説明

2液混合型の第1,第2の液及びプリント配線板の製造方法

【課題】第1,第2の液の混合性に優れている2液混合型の第1,第2の液を提供する。
【解決手段】本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、混合物である感光性組成物を得るための2液混合型の第1,第2の液である。上記第1の液は、上記重合性重合体を含み、かつジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含む。上記第2の液は、上記環状エーテル基を有する化合物を含み、かつジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物である感光性組成物を得るための2液混合型の第1,第2の液に関し、より詳細には、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、発光ダイオードチップが搭載される基板上に光を反射するレジスト膜を形成したりするために好適に用いられる2液混合型の第1,第2の液、並びに該2液混合型の第1,第2の液を用いたプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板を高温のはんだから保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
また、様々な電子機器用途において、プリント配線板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから発せられた光の内、上記プリント配線板の上面側に到達した光も利用するために、プリント配線板の上面に白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。この場合には、LEDチップの表面からプリント配線板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線板の上面側に到達し、白色ソルダーレジスト膜により反射された反射光も利用できる。従って、LEDから生じた光の利用効率を高めることができる。
【0004】
上記白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と加水分解性アルコキシシランとの脱アルコール反応により得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有し、かつ不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂と、希釈剤と、光重合開始剤と、硬化密着性付与剤とをさらに含有するレジスト材料が開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ化合物と、ルチル型酸化チタンと、希釈剤とを含有する白色ソルダーレジスト材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−249148号公報
【特許文献2】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板上にレジスト膜を形成するために、特許文献1〜2に記載のような従来のレジスト材料を基板上に塗工した場合には、レジスト材料を均一に塗工できず、塗工むらが生じることがある。例えば、スクリーン印刷により、従来のレジスト材料を基板上に塗工した場合には、塗工されたレジスト材料層において、スジ状のむらが見られることがある。
【0008】
本発明の目的は、2液混合型の第1,第2の液であって、該第1,第2の液の混合性に優れており、第1,第2の液が混合された混合物である感光性組成物を塗工対象部材上に塗工したときに、むらを抑制して均一に塗工することができる2液混合型の第1,第2の液、並びに該2液混合型の第1,第2の液を用いたプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、混合物である感光性組成物を得るための2液混合型の第1,第2の液であり、該2液混合型の第1,第2の液は該第1,第2の液が混合される前の液であり、上記第1,第2の液が混合された混合物である感光性組成物が全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体と、光重合開始剤と、環状エーテル基を有する化合物と、酸化チタンと、有機溶剤とを含み、上記第1の液が、上記重合性重合体を含み、かつ上記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含み、上記第2の液が、上記環状エーテル基を有する化合物を含み、かつ上記有機溶剤の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含み、上記第1の液が、上記光重合開始剤を含むか、上記酸化チタンを含むか、又は上記光重合開始剤と上記酸化チタンとの双方を含み、上記第1の液が上記光重合開始剤を含まない場合には上記第2の液が上記光重合開始剤を含み、上記第1の液が上記酸化チタンを含まない場合には上記第2の液が上記酸化チタンを含む、2液混合型の第1,第2の液が提供される。
【0010】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の回路が設けられた表面に積層されたソルダーレジスト膜とを備えるプリント配線板の製造方法であり、第1,第2の液を混合し、上記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物を得る工程と、回路を表面に有するプリント配線板本体の回路が設けられた表面上に、上記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物を塗工して、上記プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面上に積層されたソルダーレジスト膜を形成する工程とを備え、上記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物が全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体と、光重合開始剤と、環状エーテル基を有する化合物と、酸化チタンと、有機溶剤とを含み、上記第1の液が、上記重合性重合体を含み、かつ上記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含み、上記第2の液が、上記環状エーテル基を有する化合物を含み、かつ上記有機溶剤の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含み、上記第1の液が、上記光重合開始剤を含むか、上記酸化チタンを含むか、又は上記光重合開始剤と上記酸化チタンとの双方を含み、上記第1の液が上記光重合開始剤を含まない場合には上記第2の液が上記光重合開始剤を含み、上記第1の液が上記酸化チタンを含まない場合には上記第2の液が上記酸化チタンを含む。
【0011】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液及び本発明に係るプリント配線板の製造方法のある特定の局面では、上記第1の液が上記光重合開始剤を含む。
【0012】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液及び本発明に係るプリント配線板の製造方法の他の特定の局面では、上記第1の液が上記酸化チタンを含む。
【0013】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液及び本発明に係るプリント配線板の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記第1の液が上記光重合開始剤と上記酸化チタンとの双方を含む。
【0014】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液及び本発明に係るプリント配線板の製造方法の他の特定の局面では、上記第1の液が、上記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含む。
【0015】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液では、上記第1,第2の液が混合された感光性組成物がソルダーレジスト組成物として好適に用いられる。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液では、上記第1,第2の液が混合された感光性組成物がソルダーレジスト組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、混合物である感光性組成物を得るための2液混合型の第1,第2の液であり、該2液混合型の第1,第2の液は該第1,第2の液が混合される前の液であり、上記第1,第2の液が混合された混合物である感光性組成物が全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体と光重合開始剤と環状エーテル基を有する化合物と酸化チタンと有機溶剤とを含み、上記第1の液が、上記重合性重合体を含みかつ上記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含み、上記第2の液が、上記環状エーテル基を有する化合物を含みかつ上記有機溶剤の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含み、上記第1の液が、上記光重合開始剤を含むか、上記酸化チタンを含むか、又は上記光重合開始剤と上記酸化チタンとの双方を含むので、上記第1,第2の液の混合性に優れており、混合後の感光性組成物を塗工対象部材上に塗工したときに、むらを抑制して均一に塗工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る2液混合型の第1,第2の液を用いたレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、混合物である感光性組成物を得るために用いられる。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、混合物である感光性組成物を得るために用いられるキットである。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は混合されて用いられる。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は該第1,第2の液が混合される前の液である。混合される前の第1,第2の液は、混合前の感光性組成物である。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液が混合された混合物である感光性組成物は全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体(A)と、光重合開始剤(B)と、環状エーテル基を有する化合物(C)と、酸化チタン(D)と、有機溶剤(E)(以下、感光性組成物全体に含まれている有機溶剤を、有機溶剤(E)と記載することがある)とを含む。
【0020】
上記第1の液は、上記重合性重合体(A)を含み、かつ上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含む。上記第2の液は、上記環状エーテル基を有する化合物(C)を含み、かつ上記有機溶剤(E)の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含む。
【0021】
上記第1の液は、上記光重合開始剤(B)を含むか、上記酸化チタン(D)を含むか、又は上記光重合開始剤(B)と上記酸化チタン(D)との双方を含む。上記第1の液が上記光重合開始剤(B)を含まない場合には、上記第2の液が上記光重合開始剤(B)を含む。上記第1の液が上記酸化チタン(D)を含まない場合には、上記第2の液が上記酸化チタン(D)を含む。上記光重合開始剤(B)及び上記酸化チタン(D)はそれぞれ、第1の液に含まれていてもよく、第2の液に含まれていてもよく、第1の液と第2の液との双方に含まれていてもよい。
【0022】
また、本発明に係る2液混合型の第1,第2の液が後述する重合性単量体を含んでいたり、後述する酸化防止剤を含んでいたりする場合には、重合性単量体及び酸化防止剤はそれぞれ、第1の液に含まれていてもよく、第2の液に含まれていてもよく、第1の液と第2の液との双方に含まれていてもよい。
【0023】
上記第1,第2の液が混合された混合物は感光性組成物であり、混合された該感光性組成物は全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体(A)と、光重合開始剤(B)と、環状エーテル基を有する化合物(C)と、酸化チタン(D)と、有機溶剤(E)とを含む。
【0024】
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液における上記構成の採用により、上記第1,第2の液の混合性を高めることができる。さらに、基板などの塗工対象部材上に、混合後の感光性組成物を塗工したときに、酸化チタンが大きく起因して生じるむらを抑制して均一に塗工することができる。特に、混合後の感光性組成物をスクリーン印刷により塗工したときに、スジ状のむらを抑制できる。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、スクリーン印刷により塗工される2液混合型の第1,第2の液であることが好ましい。
【0025】
上記光重合開始剤(B)は、第2の液ではなく、第1の液に含まれていることが好ましい。この場合には、上記第1,第2の液の混合性がより一層高くなり、かつ感光性組成物をより一層均一に塗工できる。
【0026】
上記酸化チタン(D)は、第2の液ではなく、第1の液に含まれていることが好ましい。この場合には、酸化チタン(D)の分散性が高くなり、更に上記第1,第2の液の混合性がより一層高くなり、かつ感光性組成物をより一層均一に塗工できる。
【0027】
上記光重合開始剤(B)と上記酸化チタン(D)との双方が、第2の液ではなく、第1の液に含まれていることが好ましい。この場合には、酸化チタン(D)の分散性がより一層高くなり、更に上記第1,第2の液の混合性が更に一層高くなり、かつ感光性組成物を更に一層均一に塗工できる。
【0028】
上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含むことが好ましい。
【0029】
上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサとの双方を含むことが好ましい。上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含むことが好ましい。これらの場合には、上記第1,第2の液の混合性をより一層高めることができ、かつ感光性組成物をより一層均一に塗工できる。
【0030】
上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサとの双方を含むことが好ましい。上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含むことが好ましい。
【0031】
上記第1の液と上記第2の液との重量比は、1:99〜99:1であることが好ましく、1:9〜9:1であることがより好ましく、2:8〜8:2であることが更に好ましく、3:7〜7:3であることが特に好ましい。言い換えれば、混合後の感光性組成物において、該感光性組成物の全含有量100重量%中、上記第1の液に含まれていた成分の含有量と上記第2の液に含まれていた成分の含有量とは重量比で、1:99〜99:1であることが好ましく、1:9〜9:1であることがより好ましく、2:8〜8:2であることが更に好ましく、3:7〜7:3であることが特に好ましい。
【0032】
以下、本発明に係る2液混合型の第1,第2の液、並びに混合後の感光性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0033】
(重合性重合体(A))
上記重合性重合体(A)はカルボキシル基を有する。カルボキシル基を有する重合性重合体(A)は重合性を有し、重合可能である。上記重合性重合体(A)がカルボキシル基を有することで、感光性組成物の現像性が良好になる。上記重合性重合体(A)としては、例えば、カルボキシル基を有するアクリル樹脂、カルボキシル基を有するエポキシ樹脂及びカルボキシル基を有するオレフィン樹脂が挙げられる。なお、「樹脂」は、固形樹脂に限定されず、液状樹脂及びオリゴマーも含む。
【0034】
上記重合性重合体(A)は、下記のカルボキシル基含有樹脂(a)〜(e)であることが好ましい。
【0035】
(a)不飽和カルボン酸と重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合によって得られるカルボキシル基含有樹脂
(b)カルボキシル基含有(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)と、1分子中にオキシラン環及びエチレン性重合性不飽和二重結合を有する化合物(b2)との反応により得られるカルボキシル基含有樹脂
(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物と、重合性不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した反応物の第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(d)水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボキシル基を有するポリマーに、1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる水酸基及びカルボキシル基含有樹脂
(e)芳香環を有するエポキシ化合物と飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂、又は芳香環を有するエポキシ化合物と不飽和二重結合を少なくとも1つ有するカルボキシル基含有化合物とを反応させた後、飽和多塩基酸無水物又は不飽和多塩基酸無水物をさらに反応させて得られる樹脂
【0036】
上記感光性組成物100重量%中、上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、感光性組成物の硬化性が良好になる。
【0037】
(光重合開始剤(B))
上記感光性組成物は、光重合開始剤(B)を含むので、光の照射により感光性組成物を硬化させることができる。光重合開始剤(B)は特に限定されない。光重合開始剤(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記光重合開始剤(B)としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、及びこれらの誘導体が挙げられる。上記光重合開始剤(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)100重量部に対して、上記光重合開始剤(B)の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。上記光重合開始剤(B)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0040】
(環状エーテル基を有する化合物(C))
レジスト膜の切り出し加工性を高めることなどを目的として、上記感光性組成物は、環状エーテル骨格を有する化合物(C)を含む。また、上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)の使用により、感光性組成物の硬化性も良好になる。
【0041】
上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂及びε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)は、上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)が有するカルボキシル基と反応して、感光性組成物を硬化させるように作用する。
【0043】
上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)100重量部に対して、上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記環状エーテル骨格を有する化合物(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、レジスト膜の電気絶縁性をより一層高めることができる。
【0044】
(酸化チタン(D))
上記感光性組成物は、酸化チタン(D)を含むので、反射率が高いレジスト膜などの硬化物膜を形成できる。上記感光性組成物に含まれている酸化チタン(D)は特に限定されない。酸化チタン(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記酸化チタン(D)を用いることによって、酸化チタン(D)以外の他の無機フィラーを用いた場合と比較して、反射率が高いレジスト膜を形成できる。
【0046】
上記酸化チタン(D)は、ルチル型酸化チタン又はアナターゼ型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの使用により、耐熱黄変性により一層優れたレジスト膜を形成できる。上記アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンよりも、硬度が低い。このため、アナターゼ型酸化チタンの使用により、レジスト膜の加工性を高めることができる。
【0047】
上記酸化チタン(D)は、ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含むことが好ましい。上記酸化チタン(D)100重量%中、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンの含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、100重量%以下である。上記酸化チタン(D)の全量が、上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンであってもよい。上記ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンの使用により、レジスト膜の耐熱黄変性をより一層高めることができる。
【0048】
ケイ素酸化物又はシリコーン化合物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、例えば、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製の品番:CR−90や、ルチル硫酸法酸化チタンである石原産業社製の品番:R−550等が挙げられる。
【0049】
上記感光性組成物100重量%中、酸化チタン(D)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。酸化チタン(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、レジスト膜が高温に晒されたときに、黄変し難くなる。さらに、塗工に適した粘度を有する感光性組成物を容易に調製できる。
【0050】
(有機溶剤(E))
上記感光性組成物は、有機溶剤(E)を含む。上記第1,第2の液を混合した感光性組成物は、有機溶剤(E)を含む。上記感光性組成物は、少なくとも2種の有機溶剤を含むことが好ましい。上記第1の液に含まれている有機溶剤(E1)(以下、第1の液に含まれている有機溶剤を、有機溶剤(E1)と記載することがある)と、上記第2の液に含まれている有機溶剤(E2)(以下、第2の液に含まれている有機溶剤を、有機溶剤(E2)と記載することがある)とは異なることが好ましい。
【0051】
一般的に知られている有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、並びに石油エーテル、ナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0052】
上述した有機溶剤の中から、上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを必須で含む。ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種は、有機溶剤(E1)である。
【0053】
また、上述した有機溶剤の中から、上記第2の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含む。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種は、有機溶剤(E2)である。
【0054】
このような有機溶剤(E1),(E2)を第1,第2の液にそれぞれ含有させることによって、上記第1,第2の液の混合性が顕著に良好になる。特定の上記有機溶剤(E1),(E2)の使用は、更に特定の上記有機溶剤(E1),(E2)を第1の液と第2の液とにそれぞれ分けて含有させることは、上記第1,第2の液の混合性の向上、混合された感光性組成物の塗工後のむらの抑制に大きく寄与する。
【0055】
上記「蒸留性状における初留点」及び上記「蒸留性状における終点」は、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0056】
第1,第2の液の混合性をより一層高める観点からは、上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサの内の少なくとも1種を含むことが好ましい。上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサの内の少なくとも1種を含むことも好ましい。上記第1の液が、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含む場合に、上記第1の液は酸化チタンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0057】
上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含んでいてもよく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含んでいてもよく、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサを含んでいてもよく、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサを含んでいてもよい。
【0058】
第1,第2の液の混合性を更に一層高める観点からは、上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含むことが好ましい。上記第1の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルと、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含むことも好ましい。
【0059】
また、上記第2の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを含んでいてもよく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを含んでいてもよく、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサを含んでいてもよい。さらに、上記第2の液は、上記有機溶剤(E)の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルの内の少なくとも1種を含んでいてもよく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサの内の少なくとも1種を含んでいてもよく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサの内の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0060】
有機溶剤(E)の含有量は特に限定されない。感光性組成物の塗工性を考慮して、有機溶剤(E)は適宜の含有量で使用可能である。混合後の感光性組成物100重量%中、上記有機溶剤(E)の全含有量(上記有機溶剤(E1)と上記有機溶剤(E2)との合計の含有量)は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0061】
上記第1,第2の液の混合性をより一層良好にし、感光性組成物をより一層均一に塗工する観点からは、2液混合型の第1,第2の液全体において、上記第1の液に含まれている有機溶剤(E1)の含有量と上記第2の液に含まれている有機溶剤(E2)の含有量とは重量比で、1:99〜99:1であることが好ましく、1:9〜9:1であることがより好ましく、2:8〜8:2であることが更に好ましく、3:7〜7:3であることが特に好ましい。言い換えれば、混合後の感光性組成物において、該感光性組成物に含まれている上記有機溶剤(E)の全含有量100重量%中、上記第1の液に含まれていた有機溶剤(E1)の含有量と、上記第2の液に含まれていた上記有機溶剤(E2)の含有量とは重量比で、1:99〜99:1であることが好ましく、1:9〜9:1であることがより好ましく、2:8〜8:2であることが更に好ましく、3:7〜7:3であることが特に好ましい。
【0062】
(他の成分)
硬化性をより一層高めるために、上記感光性組成物は、カルボキシル基を有する重合性重合体(A)とは異なる成分として、重合性単量体を含むことが好ましい。上記感光性組成物は、カルボキシル基を有する重合性重合体(A)と重合性単量体との双方を含むことが好ましい。上記重合性単量体は重合性を有し、重合可能である。上記重合性単量体は特に限定されない。上記重合性単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記重合性単量体は、重合性不飽和基含有単量体であることが好ましい。上記重合性単量体における重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基及びビニルエーテル基などの重合性不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。中でも、レジスト膜の架橋密度を高めることができるため、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0064】
上記重合性不飽和基含有単量体は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレート変性物や、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート変性物や、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート変性物や、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート変性物や、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
上記多価アルコールとしては、例えば、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。上記フェノールの(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート変性物が挙げられる。
【0066】
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルとを意味する。「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを意味する。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを意味する。
【0067】
上記重合性単量体が含まれる場合には、該重合性単量体と上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)との合計100重量%中、上記重合性単量体の含有量は好ましくは5重量%以上、好ましくは50重量%以下である。上記重合性単量体の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、感光性組成物を十分に硬化させることができる。さらに、レジスト膜の架橋密度が適度になり、十分な解像度を得ることができ、かつレジスト膜が黄変しにくくなる。
【0068】
高温に晒されたときにソルダーレジスト膜が黄変するおそれを小さくするために、上記感光性組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。上記酸化防止剤は、ルイス塩基性部位を有することが好ましい。レジスト膜の黄変をより一層抑制する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。レジスト膜の黄変をさらに一層抑制する観点からは、上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。すなわち、上記感光性組成物は、フェノール系酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0069】
上記フェノール系酸化防止剤の市販品としては、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259、及びIRGANOX 295(以上、いずれもチバジャパン社製)、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−90、及びアデカスタブ AO−330(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer GA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、及びSumilizer GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14、及びHOSTANOX O3(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W−300、アンテージ W−400、及びアンテージ W500(以上、いずれも川口化学工業社製)、並びにSEENOX 224M、及びSEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)等が挙げられる。
【0070】
上記リン系酸化防止剤としては、シクロヘキシルフォスフィン及びトリフェニルフォスフィン等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤の市販品としては、アデカスタブ PEP−4C、アデカスタブ PEP−8、アデカスタブ PEP−24G、アデカスタブ PEP−36、アデカスタブ HP−10、アデカスタブ 2112、アデカスタブ 260、アデカスタブ 522A、アデカスタブ 1178、アデカスタブ 1500、アデカスタブ C、アデカスタブ 135A、アデカスタブ 3010、及びアデカスタブ TPP(以上、いずれもADEKA社製)、サンドスタブ P−EPQ、及びホスタノックス PAR24(以上、いずれもクラリアント社製)、並びにJP−312L、JP−318−0、JPM−308、JPM−313、JPP−613M、JPP−31、JPP−2000PT、及びJPH−3800(以上、いずれも城北化学工業社製)等が挙げられる。
【0071】
上記アミン系酸化防止剤としては、トリエチルアミン、ジシアンジアミド、メラミン、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−トリル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン及び第四級アンモニウム塩誘導体等が挙げられる。
【0072】
上記カルボキシル基を有する重合性重合体(A)100重量部に対して、上記酸化防止剤の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。上記酸化防止剤の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、耐熱黄変性により一層優れたレジスト膜を形成できる。
【0073】
また、上記感光性組成物は、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含んでいてもよい。
【0074】
上記感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0075】
上記感光性組成物を硬化させるために用いられる光源としては、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源としては、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ及びエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0076】
(LEDデバイス)
本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、LEDデバイスのレジスト膜を形成するために好適に用いられ、ソルダーレジスト膜を形成するためにより好適に用いられる。本発明に係る2液混合型の第1,第2の液は、レジスト組成物であることが好ましく、ソルダーレジスト組成物であることが好ましい。
【0077】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の上記回路が設けられた表面に積層されたレジスト膜とを備えるプリント配線板の製造方法である。該レジスト膜が、本発明に係る2液混合型の第1,第2の液により形成されている。
【0078】
図1に、本発明の一実施形態に係る2液混合型の第1,第2の液を用いて形成されたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0079】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2aに、2液混合型の第1,第2の液により形成されたレジスト膜3が積層されている。レジスト膜3は、パターン膜である。よって、基板2の上面2aの一部の領域では、レジスト膜3は形成されていない。レジスト膜3が形成されていない部分の基板2の上面2aには、電極4a,4bが設けられている。基板2は、プリント配線板本体であることが好ましい。
【0080】
レジスト膜3の上面3aに、LEDチップ7が積層されている。レジスト膜3を介して、基板2上にLEDチップ7が積層されている。LEDチップ7の下面7aの外周縁には、端子8a,8bが設けられている。はんだ9a,9bにより、端子8a,8bが電極4a,4bと電気的に接続されている。この電気的な接続により、LEDチップ7に電力を供給できる。
【0081】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0082】
実施例及び比較例では、以下の材料1)〜13)を用いた。
【0083】
1)アクリルポリマー1(カルボキシル基を有する重合性重合体、下記合成例1で得られたアクリルポリマー1)
(合成例1)
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶剤であるエチルカルビトールアセテートと、触媒であるアゾビスイソブチロニトリルとを入れ、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートとを30:70のモル比で混合したモノマーを2時間かけて滴下した。滴下後、1時間攪拌し、温度を120℃に上げた。その後、冷却した。得られた樹脂の全てのモノマー単位の総量のモル量に対するモル比が10となる量のグリシジルアクリレートを加え、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い100℃で30時間加熱して、グリシジルアクリレートとカルボキシル基とを付加反応させた。冷却後、フラスコから取り出して、固形分酸価60mgKOH/g、重量平均分子量15000、二重結合当量1000のカルボキシル基含有樹脂を50重量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この溶液をアクリルポリマー1と呼ぶ。
【0084】
2)DPHA(アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、比重1.1)
3)TPO(光ラジカル発生剤である光重合開始剤、BASFジャパン社製)
4)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製、比重1.2)
5)CR−50(酸化チタン、石原産業社製、塩素法により製造されたルチル型酸化チタン)
6)エチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ダイセル化学社製、双極子モーメント1Debye以上、比重1.0)
7)ソルベッソ150(ナフサ、エクソンモービル社製、蒸留性状における初留点189℃、蒸留性状における終点210℃)
8)ソルベッソ100(ナフサ、エクソンモービル社製、蒸留性状における初留点165℃、蒸留性状における終点174℃)
9)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製)
10)ジメチルプロピレンジグリコール(日本乳化剤社製)
11)ジエチルジグリコール(日本乳化剤社製)
12)ソルベッソ200(ナフサ、エクソンモービル社製、蒸留性状における初留点230℃、蒸留性状における終点283℃)
13)トルエン(エクソンモービル社製)
【0085】
(実施例1)
合成例1で得られたアクリルポリマー1を15gと、DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)5gと、TPO(光ラジカル発生剤である光重合開始剤、BASFジャパン社製)2gと、CR−50(酸化チタン、石原産業社製)40gと、ソルベッソ150(ナフサ、エクソンモービル社製)25gとを配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、第1の液を得た。
【0086】
828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製)8gと、エチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ダイセル化学社製)5gとを配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、SP−500を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、第2の液を得た。
【0087】
上記のようにして、第1,第2の液を有する2液混合型の感光性組成物を用意した。
【0088】
(実施例2〜39及び比較例1〜19)
第1の液及び第2の液で使用した材料の種類及び配合量を下記の表1〜6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第1,第2の液を有する2液混合型の第1,第2の液(混合前の感光性組成物)を得た。
【0089】
(評価)
2液の混合性:
第1の液と第2の液とを、1Lの丸型のプラスチックス容器(近畿容器社製BHS−1200)に入れ、メッシュ社製自動インキ練機により、50rpmで10秒間攪拌したレジスト材料(混合後の感光性組成物)を作製した。第1の液と第2の液とを、1Lの丸型のプラスチックス容器(近畿容器社製BHS−1200)に入れ、メッシュ社製自動インキ練機により、50rpmで20秒間攪拌したレジスト材料(混合後の感光性組成物)を作製した。第1の液と第2の液とを、1Lの丸型のプラスチックス容器(近畿容器社製BHS−1200)に入れ、メッシュ社製自動インキ練機により、50rpmで1分間攪拌したレジスト材料(混合後の感光性組成物)を作製した。さらに、第1の液と第2の液とを、1Lの丸型のプラスチックス容器(近畿容器社製BHS−1200)に入れ、メッシュ社製自動インキ練機により、50rpmで5分間攪拌したレジスト材料(混合後の感光性組成物)を作製した。
【0090】
また、表面に銅箔が貼り付けられている、100×100mmのFR−4基板を用意した。撹拌直後のレジスト材料を、上記FR−4基板の銅箔が貼り付けられている面に、スクリーン印刷により塗布して、レジスト材料層を形成した。基板上のレジスト材料層の外観を目視で観察した。
【0091】
第1,第2の液の混合性を下記の判定基準で判定した。
【0092】
[第1,第2の液の混合性の判定基準]
A:10秒間撹拌したレジスト材料、20秒間撹拌したレジスト材料、1分間撹拌したレジスト材料及び5分間撹拌したレジスト材料のいずれを用いた場合でも、レジスト材料層は均一であった
B:10秒間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層にわずかにスジ状のむらがみられたものの、20秒間撹拌したレジスト材料、1分間撹拌したレジスト材料及び5分間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層は均一であった
C:10秒間撹拌したレジスト材料及び20秒間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層にわずかにスジ状のむらがみられたものの、1分間撹拌したレジスト材料及び5分間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層は均一であった
D:10秒間撹拌したレジスト材料、20秒間撹拌したレジスト材料及び1分間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層にわずかにスジ状のむらがみられたものの、5分間撹拌したレジスト材料を用いた場合には、レジスト材料層は均一であった
E:10秒間撹拌したレジスト材料、20秒間撹拌したレジスト材料、1分間撹拌したレジスト材料及び5分間撹拌したレジスト材料のいずれを用いた場合でも、レジスト材料層にスジ状のむらがみられた
【0093】
結果を下記の表1〜6に示す。なお、上記第1,第2の液の混合性の評価後に、基板上のレジスト材料層を硬化させることで、レジスト膜を得ることができた。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【符号の説明】
【0100】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…レジスト膜
3a…上面
4a,4b…電極
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物である感光性組成物を得るための2液混合型の第1,第2の液であり、該2液混合型の第1,第2の液は該第1,第2の液が混合される前の液であり、
前記第1,第2の液が混合された混合物である感光性組成物が全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体と、光重合開始剤と、環状エーテル基を有する化合物と、酸化チタンと、有機溶剤とを含み、
前記第1の液が、前記重合性重合体を含み、かつ前記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含み、
前記第2の液が、前記環状エーテル基を有する化合物を含み、かつ前記有機溶剤の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含み、
前記第1の液が、前記光重合開始剤を含むか、前記酸化チタンを含むか、又は前記光重合開始剤と前記酸化チタンとの双方を含み、
前記第1の液が前記光重合開始剤を含まない場合には前記第2の液が前記光重合開始剤を含み、前記第1の液が前記酸化チタンを含まない場合には前記第2の液が前記酸化チタンを含む、2液混合型の第1,第2の液。
【請求項2】
前記第1の液が前記光重合開始剤を含む、請求項1に記載の2液混合型の第1,第2の液。
【請求項3】
前記第1の液が前記酸化チタンを含む、請求項1に記載の2液混合型の第1,第2の液。
【請求項4】
前記第1の液が前記光重合開始剤と前記酸化チタンとの双方を含む、請求項1に記載の2液混合型の第1,第2の液。
【請求項5】
前記第1の液が、前記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2液混合型の第1,第2の液。
【請求項6】
前記第1,第2の液が混合された感光性組成物がソルダーレジスト組成物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の2液混合型の第1,第2の液。
【請求項7】
回路を表面に有するプリント配線板本体と、該プリント配線板本体の回路が設けられた表面に積層されたソルダーレジスト膜とを備えるプリント配線板の製造方法であって、
第1,第2の液を混合し、前記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物を得る工程と、
回路を表面に有するプリント配線板本体の回路が設けられた表面上に、前記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物を塗工して、前記プリント配線板本体の前記回路が設けられた表面に積層されたソルダーレジスト膜を形成する工程とを備え、
前記第1,第2の液が混合されたソルダーレジスト組成物である感光性組成物が全体で、カルボキシル基を有する重合性重合体と、光重合開始剤と、環状エーテル基を有する化合物と、酸化チタンと、有機溶剤とを含み、
前記第1の液が、前記重合性重合体を含み、かつ前記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が290℃以下であるナフサの内の少なくとも1種とを含み、
前記第2の液が、前記環状エーテル基を有する化合物を含み、かつ前記有機溶剤の一部として、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサからなる群から選択された少なくとも1種とを含み、
前記第1の液が、前記光重合開始剤を含むか、前記酸化チタンを含むか、又は前記光重合開始剤と前記酸化チタンとの双方を含み、
前記第1の液が前記光重合開始剤を含まない場合には前記第2の液が前記光重合開始剤を含み、前記第1の液が前記酸化チタンを含まない場合には前記第2の液が前記酸化チタンを含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項8】
前記第1の液が前記光重合開始剤を含む、請求項7に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記第1の液が前記酸化チタンを含む、請求項7に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の液が前記光重合開始剤と前記酸化チタンとの双方を含む、請求項7に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記第1の液が、前記有機溶剤の一部として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの内の少なくとも1種と、蒸留性状における初留点が150℃以上、蒸留性状における終点が220℃以下であるナフサとの双方を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−234141(P2012−234141A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200945(P2011−200945)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【特許番号】特許第4991960号(P4991960)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】