説明

2,3−ジヒドロ−ベンゾフランの化合物

本発明は、新規な2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン化合物と、メラトニン作動性障害の治療又は予防のためのそれらの使用と、その組成物とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラトニン受容体に対する活性をもつ化合物、特に2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン、より詳細にはアシル化5−アルコキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル−アルキルアミンの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
不眠症は、最も一般的な睡眠障害であり、成人の20〜40%に発症し、頻度は年齢とともに増加する。不眠症は、多くの原因を有している。これらの1つは、通常の覚醒−睡眠サイクルの中断である。この同期不全は、病理学的な変化を生じることがある。上記の影響を補正できる見込みのある治療処置は、メラトニン作動系を調整することにより覚醒−睡眠サイクルを再同期することにある(Li−Qiang Sun、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2005、15、1345〜49)。
【0003】
メラトニンは、哺乳動物における概日リズムを制御するため、且つレチナールの生理機能を調整するための、明暗サイクルについての情報を司る松果腺により分離されたホルモンである。メラトニンの合成及びその夜間の分泌は、視交差上核により制御され、環境光により同期される(Osamu Uchikawa他、J.Med.Chem.2002、45、4222〜39;Pandi−Perumal他、Nature Clinical Practice 2007、3(4)、221〜228)。
【0004】
ヒトにおけるメラトニンの分泌は、夜間に睡眠と同時に生じ、メラトニン量の増加は、宵の間の睡眠に対する欲求の増大と関連している。
【0005】
ヒトにおいて、メラトニンの臨床応用は、夜勤労働者に催眠治療として適用される治療を含む、睡眠相後退症候群の治療から時差ぼけの治療にまで及んでいる。
【0006】
メラトニン受容体は、薬理学的特性に基づいてMT1、MT2及びMT3に分類されている。MT1受容体は、視床下部の中枢神経系に位置するが、MT2受容体は、中枢神経系及び網膜全体に分布している。MT1及びMT2の受容体の存在は、末梢レベルで記述されている。MT1及びMT2の受容体は、多くの病理と関係しており、それらの最も代表的なものは、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害である。MT3受容体は、キノンレダクターゼ−2(QR2)酵素の同族体として最近特性決定されている。MT1及びMT2は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)であり、アゴニストによりそれらを刺激することにより、アデニル酸シクラーゼ活性が低下し、結果的に細胞内cAMPが減少する。
【0007】
特許US4600723及びUS4665086は、昼から夜への労働シフト変更により、又は航空機内でいくつかの時間帯を急速に通り過ぎること(時差ぼけ)から生じる概日リズムの改変を最小化するためにメラトニンを使用することを提唱している。メラトニン作動性の活性をもつ化合物のいくつかの群が、特許文献EP848699B1、US5276051、US5308866、US5633276、US5708005、US6034239(ラメルテオン)、US6143789、US6310074、US6583319、US6737431、US6908931、US7235550、WO8901472及びWO2005062992に記載されている。
【0008】
特許出願US2005137247A1には、式i〜iv
【化1】


に属するメラトニン受容体に対するアゴニスト活性をもつ化合物により、高血圧を治療する手順が記載されており、様々な置換基及び変数はそこに記載の意味を有する。
【0009】
特許US6147110には、式
【化2】


(式中、様々な置換基及び変数はそこに記載の意味を有する)に属するベンゾフラン化合物、及びメラトニン作動系の疾患の治療におけるそれらの使用が記載されている。
【0010】
特許出願WO9608466には、式
【化3】


(式中、置換基R、R、R及びR並びに変数A、m及びnは、そこに記載の意味を有する)に属するメラトニン受容体への配位子としてのインダン化合物が記載されている。
【0011】
ラメルテオン、N−[2−[(8S)−1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル]プロピオンアミドは、治療に導入された最初のメラトニンアゴニストである。そのことは不眠症において示され、その作用機構は、MT1及びMT2の受容体のアゴニズムに基づく。
【0012】
ラメルテオンは、MT1及びMT2に対する非選択的な化合物であり、中枢及び末梢のレベルで他の受容体に対して選択性がある。そのKiは、MT1について0.014nMであり、MT2について0.045nMである。ラメルテオンは再吸収されるが、重要な初回通過代謝効果を受ける。ラメルテオンは、4種の代謝産物に生体内変換され、それらの1つは、活性で、重要な分布容積をもつM−IIである。ラメルテオンのクリアランスは88%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
不眠症の治療において有用であり得る新規なメラトニンアゴニストの研究は、基本的な健康上の必要に対応しており、したがって、改善された特性をもつ化合物の研究の継続に妥当性を与えている。
【0014】
したがって、本発明は、メラトニン受容体、特にMT1及びMT2の受容体に対して活性である、新規なアシル化5−アルコキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル−アルキルアミンを目的とする。結果として、本発明の化合物は、MT1及びMT2の受容体により媒介されるそれらすべての疾患の治療及び予防に有用である。メラトニン作動性障害のいくつかの非限定的な例は、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、一般式I
【化4】


(式中、
は、直鎖又は分岐の(C〜C)アルキル、NHR、(C〜C)シクロアルキル、及びORからなる群から選択される基であり、
は、水素、又は直鎖若しくは分岐の(C〜C)アルキル基であり、
は、直鎖又は分岐の(C〜C)アルキル基であり、
は、直鎖又は分岐の(C〜C)アルキル基であり、
は、直鎖又は分岐の(C〜C)アルキル基である)
の2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン化合物、並びにその薬学的に許容できる塩及び水和物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
薬学的に許容できる塩は、哺乳動物等の患者に投与することができるもの(例えば、所与の投与計画のために、哺乳動物において許容できる安全性をもつ塩)である。このような塩を、薬学的に許容できる無機及び有機の塩基から、且つ薬学的に許容できる無機及び有機の酸から得ることができる。薬学的に許容できる無機塩基から得られる塩には、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄及び第一鉄の塩、リチウム、マグネシウム、第二マンガン及び第一マンガンの塩、カリウム、ナトリウム、並びに亜鉛の塩等が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩が特に好ましい。薬学的に許容できる有機塩基から得られる塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−2−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン及びトロメタミン等の、置換アミン、環状アミン及び天然アミン等を含む、第一級、第二級及び第三級のアミン塩が挙げられる。薬学的に許容できる酸から得られる塩には、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エディシリック酸、フマル酸、ゲンチジン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸及びキナホイック酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、マレイン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸が特に好ましい。
【0017】
式Iの具体的な化合物は、
1)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−アセトアミド、
2)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−プロピオンアミド、
3)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−ブチルアミド、
4)[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−シクロプロパンカルボキサミド、
5)1−エチル−3−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−尿素、及び
6)メチル[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−カルバメート
からなる群から選択される。
【0018】
表1に、それぞれの化合物についての置換基の意味を示す。
【表1】

【0019】
本発明の別の態様は、メラトニン作動性障害の治療又は予防のための医薬品を調製するための、表1からの具体的な化合物の使用を提供することである。上記のメラトニン作動性障害は、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害から選択される。
【0020】
本発明の別の態様は、表1からの具体的な化合物を含む医薬組成物、及び1種又は複数の薬学的に許容できる賦形剤を提供することである。
【0021】
本発明の別の態様は、メラトニン作動性障害の治療及び予防のための医薬品の調製における、上記の医薬組成物の使用を提供することである。上記のメラトニン作動性障害は、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害から選択される。
【0022】
一般式Iの化合物を得る方法を以下のダイヤグラムに記載し、そこで、置換基R、R及びRは上述の通りである。
【0023】
一般式Iの化合物を得る方法を以下のダイヤグラム1に記載し、R=H及びR=Meについて示す。
【化5】

【0024】
第1のステップは、市販されていないベンゾフラノンIIIを合成することにある。このように、ベンゾフラノンIIIは、4−メトキシフェノールIIから、塩基性媒体中で、続く環化を伴うFriedel−Craft反応により得られる。次いで、ニトリル化合物IVは、試薬としてジエチルシアノメチルスルホネートを用い、Horner−Emmons反応により得られる。上記の化合物は、シアノをアミンに、ベンゾフランをジヒドロベンゾフランに全体的に水素化することにより、アミンVを生成する。最終的に、最後のステップは、化合物Iを得るための、アミンと酸塩化物との間における通常のカップリングにある。同様に、最終生成物Iが尿素又はカルバメートである場合には、カップリング剤は、それぞれ、適切なイソシアネート又はクロロホルミエートである。
【0025】
本発明の化合物を含む医薬組成物には、経口投与、直腸内投与及び非経口投与(皮下、筋肉内及び静脈内の経路を含む)に適したものが挙げられるが、最も適した経路は、治療される病理の性質及び重篤さ次第である。本発明の化合物のための好ましい投与経路は、しばしば経口経路である。
【0026】
活性成分を、従来的な医薬の処方技術に従い、1種又は複数の医薬の賦形剤と混合することができる。調製されるべき医薬の形に従って、いくつかの賦形剤を用いることができる。液体の経口組成物(例えば、懸濁液、溶液、乳液、エアロゾル及び口腔洗浄薬等)には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、調味料、保存料及び着色剤等を用いることができる。固体の経口組成物には、例えば、澱粉、糖(例えば、ラクトース、ショ糖及びソルビトール等)セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び微結晶性セルロース等)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、ゴム、コポビドン、ソルビタンモノオレエート及びポリエチレングリコール等の界面活性剤、金属酸化物(例えば、二酸化チタン及び酸化第二鉄等)、並びに水等の他の医薬の希釈剤が用いられる。このように、本発明の化合物を含有する均一な予備処方が形成される。
【0027】
予備処方の場合において、この組成物は均一であるので、活性成分は組成物中に均等に分散され、したがって、この組成物を、錠剤、コーティングされた錠剤、粉末、及びカプセル等の等しい単位用量に分割することができる。
【0028】
錠剤及びカプセルは、それらの投与が容易であるので、最も有利な経口の形である。錠剤を、その必要に応じて、水性又は非水性の従来技術を用いコーティングすることができる。多様な材料を用いてコーティングを形成することができる。このような材料には、多くのポリマー酸、並びに例えばセラック、セチルアルコール及び酢酸セルロース等の他の成分とポリマー酸の混合物が挙げられる。
【0029】
本発明の化合物を、経口投与又は注射可能投与に組み込むことができる液体の形には、水溶液と、流体又はゲルを充填したカプセルと、調味料を含むシロップと、例えば綿実油、胡麻油、ヤシ油又は落花生油等の食用油で調味された油及び乳液中の水性懸濁液と、口腔洗浄薬と、同様の医薬の担体とが挙げられる。水性懸濁液を調製するための適切な分散剤及び懸濁剤には、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン又はゼラチン等の、合成ゴム及び天然ゴムが挙げられる。
【0030】
使用される適切な投与量の範囲は、必要ならば、単回投与又は分割投与のいずれかで、一日量全部で、およそ、0.1から500mg、より好ましくは1mgから100mgである。
【実施例】
【0031】
本発明を、その範囲を限定することを意図するものではない、以下の実施例によりさらに説明する。
【0032】
(薬理学的評価例1)
MT1受容体に対するアゴニスト活性の測定
MT1受容体のための化合物をスクリーニングするために、組換え型ヒトMT1受容体を、ミトコンドリアのアポエクオリンとGα16サブユニットとを同様に同時発現する細胞系中で安定的に過剰発現することを特徴とする細胞系を用いる。
【0033】
Gα16サブユニットは、GPCRにより形成されるGタンパク質群に属し、細胞内信号の伝達はホスホリパーゼ(PLC)により生じる。PLCの活性化により、細胞内のカルシウムの増加につながるイノシトール三リン酸の量の増加が生じる。このように、Gα16の過剰発現により、調査対象の受容体自体の信号伝達経路と独立且つ適合した細胞内カルシウム量の増加が可能になる。
【0034】
アポエクオリンは、活性な形を生成するのに、疎水性接合団、コエレンテラジンを必要とする、エクオリン、リンタンパク質の不活性な形である。エクオリンは、カルシウムに結合して、CO及び光を放出する反応によりコエレンテラジンをコエレンテラミドに酸化する。
【0035】
可能なアゴニストをスクリーニングする試験的手順は、細胞を収集し、エクオリンを再構成するためにコエレンテラジンの存在下で、終夜、懸濁液中にその細胞を保つことにある。翌日、細胞を、スクリーニングされるべき化合物が希釈されているプレート上に注入し、放出された発光を迅速に読み取る。同じ化合物の可能なアンタゴニズムを調査したい場合には、参照のアゴニスト化合物を、最初の注入から15〜30分後に同じウェルに添加し、放出された発光を評価する。
【0036】
アゴニスト活性は、そのEC100に相当する濃度における、参照のアゴニストに対する活性のパーセンテージとして計算される。アンタゴニスト活性は、そのEC80に相当する濃度における、参照のアゴニスト活性に対する阻害のパーセンテージとして表わされる。
【0037】
(薬理学的評価例2)
MT2受容体に対するアゴニスト活性の測定
MT2受容体に対するアゴニズムを調査するために、発明者らは、MT1のスクリーニングのために用いた様式におけるように、これらの受容体を発現し、ミトコンドリアのアポエクオリンとGα16サブユニットとを同時発現する、組換え型の細胞系を用いる。
【0038】
記載の方法論に従って、本発明の化合物が、MT1及びMT2の受容体の強力なアゴニストであることを確認した。そのうえ、本発明の化合物は、適切な薬物動態学的改善をもたらす利点がある。この意味において、本発明の化合物は、構造的に類似の化合物より、著しく良好な代謝安定性、及び著しく良好な脳/血漿比を有する。
【0039】
したがって、ヒトのミクロソーム中において1μMで120分間インキュベーションすることによる、試験されるべき化合物の消失により測定される代謝安定性の調査と、試験されるべき化合物1mg/Kgの経口投与後15分におけるラットの血漿中濃度(ng/mL)を測定するための調査とにより、例1からの化合物は、高い代謝安定性(71%から100%の間を含む)及び血漿濃度98ng/mLを有し、例4からの化合物は、平均的な代謝安定性(31%から70%の間を含む)を有することが示されている一方で、比較上、(1S)−N−[2−(6−メトキシ−インダン−1−イル)−エチル]−プロピオンアミド(WO9608466、及びO.Uchikawa他、J.Med.Chem.、2002、45、4222〜4239、化合物60)により、低い代謝安定性(30%未満)、血漿濃度10.1ng/mL、及びゼロに近い脳/血漿比が示されている。結果的に、例1及び4の化合物は、ある程度、参照の化合物と構造的に類似しているにもかかわらず、予想外により高い薬物動態学的特性を示している。
【0040】
要するに、本発明は、ある程度、最先端の化合物と構造的に類似しているにもかかわらず、驚くべき低い生体内変換を示すことにより、より持続的な睡眠をもたらす新規な化合物を提供する。
【0041】
(参照例1)
ベンゾフラノンIIIを得るための一般的手順
【化6】


1NのBCl溶液48.3mLを、氷浴中で冷却する。4−メトキシフェノール5g(40.3mmol)のジクロロメタン100mL中溶液を、0℃で1時間かけてゆっくりとこの溶液に添加する。クロロアセトニトリル3.06mL(48.3mmol)のジクロロエタン10mL中溶液を添加する。2.69g(20.14mmol)のAlCl3を、温度が35℃を超えないように分けて添加する。撹拌を0℃で2.5時間続ける。反応が終了したら、粗生成物を、氷と1NのHClとの懸濁液に注ぐ。相が分離する。水相をジクロロエタン30mLで抽出する。有機の抽出物を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を濾過し、減圧下で除去する。このように得られた残留物を、MeOH100mLに再溶解する。酢酸ナトリウム9.91g(121mmol)を一度に添加し、この混合物を1時間30分煮沸する。これを冷却させ、濾過する。濾液を、ジクロロメタン(DCM)及び1NのNaOHで抽出する。有機層を乾燥、濾過、蒸発する。ベンゾフラノンIII4.07g(収率=55%)を、黄色がかった油状物質として得る。
HPLC−MS:純度99%、M+1=165
【0042】
(参照例2)
化合物IVを得るための一般的手順
【化7】


ジエチル1−シアノエチルホスホネート1.13mL(24.79mmol)を、乾燥テトラヒドロフラン(THF)100mL中に溶解し、60%NaH0.99g(24.79mmol)をゆっくりと添加する。これを室温で1時間撹拌する。メトキシベンゾフラノンIII4.07g(24.79mmol)を、乾燥THF30mL中に一度で添加する。これを、室温で2時間以上撹拌する。水50mLを添加し、これを室温で15分間撹拌する。このTHFを低圧で蒸発させ、酢酸エチル100mLを、生成した水溶液に添加する。相が分離し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を蒸発乾固し、油状物質2.44gを得る。これを、溶離剤混合物として酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。このように、黄色固体2.44gが得られる(収率=53%)。
HPLC−MS:純度100%、M+1=188
【0043】
(参照例3)
アミンVを得るための一般的手順
【化8】


ニトリルIV0.5g(2.67mmol)を、氷酢酸50mLに溶解する。10%Pd/C0.25gを添加し、これを水素雰囲気中に導入する。これを24時間撹拌する。触媒を濾過し、低圧下で溶媒を濾液から蒸発させる。油状物質0.45gが得られ、これを、1MのHCl50mL中に懸濁させ、DCM50mLを添加する。これを20分間撹拌し、相が分離する。水相を、3NのNaOHで塩基性化し、DCMにより再度抽出する。有機相を取り、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を濾過し、低圧下で除去して、黄色がかった油状物質としてV0.28g(収率=54%)を生成する。
HPLC−MS:純度100%、M+1=194
【0044】
(参照例4)
化合物Iを得るための一般的手順
【化9】


アミンV100mg(0.209mmol)を無水DCM5mLに溶解する。トリエチルアミン0.053mL(0.418mmol)をゆっくりと添加し、次いで対応する酸塩化物0.23mmolもゆっくりと添加する。室温で2時間30分撹拌する。1NのHCl5mLを添加し、これを10分間撹拌する。有機相を分離し乾燥する。これを乾燥するまで蒸発乾固する。このように得られた残留物を、溶離剤として酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。このように、最終的な化合物Iが白色固体として得られる。
=Etのときの例:21mg(収率=41%)が得られる。
HPLC−MS:純度99%、M+1=250
【0045】
このように得られた化合物を、以下の表2に詳述する。
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−アセトアミド、
2)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−プロピオンアミド、
3)N−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−ブチルアミド、
4)[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−シクロプロパンカルボキサミド、
5)1−エチル−3−[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−尿素、及び
6)メチル[2−(5−メトキシ−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−3−イル)−エチル]−カルバメート
からなる群から選択される2,3−ジヒドロ−ベンゾフランの化合物、並びにその薬学的に許容できる塩及び水和物。
【請求項2】
メラトニン作動性障害の治療又は予防のための医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
前記メラトニン作動性障害が、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物と、1種又は複数の薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項5】
メラトニン作動性障害の治療又は予防のための医薬品を調製するための、請求項4に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
メラトニン作動性障害が、抑うつ、ストレス、睡眠障害、不安症、季節性感情障害、心血管の病理、消化器系の病理、時差ぼけによる不眠症又は疲労、統合失調症、不安発作、うつ病、食欲障害、肥満、不眠症、精神病、てんかん、糖尿病、パーキンソン病、老年認知症、通常の又は病的な老化に関連する障害、片頭痛、記憶喪失、アルツハイマー病及び脳循環障害から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
有効量の1種又は複数の請求項1に記載の化合物を患者に投与することを含む、メラトニン作動性疾患を治療又は予防する方法。

【公表番号】特表2011−500765(P2011−500765A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530465(P2010−530465)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064393
【国際公開番号】WO2009/053444
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【Fターム(参考)】