説明

2次電池型燃料電池システム

【課題】発電効率及び充電効率の低下を抑えることができる2次電池型燃料電池システムを提供する。
【解決手段】水との酸化反応により水素を発生し、水素との還元反応により再生可能な水素発生装置1と、水素発生装置1から供給される水素を燃料にして発電を行う発電機能及び水素発生装置1に供給する水素を生成するための水の電気分解を行う電気分解機能を有する燃料電池装置2と、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路5A及び5Bと、ガス流路5A及び5Bに温度勾配をつける第1〜第4ヒーターH1〜H4とを備える2次電池型燃料電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電動作だけでなく充電動作も行える2次電池型燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯型情報端末、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型オーディオ、携帯型ビジュアル機器等の携帯用電子機器の多機能化、高性能化が進展するに伴い、その駆動用電池の大容量化に対する要求が高まってきている。従来、このような携帯用電子機器の駆動用電池としては、リチウム電池やニッカド電池が用いられているが、その容量は、限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、リチウム電池やニッカド電池に代わりエネルギー密度が高く大容量化が可能な燃料電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
燃料電池は、水素と酸素から水を生成した際に電力を取り出すものであり、原理的に取り出せる電力エネルギーの効率が高いため、省エネルギーになるだけでなく、発電時の排出物が水のみであるため、環境に優れた発電方式であり、地球規模でのエネルギーや環境問題解決の切り札として期待されている。
【0004】
このような燃料電池は、例えば、固体ポリマーイオン交換膜を用いた固体高分子電解質膜、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いた固体酸化物電解質膜等を燃料極(アノード)と酸化剤極(カソード)とで両側から挟み込んだものを1つのセル構成としている。そして、このような構成のセルには、燃料極に燃料ガス(例えば水素ガス)を供給する燃料ガス流路と、酸化剤極に酸化剤ガス(例えば酸素や空気)を供給する酸化剤ガス流路とが設けられ、これらの流路を介して燃料ガス、酸化剤ガスがそれぞれ燃料極、酸化剤極に供給されることにより発電が行われる。
【0005】
ところが、外部から燃料が供給される燃料電池装置では、燃料(例えば水素)を供給するためのインフラ整備が必要である。また、燃料として比較的入手が容易なメタノールを用いる場合においてもその流通には年月を要するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−327060号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような問題に対応するためのシステムとして、水との酸化反応により水素を発生し水素との還元反応により再生可能な水素発生部と、前記水素発生部から供給される水素を燃料にして発電を行う発電機能及び前記水素発生部に供給する水素を生成するための水の電気分解を行う電気分解機能を有する発電・電気分解部との間で、水素及び水蒸気を含むガスを循環させる構成の2次電池型燃料電池システムが考えられる。
【0008】
このような構成の2次電池型燃料電池システムは、発電時に前記水素発生部が水蒸気を消費して水素を発生させ前記発電・電気分解部が水素を消費して水蒸気を発生させ、充電時に前記水素発生部が水素を消費して水蒸気を発生させ前記発電・電気分解部が水蒸気を消費して水素を発生させる。したがって、前記水素発生部と前記発電・電気分解部との間を循環する水素及び水蒸気を含むガスの流量が少ないと、発電時には前記発電・電気分解部に供給される水素が少なくなり前記発電・電気分解部での拡散損失が大きくなって発電効率が低下し、充電時には前記発電・電気分解部に供給される水蒸気が少なくなり前記発電・電気分解部での拡散損失が大きくなって充電効率が低下する。
【0009】
なお、特許文献1には、高圧水素ボンベから燃料電池スタックへ供給される燃料ガス(水素ガス)の流量を減圧弁によって制御する燃料電池システム、すなわち高圧水素ボンベの圧力を利用して燃料ガスの流量を確保する燃料電池システムが開示されている。上記構成の2次電池型燃料電池システムは、水素発生部に高圧水素ボンベを用いる形態ではないため、特許文献1に開示されている燃料電池システムのように高圧水素ボンベの圧力を利用して燃料ガスの流量を確保することはできない。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み、発電効率及び充電効率の低下を抑えることができる2次電池型燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る2次電池型燃料電池システムは、化学反応によって燃料を放出することができ、前記燃料が生成される化学反応の逆反応によって再生可能な燃料発生部と、前記燃料発生部から供給される前記燃料を用いて発電を行う発電機能及び前記燃料発生部の再生時に前記燃料発生部から供給される前記逆反応の生成物を電気分解する電気分解機能を有する発電・電気分解部とを備え、前記燃料発生部と前記発電・電気分解部との間で前記燃料を含むガスを循環させるためのガス流路と、前記ガス流路に温度勾配をつける加熱装置とを備える構成(第1の構成)とする。なお、前記発電・電気分解部は、例えば、前記燃料発生部から供給される前記燃料を用いて発電を行う発電動作と、前記燃料発生部の再生時に前記燃料発生部から供給される前記逆反応の生成物を電気分解する電気分解動作とを切り替える燃料電池を備える構成であってもよく、また、例えば、前記燃料発生部から供給される前記燃料を用いて発電を行う燃料電池と、前記燃料発生部の再生時に前記燃料発生部から供給される前記逆反応の生成物を電気分解する電気分解器とを別個に備える構成であってもよい。
【0012】
このような構成によると、前記ガス流路に温度勾配をつけることで、前記ガス流路を循環する前記燃料を含むガスの流量を増やすことができる。これにより、発電時には前記発電・電気分解部に供給される前記燃料が多くなり前記発電・電気分解部での拡散損失が小さくなるので発電効率の低下を抑えることができ、充電時には前記発電・電気分解部に供給される前記逆反応の生成物が多くなり前記発電・電気分解部での拡散損失が小さくなるので充電効率の低下を抑えることができる。
【0013】
また、上記第1の構成の2次電池型燃料電池システムにおいて、前記発電・電気分解部から出力される電力及び前記発電・電気分解部に供給される電力を監視する電力監視部と、前記電力監視部の監視結果に基づいて前記温度勾配の量を決定し、決定した前記温度勾配の量に応じて前記加熱装置を制御する温度調整部とを備える構成(第2の構成)にしてもよい。
【0014】
このような構成によると、前記発電・電気分解部の電流が増加した場合、前記温度勾配の量を増加させることで、前記発電・電気分解部で発生する損失の増加を抑えることができる。
【0015】
また、上記第2の構成の2次電池型燃料電池システムにおいて、前記温度調整部が、前記発電・電気分解部の拡散損失と前記加熱装置に投入するエネルギーとの合計が最小になるように前記温度勾配の量を決定する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0016】
このような構成によると、前記加熱装置に投入するエネルギーを考慮した発電効率及び充電効率の向上を図ることができる。
【0017】
また、上記第1〜3のいずれかの構成の2次電池型燃料電池システムにおいて、前記発電・電気分解部を固体酸化物燃料電池にしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、発電効率及び充電効率の低下を抑えることができる2次電池型燃料電池システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】システムの発電動作時における固体酸化物燃料電池と外部負荷との接続関係を示す模式図である。
【図3】システムの充電動作時における固体酸化物燃料電池と外部電源との接続関係を示す模式図である。
【図4】発電時における燃料電池装置の電流−電圧特性を示す図である。
【図5】発電時における燃料電池装置の拡散損失及びヒーターに投入するエネルギーとガス流路の温度勾配特性との関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。尚、本発明は、後述する実施形態に限られない。
【0021】
本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムの全体構成を図1に示す。図1に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムは、水との酸化反応により水素を発生し、水素との還元反応により再生可能な水素発生装置1と、酸素を含む酸化剤と水素発生装置1から供給される水素との反応により発電を行う燃料電池装置2と、水素発生装置1を収容する容器3と、燃料電池装置2を収容する容器4と、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路5A及び5Bとを備えている。なお、容器3の内部空間は、ガス流路5Aの水素発生装置側端部とガス流路5Bの水素発生装置側端部とを連通するガス流路として機能し、容器4の容器内壁と燃料極8とで囲まれる内部空間は、ガス流路5Aの燃料電池装置側端部とガス流路5Bの燃料電池装置側端部とを連通するガス流路として機能する。
【0022】
水素発生装置1としては、例えば、基材料(主成分)が鉄である微粒子圧縮体からなる水素発生装置を用いることができる。また、図1では、燃料電池装置2の一例として、O2−を透過する固体電解質6を挟み、両側にそれぞれ酸化剤極7と燃料極8が形成されているMEA(Membrane Electrode Assembly;膜・電極接合体)構造をなす固体酸化物燃料電池を図示している。なお、図1では、MEAを1つだけ設けた構造を図示しているが、MEAを複数設けたり、さらに複数のMEAを積層構造にしたりしてもよい。
【0023】
システムの発電時に固体酸化物燃料電池は図2に示すように電力監視部9を介して外部負荷100に接続される。なお、電力監視部9の詳細は後述する。固体酸化物燃料電池では、システムの発電時に、燃料極8において下記の(1)式の反応が起こる。
+O2−→HO+2e …(1)
【0024】
上記の(1)式の反応によって生成された電子は、電力監視部9及び外部負荷100を通って、酸化剤極7に到達し、酸化剤極7において下記の(2)式の反応が起こる。
1/2O+2e→O2− …(2)
【0025】
そして、上記の(2)式の反応によって生成された酸素イオンは、固体電解質6を通って、燃料極8に到達する。上記の一連の反応を繰り返すことにより、固体酸化物燃料電池が発電動作を行うことになる。また、上記の(1)式から分かるように、発電動作時には、燃料極8側においてHが消費されHOが生成されることになる。
【0026】
上記の(1)式及び(2)式より、発電動作時における固体酸化物燃料電池での反応は下記の(3)式の通りになる。
+1/2O→HO …(3)
【0027】
一方、基材料(主成分)が鉄である水素発生装置1は、下記の(4)式に示す酸化反応により、システムの発電時に燃料電池装置2の燃料極8側で生成されたHOを消費してHを生成することができる。
3Fe+4HO→Fe+4H …(4)
【0028】
上記の(4)式に示す鉄の酸化反応が進むと、鉄から酸化鉄への変化が進んで鉄残量が減っていくが、上記の(4)式の逆反応(還元反応)により、水素発生装置1を再生することができ、システムを充電することができる。
【0029】
システムの充電時に固体酸化物燃料電池は図3に示すように電力監視部9を介して外部電源200に接続される。固体酸化物燃料電池装置では、システムの充電時に、上記の(3)式の逆反応である下記の(5)式に示す電気分解反応が起こり、燃料極8側においてHOが消費されHが生成され、基材料(主成分)が鉄である水素発生装置1では、上記の(4)式に示す酸化反応の逆反応である下記(6)式に示す還元反応が起こり、燃料電池装置2の燃料極8側で生成されたHが消費されHOが生成される。
O→H+1/2O …(5)
Fe+4H→3Fe+4HO …(6)
【0030】
なお、例えば500℃の場合、水素発生装置1が収容されている容器3内では水蒸気分圧比10%、水素分圧比90%の平衡状態になるので、水蒸気の割合が少なく水素の割合が多い水蒸気と水素との混合ガスが水素発生装置1から燃料電池装置2に供給される。
【0031】
図1に示す本発明の一実施形態に係る2次電池型燃料電池システムは、さらに、電力監視部9と、温度調整部10と、第1ヒーターH1と、第2ヒーターH2と、第3ヒーターH3と、第4ヒーターH4と、第1温度センサーT1と、第2温度センサーT2と、第3温度センサーT3と、第4温度センサーT4とを備えている。
【0032】
電力監視部9は、システムの発電時には燃料電池装置2から出力される発電電力を監視し、システムの充電時には燃料電池装置2に供給される充電電力を監視し、監視結果を温度調整部10に送る。
【0033】
第1ヒーターH1はガス流路5Bの水素発生装置側端部近傍を加熱し、第1温度センサーT1はガス流路5Bの水素発生装置側端部近傍の温度Tを検出する。第2ヒーターH2はガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍を加熱し、第2温度センサーT2はガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍の温度Tを検出する。第3ヒーターH3はガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍を加熱し、第3温度センサーT3はガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍の温度Tを検出する。第4ヒーターH4はガス流路5Bの燃料電池装置側端部近傍を加熱し、第4温度センサーT4はガス流路5Bの燃料電池装置側端部近傍の温度Tを検出する。
【0034】
温度調整部10は、第1〜第4温度センサーT1〜T4の検出温度T〜Tを参照しながら、T>T>T>Tになるように第1〜第4ヒーターH1〜H4を制御する。
【0035】
>Tであるため、ガス流路5Bの水素発生装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、熱拡散によってガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に移動する。この移動の際、システムの発電時であれば水素発生装置1での酸化反応により混合ガスにおける水素の割合が増加し、システムの充電時であれば水素発生装置1での還元反応により混合ガスにおける水蒸気の割合が増加する。
【0036】
また、T>Tであるため、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、熱拡散によってガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に移動する。
【0037】
また、T>Tであるため、ガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、熱拡散によってガス流路5Bの燃料電池装置側端部近傍に移動する。この移動の際、システムの発電時であれば燃料電池装置2での発電反応により混合ガスにおける水素の割合が減少し、システムの充電時であれば燃料電池装置2での電気分解反応により混合ガスにおける水蒸気の割合が減少する。
【0038】
上述の通り、ガス流路5Bの水素発生装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが熱拡散によってガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に移動しているため、ガス流路5Bの燃料電池装置側端部近傍ではガス濃度が薄くなっている。このため、ガス流路5Bの燃料電池装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、濃度拡散によってガス流路5Bの水素発生装置側端部近傍に移動する。
【0039】
上記のように、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路に温度勾配をつけることで、当該ガス流路を循環する水素及び水蒸気を含むガスの流量を増やすことができる。これにより、発電時には前記発電・電気分解部に供給される水素が多くなり前記発電・電気分解部での拡散損失が小さくなるので発電効率の低下を抑えることができ、充電時には前記発電・電気分解部に供給される水蒸気が多くなり前記発電・電気分解部での拡散損失が小さくなるので充電効率の低下を抑えることができる。
【0040】
また、温度調整部10は、電力監視部9の監視結果に基づいて、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の量(T−T、T−T、T−T)を決定し、その決定した温度勾配の量に応じて第1〜第4ヒーターH1〜H4を制御する。
【0041】
図4は、発電時における燃料電池装置2の電流−電圧特性を示す図である。図4において、特生線IV1は水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量がΔT1であって燃料電池装置2が所定の温度である場合の燃料電池装置2の電流−電圧特性を、特生線IV2は水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量がΔT1より大きいΔT2であって燃料電池装置2が所定の温度である場合の燃料電池装置2の電流−電圧特性を、特生線IV0は燃料電池装置2が所定の温度である場合の理論値での燃料電池装置2の電流−電圧特性をそれぞれ示している。また、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量がΔT1であって燃料電池装置2が所定の温度であって燃料電池装置2の電流の値がI0である場合の燃料電池装置2で発生する損失はΔV1×I0となり、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量がΔT2であって燃料電池装置2が所定の温度であって燃料電池装置2の電流の値がI0である場合の燃料電池装置2で発生する損失はΔV2×I0となる。
【0042】
図4から明らかなように、料電池装置2の電流の値I0が大きくなるほど、燃料電池装置2で発生する損失が大きくなるが、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量を大きくすれば、燃料電池装置2で発生する損失の増加を抑えることができる。なお、システムの充電時も同様である。したがって、温度調整部10は、電力監視部9によって監視された電力(発電電力又は充電電力)が大きいほど、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量が大きくなるように、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の量(T−T、T−T、T−T)を決定する。
【0043】
ところが、燃料電池装置2の電流が所定値である場合に、燃料電池装置2で発生する損失を抑えるために、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の総量を大きくすると、図5に示すとおり、燃料電池装置2の拡散損失は小さくなるが、温度調整部10が第1〜第4ヒーターH1〜H4に投入するエネルギーが大きくなってしまう。したがって、温度調整部10は、燃料電池装置2の拡散損失と第1〜第4ヒーターH1〜H4に投入するエネルギーとの合計が最小になるように、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路につける各温度勾配の量(T−T、T−T、T−T)を決定することが望ましい。
【0044】
なお、水素発生装置1と燃料電池装置2との間で水素及び水蒸気を含むガスを循環させるためのガス流路には必要に応じて、ブロアやポンプ等の循環器を設けてもよい。また、燃料発生装置1及び燃料電池装置2には必要に応じて、温度を調節するヒーター等を設けてもよい。
【0045】
上述した実施形態では、ガス流路5A及び5Bそれぞれに温度センサーとヒーターとを設けているが、例えば、図6に示すようにガス流路5Aのみに温度センサーとヒーターとを設けているようにしても構わない。この場合、温度調整部10は、第2、第3温度センサーT2、T3の検出温度T、Tを参照しながら、T>Tになるように第2、第3ヒーターH2、H3を制御する。T>Tであるため、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、熱拡散によってガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に移動する。この熱拡散による混合ガスの移動によって、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍ではガス濃度が薄くなっている。これにより、ガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、濃度拡散によって容器4内のガス流路、ガス流路5B、及び、容器3内のガス流路を経由して、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に移動する。
【0046】
また、上述した実施形態では、ガス流路5A及び5Bを設けているが、例えば、図7に示すようにガス流路5Aのみを設けるようにしても構わない。この場合、温度調整部10は、第2、第3温度センサーT2、T3の検出温度T、Tを参照しながら、T>Tになるように第2、第3ヒーターH2、H3を制御する。T>Tであるため、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、熱拡散によってガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に移動する。この熱拡散による混合ガスの移動によって、ガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍ではガス濃度が薄くなっている。これにより、ガス流路5Aの燃料電池装置側端部近傍に存在する水蒸気と水素との混合ガスが、濃度拡散によってガス流路5Aの水素発生装置側端部近傍に移動する。したがって、図7においてガス流路5A内に示した矢印のような対流が生じる。
【0047】
また、上述した実施形態では、1つの燃料電池装置2が発電も水の電気分解も行っているが、水素発生装置が、燃料電池(例えば発電専用の固体酸化物燃料電池)と水の電気分解器(例えば水の電気分解専用の固体酸化物燃料電池)それぞれにガス流路上並列に接続される構成にしてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、燃料電池装置2の電解質膜として固体酸化物電解質6を用いて、発電の際に燃料極8側で水を発生させるようにしている。この構成によれば、燃料を水素発生装置1から燃料電池装置2に供給するためのガス流路によって水素発生装置1とつながっている電極側(燃料極8側)で水を発生するため、装置の簡素化や小型化に有利である。一方、特開2009−99491号公報に開示された燃料電池のように、燃料発生装置2の電解質膜として水素イオンを通す固体高分子電解質を用いることも可能である。但し、この場合には、発電の際酸化剤極7側で水が発生されることになるため、この水を水素発生装置1に伝搬する流路を設ければよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、水素発生装置1を用い燃料電池装置2の燃料を水素にしているが、一酸化炭素や炭化水素など水素以外の還元性ガスを燃料電池装置2の燃料として用いても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 水素発生装置
2 燃料電池装置
3、4 容器
5A、5B ガス流路
6 固体電解質
7 酸化剤極
8 燃料極
9 電力監視部
10 温度調整部
100 外部負荷
200 外部電源
H1 第1ヒーター
H2 第2ヒーター
H3 第3ヒーター
H4 第4ヒーター
T1 第1温度センサー
T2 第2温度センサー
T3 第3温度センサー
T4 第4温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応によって燃料を放出することができ、前記燃料が生成される化学反応の逆反応によって再生可能な燃料発生部と、
前記燃料発生部から供給される前記燃料を用いて発電を行う発電機能及び前記燃料発生部の再生時に前記燃料発生部から供給される前記逆反応の生成物を電気分解する電気分解機能を有する発電・電気分解部とを備え、
前記燃料発生部と前記発電・電気分解部との間で前記燃料を含むガスを循環させるためのガス流路と、
前記ガス流路に温度勾配をつける加熱装置とを備えることを特徴とする2次電池型燃料電池システム。
【請求項2】
前記発電・電気分解部から出力される電力及び前記発電・電気分解部に供給される電力を監視する電力監視部と、
前記電力監視部の監視結果に基づいて前記温度勾配の量を決定し、決定した前記温度勾配の量に応じて前記加熱装置を制御する温度調整部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の2次電池型燃料電池システム。
【請求項3】
前記温度調整部が、前記発電・電気分解部の拡散損失と前記加熱装置に投入するエネルギーとの合計が最小になるように前記温度勾配の量を決定することを特徴とする請求項2に記載の2次電池型燃料電池システム。
【請求項4】
前記発電・電気分解部が固体酸化物燃料電池であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2次電池型燃料電池システム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−252877(P2012−252877A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124501(P2011−124501)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】