説明

2軸スクリューポンプ

【課題】固形物を含有する被移送物を移送するにあたり固形物を破砕することのない2軸スクリューポンプが望まれている。
【解決手段】2軸スクリューポンプ1は、非接触に噛合して回転する螺旋歯21a,21bを有する一対のポンプスクリュー5a,5bと、一対のポンプスクリュー5a,5bを収容するポンプ室3を内部に形成したポンプケーシング2と、ポンプスクリュー5a,5bの片端をそれぞれ回動自在に支承する駆動部4とを備え、ポンプ室3をはさんで駆動部4とは反対側に取入口10を有し、ポンプスクリュー5a,5bの回転駆動により、取入口10からポンプ室3に被移送物を取り入れて移送するポンプであって、一対の螺旋歯21a,21bにおける取入口10と対面する端面および外周面を切り欠いて、取入口10に向かうほど縮径するテーパ面22a,22bを螺旋歯21a,21bに形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半固形ないし高粘度液状の被移送物を剪断力を加えることなく移送する2軸スクリューポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の2軸スクリューポンプを図6、図7に示す。各図に示した2軸スクリューポンプ51は、内部にポンプ室3が形成されたポンプケーシング2と、ポンプケーシング2に連結された駆動部4とを備えている。ポンプケーシング2の前面開口部には、開口部12を有する口金11がボルト止めされている。ポンプ室3内には一対のポンプスクリュー55a,55bが収容されている。ポンプスクリュー55a,55bは軸部6a,6bの自由端7,7側に嵌装され、それぞれ取付板8およびボルト9で固着されている。ポンプスクリュー55a,55bは、軸部6a,6bが挿通される筒胴部20,20と、筒胴部20,20の外周に螺旋状に形成された螺旋歯61a,61bとから成っている。ポンプケーシング2において、ポンプスクリュー5a,5bの自由端7,7の前方空間は、被移送物をポンプ室3内に取り入れるための取入口10となっている。ポンプスクリュー55a,55bの螺旋歯61a,61bにおける外周面23,23は、ポンプ室3の内周面に平行となるように形成されている。螺旋歯61a,61bの回転方向の最先端部分は、それぞれスクリュー半径方向に沿う回転先端面25a,25bとなっている。取入口10と対面する螺旋歯61a,61bの端面24,24は、回転先端面25a,25b、およびそれぞれの外周面23,23とつながっている。
ポンプ室3と駆動部4間の吐出側空間18を臨む位置のポンプケーシング2の上面に吐出口19が設けられている。ポンプスクリュー55a,55bの軸部6a,6bの片端は駆動部4内の軸受(図示省略)に回動自在に支承されていて、互いに噛合する同期歯車17a,17bにより逆向きに同期回転する。
【0003】
上記した2軸スクリューポンプ51においては、モータMの回転駆動により、ポンプスクリュー55aとポンプスクリュー55bが同期回転し、口金53の開口部12より供給された被移送物が取入口10からポンプスクリュー55a,55bの自由端7,7側に取り込まれる。このように取り込まれた被移送物はポンプスクリュー55a,55bのポンプ作用によりポンプ室3内を圧送され吐出側空間18を経て吐出口19から吐出されるようになっている。この2軸スクリューポンプ51によれば、いかなる回転角度においても螺旋歯61a,61bの噛合面間に一定の微細隙間があって、螺旋歯61a,61bが非接触となるようになっている。すなわち、この2軸スクリューポンプ51は螺旋歯61a,61b間の微細隙間から洩れないほどに粘度の高い被移送物の移送に適しており、特に被移送物に剪断力を与えないため、剪断力により変質しやすい食品の移送に好適であることで知られている。
かかる構造に関連した2軸スクリューポンプは、例えば下記の特許文献1,2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−276285号公報
【特許文献2】特開2005−105910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば固形物を含有する粘度の高い食品を上記の2軸スクリューポンプ51によって移送する場合を考える。この場合、図7および図8に示すように、ポンプ室3内の左右中央部の上下にそれぞれ形成されている内周突部26と、図7中で2点鎖線の矢印Jで示すように回転してきた螺旋歯61bの回転先端面25b(図7中の2点鎖線で示す)との間に、固形物Fが挟まれて破砕されることがある。このような現象は、回転してきた螺旋歯61aの回転先端面25aと内周突部26と間でも生じ得る。
【0006】
あるいは、図9および図10に示すように、回転してきた螺旋歯61bの回転先端面25bと、ポンプスクリュー55aの筒胴部20との間に、固形物Fが挟まれて破砕されたり、回転してきたポンプスクリュー55aの回転先端面25aとポンプスクリュー55bの筒胴部20との間に挟まれて破砕されることもある。
上記のように固形物が破砕されると、破砕された固形物小片が食品中に拡散して食感を著しく損なったり、食品とは質の異なる固形物の成分が食品中に拡がって食品の味を変えることがあり、場合によっては商品として使い物にならないことがある。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、固形物を含有する被移送物を移送するにあたり固形物を破砕することのない2軸スクリューポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る2軸スクリューポンプは、非接触に噛合して回転する螺旋歯をそれぞれ有する一対のポンプスクリューと、該一対のポンプスクリューを収容するポンプ室を内部に形成したポンプケーシングと、一対のポンプスクリューの片端をそれぞれ回動自在に支承する駆動部とを備えるとともに、ポンプ室をはさんで駆動部とは反対側に取入口を有し、前記一対のポンプスクリューの回転駆動により、取入口からポンプ室に被移送物を取り入れて駆動部側に移送する2軸スクリューポンプにおいて、一対のポンプスクリューの螺旋歯における取入口と対面する端面および該端面につながる外周面を切り欠いて、取入口に向かうほど縮径するテーパ面を前記一対の螺旋歯に形成した構成にしてある。
【0009】
また、前記構成において、ポンプスクリューの回転軸心とテーパ面との成す角度が、30度以上75度以下に設定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る2軸スクリューポンプによれば、一対のポンプスクリューの螺旋歯における取入口と対面する端面および該端面につながる外周面を切り欠いて、取入口に向かうほど縮径するテーパ面が一対の螺旋歯に形成されているので、被移送物中の固形物は螺旋歯のテーパ面とポンプ室の内周壁との間の隙間に逃げることができ、そのままポンプ室内に案内される。また、従来技術において螺旋歯の回転方向の先端に存在していた回転先端面はテーパ面を形成した際になくなるから、従来の回転先端面と、ポンプ室の内周突部または相方のポンプスクリューとの間に挟まれるということなくポンプ室内に送られる。これにより、固形物を含有する被移送物を移送する際に固形物の破砕を防ぐことができる。
【0011】
また、ポンプスクリューの回転軸心とテーパ面との成す角度が、30度以上75度以下に設定されているものでは、固形物の破砕を確実に防ぐとともに、ポンプの一定以上のシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る2軸スクリューポンプを示す側面図であり図2におけるA−A線矢視断面図、図2は前記2軸スクリューポンプの平断面図、図3は図1におけるB−B線矢視断面図である。但し、図6から図10に示した従来の2軸スクリューポンプ51と同一の構成要素には、同一の符号を付すとともにその詳細な説明を省略することがある。
【0013】
各図において、この実施形態に係る2軸スクリューポンプ1は、ポンプ室3が内部に形成された前後方向筒状のポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の後端に連結された駆動部4を備えている。ポンプ室3は正面から見て左右中央部が上下内向きにくびれた繭形に形成されている。ポンプ室3内には一対のポンプスクリュー5a,5bが収容されている。ポンプスクリュー5a,5bは軸部6a,6bに装着され、それぞれの自由端7,7側において取付板8,8とボルト9,9で固定されている。ポンプケーシング2内におけるポンプ室3と駆動部4との間は吐出側空間18となっている。この吐出側空間18を臨む位置のポンプケーシング2の上面に、被移送物を吐出するための吐出口19が形成されている。
ポンプケーシング2において、ポンプスクリュー5a,5bの自由端7,7の前方空間、すなわちポンプ室3をはさんで駆動部4とは反対側の空間は、被移送物をポンプ室3内に取り入れるための取入口10となっている。
ポンプケーシング2の前面開口部は、開口部12を有する口金11がボルト止めされる。
【0014】
駆動部4はハウジング13とカバー板14とから成る箱体を備えている。カバー板14の前側端面にはポンプケーシング2の筒端面がボルトなどで連結されている。ハウジング13内にはコロ軸受15とコロ軸受16が配備されている。これらのコロ軸受15,16はポンプスクリュー5aの軸部6aの片端を回動自在に支承している。コロ軸受15としては例えば円錐コロ軸受が使用されている。ポンプスクリュー5bが取り付けられている軸部6bの片端も別のコロ軸受15,16に回動自在に支承されている。ポンプスクリュー5aの軸部6aには同期歯車17aが固着されており、ポンプスクリュー5bの軸部6bには同期歯車17aと噛合する同期歯車17bが固着されている。これら同期歯車17aと同期歯車17bとの同期噛合により、一対のポンプスクリュー5a,5bが非接触に噛合して回転する。この場合、例えばポンプスクリュー5aの軸部6aがモータMの駆動軸と連結されている。
【0015】
そして、ポンプスクリュー5aは、図4に示すように、軸部6aを挿通される筒胴部20と、筒胴部20の外周に螺旋状に形成された螺旋歯21aとから成っている。この螺旋歯21aにおける取入口10側の先端部分には、取入口10に向かうほど縮径するテーパ面22aが形成されている。この場合、テーパ面22aと回転軸心Xaとの成す角度θは例えば45度に設定されている。
一方、ポンプスクリュー5bは、その螺旋歯21bが前記したポンプスクリュー5aの螺旋歯21aの螺旋方向とは逆向きに形成されていること以外、ポンプスクリュー5aと同様に構成されている。これらの螺旋歯21a,21bは、いかなる回転角度においても噛合面間に一定の微細隙間があって相互に非接触となっている。
このポンプスクリュー5bにおいても、螺旋歯21bにおける取入口10側の先端部分に、取入口10に向かうほど縮径するテーパ面22bが形成されている。この場合、テーパ面22bと回転軸心Xbとの成す角度θも例えば45度に設定されている。螺旋歯21a,21bの螺旋ピッチによるが、この実施形態において角度θ=45度の場合は、1周と少しの螺旋歯21a,21bにテーパ面22a,22bが形成される。
【0016】
これらポンプスクリュー5a,5bのテーパ面22a,22bは、例えば従来技術におけるポンプスクリュー55aの螺旋歯61a,61b(図6他参照)を回転軸心Xa,Xb回りに回転させながら、点Gを揺動中心とする切削刃、または点Gを通過する45度の線に沿って移動する切削刃(いずれの刃も図示省略)を当てることにより、螺旋歯61a,61bにおいて取入口10に対面した端面24、およびこの端面24につながっている取入口10近傍の外周面23を切り欠いて形成することができる。これにより、螺旋歯61a,61bが保有していた回転先端面25a,25bも切除される。
尚、上記した各構成要素の材質はスクリューポンプに使用されるものであれば特に限定されない。この構成の場合、被移送物が粘度の高い食品であることから、少なくとも、ポンプケーシング2、ポンプスクリュー5a,5b、軸部6a,6b、取付板8、ボルト9、口金11、カバー板14はステンレス鋼で構成されている。
【0017】
上記した構成の2軸スクリューポンプ1の作用を、図1〜図5を用いて説明する。モータMの回転駆動により、ポンプスクリュー5aが一方向(図3の矢印Ra方向)に回転すると、同期歯車13a,13bを介して動力伝達されたポンプスクリュー5bが逆回り(図3の矢印Rb方向)に同期回転する。そこで、被移送物が口金11の開口部12からポンプケーシング2内の取入口10に供給されると、被移送物はポンプスクリュー5a,5bのポンプ作用により取入口10からポンプ室3内に取り込まれる。
【0018】
この場合、取入口10近傍の螺旋歯21a,21bの外周面は、取入口10に向かうほど縮径するテーパ面22a,22bと成っている。且つ、螺旋歯21a,21bには回転先端面25a,25b(図7他参照)がない。従って、被移送物中に含まれている固形物Fは、被移送物中の固形物は螺旋歯21a,21bのテーパ面22a,22bとポンプ室3の内周壁との間の隙間に逃げることができ、そのままポンプ室3内に案内される。また、従来の回転先端面25a,25bと、ポンプ室3の内壁、内周突部26、または相方の筒胴部20との間に挟まれることがなく、支障なくポンプ室3内に送られる。これにより、固形物Fが破砕されることがなく、固形物Fを含有する被移送物を送ることができる。前記のようにポンプ室3内に取り込まれて移送(図2の矢印E方向)された被移送物は、ポンプケーシング2内の吐出側空間18に達して吐出口19から吐出される。
【0019】
尚、上記した実施形態では、ポンプスクリューの軸部の一端側を軸受などで支承するとともに他端側を自由端として軸支しない例を示したが、本発明はそれに限定されない。例えば、ポンプスクリューの軸の両端を回動自在に支承した両側軸受式のポンプにも適用可能である。
【0020】
上記では、ポンプスクリューの回転軸心とテーパ面との成す角度θを45度に設定したが、本発明では特に限定されない。但し、ポンプスクリューの回転軸心とテーパ面との成す角度は30度以上75度以下に設定することは好ましい。螺旋歯の螺旋ピッチによるが、テーパ面の角度が30度を下回ると、固形物の破砕を防ぎやすくなる反面、螺旋歯の何周分にもわたってテーパ面が形成されることとなり、ポンプ室内周面との間のシール性が低下して移送圧力が低くなりポンプ効率が低下しやすくなるという不具合がある。逆に、前記の角度が75度を超えると、ポンプのシール性は上がるが、テーパ面により固形物をポンプ室内に案内しにくくなり、固形物の破砕を完全には防げなくなる。
【0021】
また、本発明の2軸スクリューポンプにより好適に移送される、固形物を含有する被移送物としては、例えば豆入りの溶融チョコレートなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る2軸スクリューポンプを示す側面図であり図2におけるA−A線矢視断面図である。
【図2】前記2軸スクリューポンプの平断面図である。
【図3】図2におけるB−B線矢視断面図である。
【図4】一方のポンプスクリューの平面図である。
【図5】図3を斜めに見上げた概略斜視図である。
【図6】従来の2軸スクリューポンプの一部断面を含む平面図である。
【図7】図6におけるC−C線矢視断面図である。
【図8】図7を斜めに見降ろした概略斜視図である。
【図9】図7に対応した別の状態説明図である。
【図10】図9を斜めに見降ろした概略斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 2軸スクリューポンプ
2 ポンプケーシング
3 ポンプ室
4 駆動部
5a,5b ポンプスクリュー
6a,6b 軸部
10 取入口
21a,21b 螺旋歯
22a,22b テーパ面
23 外周面
24 端面
F 固形物
Xa,Xb 回転軸心
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触に噛合して回転する螺旋歯をそれぞれ有する一対のポンプスクリューと、該一対のポンプスクリューを収容するポンプ室を内部に形成したポンプケーシングと、一対のポンプスクリューの片端をそれぞれ回動自在に支承する駆動部とを備えるとともに、ポンプ室をはさんで駆動部とは反対側に取入口を有し、前記一対のポンプスクリューの回転駆動により、取入口からポンプ室に被移送物を取り入れて駆動部側に移送する2軸スクリューポンプにおいて、
一対のポンプスクリューの螺旋歯における取入口と対面する端面および該端面につながる外周面を切り欠いて、取入口に向かうほど縮径するテーパ面を前記一対の螺旋歯に形成したことを特徴とする2軸スクリューポンプ。
【請求項2】
ポンプスクリューの回転軸心とテーパ面との成す角度が、30度以上75度以下に設定されている請求項1に記載の2軸スクリューポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−13951(P2010−13951A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172614(P2008−172614)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(391051027)伏虎金属工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】