説明

2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミドの多形及び非結晶形

本発明は、2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミドのいくつかの多形と非結晶形、そのような多形又は非結晶形を含有する医薬組成物、並びに、望まれない血管新生及び/又は細胞増殖と関連した癌や他の疾患状態のような、プロテインキナーゼにより仲介される疾患状態を治療するためにそのような医薬組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミドの多形及び非結晶形に、並びに、そのような化合物とそれで作製される医薬組成物の、望まれない血管新生及び/又は細胞増殖と関連した癌や他の疾患状態を治療するための、療法又は予防上の使用に関する。
【0002】
背景技術
そのまま参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,531,491号は、ある種のプロテインキナーゼの活性を変調させる、及び/又は阻害するインダゾール化合物へ向けられる。そのような化合物は、プロテインキナーゼにより仲介される血管新生又は細胞増殖と関連した癌や他の疾患の治療に有用である。米国特許第6,531,491号に開示される1つの化合物は、2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミドであり、その構造を以下に式Iとして示す:
【0003】
【化1】

【0004】
式Iの化合物の別名は、6−[N−(3−((1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−イル)カルボキサミド)−4−フルオローフェニル)アミノ]−3−E−[2−(ピリジン−2−イル)エテニル]−1H−インダゾールである。
【0005】
式Iの化合物を含有する哺乳動物への投与用の医薬組成物を、米国や国際的な衛生登録当局の要求事項(例えば、FDAの「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準」(「GMP」))に従って製造するには、式Iの化合物を、一定の物理特性を有する安定な結晶形のような安定形で製造するニーズがある。さらに、当該技術分野では、改善された溶解性又は経口バイオアベイラビリティのような向上した特性を有する式Iの化合物の改善形を提供するニーズがある。
【0006】
発明の要約
1つの側面において、本発明は、式Iの化合物の14の多形の形態と1つの非結晶形を提供する。1つの態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、I型と呼ばれて、5.5及び28.4の回折角(2θ)にピークを含んでなる粉末X線回折(PXRD)パターンを有する。より特別には、多形I型は、5.5、9.5、10.7、及び28.4の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形I型は、図1Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形I型は、図1Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0007】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、II型と呼ばれて、12.1及び16.7の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形II型は、12.1、13.0、16.7、及び18.3の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形II型は、図2Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形II型は、図2Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0008】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、III型と呼ばれて、6.4及び23.4の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形III型は、6.4、23.4、25.0、及び27.3の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形III型は、図3Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形III型は、図3Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IV型と呼ばれて、24.5及び34.1の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IV型は、12.8、15.8、24.5、及び34.1の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IV型は、図4Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形IV型は、図4Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。なおより特別には、多形IV型は、10℃/分の走査速度で約118℃での結晶融解吸熱の開始を特徴とする場合がある。さらにより特別には、多形IV型は、図4Bに示すものと本質的に同じDSCサーモグラムを有する。
【0010】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、V型と呼ばれて、8.4及び26.0の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形V型は、8.4、14.2、22.2、及び26.0の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形V型は、図5Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形V型は、図5Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0011】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、Ia型と呼ばれて、5.5及び25.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形Ia型は、5.5、10.6、18.9、及び25.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形Ia型は、図6Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。
【0012】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、Ib型と呼ばれて、10.2及び13.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形Ib型は、10.2、13.8、20.1、及び26.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形Ib型は、図7Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形Ib型は、図7Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IIa型と呼ばれて、12.8及び22.9の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IIa型は、12.8、16.0、22.9、及び31.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IIa型は、図8Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。
【0014】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IIb型と呼ばれて、14.3及び19.0の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IIb型は、7.9、14.3、19.0、及び27.0の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IIb型は、図9Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形IIb型は、図9Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0015】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IIIa型と呼ばれて、24.9及び36.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IIIa型は、14.7、21.0、24.9及び36.2の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IIIa型は、図10Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。
【0016】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IIIb型と呼ばれて、6.8及び14.5の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IIIb型は、6.8、14.5、20.8、及び24.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IIIb型は、図11Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形IIIb型は、図11Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0017】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、IVa型と呼ばれて、13.5及び32.5の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形IVa型は、13.5、15.8、27.0、及び32.5の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形IVa型は、図12Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形IVa型は、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約63℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約123℃に有する。なおさらに、多形IVa型は、図12Bに示すものと本質的に同じDSCサーモグラムを有する。
【0018】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、Va型と呼ばれて、19.2及び33.9の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形Va型は、11.5、19.2、24.4、及び33.9の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形Va型は、図13Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形Va型は、図13Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0019】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、VI型と呼ばれて、7.7及び26.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形VI型は、7.7、12.9、18.5、及び26.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形VI型は、図14Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。さらにより特別には、多形VI型は、図14Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする。
【0020】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の非結晶形を提供し、ここでこの非結晶形は、結晶形に特徴的な鋭いピークが全くない、4〜40°に及ぶ回折角(2θ)に広いピークを明示するPXRDパターンを有する。より特別には、この非結晶形は、図15Aに示すものと本質的に同じPXRDパターンを有することを特徴とする。なおより特別には、この非結晶形は、図15Bに示すものと本質的に同じシフトピーク(cm−1)を含んでなるラマンスペクトルを特徴とする。
【0021】
なお別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の固体形を提供し、ここでこの固体形は、以下の固体形:多形I、II、III、IV、V、Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、Va、VI型、及び非結晶形の少なくとも2つを含んでなる混合物である。
【0022】
別の態様において、本発明は、式Iに示す化合物の実質的に純粋な多形を提供し、ここでこの多形は、Ibm−2型と呼ばれて、これは、Ib型及びVI型の混合物であり、12.9及び13.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。より特別には、多形Ibm−2型は、12.9、13.8、20.1、及び26.8の回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。なおより特別には、多形Ibm−2型は、図16に示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなるPXRDパターンを有する。
【0023】
別の側面において、本発明は、式Iの化合物の結晶形又は非結晶形をそれぞれ含んでなる、医薬組成物に関する。本発明はまた、多形及び非結晶形のいずれでも少なくとも2つの混合物を含んでなる医薬組成物に関する。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、望まれない血管新生及び/又は細胞増殖と関連した癌や他の疾患状態を治療する方法を提供し、該方法は、本発明の多形/非結晶化合物の治療有効量をそのような治療の必要な患者へ投与することを含んでなる。本発明はまた、VEGF−R(血管内皮細胞増殖因子受容体)、FGF−R(繊維芽細胞増殖因子受容体)、CDK(サイクリン依存性キナーゼ)複合体、CHK1、LCK(リンパ球特異的チロシンキナーゼとしても知られる)、TEK(Tie−2としても知られる)、FAK(フォーカルアドヒージョンキナーゼ)、及び/又はホスホリラーゼキナーゼのキナーゼ活性を、本発明の化合物を投与することによって変調させる、及び/又は阻害する方法に関する。本発明の好ましい化合物は、選択キナーゼ活性を有する(即ち、それらは、1以上の特定キナーゼに対して有意な活性を保有する一方で、1以上の異なるキナーゼに対してはより少ないか又はわずかな活性しか保有しない)。本発明の1つの好ましい態様において、本発明の多形/非結晶化合物は、FGF−R1受容体チロシンキナーゼに対するよりもVEGF受容体チロシンキナーゼに対して実質的により高い効力を保有するものである。本発明はまた、FGF受容体チロシンキナーゼ活性を有意に変調させずに、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性を変調させる方法へ向けられる。
【0025】
本発明の化合物は、有利にも、他の既知の治療薬剤と組み合わせて使用してよい。例えば、抗血管新生活性を保有する式Iの化合物の多形/非結晶形を、亢進した抗腫瘍効果をもたらすために、タキソール、タキソテレ、ビンブラスチン、シスプラチン、ドキソルビシン、アドリアマイシン、等のような細胞傷害性の化学療法剤と同時投与してよい。治療効果の相加又は相乗的な亢進も、抗血管新生活性を保有する本発明の化合物の、コンブレタスタチンA−4、エンドスタチン、プリノマスタット、セレコキシブ、ロフェコキシブ、EMD121974、IM862、抗VEGFモノクローナル抗体、及び抗KDRモノクローナル抗体のような他の抗血管新生剤との同時投与により得ることができる。
【0026】
発明の詳細な説明
これから本発明をより詳しく下記に記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態に具体化し得るが、本明細書による態様に限定されると解釈してはならない。むしろ、これらの態様は、本開示が詳細で完全であるように提供され、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるためのものである。
【0027】
I.定義
本明細書に使用する以下の用語は、指定する意味を有する。
本明細書に、そして付帯の特許請求項に使用するように、単数形の冠詞(「a」、「an」、「the」)には、文脈が明らかに他に指定しなければ、複数の指示対象が含まれる。
【0028】
用語「含んでなる」及び「含まれる」は、広義の、非限定的な意味で使用する。
用語「多形」は、同じ化合物の他の結晶形に比較して、識別される空間格子配置のある化合物の結晶形を意味する。
【0029】
用語「非結晶」は、化合物の非結晶形を意味する。
「医薬的に許容される塩」は、特定化合物の遊離酸及び塩基の生物学的有効性を保持して、生物学的にも、あるいは他の点でも望ましくなくはない塩を意味するものとする。本発明の化合物は、十分に酸性、十分に塩基性、又は両方の官能基を保有して、それ故に、いくつかの無機又は有機塩基、そして無機及び有機酸のいずれとも反応して、医薬的に許容される塩を生成することができる。例示の医薬的に許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、酸性亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベル酸塩、セバク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が含まれる塩のような、鉱酸又は有機酸又は無機塩基と本発明の化合物の反応により製造される塩が含まれる。
【0030】
II.式Iの化合物の多形及び非結晶形
本発明は、式Iの化合物のいくつかの多形結晶形と非結晶形を提供する。本化合物のそれぞれの結晶又は非結晶形は、以下の1以上により特徴づけることができる:X線粉末回折パターン(即ち、様々な回折角(2θ)でのX線回折ピーク)、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムの吸熱により例証される融点開始(並びに、水和型では、脱水の開始)、ラマンスペクトル図パターン、水溶解度、「医薬品規制調和国際会議(ICH)」の高強度光条件下での光安定性、並びに、物理及び化学的な保存安定性。
【0031】
本発明のそれぞれの多形又は非結晶形についてのX線粉末回折パターンは、40kV及び50mAで作動するCu X線源が装備された、Shimadzu(島津製作所)XRD−6000 X線回折計で測定した。試料を試料ホルダーに入れてから充填して、スライドガラスでスムージングした。解析の間、試料を60rpmで回転させ、0.04°ステップで5°/分、又は0.02°ステップで2°/分で、4〜40°(θ−2θ)の角度を解析した。利用可能な材料が限られていれば、試料をシリコンプレート上に置いて(バックグラウンド0)、回転なしで解析した。当業者は、ピーク位置(2θ)が、典型的には0.1°程度のいくらかの装置間変動性を示すことを理解されよう。故に、本発明の固体形が、所定の数字に示すものと本質的に同じ粉末X線回折パターンを有するものとして記載される場合、用語「本質的に同じ」には、回折ピーク位置におけるそのような装置間変動性が含まれるものとする。
【0032】
DSCサーモグラフは、Mettler Toledo DSC821(登録商標)機器を30〜250℃の温度範囲にわたり10℃/分の走査速度で使用して入手した。試料を40μlアルミニウムるつぼへ秤量して、これを密封して、単一の穴を穿孔した。融解温度の外挿開始と、適用可能な場合、脱水温度の開始を算出した。
【0033】
いくつかの要因に依存して、本発明の化合物により明示される吸熱は、付帯の数字に図示される吸熱の上又は下を変動する(結晶多形融解では約0.01〜5°、そして多形脱水では約0.01〜20°)場合がある。このような変動の原因となる因子には、DSC分析を行うときの加熱速度(即ち、走査速度)、DSC開始温度を定義して決定する方法、使用する較正標準、機器の較正、相対湿度、及び試料の化学純度が含まれる。どの所定の試料でも、観察される吸熱は、機器ごとに異なってもよいが、しかしながら、機器を同様に較正すれば、それは、本明細書に規定する範囲内に概してあるものである。
【0034】
ラマン分散スペクトルは、フーリエ変換ラマン分光光度計、Kaiser Optical Instruments,Ramen RXN1−785を使用することによって入手した。励起光源は、785nm波長で作動するInvictus NIR Laserであった。検出器は、Andor CCDであった。解像度は、34cm−1であった。
【0035】
本発明の多形又は非結晶形は、好ましくは実質的に純粋であり、式Iの化合物のそれぞれの多形又は非結晶形に10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは1%未満の重量の不純物(本化合物の他の多形又は非結晶形も含まれる)が含まれることを意味する。
【0036】
本発明の固体形は、混合物において一緒に存在してもよい。本発明の多形及び/又は非結晶形の混合物は、その混合物中に存在する多形及び/又は非結晶形のそれぞれに特徴的なX線回折ピークを有するものである。例えば、2つの多型の混合物は、実質的に純粋な多形に対応するX線回折パターンの重畳(convolution)である粉末X線回折パターンを有するものである。
【0037】
A.多形I型
多形I型、無水形は、式Iの化合物をエタノール中にスラリー化してから、加熱して30分間還流し、それに続けて23℃へゆっくり冷やすことによって製造することができる。I型は、pH2で約39μg/mLとpH7.4で約0.4μg/mLの水溶解度を有する。I型は、ICH高強度光条件下で光安定的であり、80℃と40℃/75%RHで少なくとも14日間は化学的に安定である。
【0038】
I型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0039】
【化2】

【0040】
図1Aは、I型のX線粉末回折パターンを提供する。
図1Bに示すI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約183℃に示す。
【0041】
図1Cに示すI型のラマンスペクトル図には、ほぼ993、1265、1323、1377、1394、1432、1465、1482、1563、1589、及び1640でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0042】
B.多形II型
多形II型、無水形は、式Iの化合物のテトラヒドロフラン溶液の60℃でのヘキサンによる直接の結晶化によって製造することができる。II型は、pH2で約19μg/mLとpH7.4で約0.7μg/mLの水溶解度を有する。II型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0043】
II型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0044】
【化3】

【0045】
図2Aは、II型のX線粉末回折パターンを提供する。
図2Bに示すII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約195℃に示す。
【0046】
図2Cに示すII型のラマンスペクトル図には、ほぼ993、1265、1323、1377、1394、1432、1465、1482、1563、1589、及び1640でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0047】
C.多形III型
多形III型、無水形は、式Iの固形物を鉱油中に192℃で約1.5時間スラリー化して、ヘキサン洗浄と濾過を続けることによって製造することができる。III型は、pH2で約10μg/mLとpH7.4で約0.6μg/mLの水溶解度を有する。III型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0048】
III型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0049】
【化4】

【0050】
図3Aは、III型のX線粉末回折パターンを提供する。
図3Bに示すIII型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約210℃に示す。
【0051】
図3Cに示すIII型のラマンスペクトル図には、ほぼ991、1261、1379、1431、1589、及び1634でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
D.多形IV型
IV型、無水形は、酢酸エチル及びエタノール中の式Iの化合物の1:1 NaHCO:水による結晶化によって製造することができる。IV型は、pH2で約7μg/mLの水溶解度を有する。IV型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0052】
IV型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0053】
【化5】

【0054】
図4Aは、IV型のX線粉末回折パターンを提供する。
図4Bに示すIV型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約118℃に示す。
【0055】
図4Cに示すIV型のラマンスペクトル図には、ほぼ998、1269、1314、1340、1371、1436、1463、1483、1562、1592、及び1644でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0056】
E.多形V型
V型、無水形は、IV型固形物を重鉱油中に130℃で、次いで180℃で約1.5時間スラリー化して、ヘキサン洗浄と濾過を続けることによって製造することができる。V型は、pH2で約8μg/mLとpH7.4で約0.2μg/mLの水溶解度を有する。V型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0057】
V型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0058】
【化6】

【0059】
図5Aは、V型のX線粉末回折パターンを提供する。
図5Bに示すV型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約210℃に示す。
【0060】
図5Cに示すV型のラマンスペクトル図には、ほぼ989、1230、1298、1374、1433、1466、1481、1562、1586、及び1642でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0061】
F.多形Ia型
Ia型は、水和形であり、I型を水中に周囲温度で7日間スラリー化することによって製造することができる。Ia型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0062】
Ia型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0063】
【化7】

【0064】
図6Aは、Ia型のX線粉末回折パターンを提供する。
図6Bに示すIa型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約60℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約185℃に示す。
【0065】
G.多形Ib型
Ib型は、一水和物であり、I型を水中に90℃で3日間スラリー化することによるか、又は65℃より高い温度でのエタノール:水からの結晶化により製造することができる。Ib型は、60℃と40℃/75%RHで少なくとも3ヶ月間は物理的及び化学的に安定であり、ICH高強度光条件下で光安定的でもある。
【0066】
Ib型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0067】
【化8】

【0068】
図7Aは、Ib型のX線粉末回折パターンを提供する。
図7Bに示すIb型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約67℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約179℃に示す。
【0069】
図7Cに示すIb型のラマンスペクトル図には、ほぼ964、1002、1239、1266、1372、1470、1558、及び1641でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0070】
H.多形IIa型
IIa型、一水和物は、II型を水中に周囲温度で7日間スラリー化することによって製造することができる。IIa型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0071】
IIa型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0072】
【化9】

【0073】
図8Aは、IIa型のX線粉末回折パターンを提供する。
図8Bに示すIIa型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約51℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約194℃に示す。
【0074】
I.多形IIb型
IIb型、二水和物は、II型を水中に90℃で3日間、次いで周囲温度で17日間スラリー化することによって製造することができる。IIb型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0075】
IIb型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0076】
【化10】

【0077】
図9Aは、IIb型のX線粉末回折パターンを提供する。
図9Bに示すIIb型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約64℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約197℃に示す。
【0078】
図9Cに示すIIb型のラマンスペクトル図には、ほぼ993、1265、1362、1431、1464、1561、1589、及び1639でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0079】
J.多形IIIa型
IIIa型、二水和物は、III型を水中に周囲温度で7日間スラリー化することによるか、又はIII型を93%相対湿度に周囲温度で10日間置くことによって製造することができる。
【0080】
IIIa型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0081】
【化11】

【0082】
図10Aは、IIIa型のX線粉末回折パターンを提供する。
K.多形IIIb型
IIIb型、無水形は、III型を50℃で真空下に乾燥させることによって製造することができる。
【0083】
IIIb型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0084】
【化12】

【0085】
図11Aは、IIIb型のX線粉末回折パターンを提供する。
図11Bに示すIIIb型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約210℃に示す。
【0086】
図11Cに示すIIIb型のラマンスペクトル図には、ほぼ993、1267、1311、1326、1378、1436、1466、1481、1563、1592、及び1636でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0087】
L.多形IVa型
IVa型、二水和物は、IV型を水中に7日間スラリー化することによって製造することができる。IVa型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0088】
IVa型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0089】
【化13】

【0090】
図12Aは、IVa型のX線粉末回折パターンを提供する。
図12Bに示すIVa型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約63℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約123℃に示す。
【0091】
M.多形Va型
Va型、二水和形は、V型を水中に7日間スラリー化することによって製造することができる。Va型は、ICH高強度光条件下で光安定的である。
【0092】
Va型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0093】
【化14】

【0094】
図13Aは、Va型のX線粉末回折パターンを提供する。
図13Bに示すVa型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約74℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約211℃に示す。
【0095】
図13Cに示すVa型のラマンスペクトル図には、ほぼ989、1228、1298、1372、1430、1465、1561、1584、及び1641でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0096】
N.多形VI型
VI型、無水形は、Ib型を140℃で10分間加熱することによるような、Ib型の脱水により製造することができる。VI型は、きわめて吸湿性であり、周囲湿度下でIb型へ容易に戻り変換する場合がある。
【0097】
VI型は、以下の近似回折角(2θ)にピークがあるX線粉末回折パターンを特徴とする:
【0098】
【化15】

【0099】
図14Aは、VI型のX線粉末回折パターンを提供する。
図14Bに示すVI型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、結晶融解吸熱の開始を約179℃に示す。
【0100】
図14Cに示すVI型のラマンスペクトル図には、ほぼ965、993、1201、1230、1267、1320、1368、1412、1426、1469、1557、1587、及び1647でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0101】
O.非結晶型
非結晶形は、式Iの化合物のポリエチレングリコール400溶液の水での滴下希釈(ほぼ1:10の比)、又は式Iの化合物のメタノール又はTHF溶液の回転蒸発、又は式Iの化合物のt−ブタノール溶液の凍結乾燥によって製造することができる。
【0102】
この非結晶形のX線粉末回折パターンは、結晶形に特徴的な鋭いピークが全くない、4〜40°での典型的な非結晶形の広いこぶ状ピークを特徴とする。図15Aは、この非結晶形のX線粉末回折パターンを提供する。
【0103】
図15Bに示す非結晶形のラマンスペクトル図には、ほぼ995、1265、1366、1435、1468、1562、1589、及び1640でのラマンシフトピーク(cm−1)が含まれる。
【0104】
P.混合物
上記に論じた結晶形及び非結晶形は、混合物で存在してもよく、ここで固体形は、上記に論じた固体形の少なくとも2つを含んでなる混合物として存在する。例えば、Ibm−2型は、Ib型及びVI型の混合物である、準安定形である。この準安定形は、Ib型を約45℃以上の温度で真空下に脱水させることによって製造することができる。VI型の部分水和も準安定的なIbm−2型をもたらす場合がある。Ibm−2型は、周囲湿度下での完全な水和時に、Ib型へ変換する。Ibm−2型は、図16に示すようなピークのあるX線粉末回折パターンを特徴とする。この回折パターンは、Ib型及びVI型の回折パターンの和より生じるパターンと一致する。Ibm−2型のDSCサーモグラムは、10℃/分の走査速度で、脱水吸熱の開始を約73℃に、そして結晶融解吸熱の開始を約177℃に示す。
【0105】
III.本発明の医薬組成物
本発明の活性薬剤(即ち、本明細書に記載する式Iの化合物の多形又は非結晶形、又はこれらの混合物)は、獣医学とヒト医学の両方での使用に適した医薬組成物へ製剤化してよい。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性薬剤と1以上の不活性な、医薬的に許容される担体、並びに、随意に他の治療成分、安定化剤、等を含む。担体は、本製剤の他の成分と適合可能であり、そのレシピエントに対して不当に有害ではないという意味で医薬的に許容されなければならない。本組成物には、さらに、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、濃化剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤が含まれる)、芳香剤、味マスキング剤、無機塩(例、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例、塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN 20」及び「TWEEN 80」のようなポリソルベートと、F68及びF88のようなプルロニック、BASFより入手可能)、ソルビタンエステル、脂質(例、レシチンや他のホスファチジルコリンのようなのようなリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸及び脂肪酸エステル、ステロイド(例、コレステロール))、及びキレート剤(例、EDTA、亜鉛、及び他のそのような好適なカチオン)が含まれてよい。本発明による組成物における使用に適した他の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science & Practice of Pharmacy)」第19版、ウィリアムズ・アンド・ウィリアムズ(1995)、及び「医師必携(Physician's Desk Reference)」第52版、メディカル・エコノミクス、ニュージャージー州モントヴェール(1998)、及び「医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」第3版、A. H. Kibbe 監修、ファーマシューティカル・プレス(2000)に収載されている。本発明の活性薬剤は組成物で製剤化してよく、経口、直腸、局所、経鼻、眼、又は非経口(腹腔内、静脈内、皮下、又は筋肉内注射が含まれる)投与に適したものが含まれる。
【0106】
製剤中の活性薬剤の量は、剤形、治療すべき状態、標的の患者集団、及び他の考察事項が含まれる、多様な要因に依存して変動するものであり、一般に、当業者により容易に決定することができる。治療有効量は、プロテインキナーゼを変調させる、調節する、又は阻害するのに必要な量であろう。実際、これは、特別な活性薬剤、治療すべき状態の重症度、患者集団、製剤の安定性、等に依存して広く変動するものである。一般に、組成物は、約0.001重量%〜約99重量%の活性薬剤、好ましくは約0.01%〜約5重量%の活性薬剤、そしてより好ましくは約0.01%〜2重量%の活性薬剤を含有し、組成物に含まれる賦形剤/添加剤の相対量にも依存するものである。
【0107】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての活性薬剤の治療有効量を1以上の適切な医薬担体と慣用の手順に従って組み合わせることによって調製される慣用の剤形において投与される。これらの手順は、所望される調製物になるように、これらの成分を適宜、混合、造粒及び圧縮、又は溶解することを伴う場合がある。
【0108】
利用する医薬担体は、固体でも液体でもよい。例示の固体担体には、乳糖、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、等が含まれる。例示の液体担体には、シロップ、落花生油、オリーブ油、水、等が含まれる。同様に、担体には、単独又はワックスとのグリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレート、等のような、当該技術分野で知られた時間遅延又は時間放出材料を含めてよい。
【0109】
多様な医薬形態が利用可能である。従って、固体担体を使用するならば、調製物は、錠剤化しても、散剤又はペレット剤の形態で硬ゼラチンカプセル剤へ入れても、トローチ剤又は甘味入り錠剤の形態であってもよい。固体担体の量は変動してよいが、一般的には、約25mg〜約1gであろう。液体担体を使用するならば、調製物は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、アンプル又はバイアル中の無菌で注射可能な溶液剤又は懸濁液剤、又は非水性の液体懸濁液剤の形態であってよい。
【0110】
安定な水溶性の剤形を得るには、活性薬剤の医薬的に許容される塩をコハク酸又はクエン酸の0.3M溶液のような、有機酸又は無機酸の水溶液に溶かす。可溶性の塩形が入手可能でなければ、活性薬剤を好適な共溶媒又は共溶媒の組合せに溶かしてよい。好適な共溶媒の例には、限定されないが、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリン、等が全容量の0〜60%に及ぶ濃度で含まれる。組成物は、水又は等張生理食塩水又はデキストロース溶液のような好適な水性担体中の活性薬剤の塩形の溶液の形態であってもよい。
【0111】
本発明の組成物に使用する活性薬剤の実際の投与量は、使用する特別な複合体、製剤化される特別な組成物、投与の形式と特別な部位、治療される宿主及び疾患に従って変動するものであると理解されよう。当業者は、薬剤の実験データに照らして慣用の投与量決定試験を使用して、所与の条件のセットに最適な投与量を確認することができる。経口投与では、一般的に利用される例示の1日用量は、体重kgにつき約0.001〜約1000mgであり、より好ましくは体重kgにつき約0.001〜約50mgであり、治療の経過に伴って適切な間隔で繰り返す。プロドラッグの投与は、典型的には、完全活性形の重量レベルと化学的に同等である重量レベルで投薬される。
【0112】
本発明の組成物は、医薬組成物を調製することについて一般的に知られたやり方で製造してよく、例えば、混合、溶解、造粒、糖剤作製、水ひ、乳化、被包化、捕捉又は凍結乾燥のような慣用技術を使用する。医薬組成物は、医薬的に使用することができる調製物へ活性化合物を加工処理することを容易にする賦形剤及び助剤より選択し得る、1以上の生理学的に許容される担体を使用する慣用の手段で製剤化してよい。
【0113】
適切な製剤は、選択する投与経路に依存する。注射剤では、本発明の薬剤を、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合可能な緩衝液において水溶液剤へ製剤化してよい。経粘膜投与では、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤に使用する。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。
【0114】
経口投与では、当該技術分野において知られた医薬的に許容される担体と本活性化合物を組み合わせることによって、化合物を容易に製剤化することができる。そうした担体は、治療される患者による経口摂取用の、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液剤、等として本発明の化合物を製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、有効成分(薬剤)と混合して固体賦形剤を使用し、生じる混合物を随意に粉砕し、所望されるならば、錠剤又は糖剤の芯を得るために、好適な助剤を加えた後で顆粒の混合物を加工処理して、入手することができる。好適な賦形剤には、乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールが含まれる糖;並びに、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はポリビニルピロリドン(PVP)のような充填剤が含まれる。所望されるならば、架橋性ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムのようなその塩といった崩壊剤を加えてよい。
【0115】
糖剤の芯は、好適なコーティング剤で提供される。この目的には、濃縮糖溶液を使用してよく、これは、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、Carbopolゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物を随意に含有してよい。識別のためか又は異なる活性薬剤の組合せを特徴づけるために、錠剤又は糖剤のコーティング剤へ染料又は色素を加えてよい。
【0116】
経口で使用し得る医薬調製物には、ゼラチン製のプッシュフィット式カプセル剤、並びにゼラチン製の密封された軟カプセル剤と、グリセロール又はソルビトールのような可塑剤が含まれる。プッシュフィット式カプセル剤は、乳糖のような充填剤、デンプンのような結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、並びに、随意に安定化剤と混合して有効成分を含有してよい。軟カプセル剤では、脂肪オイル、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールのような好適な液体に活性薬剤を溶かしても懸濁させてもよい。さらに、安定化剤を加えてよい。経口投与用の製剤は、いずれもそのような投与に適した剤形であるべきである。頬内投与では、組成物は、慣用のやり方で製剤化される錠剤又は甘味入り錠剤の形態をとってよい。
【0117】
鼻腔内又は吸入による投与では、本発明による使用の化合物は、好便にも、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスの使用により、加圧パック又はネブライザーからエアゾールスプレー表出の形態で送達される。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、目盛量を送達するバルブを提供することによって決定することができる。吸入器又は通気器、等に使用のゼラチンのカプセル剤及びカートリッジ剤は、本化合物と乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化してよい。
【0118】
本化合物は、注射による、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与用に製剤化してよい。注射用の製剤は、単位剤形において、例えば、アンプル又は多用量容器において、添加の保存剤と一緒に提示してよい。本組成物は、油性又は水性の担体中の懸濁液剤、溶液剤又は乳剤のような形態をとってよく、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤のような製剤用の薬剤を含有してよい。
【0119】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶形の活性化合物の水溶液剤が含まれる。さらに、活性薬剤の懸濁液剤も好適な油性の注射懸濁液剤として調製してよい。好適な親油性の溶媒又は担体には、ゴマ油のような脂肪油、又はオレイン酸エチル又はトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。水性の注射懸濁液剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランのような、懸濁液剤の粘度を高める物質を含有してよい。随意に、懸濁液剤は、化合物の溶解度を高めて高濃度の溶液剤の調製を可能にする好適な安定化剤又は薬剤を含有してもよい。
【0120】
眼への投与では、例えば、前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、及び強膜が含まれる、眼の角膜及び内部領域に化合物が浸透することを可能にするのに十分な時間の間、眼の表面と接触した状態で化合物が維持されるように、医薬的に許容される眼科用の担体で活性薬剤を送達する。医薬的に許容される眼科用の担体は、例えば、軟膏、植物油、又は被包材料であってよい。本発明の化合物はまた、硝子体液及び房水、又は眼腱下(subtenon)へ直に注射してもよい。
【0121】
あるいは、有効成分は、使用前に好適な担体、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末形であってよい。本化合物はまた、例えばココア脂又は他のグリセリドのような慣用の坐剤基剤を含有する、坐剤又は停留浣腸剤のような直腸用組成物に製剤化してもよい。
【0122】
上記の製剤に加えて、本化合物は、デポー調製物として製剤化してもよい。そうした長期作用性の製剤は、埋込み(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与してよい。従って、例えば、本化合物は、好適なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容されるオイル中の乳剤のような)、又はイオン交換樹脂で、又はほとんど溶けない誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化してよい。
【0123】
疎水性化合物のための医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性の有機高分子、及び水相を含んでなる共溶媒系である。共溶媒系は、VPD共溶媒系であってよい。VPDは、3%(w/v)ベンジルアルコール、8%(w/v)の非極性界面活性剤、ポリソルベート80、及び65%(w/v)ポリエチレングリコール300の溶液であり、無水エタノールで容量調整する。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、5%デキストロース水溶液で1:1希釈したVPDを含有する。この共溶媒系は、疎水性化合物も溶かし、それ自体は、全身投与時に低毒性を生じる。当然ながら、この共溶媒系の比率は、その溶解度及び毒性の特徴を壊すことなく、かなり変化させてよい。さらに、共溶媒成分のアイデンティティーを変化させてよく、例えば、ポリソルベート80の代わりに、他の低毒性の非極性界面活性剤を使用してよく;ポリエチレングリコールの分画サイズを変化させてよく;ポリエチレングリコールを他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンに置き換えてよく;そして、デキストロースを他の糖又は多糖で代用してよい。
【0124】
あるいは、疎水性医薬化合物の他の送達系も利用してよい。リポソームと乳剤は、疎水性薬物の送達運搬体又は担体の知られた例である。ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も利用してよいが、通常は、より大きな毒性の代償がある。さらに、本化合物は、治療薬剤を含有する固体の疎水性ポリマーの半透過マトリックスのような、持続放出系を使用して送達してよい。様々な持続放出材料が確立され、当業者に知られている。持続放出カプセル剤は、その化学的性質に依存して、数週間〜100日を越えるまでの間化合物を放出することができる。治療試薬の化学的性質及び生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化の追加戦略を利用してよい。
【0125】
本医薬組成物はまた、好適な固相又はゲル相の担体又は賦形剤を含んでよい。そうした担体又は賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールのようなポリマーが含まれる。
【0126】
IV.本発明の化合物を使用する方法
本発明の化合物は、プロテインキナーゼの活性に仲介するのに有用である。より特別には、本化合物は、抗血管新生剤として、そしてとりわけ、VEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAK及びホスホリラーゼキナーゼと関連した活性のような、プロテインキナーゼの活性を変調させる、及び/又は阻害するための薬剤として有用であるので、ヒトが含まれる哺乳動物におけるプロテインキナーゼにより仲介される細胞増殖と関連した癌や他の疾患の治療法を提供する。
【0127】
本発明の薬剤の治療有効量は、プロテインキナーゼの変調又は調節により仲介される疾患を治療するために、典型的には医薬組成物の形態で投与することができる。「有効量」は、そのような治療の必要な哺乳動物へ投与されるとき、チロシンキナーゼのような1以上のプロテインキナーゼの活性により仲介される疾患の治療をもたらすのに十分である薬剤の量を意味すると企図される。従って、本発明の化合物の治療有効量は、1以上のプロテインキナーゼの活性により仲介される疾患状態が抑制又は軽減されるように、その活性を変調、調節、又は阻害するのに十分な量である。所与の化合物の有効量は、疾患状態やその重症度、そして治療の必要な哺乳動物のアイデンティティー及び条件(例、体重)のような要因に依存して変動するものであるが、それでもやはり、当業者が定型的に決定してよい。「治療すること」は、チロシンキナーゼのような1以上のプロテインキナーゼの活性により少なくとも一部影響を受ける、ヒトのような哺乳動物における疾患状態の少なくとも軽減を意味すると企図され、特に、哺乳動物がある疾患状態を有する素因があると認められたが、まだそれを有していると診断されていない場合に、その疾患状態が哺乳動物において生じることを予防すること;その疾患状態を変調させる、及び/又は阻害すること;及び/又は、その疾患状態を緩和することが含まれる。例示の疾患状態には、糖尿病性網膜症、血管新生性緑内障、慢性関節リウマチ、乾癬、加齢関連黄斑変性(AMD)、及び癌(固形腫瘍)が含まれる。
【0128】
キナーゼの活性のようなプロテインキナーゼ活性の変調剤としての本化合物の活性は、in vivo 及び/又は in vitro アッセイが含まれる、当業者に利用可能などの方法によっても測定してもよい。活性測定に適したアッセイの例には、Parast,C.et al., BioChemistry, 37, 16788-16801 (1998);Jeffrey et al., Nature, 376, 313-320 (1995);WIPO国際特許公開公報番号WO97/34876;及び、WIPO国際特許公開公報番号WO96/14843に記載のものが含まれる。
【0129】
V.実施例
以下の実施例は、本発明を例証するために示すのであって、本発明を限定するものとみなしてはならない。他に述べなければ、温度はすべて摂氏(℃)で示し、分量及び百分率はいずれも、重量による。HPLCデータは、ヒューレット・パッカード HP−1100 HPLCを使用して入手した。
【0130】
実施例1
多形I型
式Iの化合物の合成由来の組成材料(155mg)を5mLエタノールにスラリー化してから、加熱して30分間還流した。この試料をそのままゆっくり23℃へ冷やした。固形物を濾過により採取して、高真空下に85℃で乾燥させた。I型をX線回折により確認して、HPLC純度は、>98%であった。
【0131】
実施例2
多形II型
実施例1からのI型をテトラヒドロフランに60℃で溶かしてから、ヘキサンの漸次添加により再結晶させて、II型を得た。II型をX線回折により確認した(HPLC純度>98%)。
【0132】
実施例3
多形III型
実施例1からのI型を軽鉱油に192℃で1時間スラリー化してから、室温へ冷やした。この固形物を濾過により採取し、ヘキサンで洗浄してから、50℃で真空下に乾燥させた。III型をX線回折により確認した(HPLC純度>97%)。
【0133】
実施例4
多形IV型
式Iの化合物の合成からの粗製材料を酢酸エチル及びエタノールに溶かした。1:1 NaHCO:水の添加により再結晶化を行った。IV型をX線回折により確認した(HPLC純度>99%)。
【0134】
実施例5
多形V型
実施例4からのIV型固形物を重鉱油に130℃で懸濁させてから、180℃で1時間半の間スラリー化した。この固形物を濾過により採取し、ヘキサンで洗浄してから、真空で乾燥させた。V型をX線回折により確認した(HPLC純度>99%)。
【0135】
実施例6
多形Ia型
実施例1からのI型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に周囲温度で7日間スラリー化して、Ia型を得た。Ia型をX線回折により確認した(HPLC純度>99%)。
【0136】
実施例7
多形Ib型
実施例1からのI型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に90℃で3日間スラリー化して、Ib型を得た。あるいは、Ib型は、エタノール:水からの65℃での結晶化によって入手した。Ib型をX線回折により確認した(HPLC純度>99%)。
【0137】
実施例8
多形IIa型
実施例2からのII型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に周囲温度で7日間スラリー化して、IIa型を得た。IIa型をX線回折により確認した(HPLC純度>99%)。
【0138】
実施例9
多形IIb型
実施例2からのII型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に90℃で3日間、次いで周囲温度で17日間スラリー化して、IIb型を得た。IIb型をX線回折により確認した。
【0139】
実施例10
多形IIIa型
実施例3からのIII型を93%相対湿度に周囲温度で10日間置くか、又は水(ほぼ20〜40mg/mL)に周囲温度で7日間スラリー化して、IIIa型を得た。IIIa型をX線回折により確認した。
【0140】
実施例11
多形IIIb型
実施例10からのIIIa型を50℃で真空下に乾燥させて、IIIb型を得た。IIIb型をX線回折により確認した。
【0141】
実施例12
多形IVa型
実施例4からのIV型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に周囲温度で7日間スラリー化して、IVa型を得た。IVa型をX線回折とDSCにより確認した。
【0142】
実施例13
多形Va型
実施例5からのV型を水(ほぼ20〜40mg/mL)に周囲温度で7日間スラリー化して、Va型を得た。Va型をX線回折により確認した。
【0143】
実施例14
多形VI型
実施例7からのIb型を140℃で10分間加熱して、VI型を得た。VI型をX線回折により確認した。
【0144】
実施例15
非結晶型
非結晶形は、式Iの化合物のポリエチレングリコール400溶液の水での滴下希釈(ほぼ1:10の比)によって製造したか、又は式Iの化合物のメタノール又はTHF溶液の回転蒸発によって製造したか、又は式Iの化合物のt−ブタノール溶液の凍結乾燥によって製造した。
【0145】
実施例16
多形Ibm−2型
実施例7からのIb型を50℃で真空下に加熱してIbm−2型を得て、X線回折により、これが多形Ib型及びVI型の混合物であることを確認した。
【0146】
実施例17
多形Ib型のヒアルロン酸塩懸濁液製剤における使用
ヒアルロン酸ナトリウム(1% w/w)を、0.85%塩化ナトリウム、0.022%二塩基性リン酸ナトリウム、0.004%一塩基性リン酸ナトリウム、及び97.15%水を含有するpH7.4等張リン酸ナトリウム緩衝溶液に溶かして、粘稠な溶液を生成する。次いで、この溶液を濾過により滅菌する。次いで、実施例7からの微小化及び無菌化したIb型(0.1〜1.0% w/w)を加えて、穏やかなインペラー混合によって、均質な懸濁液を生成する。
【0147】
実施例18
多形Ib型のCMC懸濁液製剤における使用
ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)(0.5% w/w)を水に溶かしてから、濾過により滅菌する。次いで、実施例7からのIb型の適正量(0.1〜1.0% w/w)を加えて、渦撹拌と10分までの音波処理によって、均質な懸濁液を生成する。
【0148】
本発明が関連する技術分野の当業者には、上記の記載に提示された教示の利益を有する、本発明の多くの修飾や他の態様が考案されるであろう。故に、本発明が開示された具体的な態様に限定されないこと、そして修飾や他の態様が付帯の特許請求項の範囲内に含まれると企図されることを理解されたい。本明細書では具体的な用語を利用しているが、それらは一般的かつ記述的な意味でのみ使用されていて、限定の目的で使用されていない。
【図面の簡単な説明】
【0149】
本発明を一般的な用語で記載してきたが、以下、付帯の図面が参考になろう。ここで:
【図1A】図1Aは、本発明の多形I型のX線粉末回折図である;
【図1B】図1Bは、本発明の多形I型の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである;
【図1C】図1Cは、本発明の多形I型のラマンスペクトル図である;
【図2A】図2Aは、本発明の多形II型のX線粉末回折図である;
【図2B】図2Bは、本発明の多形II型のDSCサーモグラムである;
【図2C】図2Cは、本発明の多形II型のラマンスペクトル図である;
【図3A】図3Aは、本発明の多形III型のX線粉末回折図である;
【図3B】図3Bは、本発明の多形III型のDSCサーモグラムである;
【図3C】図3Cは、本発明の多形III型のラマンスペクトル図である;
【図4A】図4Aは、本発明の多形IV型のX線粉末回折図である;
【図4B】図4Bは、本発明の多形IV型のDSCサーモグラムである;
【図4C】図4Cは、本発明の多形IV型のラマンスペクトル図である;
【図5A】図5Aは、本発明の多形V型のX線粉末回折図である;
【図5B】図5Bは、本発明の多形V型のDSCサーモグラムである;
【図5C】図5Cは、本発明の多形V型のラマンスペクトル図である;
【図6A】図6Aは、本発明の多形Ia型のX線粉末回折図である;
【図6B】図6Bは、本発明の多形Ia型のDSCサーモグラムである;
【図7A】図7Aは、本発明の多形Ib型のX線粉末回折図である;
【図7B】図7Bは、本発明の多形Ib型のDSCサーモグラムである;
【図7C】図7Cは、本発明の多形Ib型のラマンスペクトル図である;
【図8A】図8Aは、本発明の多形IIa型のX線粉末回折図である;
【図8B】図8Bは、本発明の多形IIa型のDSCサーモグラムである;
【図9A】図9Aは、本発明の多形IIb型のX線粉末回折図である;
【図9B】図9Bは、本発明の多形IIb型のDSCサーモグラムである;
【図9C】図9Cは、本発明の多形IIb型のラマンスペクトル図である;
【図10A】図10Aは、本発明の多形IIIa型のX線粉末回折図である;
【図11A】図11Aは、本発明の多形IIIb型のX線粉末回折図である;
【図11B】図11Bは、本発明の多形IIIb型のDSCサーモグラムである;
【図11C】図11Cは、本発明の多形IIIb型のラマンスペクトル図である;
【図12A】図12Aは、本発明の多形IVa型のX線粉末回折図である;
【図12B】図12Bは、本発明の多形IVa型のDSCサーモグラムである;
【図13A】図13Aは、本発明の多形Va型のX線粉末回折図である;
【図13B】図13Bは、本発明の多形Va型のDSCサーモグラムである;
【図13C】図13Cは、本発明の多形Va型のラマンスペクトル図である;
【図14A】図14Aは、本発明の多形VI型のX線粉末回折図である;
【図14B】図14Bは、本発明の多形VI型のDSCサーモグラムである;
【図14C】図14Cは、本発明の多形VI型のラマンスペクトル図である;
【図15A】図15Aは、本発明の非結晶形のX線粉末回折図である;
【図15B】図15Bは、本発明の非結晶形のラマンスペクトル図である;そして
【図16】図16は、本発明の多形Ibm−2型のX線粉末回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミド又はその医薬的に許容される塩の結晶形。
【請求項2】
I、II、III、IV、V、Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、Va、又はVI型のいずれかの実質的に純粋な多形である、請求項1の結晶形。
【請求項3】
Ib型の実質的に純粋な多形である、請求項1の結晶形。
【請求項4】
10.2及び13.8の回折角(2θ)にピークを含んでなる粉末X線回折パターンを有する、請求項3の結晶形。
【請求項5】
10.2、13.8、20.1、及び26.2の回折角(2θ)にピークを含んでなる粉末X線回折パターンを有する、請求項3の結晶形。
【請求項6】
図7Aに示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを含んでなる粉末X線回折パターンを有する、請求項3の結晶形。
【請求項7】
図7Cに示すものと本質的に同じラマンスペクトルを特徴とする、請求項3の結晶形。
【請求項8】
2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミド又はその医薬的に許容される塩の非結晶形。
【請求項9】
以下の固体形:多形I、II、III、IV、V、Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、Va、VI型、及び非結晶形の少なくとも2つを含んでなる混合物である、2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−カルボン酸{2−フルオロ−5−[3−((E)−2−ピリジン−2−イル−ビニル)−1H−インダゾール−6−イルアミノ]−フェニル}−アミドの固体形。
【請求項10】
実質的に純粋なIbm−2型の多形である、請求項1の結晶形。
【請求項11】
請求項2〜10の結晶形又は固体形のいずれかを含んでなる医薬組成物。
【請求項12】
プロテインキナーゼ活性により仲介される哺乳動物の疾患状態を治療する方法であって、請求項11の医薬組成物の治療有効量をその必要な哺乳動物へ投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項13】
哺乳動物の疾患状態が、腫瘍成長、細胞増殖、又は血管新生と関連している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項2〜10に記載の結晶形又は固体形の有効量とキナーゼ受容体を接触させることを含んでなる、プロテインキナーゼ受容体の活性を変調させる方法。
【請求項15】
プロテインキナーゼ受容体がVEGF受容体である、請求項14に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−529500(P2007−529500A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503434(P2007−503434)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000616
【国際公開番号】WO2005/090331
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】