説明

3−[5−(2−フルオロフェニル)−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル]−安息香酸の結晶形

本発明は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形、それらの結晶形を含む医薬組成物及び剤形、それらの結晶形の製造方法、並びに早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊の調節により改善される疾患の治療、予防又は管理のためのそれらの使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、2006年9月25日出願の米国仮出願第60/847326号の利益を主張するものである。
【0002】
(1. 分野)
本発明は、化合物3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形、それらの結晶形を含む医薬剤形及び組成物、それらの結晶形の製造方法、並びに早期翻訳終止(premature translation termination)又はナンセンス介在性mRNA崩壊(nonsense-mediated mRNA decay)の調節により改善される疾患の治療、予防及び管理のためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2. 背景)
1,2,4オキサジアゾール化合物は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている2006年1月31日発行の米国特許第6992096B2号中に記述される、早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊の調節により改善される疾患の治療、予防又は管理のために有用である。1つのこのような化合物は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、化合物の溶解性、安定性、流動性、フラクタビリティ(fractability)、及び圧縮性、並びに化合物に基づく医薬製品の安全性及び効力に影響を及ぼす化合物の、塩、結晶形、例えば多形相などの固体形態が、当医薬分野で知られている(例えば、Knapman, K.の文献(Modern Drug Discoveries, 2000:53)を参照されたい)。それぞれの医薬製品の安全性及び効力に対する単一の医薬製品の固体形態の潜在的作用は非常に重要なので、米国食品医薬品局は、米国内で販売されるそれぞれの医薬製品中に使用されるそれぞれの化合物の固体形態、例えば結晶形を特定及び管理することを求めている。したがって、1,2,4-オキサジアゾール安息香酸の新たな結晶形は、早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊の調節により改善される疾患の治療、予防又は管理のための製剤の開発を促す可能性がある。本発明は、このような新規な結晶形、例えば3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形を提供する。
【0005】
本出願の第2節における任意の参考文献の引用は、このような参考文献が本出願に対する従来技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(3. 要旨)
本発明は、下記の化学構造(I)を有する3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の新規な結晶形を提供する:
【0007】
【化1】

【0008】
安息香酸の結晶形は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている2006年1月31日発行の米国特許第6992096B2号中に記述される、早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊の調節により改善される疾患の治療、予防又は管理のために有用である。さらに、本発明は、実質的に純粋な、すなわちその純度が約90%を超える3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形を提供する。
【0009】
本発明のある実施態様は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形及び医薬として許容し得る希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬剤形及び組成物を提供する。本発明はさらに、早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊の調節により改善される疾患の治療、予防又は管理のためのそれらの使用方法を提供する。ある実施態様において本発明は、本発明の結晶形の製造、単離及び/又は特性付け方法を提供する。本発明の結晶形は、動物又はヒトにおいて使用する製剤の調製のための活性医薬成分として有用である。したがって、本発明は、最終医薬製品としてのこれらの結晶形の使用を包含する。本発明の結晶形及び最終医薬製品は、例えば、本明細書において記述している疾患の治療、予防又は管理のために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(4. 発明の詳細な説明)
(4.1 図面の簡単な説明)
【0011】
【図1】A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料のX線粉末回折(XRPD)パターンを提供する。
【0012】
【図2】A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料の示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)(DSC)及び熱重量分析(thermogravimetric analysis)(TGA)サーモグラムを提供する。
【0013】
【図3】A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料の動的蒸気収着(dynamic vapor sorption)(DVS)等温線を提供する。
【0014】
【図4】A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料の固体状態13C NMRスペクトルを提供する。
【0015】
【図5】B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料のXRPDパターンを提供する。
【0016】
【図6】B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料のDSC及びTGAサーモグラムを提供する。
【0017】
【図7】B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含む試料のDVS等温線を提供する。
【0018】
【図8】B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含むいくつかの試料(上から2番目から最下段まで)と比較して、A形の特性ピークセット(最上段)を示した積み重なった実験XRPDパターンを提供し、B形試料間のピークシフトを例示するグラフである。
【0019】
【図9】結晶学的b軸から見下ろし、かつ単位胞の概略を示すA形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶充填図を提供する。
【0020】
【図10】代表的なA形単結晶から得られた単結晶X線回折結晶構造からシミュレーションした、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のXRPDパターンを提供する。
【0021】
【図11】A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の単結晶XRD結晶構造のORTEPプロットを示す図である。原子を50%確率異方性熱的楕円体により表している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(4.2 専門用語)
以下に記述する結晶形に相当し、且つ本明細書において特許請求される結晶形は、当業者に知られている、又は文献中に報告されている試験条件、純度、装置及び他の一般的変数に応じた、合理的な誤差範囲内にある類似の、しかし同一ではない解析特性を示すことができる。本明細書において使用する用語「結晶の(crystalline)」及び関連の用語は、物質、成分、又は製品を記述するのに使用する場合、その物質、成分又は製品が、当業者に知られているX線回折、顕微鏡、偏光顕微鏡又は他の知られている解析手順により測定して、実質的に結晶性であることを意味する。例えばレミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(18版,Mack Publishing, Easton PA(ペンシルベニア)州,173(1990));米国薬局方(The United States Pharmacopeia)(23版,1843-1844(1995))を参照されたい。
【0023】
したがって、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに本発明において種々の修正及び変更を行い得ることは、当業者には明らかであろう。本発明の他の実施態様は、本明細書において開示される本発明の仕様及び実施を考察することから当業者には明らかであろう。出願人は、本明細書及び実施例が例示的とみなされること、しかし範囲を限定するものではないことを意図している。
【0024】
本発明の結晶形は、単結晶データ、粉末X線回折(PXRD)、示差走査熱量測定法(DSC)、及び熱重量分析(TGA)を使用して、特性付けることができる。本明細書において記述され、且つ特許請求される数値は概略値であることを理解されたい。これらの値の変動は、他の因子の中でも装置較正、装置誤差、材料の純度、結晶サイズ、及び試料の大きさによるものとすることができる。さらに、同一の結果を得ながらも、変動が可能である。例えばX線回折値は、一般に+-0.2度以内まで正確であり、X線回折パターンにおける強度(相対強度を含む)は、使用する測定条件に応じて変動し得る。同様に、DSC結果は、典型的には約2℃以内まで正確である。したがって、本発明の結晶形は、本明細書において開示する添付図中に示される特性パターンと全く同一の特性パターン(すなわちPXRD、DSC、及びTGAの1つ以上)をもたらす結晶形に限定されないことを理解されたい。本添付図中に示すものと実質的に同じ特性パターンをもたらすいかなる結晶形も、本発明の範囲内に収まるものである。実質的に同じ特性パターンを確認する能力は、当業者の視野の範囲内にある。
【0025】
本明細書において提供する実施態様は、非限定的実施態様を例示することを意図した下記の詳細な説明及び例示的実施例を参照することによってより完全に理解することができる。
【0026】
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の調製方法は、2006年1月31日発行の米国特許第6992096B2号、及び2007年9月9日出願の米国特許出願第11/899813号中で記述され、両方共それらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0027】
(4.3 A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸)
一実施態様において、本発明は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のA形結晶形を提供する。ある実施態様においてA形は、メタノール、第三級ブチルアルコール(t-BuOH)、1-ブチルアルコール(1-BuOH)、アセトニトリル、イソプロピルアルコール(IPA)、イソプロピルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、酢酸イソプロピル(IPOAc)、トルエン及び/又は水を含むがそれらに限定されない種々の溶媒からの結晶化によって得ることができる。図1においてA形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の代表的なXRPDパターンを提供する。ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、図1に示したパターンと実質的に同様であるXRPDパターンを有する。
【0028】
図2においてA形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の代表的な熱的特性を示す。図2に示した代表的なDSCサーモグラムは、約244℃にピーク温度を有する吸熱事象を呈する。やはり図2に示した代表的なTGAサーモグラムは、約33℃から約205℃までの加熱において、試料の全質量の約1%未満の質量減少を示す。これらの熱的データは、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸が、その結晶格子内に実質的な量の水も、或いは溶媒も含有していないことを示す。ある実施態様において、A形は、融解前の昇華に対応する約212℃で開始されるTGA重量減少事象を呈する。
【0029】
A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の代表的な単結晶から、単結晶X線回折(XRD)結晶構造が得られた。約150Kで集めたXRDデータを使用して、次の単位胞パラメーターが得られた: a=24.2240(10)Å;b=3.74640(10)Å;c=27.4678(13)Å;α=90°;β=92.9938(15)°;γ=90°;V=2489.38(17)Å3。図9として、結晶学的b軸から見下ろしたA形の単結晶XRD構造からの結晶充填図を提供する。PowderCell 2.3(ウインドウズ用PowderCellバージョン2.3, Kraus, W.; Nolze, G. (Federal Institute for Materials Research and Testing,ベルリン,ドイツ,EU, 1999))、並びに単結晶データからの原子座標、空間群及び単位胞パラメーターを使用して、Cu線についての模擬XRPDパターンを生成させた。図10として、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の模擬XRPDパターンを提供する。
【0030】
ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、ある処理条件に掛けられた場合の、その物理的安定性により特性付けられる。ある実施態様においてA形は、1種以上の次の相対湿度(RH)条件:40℃における53%RH;40℃における75%RH;60℃における50%RH;及び60℃における79%RHで6日間貯蔵した場合、物理的に安定である。他の実施態様においてA形は、周囲温度及び周囲以下温度で摩砕した場合物理的に安定である。他の実施態様においてA形は、1種以上の次の条件:1-BuOH中において周囲温度で4日間;クロロホルム中において50℃で2日間;及びジクロロメタン中において50℃で2日間;スラリー化した場合、物理的に安定である。
【0031】
A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を、吸湿性について評価した。5%〜95%RHの間の循環により、相対湿度(RH)の関数としての湿分吸収及び湿分放出の動的蒸気収着(DVS)解析を得た。図3における代表的A形DVS等温線で実証されるように、最大吸収は、試料の全質量の約0.06%であった。したがって、ある実施態様においてA形は、非吸湿性である。
【0032】
図4において、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の代表的な13C固体状態NMRスペクトルを提供する。ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、176.5ppmにおけるグリシンを外部標準とした場合、次の概略位置: 172.6、167.0、131.3、128.4;及び117.1ppmの1つ以上にある13C CP/MAS固体状態NMRシグナルによって特性付けられる。
【0033】
ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を含有する医薬製品の加工及び/又は製造のための望ましい特性を示す。例えば、ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、比較的高い融点を有し、これは、とりわけ加工及び製造のための重要な特性である。その上、ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、実質的に非吸湿性であることが見出された。非吸湿性固体形態が、例えば加工及び貯蔵関連事由を含む様々な理由で望ましい。さらに、ある実施態様において、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、粒径減少の一方法である微粉化に際して物理的及び化学的に安定であることが見出された。物理的安定性は、製造、加工及び貯蔵中における医薬品材料の重要な性質である。
【0034】
(4.4 B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸)
一実施態様において、本発明は、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のB形結晶形を提供する。ある実施態様においてB形は、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸エチル(EtOAc)、酢酸、酢酸1-ブチル、アセトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、水、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、ニトロメタン、及び/又は水を含むがそれらに限定されない種々の溶媒からの結晶化によって得ることができる。
【0035】
本発明のある実施態様において、B形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、結晶化、処理、加工、製剤、製造又は貯蔵などの、しかしそれらに限定されない1種以上の条件に応じた量でその結晶格子内に溶媒を有する。本発明のある実施態様において、B形は結晶格子内に溶媒を有する。ある実施態様において、B形は本質的にその結晶格子内に溶媒を含まない。ある実施態様において、B形の試料中における3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸1モル当たりの、溶媒の最大結合モル当量は、6モル当量未満、5モル当量未満、4モル当量未満、3モル当量未満、2モル当量未満、1.5モル当量未満、1モル当量未満、0.75モル当量未満、0.5モル当量未満、又は0.25モル当量未満である。理論により制限されることを意図するものではなく、B形の溶媒含量が変わり易い特性は、種々の型及び/又は量の溶媒を収容することができる格子チャンネルが存在し、それによって特定の条件に応じて溶媒の添加及び/又は除去が可能になることから生じると考えられる。ある実施態様において、B形の構造は、同構造の結晶形の系列の基本になっている。ある実施態様において、B形は脱溶媒和した溶媒和物結晶形である。
【0036】
図5においてB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の代表的なXRPDパターンを提供する。ある実施態様において、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のA形は、次の位置:約6.4、約8.0、約14.1、約15.9、約17.2及び約20.1度2θの1つ以上にあるXRPDピークによって特性付けられる。結晶格子に溶媒及び/若しくは水を添加し又は除去する場合、その格子が幾分膨張又は収縮して、XRPDピーク位置における小シフトをもたらすことが当業者により理解される。本発明のある実施態様において、図5に示されるパターンと実質的に同様なXRPDパターンにより特性付けられるB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を提供する。ある実施態様において、B形は、図5に示されるパターンと実質的に同様なXRPDパターンを呈するが、その結晶格子内における特定の溶媒又は水の存在若しくは不在が原因となって、ピーク位置の小シフトを示す。図8において、B形のある代表的なXRPDパターン(上から2番目から最下段まで)を、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸(最上段)と比較している。ある実施態様において、B形は、図8に示される1つ以上のXRPDパターンと実質的に同様なXRPDパターンを有する。
【0037】
2.5:1のTHF:ヘキサン混合物から結晶化させたB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の試料の熱的特性を図6に示す。このB形試料の、図6に示すTGAサーモグラムは2つの質量減少事象を呈する:1つは約25℃から約165℃まで加熱する場合の試料の全質量の約5%の質量減少事象、及び第2は約220℃から始まる質量減少事象である。高温顕微鏡観察により、第1の質量減少事象は結晶格子からの溶媒及び/又は水の損失に起因し、かつ第2の質量減少事象はB形の昇華に起因することが判明した。得られた昇華物のXRPD解析は、A形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸が生成されていることを示した。このB形試料の、図6に示すDSCサーモグラムは、約243℃にピーク温度を有する鋭い吸熱事象を呈し、昇華物A形の融解に対応している。このB形試料のDSCは、約220℃未満の温度での少なくとも1つの他の事象をも呈している。これらの熱的データは、このB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の試料が、その結晶格子内に水及び/又は溶媒を含有していたことを示す。あるB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のいくつかの試料の水分及び若しくは溶媒含量が変動し得るために、本発明のある実施態様においてB形の熱的特性はある変動を示す。例えば、本発明の特定の実施態様において、本質的に水及び溶媒を含まないB形試料は、約220℃未満での実質的なTGA質量減少又はDSC熱的事象を呈しない。B形が昇華しA形として結晶化するので、このため図6では、吸熱についての融解熱は、試料がA形に変換された後のものである。
【0038】
本発明の一実施態様において、IPAから結晶化したB形試料は、TGA及び1H NMRを使用した分析に基づいて3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸1モル当たり約0.1モル当量のIPAと、約1モル当量の水とを有していた。本発明の特定の実施態様において、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸1モル当量当たり、およそ1モル当量の水を有するB形試料を、一水和物と名付けている。本発明の他の実施態様において、105℃で10分間真空乾燥により処理したB形試料は、その後約25〜約185℃のTGAにより分析した場合、試料質量について全重量減少2%を示した。ある実施態様において、結晶格子内の溶媒及び/若しくは水の量及び/又は素性に依存するB形特性(例えば加熱又は乾燥における質量減少)は、結晶格子内の全体の溶媒及び/若しくは水の量及び/又は素性に関して変動を示す。ある実施態様において、結晶格子内の溶媒及び/若しくは水の量及び/又は素性に拘らず、B形のXRPDパターンは、上述のB形のピーク特性を示すが、B形結晶格子内の溶媒及び/若しくは水の量及び/又は素性の差異から生じる小さなピークシフト化を伴う。いくつかのB形試料間でピークシフト化を例示する代表的なXRPDパターンを、図8において(上から2番目から最下段まで)積み重ねて示す。
【0039】
本発明のある実施態様において、周囲温度又は周囲以下温度で摩砕すると、B形からA形への変換が観察される。本発明の他の実施態様において、B形は、次の相対湿度(RH)条件:40℃における53%RH;40℃における75%RH;及び60℃における50%RH;の1つで6日間貯蔵した場合、物理的に安定である。本発明の他の実施態様において、図7において代表的なB形DVS等温線によって例示するように、B形は実質的に非吸湿性である。本発明の他の実施態様において、B形は、60℃における79%RHの条件で6日間貯蔵するとA形に部分変換されることを示した。本発明の他の実施態様において、B形は、単独で圧縮されても、またt-BuOHと水との1:1混合物が存在する状態で圧縮されても物理的に安定である。本発明の他の実施態様において、B形は、THFとヘプタンとの1:1混合物中において周囲温度で1日間スラリー化した場合、物理的に安定である。他の実施態様において、メチルイソブチルケトン中、又はジオキサンと水との1:1混合物中のいずれかでB形をスラリー化すると、B形からA形への変換が観察される。
【0040】
(4.5 使用方法)
本明細書において提供されるものは、患者における早期翻訳終止及び/又はナンセンス介在性mRNA崩壊の抑制により改善される疾患又は障害を治療、予防及び管理する方法であって、それを必要とする患者に有効量の固体形態3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を投与することを含む前記方法である。
【0041】
一実施態様において、本明細書において提供されるものは、早期翻訳終止及び/又はナンセンス介在性mRNA崩壊を示す遺伝子に関連した任意の疾患を治療、予防又は管理する方法である。一実施態様において、この疾患は、一部、早期停止コドンに起因する遺伝子発現の不足による。早期翻訳終止及び/又はナンセンス介在性mRNA崩壊を示し得る遺伝子の特定例、並びに早期翻訳終止及び/又はナンセンス介在性mRNA崩壊に関連した疾患は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、早期翻訳終止及びナンセンス介在性mRNA崩壊を調節する小分子識別方法(Methods For Identifying Small Molecules That Modulate Premaure Translation Termination And Nonsense Mediated mRNA Decay)と題する米国特許出願公開第2005-0233327号中に見出される。
【0042】
早期翻訳終止及び/又はナンセンス介在性mRNA崩壊に関連した、或いはそれらの抑制により改善される疾患又は障害には、遺伝性疾患、癌、自己免疫性疾患、血液性疾患、膠原病、糖尿病、神経変性疾患、増殖性疾患、心臓血管性疾患、肺動脈性疾患、炎症性疾患、又は中枢神経系疾患が含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
本発明の方法の範囲内にある特異性遺伝性疾患には、多発性内分泌性腫瘍症(1、2及び3型)、アミロイド症、ムコ多糖症(I及びIII型)、先天性副腎皮質過形成症、腺腫様結腸ポリープ症、フォンヒッペルランダウ(Von Hippel Landau)病、メンケス症候群、血友病A、血友病B、コラーゲンVII型、アラジール症候群、タウンズ-ブロックス症候群、ラブドイド腫瘍、表皮水疱症、ハーラー症候群、コフィン-ローリー症候群、無虹彩症、シャルコー-マリー-ツース病、筋細管筋障害、X-連鎖筋細管筋障害、X-連鎖真性軟骨腫症、X-連鎖無ガンマグロブリン血症、多嚢胞性腎疾患、棘筋委縮症、家族性腺腫様ポリープ症、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、フェニルケトン尿症、神経線維腫症1、神経線維腫症2、アルツハイマー病、テイ-サックス病、レット症候群、ハーマンスキー-プドラック症候群、外胚葉性異形成/皮膚脆弱性症候群、ルリー-ヴェル軟骨骨形成異常、くる病、低リン酸血症、副腎白質委縮症、脳回転状委縮症、アテローム硬化症、感覚神経性難聴、異緊張症、デント病、急性間欠性ポルフィリン症、カウデン病、ハーリッツ型表皮水疱症、ウイルソン病、トリーチャー-コリンズ症候群、ピルビン酸キナーゼ欠損症、巨人症、小人症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、老化、肥満症、パーキンソン病、ニーマンピック病C、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、心臓病、腎臓石、毛細血管拡張性運動失調症、家族性高コレステロール過剰血症、網膜色素変性症、リソソーム貯蔵症、結節性硬化症、デュシェンヌ筋ジストロフィー、及びマルファン症候群が含まれるが、それらに限定されない。
【0044】
他の実施態様において、遺伝性疾患は自己免疫性疾患である。好ましい実施態様において、この自己免疫性疾患は関節リウマチ、又は移植片対宿主病である。
【0045】
他の実施態様において、遺伝性疾患は血液疾患である。特定の実施態様において、この血液疾患は、血友病A、フォンヴィレブランド病(3型)、毛細血管拡張性運動失調症、b-サラセミア、又は腎臓石である。
【0046】
他の実施態様において、遺伝性疾患は膠原病である。特定の実施態様において、この膠原病は、骨形成不全症、又は硬変症である。
【0047】
他の実施態様において、遺伝性疾患は糖尿病である。
【0048】
他の実施態様において、遺伝性疾患は炎症性疾患である。特定の実施態様において、この炎症性疾患は、関節炎である。
【0049】
他の実施態様において、遺伝性疾患は中枢神経系疾患である。一実施態様においてこの中枢神経系疾患は神経変性疾患である。特定の実施態様において、この中枢神経系疾患は、多発性硬化症、筋ジストロフィー、デュシェンヌ筋ジトロフィー、アルツハイマー病、テイ-サックス病、遅発型小児性進行性神経疾患(LINCL)、又はパーキンソン病である。
【0050】
他の実施態様において、遺伝性疾患は癌である。特定の実施態様において、この癌は、頭及び首、眼、皮膚、口、咽頭、食道、胸、骨、肺、大腸、S字結腸、直腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、腎臓、肝臓、膵臓、脳、腸、心臓、又は副腎の癌である。この癌は原発性又は転移性であり得る。癌には、固形腫瘍、血液癌、及び他の腫瘍症が含まれる。
【0051】
他の特定の実施態様において、この癌は、腫瘍抑制遺伝子に関連している(例えば、Garinisらの文献(2002, Hum Gen 111:115-117);Meyersらの文献(1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:15587-15591);Kungらの文献(2000, Nature Medicine 6(12):1335-1340)を参照されたい)。このような腫瘍抑制遺伝子には、APC、ATM、BRAC1、BRAC2、MSH1、pTEN、Rb、CDKN2、NF1、NF2、WT1、及びp53が含まれるが、それらに限定されない。
【0052】
特に好ましい実施態様において、この腫瘍抑制遺伝子はp53遺伝子である。p53遺伝子におけるナンセンス突然変異が特定されており、且つ癌に関係している。いくつかの、p53遺伝子におけるナンセンス突然変異が特定されている(例えば、Masudaらの文献(2000, Tokai J Exp Clin Med. 25(2):69-77);Ohらの文献(2000, Mol Cells 10(3):275-80);Liらの文献(2000, Lab Invest. 80(4):493-9);Yangらの文献(1999, Zhonghua Zhong Liu Za Zhi 21(2):114-8);Finkesteinらの文献(1998, Mol Diagn. 3(1):37-41);Kajiyamaらの文献(1998, Dis Esophagus. 11(4):279-83);Kawamuraらの文献(1999, Leuk Res. 23(2):115-26);Radigらの文献(1998, Hum Pathol. 29(11):1310-6);Schuyerらの文献(1998, Int J Cancer 76(3):299-303);Wang-Gohrkeらの文献(1998, Oncol Rep. 5(1):65-8);Furopらの文献(1998, J Reprod Med. 43(2):119-27);Ninomiyaらの文献(1997, J Dermatol Sci. 14(3):173-8);Hsiehらの文献(1996, Cancer Lett. 100(1-2):107-13);Rallらの文献(1996, Pancreas. 12(1):10-7);Fukutomiらの文献(1995, Nippon Rinsho. 53(11):2764-8);Frebourgらの文献(1995, Am J Hum Genet. 56(3):608-15);Doveらの文献(1995, Cancer Surv. 25:335-55);Adamsonらの文献(1995, Br J Haematol. 89(1):61-6);Graysonらの文献(1994, Am J Pediatr Hematol Oncol. 16(4):341-7);Lepelleyらの文献(1994, Leukemia. 8(8):1342-9);McIntyreらの文献(1994, J Clin Oncol. 12(5):925-30);Horioらの文献(1994, Oncogene. 9(4):1231-5);Nakamuraらの文献(1992, Jpn J Cancer Res. 83(12):1293-8);Davidoffらの文献(1992, Oncogene. 7(1):127-33);及びIshiokaらの文献(1991,Biochem Biophys Res Commun. 177(3):901-6)を参照されたい。これらの開示は、それらの全体が引用により本明細書に組み込まれている)。
【0053】
他の実施態様において、それを必要とする患者に有効量の3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の、固体形態を投与することによって、治療、予防又は管理される疾患には、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、偏平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生癌、ウイルムス腫瘍、子宮頚癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭管腫瘍、上衣細胞腫、カポジ肉腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏枝神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、血液由来腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性リンパ球性B-細胞白血病、急性リンパ球性T-細胞白血病、急性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性単芽球性白血病、急性赤血球白血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性単球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性未分化性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病、又は多発性骨髄腫が含まれるが、それらに限定されない。例えば、ハリソン内科学原理(Harrison's Principles of Internal Medicine)(Eugene Braunwaldら編、491-762頁(15版,2001))を参照されたい。
【0054】
(4.6 医薬組成物)
本発明の化合物、又はその医薬として許容し得る多形、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物、若しくはクラスレートを含む医薬組成物及び単回単位剤形も、本発明により包含される。本発明の個々の剤形は、経口、粘膜(舌下、頬側、直腸、経鼻、若しくは膣を含む)、非経口(皮下、筋肉内、大量瞬時投与、動脈内、若しくは静脈内を含む)、経皮、又は局所投与に適している可能性がある。
【0055】
本発明の単回単位剤形は、患者への経口、粘膜(例えば経鼻、舌下、膣、頬側、若しくは直腸)、非経口(例えば皮下、静脈内、大量瞬時投与、筋肉内、若しくは動脈内)、又は経皮投与に適している。
【0056】
本発明の剤形の組成、形状、及び型は、典型的にはそれらの用途に応じて変わる。本発明により包含される特定の剤形が互いに異なるこれら及び他のやり方は、当業者には容易に明らかとなるであろう。例えばレミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(18版,Mack Publishing, Easton PA(ペンシルベニア)州,(1995))を参照されたい。
【0057】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1種以上の担体、賦形剤、又は希釈剤を含む。適切な賦形剤は医薬分野の当業者によく知られており、本明細書において適切な賦形剤の非限定的実施例を提供する。特定の賦形剤が医薬組成物又は剤形に配合するため適しているかどうかは、その剤形を患者に投与する方法を含むがそれらに限定されない、当技術分野でよく知られている様々な因子によって決まる。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形中に使用するのに適合しない賦形剤を含有できる。特定の賦形剤の適合性は、その剤形中の特異的活性成分によっても決まる可能性がある。
【実施例】
【0058】
(5.1 3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の固体形態合成)
上述する合成から得られる3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸生成物を、いくつかの方法で結晶化若しくは再結晶化させて、本発明の固体形態を得ることができる。以下に提供するのは、いくつかの非限定的実施例である。
【0059】
(5.1.1 A形の合成)
(5.1.1.1 緩慢な蒸発)
本明細書で記載の通りに得られた3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸生成物を、次の溶媒:アセトニトリル;t-ブタノール;イソプロピルアルコール;及びイソプロピルエーテル;の各1つからの緩慢な蒸発方法によってA形として結晶化させた。示した溶媒中の3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の溶液を調製し、溶解を助けるために一定分量添加する毎に超音波処理した。目視観察により判定して、混合物が完全な溶解に達すると直ぐに、この溶液を0.2μmフィルターを通して濾過した。濾過した溶液は、1つ以上のピンホールのあるアルミニウム箔で覆ったバイアル中で、温度60℃(t-ブタノールの場合50℃)において蒸発させた。生成した固形分を単離し、XRPDによりA形として特性付けた。
【0060】
(5.1.1.2 急速蒸発)
本明細書で記載の通りに得られた3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸生成物を、次の溶媒又は溶媒系:1-ブタノール;ジメトキシエーテル;t-ブタノール;ジメチルホルムアミドと水の混合物;イソプロピルエーテル;及びt-ブタノール:水(比率3:2における)、メタノール1モル当量及び塩化ナトリウム1モル当量の混合物;の各1つからの急速蒸発方法によってA形として結晶化させた。示した溶媒又は溶媒系中においての溶液を調製し、溶解を助けるために一定分量添加する毎に超音波処理した。目視観察により判定して、混合物が完全な溶解に達すると直ぐに、この溶液を0.2μmフィルターを通して濾過した。濾過した溶液は、開放バイアル中で、温度60℃(t-ブタノール及びイソプロピルエーテルの場合50℃;t-ブタノール/水/メタノール/NaCl系の場合81℃)において蒸発させた。生成した固形分を単離し、XRPDによりA形として特性付けた。
【0061】
(5.1.1.3 スラリー変換)
本明細書で記載の通りに得られた3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の遊離酸のB形を、1:1のジオキサン:水溶媒系中でスラリー化する方法によってA形に変換した。十分なB形固形分を、過剰な固形分が存在するように所与の溶媒に添加することによりスラリーを調製した。次いで、混合物を密封バイアル中において温度60℃で撹拌した。2日後、真空濾過により固形分を単離し、XRPDにより、少量のB形を有するA形として特性付けた。
【0062】
(5.1.1.4 昇華及び加熱)
本明細書において記述したように得られたB形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を、昇華及び加熱する方法によってA形に変換した。一実験において、B形を160〜208℃で35分間、真空下で昇華させて、白色針状物を生じ、それをXRPDによりA形として特性付けた。他の実験において、B形を225℃で融解し、続いて直接液体窒素中に入れて、結晶性物質を生じ、それをXRPDによりA形として特性付けた。他の実験において、B形を255℃で融解し、次いでゆっくり冷却して、結晶性物質を生じ、それをXRPDによりA形として特性付けた。
【0063】
(5.1.2 B形の合成)
(5.1.2.1 緩慢な蒸発)
本明細書で記載の通りに得られた3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸生成物を、次の溶媒:アセトン;ジメチルエーテル;及びメチルエチルケトン;の各1つからの緩慢な蒸発方法によってB形として結晶化させた。示した溶媒中の3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の溶液を調製し、溶解を助けるために一定分量添加する毎に超音波処理した。目視観察により判定して、混合物が完全な溶解に達すると直ぐに、この溶液を0.2μmフィルターを通して濾過した。濾過した溶液は、1つ以上のピンホールのあるアルミニウム箔で覆ったバイアル中で、温度50℃(メチルエチルケトンの場合60℃)において蒸発させた。
【0064】
一実施態様において、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、ジメトキシエーテル中に溶解した。この溶液を清浄なバイアルに入れた。このバイアルを、1つ以上のピンホールをあけたアルミニウム箔で覆った0.2μmフィルターを通す濾過に掛け、溶媒を蒸発させた。生成した固形分を単離し、XRPDによりB形として特性付けた。XRPD解析を、表8に例示する(P.O.)。
【0065】
(5.1.2.2 急速蒸発)
本明細書で記載の通りに得られた3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸生成物を、次の溶媒又は溶媒系:アセトン、酢酸、酢酸1-ブチル;ジメチルエーテル;THF及びジメチルエーテル;ジオキサン;メチルエチルケトン;ニトロメタン;メチルイソブチルケトン;THF:ヘキサン(2.5:1);及びジオキサン:水(3:2);の各1つからの急速蒸発方法によってB形として結晶化させた。示した溶媒又は溶媒系中において溶液を調製し、溶解を助けるために一定分量添加する毎に超音波処理した。目視観察により判定して、混合物が完全な溶解に達すると直ぐに、この溶液を0.2μmフィルターを通して濾過した。濾過した溶液は、開放バイアル中で、高温で蒸発させた。生成した固形分を単離し、XRPDによりB形として特性付けた。
【0066】
(5.1.2.3 スラリー変換)
本明細書で記載の通りに得られたA形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を、次の溶媒:酢酸;酢酸1-ブチル;及びニトロメタン;の各1つ中でスラリー化する方法によってB形に変換した。一実施態様において3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸は、酢酸1-ブチル(13mL)中において室温で3日間、オービットシェーカー上に置きスラリーとした。3日後、ピペットにより溶媒を除去し、乾燥し、XRPDによりB形として特性付けた(表5)。
【0067】
(5.1.2.4 オービットシェーカー変換)
本明細書で記載の通りに得られたA形3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸を、1-プロパノール(10mL)中において60℃で1日間、オービットシェーカー上で加熱することによりB形に変換した。得られた溶液は0.2μmナイロンフィルターを通して清浄なバイアルに入れた。1日後、溶媒を傾瀉し、窒素下で試料を乾燥した。B形としてのXRPD分析を表4に例示する。
【0068】
(5.1.2.5 他の実施態様)
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸(20mg、B形)を、テトラヒドロフラン/ヘプタンの1/1混合物(2mL)中において室温で1日間スラリーとした。1日後、A形(10mg)及びB形(9mg)の種結晶を入れ、さらに1日スラリーとし、その後の時点でさらにA形(30mg)を加えた。試料をさらに7日間スラリー化した後、さらにA形を加え(30mg)、温度を50℃まで上げた。50℃で1日間スラリーとした後、固形分を集めた。生成した固形分を単離し、XRPDによりB形として特性付けた。XRPD解析を表6に例示する。
【0069】
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸(非計量量;B形)に、40℃において相対湿度75%中で6日間ストレスを掛けた。生成した固形分を単離し、XRPDによりB形として特性付けた。XRPD解析を表7に例示する。
【0070】
(5.2 解析手順)
下記の固体状態解析方法により、本発明の3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の固体形態をどのように特性付けできるかの実施例を提供する。以下に記述する特定の方法は、本明細書において記述している固体状態特性付けデータを得るために使用した。
【0071】
(5.2.1 X線粉末回折(XRPD))
あるXRPD解析は、Shimadzu社XRD-6000 X線粉末回折装置を使用し、CuKα線を用い行った。この機器には、長微細焦点X線管を取り付けている。管電圧及び電流は、それぞれ40kV及び40mAに設定した。発散及び散乱スリットは1°に設定し、受入れスリットは0.15mmに設定した。回折線はNaIシンチレーション検出器により検出した。2.5°から40°2θまで、3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)によるθ-2θ連続走査を用いた。ケイ素標準を分析して、機器アラインメントをチェックした。XRD-6100/7000 v. 5.0を使用してデータを収集し解析した。試料保持具に載せることにより、解析用試料を調製した。
【0072】
あるXRPD解析は、2θ範囲120°を有するCPS(湾曲位置敏感性)検出器を取り付けたInel社XRG-3000回折装置を使用して行った。CuKα線を用い、分解能0.03°2θでリアルタイムデータを収集した。管電圧及び電流は、それぞれ40kV及び30mAに設定した。モノクロメータースリットは、5mm×160μmに設定した。2.5°から40°2θまでパターンを表示する。ケイ素挿入具を有するアルミニウム製試料保持具を使用した/又は/薄壁ガラス毛管に充填することにより解析用試料を調製した。それぞれの毛管は、モーター駆動されるゴニオメーターヘッドに取り付け、データ取得中、毛管が回転することを可能にした。試料は300秒分析した。機器較正は、ケイ素参照標準を使用して行った。
【0073】
あるXRPDパターンは、Bruker社D-8 Discver回折装置及びBruker社の一般エリア回折検出システム(General Area Diffraction Detection System)(GADDS、v.4.1.20)により収集した。CuKα線の入射ビームは、微細焦点管(40kV、40mA)、Gobel鏡、及び0.5mm二重ピンホールコリメーターを使用して発生させた。試料の一部を毛管内に充填し、変質する段階まで確保した。ビデオカメラ及びレーザーを使用して、透過ジオメトリーにおいて入射ビームを横切るための、対象の領域の位置決めを行った。統計的配向を最適化するために入射ビームを走査した。低角における入射ビームの空中散乱を最小とするためにビームストップを使用した。試料から15cmの位置にあるHi-Starエリア検出器を使用して、回折パターンを集め、GADDSを使用して処理した。ステップサイズ0.04°2θを使用して、回折パターンのGADDS画像における強度を積分した。積分パターンは、2θの関数として回折強度を表示する。解析の前に、ケイ素標準を解析して、Si 111ピーク位置を検定した。
【0074】
Inel社XRPD機器から生成させた、あるXRPDファイルは、File Monkeyバージョン3.0.4を使用してShimadzu生ファイル(.raw)に変換した。Shimadzu生ファイルは、Shimadzu XRD-6000バージョン2.6ソフトウエアにより処理してピーク位置を自動的に見出した。「ピーク位置」は、極大強度のあるピーク強度プロフィルを意味する。ピークの選択に使用したパラメーターは、データのそれぞれのパラメーターセットの下半分に示す。Shimadzu XRD-6000「ベーシックプロセス」バージョン2.6アルゴリズムにより、下記の方法を用いた:
全てのパターンについて平滑化を行った。
バックグラウンドを差し引いて、ピークの正味の相対強度を見出した。
全てのパターンについて強度50%における、CuKアルファ1(1.5406Å)ピークにより生じるピークから、CuKアルファ2(1.5444Å)波長からのピークを差し引いた。
【0075】
(5.2.2 示差走査熱量測定法(DSC))
TA Instruments社示差走査熱量計2920を使用して、示差走査熱量測定(DSC)を行った。試料をアルミニウム製DSC皿に入れ、その重量を正確に記録した。皿に蓋をかぶせ、次いで端部をかしめた(crimped)。試料セルを25℃で平衡させ、窒素パージのもとに速度10℃/分で、最終温度350℃まで加熱した。較正標準としてインジウム金属を使用した。報告した温度は転移極大のものである。
【0076】
(5.2.3 熱重量分析(TGA))
TA Instruments社2950熱重量分析計を使用して、熱重量(TG)分析を行った。それぞれの試料をアルミニウム製試料皿に入れ、TG炉に挿入した。炉は(最初35℃で平衡させ、次いで)窒素下で速度10℃/分で、最終温度350℃まで加熱した。較正標準としてニッケル及びAlumel(商標)を使用した。
【0077】
(5.2.4 動的蒸気収着/脱離(DVS))
VTI SGA-100蒸気収着分析装置で湿分収着/脱離データを収集した。収着及び脱離データは、窒素パージのもとに10%RH間隔で相対湿度(RH)5%〜95%の範囲にわたって収集した。試料は、分析前に乾燥しなかった。分析に使用した平衡基準は、5分における重量変化0.0100%未満であり、この重量基準が満たされない場合の最長の平衡化時間は3時間であった。試料の最初の湿分含量についてはデータを補正しなかった。較正標準としてNaCl及びPVPを使用した。
【0078】
(5.2.5 カールフィッシャー(KF))
Mettler Toledo社DL39カールフィッシャー滴定装置を使用して、水分測定のためカールフィッシャー(KF)電量分析を行った。およそ21mgの試料を、ハイドラナール-クーロマットADを含有するKF滴定容器に入れ、42〜50秒混合して、確実に溶解させた。次いで、電気化学的酸化:2I-⇒I2 + 2eによりヨウ素を生成させる起動電極によって試料を滴定した。再現性を確保するため、3回繰返し値を得た。
【0079】
(5.2.6 高温顕微鏡観察)
画像収集用Spot Insight色彩カメラを備えたLeica社DM LP顕微鏡に取り付けた、TMS93コントローラーを有するLinkam社FTIR 600ホットステージ(高温載物台)を使用して、高温顕微鏡観察を行った。特に記さない限り、Spot Advancedソフトウエアバージョン4.5.9(作成年月日2005年6月9日)を使用して画像を捕捉している。カメラは、使用前に白色バランスを取った。直交ニコル及び1次赤色補償板を有する20×0.40 N.A.長作動距離対物レンズを使用して、試料を観察及び捕捉した。試料はカバーガラス上に載せた。次いで試料上に、他のカバーガラスを載せた。ステージを加熱しながら、それぞれの試料を目視観察した。ホットステージは、USP融点標準物質を使用して較正した。
【0080】
(5.2.7 固体状態交差偏波マジック角スピン13C核磁気共鳴分光法(13C CP/MAS ssNMR))
固体状態NMR分光法用試料は、4mm PENCIL型ジルコニア回転子に試料を充填することにより調製した。緩和遅れ120.000s、パルス幅2.2μs(90.0度)、収集時間0.030s、及びスペクトル幅44994.4Hz(447.520ppm)により周囲温度でスキャンを収集した。合計100個のスキャンを収集した。観察原子核として13C、及びデカップリング原子核として1Hを使用し、接触時間10.0msで交差偏波を達成した。マジック角度回転速度12000Hzを使用した。スペクトルは、176.5ppmにおけるグリシンを外部標準としている。
【0081】
当業者は、日常実験を用いるだけで、本明細書において記述する発明の特定の実施態様との多くの同等物を認め、或いは確認し得るであろう。このような同等物を、下記の特許請求範囲が包含することを意図するものである。本明細書において言及した全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、及び特許出願が引用により本明細書に組み込まれていることが具体的に且つ個別に示される場合、それと同一の範囲でここに引用により本明細書に組み込まれている。
【0082】
(5.2.8 単結晶X線回折)
(試料調製)
【0083】
A形構造決定に利用した結晶は、A形の昇華により調製した。試料を155〜206℃の間でおよそ90分間加熱した後、結晶をコールドフィンガーから取り出した。(表3の実験)
【0084】
(データ収集)
【0085】
概略的寸法0.44×0.13×0.03mmを有する無色針状C15H9FN2O3を、無作為配向ガラス繊維上に取り付けた。Nonius社KappaCCD回折装置上のMoKα線(λ=0.71073Å)により予備試験及びデータ収集を行った。SHELX97(Sheldrick, G.M.の文献「SHELX97、結晶構造精密化用プログラム(A Program for Crystal Structure Refinement)」(University of Gottingen, Germany, 1997))を使用して、LINUX PC上で精密化(refinement)を行った。
【0086】
データ収集について、2°<θ<24°範囲における反射線13862本の設定角を使用した最小二乗精密化からセル定数及び配向マトリックスが得られた。DENZO/SCALEPACK(Otwinowski, Z.; Minor, W.の文献(Methods Enzymol. 1997, 276, 307))からの精密化集成度は0.33°であり、良好な結晶品質を示した。空間群は、プログラムXPREP(Bruker社, SHELXTL v 6.12.(Bruker AXS Inc., Madison,WI(ウイスコンシン)州, USE, 2002)におけるXPREP)により決定した。次の条件: h0l h + l= 2n;0k0 k=2nが系統的に存在したことから、またその後の最小二乗精密化から、空間群をP2l/n(no.14)として決定した。
【0087】
温度150±1Kにおいて、最大2θ値2469°までデータを収集した。
【0088】
(データ処理)
【0089】
フレームを、DENZO-SMN(Otwinowski, Z.; Minor, W.の文献(Methods Enzymol. 1997, 276, 307))により総合した。合計13862本の反射を集め、このうち3201本が独特のものであった。ローレンツ及び分極補正をこのデータに行った。MoKα線について、線吸収係数は0.110mm-1であった。SCALEPACK(Otwinowski, Z.; Minor, W.の文献(Methods Enzymol. 1997, 276, 307))を使用し、実験的吸収補正を行った。透過係数は、0.951〜0.997の範囲であった。2次吸光度補正を行った(Sheldrick, G.M.の文献「SHELX97、結晶構造精密化用プログラム(A Program for Crystal Structure Refinement)」(University of Gottingen, Germany, 1997))。最小二乗法により精密化した最終係数は0.0046(絶対単位における)であった。等価の反射を平均した。平均化についての一致ファクターは、強度基準で10.1%であった。
【0090】
(構造解明及び精密化)
【0091】
SIR2004(Burla, M.C.らの文献(J. Appl. Cryst. 2005, 38, 381))を使用し、直接方法により構造を解明した。残った原子は、続いて差分フーリエ合成により位置付けた。水素原子は精密化に含まれたが、それらが結合する原子に乗るように制約された。下記の関数を最小化することによる完全行列最小二乗法により、構造を精密化した:
【0092】
【数1】

【0093】
重みwは、1/[σ2(F02) + (0.0975P)2 + (0.0000P)](ここでP=(F02 + 2Fc2)/3)として定義する。
【0094】
散乱因子は、「国際結晶学表」(国際結晶学表(International Tables for Crystallography)、(Vol.C, Kluwer Academic Publishers: Dordrecht,オランダ,1992,表4.2.6.8.及び6.1.1.4))から取った。精密化に使用した反射線3201本について、Rを計算するのにF02>2σ(F02)である反射線だけを使用した。計算において合計2010本の反射線を使用した。精密化の最終サイクルには変動パラメーター382個が含まれ、下記の重み付けのない、また重み付けした一致ファクターに収束された(最大パラメーターシフトは、その推定標準偏差の<0.01倍であった):
【0095】
【数2】

【0096】
【数3】

【0097】
単位重みの観察値の標準偏差は1.01であった。最終フーリエ差分における最高ピークは、高さ0.64e/Å3を有していた。最小負ピークは、高さ-0.33e/Å3を有していた。
【0098】
(計算によるX線粉末回折(XRPD)パターン)
【0099】
PowderCell 2.3(ウインドウズ用PowderCellバージョン2.3, Kraus, W.; Nolze, G. (Federal Institute for Materials Research and Testing,ベルリン,ドイツ,EU, 1999))、並びに単結晶データからの原子座標、空間群及び単位胞パラメーターを使用して、Cu線についての計算によるXRPDパターンを生成させた。
【0100】
(ORTEP及び充填図)
【0101】
ORTEP III(Johnson, C.K. ORTEP III, Report ORNL-6895(Oak Ridge National Labotatory,TN(テネシー)州, U.S.A. 1996)及びウインドウズ用ORTEP-3 V1.05, Farrugia, L.J.の文献(J. Appl. Cryst. 1997, 30, 565))を使用して、ORTEP図を作成した。原子を50%確率異方性熱的楕円体として表している。充填図は、CAMERON(Watkin, D.J.ら, CAMERON(Chemical Crystallography Laboratory, University of Oxford, Oxford, 1996))モデルを使用して作成した。
【0102】
(結果及び考察)
【0103】
A形の単斜セルパラメーター及び計算体積は: a=24.2240(10)Å;b=3.74640(10)Å;c=27.4678(13)Å;α=90.00°;β=92.9938(15)°;γ=90.00°;V=2489.38(17)Å3である。分子量は284.25g/モル-1であり、またZ=8(ここでZは不斉単位当たりの医薬分子の数である)であり、この結晶構造について計算された密度(dcalc、g cm-3)1.517g cm-3をもたらしている。空間群はP2l/n(no.14)として決定され、これはアキラル空間群である。結晶データ及び結晶学的データ収集パラメーターの要約を、下記の通り提供する:
【表1】

【0104】
R-値0.062(6.2%)によって示されるように、得られた構造の品質は高〜中程度である。最も信頼性をもって決定された構造として、通常0.02〜0.06の範囲内にあるR-値が引用されている。この結晶構造の品質は、最も信頼性をもって決定された構造の許容範囲を幾分外れているが、このデータは、分子構造内の原子位置が正しいことを保証するのに十分な品質のものである。
【0105】
図11に、A形のORTEP図を示す。その中に示される不斉単位は、隣接するカルボン酸基を介して可能な水素結合を形成するように配置された2分子の二量体を含む。フーリエマップから酸プロトンが位置されていないので、この分子は中性と仮定される。結晶学的b軸から見下ろしているA形の充填図を図9に示す。
【0106】
図10に示したA形の模擬XRPDパターンは、単結晶データから生成させたものであり、A形の実験によるXRPDパターンとよく一致している(例えば図1を参照されたい)。好ましい配向から、強度の差異が生じている可能性がある。好ましい配向は結晶が、通常板状又は針状結晶が、ある程度の順序でそれら自体並ぶ傾向である。好ましい配向は、XRPDパターンにおいて、ピーク強度に影響する可能性があるが、ピーク位置には影響がない。ピーク位置における僅かなシフトは、実験による粉末パターンを周囲温度で集め、単結晶データを150Kで集めた事実から生じている可能性がある。構造の品質を高めるため、単結晶解析では低温を用いている。
表1は、A形の不斉単位のための部分原子座標を示す。
【表2】


【0107】
【表3】


【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物の結晶形。
【請求項2】
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形。
【請求項3】
およそ150Kで測定した場合、次の概略的単位胞パラメーター: a=24.220Å;b=3.74640Å;c=27.4678Å;α=90°;β=92.9938°;γ=90°;V=2489.38(17)Å3;Z=8;を有し、計算密度(dcalc、g cm-3)が1.517g cm-3であり;かつ空間群がP2l/n(no.14);である、請求項1又は2記載の結晶形。
【請求項4】
CuKα線を使用して測定した場合、表3に掲げている位置からなる群から選択される少なくとも3つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1又は2記載の結晶形。
【請求項5】
CuKα線を使用して測定した場合、10.10、11.54、14.55、14.88、及び15.07からなる群から選択される少なくとも1つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1又は2記載の結晶形。
【請求項6】
およそ244℃にピーク温度を有する吸熱事象がある示差走査熱量測定法サーモグラムを有する、請求項3又は4記載の結晶形。
【請求項7】
約33℃から約205℃まで加熱すると、該試料の全質量の約1%未満の質量減少がある熱重量分析サーモグラムを有する、請求項3又は4記載の結晶形。
【請求項8】
実質的に非吸湿性である、請求項3記載の結晶形。
【請求項9】
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形であって、下記:
(a)およそ150Kで測定した場合、a=24.220Å;b=3.74640Å;c=27.4678Å;α=90°;β=92.9938°;γ=90°;V=2489.38(17)Å3;Z=8;であり、計算密度(dcalc、g cm-3)が1.517g cm-3であり;かつ空間群がP2l/n(no.14);である単位胞パラメーター;
(b)CuKα線を使用して測定した場合、表3に掲げている位置からなる群から選択される少なくとも3つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターン;
(c)約33℃から約205℃まで加熱すると、該試料の全質量の約1%未満の質量減少がある熱重量分析サーモグラム;
(d)およそ244℃にピーク温度を有する吸熱事象がある示差走査熱量測定法サーモグラム;及び
(e)表1に表示する座標とほぼ等しい部分原子座標;
の少なくとも1つにより特性付けられるA形結晶を含む、前記結晶形。
【請求項10】
3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形であって、下記:
(a)CuKα線を使用して測定した場合、表4に掲げている位置からなる群から選択される少なくとも3つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターン;
(b)約25℃から約165℃まで加熱すると、該試料の全質量の約5%未満の質量減少がある熱重量分析サーモグラム;
(c)およそ243℃にピーク温度を有する吸熱事象がある示差走査熱量測定法サーモグラム;
の少なくとも1つにより特性付けられるB形結晶を含む、前記結晶形。
【請求項11】
該結晶格子内に溶媒を有する、請求項10記載の結晶形。
【請求項12】
該結晶格子内に水を有する、請求項10記載の結晶形。
【請求項13】
前記結晶格子内に、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸1モル当たり、水約1モル当量を有する、請求項12記載の結晶形。
【請求項14】
医薬剤形であって、下記:
(a)およそ150Kで測定した場合、a=24.220Å;b=3.74640Å;c=27.4678Å;α=90°;β=92.9938°;γ=90°;V=2489.38(17)Å3;Z=8;であり、計算密度(dcalc、g cm-3)が1.517g cm-3であり;かつ空間群がP2l/n(no.14);である単位胞パラメーター;
(b)CuKα線を使用して測定した場合、表3に掲げている位置からなる群から選択される少なくとも3つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターン;
(c)約33℃から約205℃まで加熱すると、該試料の全質量の約1%未満の質量減少がある熱重量分析サーモグラム;
(d)およそ244℃にピーク温度を有する吸熱事象がある示差走査熱量測定法サーモグラム;及び
(e)表1に表示する座標とほぼ等しい部分原子座標;
の少なくとも1つにより特性付けられる3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のA形結晶を含む、前記剤形。
【請求項15】
経口剤形である、請求項14記載の医薬剤形。
【請求項16】
CuKα線を使用して測定した場合、10.10、11.54、14.55、14.88、及び15.07からなる群から選択される少なくとも1つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターンを有する、請求項14記載の結晶形。
【請求項17】
細胞における早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊を調節する方法であって、早期翻訳終止又はナンセンス介在性mRNA崩壊を示す細胞を、下記:
(a)およそ150Kで測定した場合、a=24.220Å;b=3.74640Å;c=27.4678Å;α=90°;β=92.9938°;γ=90°;V=2489.38(17)Å3;Z=8;であり、計算密度(dcalc、g cm-3)が1.517g cm-3であり;かつ空間群がP2l/n(no.14);である単位胞パラメーター;
(b)CuKα線を使用して測定した場合、表3に掲げている位置からなる群から選択される少なくとも3つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターン;
(c)約33℃から約205℃まで加熱すると、該試料の全質量の約1%未満の質量減少がある熱重量分析サーモグラム;
(d)およそ244℃にピーク温度を有する吸熱事象がある示差走査熱量測定法サーモグラム;及び
(e)表1に表示する座標とほぼ等しい部分原子座標;
の少なくとも1つにより特性付けられる3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸のA形結晶の有効量と接触させることを含む、前記方法。
【請求項18】
CuKα線を使用して測定した場合、10.10、11.54、14.55、14.88、及び15.07からなる群から選択される少なくとも1つのピーク位置(°2θ±0.2)を含むX線粉末回折パターンを有する、請求項17記載の結晶形。
【請求項19】
図1に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを呈するA形結晶を含む、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形。
【請求項20】
図5に示す粉末X線回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを呈するB形結晶を含む、3-[5-(2-フルオロフェニル)-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル]-安息香酸の結晶形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−504340(P2010−504340A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529270(P2009−529270)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/020633
【国際公開番号】WO2008/039431
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.Linux
【出願人】(503369705)ピーティーシー セラピューティクス,インコーポレーテッド (31)
【Fターム(参考)】