説明

2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体及びその製造方法

【課題】
2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの保管または輸送時において、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの経時的な劣化及び着色を防止する包装方法を提供する。
【解決手段】
アルミラミネートフィルムからなる袋により包装されてなる2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体である。好ましくは袋内の空気を不活性ガスにより置換した後、密封を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体及びその製造法に関する。本発明の包装体は、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを保管または輸送する際の包装形態として好ましい。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノン化合物は酸化防止剤としての特性を有し、特に2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンは他の薬剤と混合使用することで、写真用フィルム等の酸化防止剤として、その有用性が着目されている。しかしながら、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンは徐々に空気中で酸化されて純度が低下し、酸化防止機能も低下する。また、保管中に色相が本来の白色から褐色に変色し易く、変色した2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを写真用フィルム等に使用するとフィルム機能が低下する。このため、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを包装して長期保存するには、その包装体にガス(酸素)・水蒸気等のバリア性が必要であるほか、強度や遮光性が要求される。このような包装方法として、例えばポリエチレン製の袋あるいは瓶を用い、またはガラス製の瓶を用いて、その容器内部の空気を不活性ガスにて置換し内容物の保護をはかる包装方法がある。
【0003】
前者のポリエチレン製袋・瓶による包装は、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを導入し空気を置換することは可能であるが僅かに酸素の透過性があり、長期保管した場合、透過した酸素により内容物が酸化されて純度が低下する問題点がある。また、光を透過するため、光による劣化や着色の問題もある。
【0004】
これに対して、ガラス製の瓶を使用した場合は、容器の酸素透過性がなく不活性ガス置換後も酸素の侵入が少なく、かつ褐色ガラス瓶を使用すれば光の透過も防ぐことができる。しかし、ガラス製瓶は容器の破損の危険性があり、保管にあたり容器を積み上げられないため輸送に不都合である。さらに包装体形状が固定されるので、減圧によっても完全な空気の除去は不可能であり、わずかな酸素が残留し酸化を引き起こす。
【0005】
また、他の方法として、脱酸素・脱湿剤を添加、あるいは包装体の内側に固定して、包装体内の水分や酸素を吸着固定する方法もあるが、この場合、製品使用時に脱酸素・脱湿剤が異物として混入する恐れがあり、開封使用時に細心の注意が必要である。
【0006】
このような被酸化性粉体の他の包装手段として、例えば特許文献1には長期の酸素ガスバリア性を持続できる酸素吸収性樹脂層、ガスバリア性樹脂層、熱可塑性樹脂層が積層されているガスバリア性フィルム包装体が開示されている。しかしながらこのガスバリア性フィルム包装体は透明材料であるため、光による内容物の劣化や着色の問題がある。
【特許文献1】特開2007−283564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを保管または輸送する際に、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの経時的な劣化及び着色を引き起こすことなく、また、強度や物性を維持することのできる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、アルミラミネートフィルムからなる袋により2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを包装する事で、保管または輸送する際の劣化及び着色が防止できる包装体を見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
即ち本発明は、
(1)アルミラミネートフィルムからなる袋により包装されてなる2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
(2)前記アルミラミネートフィルムが基材層、バリア層及びシーラント層を有し、バリア層と基材層間又はバリア層とシーラント層間に補強層を設けた積層フィルムであって、該積層フィルムのヒートシールにより袋が形成されてなる(1)の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
(3)各層が接着剤を介して積層してなる(2)の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
(4)前記バリア層がアルミニウム箔である(2)の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
【0010】
(5)耐圧容器内に設けた封止装置に2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを収容したアルミラミネート袋を配置し、該耐圧容器内を減圧してアルミラミネート袋内の脱気を行い、ついで前記アルミラミネート袋の開口部を封止することを特徴とする2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル) ハイドロキノン包装体の製造方法。
(6)前記アルミラミネート袋が基材層、バリア層及びシーラント層を有し、バリア層と基材層間又はバリア層とシーラント層間に補強層を設けた積層フィルムをヒートシールした袋であることを特徴とする(5)の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル) ハイドロキノン包装体の製造方法。
(7)脱気操作後、不活性ガスを供給して大気圧に戻し、次いで前記耐圧容器内を減圧する操作を1又は2回以上行った後に開口部を封止することを特徴とする(5)の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル) ハイドロキノン包装体の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを保管または輸送時において経時的な劣化及び着色を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に使用されるアルミラミネートフィルム及び該アルミラミネートフィルムからなる包装体について説明する。
本発明に使用されるアルミラミネートフィルムは、アルミニウム箔を含む複数層を接着剤を介して積層してなる積層フィルムで、一般的には基材層、アルミニウム箔からなるバリア層及びシーラント層とから成り、前記基材層と前記バリア層間又は前記バリア層と前記シーラント層間に補強層がそれぞれ積層されてなる。
【0013】
基材層は、前記アルミラミネートフィルムの基材となり、前記アルミラミネートフィルムを袋として使用する際、該アルミラミネート袋の外層を成すもので、前記アルミラミネート袋の内部に収容した2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの保存状態を長期間にわたって好適な状態に保つべく、外部からの応力に対して耐久性等を有するよう、適度な強度を備えるほか、外部からの刺激によってピンホール等が発生することのないよう、突き刺し強度の高い材質を使用することが好ましい。
【0014】
前記基材層を形成可能な材質としては、延伸ポリエステル系樹脂フィルム、延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム、延伸ポリアミド系樹脂フィルム、例えばポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルムを挙げることができる。
【0015】
これらの樹脂フィルムは二軸延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエステル系樹脂としては、ユニチカ(株)製「エンブレットPTM」等の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂としては、東洋紡績(株)製「パイレンフィルムP2161」等の二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリアミド系樹脂としては、ユニチカ(株)製「エンブレム」等の二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)を例示することができる。
前記基材層の厚みは5〜50μm、好ましくは8〜30μmである。
【0016】
又、前記アルミラミネート袋が静電気の帯電や周囲の電界・磁界による影響を受けないような帯電防止性を有するよう、前記基材層に帯電防止処理を施しても良い。帯電防止処理の方法としては、前記基材層の一方の面(外側となる面)に帯電防止剤を塗布して帯電防止層を形成しても良く、又は前記基材層を構成する樹脂自体に帯電防止剤を含有させても良く、これにより前記基材層の表面固有抵抗を1013Ω/cm以下とすることが好ましい。
【0017】
バリア層は、前記包装体の内部に酸素・水蒸気・光等を透過させることのないようにガスバリア層として機能する。そのため、前記バリア層は、内部に収容した2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを外部からの光による劣化、変色を抑えることができ、ガス(酸素)・水蒸気等からの遮断性を有するものが好適であり、また、内部からの応力に対して耐久性を有するよう、適度な強度を備える材質を使用するものとする。
【0018】
前記バリア層を形成可能な材質としては、アルミニウム箔を挙げることができる。例えば住軽アルミ箔株式会社の製品等の市販の製品が好適に用いられ7〜9μmの厚さのものが好ましい。
又、前記バリア層にアルミニウム箔を用いることで酸素透過度を50ml/m・24hrs・MPa以下とすることができ、良好なガスバリア性と防湿性を持ち、さらに導電性を有することで2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを包装した際に該2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンが導体によって覆われることで静電シールドされることとなり、その結果、外部の静電界やガス(酸素)・水蒸気等の侵入を同時に保護することが可能となっている。
【0019】
補強層は、前記包装体の強度を増すために設ける層で、前記基材層と前記バリア層間又は前記バリア層と前記シーラント層間にある事が好ましく、前記バリア層と前記シーラント層の間にある事がより好ましい。
前記補強層を形成可能な材質としては、透明であり前記袋体において必要とされる強度を得ることができるものであれば材質は限定されないが、ポリアミド系樹脂フィルムが該包装体の強度を向上させやすく好適である。
【0020】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド類、ポリキシレンジアミンアジパミド(MXD6)等の芳香族系ポリアミド類があげられる。特に、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバミッド」等のポリアミド樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「レニー」等のポリアミドMXD6樹脂を例示することができる。
前記補強層の厚みは3〜20μm、好ましくは5〜16μmである。
【0021】
シーラント層は、包装用フィルムを包装袋として使用する際に該包装袋の内層を成すもので、前記包装袋の加工にあたってヒートシール層として機能する。
そのため、前記シーラント層は、ヒートシール適性を有し、かつヒートシール強度の高いものが好適であり、また、包装袋内部からの応力に対して耐久性を有するよう、適度な強度や突き刺し強度を備える材質を使用するものとする。
【0022】
前記シーラント層として使用可能な材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、特に、昭和電工プラスチックプロダクツ(株)製「アロマーXET20」等の無延伸ポリプロピレン(CPP)、昭和電工プラスチックプロダクツ(株)製「アロマーTP9」等の、ポリプロピレン(PP)を多層共押出して得られる易剥離性無延伸ポリプロピレン、積水フィルム(株)製「ラミロンMH」等の無延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の耐放射線性を有する樹脂を使用することができる。
前記シーラント層の厚みは突刺し強度維持の観点と加工性を考慮して30〜200μm、好ましくは40〜120μmである。
【0023】
(積層フィルムの製造方法)
本発明に使用される前記アルミラミネートフィルムは、前記基材層、アルミニウム箔からなる前記バリア層及び前記シーラント層、また前記基材層と前記バリア層間又は前記バリア層と前記シーラント層間に前記補強層を、既知の積層方法を用いて積層することができ、一例としてはドライラミネート加工法を用いて積層することが挙げられる。
【0024】
前記積層の際に用いられる接着剤についても、既知の各種接着剤を使用することができ、例えはポリエステル系やポリエーテル系のドライラミネート用接着剤を挙げることができる。好ましくは、エポキシ系化合物を含まない脂肪族ポリエステル−ポリウレタン系接着剤である。
これら接着剤を用いて接着した前記積層フィルムは、好ましくは20〜70℃の温度で6〜48時間、より好ましくは40〜60℃で12〜48時間エージングを行い、接着状態を安定化させる。
【0025】
前述のようにして構成された前記積層フィルムからなる本発明に使用される前記アルミラミネートフィルムは、これを使用して袋に形成することで、本発明の包装体を得ることができる。
前記アルミラミネートフィルムを使用した包装体の形成方法としては、前記積層フィルムのシーラント層同士が重なり合うように配置すると共に、ヒートシールによって重なり合わせた前記積層フィルムをヒートシールすることによって、所定形状、所定サイズの包装体に形成することができる。
【0026】
この包装体の形成に際しては、所定の大きさに切断した前記積層フィルムをシーラント層が内側となるよう重ね合わせてヒートシールしたり、前記積層フィルムを折り返して重ね合わせた上でヒートシールするなどして形成することができる。好ましくは前記積層フィルムを半折りして三辺シール袋とし、又は前記積層フィルムをヒダ折りにして得られたガゼット袋とすることが好ましい。
【0027】
(ハイドロキノンの包装)
前記アルミラミネート袋に、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを収容して包装体とするには真空包装機を使用するのが好ましい。真空包装機は、容器本体と蓋体を有する耐圧容器と、この耐圧容器内を負圧化する真空ポンプ及び不活性ガスを噴出させるガスノズルと、耐圧容器内に配置された封止装置とを備える。この様な前記真空包装機を使用して、該2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを前記アルミラミネート袋に収容する方法を以下に説明する。
【0028】
2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを前記アルミラミネート袋に収納した状態で前記真空包装機の容器本体内の所定の位置に収容し、蓋体を閉じてから真空ポンプによって前記真空包装機内を減圧状態として前記アルミラミネート袋内の空気を抜いた後、ガスノズルから窒素等の不活性ガスをゆっくり充填して前記アルミラミネート袋内の残存空気を不活性ガスに置換し前記真空包装機内を不活性ガスで満たす。さらに、真空ポンプによって前記真空包装機内を減圧状態として前記アルミラミネート袋内の不活性ガスを抜く。好ましくは、このような減圧状態と不活性ガスによる置換操作を1又は2回以上行うことでほぼ完全に前記アルミラミネート袋内の空気を除くことができる。次いで、開口部を耐圧容器内に配置した封止装置により前記アルミラミネート袋の開口部を封止する。
このような方法で収容された2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体は、外部からの酸素の侵入および光による酸化、着色が生じないことから、輸送または長期保管に適している。
【実施例】
【0029】
本発明を製造例、実施例、比較例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の記載例に限定されるものではない。
【0030】
[製造例1]
基材層として二軸延伸PETフィルム(ユニチカ(株)製「エンブレットPTM」、長さ1000mm、幅600mm、厚さ12μm)、バリア層としてアルミニウム箔(住軽アルミ箔(株)製「BESPA」、長さ1000mm、幅600mm、厚さ9μm)、補強層としてポリアミド樹脂フィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバミッド」、長さ1000mm、幅600mm、厚さ15μm)、シーラント層としてLLDPEフィルム(積水フィルム(株)製「ラミロンMH」、長さ1000mm、幅600mm、厚さ70μm)をこの順に用い、これらをエポキシ系化合物を含まない脂肪族ポリエステル−ポリウレタン樹脂系接着剤を用いて積層した。積層方法はドライラミネート加工法を用いた。次いで、該積層フィルムをヒートシールして適宜に裁断、長さ425mm、幅250mmのアルミラミネート袋を作製した。
【0031】
[製造例2]
シーラント層としてCPPフィルム(昭和電工プラスチックプロダクツ(株)製「アロマーXET20」、長さ1000mm、幅600mm、厚さ70μm)を用いた以外は、製造例1と同様の各層フィルムを用い、同様にドライラミネートして積層フィルムを得た後、ヒートシールしてアルミラミネート袋を作製した。
【0032】
[製造例3]
基材層としてOPPフィルム(東洋紡績(株)のパイレンフィルムP2161、長さ1000mm、幅600mm、厚さ12μm)を用いた以外は製造例1と同様の各層フィルムを用い、同様にドライラミネートして積層フィルムを得た後、ヒートシールしてアルミラミネート袋を作製した。
【0033】
これらの製造例1〜3の構成をまとめると下記表1のようになる。
なお、本発明の積層フィルム及びアルミラミネート袋はこれら製造例に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲において種々の変更が可能である。
【0034】
【表1】

【0035】
さらに、下記の操作により2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体を作製した。
【0036】
[実施例1]
製造例1で作製したアルミラミネート袋に2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン10kgを充填した。このアルミラミネート袋を自動真空包装機(静電気株式会社製V−853G型)内に収容して、アルミラミネート袋の開口部に窒素ノズルを挟み込んで封止部材にセットした。蓋体を閉じ真空ポンプによって包装機内の空気を60秒間吸引して3Torrまで減圧した。次いで窒素ノズルから窒素を0.1Mpaの圧力で導入して包装機内を常圧に戻した。次に包装機内の窒素ガスを60秒間吸引して3Torrまで減圧した。この窒素充填と減圧の作業を2回行い、アルミラミネート袋内の酸素濃度を0.2vol%とした。減圧状態のままアルミラミネート袋の開口部を上封止部材と下封止部材とにより狭持して3.5秒加熱し、開口部をヒートシールした。最後に包装機内に大気を導入して包装機内を常圧に戻し、包装が終了したアルミラミネート袋の包装体を取り出した。
【0037】
このようにして得られた包装体4袋について保存安定性試験を行った。
包装体4袋のうち2袋は25℃50%RH、蛍光灯の光及び窓からの外光の当たる環境下で保存、別の2袋は25℃50%RHの環境下、光を遮断してそれぞれ150日間保存した。
【0038】
光の当たる環境下及び光を遮断した環境下で保存した袋それぞれ1袋ずつを60日後に、残りのそれぞれ1袋ずつを150日後に開封して、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを取り出し、液体クロマトグラフィー(島津製作所LC−9A)を用いてピーク面積を測定した。全てのピークの総面積に対する2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンのピークの面積を算出して純度を評価した。結果を表2に示す。なお、表中INIの欄は保存試験前の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの品質である。面積%の数値が低いほど2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの劣化が進んでいることを表す。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、アルミラミネート袋を黒色ポリエチレン袋に変えた以外は同様にして2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの包装を行い、保存安定性試験を行った。結果を表2に示す。
【0040】
[比較例2]
実施例1において、アルミラミネート袋を透明ポリエチレン袋に変えた以外は同様にして2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの包装を行い、保存安定性試験を行った。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
条件A; 光の当たる環境下、25℃50%RHの環境下で保存
条件B; 遮光して、25℃50%RHの環境下で保存
INI; 保存試験前の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)
ハイドロキノンの品質
60d; 試験開始後60日後の品質
150d; 試験開始後150日後の品質
色相; 2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンの
目視による色相
【0043】
表2より、本発明の包装体は良好なガスバリア性能を長期間持続でき、経時的な劣化及び着色を引き起こさない包装体である(実施例1)。これに対し、包装体が黒色ポリエチレン袋の場合(比較例1)、透明ポリエチレン袋(比較例2)の場合はいずれも長期間の安定したガスバリア性能が得られなかった。
これより、本発明によれば2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを保管または輸送する際の、経時的な劣化及び着色を防止する包装体を提供できることが分かる。
【0044】
[実施例2〜3]
製造例2〜3で作製したアルミラミネート袋を使用してそれぞれ実施例1と同様の方法で包装体を製造し保存安定性試験を行った結果、同様に良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1にて用いたアルミラミネート袋のフィルム断面構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基材層 ; 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)
2 バリア層 ; アルミニウム箔
3 補強層 ; ナイロンフィルム
4 シーラント層; 無延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミラミネートフィルムからなる袋により包装されてなる2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
【請求項2】
前記アルミラミネートフィルムが基材層、バリア層及びシーラント層を有し、バリア層と基材層間又はバリア層とシーラント層間に補強層を設けた積層フィルムであって、該積層フィルムのヒートシールにより袋が形成されてなる請求項1の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
【請求項3】
各層が接着剤を介して積層してなる請求項2の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
【請求項4】
前記バリア層がアルミニウム箔である請求項2の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体。
【請求項5】
耐圧容器内に設けた封止装置に2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンを収容したアルミラミネート袋を配置し、該耐圧容器内を減圧してアルミラミネート袋内の脱気を行い、ついで前記アルミラミネート袋の開口部を封止することを特徴とする2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン包装体の製造方法。
【請求項6】
前記アルミラミネート袋が、基材層、バリア層及びシーラント層を有し、バリア層と基材層間又はバリア層とシーラント層間に補強層を設けた積層フィルムをヒートシールした袋であることを特徴とする請求項5の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル) ハイドロキノン包装体の製造方法。
【請求項7】
脱気操作後、不活性ガスを供給して大気圧に戻し、次いで前記耐圧容器内を減圧する操作を1又は2回以上行った後に開口部を封止することを特徴とする請求項5の2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル) ハイドロキノン包装体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163194(P2010−163194A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8132(P2009−8132)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000179904)山本化成株式会社 (70)
【Fターム(参考)】