説明

3−ヒドロキシグルタロニトリルの合成方法

アリルシアニドエポキシドをシアニド源の塩基性水溶液と反応させることによる3−ヒドロキシグルタロニトリルを高い収率かつ高い生産性で調製するための方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年8月17日出願の米国仮特許出願第60/956,501号明細書からの35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するとともに、同明細書の利益を主張するものである。この特許出願は、その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される。
【0002】
本発明は化学合成における有用な中間体である3−ヒドロキシグルタロニトリルの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
化合物3−ヒドロキシグルタロニトリルは、薬学的に活性な化合物、毛髪染めにおいて用いられるジアミンおよび高強度繊維用のモノマーなどの種々の有用な材料のための前駆体である。例えば、非特許文献1によって示されたように、3−ヒドロキシグルタロニトリルは、水中で無機シアン化物によりエピクロロヒドリン(「ECH」)を処理し、よって中間体として4−クロロ−3−ヒドロキシ−ブタンニトリル(「クロロヒドリン」としても知られている)を製造することにより従来から合成されてきた。
【化1】

【0004】
しかしながら、この方法は、副生物の生成および商業的に有利でない生産性のレベルの問題を抱えている。
【0005】
その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される米国仮特許出願第60/874,401号明細書は、水およびイオン液体の存在下で、エピハロヒドリン、4−ハロ−3−ヒドロキシ−ブタンニトリル、またはこれらの材料に類似の脱離基がハロゲン以外である化合物をシアニド(CN)と反応させることによる3−ヒドロキシグルタロニトリルを高い収率かつ高い生産性で調製するための方法を提供する。この反応は有用な収率レベルを有し、完了までの観察された反応時間は約17〜約48時間である。
【0006】
しかしながら、3−ヒドロキシグルタロニトリルを高い収率および短い反応時間で製造できる他の方法が必要とされ続けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】F.Johnsonら、J.Org.Chem.(1962),27,2241〜2243
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示された本発明は、3−ヒドロキシグルタロニトリルの調製方法、3−ヒドロキシグルタロニトリルを転化できる生成物の調製方法およびかかる方法によって得られた生成物および得ることができる生成物を含む。
【0009】
これらの方法の一実施形態は、3−ヒドロキシグルタロニトリルを調製する方法であって、
(a)アリルシアニドの溶液をエポキシ化して、以下の式I
【化2】

の構造によって表されるアリルシアニドエポキシドを形成する工程および
(b)約8〜約10の範囲内のpHを有するCN源の水溶液にアリルシアニドエポキシドを接触させる工程
による方法を提供する。
【0010】
これらの方法の別の実施形態は、3−ヒドロキシグルタロニトリルを別の化合物またはオリゴマーもしくはポリマーに転化する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の方法において、3−ヒドロキシグルタロニトリル(「3−HGN」)は、アリルシアニドのエポキシドを形成し、その後、こうして形成されたアリルシアニドエポキシドをシアニド源の塩基性水溶液に接触させることにより製造される。3−HGN(CAS登録番号624−58−8)は、オキシランアセトニトリル、3,4−エポキシブチロニトリルおよびエピシアノヒドリンとしても知られ、これも式Iの構造によって表される。
【0012】
本明細書の方法の第1の工程において、アリルシアニドのエポキシドが形成される。アリルシアニド(CH=CHCHCN、CAS登録番号109−75−1、3−ブテンニトリルとしても知られている)は、例えばSigma−Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。アリルシアニドのエポキシ化は、例えば、F.F.Flemingら,Journal of Organic Chemistry,66,2174−2177頁(2001年)およびE.Meteら,Russian Chemical Bulletin,International Edition,52(8),1879−1881頁(2003年8月)において記載されている。
【0013】
Flemingは、CHCl中のアリルシアニド(0.1〜0.5モル)の室温溶液に1.5当量の固体m−クロロ過安息香酸(「mCPBA」)を添加した。mCPBAの8分の1を合計で8日にわたり毎日添加した。得られた溶液を一晩攪拌し、その後、飽和水性NaHSOを添加して、過剰のmCPBAをm−クロロ安息香酸(「mCBA」)に還元した。生産物を単離するために、有機相を分離し、飽和水性NaHCOで洗浄し、その後、無水NaSOまたは無水MgSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、分析的に純粋なアリルシアニドエポキシドを得た。Meteは、アリルシアニドをmCPBA(CHCl中の1当量)と同様に反応させたが、反応を促進するために超音波浴(47kHz)中で2日にわたり反応混合物を超音波処理もした。
【0014】
他の実施形態において、本明細書の方法は、上述した方法によって製造されたアリルシアニドエポキシドを単離する工程を含む。
【0015】
その後、3−HGNはアリルシアニドエポキシドから形成され、その反応は、概略的に次の通り表すことができる。
【化3】

【0016】
アリルシアニドエポキシドをシアニド源の水溶液に接触させる。シアニド源の適する水溶液は、シアニド源の水溶液を接触させるべきアリルシアニドエポキシドのモルごとに約1〜約1.5モル、好ましくは約1.1〜約1.3モルのCNを含有する。適するCN−源には、限定はされないが、KCN、NaCNおよびLiCNなどのアルカリシアン化物;およびトリメチルシリルシアン化物が挙げられる。アセトンシアノヒドリンを用いてもよい。この場合、塩基モル当たり1モルを超えるアセトンシアノヒドリンまたは塩基モル当たり約3〜約4モルのアセトンシアノヒドリンを添加するような相対量でトリエチルアミンなどの塩基をアセトンシアノヒドリンと共に添加する。
【0017】
シアニド源の水溶液のpHは、約8.0以上、約8.3以上、約8.7以上または約9.0以上、しかし、約10.0以下、約9.7以下、約9.3以下または約9.0以下であってもよい。シアニド源の水溶液のpHは、従って、上で記載された通り種々の最高および最低のあらゆる組み合わせによって形成され得る可能な範囲のいずれかとして表現され得る。約8.0以上のpHが好ましい。所望のpHのシアニド源の水溶液は、約8.0〜約10.0の範囲にpHを下げるのに十分な酸をシアニド源の水溶液に添加することによりシアニド水溶液のpHを調節することによって提供してもよい。この目的のために用いられる特定の酸は重要ではない。適する酸の例には、限定されないが、HSOおよびHClが挙げられる。
【0018】
アリルシアニドエポキシド(式I)をシアニド源の水溶液に接触させて、式IIによって上で一般に記載された中間体を介して3−HGN生産物を生成させるのに十分な時間にわたるアリルシアニドエポキシドとシアニド源の水溶液の反応を得る。ここで、十分な時間は、例えば約4〜約10時間である。こうした反応において用いられるシアニド源の水溶液は、例えば、約0〜約25℃の範囲内の温度を適切に有してもよい。
【0019】
生成物の生成のために十分な時間後に、反応混合物を放置し有機層と水層に分離して3−HGN生産物の単離を可能にする。一般に、3−HGN生成物は水相に主として存在し、従って、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(「THF」)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたはメチルエチルケトン(「MEK」)で水相を抽出してもよい。有機抽出物を濃縮し、当該技術分野において知られている好適な任意の手段(カラムクロマトグラフィーなど)によって残留物を精製して、黄色油として生成物3−HGNを得る。
【0020】
3−HGN生成物を上述したように必要に応じて分離し回収してもよい。反応混合物からの回収を伴って、または伴わずに3−HGN生成物を更なる工程に供して、別の化合物(例えば、モノマー)またはオリゴマーもしくはポリマーなどの別の生成物に3−HGN生成物を転化させてもよい。従って、本明細書の方法の別の実施形態は、1つ以上の反応を通して、3−HGNを別の化合物、オリゴマーまたはポリマーに転化させる方法を提供する。3−HGNを上述したような方法によって製造してもよく、その後、例えば、ジアミノピリジンなどの化合物に転化させてもよい。多工程法において、ジアミノピリジンを次に重合反応に供して、アミド官能基、イミド官能基またはウレア官能基を有するオリゴマーまたはポリマーなどのジアミノピリジンからのオリゴマーまたはポリマー、もしくはピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーを調製してもよい。
【0021】
アンモニア、またはn−ブチルアミン、ベンジルアミン、ピペラジンおよびアニリンなどのアミンを含む脂肪族アミン、環式アミンまたは芳香族アミンなどのアンモニウムドナーと3−HGNを反応させる方法によって3−HGNをジアミノピリジンに転化させてもよい。この反応は、銅塩、コバルト塩、マンガン塩または亜鉛塩などの遷移金属触媒の好ましい使用を伴って、100〜200℃の温度でアルコールなどの溶媒中で行われる。前述の方法に類似の方法は米国特許第5,939,553号明細書に記載されている。
【0022】
ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、例えば、反応の条件下で液体であり、二酸(ハロゲン化物)とジアミノピリジンの両方のための溶媒であるとともに、高分子生成物に関して膨潤作用または部分保護作用を有する有機化合物中の溶液中で重合が起きる方法において二酸(または二酸ハロゲン化物)との反応によってポリアミドオリゴマーまたはポリマーに転化させてもよい。この反応は、中程度の温度、例えば、100℃未満で行ってもよく、好ましくは、選択された溶媒に可溶性でもある酸受容体の存在下で行われる。適する溶媒には、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、5%塩化リチウムを含有するジメチルホルムアミド、およびメチルトリ−n−ブチルアンモニウムクロリドまたはメチル−トリ−n−プロピルアンモニウムクロリドなどの第四アンモニウムクロリドを含有するN−メチルピロリドンが挙げられる。反応剤成分の組み合わせはかなりの熱の発生を引き起こし、攪拌も熱エネルギーの発生をもたらす。その理由で、所望の温度を維持するために冷却が必要である時、溶媒系および他の材料をプロセス中に常に冷却する。前述の方法に類似の方法は、米国特許第3,554,966号明細書、米国特許第4,737,571号明細書およびCA第2,355,316号明細書に記載されている。
【0023】
同様に、ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、2つの相の界面で重合を引き起こすために第1の溶媒に不混和性である第2の溶媒中で、例えば、溶媒中のジアミノピリジンの溶液を酸受容体の存在下で二酸または二酸クロリドなどの二酸ハロゲン化物の溶液に接触させてもよい方法において二酸(または二酸ハロゲン化物)との反応によってポリアミドオリゴマーまたはポリマーに転化させてもよい。ジアミノピリジンは、例えば、塩基を含有する水に溶解または分散させてもよい。塩基は、重合中に発生した酸を中和させるのに十分な量で用いられる。水酸化ナトリウムを酸受容体として用いてもよい。二酸(ハロゲン化物)のために好ましい溶媒は、テトラクロロエチレン、塩化メチレン、ナフサおよびクロロホルムである。二酸(ハロゲン化物)のための溶媒は、アミド反応生成物のために相対的に非溶媒であるとともにアミン溶媒に相対的に不混和性であるべきである。不混和性の好ましい限界は次の通りである。有機溶媒は、0.01重量%〜1.0重量%以下でアミン溶媒に可溶性であるべきである。ジアミノピリジン、塩基および水を一緒に添加し、激しく攪拌する。スターラーの高い剪断作用は重要である。酸塩化物の溶液を水性スラリーに添加する。接触は、例えば、室温で約1秒〜10分、好ましくは5秒〜5分にわたって0℃〜60℃で一般に行われる。重合は迅速に行われる。前述の方法に類似の方法は、米国特許第3,554,966号明細書および米国特許第5,693,227号明細書に記載されている。
【0024】
同様に、ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、(典型的には、等モル量における)各試薬を共通溶媒に溶解させ、生成物が0.1〜2dL/gの範囲内の粘度を有するまで混合物を100〜250℃の範囲内の温度に加熱する方法において四酸(またはそのハロゲン化物誘導体)または二酸無水物との反応によってポリイミドオリゴマーまたはポリマーに転化させてもよい。適する酸または酸無水物には、ベンズヒドロール3,3,’,4,4’−テトラカルボン酸、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二酸無水物、および3,3,’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物が挙げられる。適する溶媒には、クレゾール、キシロール、ジエチレングリコールジエーテル、ガンマ−ブチロラクトンおよびテトラメチレンスルホンが挙げられる。あるいは、ポリアミド−酸生成物を反応混合物から回収してもよく、無水酢酸とベータピコリンの混合物などの脱水剤と共に加熱することによりポリイミドに進めてもよい。前述の方法に類似の方法は、米国特許第4,153,783号明細書、米国特許第4,736,015号明細書および米国特許第5,061,784号明細書に記載されている。
【0025】
同様に、ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、ポリイソシアネートとの反応によってポリウレアオリゴマーまたはポリマーに転化させてもよい。ポリイソシアネートの代表的な例には、トルエンジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートが挙げられる。反応は、周囲温度で激しく攪拌しつつテトラメチレンスルホンとクロロホルムの混合物に両方の試薬を溶解させるなどにより溶液中で行ってもよい。水との分離またはアセトンおよび水との分離によって生成物を生じさせることが可能であり、その後、真空炉内で乾燥させることが可能である。前述の方法に類似の方法は、米国特許第4,451,642号明細書およびKumar,Macromolecules 17,2463(1984)に記載されている。ポリウレア生成反応は、酸受容体または緩衝剤を通常伴う水性液体にジアミノピリジンを溶解させるなどにより界面条件下で行ってもよい。ポリイソシアネートは、ベンゼン、トルエンまたはシクロヘキサンなどの有機液体に溶解させる。ポリマー生成物は、激しく攪拌すると2つの相の界面で生成する。前述の方法に類似の方法は、米国特許第4,110,412号明細書ならびにMillichおよびCarraher,Interfacial Syntheses,Vol.2,Dekker,New York,1977に記載されている。同様に、ジアミノピリジンは、米国特許第2,816,879号明細書に記載された界面プロセスにおけるようにホスゲンとの反応によってポリウレアに転化させてもよい。
【0026】
同様に、ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、(i)ジアミノピリジンをジアミノジニトロピリジンに転化させ、(ii)ジアミノジニトロピリジンをテトラアミノピリジンに転化させ、(iii)テトラアミノピリジンをピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーに転化させることにより、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーに転化させてもよい。
【0027】
同様に、ジアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、国際公開第97/11058号パンフレットに記載されるように、ジアミノピリジンを硝酸およびオレウム中の三酸化硫黄の溶液に接触させることによりジアミノジニトロピリジンに転化させてもよい。ジアミノジニトロピリジンは、米国特許第3,943,125号明細書に記載されるように、強酸の存在下で水素添加触媒を用い、そしてより低級のアルコール、アルコキシアルコール、酢酸またはプロピオン酸などの共溶媒を用いる水素添加によってテトラアミノピリジンに転化させてもよい。
【0028】
テトラアミノピリジン(従ってその前駆体として結局は3−HGN)は、米国特許第5,674,969号明細書(その全体がすべての目的のために本明細書の一部として援用される)において開示されたように、減圧下で180℃に至るまで100℃より上での緩慢加熱下で強ポリリン酸中で2,5−ジヒドロキシテレフタル酸をテトラアミノピリジン
の三塩酸塩−一水和物と重合させ、その後、水中に沈殿させることによって、または米国特許出願公開第2006/0287475号明細書(その全体がすべての目的のために参照により本明細書の一部として援用される)において開示されたように、約50℃〜約110℃、およびその後145℃の温度でモノマーを混合して、オリゴマーを生成させ、その後、約160℃〜約250℃の温度でオリゴマーを反応させることによってピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーに転化させてもよい。こうして製造されたピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマーは、例えば、ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)ポリマーまたはポリ[(1,4−ジヒドロジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジン−2,6−ジイル)(2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレン)]ポリマーであってもよい。しかし、そのピリドビスイミダゾール部分は、ベンゾビスイミダゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ピリドビスチアゾールおよびピリドビスオキサゾールのいずれかまたはより多くによって置換されていてもよい。その2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン部分は、イソフタル酸、テレフタル酸,2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸および2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾールの1つ以上の誘導体によって置換されていてもよい。
【実施例】
【0029】
本明細書の方法の有利な特性および効果は、以下に記載する一連の実施例において見られる。これらの実施例の基になっているこれらの方法の実施形態はあくまで例示であり、本発明を例示するための実施形態の選択は、これらの実施例に記載されていない装置、アプローチ、成分、レジーム、反応物、工程、技術、構成、設計またはプロトコルがこれらの方法を実施するために適切でないこと、またはこれらの実施例に記載されていない主題が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲から除外されることを示すものではない。
【0030】
以下の材料を実施例において用いた。すべての商用試薬を入手したままの状態で用いた。アリルシアニド(純度98%)、シアン化ナトリウム(純度97%)およびm−クロロ過安息香酸(純度77%)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin,USA)から得た。
【0031】
実施例において用いられた略語の意味は次の通りである。「g」はグラムを意味し、「h」は時間を意味し、「mCBA」はm−クロロ安息香酸を意味し、「mCPBA」はm−クロロ過安息香酸を意味し、「MeOD」は重水素化メタノールを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「NaCN」はシアン化ナトリウムを意味し、「NMR」は核磁気共鳴分光分析法を意味する。本明細書で用いられる「ブライン」という用語は水中の塩化ナトリウムの飽和溶液を表す。
【0032】
実施例1
1(a).3−HGNを製造するために以下で記載された通り用いるためのアリルシアニドエポキシドを次の通り調製した。ジクロロメタン(100.0mL)中のアリルシアニドの溶液(6.0mL、74.587ミリモル)にm−クロロ過安息香酸(77%mCPBA5.00g、22.310ミリモル)を添加し、反応混合物を一晩攪拌した。翌日、mCPBAの別の5gを添加し、7日にわたり合計で35gのmCPBAを添加するようにこのプロセスを繰り返した。その後、飽和ヒドロ亜硫酸ナトリウム(NaHSO)水溶液(50.0mL)を添加することにより過剰のmCPBAをmCBAに還元し、その後、水で希釈した。その後、層を分離した。mCBAが除去されるまで有機層を飽和NaHCO水溶液(5×100mL)で抽出した。綿の詰め物を通して有機抽出物を濾過し濃縮して、4.29g(79.4%)の純アリルシアニドエポキシドを得た。
【0033】
1(b).水(1.00mL)中のNaCN(0.123g、2.50ミリモル)の冷却された溶液(0℃)に濃硫酸を添加し、得られた溶液のpHを約8にした。その後、1(a)において上で記載された通り調製されたアリルシアニドエポキシド(0.166g、2.00ミリモル)を水(1.00mL)中の溶液として滴下した。その後、氷浴を取り除き、混合物を室温に到達させた。1時間後、反応混合物のサンプル0.10mLを採取し、飽和NaHCO水溶液で冷却し、酢酸エチルで抽出した。溶媒を真空で除去し、NMR分光分析のために残留物をMeODに溶解させた。反応混合物のサンプリングを合計で4時間にわたり毎時間繰り返した。反応は4時間以内に90%超完了した。3−HGN対アリルアルコールの比は約60:1であった。
【0034】
実施例2
水(1.00mL)中のNaCN(0.123g、2.50ミリモル)の冷却された溶液(0℃)に濃硫酸を添加し、得られた溶液のpHを約8にした。その後、1(a)において上で記載された通り調製されたアリルシアニドエポキシド(0.166g、2.00ミリモル)を水(1.00mL)中の溶液として滴下した。その後、氷浴を取り除き、混合物を4時間かけて室温に到達させた。その後、混合物をテトラヒドロフランとブラインとの間で分配し、層を分離した。水層をテトラヒドロフランで4回(4×10mL)抽出し、有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濃縮した。0.128gの3−ヒドロキシグルタロニトリルを得た(収率81%)。
【0035】
本明細書で数値の範囲を挙げるかまたは定める場合、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての個々の整数および端数を含み、より狭い範囲の各々が明示的に挙げられるならば、同じ程度に指定範囲内の値のより大きい群の下位群を形成するために終点、内部の整数および端数の種々の可能なすべての組み合わせによって形成されるより狭い範囲の各々も含む。指定値より大きいとして数値の範囲を本明細書で指定する場合、その範囲は、それにもかかわらず有限であり、本明細書に記載された本発明の文脈内で使用できる値によってその上限について制限される。指定値より小さいとして数値の範囲を本明細書で指定する場合、その範囲は、それにもかかわらず非零値によってその下限について制限される。
【0036】
本明細書において、別段明確に記述されていない限り、または用法、量、サイズ、範囲、配合、パラメータの文脈、および本明細書において挙げられた他の量および特性の文脈によってそれと逆の指示がなされていない限り、特に「約」という用語によって修飾された場合は、正確であり得るが、必ずしも正確である必要がなく、そして近似であってもよく、および/または許容差、換算係数、丸めおよび測定誤差など、および記述された値に対する機能的均等性および/または作用的な均等性を本発明の文脈内に有する記述された値の外側の値の記述された値内への包含を反映して、記述された値より(必要に応じて)大きくても、または小さくてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシグルタロニトリルを製造する方法であって、
(a)アリルシアニドの溶液をエポキシ化して、以下の式I
【化1】

の構造によって表されるアリルシアニドエポキシドを生成させる工程と、
(b)該アリルシアニドエポキシドを約8〜約10の範囲内のpHを有するシアニド源の水溶液に接触させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
m−クロロ過安息香酸をアリルシアニドに接触させて、アリルシアニドエポキシドを生成させる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アリルシアニドエポキシドを単離する工程を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
シアニド源の水溶液が約8.0またはそれ以上、しかし約9.0またはそれ以下のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
シアニド源の水溶液と酸を混合して、約8〜約10の範囲内のpHを有する上記シアニド源の水溶液を備える工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
シアニド源が、アルカリシアニド、トリメチルシリルシアニドまたはアセトンシアノヒドリンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
シアニド源がNaCNまたはKCNを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シアニド源がアリルシアニドエポキシドのモル当たり約1モル〜約1.5モルのシアニドを含有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
シアニド源の水溶液の温度が、そのアリルエポキシドを上記シアニド源の水溶液に接触させる時点で約0〜約25℃の範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
3−ヒドロキシグルタロニトリルを反応混合物から回収する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
3−ヒドロキシグルタロニトリルを、反応混合物から回収してまたは回収せずに、化合物、オリゴマーまたはポリマーへの変換にかける請求項1に記載の方法。
【請求項12】
3−ヒドロキシグルタロニトリルを1つまたはそれ以上の反応にかけて、それから化合物、オリゴマーまたはポリマーを製造する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
製造された化合物がジアミノピリジンを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーの製造がジアミノピリジンのポリマーへの変換を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
製造されたポリマーが、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)ポリマー、またはポリ[(1,4−ジヒドロジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジン−2,6−ジイル)(2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレン)]ポリマーを含む請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−536784(P2010−536784A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521175(P2010−521175)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073134
【国際公開番号】WO2009/026091
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】