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2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュール
説明

2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュール

【課題】寸法安定性及び耐加水分解性に優れた2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂シートを製膜する工程と樹脂シートを長手方向に縦延伸する工程と縦延伸後の樹脂シートを幅方向に横延伸する工程とを含み、横延伸工程は、縦延伸後の樹脂シートを予熱する工程と予熱後の樹脂シートを幅方向に横延伸する工程と延伸して得たフィルムを熱固定する工程とフィルムの緊張を緩和する工程とフィルムを冷却する工程とを含み、熱固定工程及び/又は熱緩和工程は、把持部材による把持間隔を狭めながらフィルムをその長手方向に [{(A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100で表される収縮率を3〜8%、収縮処理時間を10〜60秒として収縮処理し、横延伸終了時点から最高到達温度に至る迄の膜面温度の平均上昇速度を0.6〜4.5℃/秒とする〔A,C:隣接把持部材間を狭める前、後の把持間隔、B:把持部材長さ〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムの特性の1つとして、寸法安定性に優れることがしばしば望まれている。
樹脂フィルムの代表的なものとして挙げられるポリエステルフィルムは、近年、電気絶縁用途や光学用途などの種々の用途に適用されている。電気絶縁用途としては、特に太陽電池の裏面保護用シート(いわゆるバックシート)等の太陽電池用途への応用が注目されている。
【0003】
この太陽電池用途に用いられるポリエステルフィルムにおいても、熱収縮しにくい寸法安定性に優れたフィルムが求められている。
【0004】
寸法安定性を改良する例として、ポリエステルフィルムの延伸処理後、長手方向、幅方向ともに延伸張力を緩めることで、熱収縮率を小さくすることが知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、クリップ間隔を狭くすることで長手方向にリラックス処理を施す方法(例えば、特許文献3〜4参照)や、フィルムを把持するクリップの間隔を横方向に拡張しつつ長手方向には縮小する方法(例えば、特許文献5参照)などが開示されている。
【0005】
ところで、ポリエステルは通常、その表面にカルボキシ基や水酸基が多く存在しており、水分が存在する環境では加水分解を起こしやすく、経時で劣化する傾向がある。太陽電池モジュールが一般に用いられる環境は、屋外等の常に風雨に曝されるような環境であり、加水分解を起こし易い環境である。そのため、ポリエステルを太陽電池用途に適用するときには、ポリエステルの加水分解性が抑制されていることは重要な性状の一つである。
【0006】
上記との関連において、例えば、耐加水分解性に優れたポリエステルを得るため、アルミニウム及びその化合物を第1金属含有成分として含むと共にリン化合物を共存させたポリエステル重合触媒を用いたポリエステルの製造方法及びポリエステルフィルムが開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−130594号公報
【特許文献2】特開2001−212919号公報
【特許文献3】特開2007−276190号公報
【特許文献4】特開平6−23838号公報
【特許文献5】特開2010−240976号公報
【特許文献6】国際公開第2002/022707号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術に基づく方法では、寸法安定性と耐加水分解性とのいずれか一方のみを解決し得るに過ぎず、寸法安定性と耐加水分解性とを同時に満足することができる技術は提案されるに至っていない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、寸法安定性及び耐加水分解性に優れた2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法、長期での耐久性能に優れた太陽電池用バックシート、並びに長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出を行ない、キャスティングドラム上で冷却して熱可塑性樹脂シートを製膜するシート製膜工程と、製膜された熱可塑性樹脂シートを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを把持部材で把持して長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含むと共に、
横延伸工程は、縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを延伸可能な温度に予熱する予熱工程と、予熱された熱可塑性樹脂シートを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸工程と、縦延伸及び横延伸により得られた熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、結晶化させて熱固定する熱固定工程と、熱固定された熱可塑性樹脂フィルムの緊張を緩和し、残留歪みを除去する熱緩和工程と、熱緩和後の熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却工程とを含み、
熱固定工程及び熱緩和工程の少なくとも一方は、隣り合う把持部材の把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、その長手方向に下記式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となる範囲で収縮処理し、
熱固定工程及び熱緩和工程での合計の収縮処理時間は10秒以上60秒以下であり、
延伸工程での横延伸の終了時点から、収縮率を満たすように収縮処理を行なう区間でフィルム膜面温度が最高到達温度に達するまでのフィルム膜面温度の平均上昇速度が、0.6℃/秒以上4.5℃/秒以下の範囲である、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
[{ (A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100 ・・・式(1)
【0011】
式(1)において、Aは、隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔(mm)を表し、Bは、把持部材のフィルム長手方向における長さ(mm)を表し、Cは、隣接する把持部材間を狭めた後の把持間隔(mm)を表す。
【0012】
<2> 把持部材の長さBと、隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔Aとは、下記式(2)で表される関係式を満たす<1>に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
0.06≦ A/(A+B) ≦0.15 ・・・式(2)
<3> 把持部材の長さBが、100mm以上140mm以下である<1>又は<2>に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
<4> 熱固定工程又は熱緩和工程の少なくとも一方は、フィルム膜面における最高到達温度(以下、最高到達膜面温度ともいう。)を160℃以上210℃以下の範囲に制御する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
<5> 熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含み、熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムである<1>〜<4>のいずれか1つに記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
<6> 横延伸工程後の熱可塑性樹脂フィルムの厚みが180μm以上400μm以下である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法である。
【0013】
<7> <1>〜<6>のいずれか1つに記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造され、150℃、30分間の処理条件で熱処理したときの熱収縮率が2.0%以下である2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムである。
<8> 熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムであって、ポリエステルフィルムの極限粘度(IV)が0.70dL/g以上0.80dL/g以下である<7>に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムである。
<9> <7>又は<8>に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムを含む太陽電池用バックシートである。
<10> 太陽光が入射する透明性の基板と、基板の一方の側に配された太陽電池素子と、太陽電池素子の基板が配された側と反対側に配された<9>に記載の太陽電池用バックシートと、を備えた太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、寸法安定性及び耐加水分解性に優れた2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法が提供される。また、
本発明によれば、長期での耐久性能に優れた太陽電池用バックシートが提供される。
更に、本発明によれば、長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】縦延伸後の横延伸工程で用いられる横延伸機の一例を上面から示す上面図である。
【図2】(A)は、把持部材の配置と隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔Aを示す概略図であり、(B)は、隣接する把持部材間を狭めた後の把持部材の配置と把持間隔を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法について詳細に説明すると共に、これを用いた本発明の太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールについて詳述する。
【0017】
<2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法>
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出を行ない、キャスティングドラム上で冷却して熱可塑性樹脂シートを製膜するシート製膜工程と、製膜された熱可塑性樹脂シートを長手方向(MD;Machine Direction)に縦延伸する縦延伸工程と、縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを把持部材(例えば延伸クリップ)で把持して長手方向に直交する幅方向(TD;Transverse Direction)に横延伸する横延伸工程とを少なくとも設けて構成されると共に、横延伸工程は、縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを延伸可能な温度に予熱する予熱工程と、予熱された熱可塑性樹脂シートを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸工程と、縦延伸及び横延伸により得られた熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、結晶化させて熱固定する熱固定工程と、熱固定された熱可塑性樹脂フィルムの緊張を緩和し、残留歪みを除去する熱緩和工程と、熱緩和後の熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却工程とを設けて構成されたものである。このうち、
熱固定工程及び熱緩和工程の少なくとも一方において、隣り合う把持部材の把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、その長手方向に下記式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となる範囲で収縮処理が施され、
[{ (A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100 ・・・式(1)
熱固定工程及び熱緩和工程での合計の収縮処理時間を、10秒以上60秒以下とすると共に、延伸工程での横延伸の終了時点から、収縮率を満たすように収縮処理を行なう区間における最高到達温度に達するまでのフィルム膜面温度の平均上昇速度を、0.6℃/秒以上4.5℃/秒以下の範囲として構成する。
【0018】
式(1)において、Aは、隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔(mm)を表し、Bは、把持部材のフィルム長手方向における長さ(mm)を表し、Cは、隣接する把持部材間を狭めた後の把持間隔(mm)を表す。
【0019】
熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「樹脂フィルム」ともいう。)の寸法安定性については、従来から種々検討がなされ、ある程度の安定化が期待されるものの、例えば表面にカルボキシル基や水酸基が多く存在するポリエステル等の耐加水分解性の向上には、別の対応が図られてきた。ところが、従来知られている技術では、寸法安定性又は耐加水分解性の一方が高められても、その他方までは配慮されていない。このような状況に鑑みて、 本発明においては、縦延伸を終えた熱可塑性樹脂に横延伸を施す横延伸工程における、横延伸後の熱固定工程及び/又は熱緩和工程において、フィルム搬送方向に配置された把持部材のうち隣り合う把持部材の把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを所定の収縮率が得られるように収縮処理を与え、その収縮処理時の収縮処理時間の合計及びそのときのフィルム膜面温度の平均上昇速度が所定の範囲を満たすようにすることで、高い耐加水分解性をそなえつつ、熱可塑性樹脂フィルムの寸法安定性が向上する。
【0020】
樹脂フィルムの耐加水分解性は、フィルムに緊張を与え、ポリマー分子を、分子の長さ方向に伸びた状態にすることで良好になる。一方、フィルムの寸法安定性は、ポリマー分子同士の分子鎖間の間隔が縮まっている状態が望ましい。これは、ポリマー分子同士の分子鎖間の間隔が空いていると、分子間相互作用により分子鎖間が縮まりやすく、フィルムの寸法安定性が悪くなる(すなわち熱収縮率が大きくなる)ためと考えられる。
したがって、熱可塑性樹脂フィルムの耐加水分解性と寸法安定性とを両立するには、例えば、フィルムに緊張を与え、ポリマー分子の分子鎖間の距離は縮めないようにすることが考えられる。
【0021】
ここで、延伸は一般に、ロールや把持部材等を備えた装置を用いて、フィルムを搬送すると共に、フィルムの搬送方向の延伸(縦延伸)及び搬送方向と直交する方向の延伸(横延伸)を行なうが、横延伸では、フィルムを、延伸に際してあらかじめフィルムを加熱する予熱部と、フィルムを延伸するためにフィルムに緊張を与える延伸部と、フィルムに緊張を与えたまま加熱する熱固定部と、フィルムの緊張を緩める熱緩和部と、フィルムを冷却する冷却部とに順次搬送することによって、延伸処理が行なわれる。
【0022】
本発明においては、熱可塑性樹脂フィルムの耐加水分解性と寸法安定性とを両立するため、横延伸工程を構成している各工程のうち、横延伸後の熱固定工程及び/又は熱緩和工程において、隣り合う把持部材の把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、その長手方向に下記式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となる範囲で収縮処理を施す。つまり、横延伸工程中に樹脂フィルムの長手方向(MD;Machine Direction)に緩和処理を与える。この収縮処理により、樹脂フィルムの寸法安定性が高められる。
≪式(1)≫
[{ (A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100
A:隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔(mm)
B:把持部材のフィルム長手方向における長さ(mm)
C:隣接する把持部材間を狭めた後の把持間隔(mm)
【0023】
横延伸時には、延伸部でのフィルム幅方向への延伸によりフィルムに緊張が与えられ、ポリマー分子が伸びてフィルムの耐加水分解性が向上する一方で、ポリマー分子同士の分子鎖間が大きくなるため、寸法安定性は悪化傾向にある。横延伸後には、通常フィルム幅方向に熱緩和が施され、熱緩和部でフィルム幅方向における緊張が解かれるところ、本発明においては、フィルム幅方向に加え、横延伸工程での熱固定及び/又は熱緩和に際してフィルム長手方向(MD)に緩和処理が与えられ、MDでの緊張も解くようにするので、フィルムの寸法安定性が従来に比べより向上する。つまり、フィルムがその幅方向及びMDで縮み、ポリマー分子同士の分子鎖間が狭められる。
このとき、熱緩和で緊張が解かれることで耐加水分解性は悪化傾向になるが、その際のフィルム収縮率を3%以上8%以下として収縮処理する際の処理時間と、延伸工程での横延伸終了時点から収縮処理時に最高到達温度に達するまでのフィルム膜面温度の平均上昇速度とを所定の範囲に調節することで、樹脂フィルムの寸法安定性を高く維持しつつ、耐加水分解性に優れたものとすることができる。
【0024】
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、シート製膜工程、縦延伸工程、及び横延伸工程をこの順に設けて構成されているが、以下の説明では、はじめに横延伸工程について詳述し、次いでシート製膜工程及び縦延伸工程の各工程について詳述する。
【0025】
〔横延伸工程〕
本発明における横延伸工程は、後述する縦延伸工程での縦延伸後の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向に直交する幅方向に横延伸する。本工程では、この横延伸を、縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを延伸可能な温度に予熱する予熱工程と、予熱された熱可塑性樹脂シートを長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸工程と、縦延伸及び横延伸により得られた熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、結晶化させて熱固定する熱固定工程と、熱固定された熱可塑性樹脂フィルムの緊張を緩和し、残留歪みを除去する熱緩和工程と、熱緩和後の熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却工程と、を設けて行なう。
本発明における横延伸工程では、上記構成で熱可塑性樹脂フィルムが横延伸される態様であれば、その具体的な手段は制限されない。本工程は、上記構成をなす各工程の処理が可能な各区間(具体的には、予熱する予熱ゾーン、横延伸する延伸ゾーン、熱固定する熱固定ゾーン、緊張を緩和する熱緩和ゾーン、及び冷却する冷却ゾーン)を備えた横延伸装置を用いて好適に行なうことができる。
【0026】
ここで、熱可塑性樹脂としてポリエステルを横延伸する横延伸装置の一例を図1を参照して説明する。図1は、横延伸装置の一例を上面から示す上面図である。
図1に示すように、横延伸装置100は、横延伸テンターであり、1対の環状レール60a及び60bと、各環状レールに取り付けられ、レールに沿って移動可能な把持部材として延伸クリップ2a〜2pとを備えている。環状レール60a及び60bは、ポリエステルフィルム200を挟んで互いに対称配置されており、延伸クリップ2a〜2pでポリエステルフィルム200を握持し、レールに沿って移動させることによりフィルム幅方向に延伸可能なようになっている。
【0027】
横延伸装置100は、ポリエステルフィルム200を予熱する予熱部10(予熱ゾーン)と、ポリエステルフィルム200を、矢印MD方向と直交する方向である矢印TD方向に延伸してポリエステルフィルムに緊張を与える延伸部(延伸ゾーン)20と、緊張が与えられたポリエステルフィルムに緊張を与えたまま加熱する熱固定部(熱固定ゾーン)30と、熱固定したポリエステルフィルムを加熱して熱固定したポリエステルフィルムの緊張を緩める熱緩和部(熱緩和ゾーン)40と、熱緩和部を経たポリエステルフィルムを冷却する冷却部(冷却ゾーン)50とを備えている。
【0028】
環状レール60aには、環状レール60aに沿って移動可能な延伸クリップ2a、2b、2e、2f、2i、2j、2m、及び2nが取り付けられており、また環状レール60bには、環状レール60bに沿って移動可能な延伸クリップ2c、2d、2g、2h、2k、2l、2o、及び2pが取り付けられている。延伸クリップ2a、2b、2e、2f、2i、2j、2m、及び2nは、ポリエステルフィルム200のTD方向の一方の端部を把持し、延伸クリップ2c、2d、2g、2h、2k、2l、2o、及び2pは、ポリエステルフィルム200のTD方向の他方の端部を把持する。延伸クリップ2a〜2pは、一般にチャック等とも称される。延伸クリップ2a、2b、2e、2f、2i、2j、2m、及び2nは、環状レール60aに沿って反時計回りに移動し、延伸クリップ2c、2d、2g、2h、2k、2l、2o、及び2pは、環状レール60bに沿って時計回りに移動するようになっている。
【0029】
延伸クリップ2a〜2dは、予熱部10においてポリエステルフィルム200の端部を把持し、握持したまま環状レール60a又は60bに沿って移動し、延伸部20や、延伸クリップ2e〜2hが位置する熱固定部30、延伸クリップ2i〜2lが位置する熱緩和部40を順次経て、延伸クリップ2m〜2pが位置する冷却部50まで進行する。その後、延伸クリップ2a及び2bと、延伸クリップ2c及び2dとは、搬送方向順に、冷却部50のMD方向下流側の端部(点P、点Q)でポリエステルフィルム200の端部を離した後、さらに環状レール60a又は60bに沿って移動し、予熱部10に戻る。このとき、ポリエステルフィルム200は、矢印MD方向に移動して順次、予熱部10での予熱工程、延伸部20での延伸工程、熱固定部30での熱固定工程、熱緩和部40での熱緩和工程、冷却部50での冷却工程に供され、横延伸が行なわれる。延伸クリップ2a〜2pの予熱部等の各領域での移動速度が、ポリエステルフィルム200の搬送速度となる。
延伸クリップ2a〜2pは、各々独立に、リニアモーター等により移動速度を変化させることができる。延伸クリップの移動速度を変化させることにより、後述するように、横延伸するのみならず、MD方向における緩和が施される。
【0030】
なお、ポリエステルフィルムのTD方向端部を把持する延伸クリップは、図1では2a〜2pのみを示したが、これらに限られず、ポリエステルフィルムを支えるため、延伸クリップ2a〜2pのほかに図示しない延伸クリップが取り付けられている。
以下では、延伸クリップ2a〜2pを総じて「延伸クリップ2」と称することがある。
【0031】
(予熱工程)
予熱工程では、後述する縦延伸工程で縦延伸した後の熱可塑性樹脂フィルムを延伸可能な温度に予熱する。例えば、図1に示すように、予熱部10においてポリエステルフィルム200を予熱する。予熱部10では、熱可塑性樹脂フィルムを横延伸する前に予め加熱し、熱可塑性樹脂フィルムの横延伸を容易に行なえるようにする。
【0032】
予熱部終了点における膜面温度(以下、「予熱温度」ともいう。)は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃〜Tg+60℃であることが好ましく、Tg℃〜Tg+50℃であることがより好ましい。なお、予熱部終了点は、熱可塑性樹脂フィルムの予熱を終了する時点、すなわち予熱部10の領域から熱可塑性樹脂フィルムが離れる位置である。
【0033】
(延伸工程)
延伸工程では、予熱工程で予熱された熱可塑性樹脂フィルムを長手方向(MD方向)と直交する幅方向(TD方向)に緊張を与えて横延伸する。例えば、図1に示すように、延伸部20では、予熱されたポリエステルフィルム200を、少なくともポリエステルフィルム200の長手方向と直交するTD方向に横延伸して熱可塑性樹脂フィルムに緊張を与える。
【0034】
ポリエステルフィルム200の長手方向(MD)と直交する方向(TD)への延伸(横延伸)は、ポリエステルフィルムの長手方向(MD)と垂直(90°)に交わる方向に延伸することを意図するものであるが、機械的誤差の範囲で90°とはいえないが実質的に90°と同じと見なせる方向であってもよい。機械的誤差の範囲とは、フィルム長手方向(MD)と垂直とみなせる角度の範囲(具体的には90°±5°の範囲)の方向である。
【0035】
延伸部20において、熱可塑性樹脂フィルムに与える横延伸のための緊張(延伸張力)は、0.1t/m〜6.0t/mが好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムの面積延伸倍率(各延伸倍率の積)は、延伸前の熱可塑性樹脂フィルムの面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルムの横延伸時の膜面温度(以下、「横延伸温度」ともいう。)は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−10℃以上Tg+100℃であることが好ましく、より好ましくはTg℃以上Tg+90℃以下、さらに好ましくはTg+10以上Tg+80℃である。
【0036】
既述のように、延伸クリップ2a〜2pは、各々独立に移動速度を変化させることができる。したがって、例えば、予熱部10における延伸クリップ2の移動速度よりも、延伸部20、熱固定部30等の延伸部20MD方向下流側における延伸クリップ2の移動速度を速めることで、熱可塑性樹脂フィルムを搬送方向(MD)に延伸する縦延伸を併せて行なうことも可能である。横延伸工程での熱可塑性樹脂フィルムの縦延伸は、延伸部20のみで行なってもよい。
【0037】
(熱固定工程)
熱固定工程では、既に縦延伸及び横延伸が施された後の熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、結晶化させて熱固定する。例えば、図1に示すように、熱固定部30において、緊張が与えられたポリエステルフィルム200に対して、加熱を行なう。
なお、熱固定とは、延伸部20において熱可塑性樹脂フィルムに緊張を与えたまま、特定の温度で加熱し、結晶化させることをいう。
【0038】
本発明では、熱可塑性樹脂フィルムの表面の最高到達膜面温度(本明細書中において、「熱固定温度」ともいう。)が160℃〜210℃の範囲となるように加熱することで、熱固定を好適に行なうことができる。緊張の与えられた熱可塑性樹脂フィルムを、その熱固定温度が160℃〜210℃となる範囲で加熱することで、ポリマー分子の結晶を配向させて耐加水分解性を付与することができる。すなわち、熱固定温度が160℃以上であることで、収縮率が大きく寸法安定性が良好になると共に、耐加水分解性に関しては、ポリエステル等の熱可塑性樹脂は結晶化しやすく、ポリエステル分子等のポリマー分子は伸びた状態で固定化され、耐加水分解性が高められる。また、熱固定温度が210℃以下であることで、寸法安定性は良化傾向がみられ、ポリマー分子同士の絡み合いに由来するポリマー分子の縮みが抑えられ、耐加水分解性を高く維持することができる。
【0039】
熱固定温度は、上記同様の理由から、170℃〜200℃の範囲が好ましく、175℃〜195℃の範囲がより好ましい。
【0040】
最高到達膜面温度(熱固定温度)は、熱可塑性樹脂フィルムの表面に熱電対を接触させて測定される値である。
【0041】
本発明では、熱固定工程及び/又は後述する熱緩和工程において、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(MD)に収縮処理(以下、MD収縮ともいう。)が施される。MD収縮を施すことで、フィルムの寸法安定性及び耐加水分解性をともに向上させることができる。
MD収縮は、収縮率が所定範囲を満たして寸法安定性及び耐加水分解性を満足すれば、熱固定工程又は後述の熱緩和工程のいずれで行なってもよく、例えば熱固定工程でMD収縮を施す場合には、後述の熱緩和工程では必ずしもMD収縮を施す必要はない。また、熱固定工程ではMD収縮を施さず、熱緩和工程でのみMD収縮が施されるようにしてもよい。熱固定工程と熱緩和工程の両方において、MD収縮を行なうようにしてもよい。
【0042】
本発明における収縮処理(MD収縮)は、例えば横延伸装置等に配された把持部材によってフィルムを把持した状態で、フィルム長手方向において、その把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、下記式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となる範囲で収縮させることにより行なう。具体的には、収縮処理は、例えば図1に示すように、互いに前後に位置する延伸クリップ(例えば、延伸クリップ2eと2f、2gと2h、2iと2j、2kと2l、2mと2n、2oと2p)の個々の移動速度を変えてクリップ間距離を狭めることで把持間隔を狭めることによって行なえる。
[{ (A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100 ・・・式(1)
【0043】
具体的には、延伸クリップ2e−2f間の間隔、及び延伸クリップ2g−2h間の間隔を、MD方向上流側より下流側の熱固定部及び/又は熱緩和部において狭めることで、熱可塑性樹脂フィルムのMD方向の緩和が行なえる。MDの緩和を熱固定部30及び/又は熱緩和部40で行なう場合、延伸クリップ2e〜2hが熱固定部30、熱緩和部40に到達したときに、延伸クリップの移動速度を遅くして熱可塑性樹脂フィルムの搬送速度を小さくし、延伸クリップ2e−2f間の間隔と延伸クリップ2g−2h間の間隔とを、それより上流側の例えば予熱部などでの間隔よりも狭めるようにすればよい。
【0044】
式(1)において、Aは、図2(A)に示すように、互いに隣接する2つの把持部材2の間隔を狭める前の把持間隔A(mm)を表し、Cは、図2(B)に示すように、互いに隣接する2つの把持部材2の間隔を狭めた後の把持間隔C(mm)を表す。また、Bは、把持部材2のフィルム長手方向における長さ(mm)を表す。
式(1)で表される収縮率は、熱固定工程及び後述の熱緩和工程の両方の収縮率の合計として3%以上8%以下とすればよい。
【0045】
本発明においては、式(1)で表される収縮率が8%を超えると、フィルム幅方向(TD)のシワや厚みムラが悪化しやすく、寸法安定性に劣る。また、収縮率が3%未満であると、特にフィルム長手方向(MD)の寸法安定性が改善されず、寸法安定性に劣る。
収縮率としては、上記同様の理由から、好ましくは4%以上6%以下である。
【0046】
また、把持部材の長さBと、互いに隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔Aとは、下記式(2)で表される関係式を満たしている態様が好ましい。この関係式は、1つの把持部材の一端と他の1つの把持部材の同一端との距離に対する、把持部材間の間隙の割合を示す。
0.06≦ A/(A+B) ≦0.15 ・・・式(2)
【0047】
従来、収縮率を大きくとれる点から間隙を大きくする傾向にあったが、横延伸する際に把持部材による把持部と非把持部とでは延伸応力に差が生じ、特にフィルム幅方向端部において不均一な延伸となりやすかった。そのため、本発明においては、把持部材の長さBと把持間隔Aとが式(2)を満たすことで、延伸均一性が保たれる。すなわち、間隙の割合が0.06以上であることで、フィルム幅方向におけるフィルムの中央部と端部との間に生じやすい収縮差が抑えられ、熱収縮率等のベース物性が均一になり、寸法安定性に優れる。また、間隙の割合が0.15以下であることで、横延伸時の把持部と非把持部との間の延伸応力差が軽減され、寸法安定性が良化する。
上記の中でも、間隙の割合〔A/(A+B)〕は、上記同様の理由から、0.07以上0.13以下が好ましい。
【0048】
また、把持部材の長さBとしては、100mm以上140mm以下の範囲が好ましい。式(2)で表される関係式を満たすと共に、把持部材の長さが100mm以上の範囲であることで、横延伸する際の把持部材による把持部と非把持部との間の延伸応力差が小さく抑えられ、延伸均一性が保たれる。把持部材の長さが140mm以下の範囲であることで、フィルムの中央部と端部との間の収縮差が抑えられ、ベース物性の均一性が保たれる。
把持部材の長さBとしては、上記同様の理由から、110mm以上125mm以下の範囲が好ましい。
【0049】
収縮処理(MD収縮)は、熱固定工程及び後述の熱緩和工程での合計の収縮処理時間が10秒以上60秒以下となるように行なわれる。処理時間が60秒を超えると、熱可塑性樹脂のヘイズ上昇を招くと共に、耐加水分解性が悪化して、品質劣化を起こす。特にポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート等)などの結晶性樹脂では、ヘイズ上昇が著しい。また、処理時間が10秒未満であると、収縮率が足りず、寸法安定性が低下するほか、収縮途中にシワ等の面状故障が生じる。また、耐加水分解性に劣るため、長期での品質耐久性が保てない。
収縮処理時間は、上記同様の理由から、10秒以上40秒以下が好ましく、より好ましくは15秒以上30秒以下である。
【0050】
また、延伸工程での横延伸の終了時点から「式(1)で表される収縮率が範囲を満たすように収縮処理を行なう区間」でフィルム膜面が最高到達温度に達するまでの、フィルム膜面温度の平均上昇速度は、0.6℃/秒以上4.5℃/秒以下とする。
横延伸の終了時点とは、フィルムが延伸ゾーンの出口に到達して横延伸を終了した時点であり、例えば図1に示す装置では延伸部20から熱固定部30に入る位置をさす。
【0051】
ここで、フィルム膜面温度の「平均上昇速度」とは、延伸ゾーン出口における膜面温度T1[℃]と、フィルム長手方向に収縮させる区間における膜面の最高到達温度T2[℃]との温度差(T2−T1;℃)を、要した時間[秒]で除算して求められる値である。
【0052】
平均上昇速度が4.5℃/秒を超える速度では、耐加水分解性が著しく低下することに加え、急激に加熱されることで不均一な収縮が発生し、その不均一が大きいときにはシワ等の面状故障が発生する。一方、平均上昇速度が0.6℃/秒より遅い速度では、均一に収縮させる点ではよいが、熱固定や熱緩和時の温度条件を低温にする条件選定やゾーン長を長くとるあるいは製造速度を下げるなど、熱収縮率が大きくなり過ぎたり、コスト高を招来する。
平均上昇速度としては、1.0℃/秒以上4.2℃/秒以下が好ましく、より好ましくは、1.3℃/秒以上4.0℃/秒以下である。
【0053】
フィルム膜面温度の平均上昇速度の調整は、特に制限はなく、例えば、熱固定ゾーンや熱緩和ゾーン内に加熱機等の加熱手段や送風ファン等の送風手段などの装置を設置して調整手段として機能させ、フィルムに供給する加熱風の温度や風速の条件を変更することで行なうことができる。
【0054】
(熱緩和工程)
熱緩和工程は、熱固定工程で熱固定された熱可塑性樹脂フィルムの緊張を緩和(熱緩和)し、フィルムの残留歪みを除去する。これにより、フィルムの寸法安定性が向上する。また、熱緩和工程では、熱固定工程において熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(MD)に収縮処理(MD収縮)が施されない場合、MD収縮が施される。MD収縮を施すことで、既述のように、フィルムの寸法安定性及び耐加水分解性がともに向上する。
【0055】
熱緩和は、例えば図1に示すように、熱緩和部40において、熱可塑性樹脂フィルムの表面の最高到達膜面温度が、熱固定部30における熱可塑性樹脂フィルムの最高到達膜面温度(T熱固定)よりも5℃以上低い温度となるように、熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、熱可塑性樹脂フィルムに与えられる態様が好ましい。以下、熱緩和時における熱可塑性樹脂フィルムの表面の最高到達膜面温度を「熱緩和温度(T熱緩和)」ともいう。
【0056】
熱固定工程でMD収縮を施す場合と同様に、熱緩和工程でのMD収縮は、熱固定工程でMD収縮を施すと共に行なってもよいし、熱固定工程でMD収縮を施した場合は熱緩和工程でのMD収縮を行なわなくてもよい。逆に、熱緩和工程のみにおいて、MD収縮を施してもよい。
【0057】
本工程で収縮処理(MD収縮)を行なう場合にも、熱固定工程における場合と同様に、例えば横延伸装置等に配された把持部材によってフィルムを把持した状態で、フィルム長手方向において、その把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となるように収縮させる。本熱緩和工程のみにおいて、3%以上8%以下の収縮率となるようにしてもよい。収縮率としては、熱固定工程と同様に4%以上6%以下が好ましい。
【0058】
熱緩和工程では、MD収縮時の収縮率及びその好ましい範囲等、A/(A+B)の比及びその好ましい範囲等、把持部材の長さBの範囲及びその好ましい範囲等、収縮処理時間及びその好ましい範囲等の詳細は、熱固定工程における場合と同様である。
具体的には、熱緩和工程において、把持部材の長さBと把持間隔Aとは、式(2)で表される関係を満たすことが好ましく、中でも、A/(A+B)の比が0.07以上0.13以下であることが好ましい。
また、把持部材の長さBは、100mm以上140mm以下が好ましく、更には110mm以上125mm以下がより好ましい。
収縮処理(MD収縮)は、既述の熱固定工程及び熱緩和工程での合計の収縮処理時間が10秒以上60秒以下となるように行なわれ、好ましくは10秒以上40秒以下であり、より好ましくは15秒以上30秒以下である。
平均上昇速度は、0.6℃/秒以上4.5℃/秒以下とする。好ましい平均昇温速度は、1.0℃/秒以上4.2℃/秒以下であり、より好ましくは1.3℃/秒以上4.0℃/秒以下である。
【0059】
熱緩和部40においては、少なくとも熱可塑性樹脂フィルムのTDにおける緩和を行なう。このとき、熱可塑性樹脂フィルムのMDにおける緩和を行なってもよい。このような処理により、緊張が与えられた熱可塑性樹脂フィルムは、TD及びMDで縮みが発現する。TDにおける緩和は、延伸部20において熱可塑性樹脂フィルムに与えた延伸張力を2%〜90%弱めればよい。本発明においては、40%とすることが好ましい。
【0060】
(冷却工程)
冷却工程では、熱緩和工程で熱緩和した後の熱可塑性樹脂フィルムを冷却する。
例えば図1に示す態様では、冷却部50において、熱緩和部40を経た熱可塑性樹脂フィルムが冷却される。熱固定部30や熱緩和部40で加熱された熱可塑性樹脂フィルムを冷却することにより、熱可塑性樹脂フィルムの形状が固定化される。
【0061】
冷却部50におけるポリエステル200の冷却部出口の膜面温度(以下、「冷却温度」ともいう。)は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度Tg+50℃よりも低いことが好ましい。具体的には、25℃〜110℃であることが好ましく、より好ましくは25℃〜95℃、さらに好ましくは25℃〜80℃である。冷却温度が上記範囲であることで、クリップ把持を解いた後にフィルムが不均一に縮むことを防止することができる。
ここで、冷却部出口とは、ポリエステル200が冷却部50から離れるときの、冷却部50の端部をいい、熱可塑性樹脂フィルムを把持する把持部材2(図1では、把持部材2j及び2l)が、熱可塑性樹脂フィルムを離すときの位置をいう。
【0062】
なお、横延伸工程における予熱、延伸、熱固定、熱緩和、及び冷却において、熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、又は冷却する温度制御手段としては、熱可塑性樹脂フィルムに温風や冷風をあてたり、熱可塑性樹脂フィルムを、温度制御可能な金属板の表面に接触させ、又は金属板の近傍を通過させることが挙げられる
【0063】
(フィルムの回収)
冷却工程で冷却された熱可塑性樹脂フィルムは、TD方向両端の把持部材で把持された把持部分をカットし、ロール状に巻き取られる。
【0064】
横延伸工程においては、製造される熱可塑性樹脂フィルムの耐加水分解性及び寸法安定性を、より高めるために、次の手法により、延伸した熱可塑性樹脂フィルムの緩和を行なうことが好ましい。
【0065】
本発明では、上記のように横延伸を行なった後、更に、冷却部50でMD方向の緩和を行なってもよい。すなわち、
予熱部20において熱可塑性樹脂フィルムの幅方向(TD)の両端部を、片端部につき、少なくとも2つの把持部材を用いて把持する。例えば、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向(TD)の片端部の一方を把持部材2a及び2bで把持し、他方を把持部材2c及び2dで把持する。次いで、把持部材2a〜2dを移動させることにより、予熱部20から冷却部50まで熱可塑性樹脂フィルムを搬送する。
【0066】
かかる搬送において、予熱部10における熱可塑性樹脂フィルムの幅方向(TD方向)の片端部を把持する把持部材2a(2c)と、把持部材2a(2c)に隣接する他の把持部材2b(2d)との間隔よりも、冷却部50における熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の片端部を把持する把持部材2a(2c)と、把持部材2a(2c)に隣接する他の把持部材2b(2d)との間隔を狭めることで、熱可塑性樹脂フィルムの搬送速度を小さくする。かかる手法によって、冷却部50でMD方向の緩和を行なうことができる。
【0067】
上記のように、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向(MD)における緩和は、少なくとも熱固定部30及び熱緩和部40の一部又は全部において行ない、必要に応じて、冷却部50でさらにMDにおける緩和が施されてもよい。
【0068】
次に、横延伸工程前に設けられるシート製膜工程及び縦延伸工程について詳述する。
〔シート製膜工程〕
シート製膜工程では、熱可塑性樹脂の原料(好ましくはポリエステル原料樹脂)をシート状に溶融押出を行ない、キャスティングドラム上で冷却して熱可塑性樹脂シート(好ましくはポリエステルシート)を製膜する。本発明においては、熱可塑性樹脂シートのうち、固有粘度(IV)が0.70dL/g以上0.80dL/g以下のポリエステルシートが好適に製膜される。
【0069】
ポリエステル原料樹脂を溶融押出する方法、及びポリエステル原料樹脂については、ポリエステル原料樹脂を溶融押出し、さらに冷却等して最終的に得られるポリエステルフィルムの固有粘度が0.70以上0.80以下となる方法ないしポリエステルであれば、特に限定されないが、ポリエステル原料樹脂の合成に用いる触媒や、重合方法等により固有粘度を所望の固有粘度とすることができる。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。中でも、長期での耐久性をそなえ、例えば太陽電池用途に好適に適用可能である点で、ポリエステルを含むものが好ましい。
【0071】
ポリエステルは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
ポリエステルは、単独重合体でもよいし、共重合体でもよい。また、ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
本発明における熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0072】
以下、熱可塑性樹脂のうち、ポリエステルの原料樹脂について説明する。
(ポリエステル原料樹脂)
ポリエステル原料樹脂は、ポリエステルフィルムの原料となり、ポリエステルを含んでいる材料であれば、特に制限されず、ポリエステルのほかに、無機粒子や有機粒子のスラリーを含んでいてもよい。また、ポリエステル原料樹脂は、触媒由来のチタン元素を含んでいてもよい。
ポリエステル原料樹脂に含まれるポリエステルの種類は特に制限されない。
ジカルボン酸成分と、ジオール成分とを用いて合成してもよいし、市販のポリエステルを用いてもよい。
【0073】
ポリエステルを合成する場合は、例えば、(A)ジカルボン酸成分と、(B)ジオール成分とを、周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
(A)多価カルボン酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0074】
(B)ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンゼンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物が挙げられる。
【0075】
(A)ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、(B)ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを「主成分」として含有する。なお、「主成分」とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
【0076】
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
【0077】
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
【0078】
例えば、エステル化反応工程は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合する。このエステル化反応工程では、触媒であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いると共に、工程中に少なくとも、有機キレートチタン錯体と、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を設けて構成される。
【0079】
まず初めに、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する。有機キレートチタン錯体等のチタン化合物は、エステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよいし、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
【0080】
より好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。さらに、PETは、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるものが好ましく、より好ましくはTi系触媒である。
【0081】
Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にポリエステルが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能である。すなわち、Ti系触媒を用いることで、熱分解の原因となるポリエステルの末端カルボン酸の量を低減することができ、異物形成を抑制することができる。ポリエステルの末端カルボン酸の量を低減しておくことで、ポリエステルフィルムを製造した後に、ポリエステルフィルムが熱分解することを抑制することもできる。
【0082】
Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
【0083】
ポリエステルを重合する際において、触媒としてチタン(Ti)化合物を、チタン元素換算値で1ppm以上50ppm以下、より好ましくは2ppm以上30ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で用いて重合を行なうことが好ましい。この場合、ポリエステル原料樹脂には、1ppm以上50ppm以下のチタン元素が含まれる。
ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が1ppm以上であると、ポリエステルの重量平均分子量(Mw)が上がり、熱分解しにくい。そのため、押出機内で異物が軽減される。ポリエステル原料樹脂に含まれるチタン元素の量が50ppm以下であると、Ti系触媒が異物となり難く、ポリエステルシートの延伸の際に延伸ムラが軽減される。
【0084】
[チタン化合物]
触媒成分であるチタン化合物として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種が用いられることが好ましい。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
【0085】
例えばクエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステルが得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加する方法により、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシ基の少ないポリエステルが得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端カルボキシ基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、上記の添加方法によって末端カルボキシ基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
【0086】
クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
【0087】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
【0088】
また、チタン化合物としては、有機キレートチタン錯体以外には一般に、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられる。本発明の効果を損なわない範囲であれば、有機キレートチタン錯体に加えて、他のチタン化合物を併用してもよい。
このようなチタン化合物の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0089】
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合するとともに、チタン化合物の少なくとも一種が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であって、有機キレートチタン錯体とマグネシウム化合物と置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を少なくとも含むエステル化反応工程と、エステル化反応工程で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する重縮合工程と、を設けて構成されているポリエステルの製造方法により作製されるのが好ましい。
【0090】
この場合、エステル化反応の過程において、チタン化合物として有機キレートチタン錯体を存在させた中に、マグネシウム化合物を添加し、次いで特定の5価のリン化合物を添加する添加順とすることで、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステルが得られる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステルに比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステルに比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステルを提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステルが得られる。
【0091】
このポリエステルは、透明性に関する要求の高い用途(例えば、光学用フィルム、工業用リス等)に利用が可能であり、高価なゲルマニウム系触媒を用いる必要がないため、大幅なコスト低減が図れる。加えて、Sb触媒系で生じやすい触媒起因の異物の混入も回避されるため、製膜過程での故障の発生や品質不良が軽減され、得率向上による低コスト化も図ることができる。
【0092】
エステル化反応させるにあたり、チタン化合物である有機キレートチタン錯体と添加剤としてマグネシウム化合物と5価のリン化合物とをこの順に添加する過程を設けることが好ましい。このとき、有機キレートチタン錯体の存在下、エステル化反応を進め、その後はマグネシウム化合物の添加を、リン化合物の添加前に開始することができる。
【0093】
[リン化合物]
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種が用いられる。例えば、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が挙げられ、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
【0094】
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm以上90ppm以下の範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm以上80ppm以下となる量であり、さらに好ましくは60ppm以上75ppm以下となる量である。
【0095】
[マグネシウム化合物]
ポリエステルにマグネシウム化合物を含めることにより、ポリエステルの静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
【0096】
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
【0097】
エステル化反応工程においては、触媒成分であるチタン化合物と、添加剤であるマグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が特に好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング及び添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンとの作用のみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
【0098】
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、リン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステルを得ることができる。
【0099】
式(ii)において、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、+1.0≦Z≦+4.0を満たす場合が好ましく、+1.5≦Z≦+3.0を満たす場合がより好ましい。
【0100】
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、Ti元素換算値で1ppm以上30ppm以下のクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加後、該キレートチタン錯体の存在下に、Mg元素換算値で60ppm以上90ppm以下(より好ましくは70ppm以上80ppm以下)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、P元素換算値で60ppm以上80ppm以下(より好ましくは65ppm以上75ppm以下)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加する態様が挙げられる。
【0101】
上記において、キレートチタン錯体(有機キレートチタン錯体)とマグネシウム塩(マグネシウム化合物)と5価のリン酸エステルとの各々について、それぞれ全添加量の70質量%以上が、順序で添加される態様が好ましい。
【0102】
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
【0103】
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cmが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cmである。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm、より好ましくは1.0〜3.0kg/cmである。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
【0104】
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
【0105】
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
【0106】
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10−3〜1.3×10−3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10−3〜2.67×10−3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10−3〜1.33×10−4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10−3〜4.0×10−4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10−3〜1.33×10−5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10−4〜6.67×10−5MPa)である態様が好ましい。
【0107】
上記のようにして合成されたポリエステルには、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)、結晶化阻害剤などの添加剤を更に含有させてもよい。
【0108】
ポリエステルシートの原料であるポリエステルは、固相重合したペレットであることが好ましい。
エステル化反応により重合した後に、さらに固相重合することにより、ポリエステルフィルムの含水率、結晶化度、ポリエステルの酸価、すなわち、ポリエステルの末端カルボキシ基の濃度(Acid Value;AV)、固有粘度(Interisic Viscosity;IV)を制御す
ることができる。
【0109】
ポリエステルの固有粘度(IV)は、既述のように、ポリエステルフィルムの耐加水分解性の観点から、0.70dL/g以上0.80dL/g以下が好ましく、0.70dL/g以上0.76dL/g以下がより好ましい。特に、エステル化反応において、Ti触媒を使用し、さらに固相重合して、ポリエステルの固有粘度(IV)を0.70dL/g以上0.80dL/g以下とすることで、ポリエステルシートの製造工程における溶融樹脂の冷却工程において、ポリエステルが結晶化するのを抑制し易い。
したがって、縦延伸及び横延伸に適用するポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、固有粘度が0.70dL/g以上0.80dL/g以下であることが好ましく、さらに触媒(Ti触媒)由来のチタン原子を含有することが好ましい。
固有粘度(IV)の求め方については、既述した通りである。
【0110】
ポリエステルの固相重合には、既述のエステル化反応により重合したポリエステル又は市販のポリエステルを、ペレット状などの小片形状にしたものを、出発物質として用いればよい。
ポリエステルの固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、順次送り出す方法)でもよく、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。
固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
ポリエステルの固相重合温度は、150℃以上250℃以下、より好ましくは170℃以上240℃以下、さらに好ましくは180℃以上230℃以下であることが好ましい。温度が上記範囲内であると、ポリエステルの酸価(AV)がより低減する点で好ましい。
また、固相重合時間は、1時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは5時間以上100時間以下、さらに好ましくは10時間以上75時間以下、特に好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合時間が上記範囲内であると、ポリエステルの酸価(AV)と固有粘度(IV)とを好ましい範囲に容易に制御できる。
【0111】
(溶融押出)
本発明におけるシート製膜工程では、上記のようにして得られるポリエステル原料樹脂を溶融押出し、さらに冷却してポリエステルシートを製膜する。
ポリエステル原料樹脂の溶融押出は、例えば、1本又は2本以上のスクリューを備えた押出機を用い、ポリエステル原料樹脂の融点以上の温度に加熱し、スクリューを回転させて行なう。ポリエステル原料樹脂は、加熱及びスクリューによる混練により、押出機内で溶融してメルトとなる。また、押出機内での熱分解(ポリエステルの加水分解)を抑制する観点から、押出機内を窒素置換して、ポリエステル原料樹脂の溶融押出しを行なうことが好ましい。
溶融されたポリエステル原料樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。押出ダイは、単に「ダイ」とも称する〔JIS B8650:2006、a)押出成形機、番号134参照〕。
このとき、メルトは、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。
【0112】
ダイからメルト(ポリエステル)をキャスティングドラム上に押出すことで、シート状に製膜(キャスト処理)することができる。
キャスト処理により得られるシート状のポリエステル製膜体の厚みは、0.5mm〜5mmであることが好ましく、0.7mm〜4.7mmであることがより好ましくは、0.8mm〜4.6mmであることがさらに好ましい。
シート状のポリエステル製膜体の厚みを5mm以下とすることで、メルトの蓄熱による冷却遅延を回避し、また、0.5mm以上とすることで、押出しから冷却までの間に、ポリエステル中のOH基やCOOH基がポリエステル内部に拡散され、加水分解発生の要因となるOH基及びCOOH基がポリエステル表面に露出することを抑制する。
【0113】
押出ダイから押出されたメルトを冷却する手段は、特に制限されず、メルトに冷風を当てたり、キャストドラム(冷却キャストドラム)に接触させたり、水を霧吹きすればよい。冷却手段は、1つのみ行なってもよいし、2つ以上を組み合わせて行なってもよい。
冷却手段は、上記の中でも、連続運転時のシート表面へのオリゴマー付着防止の観点から、冷風による冷却及びキャストドラムを用いた冷却の少なくとも一方が好ましい。さらには、押出機から押出されたメルトを冷風で冷却すると共に、メルトをキャストドラムに接触させて冷却することが特に好ましい。
【0114】
また、キャストドラム等を用いて冷却されたポリエステル製膜体は、剥ぎ取りロール等の剥ぎ取り部材を用いて、キャストドラム等の冷却部材から剥ぎ取られる。
【0115】
〔縦延伸工程〕
本発明の縦延伸工程では、シート製膜工程で製膜された熱可塑性樹脂シート(好ましくはポリエステルシート)を長手方向に縦延伸する。
【0116】
シートの縦延伸は、例えば、シートを挟む1対のニップロールにシートを通して、シートの長手方向にシートを搬送しながら、シートの搬送方向に並べた2対以上のニップロール間で緊張を与えることにより行なうことができる。具体的には、例えば、シートの搬送方向上流側に1対のニップロールA、下流側に1対のニップロールBを設置したとき、シートを搬送する際に、下流側のニップロールBの回転速度を、上流側のニップロールAの回転速度より速くすることで、シートが搬送方向(MD;Machine Direction)に延伸される。なお、上流側、下流側、それぞれに、各々独立に、2対以上のニップロールを設置してもよい。また、熱可塑性樹脂シートの縦延伸は、上記ニップロールを備えた縦延伸装置を用いて行なってもよい。
【0117】
縦延伸工程において、熱可塑性樹脂シートの縦延伸倍率は、2〜5倍であることが好ましく、2.5〜4.5倍であることがより好ましく、2.8〜4倍であることがさらに好ましい。
また、縦横の延伸倍率の積で表される面積延伸倍率は、延伸前の熱可塑性樹脂シートの面積の6倍〜18倍が好ましく、8倍〜17.5倍であることがより好ましく、10倍〜17倍であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂シートの延伸時の縦温度(以下、「縦延伸温度」とも称する)は、熱可塑性樹脂シートのガラス転移温度をTgとするとき、Tg−20℃以上Tg+50℃であることが好ましく、より好ましくはTg−10℃以上Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg以上Tg+30℃である。
【0118】
なお、熱可塑性樹脂シートを加熱する手段としては、ニップロール等のロールを用いて延伸する場合は、ロール内部にヒーターや温溶媒を流すことのできる配管を設けることで、ロールに接する熱可塑性樹脂シートを加熱することができる。また、ロールを用いない場合においても、熱可塑性樹脂シートに温風を吹きかけたり、ヒーター等の熱源に接触させ、又は熱源の近傍を通過させることにより、熱可塑性樹脂シートを加熱することができる。
【0119】
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、縦延伸工程とは別に、既述する横延伸工程を含む。そのため、本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、熱可塑性樹脂シートを、熱可塑性樹脂シートの長手方向(搬送方向、MD)と、熱可塑性樹脂シートの長手方向と直交する方向(TD;Transverse Direction)との少なくとも2軸に延伸することになる。MD方向及びTD方向への延伸は、それぞれ少なくとも1回ずつ行なえばよい。
なお、「熱可塑性樹脂シートの長手方向(搬送方向、MD)と直交する方向(TD)」とは、熱可塑性樹脂シートの長手方向(搬送方向、MD)と垂直(90°)をなす方向を意図するものであるが、機械的な誤差などから実質的に長手方向(すなわち搬送方向)に対する角度が90°とみなせる方向(例えば、MD方向に対し90°±5°の方向)が含まれる。
【0120】
2軸延伸する方法としては、縦延伸と横延伸とを分離して行なう逐次2軸延伸方法のほか、縦延伸と横延伸を同時に行なう同時2軸延伸方法のいずれであってもよい。縦延伸と横延伸とは、各々独立に2回以上行なってもよく、縦延伸と横延伸の順序は問わない。例えば、縦延伸→横延伸、縦延伸→横延伸→縦延伸、縦延伸→縦延伸→横延伸、横延伸→縦延伸などの延伸態様が挙げられる。中でも縦延伸→横延伸が好ましい。
【0121】
<2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム>
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムは、既述の本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により熱可塑性樹脂を2軸延伸して作製されるものである。
【0122】
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムには、既述のように、ポリエステル、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を用いたフィルムが含まれる。中でも、長期での耐久性をそなえ、例えば太陽電池用途に好適に適用可能である点で、ポリエステルを含むフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とするポリエステルフィルムであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、延伸後のフィルム中の熱可塑性樹脂の全量に占めるPETの割合が70質量%以上であることをいう。
【0123】
2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、着色顔料、染料、熱安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
また、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムは、他の素材を貼合して重層構造を有する複数層フィルムであってもよい。複数層フィルムは、ダイスから異種材料を共押し出ししたもの、あるいは他フィルムと貼り合わせたもの、あるいは横延伸する前までに異素材をコーティングしたものなど特に限定されるものではない。
【0124】
本発明のポリエステルフィルムには、重合段階でイソフタル酸成分やナフタレン酸成分など共重合化したPETも含まれ、また他樹脂を押出機内で混合するなどしたブレンド樹脂も含む。
【0125】
ポリエステルフィルムでは、極限粘度(IV)が0.70dL/g以上0.80dL/g以下であることが好ましい。IVが0.70dL/g以上の比較的高い範囲であることで、ポリエステルの分子運動が阻害され、結晶化し難くすることができる。また、IVが0.8dL/g以下であることで、押出機内の剪断発熱によるポリエステルの熱分解が起こり過ぎず、結晶化を抑制し、また酸価(AV)を低く抑えることができる。
縦延伸及び横延伸に供するポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、固有粘度が0.70dL/g以上0.76dL/g以下であることが好ましい。また、このポリエステルは、さらに触媒(Ti触媒)由来のチタン原子を含有することが好ましい。
【0126】
固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr−1)濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、ポリエステルを1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求められる。
【0127】
また、本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはポリエステルフィルム)の熱収縮率(加熱条件:150℃で30分間の加熱)は、2.0%以下とする。
一般にポリエステルのような熱可塑性樹脂は、ガラスに比べて、熱膨張係数や吸湿膨張係数が大きいために温湿度変化で応力がかかりやすく、ひび割れや層の剥がれを招来しやすい傾向がある。熱収縮率を範囲内にすることで、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムに貼り付けられた機能性のシートの剥離を防ぎ、フィルム上に塗布形成した層のひび割れ等を防止することができる。本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムでは、既述の本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法によることで、熱収縮率が達成される。熱収縮率は、特に、横延伸工程における熱固定及び熱緩和の各工程における加熱処理条件(T熱固定及び/又はT熱緩和)を制御することで、2.0%以下に抑えられる。
上記の中でも、熱収縮率は、1.0%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
【0128】
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルフィルムである場合、その末端カルボキシル基含量(AV)としては、耐加水分解性の観点から、20当量/トン以下が好ましい。中でも、AVは、2当量/トン以上17当量/トン以下がより好ましく、5当量/トン以上15当量/トン以下が更に好ましい。
AVは、ポリエステルの末端カルボン酸の量を示し、末端カルボン酸の存在は、ポリエステルの加水分解反応に対して触媒反応を示す。そのため、AVが20当量/トン以下であることで、耐久性(耐湿熱性)を向上させることができる。また、AVの下限が2当量/トン以上であると、隣接層との密着が良好である。
なお、「当量/トン」は、1トンあたりのモル当量を表す。
また、AVは、ポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用いて、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から末端カルボン酸基の量(eq/トン)が算出される。
【0129】
既述の本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により作製される2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、横延伸工程後において、30μm以上400μm以下の範囲にあることが好ましい。厚みが範囲内であると、電気絶縁性の観点で有利である。2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、電気絶縁性の観点からは、40μm以上350μm以下がより好ましく、50μm以上300μm以下が更に好ましい。
また、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムがポリエステルフィルムの場合、耐加水分解性の観点からは、横延伸工程後の厚みは180μm以上が好ましく、180μm以上400μm以下がより好ましく、180μm以上350μm以下が更に好ましく、200μm以上320μm以下が更に好ましく、200μm以上290μm以下が特に好ましい。厚みが180μm以上の比較的厚手に製膜されたときには、耐加水分解性が低下しやすいところ、本発明においては耐加水分解性に優れたものとなる。
【0130】
<太陽電池用バックシート>
本発明の太陽電池用バックシートは、既述の本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムを設けて構成されており、この2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムに更に、被着物に対して易接着性を有する易接着性層、紫外線吸収層、光反射性の白色層などの機能性層を設けて構成することができる。既述の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(特にポリエステルフィルム)を備えるので、長期使用時において安定した耐久性能を示す。
【0131】
本発明の太陽電池用バックシートは、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(例えば2軸延伸後のポリエステルフィルム)に下記の機能性層を塗設してもよい。塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。さらに、粘着剤を用いて貼り合わせることも好ましい。
【0132】
−易接着性層−
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールを構成する場合に、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの、太陽電池素子が封止剤で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止剤(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA))を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止剤の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと封止材との間を強固に接着することができる。具体的には、易接着性層は、特に封止材として用いられるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上であることが好ましい。
さらに、易接着性層は、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが必要であり、そのために易接着性層は高い耐湿熱性を有することが望ましい。
【0133】
(1)バインダー
易接着性層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものを挙げることができる。
ポリオレフィンの例として、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)が挙げられる。アクリル樹脂の例として、ジュリマーET−410、同SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)が挙げられる。また、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、同WSA1070(ともにDIC(株)製)、及びH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
バインダーの量は、0.05〜5g/mの範囲が好ましく、0.08〜3g/mの範囲が特に好ましい。バインダー量は、0.05g/m以上であることでより良好な接着力が得られ、5g/m以下であることでより良好な面状が得られる。
【0134】
(2)微粒子
易接着性層は、微粒子の少なくとも1種を含有することができる。易接着性層は、微粒子を層全体の質量に対して5質量%以上含有することが好ましい。
微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等の無機微粒子が好適に挙げられる。特にこの中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径が範囲の微粒子を用いることにより、良好な易接着性を得ることができる。微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の易接着性層中における添加量としては、易接着性層中のバインダー当たり5〜400質量%が好ましく、より好ましくは50〜300質量%である。微粒子の添加量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性に優れており、1000質量%以下であると、易接着性層の面状がより良好である。
【0135】
(3)架橋剤
易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。また、オキサゾリン系架橋剤は、市販品として例えばエポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等が利用できる。
架橋剤の易接着性層中における好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
【0136】
(4)添加剤
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0137】
(5)易接着性層の形成方法及び物性
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムに貼合する方法や塗布による方法を適用できるが、簡便かつ均一性の高い薄膜での形成が可能な点で塗布による方法が好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用できる。塗布液に用いる溶媒は、水のほかトルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。
易接着性層は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムとの間に着色層(特に反射層)が配置された場合の着色層の効果を損なわない点から、透明性であるのが好ましい。易接着性層の厚みは、通常は0.05〜8μm程度であり、好ましくは0.1〜5μmである。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要とする易接着性が得られやすく、8μm以下であると面状をより良好に維持することができる。
【0138】
−紫外線吸収層−
本発明の太陽電池用バックシートは、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの上に紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層が設けられてもよい。紫外線吸収層は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム上の任意の位置に配置することができる。
紫外線吸収剤には、例えば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、及びこれらの併用が挙げられ、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。紫外線吸収剤は、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースエステル樹脂等とともに、溶解、分散させて用いることが好ましく、400nm以下の光の透過率を20%以下にするのが好ましい。
【0139】
−着色層−
本発明の太陽電池用バックシートは、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの上に着色層を設けて構成することができる。着色層は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
【0140】
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。第二の機能は、太陽電池モジュールをオモテ面側から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させることができる。
【0141】
(1)顔料
着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。これら顔料のうち、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からは、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが好ましい。
顔料の平均粒径は、0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が範囲内であると、光の反射効率に優れる。
顔料の含有量は、必要な着色が得られやすく層の面状がより良好である点で、1.5〜15g/mが好ましく、2.5〜8.5g/mがより好ましい。
【0142】
(2)バインダー
着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。バインダーを含む場合の量は、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持でき、200質量%以下であることで反射率や装飾性が低下する。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。バインダーの具体例としては、ポリオレフィンの例として、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)などが、アクリル樹脂の例として、ジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)などが、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0143】
(3)添加剤
着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の着色剤中における添加量は、着色層のバインダーあたり5〜50質量%が好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の着色層中における添加量は、0.1〜15mg/mが好ましい。
フィラーとしては、上記の顔料とは異なるシリカ等が挙げられる。フィラーの添加量は、着色層のバインダーあたり20質量%以下が好ましい。
【0144】
(4)着色層の形成方法及び物性
着色層の形成は、顔料を含有するポリマーシートを2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムに貼合する方法、ポリエステルシート製膜時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。塗布による方法は、簡便かつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法が挙げられる。塗布液に用いる溶媒は、水のほかトルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよく、環境負荷の点で水が好ましい。
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましく、その場合の550nmの光反射率が75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に利用されなかった太陽光がセルに戻され、発電効率が向上する。
白色層(光反射層)の厚みは、1〜20μmが好ましい。厚みは、1μm以上であると必要な装飾性や反射率が得られやすく、20μm以下であると面状に優れる。
【0145】
−下塗り層−
2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層と2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムとの間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
下塗り層は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(好ましくは2軸延伸後のポリエステルフィルム)に塗布により好適に形成される。下塗り層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましい。
【0146】
−フッ素系樹脂層・ケイ素系樹脂層−
本発明の太陽電池用バックシートには、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの上にフッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方が設けられていることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007−35694号公報、特開2008−28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系塗布層を有していることが好ましい。また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
フッ素系樹脂層及びSi系樹脂層の厚みは、各々1μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲であり、更に好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0147】
−無機層−
本発明の太陽電池用バックシートには、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの上に、更に、無機層が設けられた形態も好ましい。無機層を設けることで、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性やガスバリア性の機能を与えることができる。無機層は、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの表裏いずれに設けてもよいが、防水、防湿等の観点から、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの電池側基板と対向する側(着色層や易接着層の形成面側)とは反対側に好適に設けられる。
【0148】
無機層の水蒸気透過量(透湿度)としては、10g/m・d〜10−6g/m・dが好ましく、より好ましくは10g/m・d〜10−5g/m・dであり、さらに好ましくは10g/m・d〜10−4g/m・dである。
このような透湿度を有する無機層を形成するには、乾式法が好適である。乾式法によりガスバリア性の無機層を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、誘導加熱蒸着、及びこれらにプラズマやイオンビームによるアシスト法などの真空蒸着法、反応性スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタリング法などのスパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。中でも、真空下で蒸着法により膜形成する真空蒸着法が好ましい。
【0149】
ここで、無機層を形成する材料が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、無機ハロゲン化物、無機硫化物などを主たる構成成分とする場合は、1)揮発源として、形成するバリア層と同一組成の材料を用い、無機酸化物の場合は酸素ガスを、無機窒化物の場合は窒素ガスを、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガスを、無機硫化物の場合は硫黄系ガスを、それぞれ系内に補助的に導入しながら揮発させる方法、2)揮発源として無機物群を用い、これを揮発させながら、上記と同じように酸素ガス、窒素ガス、酸素ガスと窒素ガスの混合ガス、ハロゲン系ガス、又は硫黄系ガスをそれぞれ系内に導入し、無機物と導入したガスを反応させながら基材表面に堆積させる方法、3)揮発源として用いる無機物群を揮発させ、無機物群の層を形成後、それを無機酸化物の場合は酸素ガス雰囲気下、無機窒化物の場合は窒素ガス雰囲気下、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気下、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガス雰囲気下、無機硫化物の場合は硫黄系ガス雰囲気下で保持することで無機物層と導入したガスを反応させる方法、等が挙げられる。
これらのうち、揮発源からの揮発が容易である点で、2)又は3)が好ましい。さらには、膜質の制御が容易である点で2)が好ましい。また、バリア層が無機酸化物の場合は、揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて無機物群の層を形成後、空気中で放置することで無機物群を自然酸化させる方法が形成容易の観点から好ましい。
【0150】
また、アルミ箔を貼り合わせてバリア層としてもよい。厚みは、1μm以上30μm以下が好ましい。厚みは、1μm以上であると経時(サーモ)中に2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム中に水が浸透し難く耐加水分解性に優れ、30μm以下であるとバリア層が厚くなり過ぎず、バリア層の応力でフィルムにベコが発生することもない。
【0151】
<太陽電池モジュール>
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはポリエステルフィルム;太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。具体的な実施態様として、電気を取り出すリード配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止剤で封止し、これを、ガラス等の透明基板と、本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(好ましくはポリエステルフィルム;太陽電池用バックシート)との間に挟んで互いに張り合わせることによって構成される態様に構成されてもよい。
【0152】
太陽電池素子の例としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。基板と2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムとの間は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂(いわゆる封止材)で封止して構成することができる。
【実施例】
【0153】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0154】
(実施例1)
<ポリエステル原料樹脂の合成>
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル(Ti触媒系PET)を得た。
【0155】
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下、平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600当量/トンであった。
【0156】
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200当量/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
【0157】
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力20torr(2.67×10−3MPa)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
【0158】
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力5torr(6.67×10−4MPa)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
【0159】
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10−4MPa)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
【0160】
次に、得られた反応物を、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエステルのペレット(断面:長径約4mm、短径約2mm、長さ:約3mm)を作製した。
【0161】
得られたポリエステルについて、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いて以下に示すように測定した結果、Ti=9ppm、Mg=75ppm、P=60ppmであった。Pは当初の添加量に対して僅かに減少しているが、重合過程において揮発したものと推定される。
得られたポリマーは、IV=0.65dL/g、末端カルボキシ基の量(AV)=22当量/トン、融点=257℃、溶液ヘイズ=0.3%であった。IV及びAVの測定は、以下に示す方法により行なった。
【0162】
(3)固相重合反応
上記のようにして得たポリエステルのペレットを、バッチ法で固相重合を実施した。すなわち、ポリエステルのペレットを容器に投入した後、真空にして撹拌しながら、150℃で予備結晶化処理し、その後200℃で30時間の固相重合反応を行なった。
以上のようにして、ポリエステル原料樹脂を得た。
【0163】
<未延伸ポリエステルシートの製造>
−シート製膜工程−
上記で得たポリエステル原料樹脂(PET樹脂A)を含水率20ppm以下に乾燥させた後、直径113mmの1軸混練押出機のホッパーに投入した。PET樹脂Aは、300℃で溶融し、下記押出条件により、ギアポンプ、濾過器(孔径20μm)を介してダイから押出した。
<押出条件>
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%とした。
具体的には、押出機のバレルにおける背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%高い圧力とし、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度として加熱した。
【0164】
溶融樹脂は、ダイから冷却キャストドラム上に押出され、静電印加法を用いて冷却キャストドラムに密着させた。溶融樹脂の冷却は、冷却キャストドラムの温度を25℃に設定し、冷却キャストドラムに対面して設置された冷風発生装置から25℃の冷風を吹き出し、溶融樹脂にあてて行なった。冷却キャストドラム上の樹脂は、冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールを用い、冷却キャストドラムから厚さ3.5mmの未延伸ポリエステルシート(未延伸PETシート)を剥離した。
【0165】
得られた未延伸PETシートは、固有粘度(IV)=0.75dL/g、末端カルボキシ基濃度(AV)=15.5当量/トン、ガラス転移温度(Tg)=72℃であった。
【0166】
<IV及びAVの測定>
IVは、未延伸ポリエステルシートを、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解し、該混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
AVは、未延伸ポリエステルシートをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から算出した。 Tgは、JIS K 7121に準じた測定により求めた。
【0167】
<2軸延伸ポリエステルフィルムの製造>
得られた未延伸PETシートについて、以下の方法で逐次2軸延伸することにより延伸し、厚み250μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(2軸延伸PETフィルム)を作製した。
【0168】
−縦延伸工程−
未延伸PETシートを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、下記条件で長手方向(搬送方向)に延伸した。
予熱温度 :80℃
縦延伸温度:90℃
縦延伸倍率:3.4倍
縦延伸応力:12MPa
【0169】
−横延伸工程−
縦延伸したPETフィルム(縦延伸PETフィルム)に対し、図1に示す構造を有する横延伸テンターを用いて、下記条件にて延伸した。
【0170】
(予熱部)
予熱温度:130℃とし、延伸可能なように加熱した。
【0171】
(延伸部)
予熱された縦延伸PETフィルムを、縦延伸した方向(長手方向)と直交するフィルム幅方向に下記の条件にて緊張を与え、横延伸した。
<条件>
・延伸温度(横延伸温度) :140℃
・延伸倍率(横延伸倍率) :4.4倍
・延伸応力(横延伸応力) :18MPa
・延伸ゾーンの出口におけるフィルム膜面温度:138℃
【0172】
(熱固定部)
熱固定ゾーンのフィルム加熱風の温度設定、風速を調整し、フィルム膜面の熱固定最高到達温度(T熱固定)を下記表1に示す温度(193℃)に調整した。ここでは、フィルム長手方向(MD)における収縮処理(MD収縮)を行なわなかった。
<熱固定条件>
収縮率:0%、長手方向(ΔS):0%、長手方向における収縮処理時間:0秒
【0173】
(熱緩和部)
熱固定ゾーンと同様に、フィルム膜面温度を調整し、フィルム膜面の熱緩和最高到達温度(T熱緩和)を下記表1に示す温度(198℃)に調整した。また、フィルム幅方向(TD)について下記表1に示す収縮率で緩和処理を施すと共に、フィルム長手方向(MD)について下記表1に示す収縮率、処理時間で収縮処理(MD収縮)を施した。
本実施例では、長手方向(MD)の収縮を行なっている熱緩和ゾーンにおいて、フィルム膜面の最高到達温度(最高到達膜面温度)は198℃に到達し、延伸ゾーン出口からこの最高膜温度に到達するまでの時間は34秒であった。したがって、平均上昇速度は1.8であった。
<熱緩和条件>
・収縮率
横方向(ΔL):下記表1に示す収縮率〔%〕
長手方向(ΔS):下記表1に示す収縮率〔%〕
長手方向における収縮処理時間:下記表1に示す時間〔秒〕
ここで、横方向(ΔL)は、ベースを把持した幅方向のクリップ間距離について、熱緩和部の入口での距離をL2、出口での距離をL3としたときにΔL=[(L2−L3)/L2]×100で示される収縮率である。
・クリップ条件
隙間比率〔A/(A+B)〕:下記表1に示す比率
クリップ長:下記表1に示す長さ〔mm〕
【0174】
(冷却部)
次に、熱緩和後のポリエステルフィルムを65℃の冷却温度にて冷却した。
【0175】
(フィルムの回収)
冷却終了後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。
以上のようにして、厚さ250μmの2軸延伸PETフィルムを作製した。
【0176】
−評価−
得られた2軸延伸PETフィルムについて、下記評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0177】
(1)寸法安定性(熱収縮率)
得られた2軸延伸PETフィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)の熱収縮率を下記方法により測定し、これを2軸延伸PETフィルムの寸法安定性を評価する指標とした。具体的には、
2軸延伸PETフィルムを裁断し、TD:30mm、MD:120mmの大きさの試料片Mを作成し、この試料片Mに対して、MD方向に100mmの間隔となるように2本の基準線を入れ、無張力下で150℃の加熱オーブン中に30分間放置した。この放置の後、試料片Mを室温まで冷却して、再び2本の基準線の間隔を測定した。ここでの測定値をA(単位;mm)とし、100×(100−A)/100の式からMDにおける熱収縮率〔%〕を求めた。
また、上記とは別に、2軸延伸PETフィルムを裁断してMD:30mm、TD:120mmの大きさの試料片Lを作成し、この試料片Lに対して、TD方向に100mmの間隔となるように2本の基準線を入れるようにしたこと以外は、試料片Mと同様にして測定を行なうと共に、式からTDにおける熱収縮率〔%〕を求めた。
<評価基準>
A:MDとTDのいずれの熱収縮率も1%以下であった。
B:MDとTDのいずれか一方の熱収縮率が1%を超え、MDとTDのいずれの熱収縮率も2%以下であった。
C:MDとTDのいずれか一方の熱収縮率が2%を超え、MDとTDのいずれの熱収縮率も3%以下であった。
D:MDとTDのいずれか一方の熱収縮率が3%を超えていた。
【0178】
(2)耐加水分解性(破断伸度半減時間)
2軸延伸PETフィルムの耐加水分解性を、2軸延伸ポリエステルフィルムの破断伸度半減時間を指標として評価した。具体的には、
上記で得られた2軸延伸PETフィルムを、温度120℃、相対湿度100%の環境条件で保存し、保存後の2軸延伸PETフィルムが示す破断伸度(%)が、保存前の2軸延伸PETフィルムが示す破断伸度(%)に対して50%となる保存時間〔hr〕を求め、これを破断伸度半減時間とした。また、2軸延伸PETフィルムの破断伸度(%)は、2軸延伸PETフィルムを裁断して1cm×20cmの大きさの試料片Pを作成し、この試料片Pをチャック間5cm、20%/分にて引張試験機で引っ張って求めた。
2軸延伸PETフィルムの耐加水分解性は、破断伸度半減時間が長いほど良好であることを示す
<評価基準>
A:破断伸度半減時間が90hrを超えていた。
B:破断伸度半減時間が85hrを超え90hr以下であった。
C:破断伸度半減時間が80hrを超え85hr以下であった。
D:破断伸度半減時間が80hr未満であった。
【0179】
(3)総合判定
上記(1)〜(2)の各評価結果をもとに下記の判定基準に基づいて判定した。
<判定基準>
A:極めて良好(寸法安定性と耐加水分解性のいずれも「A」の評価)
B:良好(寸法安定性と耐加水分解性のいずれも「B」以上の評価)
C:問題なし(寸法安定性と耐加水分解性のいずれも「C」以上の評価)
D:問題あり(寸法安定性と耐加水分解性のいずれか又は両方が「D」の評価)
【0180】
更に、得られた2軸延伸PETフィルムを用いて、下記のようにしてバックシートを作製した。
【0181】
<反射層の形成>
−顔料分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施し、顔料分散物を調製した。
<組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0182】
−反射層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、反射層用塗布液を調製した。
<組成>
・上記の顔料分散物 ・・・80.0部
・ポリアクリル樹脂水分散液 ・・・19.2部
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・3.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・2.0部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・7.8部
【0183】
−反射層の形成−
得られた反射層用塗布液を2軸延伸PETフィルム上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、着色層として、二酸化チタン量が6.5g/mの白色層(光反射層)を形成した。
【0184】
<易接着性層の形成>
−易接着性層塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、易接着性層用塗布液を調製した。
<組成>
・ポリオレフィン樹脂水分散液 ・・・5.2部
(バインダー:ケミパールS−75N、三井化学(株)製、固形分:24質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・7.8部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・0.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・シリカ微粒子水分散物 ・・・2.9部
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、体積平均粒子径=0.15μm、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・83.3部
【0185】
−易接着性層の形成−
得られた塗布液を光反射層の上に、バインダー量が0.09g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、易接着性層を形成した。
【0186】
<バック層>
−バック層塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、バック層用塗布液を調製した。
<組成>
・セラネートWSA−1070(バインダー) ・・・323部
(アクリル/シリコーン系バインダー、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・52部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(界面活性剤)・・・32部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・594部
【0187】
−バック層の形成−
得られたバック層塗布液を、2軸延伸PETフィルムの反射層及び易接着層が形成されていない側に、バインダー量がウェット塗布量で3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み3μmのバック層を形成した。
以上のようにして、バックシートを作製した。
【0188】
(実施例2)
実施例1において、シート製膜工程での製膜の速度、横延伸工程での加熱風温度、風速、及びMD緩和の処理時間を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸PETフィルムを作製し評価を行なうと共に、バックシートを作製した。評価結果は、下記表1に示す。
【0189】
(実施例3〜7、11〜13、15〜16、比較例1〜5)
実施例1において、未延伸PETシートのIV、横延伸工程における熱固定部、熱緩和部での熱処理条件、並びにクリップ条件を、下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸PETフィルムを作製し、評価を行なうと共に、バックシートを作製した。評価結果は、下記表1に示す。
なお、未延伸PETシートのIVは、固相重合する時間を変えることで原料樹脂のIVを調整し、溶融押出して成形した未延伸PETシートのIVを調整した。
【0190】
(実施例8)
実施例1において、乾燥させたポリエステル原料樹脂(PET樹脂A)と共に、該PET樹脂Aに対して0.1質量%のシリカ粒子(平均一次粒子径:0.2μm)を1軸混練押出機のホッパーに投入し、溶融して、シリカ粒子含有の未延伸PETシートを得、未延伸PETシートをこのシリカ粒子含有の未延伸PETシートに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸PETフィルムを作製し、評価を行なうと共に、バックシートを作製した。評価結果は、下記表1に示す。
【0191】
(実施例9)
実施例1において、乾燥させたPET樹脂Aを1軸混練押出機(直径113mm)のホッパーに投入して溶融した溶融樹脂と、これとは別に、乾燥させたポリエステル原料樹脂(PET樹脂A)と該PET樹脂Aに対して0.1質量%のシリカ粒子(平均一次粒子径:0.2μm)を直径40mmの1軸混練押出機のホッパーに投入して溶融したシリカ含有溶融樹脂とを、溶融樹脂を中心に3層重層となるように共押出することにより、PET樹脂Aのシートの表裏面に、シリカ含有PET樹脂のシートが積層された未延伸PETシート(シリカ含有PET樹脂/溶融樹脂/シリカ含有PET樹脂)を製膜したこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸PETフィルムを作製し、評価を行なうと共に、バックシートを作製した。評価結果は、下記表1に示す。
なお、シート製膜工程の製膜条件及び横延伸工程の条件は、実施例1と同様とした。また、シリカ含有PET樹脂のシート厚みを3μmとし、重層された3層の総厚を250μmとした。
【0192】
(実施例10、14、比較例6)
実施例1において、「未延伸ポリエステルフィルムの製造」及び「2軸延伸ポリエステルフィルムの製造」を、以下に示す「未延伸ポリプロピレンフィルムの製造」及び「2軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造」に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、2軸延伸PPフィルムを作製し、評価を行なうと共に、バックシートを作製した。評価結果は、下記表1に示す。
【0193】
<未延伸ポリプロピレンシートの製造>
−シート製膜工程−
ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)を直径113mmの1軸混練押出機のホッパーに投入した。PP樹脂は、235℃に溶融し、下記押出条件により、ダイから押出した。
<押出条件>
溶融樹脂の押出条件は、圧力変動を1%、溶融樹脂の温度分布を2%とした。
具体的には、押出機のバレルにおける背圧を、押出機のバレル内平均圧力に対して1%高い圧力とし、押出機の配管温度を、押出機のバレル内平均温度に対して2%高い温度として加熱した。
【0194】
溶融樹脂は、ダイから冷却キャストドラム上に押出され、エアーナイフ法を用いて冷却キャストドラムに密着させた。溶融樹脂の冷却は、冷却キャストドラムの温度を25℃に設定し、冷却キャストドラムに対向配置された剥ぎ取りロールにより、冷却キャストドラムから厚さ0.4mmの未延伸ポリプロピレンシート(未延伸PPシート)を剥離した。
【0195】
<2軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造>
得られた未延伸PPシートについて、以下の方法で逐次2軸延伸することにより延伸し、厚み100μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(2軸延伸PPフィルム)を作製した。
【0196】
−縦延伸工程−
未延伸PPシートを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、下記条件で長手方向(搬送方向)に延伸した。
予熱温度 :130℃
縦延伸温度:150℃
縦延伸倍率:2.0倍
【0197】
−横延伸工程−
縦延伸したPPフィルム(縦延伸PPフィルム)に対し、横延伸テンターを用いて、下記条件にて延伸した。
【0198】
(予熱部)
予熱温度:110℃とし、延伸可能なように加熱した。
【0199】
(延伸部)
予熱された縦延伸PPフィルムを、縦延伸した方向(長手方向)と直交するフィルム幅方向に下記の条件にて緊張を与え、横延伸した。
・延伸温度(横延伸温度) :150℃
・延伸倍率(横延伸倍率) :2.5倍
・延伸ゾーンの出口におけるフィルム膜面温度:150℃
【0200】
(熱固定部)
熱固定ゾーンのフィルム加熱風の温度設定、風速を調整し、フィルム膜面温度の熱固定最高到達温度(T熱固定)を下記表1に示す温度(160℃)に調整すると共に、下記表1に示す収縮率、処理時間にてフィルム長手方向(MD)において収縮処理(MD収縮)を施した。
<熱固定条件>
・収縮率
長手方向(ΔS):下記表1に示す収縮率〔%〕
長手方向における収縮処理時間:下記表1に示す時間〔秒〕
・クリップ条件
隙間比率〔A/(A+B)〕:下記表1に示す比率
クリップ長:下記表1に示す長さ〔mm〕
【0201】
(熱緩和部)
熱固定ゾーンと同様に、フィルム膜面温度を調整した。また、フィルム幅方向(TD)について下記表1に示す収縮率で緩和処理を施すと共に、フィルム長手方向(MD)について下記表1に示す収縮率、処理時間で収縮処理(MD収縮)を施した。このときの熱緩和最高到達温度(T熱緩和)は、下記表1に示す温度(162℃)とした。
本実施例では、長手方向(MD)の収縮を行なっている熱緩和ゾーンにおいて、フィルム膜面の最高到達温度(最高到達膜面温度)は162℃に到達し、延伸ゾーン出口からこの最高膜温度に到達するまでの時間は20秒であった。
<熱緩和条件>
・収縮率
横方向(ΔL):下記表1に示す収縮率〔%〕
長手方向(ΔS):下記表1に示す収縮率〔%〕
長手方向における収縮処理時間:下記表1に示す時間〔秒〕
・クリップ条件
隙間比率〔A/(A+B)〕:下記表1に示す比率
クリップ長:下記表1に示す長さ〔mm〕
【0202】
(冷却部)
次に、熱緩和後のポリエステルフィルムを50℃の冷却温度にて冷却した。
【0203】
(フィルムの回収)
冷却終了後、ポリエステルフィルムの両端を20cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行ない、張力5kg/mで巻き取った。
以上のようにして、厚さ100μm、幅120cmの2軸延伸PPフィルムを作製した。
【0204】
【表1】



【0205】
表1に示すように、実施例では、熱収縮率が小さく抑えられており、寸法安定性が良好であると共に、耐加水分解性にも優れていた。
これに対し、ある程度の耐加水分解性を保てても寸法安定性が悪く、逆に熱収縮が小さく抑えられても耐加水分解性が保てず、これらの両立は困難であった。
【0206】
(実施例17)
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、実施例1〜16で作製したバックシートとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることによりEVAと接着させ、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。このとき、バックシートを、その易接着性層がEVAシートと接触するように配置し、接着は以下に示す方法により行なった。
<接着方法>
真空ラミネータを用い、128℃で3分間の真空引きした後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
【0207】
上記で作製した太陽電池モジュールを発電運転させたところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム(特にポリエステルフィルム)は、太陽電池発電モジュールの太陽光入射側とは反対側の裏面に配置される裏面保護シート(いわゆるバックシート)、バリアフィルム基材等の用途に好適である。
【符号の説明】
【0209】
2a〜2l・・・把持部材
10・・・予熱部
20・・・延伸部
30・・・熱固定部
40・・・熱緩和部
50・・・冷却部
60・・・環状レール
100・・・2軸延伸機
200・・・ポリエステルフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出を行ない、キャスティングドラム上で冷却して熱可塑性樹脂シートを製膜するシート製膜工程と、製膜された前記熱可塑性樹脂シートを長手方向に縦延伸する縦延伸工程と、前記縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを把持部材で把持して前記長手方向に直交する幅方向に横延伸する横延伸工程と、を含むと共に、
前記横延伸工程は、
縦延伸後の熱可塑性樹脂シートを延伸可能な温度に予熱する予熱工程と、
予熱された前記熱可塑性樹脂シートを前記長手方向と直交する幅方向に緊張を与えて横延伸する延伸工程と、
前記縦延伸及び前記横延伸により得られた熱可塑性樹脂フィルムを加熱し、結晶化させて熱固定する熱固定工程と、
前記熱固定された熱可塑性樹脂フィルムの緊張を緩和し、残留歪みを除去する熱緩和工程と、
熱緩和後の熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却工程と、を含み、
前記熱固定工程及び前記熱緩和工程の少なくとも一方は、隣り合う把持部材の把持間隔を狭めながら熱可塑性樹脂フィルムを、その長手方向に下記式(1)で表される収縮率が3%以上8%以下となる範囲で収縮処理し、
前記熱固定工程及び前記熱緩和工程での合計の収縮処理時間は10秒以上60秒以下であり、
前記延伸工程での横延伸の終了時点から、前記収縮率を満たすように前記収縮処理を行なう区間でフィルム膜面温度が最高到達温度に達するまでの前記フィルム膜面温度の平均上昇速度が、0.6℃/秒以上4.5℃/秒以下の範囲である、2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
[{ (A+B)−(C+B)}/(A+B)]×100 ・・・式(1)
〔式(1)中、Aは、隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔(mm)を表し、Bは、把持部材のフィルム長手方向における長さ(mm)を表し、Cは、隣接する把持部材間を狭めた後の把持間隔(mm)を表す。〕
【請求項2】
前記把持部材の長さBと、隣接する把持部材間の間隔を狭める前の把持間隔Aとは、下記式(2)で表される関係式を満たす請求項1に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの
製造方法。
0.06≦ A/(A+B) ≦0.15 ・・・式(2)
【請求項3】
前記把持部材の長さBが、100mm以上140mm以下である請求項1又は請求項2に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記熱固定工程又は前記熱緩和工程の少なくとも一方は、フィルム膜面における最高到達温度を160℃以上210℃以下の範囲に制御する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含み、前記熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記横延伸工程後の前記熱可塑性樹脂フィルムの厚みが180μm以上400μm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造方法により製造され、150℃、30分間の処理条件で熱処理したときの熱収縮率が2.0%以下である2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項8】
熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートを含むポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの極限粘度(IV)が0.70dL/g以上0.80dL/g以下である請求項7に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の2軸延伸熱可塑性樹脂フィルムを含む太陽電池用バックシート。
【請求項10】
太陽光が入射する透明性の基板と、前記基板の一方の側に配された太陽電池素子と、該太陽電池素子の前記基板が配された側と反対側に配された請求項9に記載の太陽電池用バックシートと、を備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75512(P2013−75512A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177598(P2012−177598)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】