料の相対滞留時間の分布は、12対12対24対52%であった。前記の運転パラメーターによって、前記の一般の関係に基づいて既に、排ガス焼却帯域の後方で測定された約150mg/Nm3の低い窒素酸化物形成値および良好に焼却されたスラグが達成された。
【0066】
図8aおよびbには、時刻23に関連してmg/Nm3での測定された窒素酸化物濃度10ならびにg/Nm3での水濃度25(図8a)ならびにmg/Nm3での笑気ガス濃度19および℃での温度24(図8b)が記載されている。約9時20分に二物質流ノズルを介して水/ガス噴流の導入が開始され、それぞれ窒素酸化物濃度曲線26の突然の沈下ならびに温度経過曲線27の突然の沈下(排ガス焼却帯域からの流出後)および排ガス焼却帯域の前方の温度経過曲線28の突然の沈下が明らかである。これに対して、排ガスにおける排ガス湿分経過曲線30の水準は、僅かな噴入される水量に基づいて僅かにのみ上昇する。制御の場合、排ガス焼却帯域の前方の温度は、約1030℃の値に低下し、排ガス焼却帯域の後方の温度は、約950℃の値に低下する。
【0067】
更に、図8cは、試験の時刻23に亘って図示された、個々の燃焼床領域P1〜P4内で燃焼床の上方で軸線方向の温度分布を示す。等温線は、それぞれ温度と共に記載されている。燃料床の後方の火格子の半分の上方での温度は、噴入の開始および噴入中33に明らかに上昇する。この効果は、スラッジ品質に対してプラスの作用を有する。
【0068】
取り付けられた二物質流ノズルを介して導入される水量は、排ガスにおける窒素酸化物測定によりボイラーの後方で(即ち、排ガス焼却帯域の後方で)制御される。制御回路は、最大の水量が950℃の最小温度(図8b中の温度経過曲線27参照)によって燃焼室中で制限されるようにプログラミングされている。制御の目標値は、40mg/Nm3(図8aにおける窒素酸化物濃度曲線参照)に調節されている。制御の運転の開始後に直ちに窒素酸化物値は、自発的に減少する(段階的な減少29参照)。この状態は、4時間を上廻る時間に亘って維持される。排ガス湿分(経過曲線30)の平均的な増加は、約25g/Nm3と極めて低い。制御段階中の排ガス湿分の変動は、調節された制御パラメーター(PID制御器)および燃料発熱量の短時間の不安定さによって惹起され、エネルギー利用の効率およびNOx最小効率にとって重大ではない。達成された極めて低い窒素酸化物値は、高価なSCR法と比較可能であり、法的な限界値より遙かに下方に存在する。
【0069】
950℃限界の温度経過曲線27が近似的である場合には、2〜3mg/Nm3までの痕跡濃度が発生する。(図8b:笑気ガス濃度経過曲線31参照)しかし、記載された試験で測定された最大笑気ガス濃度は、検出限界の範囲内にあり、無視することができる。
【0070】
二次空気供給部の前方での燃焼室中の燃料ガスの混合によって、ガス温度は、燃料床の上方での水供給にも拘わらず、後方の火格子の半分の領域内でそこから生じる多量のガス噴流のために燃料床の後方の範囲内での燃料床中でも明らかに上昇する。スラグは、燃料床中でそれによって良好に焼結され、ひいては不活性化され、したがって前記の残留物質は、費用がかかり、ひいては高価である後処理なしに、建築用添加剤として有利である。従って、このプラスの副作用は、廃棄物の燃焼の際に好ましい。
【0071】
スラグ中での殊に炭素(TOC)、塩化物、また硫酸塩の濃度は、後方の燃料床帯域の燃焼室およびスラグ床中での温度上昇によって明らかに減少し、このことは、スラグ中でのPCDD/F形成速度の好ましい減少を生じる。
【0072】
文献:
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】4つの燃料床領域P1〜P4を有する従来の火格子燃焼装置を示す断面図。
【図2】図2a〜fは、従来の火格子燃焼装置の燃料床の上方での排ガス中のO2、CO2、H2O、CO、有機炭素化合物(総和S 有機C)の測定された軸方向の濃度プロフィールを示す略図。
【図3a】排ガス発熱量11および12に依存する燃料床中での測定された窒素酸化物濃度10を示す略図。
【図3b】化学量論的量17(一次空気数)および火格子供給速度18に依存する燃料床中での測定された窒素酸化物濃度10を示す略図
【図4】排ガス焼却帯域からの排ガス出口温度20に依存する排ガス中での笑気ガス濃度(N2O)および窒素酸化物濃度(NO)10に対する測定値を示す略図。
【図5】4つの燃料床帯域および二物質流ノズルを備えた火格子燃焼装置を示す断面図。
【図6】試験例の範囲内で測定された、図5に記載の火格子燃焼装置の排ガス中での窒素酸化物濃度を示す略図。
【図7a】排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度に依存した、排ガス中での窒素濃度を示す略図。
【図7b】排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度に依存した、排ガス中での笑気ガス濃度を示す略図。
【図8a】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での水濃度および窒素酸化物形成の経過を示す略図。
【図8b】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での笑気ガス形成および温度の経過を示す略図。
【図8c】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での温度分布の経過を示す略図。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料床、 2 燃焼火格子、 3 燃焼室、 4 入口、 5 出口、 6 排ガス焼却帯域、 7 一次ガス供給量、 8 燃焼、火炎、 9 二次ガス噴入、 10 窒素酸化物濃度、 11 平均発熱量、 12 最大発熱量、 13 二物質流ノズル、 14 噴流、自由噴流、 15 酸素濃度、 16 試験時間、 17 一次空気数、 18 火格子供給速度、 19 笑気ガス濃度、 20 排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度、 21 水供給部での測定値、 22 参照測定値、 23 時刻、 24 温度、 25 水濃度 乾式、 26 窒素酸化物濃度経過曲線、 27 排ガス焼却帯域からの流出後の温度経過、 28 排ガス焼却帯域中での温度経過、 29 段階的な減少、 30 排ガス湿分経過曲線、 31 笑気ガス濃度経過曲線、 32 燃料輸送方向、 33 噴入
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の請求項に記載された、窒素酸化物(NOx)の形成を一次側で減少させ、同時に、酸素含有一次ガスによって貫流される固定床焼却帯域および後接続された、付加的に酸素含有二次ガスが導入される排ガス焼却帯域を含む2段階の燃焼プロセスの排ガス中の一酸化二窒素(N2O)およびアンモニアスリップ(NH3)を回避させる方法に関する。その上、本発明は、火格子灰分中の塩化物濃度の減少によりスラグ品質を改善することに役立つ。
【0002】
殊に火格子燃焼装置中での燃焼プロセスの場合、空気窒素からの熱的窒素酸化物の形成(NOx形成)は、比較的に低い温度水準のために無視できる程度に少ない。窒素含有燃料を前記燃焼装置中で燃焼させる場合には、窒素酸化物は、本質的に燃料中で結合された窒素から形成される。
【0003】
燃焼火格子上での固体燃料、例えば廃棄物、バイオマスまたは石炭の燃焼は、理想的には順次に進行する部分プロセスの乾燥、脱ガスおよび炭素の焼却に区分されることができる。工業的な火格子燃焼においては、前記の部分プロセスは、重なり合っている。脱ガス段階中に炭化水素と共に最初に燃料窒素から形成された窒素化合物、殊にNH3(アンモニア)およびHCN(青酸)は、排ガス中に放出される。火格子の直ぐ上方での排ガス中の炭化水素の濃度は、なかんずく燃焼装置の主要な燃焼帯域の範囲内で、そこに局所的に一次空気を介して供給される酸素量が完全な排ガス焼却を実現させるためには十分ではないような高さである。燃料床から流出する排ガスは、前記帯域中で高い排ガス温度を示し、実際には、酸素不含である。前記条件下でガス化反応により、一酸化炭素(CO)および水素(H2)は形成される。それ故に、前記範囲内では、発熱量に富んだ排ガス成分、例えば炭化水素、一酸化炭素または水素の最も高い濃度が最初に燃料窒素から形成された窒素種、主にアンモニア(NH3)および青酸(HCN)ならびに極めて微少量の窒素含有有機化合物、例えばピリジンおよびアニリンと一緒に見出される。
【0004】
通常、酸素不足に帰因する前記の不完全燃焼の場合には、なお発熱量に富んだ排ガス中への二次空気の添加によって後燃焼が導入される。この場合には、局所的に極めて高い温度ピークを生じ、その際に冒頭に記載されたNH3化合物およびHCN化合物から酸化条件下で排ガスの焼却中に複雑な反応を経て最終的にNOまたはN2が形成される。目的は、前記プロセスの制御を、一次窒素種のNH3およびHCNが完全に分解され、かつ最終製品として有利にN2が窒素酸化物形成の負荷を生じ、同時にN2Oの形成が回避されるように、変更することである。
【0005】
[1]には、一次空気量の機能としての固体の焼却の場合には焼却速度に依存することが開示されている。燃焼特性、殊に発熱量に依存して、焼却速度は、一定の空気量で最大を示す。これに対して、一次空気量をこの最大を超えるようにさらに上昇させることは、燃料床の冷却を生じる。冷却と関連した、減少されたかまたは減速された、燃料からの揮発性含分の放出ならびに供給された一次空気を有する燃料ガスは、減少された局所的な放出、ひいては炭化水素、COおよびH2の減少された濃度を生じる。
【0006】
[2]および[3]には、高い一次空気供給量が同時に低い二次空気供給量(一次空気と二次空気との一定の総和)の際に原則的に燃焼排ガス中での低いNO値を生じるという付加的な検出に関連して前記の方法が開示されている。
【0007】
廃棄物燃焼装置中でのPCDD/F形成を減少させるための水の噴入が[4]中に提案されている。水噴入によって惹起された温度減少のためにNOx形成が減少されることも利点として見なされている。[4]中に記載された全ての排ガス温度は、排ガス焼却帯域中への入口前方の範囲に関連し、800〜950℃であるか、または970℃である。詳説されたNOx値およびNOx減少速度は、残念ながら述べられていない。別のN含有有害物質、殊にN2OおよびNH3についての記載も全くない。
【0008】
しかし、排ガス焼却帯域(二次燃焼帯域)からの流出後に排ガス温度が950℃未満に減少することは、N2O(笑気ガス)が例えば触媒を用いての付加的な処理工程の範囲内で強い温室ガスとして大気中に逃出する場合に、最初に形成されたNH3(アンモニア)および付加的にN2O(笑気ガス)の形成を生じる。
【0009】
しかし、[4]に記載された、水の添加による800〜950℃への温度減少は、圧接続された熱利用の際に、例えばボイラーの加熱時に性能の低下をまねく。
【0010】
同様の効果は、燃料を湿潤させることによって達成され、このことは、燃料の発熱量の減少をまねく。焼却速度の最大は、既に小さい一次空気量の際に超過する。固体の焼却は、長い火格子領域に亘って延在し、この場合ガス発熱量は、排ガス温度を排ガス焼却帯域中への侵入前に低い水準を生じる。この場合も前記の効果が生じる。
【0011】
この事実から出発して、本発明の課題は、殊に窒素酸化物形成の窒素含有有害物質を工業用燃焼装置中、例えば火格子燃焼装置中で著しく高い効率で一次側で減少させるための簡単で確実に制御しうる方法を提案することである。この場合、本方法によって別の有害物質、例えばN2Oが形成されず、NH3スランプが回避されおよび/または燃焼排ガスの熱容量のエネルギー的利用の際の重大な減少が全くなく、ならびにスラッジ品質の場合の減少が全くないことは、特に重要である。
【0012】
この課題は、第1の請求項の特徴を有する方法で解決される。本方法の好ましい実施形式は、従属請求項に記載されている。
【0013】
この課題を解決させるために、窒素酸化物の形成を、2工程の燃焼プロセス、即ち排ガス取出し口で固定床焼却帯域および後接続された排ガス焼却帯域を含む2工程の燃焼プロセスで一次側で減少させるための方法が提案されている。この場合には、固定床焼却帯域中で固体燃料の固有の燃焼が行なわれ、他方、排ガス焼却帯域中で不完全に燃焼された排ガス成分の後燃焼が行なわれる。通常、この種の燃焼プロセスの場合、酸素含有一次ガスは、固定床焼却帯域中に供給され、同様に後燃焼のための酸素含有二次ガスは、排ガス焼却帯域中に供給される。
【0014】
本発明の場合の本質的なことは、排ガス焼却帯域中への侵入前に、実際にそれによって窒素酸化物形成の重要な減少が実現され、他方で、排ガス温度が局所的に同時に、有害物質、例えばN2Oの形成およびNH3の不完全な分解が惹起されるようには幅広く減少されないように、燃料ガスの発熱量を意図的に減少させることである。このためには、排ガスの一定の状態を正確に維持することは、絶対に必要である。一面で、排ガスまたはその一部分は、窒素酸化物形成の制限のために一定の限界発熱量、特に1.5MJ/m3、さらに有利に1.0MJ/m3を超過してはならず、他面、排ガス温度は、排ガス焼却帯域は、1000℃未満、特に980℃未満、さらに有利に950℃を下廻ってはならず、実際にN含有有害物質、殊にN2OおよびNH3の制限のために、不可欠であるだけでなく、一定の範囲内でも不可欠である。その限りにおいて、排ガスの発熱量および温度を適当な方法によって意図的に制御するかまたは調節するだけでなく、この方法によって意図的に均一化することは、著しく重要である。
【0015】
1つの方法は、ガス−水混合物を排ガス焼却帯域の前方で噴入することである。この場合には、固定床焼却(燃料床上)の直後に排ガスの発熱量の意図的な減少を生じると同時に燃料床と排ガス焼却帯域との間でガスの均質化を生じ、即ち固体燃料それ自体の発熱量の減少は生じない。噴入は、有利に一面で僅かな体積流および高い速度を示す自由噴流によって行なわれる。
【0016】
従って、ガス−水混合物の噴入は、好ましくは直接排ガスの発熱量に影響を及ぼし、固体燃料それ自体には影響を及ぼさず、実際に発熱量の減少に関してだけでなく、発熱量の均一化に関しても影響を及ぼす。
【0017】
即ち、燃料床の直ぐ上方の範囲での排ガスの高い発熱量は、窒素酸化物の形成の高さと相関関係を有する。この場合、発熱量に富んだ排ガス成分CnHn(炭化水素)、COおよびH2の軸方向の濃度プロフィールの最大ならびにこの最大の幅広の分布、即ち火格子長に亘る高い積分の平均値は、記載された高いNO形成速度を生じさせる。その限りにおいて、本発明には、排ガスの発熱量を排ガス焼却前に減少させ、ならびに均一化し、それによって分布の最大および幅を劇的に減少させ、ひいてはNO形成を最少化するのに適した工業的方法が記載される。
【0018】
燃焼プロセスが火格子燃焼装置中で行なわれる場合には、燃料床としての火格子上の燃料は、連続的に全ての固定床焼却帯域を通過し、この場合この固定床焼却帯域は、個別的に順次に配置された固定床範囲に区分されている。最初に燃料が通過する固定床範囲は、前方の火格子の半分に設定され、他方、燃料は、燃焼が進行するにつれて後方の火格子の半分の次の固定床範囲内に置かれ、そこから固体の燃焼残留物用の出口に輸送される。
【0019】
この場合、固定床焼却帯域は、燃焼室内に配置されており、この場合それぞれの燃料床領域は、一次ガスの個別的な供給を装備している。酸素含有の二次ガスは、排ガス焼却帯域中、特に全ての燃料床領域用の共通の排ガス取出し口中に供給される。水−ガス混合物は、自由噴流中で直接に燃料床表面の上方の燃料ガス中に燃焼室中で、即ち排ガス焼却帯域の前方に噴入され、この場合この噴流は、全ての燃料床領域を軸方向に突き抜け、燃料ガスは、生成直後に捕捉され、かつ混合される。
【0020】
水−ガス混合物としては、原則的に水または水溶液とガスからなる全ての混合物、例えば水−空気混合物、水−排ガス混合物または水−水蒸気混合物が適している。水溶液は、本発明の範囲内で別の清浄化手段(例えば、清浄化洗浄器)からの溶解して再循環される有害物質を含有することができる。
【0021】
水−ガス混合物は、連続的に高い速度またはインパルス強さで噴入されるかまたはパルス化され、したがって噴流は、燃料床表面の上方のガス空間を全ての火格子帯域に亘って突き抜ける。噴流の発生のためには、15゜未満、特に3〜10゜の噴流角度を有する二物質流ノズルの使用が提供される。
【0022】
しかし、原則的には水含分とガス含分とは、別々のそれぞれの固有の一物質流ノズルにより噴入されてもよく、この場合、燃料ガスの前記均一化に関連して2つの一物質噴流は、噴入に相応する設計によって燃料ガスと燃焼室内で相互に衝突しかつ相互に混合されることが保証されうる。
【0023】
噴流により噴入される、水−ガス混合物のガス含分は、導入される全ての燃焼空気量の10%を超えてはならず、この場合この燃焼空気量は、本質的に一次空気流と二次空気流とから構成されている。よりいっそう高い含分は、例えば排ガス中への高められたダスト放出速度を生じさせる。原則的な制限は、水性含分の導入される質量流にも当てはまる。即ち、質量流が大量に増大すると、燃料ガスがますます著しく冷却され、一定の高さになると支障をきたし、ましてや排ガス焼却の消失をまねく。水の添加による燃料ガスの冷却は、一般に蒸気発生の際に排ガス熱の減少されたエネルギー的利用を生じ、したがってできるだけ僅かになるように維持することができる。
【0024】
排ガス焼却帯域の前方の温度は、常に970℃を上廻り、或いは排ガス焼却帯域の後方では、950℃を上廻り、したがって望ましくない有害物質、例えば温室ガスのN2Oまたは最初に形成されたNH3のスランプは、焼却された排ガス中で全く発生しない。
【0025】
排ガス焼却帯域の後方の温度が950℃を下廻ると、温度が減少するにつれてN2O濃度は、指数的に上昇する。N2Oは、強い温室ガスであり、したがって回避すべきである。また、950℃を上廻ると、最初に形成されたNH3は、排ガス焼却帯域中で実際に完全に分解されることが保証されている。
【0026】
特に、噴流により供給すべき水量は、排ガス中で必要とされるNO濃度によって排ガス焼却帯域の後方で(例えば、法的限界値)、即ち間接的に燃料ガス(排ガス)の平均化された温度により燃焼室中の排ガス焼却帯域の後方で測定され、かつ制御される。この場合、950℃の排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の最小温度は、上向きの水の質量流を制限する。
【0027】
前記の最小排ガス温度の1つを同時に保証する場合に排ガスの発熱量を減少させるための他の選択可能な方法または付加的な方法は、一次燃焼帯域中での燃焼の化学量論的量が0.6〜1.2、特に1.0未満、さらに有利に0.7〜0.9に調節されるように、一次ガス供給量の調節を含む。最小燃焼空気量および一次空気量は、排ガス組成(例えば、CO2、O2、H2O)および排ガス量から近似的に計算されることができる。
【0028】
このために他の選択可能な方法によれば、前記目的のためのもう1つの方法は、燃料床中での意図的に調節可能および/または制御可能な輸送速度の調節を含み、この場合、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも本質的に特に少なくとも50%高い輸送速度が存在し、その際、火格子上での固体(燃料)の滞留時間は、火格子灰分の焼却が99%を上廻るまで行なわれるように算定されている。この方法の基本思想は、固定床上で燃焼物が燃焼される際に生じる排ガス放出を、それぞれの燃料床領域の上方での排ガスが低い発熱量を有するように制御し、燃料床表面に亘って前記排ガス放出が分布することである。その限りにおいて、前記方法を用いると、発熱量に富んだガスの放出は、大きな火格子領域に亘って分布され、それによって軸線方向での排ガス発熱量プロフィールの最大値は、燃料床の上方で明らかに減少される。発熱量に富んだガスの放出の前記の空間的な拡大は、既に燃料床中で供給された一次空気で改善されたガス焼却を生じさせ、その理由は、局所的に大量の酸素が酸化に使用されるからであり(よりいっそう大きな火格子領域−空気m3/火格子面積m2=定数)、それによって軸線方向の発熱量プロフィールの積分の平均値の減少も生じる。
【0029】
全ての場合に、排ガス中での低い発熱量(貫流断面での排ガス発熱量プロフィールの平均値および最大値に対して)は、燃料床面積と原則的に低いNOxでの二次空気供給の前方での放出値との間で相関関係にある。従って、一般に低いガス発熱量は、二次空気供給の前方で達成しようと努力することができ、この場合には、提案された前記方法でそれぞれ単独でかまたは互いに組み合わせて燃料床ならびに良好なスラグ焼却および排ガス焼却からの低いダスト放出が保証される。それによって、殊に低いNOx放出値は、N2O形成の重大な上昇なしに達成可能であり、この場合には、最初に形成されたNH3のスランプが欠けることにより、排ガス焼却帯域中で十分に高い温度が二次空気供給の際に誘発される。
【0030】
本発明およびその好ましい実施形式は、特に次の枠組み条件を満たす:
一次空気数(化学量論的量)は、僅かなダスト放出を達成させるために、1.0未満、特に0.7〜0.9に調節される。
【0031】
二次ガスは、排ガス焼却帯域の後方で酸素過剰量が燃料の発熱量/燃料の湿分に依存して少なくとも6%、特に約10%のままであるように調節される。
【0032】
火格子上での燃料の全滞留時間は、良好なスラグ焼却が保証されるように算定されており、この場合には、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも高い輸送速度に調節される。
【0033】
僅かな水/空気量による燃焼室中での燃料ガスの軸方向での混合は、特に二物質流ノズルを用いて微細に分散された水で行なわれる。液体/ガス混合物からの自由噴流は、高いインパルス水準で燃焼室を軸方向(即ち、多くの場合に水平方向および全ての燃料床領域に亘って延在する)に突き抜ける。それによって、燃焼室中での排ガスの混合および発熱量の減少が生じる。
【0034】
水−ガス噴流の水量は、排ガス中の算出された、特に測定されたNOx濃度に依存して排ガス焼却帯域の後方またはボイラーの後方で制御される。
【0035】
最大の水量は、950℃の算出された、特に測定された、排ガス流の最小温度によって排ガス焼却帯域の後方で制限される。この場合、排ガス焼却帯域の前方での温度は、970℃を超えてはならない。
【0036】
ボイラーに後接続された熱利用に必要とされる熱量の損失は、僅かな水供給量の際に特に排ガス1Nm3当たり50g未満、更に有利に排ガスNm3当たり30g未満の限度で維持される。
【0037】
次に、本発明を実施例および図に基づきよりいっそう詳細に説明する。
【0038】
図1に示されているように、従来の火格子燃焼装置は、本質的に、燃料用の入口4とスラグまたは別の固体の燃焼生成物用の出口5(燃料輸送方向32参照)と燃焼室に後接続された、排ガス取出し口中の排ガス焼却帯域6とを備えた燃焼室3中での燃焼火格子2上の燃料床1からなる。燃料床1は、本質的に固体燃料からなる。燃焼室3は、全ての燃料床領域P1〜P4を被い、これらの燃料床領域には、燃焼床中の燃料が連続的に通過し、それぞれ燃焼床領域1つにつき個々の酸素含有一次ガス供給量7が火格子を貫流する。この場合、P1およびP2は、前方の火格子の半分を形成し、P3およびP4は、後方の火格子の半分を形成する。前記の酸素含有の二次ガス噴入9は、排ガス取出し口中の後接続された排ガス焼却帯域6中で行なわれる。
【0039】
固体燃料の燃焼8(図1中で、符号的な火炎だけで図示されている)の場所は、本質的に燃料床P2の範囲内に生じ、この場合、燃料床領域P1〜P4内では勿論、殊に燃料の燃焼進行および温度に帰因する異なる燃焼状態が存在する。図2a)〜f)は、燃料床領域P1〜P4を再度プロットした、燃料床1の直ぐ上方での燃焼室3中の排ガス成分酸素O2(a)、二酸化炭素CO2(b)、水H2O(c)、一酸化炭素(d)、有機炭化水素化合物(e)ならびに水素H2の例示的に測定された濃度プロフィールが記載されている。燃焼の場合には、揮発性燃料含分、殊に炭化水素CnHmの脱ガスが生じる(図2e参照)。この場合、主要燃料帯域の範囲(燃料床領域P2)内での排ガス中の炭化水素濃度は、局所的に供給される酸素(図2a)が完全な排ガス焼却を引き起こすには十分ではない高さである。酸素濃度は、場合によっては零に減少する。この場合には、有利にこの位置で発熱量に富んだ排ガス成分CnHm、COおよび水素(図2d、eおよびf)の最も高い濃度が見出され、実際に一次窒素種(NH3、HCNおよび微少量の窒素含有炭化水素)と共通であることが見出される。水(図2c)は、蒸発または乾燥によって形成されるかまたは炭化水素の部分的な燃焼によって形成され、好ましくは、燃料床からの主要燃焼帯域の前方ないし主要燃焼帯域中までの範囲内で起こり、次の燃料床領域(P4)中では最小に減少する。二酸化炭素(図2b)は、全ての燃焼床領域中での燃焼で焼却強さとほぼ比例して発生する。
【0040】
図3aおよび図3bは、それぞれ塵芥燃焼試験装置(TAMARA)につき測定された、ボイラー(mg/Nm3、O211%に規格化された)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドを、種々の影響ファクターの関数として記載したものである。排ガス焼却帯域(二次空気供給後)の後方の図3bでの排ガス温度は、双方の場合に一定に約1050℃±40℃に調節されていた。
【0041】
異なる燃焼パラメーター、例えば固体燃料の発熱量、一次空気数および火格子動力学を有する数多くの実験に基づいて、図3aには、ボイラー(mg/Nm3、O211%)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドが、燃料床上の排ガス発熱量の関数として記載され、実際に平均発熱量HuMittelwert H(MJ/m3で)、即ち火格子長により測定され(積分の平均値)、ならびに最大の発熱量HuMaximalwert12(MJ/m3で)により測定される。全ての燃焼パラメーターは、燃料床の上方の軸方向のガス発熱量プロフィールに影響を及ぼす。ガス発熱量プロフィールの最大値および幅は、NOx濃度と相関関係を有する。最も低いNO値は、低い平均発熱量および低い最大発熱量の際に観察される。従って、目的は、適当な方法で燃焼床面と二次噴入の前方との間で排ガス中の低いガス発熱量を調節することである。
【0042】
図3bには、ボイラー(mg/Nm3、O211%)の後方の排ガス中の窒素酸化物濃度10の特性フィールドが、化学量論的量(一次空気数17 寸法なし)の関数ならびに全ての火格子帯域中で同様に調節されたcm/分(家庭の塵芥Hu7〜8MJ/kg)火格子供給速度18bの関数として記載されている。また、この特性フィールドは、最も低い窒素酸化物濃度を有する明らかな範囲を有し、この場合には、図3aとは異なり、図示された特性フィールド中での窒素酸化物濃度の上昇は、直線的にではなく、近似的に指数的に行なわれる。化学量論的量が増加すると、好ましくは、窒素酸化物の形成は、ますます減少する。しかし、1.0を上廻る化学量論的量は、この範囲内で不所望にも上昇する、排ガス中へのダスト放出量およびそれと関連した、ボイラー汚染または集塵機中でのフライアッシュの高められた量のために回避されるべきであった。
【0043】
図4には、燃焼の際に生じる笑気ガス濃度19(mg/Nm3でのN2O形成、O211%)が排ガス焼却帯域の後方での℃での排ガス温度20に依存して記載されている。原則的には、排ガス焼却帯域の後方での約950℃の限界温度未満で、笑気ガス濃度の著しい上昇と共に計算することができる。従って、窒素含有有害物質の放出を減少させるために排ガス発熱量を減少させた場合には、排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度を前記の限界温度を上廻るように調節し、窒素化合物の減少された放出量、ひいては排ガス中または燃料中に残留された、結合された窒素の高い含量が高められた笑気ガス放出に転向しないことが当てはまる。
【0044】
排ガス中でのガス発熱量は、本発明の範囲内で空気分布/火格子動力学の相応する調節および燃焼室3中での個々の燃焼床領域(火格子帯域)P1〜P4からの排ガス流の軸方向での混合物によって二次ガス添加部9の前方で同時に水小液滴を添加しながら減少される。工業的には、これは、図5による実施例の範囲内で行なわれ、構造は、いずれにせよ水−ガス混合物の噴流14を有する二物質流ノズル13による図1に記載の構造形式に相当する。二物質流ノズル13は、燃焼室3の裏面から位置付けられている。噴流角度は、特に小さく、即ち15゜、特に10゜未満である。少ない空気量の流れ(排ガス通過量の最大10%、典型的には例えば400NmVhの燃焼床の上方での排ガス通過量の場合12〜15NmVh)は、高い圧力下で噴入される。そこから生じる高いインパルス水準(自由噴流の質量と速度との積)によって、自由噴流14は燃焼室3を突き抜け、二次ガス噴入9の際の排ガス焼却帯域6の前方の範囲内で燃焼室中の個々の燃焼床帯域または火格子帯域からの発熱量に富んだガスと発熱量の乏しいガスとの強力な混合を生じる。主要燃焼帯域の前方および後方での主要帯域からの酸素富有の発熱量に富んだガスと火格子帯域からの酸素富有の発熱量の乏しいガスとの混合によって、発熱量に富んだガス成分の部分的な焼却は、既に排ガス焼却帯域の前方で行なわれる。効率は、一次空気数および混合性能の等級に依存する。焼却によって火室温度は、上昇する。二物質流ノズル13で付加的に微細に噴霧された水は、燃焼8の範囲内に供給されることができる。それによって、排ガス中の発熱量は、実際に理想的な形式で水小液滴の蒸発エンタルピーだけ減少する。それによって、同時に排ガス焼却帯域の後方の温度は、減少される。
【0045】
供給された水−ガス混合物の最少量の流れと関連した効果的な混合の方法は、一次ガス化学量論的量、火格子動力学および二物質流ノズルの位置を調節することにより、他の選択可能な方法によれば、水およびガス用の前記の個々のノズルまたは自由噴流ノズルによっても個別的に燃焼室の幾何学的形状に対して最適化することができる。
【0046】
次に本発明を試験例につき詳説する。
【0047】
試験例1:
この試験例の試験は、最適な燃焼パラメーターの測定に使用された。
【0048】
この試験の場合、Hu約7〜8MJ/kgの下限の発熱量を有する塵芥を前記の塵芥燃焼試験装置TAMARA中で燃焼させた。ボイラーの後方での排ガス中の酸素含量は、乾式で約10体積%で一定であり、排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度は、同様に1050〜1100℃で一定である。一次空気の減少を二次空気の供給量を相応して制御して上昇させることにより補償し、この場合酸素の過剰量は、後燃焼室の後方で一定に保持された。試験を3つの種々の火格子速度で実施した。結果は、図3bに記載されている。
【0049】
一次空気数17(化学量論的量)および/または火格子供給速度18が上昇すると、排ガス中の窒素酸化物濃度10は、減少し(図3a参照)、実際に燃料床の上方の燃焼排ガスの発熱量は、減少する。その限りにおいて、例えば殊に高い火格子供給速度で1.0を超える範囲での一次空気数の上昇は、窒素酸化物形成のさらなる減少を全く生じないが、しかし、排ガス中への望ましくない高いダスト放出率をまねく。従って、1.0を超える一次空気数は、回避されるべきである。
【0050】
全ての火格子帯域中での高い火格子供給速度は、同時に燃焼火格子上で燃料床中での固体燃料の短い滞留時間を意味し、それによってスラッジ焼却品質も減少される(欠点)。
【0051】
他の試験は、好ましい低い窒素酸化物放出速度が殊に前方の火格子の半分で火格子供給速度の上昇と相関関係を有し、この場合この火格子の半分では、揮発性成分および一次窒素化合物NH3およびHCNの放出が起こる。火格子端部での火格子速度は、NOx形成に全く影響を及ぼさない。後方の火格子の半分での火格子速度は、殊にスラッジ焼却品質と相関関係を有する。燃料は、後方の火格子領域内で火格子供給速度が減少すると増加する、ますます完全な焼却のための時間を有し、それによってスラグの次第に向上する焼却品質を生じる。
【0052】
比較例2
第1の試験例と同様に、試験装置TAMARA中で燃焼を行なった。燃料の供給量を固体の燃焼含分が一定であるように調節し、それによって排ガス焼却帯域からの流出後に排ガス中の一定の酸素含分は、乾式で11〜11.5体積%を生じた。
【0053】
12MJ/kgから6MJ/kgへのHuBrennstoffの固体燃料の発熱量の減少は、燃料を湿潤させることによってこの試験例の範囲で行なわれた。燃焼可能な成分に対する一定の貨物輸送費(一定の炭素貨物輸送費)は、湿分の増加に相応して高められた燃料計量供給量によって補償された。
【0054】
一次空気数を一定に約1.0に調節し、同様に全ての燃焼床領域内での火格子供給速度を10cm/分に調節した。
【0055】
固体の焼却は、塵芥中の湿分が増加した際に火格子の大きな領域に亘って行なわれ、流れの下方へ移動する。同時に、燃料の発熱量HuBrennstoffが減少すると、燃焼室の温度は低下する。燃料床の上方での排ガス発熱量HuGasも同時に減少する(軸方向のプロフィールの積分中間値ならびに最大値)。排ガス焼却帯域からの流出後の排ガス中での測定された笑気ガス濃度19(N2O)および窒素酸化物濃度10は、同じ位置で測定された排ガス温度20に関連して図4中に記載されている。排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の温度は、水の搬入量の上昇と共に減少する。これは、予想されたように、NOx形成の重要な減少を生じる(窒素酸化物濃度10)。しかし、約950℃未満で笑気ガス濃度19の望ましくない重大な上昇をまねく。更に、燃料の湿潤は、原則的に火格子上での燃料の焼却時間の延長を生じる。また、スラグの品質は、減少された温度のために燃料床中で高い燃料湿分の際に低下する。従って、燃料の湿潤は、望ましくない。
【0056】
排ガス焼却帯域の後方での950℃未満の排ガス中での温度低下によるNOx形成の減少は、NxOの著しく上昇される形成と共に獲得される。それによって、950℃未満の排ガス焼却帯域の後方での排ガス中の温度は、回避することができる。
【0057】
試験例3
ハウスダスト(Hausmuell)は、前記の試験装置TAMARA中で燃焼される。
【0058】
図6には、実験によりこの試験例で測定された、燃焼室の後方での排ガス中の窒素酸化物濃度10(NO)および酸素濃度15(O2)が記載されている。燃料供給量は、200kg/hであり(ハウスダストHu=9〜10MJ/kg)、排ガス流量は、約1000NmVhである。一次空気の化学量論的量は、約0.9であり、火格子速度は、約10cm/分である。基本状態Aにおいて、燃焼装置は、燃焼室中への水−ガス混合物の噴入なしに、即ち図1による装置に相応して作業する。二物質流ノズルにより単に空気が噴入される場合には、状態BおよびCが生じ、実際に4バールの場合に12NmVh(B)または5バールの場合に15NmVh(C)が生じ、このことは、全部のガス流の約1.5%に相当する。既にこの方法によって、約17%の程度の大きさの窒素酸化物の減少された形成が観察され(NO約300mg/Nm3から約250mg/Nm3)、この場合この値は、非本質的にのみ圧力量および空気量(前記のパラメーター範囲内)によって影響を及ぼされる。この結果、全体の方法に亘って一定量の酸素により、窒素酸化物形成の減少を、殊に軸方向での渦動、ひいては前記の燃焼床領域上での燃焼ガスの均一化によって実現させうることを推論することができる。
【0059】
しかし、実際に出発状態Aに対して66%までの窒素酸化物形成速度の本質的な減少(NO約300mg/Nm3から約100mg/Nm3へ)は、水の付加的な噴入によって達成される(図5参照)。状態B(4バールの際に12NmVh)に記載の空気噴入パラメーターから出発して、二物質流ノズルを介して付加的に水20 l/時間(状態D)、30 l/時間(状態E)、40 l/時間(状態F)ならびに50 l/時間(状態G)を噴入する。同時に、排ガス焼却帯域の後方での排ガスの温度は、1000℃超から900℃未満にまで低下する。この場合には、依然として不変の酸素濃度は、水流が増加するにつれて次第に僅かな窒素形成速度を生じ、この場合この還元工程は、絶対水量で常に僅かな結果を生じる。これは、NO減少の際のなお僅かな上昇だけは、比較的高いエネルギー損失によって許容されることを意味する。状態Aを2点間の調節で自由噴流を繰り返し中断すると、この還元方法の再現可能性を証明することができた(図6参照)。即ち、更に、状態Bを状態D〜Gへ窒素酸化物形成速度が減少することは、単に水計量供給による同時の混合の際(この場合、固体燃料ではない)の排ガスの付加的な発熱量の減少に帰因することができる。
【0060】
水の計量供給は、特に窒素酸化物濃度により制御される。排ガス中での高いエネルギー損失を回避させるために(後接続された熱利用の制限)、排ガス中での水計量供給量は、50g/m3未満、有利に30g/m3未満にある。
【0061】
二物質流ノズルでの高い水供給量の場合(水供給部での測定値21)、温度低下および水添加なしの測定値(参照測定値22)と比較してNOx形成の劇的な減少を生じる(図7aでの排ガス温度20に関連する窒素酸化物濃度10参照)。この場合、排ガス焼却帯域の後方(即ち、ボイラーの後方でも)での排ガス中の含水量は、50g/Nm3まで上昇し、これに対して排ガス焼却帯域の後方での温度は、低下する。図7bにも図示されているように、排ガス焼却帯域の後方で950℃を上廻ると、N2O形成(笑気ガス濃度19)は、観察されない。950℃を下廻るN2Oの形成は、排ガス温度20だけに依存し、含水量それ自体には、依存しない。窒素酸化物形成の傾向は、温度が低下すると、下向きの傾向を示す。参考例の調節と比較して、二物質流ノズルは、混合を生じ、特に二物質流ノズルでの水の供給は、排ガス焼却帯域の後方での同じ排ガス温度で原則的に僅かな窒素酸化物濃度を生じる(図7a参照)。このための原因は、排ガス焼却帯域の前方で燃料床の上方でのガス発熱量が減少することにある。
【0062】
連邦イミシオーン保護法第17条(Bundesimmissionsschutzverordnung)の記載によれば、200mg/Nm3の放出限界値(O211%の基準酸素含量の際に計算されたNO2として)が許容され、提案された方法では明らかにこの放出限界値を下廻っていてよい。排ガス焼却の劣化は、確認されず、このことは、CO測定により証明することができた。約1mg/Nm3の範囲の常に一定の値を測定した。970℃の排ガス温度を上廻ると二次空気の供給前におよび950℃を上廻ると二次空気の供給後に、N2Oは、検出不可能であった。
【0063】
記載された方法は、例えば一次空気/二次空気の分布の変化により、窒素酸化物減少の他の方法と組み合わせるべきであった([2]および[3]参照)。燃料床の高い輸送速度(即ち、前記の10cm/分を上廻る)を組み合わされた0.6〜1の範囲内、特に0.7〜0.9の範囲内の高い一次空気量(一次空気化学量論的量)の組合せは、極めて好ましい。単に前記の2つのパラメーターの組合せによって、排ガスの熱を維持するエネルギー的利用の減少なしに、約280mg/Nm3から約150mg/Nm3へのNO濃度の減少(即ち、45%を上廻るNO減少)を実現させる(ハウスダストに関して下方の発熱量Hu=7〜8MJ/kg)。
【0064】
更に、試験は、高い固定床輸送速度(即ち、記載された10cm/分より高い)が前方の火格子の半分の領域内で必要とされることを示した。後方の火格子領域は、相応して緩徐に運転されてよく、したがって火格子灰分中での残留炭素の焼却のための全体的に十分な時間が使用される。
【0065】
試験例4
前記の試験例の範囲内で、試験装置TAMARA中で約0.65の一次空気数および乾式で一定の約10体積%の排ガス(ボイラーの後方)中の酸素含量でハウスダスト燃焼(Hu=7MJ/kg)を行なった。個々の火格子領域内での火格子速度は、前記の試験例とは異なり同一でなく;この火格子速度は、燃焼床領域P1およびP2(前方の火格子の半分)内で22cm/分で一定であり、それぞれ燃焼床領域を有する後方の火格子の半分内でさらに減少する(P3:11cm/分、P:5cm/分)。その結果、前記の燃焼床領域P1〜P4内での固体燃料の相対滞留時間の分布は、12対12対24対52%であった。前記の運転パラメーターによって、前記の一般の関係に基づいて既に、排ガス焼却帯域の後方で測定された約150mg/Nm3の低い窒素酸化物形成値および良好に焼却されたスラグが達成された。
【0066】
図8aおよびbには、時刻23に関連してmg/Nm3での測定された窒素酸化物濃度10ならびにg/Nm3での水濃度25(図8a)ならびにmg/Nm3での笑気ガス濃度19および℃での温度24(図8b)が記載されている。約9時20分に二物質流ノズルを介して水/ガス噴流の導入が開始され、それぞれ窒素酸化物濃度曲線26の突然の沈下ならびに温度経過曲線27の突然の沈下(排ガス焼却帯域からの流出後)および排ガス焼却帯域の前方の温度経過曲線28の突然の沈下が明らかである。これに対して、排ガスにおける排ガス湿分経過曲線30の水準は、僅かな噴入される水量に基づいて僅かにのみ上昇する。制御の場合、排ガス焼却帯域の前方の温度は、約1030℃の値に低下し、排ガス焼却帯域の後方の温度は、約950℃の値に低下する。
【0067】
更に、図8cは、試験の時刻23に亘って図示された、個々の燃焼床領域P1〜P4内で燃焼床の上方で軸線方向の温度分布を示す。等温線は、それぞれ温度と共に記載されている。燃料床の後方の火格子の半分の上方での温度は、噴入の開始および噴入中33に明らかに上昇する。この効果は、スラッジ品質に対してプラスの作用を有する。
【0068】
取り付けられた二物質流ノズルを介して導入される水量は、排ガスにおける窒素酸化物測定によりボイラーの後方で(即ち、排ガス焼却帯域の後方で)制御される。制御回路は、最大の水量が950℃の最小温度(図8b中の温度経過曲線27参照)によって燃焼室中で制限されるようにプログラミングされている。制御の目標値は、40mg/Nm3(図8aにおける窒素酸化物濃度曲線参照)に調節されている。制御の運転の開始後に直ちに窒素酸化物値は、自発的に減少する(段階的な減少29参照)。この状態は、4時間を上廻る時間に亘って維持される。排ガス湿分(経過曲線30)の平均的な増加は、約25g/Nm3と極めて低い。制御段階中の排ガス湿分の変動は、調節された制御パラメーター(PID制御器)および燃料発熱量の短時間の不安定さによって惹起され、エネルギー利用の効率およびNOx最小効率にとって重大ではない。達成された極めて低い窒素酸化物値は、高価なSCR法と比較可能であり、法的な限界値より遙かに下方に存在する。
【0069】
950℃限界の温度経過曲線27が近似的である場合には、2〜3mg/Nm3までの痕跡濃度が発生する。(図8b:笑気ガス濃度経過曲線31参照)しかし、記載された試験で測定された最大笑気ガス濃度は、検出限界の範囲内にあり、無視することができる。
【0070】
二次空気供給部の前方での燃焼室中の燃料ガスの混合によって、ガス温度は、燃料床の上方での水供給にも拘わらず、後方の火格子の半分の領域内でそこから生じる多量のガス噴流のために燃料床の後方の範囲内での燃料床中でも明らかに上昇する。スラグは、燃料床中でそれによって良好に焼結され、ひいては不活性化され、したがって前記の残留物質は、費用がかかり、ひいては高価である後処理なしに、建築用添加剤として有利である。従って、このプラスの副作用は、廃棄物の燃焼の際に好ましい。
【0071】
スラグ中での殊に炭素(TOC)、塩化物、また硫酸塩の濃度は、後方の燃料床帯域の燃焼室およびスラグ床中での温度上昇によって明らかに減少し、このことは、スラグ中でのPCDD/F形成速度の好ましい減少を生じる。
【0072】
文献:
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】4つの燃料床領域P1〜P4を有する従来の火格子燃焼装置を示す断面図。
【図2】図2a〜fは、従来の火格子燃焼装置の燃料床の上方での排ガス中のO2、CO2、H2O、CO、有機炭素化合物(総和S 有機C)の測定された軸方向の濃度プロフィールを示す略図。
【図3a】排ガス発熱量11および12に依存する燃料床中での測定された窒素酸化物濃度10を示す略図。
【図3b】化学量論的量17(一次空気数)および火格子供給速度18に依存する燃料床中での測定された窒素酸化物濃度10を示す略図
【図4】排ガス焼却帯域からの排ガス出口温度20に依存する排ガス中での笑気ガス濃度(N2O)および窒素酸化物濃度(NO)10に対する測定値を示す略図。
【図5】4つの燃料床帯域および二物質流ノズルを備えた火格子燃焼装置を示す断面図。
【図6】試験例の範囲内で測定された、図5に記載の火格子燃焼装置の排ガス中での窒素酸化物濃度を示す略図。
【図7a】排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度に依存した、排ガス中での窒素濃度を示す略図。
【図7b】排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度に依存した、排ガス中での笑気ガス濃度を示す略図。
【図8a】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での水濃度および窒素酸化物形成の経過を示す略図。
【図8b】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での笑気ガス形成および温度の経過を示す略図。
【図8c】試験例4の範囲内で測定された、時間に依存した、燃料床の上方での温度分布の経過を示す略図。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料床、 2 燃焼火格子、 3 燃焼室、 4 入口、 5 出口、 6 排ガス焼却帯域、 7 一次ガス供給量、 8 燃焼、火炎、 9 二次ガス噴入、 10 窒素酸化物濃度、 11 平均発熱量、 12 最大発熱量、 13 二物質流ノズル、 14 噴流、自由噴流、 15 酸素濃度、 16 試験時間、 17 一次空気数、 18 火格子供給速度、 19 笑気ガス濃度、 20 排ガス焼却帯域の後方での排ガス温度、 21 水供給部での測定値、 22 参照測定値、 23 時刻、 24 温度、 25 水濃度 乾式、 26 窒素酸化物濃度経過曲線、 27 排ガス焼却帯域からの流出後の温度経過、 28 排ガス焼却帯域中での温度経過、 29 段階的な減少、 30 排ガス湿分経過曲線、 31 笑気ガス濃度経過曲線、 32 燃料輸送方向、 33 噴入
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物(NOx)の形成を一次側で減少させ、同時に、酸素含有一次ガスによって貫流される、固定床焼却帯域を有する燃料床および後接続された、付加的に酸素含有二次ガスが導入される排ガス焼却帯域を含む2段階の燃焼プロセスの排ガス中の一酸化二窒素(N2O)およびアンモニアスリップ(NH3)を減少/回避させる方法であって、燃料床表面と排ガス焼却帯域の前方との間の排ガス発熱量を減少させ、この場合排ガス中の平均発熱量は、1MJ/m3未満に調節され、排ガス中の排ガス温度は、二次ガスの供給前に少なくとも970℃であり、排ガス焼却帯域からの流出後に少なくとも950℃であり、ならびに後方の火格子の半分の燃料床の上方での排ガス中で少なくとも1000℃であることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
多数の順次に配置された燃焼床領域を有する燃料床を備えた燃焼室を含む火格子燃焼装置中での燃焼プロセスをそれぞれ一次ガスの個々の供給量で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量を1つ以上の水-ガス噴流と個々の燃焼床領域から流出する排ガス部分流との混合によって燃焼床の上方で二次ガスの供給前に減少させ、この場合燃焼室中の水−ガス噴流は、全ての燃焼床領域を軸線方向に突き抜ける、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
水−ガス噴流は、水-空気混合物、水-排ガス混合物または水-水蒸気混合物からなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
噴流の発生を15゜未満の噴流角度を有する二物質流ノズルにより行なう、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
噴流により供給されるガス量は、全体の燃焼空気量の10%を上廻らない、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水/ガス噴流により供給される水量は、排ガス中の必要とされるNO濃度によって排ガス焼却帯域の後方で測定され、排ガス中での950℃の最小温度によって排ガス焼却帯域の後方で制限される、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
一次ガス供給量の調節による排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量の減少は、固定床焼却帯域中で化学量論的量が1未満に調節されるように行なわれる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
化学量論的量を特に0.7〜0.9に調節する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量の減少は、燃料床中での輸送速度の調節により行なわれ、この場合には、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも少なくとも30%、特に50%高い輸送速度が存在し、この場合火格子上での固体の全部の滞留時間は、1%未満の残留炭素濃度を有する火格子灰分の十分に高い焼却が保証されるように定められている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
窒素酸化物(NOx)の形成を一次側で減少させ、同時に、酸素含有一次ガスによって貫流される、固定床焼却帯域を有する燃料床および後接続された、付加的に酸素含有二次ガスが導入される排ガス焼却帯域を含む2段階の燃焼プロセスの排ガス中の一酸化二窒素(N2O)およびアンモニアスリップ(NH3)を減少/回避させる方法であって、燃料床表面と排ガス焼却帯域の前方との間の排ガス発熱量を減少させ、この場合排ガス中の平均発熱量は、1MJ/m3未満に調節され、排ガス中の排ガス温度は、二次ガスの供給前に少なくとも970℃であり、排ガス焼却帯域からの流出後に少なくとも950℃であり、ならびに後方の火格子の半分の燃料床の上方での排ガス中で少なくとも1000℃であることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
多数の順次に配置された燃焼床領域を有する燃料床を備えた燃焼室を含む火格子燃焼装置中での燃焼プロセスをそれぞれ一次ガスの個々の供給量で行なう、請求項1記載の方法。
【請求項3】
排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量を1つ以上の水-ガス噴流と個々の燃焼床領域から流出する排ガス部分流との混合によって燃焼床の上方で二次ガスの供給前に減少させ、この場合燃焼室中の水−ガス噴流は、全ての燃焼床領域を軸線方向に突き抜ける、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
水−ガス噴流は、水-空気混合物、水-排ガス混合物または水-水蒸気混合物からなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
噴流の発生を15゜未満の噴流角度を有する二物質流ノズルにより行なう、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
噴流により供給されるガス量は、全体の燃焼空気量の10%を上廻らない、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水/ガス噴流により供給される水量は、排ガス中の必要とされるNO濃度によって排ガス焼却帯域の後方で測定され、排ガス中での950℃の最小温度によって排ガス焼却帯域の後方で制限される、請求項3から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
一次ガス供給量の調節による排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量の減少は、固定床焼却帯域中で化学量論的量が1未満に調節されるように行なわれる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
化学量論的量を特に0.7〜0.9に調節する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
排ガス焼却帯域の前方での排ガス発熱量の減少は、燃料床中での輸送速度の調節により行なわれ、この場合には、前方の火格子の半分で、後方の火格子の半分よりも少なくとも30%、特に50%高い輸送速度が存在し、この場合火格子上での固体の全部の滞留時間は、1%未満の残留炭素濃度を有する火格子灰分の十分に高い焼却が保証されるように定められている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【公表番号】特表2009−526193(P2009−526193A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553645(P2008−553645)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000441
【国際公開番号】WO2007/090510
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000441
【国際公開番号】WO2007/090510
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【Fターム(参考)】
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