説明

2液混合硬化型組成物

【課題】深部まで短時間で硬化するとともに、硬化速度を自由に調整することができる2液混合硬化型組成物を提供することを目的としている。
【解決手段】A剤とB剤とを備え、使用直前にA剤とB剤とを混合して反応硬化させるようになっている2液混合硬化型組成物であって、前記A剤が、加水分解性シリル基を有する化合物(a)を含み、前記B剤が、リン酸および亜リン酸の少なくともいずれか一種である成分(b)と、アルコール性水酸基を有する化合物(c)および水の少なくともいずれか一種である成分(d)とを含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シーリング剤、接着剤、塗料、コーティング材、シーラント、プライマー等に好適に用いられる2液混合硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有する化合物を含む硬化型組成物は、シーリング剤、接着剤、塗料、コーティング材、シーラント、プライマー等に好適に用いられている。
すなわち、上記硬化型組成物は、硬化型組成物中に含まれる加水分解性シリル基を有する化合物中の加水分解性シリル基が湿気や水の存在によって加水分解してシラノール基(Si−OH)が生成され、続いて、シラノール縮合反応によりシロキサン結合(−Si−O−Si−)が生成されて、分子鎖延長反応と架橋反応が進行しシロキサン結合を形成することによりゴム状の硬化物となるようになっている。
【0003】
また、上記硬化型組成物中には、一般に、シラノール縮合触媒が硬化促進剤として添加されている。
【0004】
上記シラノール縮合触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、塩化白金酸などの無機酸類やテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫などの錫カルボン酸塩類等が一般に用いられている(特許文献1、2等参照)。
【0005】
しかしながら、たとえば、シラノール縮合触媒として錫カルボン酸塩を用いると、従来の配合組成の硬化型組成物では、反応が遅すぎるという問題があり、シラノール触媒としてリン酸を用いると、従来の配合組成の硬化型組成物では、反応が速いのであるが、反応が速すぎて実用に適さないという問題があった。
また、加水分解性シリル基を有する化合物がポリイソブチレンを主骨格に含むイソブチレン系重合体である場合、深部まで短時間で硬化させることが難しいという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平6−256518号公報
【特許文献2】特開平5−86195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、深部まで短時間で硬化するとともに、硬化速度を自由に調整することができる2液混合硬化型組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる2液混合硬化型組成物は、A剤とB剤とを備え、使用直前にA剤とB剤とを混合して反応硬化させるようになっている2液混合硬化型組成物であって、前記A剤が、加水分解性シリル基を有する化合物(a)を含み、前記B剤が、リン酸および亜リン酸の少なくともいずれか一種である成分(b)と、アルコール性水酸基を有する化合物(c)および水の少なくともいずれか一種である成分(d)とを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明において、化合物(a)としては、加水分解性シリル基を有するものであれば、特に限定されないが、たとえば、主骨格(主鎖部分)にポリイソブチレンを含むイソブチレン系重合体、主骨格にポリオキシアルキレンを含むオキシアルキレン系重合体、主骨格に(メタ)アクリル酸エステル重合体を含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体等が挙げられる。
【0010】
化合物(a)が、ポリイソブチレンを主骨格に含むイソブチレン系重合体の場合は、得られる硬化物の吸水性が低く、耐候性が良いので好適であり、この場合、通常は深部硬化性が悪いが、本発明により深部まで短時間で硬化させることができる。また、化合物(a)が、ポリオキシアルキレンを主骨格に含むオキシアルキレン系重合体の場合は、得られる硬化物の伸び率が良いので好適であり、更に、化合物(a)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体を主骨格に含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体の場合は、得られる硬化物の耐候性が良いので好適である。これらの化合物(a)は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。ここで、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0011】
上記加水分解性シリル基とは、加水分解性基が珪素原子に結合した基であり、珪素原子に結合した加水分解性基としては、例えば、水素、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシド基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシド基などが挙げられ、反応後に有害な副生成物を生成しないので、アルコキシ基が好適である。
【0012】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等を挙げることができる。これらの内、メトキシ基、エトキシ基等が好適である。
【0013】
アルコキシ基が珪素原子に結合したアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリフェノキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジアルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等のモノアルコキシシリル基を挙げることができる。これらのアルコキシシリル基は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記イソブチレン系重合体としては、数平均分子量が500〜100000程度であるのが好ましく、特に1000〜40000程度のものが取り扱いやすさなどの点から好ましい。さらに、分子量分布(Mw/Mn)に関しては、同一分子量における粘度が低くなるという点で分子量分布が狭いほどよく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(移動相:テトラヒドロフラン、スチレン換算)で、2.0以下が好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0015】
また、イソブチレン系重合体中の加水分解性シリル基の数は、1分子あたり平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在することが好ましい。すなわち、分子中に含まれる加水分解性シリル基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現し難くなる。加水分解性シリル基は、イソブチレン系重合体分子鎖の末端に存在していてもよく、内部に存在していてもよく、両方に存在していてもよい。特に加水分解性シリル基の少なくとも1個を分子鎖末端に有する場合には、最終的に形成される硬化物に含まれるイソブチレン系重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度で高伸びのゴム状硬化物が得られやすくなる等の点から好ましい。また、これら加水分解性シリル基を有するイソブチレン系重合体は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明におけるイソブチレン系重合体とは、主骨格中にポリイソブチレン部分を50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有するものをいう。ポリイソブチレン部分以外の部分を構成するポリマーの単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
上記のようなイソブチレン系重合体としては、特に限定されないが、たとえば、カネカ社製商品名エピオンEP103S、EP303S、EP505S等市販のものが使用できる。
【0017】
上記オキシアルキレン系重合体は、重量平均分子量が、4000〜50000のものが好ましく、10000〜40000のものがより好ましい。すなわち、重量平均分子量が、4000未満の場合、硬化後の硬化物の伸び率が充分でなくなり、弾性機能が低下することがあり、50000を超えると、粘度が高すぎて、配合工程での作業性が低下することがある。また、オキシアルキレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)としては、1.6以下のものが作業性と伸びとのバランスに優れているため好ましい。
【0018】
上記オキシアルキレン系重合体中におけるポリオキシアルキレン構造部分の割合は、主骨格全体の50重量%以上となることが好ましく、更に好ましくは60重量%以上である。ポリオキシアルキレン構造部分が50重量%未満の場合は、伸び率、接着性等が低下してしまう虞がある。
【0019】
上記のようなオキシアルキレン系重合体としては、例えばカネカ社製の商品名MSポリマーS−203、S−303、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400、旭硝子社製の商品名エクセスターESS−3620、ESS−2420、ESS2410、ESS3430等の市販のものを使用することができる。
【0020】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、主骨格が、(メタ)アクリル酸エステル重合体構造が鎖状に並ぶ構成、あるいは、主に(メタ)アクリル酸エステル重合体構造が並び、一部に(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーからなるポリマー構造部分からなる構成をしている。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主骨格を形成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−[アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[アクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、2−[メタアクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−[メタアクリロイルオキシ]エチル2−ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。
【0022】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニル等のビニルエステル基を持つ化合物;無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルモルフォリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4−ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン−1,4−ジオール−ジビニルエーテル、ヘキサン−1,6−ジオール−ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4−ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4−ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−モノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテル等のビニロキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体中における(メタ)アクリル酸エステル重合体構造部分の割合は、主骨格全体の50重量%以上となることが好ましく、更に好ましくは60重量%以上である。(メタ)アクリル酸エステル重合体構造部分が50重量%未満の場合は、耐候性、接着性等が低下してしまう虞がある。
上記のような(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、前述のオキシアルキレン系重合体との混合物として、例えば、カネカ社製商品名カネカサイリルMA−440、MA−447等市販のものが使用できる。
【0024】
本発明の2液混合硬化型組成物の使用時のA剤とB剤との混合割合は、用途に応じて適宜決定されるが、化合物(a)100重量部に対し、成分(b)が0.1〜15重量部、成分(d)が0.1〜20重量部となるように混合されることが好ましい。
【0025】
すなわち、成分(b)が化合物(a)100重量部に対し0.1重量部未満では、硬化速度が遅くなりすぎ、成分(b)が化合物(a)100重量部に対し15重量部を超えると、硬化物が軟化してしまう虞がある。
一方、成分(d)が化合物(a)100重量部に対し0.1重量部未満では、硬化速度の制御が難しくなり、すぐに硬化してしまい、成分(d)が化合物(a)100重量部に対し20重量部を超えると、硬化速度を制御できず、硬化時間が長くなってしまう虞がある。
【0026】
本発明において、成分(b)としては、リン酸および亜リン酸の少なくともいずれか一種であり、成分(d)としては、アルコール性水酸基を有する化合物(c)および水の少なくともいずれか一種である。
【0027】
化合物(c)としては、アルコール性水酸基を分子中に含んでいれば特に限定されないが、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、3−メトキシブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−メチルペンタノール、第二ヘキシルアルコール、2−エチルブチルアルコール、第二ヘプチルアルコール、ヘプタノール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、第二オクチルアルコール、ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、第二ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、第二テトラデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられ、比較的低沸点のメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどが好適である。
【0028】
B液中の成分(b)と、成分(d)との混合割合は、A液とB液とを混合したときに、化合物(a)100重量部に対し、成分(b)が0.1〜15重量部(より好ましくは、0.5重量部〜10重量部)、成分(d)が0.1〜20重量部(より好ましくは、0.5重量部〜10重量部)となるように混合割合を達成することが好ましい。また、成分(b)と成分(d)との混合割合は、特に限定されないが、成分(b):成分(d)=4:1〜1:10とすることが好ましく、成分(b):成分(d)=2:1〜1:4とすることがより好ましい。
【0029】
上記A剤およびB剤中には、必要に応じて、充填材、だれ防止剤、染料、顔料、増粘剤、消泡剤、分散剤、難燃剤、光沢剤、可塑剤、密着付与剤、界面活性剤などの表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤および帯電防止剤などを添加するようにしても構わない。
上記充填材としては、特に限定されないが、たとえば、重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪砂、珪藻土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、水添ヒマシ油、ガラス繊維などが挙げられる。
【0030】
上記可塑剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコールなどのフタル酸ジエステル類; エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類; ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのアルキレンジカルボン酸ジエステル類; その他ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリクレジルホスフェート、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン類などが挙げられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上のように、A剤とB剤とを備え、使用直前にA剤とB剤とを混合して反応硬化させるようになっている2液混合硬化型組成物であって、前記A剤が、加水分解性シリル基を有する化合物(a)を含み、前記B剤が、リン酸および亜リン酸の少なくともいずれか一種である成分(b)と、アルコール性水酸基を有する化合物(c)および水の少なくともいずれか一種である成分(d)とを含むので、深部まで短時間で硬化するとともに、硬化速度を自由に調整することができる。
【0032】
すなわち、成分(d)が、リン酸あるいは亜リン酸の硬化触媒としての効果を緩和し、リン酸あるいは亜リン酸のみの場合に比べ、使用が困難なまでの短時間の硬化を防ぐ。
しかし、リン酸あるいは亜リン酸が配合されているので、硬化反応が始まると、短時間で深部まで硬化する。
さらに、主剤である加水分解性シリル基を有する化合物(a)がA剤側、硬化触媒であるリン酸あるいは亜リン酸がB剤側に入っているので、保存性に優れている。
【0033】
また、A剤とB剤とが、化合物(a)100重量部に対し、成分(b)が0.1〜15重量部、成分(d)が0.1〜20重量部となるように混合されるようにすれば、深部までの短時間硬化と、硬化速度の自由な調整とが確実に両立できるものとなる。
【0034】
化合物(a)が、ポリイソブチレンを主骨格に含むイソブチレン系重合体であれば、得られる硬化物の吸水性が低く、耐候性が良いものとなるが、この場合でも有効に深部まで短時間で硬化するとともに、硬化速度を自由に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の具体的な実施例をその比較例と対比させて詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
A剤としてのオキシアルキレン系重合体であるカネカ社製商品名サイリルSAT350(以下、「SAT350」とのみ記す)に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0037】
(実施例2)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:3の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが6重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0038】
(実施例3)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)である水とが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、水が2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0039】
(実施例4)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)である亜リン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、亜リン酸が2重量部、エチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0040】
(実施例5)
A剤としてのイソブチレン系重合体であるカネカ社製商品名エピオンEP303S(以下、「EP303S」とのみ記す)に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、EP303Sが100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0041】
(実施例6)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が0.1重量部、エチルアルコールが0.1重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0042】
(実施例7)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で3:4の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が15重量部、エチルアルコールが20重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0043】
(実施例8)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるメチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、メチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0044】
(実施例9)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:5の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが10重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0045】
(実施例10)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるイソプロピルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、イソプロピルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0046】
(実施例11)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるn−ブチルアルコールとが重量比で1:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、n−ブチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0047】
(実施例12)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で2:25の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが25重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0048】
(実施例13)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で10:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が20重量部、エチルアルコールが2重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0049】
(実施例14)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:4の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが8重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0050】
(実施例15)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で1:10の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが20重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0051】
(実施例16)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で2:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが1重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0052】
(実施例17)
A剤としてのSAT350に、B剤としての成分(b)であるリン酸と成分(d)であるエチルアルコールとが重量比で4:1の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、エチルアルコールが0.5重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0053】
(比較例1)
SAT350が100重量部に対してリン酸2重量部を加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0054】
(比較例2)
SAT350が100重量部に対してブチル錫ラウレート系シラノール縮合触媒(三共有機合成社製SB−65)2重量部を加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0055】
(比較例3)
SAT350に、リン酸とアセトンとが重量比で1:3の割合で混合された混合物を、SAT350が100重量部に対し、リン酸が2重量部、アセトンが6重量部の割合となるように加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0056】
(比較例4)
EP303S100重量部に対してブチル錫ラウレート系シラノール縮合触媒(三共有機合成社製SB−65)2重量部を加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0057】
(比較例5)
SAT350が100重量部に対してエチルアルコール2重量部を加え、1分間攪拌混合して混合組成物を得た。
【0058】
上記実施例1〜17および比較例1〜5で得られた混合組成物をそれぞれステンレス板の表面に厚み0.3mmとなるように塗布し、硬化開始時間と皮膜化時間を調べ、その結果を、各成分の配合割合とともに表1〜表4に示した。
なお、硬化開始時間は、塗布物を指触し、高粘度になり流動性が失われた状態となった時間、皮膜化時間は、塗布物を指触し、全体が硬化した(皮膜化した)状態となる時間である。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
上記表1〜表4から本発明の2液混合硬化型組成物によれば、硬化スピードのコントロールができて、塗布、貼り合わせ作業を作業性よく行なえるとともに、かなり短時間で深部まで硬化することがよくわかる。
また、比較例1、3から、成分(d)を用いなければ、リン酸の触媒硬化により極めて短時間で硬化し、実用に耐えないこと、比較例2から錫系触媒を用いた場合、硬化が遅すぎてライン作業には用いることができないことがよくわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A剤とB剤とを備え、使用直前にA剤とB剤とを混合して反応硬化させるようになっている2液混合硬化型組成物であって、
前記A剤が、加水分解性シリル基を有する化合物(a)を含み、
前記B剤が、リン酸および亜リン酸の少なくともいずれか一種である成分(b)と、アルコール性水酸基を有する化合物(c)および水の少なくともいずれか一種である成分(d)とを含むことを特徴とする2液混合硬化型組成物。
【請求項2】
A剤とB剤とが、化合物(a)100重量部に対し、成分(b)が0.1〜15重量部、成分(d)が0.1〜20重量部となるように混合される請求項1に記載の2液混合硬化型組成物。
【請求項3】
化合物(a)が、ポリイソブチレンを主骨格に含むイソブチレン系重合体である請求項1または請求項2に記載の2液混合硬化型組成物。

【公開番号】特開2008−201867(P2008−201867A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37759(P2007−37759)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(305044143)積水フーラー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】