説明

2色性微小液滴の製造方法

【課題】微小液滴をより低コストで、効率的に、しかも大量生産することができる微細流路を用いた微小液滴の製造装置を用いて、2色性微小液滴、ならびにそれから得られる2色性微粒子、を製造する方法を提供し得る。
【解決手段】微細流路基板と微細流路基板保持用ホルダーを備え;微細流路基板が、微小液滴の排出口と、この排出口に微細流路によって接続され、複数配置される微小液滴生成部と、微小液滴の排出口を中心として配置される第 1の液体の導入口と、その外側に配置される第2および3の液体の導入口と、複数の微小液滴の生成部に第1〜3の液体を供給する微細流路を有し;微細流路基板保持用ホルダーが、3個の環状流路を有する多重管構造を有し;第1の液体が連続相、第2の液体が第1分散相、第3の液体が第2分散相であり、第2および3の液体は相異なる色相を有し、かつ生成液滴が第 1分散相と第2分散相からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2色性微小液滴の製造方法に関し、さらに詳しくは微細流路を用いた、単分散性に優れる2色性微小液滴(エマルション)、ならびにそれから得られる2色性微粒子の製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、サイズの均一性(単分散性)に優れた微小液滴(エマルション)の生成手法として、微細流路の交差形状を利用したエマルションの生成手法を開発している(WO02/068104)。
【0003】
この技術により、均一サイズのエマルションを生成することができ、またエマルションの液滴径や生成速度を流路内の流れの速さを操作することで柔軟に制御できるようになった。そして、この技術は、多相エマルションの生成(特開 2004-237177号公報)、球状固体微粒子の調製(特開 2004-059802号公報、 特開 2004-067953号公報)、着色固体微粒子の調製(特開 2004-197083号公報)などに応用されている。
【0004】
しかしながら、上記の技術には、 1つの微細流路交差構造では液滴を生成できる流量に上限があり、処理できる量が少ないという問題がある。この問題を解決するために、微細流路を多数並列化させた装置の開発例がいくつか報告されている。例えば、(a)分散相分配用微細流路の層、 (b)連続相液体分配用微細流路の層および (c) 液滴生成用Y字微細流路の層、の計 3層を貼り合わせた微細流路基板が報告されている(特開 2004-243308号公報)。
【0005】
一方、本発明者らは、液滴生成用の微細流路の交差形状を多数並べた微細流路基板と各微細流路への液体の分配を制御するための階層構造を備えた微細流路基板保持用ホルダーから成る装置を開発している( WO2007/026564,Lab Chip,2008,8,287-293)。
【0006】
しかしながら、上記の微小液滴の製造装置では、微細流路基板の各流路に基板外部から分散相および連続相を供給するための複数の導入口(液体供給口)に対応して、微細流路基板保持用ホルダーにも複数の液体供給経路を設ける必要がある。この構造は以下のような問題を有する。
【0007】
まず、微細流路基板に並列化させる流路の数の増大に伴い、微細流路基板の液体供給口の数も増加させる必要があるが、それに応じて、微細流路基板保持用ホルダーの各階層にも対応する位置に 多数の液体供給経路を設ける必要がある。また、微細流路基板により密に流路を並べて単位面積あたりの流路数を増加させることが基板面積の有効利用の観点から望ましいが、これには微細流路基板に加工する液体供給口のサイズ、および対応する微細流路基板保持用ホルダーの 液体供給経路の穴サイズをより小さくする必要がある 。通常、微細流路基板保持用ホルダーの作製は機械加工によって行うが、多数の微細穴の加工は技術的に困難であり、高コストにつながる。また、微細流路基板保持用ホルダーに密に微細穴加工を行った場合には、縦穴の隙間を通る、各階層の側面からの分散相あるいは連続相の供給口の加工が困難となる。
【0008】
また、1つの微細流路基板保持用ホルダーは、液体供給口の配置が異なる微細流路基板に対して用いることができず、汎用性に欠けるのが難点である。
【0009】
そして、近年、多種多様の情報が、記録・保存・伝送・表示として世の中に出力されている。たとえば、CRT、PDP及びLCD等による表示(ディスプレイ)として、複写機、ファクシミリ及びプリンター等の電子写真画像による紙(ハードコピー)への記録・保存・表示として、また、携帯電話、DTA等による伝送・表示として、更には、PLDのような帯電性白黒着色粒子を電気泳動させて画像を表示させる等のようにその出力形態も多岐に及んでいる。
【0010】
このような状況にあって、特開昭64−42683号公報には、粒子回転型ディスプレイ装置が記載され、開示されている2色に色分けされた表示用回転粒子の製造方法として、ワックスに酸化チタンを添加し、スプレードライヤー法で造粒、分級後、平均粒径50μmの白色ワックス粒子の半球面に、カーボンブラック分散アルキッド樹脂エナメルをスプレー着色させる。また、ワックスに緑色顔料、赤色顔料、青色顔料をそれぞれ分散させ、造粒、分級して平均粒子径30〜150μmの緑色、青色、赤色のそれぞれ粒子を、RTVゴムに分散させたゴム塊を90℃に加熱しながら遠心力下に色分けさせて、冷却後に薄板状に切ったゴムから色分けされた表示用粒子を回収するものである。
【0011】
また、特開平11−352421号公報には、PLD等の表示に用いられる2色に色分けされた表示用回転粒子の製造方法として、微小ボールの半球面に真空蒸着法、スパッタ法、化学気相成長法、スピンナ塗布方法等の薄膜作製方法を用いて異なる着色層を形成させることが記載されている。
【0012】
また、特開2000−122103号公報には、マイクロカプセル内にある、回転可能な白黒2色の帯電性電気泳動性着色ボールが記載されている。その2色ボールの製造方法として、白色の二酸化チタンを充填したガラスビーズ及びプラスチックビーズを作製し、次いで、この半球面を黒色材料である硫化アンチモンとフッ化マグネシウムの混合物を真空蒸着させる方法が記載されている。
【0013】
一方、特開平11−352421号公報、特開2000−122103号公報に記載するように、予め作製した白色粒子の半球面をスパッタリングや、真空蒸着法等で黒色成分をコーテングさせる製造方法が提案されている。また、特開昭64−42683号公報に記載する製造方法は、2色相化がスパッタリングや、真空蒸着法等のようにコスト高の傾向になる製造方法ではないものの、その粒子化はスプレードライヤー法であって、周知の如くこの方法で得られる造粒物は粒度幅が大きく分級を要し、歩留まり及び粒子の単分散性も著しく劣るのが一般的である。しかも、提案されている2段工程による2色化も極めて煩雑である等から、何れの提案も未だ十分満足すべき2色性球状粒子の製造方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO02/068104
【特許文献2】特開 2004-237177号公報
【特許文献3】特開 2004-059802号公報
【特許文献4】特開 2004-067953号公報
【特許文献5】特開 2004-197083号公報
【特許文献6】特開 2004-243308号公報
【特許文献7】WO2007/026564
【特許文献8】特開昭64−42683号公報
【特許文献9】特開平11−352421号公報
【特許文献10】特開2000−122103号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Lab Chip,2008,8,287-293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記状況に鑑みて、微小液滴をより低コストで、効率的に、しかも大量生産することができる微細流路を用いた微小液滴の製造装置を用いて、2色性微小液滴、ならびにそれから得られる2色性微粒子、を製造する方法を提供することを目的とする。
【0017】
すなわち、本発明による目的は、キャラクタ材、グラフィック材、特に各種の表示デバイスに用いられる白黒の無彩色や、赤、青、緑、紫及び黄等の有彩色から選ばれる何れか2色相を有する単分散性に優れる着色粒子を、簡便な製造方法で、しかも、歩留まりよく製造できる2色性微粒子の製造方法を提供することである。また、本発明による他の目的は、PLD等のディスプレイ装置におけるディスプレイ性の観点から、例えば、電界表示セル内で、又は磁界表示セル内での着色球状粒子の反転表示性に優れる帯電性又は帯磁性に優れる2色性微粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
(1)微細流路を用いる微小液滴製造装置により微小液滴を製造する方法であり、
該装置は微細流路基板と微細流路基板保持用ホルダーを備え;
微細流路基板が、中央部に形成される微小液滴の排出口と、この微小液滴の排出口に微細流路によって接続され、この微小液滴の排出口を中心とした 1個の円形または多角形の周上に複数配置される微小液滴生成部と、前記微小液滴の排出口を中心とした円形または多角形の周上に配置される第 1の液体の導入口と、さらにその外側の円形または多角形の周上に順次配置される第 2および第3の液体の導入口と、前記複数の微小液滴の生成部に前記第 1〜第 3の液体を供給する微細流路を有し;
微細流路基板保持用ホルダーが、微小液滴の排出口を中心軸とし、前記第 1〜第 3の液体を微細流路基板の各液体の導入口に均等に流量配分するための 3個の円環状または多角環状流路を有する多重管構造を有し;ここで、
第1の液体が連続相であり、第2の液体が第1分散相、第3の液体が第2分散相であり、第2および第3の液体は相異なる色相を有し、かつ生成液滴が第 1分散相と第2分散相から構成されるようにすることを特徴とする2色性微小液滴の製造方法。
(2)微小液滴生成部またはそれより手前の流路において、第1分散相と第2分散相が合流し、ついで微小液滴生成部において、合流した第1分散相と第2分散相の両側から連続相が合流するようにして2色性微小液滴が形成される上記(1)に記載の2色性微小液滴の製造方法。
(3)合流した第1分散相と第2分散相が連続相と交差して合流し、2色性微小液滴が形成される上記(1)に記載の2色性微小液滴の製造方法。
(4)微細流路構造体保持用ホルダーが、前記微細流路基板の下部に配置される、第 2分散相のホルダーへの導入口を備えた第 4部品と、第 1分散相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第4部品と組み合わせることで第2分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第3部品と、連続相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第 3部品と組み合わせることで第1分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第2部品と、生成液滴のホルダーからの排出口を備え、且つ前記第2部品と組み合わせることで連続相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成し、かつ中央に微小液滴の微細流路基板からの排出口を有する円筒または多角筒を備える第 1部品を具備する上記(1)または(2)に記載の2色性微小液滴の製造方法。
(5)第1分散相である第2の液体および第2分散相である第3の液体が、硬化性液体である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の2色性微小液滴の製造方法。
(6)硬化性液体が、熱または光硬化性である上記(5)に記載の2色性微小液滴の製造方法。
(7)第2および第3の液体が、相異なる帯電性または帯磁性である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の2色性微小液滴の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の2色性微小液滴を硬化させて微粒子を得ることを特徴とする2色性微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、微小液滴をより低コストで、効率的に、しかも大量生産することができる微細流路を用いた微小液滴の製造装置を用いて、2色性微小液滴、ならびにそれから得られる2色性微粒子、を製造する方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に用いられる微小液滴の製造装置の微細流路構造体(チップ)の上面図。
【図2】微細流路における2色性微小液滴生成の1例を示す模式部分拡大図。
【図3】本発明の微小液滴の製造装置の微細流路御構造体保持用ホルダーの断面図。
【図4】本発明の微細流路構造体保持用ホルダーの分解図。
【図5】連続相と2つの分散相の交差流路における2色性微小液滴生成の模式図。
【図6】連続相と2つの分散相の交差流路における2色性微小液滴生成の模式図。
【図7】本発明の具体例において液滴が生成される様子を示す図。
【図8】本発明の具体例において生成された液滴の粒径分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の2色性微小液滴の製造方法においては、微細流路を用いる微小液滴製造装置が用いられる。その装置は微細流路基板と微細流路基板保持用ホルダーを備え、微細流路基板が、中央部に形成される微小液滴の排出口と、この微小液滴の排出口に微細流路によって接続され、この微小液滴の排出口を中心とした 1個の円形または多角形の周上に複数配置される微小液滴生成部と、微小液滴の排出口を中心とした円形または多角形の周上に配置される第 1の液体の導入口と、さらにその外側の円形または多角形の周上に順次配置される第 2および第3の液体の導入口と、複数の微小液滴の生成部に前記第 1〜第 3の液体を供給する微細流路を有する。
【0022】
一方、微細流路基板保持用ホルダーは、微小液滴の排出口を中心軸とし、前記第 1〜第 3の液体を微細流路基板の各液体の導入口に均等に流量配分するための 3個の円環状または多角環状流路を有する多重管構造を有する。
【0023】
好適には、微細流路構造体保持用ホルダーは、微細流路基板の下部に配置される、第 2分散相のホルダーへの導入口を備えた第 4部品と、第 1分散相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第4部品と組み合わせることで第2分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第3部品と、連続相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第 3部品と組み合わせることで第1分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第2部品と、生成液滴のホルダーからの排出口を備え、且つ第2部品と組み合わせることで連続相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成し、かつ中央に微小液滴の微細流路基板からの排出口を有する円筒または多角筒を備える第 1部品を具備する。
【0024】
微細流路の分岐構造としては、特に制限されないが、好適には十字路、T字路もしくはY字路から選ばれる。微細流路の大きさは、目的に応じて決定しうるが、通常0.1〜1000μm程度、好ましくは10〜500μm程度から選ばれる。微細流路を形成する材料の材質は、たとえばプラスチック、セラミック、金属等のいずれでもよく、たとえば微細流路の壁面を疎水性とする場合にはアクリル樹脂、シリコーン樹脂等が好適であり、一方、親水性にする場合には石英ガラス、シリコン、ホウケイ酸ガラス(たとえば「パイレックス」(商標))等が好適である。微細流路を形成する材料の形状、大きさは目的とする用途等により適宜選定し得、たとえば、加工した流路を有する板状体(たとえば〜数センチ角)が挙げられる。
【0025】
図 1 は、本発明に用いられる微小液滴の製造装置の微細流路構造体(チップ)の上面図を示す。その微細流路チップには、微小液滴の排出口を中心として、最も外側に36 箇所の第2 分散相液体の導入口を、その内側に36 箇所の第1 分散相液体の導入口を、その内側に72箇所の連続相液体の導入口を、微小液滴の排出口を中心とした同心円上の位置にそれぞれ配置し、連続相液体、第1 分散相液体および第2 分散相液体の分岐流路と、2 色性微小液滴が生成される72 箇所の十字流路からなる2 色性微小液滴生成部を最も内側に形成して、微細流路構造体が構成されている。すなわち、周縁部から第1 分散相液体と第2 分散相液体を合流させて形成した2 色並行流に対し、両脇から連続相液体を合流させて、72 箇所の十字路で2 色性微小液滴を生成し,その生成された2 色性微小液滴は、中心の2 色性微小液滴の排出口に導かれ、排出されることになる。
【0026】
図2は、微細流路における2色性微小液滴生成の1例を示す模式部分拡大図であり、1は第1分散相、2は第2分散相、3は連続相であり、連続相液体と分散相液体が合流した後に、2色性微小液滴が微小液滴生成部で生成されている。
【0027】
次に、本発明の実施例を示す微細流路を用いた微小液滴の製造装置の、微細流路構造体保持用ホルダーの多重管構造について、微小液滴の製造装置の微細流路御構造体保持用ホルダーの断面図である図3、およびその微細流路構造体保持用ホルダーの分解図である図4とともに詳細に説明する。4は、チップにおける、微小液滴の排出口である。
【0028】
ここでは、窓付カバー5、微細流路基板の位置合わせ用部品8の下部に、微細流路基板6の中心に位置する微小液滴の排出口4を中心軸として、円管状の壁を隔てたその外側に第2および第1分散相供給用の円環状流路を有する、第4部品2’および 第3部品1’、さらに円環状の壁を隔てたその外側に連続相供給用の円環状流路が設けられた第2部品3’、さらには微小液滴の排出口7を有する第1部品7’、が配置された多重管構造を、複数の円筒部品を互いにはめ合わせる形で設けている。部品を組み合わせた状態では、分散相液体および連続相液体の供給部品の中心に位置する円筒の内壁と、その円筒の内側に位置し、下層部品から伸びている円筒の外壁の間には、円環状のすきまが生じるように設計されており、分散相液体あるいは連続相液体が通れるようになっている。分散相液体が流れる円環状流路および連続相液体が流れる円環状流路は微細流路基板まで達し、微細流路基板上の異なる同心円状に設けられた、分散相液体あるいは連続相液体の導入口に接続するように構成されている。ここでは、チップ位置合わせ部品が、流路チップの下に用いられているが、省略することができる。
【0029】
このような多重管構造により、微細流路構造体保持用ホルダーに微細穴加工を多数施すことなく、微細流路基板上の分散相液体導入口あるいは連続相液体導入口に、それぞれ均等に流量を分配することが可能となる。これにより、より容易かつ低コストに微小液滴製造装置を提供することができる。また、微細流路基板上の液体導入口は、微細流路基板保持用ホルダーの円環状流路に位置が合うよう配置されていれば良く、微細流路基板上の液体導入口の個数は問わない。すなわち、液体導入口が配置されている円とホルダーの円環流路の位置が合えば、 1つのホルダーを異なる流路形状および異なる液体導入口個数を有するさまざまな微細流路基板に使用することができ、汎用性の大幅な向上が見込まれる。
【0030】
そして、本発明の2色性微小液滴の製造方法においては、第1の液体が連続相であり、第2の液体が第1分散相、第3の液体が第2分散相であり、第2および第3の液体は相異なる色相を有し、かつ生成液滴が第 1分散相と第2分散相から構成されるようにする。
【0031】
また、本発明に2色性微小液滴は、たとえば無彩色の白、黒、又は有彩色の赤、青、緑、紫及び黄から選ばれる何れかの2色相であるように形成されており、好適には、微小液滴半球面が、それぞれ異なる着色がなされている。本発明の微小液滴は2色相が分相されているので、予め帯電的又は帯磁的にそれぞれ2極性に調整させることができ、容易に、帯電的に又は帯磁的に2極性の微小液滴を形成させることができる。
【0032】
本発明方法においては、たとえば、微小液滴生成部またはそれより手前の流路において、第1分散相と第2分散相が合流し、ついで微小液滴生成部において、合流した第1分散相と第2分散相の両側から連続相が合流するようにして2色性微小液滴が形成される。たとえば、前述の図2、または図5(1は第1分散相、2は第2分散相、3は連続相である)に示されるように、連続相液体と分散相液体が合流した後に、2色性微小液滴が微小液滴生成部で生成されているに示されるとおりである。
【0033】
また、たとえば、図6に示されるように、合流した第1分散相1と第2分散相2が連続相3と交差して合流し、2色性微小液滴を形成することもできる。
【0034】
本発明方法において、連続相を形成する液体は、有機化合物または水であり、一方
分散相を形成する液体は、硬化性液体である。有機化合物としては、有機相としては、特に制限されないが、好適にはデカン、オクタン等のアルカン類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、オレイン酸等の脂肪酸類等が挙げられる。
【0035】
硬化性液体としては、熱または光等で硬化し得る液体であれば特に制限されない。たとえば、公知の重合性モノマー、オリゴマーまたはポリマーが挙げられ、好適には後述するような(メタ)アクリレート系モノマー、スチレン系モノマー、等が挙げられる。第1分散相と第2分散相は、後述するように相異なる着色剤を含有し、それらの分散相を構成する硬化性液体は、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
分散相および連続相の組み合わせは、通常O/W、O/O型、W/O型とすることができる。流路中で、2つの分散相は層流で連続相と合流し、順次球状の微小液滴に変形され、同時または時間差で微小液滴が硬化されて2色微粒子が形成される。
【0037】
分散相および連続相の流速は、微細流路の大きさ、液体の種類等にもよるが、通常1μL〜1000mL/時間程度から選ばれる。
【0038】
本発明における分散相には、2色に色相を分相させるそれぞれ異なる着色剤が添加され、必要に応じて帯電または帯磁のための添加剤も用いられる。着色剤としては、無彩色の白および黒、又は有彩色の赤、青、緑、紫、黄等から選ばれる、2色の分相色相を挙げることができる。このような色相を形成させる染顔料としては、特に制限されず、油溶性等の各種染料、または各種の無機・有機顔料等を使用することができる。これらの染料及び顔料は、硬化性成分への分散性、得られる2色性微粒子の用途で所望する色調等に応じて適宜選んで使用することができる。着色剤は、一方の分散相のみに使用することもできる。
【0039】
これら着色剤としての染顔料の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、硬化成分100重量部当たり、0.1〜10重量部程度の範囲で適宜使用される。
【0040】
また、本発明において、この2色に分相させた硬化性成分に、帯電付与剤を用いて、互いに異なる正負に帯電する成分で形成させることができる。あるいは、重合性モノマーとして、その官能基又は置換基の種類によって、既に上述する本発明における帯電性は、それぞれ(−)帯電性と(+)帯電性を示す傾向にあるモノマー種を挙げることができる。たとえば、(−)帯電性の傾向にある重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有重合性化合物類、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基含有重合性化合物類、メチルスチレン等のスチレン系モノマー、等が挙げられる。一方、(+)帯電性の傾向にある重合性モノマーとして、例えば、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体類等が挙げられる。
【0041】
また、本発明においては、磁性体粉を分散させることにより、2色相に分相させた微小液滴を、互いに異なる正負に帯磁させることができる。
【0042】
本発明方法により得られる2色性微小液滴は、熱、UV等の光、等により硬化させて2色性微粒子を得ることができる。
本発明において、UV照射下に重合硬化させる場合には、アセトフェノン類等の光重合開始剤を使用することができ、加熱下に重合硬化させる場合、有機パーオキサイド類等の熱分解型の重合開始剤も使用することができる。
【0043】
本発明方法により得られる2色性微粒子は、PLD等のディスプレイ装置において、たとえば、電界表示セル内で、または磁界表示セル内での着色球状粒子の反転表示性に優れる帯電性又は帯磁性に優れる2色性微粒子として有用である。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(具体例1)
図1に示すような微細流路チップを,ガラス基板(合成石英)への加工により作製した。ドライエッチングにより基板上に矩形断面を有する微細溝(幅100 μm,深さは全域 100 μm)を加工し, 30 mm × 30 mmに切断した。液体供給口(直径 0.5 mm,144箇所)および排出口(直径 7 mm, 1箇所)用に貫通穴加工をほどこした同一面積の別基板と熱溶着による貼り合わせを行い,微細流路チップを形成した。これを機械加工によって作製したステンレス(SUS304)製のホルダーに図2,3 のようにセットして用いた。ホルダーは、合計3つの同心円状の円環状流路を有し、3つの円環の幅はいずれも0.5mmとした。第1 分散相として1, 6 ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業)を,第2 分散相として上記1,6 ヘキサンジオールジアクリレートに油溶性染料(Oil Red O, シグマ・アルドリッチ),連続相としてポリビニルアルコール(日本合成化学製GL-03)2%水溶液を用いた。送液にはシリンジポンプ(KD Scientific 社,KDS200)を第1 分散相,第2 分散相,連続相にそれぞれ1 台ずつ用いた。第1 分散相の流量を36 mL/hr,第2 分散相の流量を36 mL/hr,連続相の流量を576 mL/hr として送液を行ったところ,チップ内部の72 箇所の液滴生成部全てにおいて均一なサイズの二色Janus 液滴が規則正しい時間周期で連続生成される様子を図7のように観察することができた。得られた液滴の平均径は140.8 μm,変動係数は1.4%であった(図8)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、微小液滴をより低コストで、効率的に、しかも大量生産することができる微細流路を用いた微小液滴の製造装置を用いて、2色性微小液滴、ならびにそれから得られる2色性微粒子、を製造する方法を提供し得る。得られる2着色球状粒子は、好適には二色相が分相されているので、予め帯電的又は帯磁的にそれぞれ2極性に調整させることができ、容易に、帯電的に又は帯磁的に2極性の2着色球状ポリマー粒子を形成させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 第1分散相
2 第2分散相
3 連続相
4 排出口
5 窓付カバー
6 微細流路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細流路を用いる微小液滴製造装置により微小液滴を製造する方法であり、
該装置は微細流路基板と微細流路基板保持用ホルダーを備え;
微細流路基板が、中央部に形成される微小液滴の排出口と、この微小液滴の排出口に微細流路によって接続され、この微小液滴の排出口を中心とした 1個の円形または多角形の周上に複数配置される微小液滴生成部と、前記微小液滴の排出口を中心とした円形または多角形の周上に配置される第 1の液体の導入口と、さらにその外側の円形または多角形の周上に順次配置される第 2および第3の液体の導入口と、前記複数の微小液滴の生成部に前記第 1〜第 3の液体を供給する微細流路を有し;
微細流路基板保持用ホルダーが、微小液滴の排出口を中心軸とし、前記第 1〜第 3の液体を微細流路基板の各液体の導入口に均等に流量配分するための 3個の円環状または多角環状流路を有する多重管構造を有し;ここで、
第1の液体が連続相であり、第2の液体が第1分散相、第3の液体が第2分散相であり、第2および第3の液体は相異なる色相を有し、かつ生成液滴が第 1分散相と第2分散相から構成されるようにすることを特徴とする2色性微小液滴の製造方法。
【請求項2】
微小液滴生成部またはそれより手前の流路において、第1分散相と第2分散相が合流し、ついで微小液滴生成部において、合流した第1分散相と第2分散相の両側から連続相が合流するようにして2色性微小液滴が形成される請求項1に記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項3】
合流した第1分散相と第2分散相が連続相と交差して合流し、2色性微小液滴が形成される請求項1に記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項4】
微細流路構造体保持用ホルダーが、
前記微細流路基板の下部に配置される、第 2分散相のホルダーへの導入口を備えた第 4部品と、
第 1分散相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第4部品と組み合わせることで第 2分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第3部品と、
連続相のホルダーへの導入口を備え、且つ前記第 3部品と組み合わせることで第1分散相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成する第2部品と、
生成液滴のホルダーからの排出口を備え、且つ前記第2部品と組み合わせることで連続相を微細流路基板に供給するための円環状または多角環状流路を形成し、かつ中央に微小液滴の微細流路基板からの排出口を有する円筒または多角筒を備える第 1部品を具備する請求項1または2に記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項5】
第1分散相である第2の液体および第2分散相である第3の液体が、硬化性液体である請求項1〜4のいずれかに記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項6】
硬化性液体が、熱または光硬化性である請求項5に記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項7】
第2および第3の液体が、相異なる帯電性または帯磁性である請求項1〜6のいずれかに記載の2色性微小液滴の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の2色性微小液滴を硬化させて微粒子を得ることを特徴とする2色性微粒子の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20217(P2012−20217A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158992(P2010−158992)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】