説明

3ピースホイールのメッキ除去装置

【課題】 インナリムとアウタリムとの重合部における溶接予定箇所のメッキを容易に且つ綺麗に除去可能な3ピースホイールのメッキ除去装置を提供する。
【解決手段】 インナリム2Bとアウタリム2Aとディスクとからなる3ピースホイールにおけるリム2A、2B同士の重合部2aから円筒状の胴体部2bに連なる湾曲部外周面の溶接予定箇所Rのメッキを除去するメッキ除去装置であって、リム2Aを回転自在に支持する支持手段11と、支持手段11に支持されたリムを外周側から保持する少なくとも3本の保持ローラ34と、保持ローラ34にて保持したリム2Aを回転駆動する回転駆動手段67と、リム2Aの湾曲部外周面の溶接予定箇所Rを研磨布紙13で研磨して、該溶接予定箇所Rのメッキを除去する研磨手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナリムとアウタリムとディスクとからなる3ピースホイールにおけるリム同士の重合部から胴体部に連なる湾曲部外周面の溶接予定箇所のメッキを除去する3ピースホイールのメッキ除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金などの軽合金からなる車両用ホイールとして、鋳造により一体成形した1ピースホイールと、リムとディスクの2つに分割構成した2ピースホイールと、インナリムとアウタリムとディスクの3つに分割構成した3ピースホイールとが広く実施されている。また、これらのホイールに対してクロムメッキなどのメッキ処理を施してその意匠性を高めたものも広く実用化されている(特許文献1参照。)。
【0003】
通常、3ピースホイールを製作する場合には、インナリムとアウタリムとに半径方向内側へ延びる環状の重合部を形成し、両重合部を重ね合わせるとともにこの重合部にディスクの外周部を重ね合わせて、これら3者をボルトで締結し、インナリムとアウタリムの重ね合わせ部分に外周側から溶接を施して両リムを気密に一体化する製造方法が広く採用されている。
【0004】
また、3ピースホイールにおいては、意匠性を向上させるためディスク及びアウタリムにメッキ処理を施し、意匠性にほとんど影響を及ぼさないインナリムに関しては、製造コストを低減するためメッキ処理に代えてアルマイト処理を施している。また、メッキや酸化被膜によるリム同士の溶接不良を防止するため、アウタリムに関しては、例えば溶接予定箇所にマスキングを施した状態で、メッキ液に浸漬させてメッキ処理を行ったり、メッキ処理した後に、携帯用グラインダ等を用いた手作業で溶接予定箇所のメッキを除去したり、切削による機械加工で溶接予定箇所のメッキを除去しており、インナリムに関しては、例えばワイヤーブラシなどにより手作業で溶接予定箇所の酸化被膜を除去している。
【0005】
【特許文献1】特開平11−236681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アウタリムの溶接予定箇所にマスキングを施してメッキ処理する場合には、マスキングテープの貼り付けという煩雑な作業が必要となり、しかもメッキ処理は、特殊な技術であり、一般にホイールメーカでは行われず、メッキ処理の専門メーカにて行われていることから、マスキングテープの貼り付け作業分だけメッキ処理の工賃が高くなり、ホイールの製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
また、アウタリム外面には微細な凹凸が形成されているので、綺麗にマスキングテープを貼り付けた場合でも、リムをメッキ液に浸漬したときに、マスキングとリム間にメッキ液が侵入して、溶接予定箇所の一部がメッキされてしまうことがあり、溶接予定箇所におけるメッキ部分が溶接欠陥の原因の1つになっている。しかも、メッキ処理としてクロムメッキを施す場合には、複数の処理液にリムを順次浸漬する関係上、マスキングテープとリム間に侵入したメッキ液が次工程の処理液に持ち込まれ、次工程の処理液を汚染するという問題もある。更に、マスキングテープの接着剤成分が処理液に溶け込んで、処理液を劣化させるという問題もある。
【0008】
また、マスキングによる場合には、図10に示すように、リム100の溶接予定箇所にマスキングテープを貼り付けて形成される地肌部101と、それ以外のメッキ部分102との境界部103において、マスキングテープの側縁に沿った隆起部104がメッキ部分102に形成され、地肌部101とメッキ部分102の境界部103に段差ができ、物理的な衝撃でメッキが剥離し易くなったり、マスキングテープとリム間に侵入したメッキ液により不完全なメッキ部分105、例えばクロムメッキの場合には、下地層としての銅のメッキ層が形成され、該メッキ部分105からメッキ部分102が剥離し易くなったりするという問題がある。
【0009】
一方、切削などの機械加工により溶接予定箇所のメッキを除去する場合には、溶接予定箇所のメッキを綺麗に除去できるとともに、マスキングテープの貼り付け作業も不要となり、しかもマスキングテープの貼り付けが不要であることからメッキ処理の工賃も安くなり、ホイールの製造コストを低減できる。しかし、1回の研削処理でメッキ部分を切削すると、刃物をメッキ部分から離脱させるときに、メッキ部分にそれを剥離する方向への力が作用して地肌部分との境界部からメッキ部分が剥離し易くなるという問題がある。また、これを防止するため、溶接予定箇所の両側縁から刃物を差し入れて、溶接予定箇所の幅方向の途中部で刃物を離脱させることも考えられるが、2回の切削処理が必要となり、作業が大変煩雑になるという問題がある。更に、3ピースホイールのように、リム同士の重合部から円筒状の胴体部に連なる湾曲部外周面のメッキを除去する場合には、該湾曲部の曲面に沿って刃物を移動させる必要があり、しかも異なる種類のホイールでは、湾曲部の曲率が異なることから、刃物の制御が大変複雑なものになるという問題がある。
【0010】
また、携帯用グラインダ等を用いた手作業で溶接予定箇所のメッキを除去する方法では、アウタリムの外周側からの処理となるので曲面状の溶接予定箇所でも、比較的容易に除去することができるが、作業要員が必要になるとともに、研磨面の寸法精度や表面性状にバラツキが発生し易いという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、インナリムとアウタリムとの重合部における溶接予定箇所のメッキを容易に且つ綺麗に除去可能な3ピースホイールのメッキ除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る3ピースホイールのメッキ除去装置は、インナリムとアウタリムとディスクとからなる3ピースホイールにおけるリム同士の重合部から円筒状の胴体部に連なる湾曲部外周面の溶接予定箇所のメッキを除去するメッキ除去装置であって、前記リムを回転自在に支持する支持手段と、前記支持手段に支持されたリムを外周側から保持する少なくとも3本の保持ローラと、前記保持ローラにて保持したリムを回転駆動する回転駆動手段と、前記リムの湾曲部外周面の溶接予定箇所を研磨布紙で研磨して、該溶接予定箇所のメッキを除去する研磨手段とを備えたものである。
【0013】
このメッキ除去装置を用いてリムの溶接予定箇所のメッキを除去する際には、例えばリムの軸心が鉛直方向となるように、重合部側を上側にして支持手段上にリムを載置し、少なくとも3本の保持ローラでリムの外周部を保持した状態で、回転駆動手段で保持ローラを回転させて、ホイールを例えば5〜50rpmの低速で回転させながら、研磨手段で溶接予定箇所を研磨して、溶接予定箇所のメッキを除去することになる。このメッキ除去装置では、研磨手段によりメッキを研磨除去するので、硬質なクロムメッキなどのメッキでも綺麗に除去できる。また、両リムにメッキ処理を施す場合には、両リムをメッキ除去装置に順次セットして溶接予定箇所のメッキを除去することになるが、インナリムは、ホイールの意匠性にほとんど影響を及ぼさないことから、通常は高価なメッキを施さず、安価に実施可能なアルマイト処理を施すので、インナリムに対してアルマイト処理を施す場合には、アウタリムに関してのみこのメッキ除去装置で溶接予定箇所のメッキを除去し、インナリムに関してはワイヤーブラシなどにより溶接予定箇所の酸化被膜を除去することになる。
【0014】
ここで、前記研磨布紙として研磨布を放射状に配置したフラップホイールを用い、研磨手段では溶接予定箇所の中央部にフラップホイールを略垂直に圧接させて溶接予定箇所を研磨することができる。このようなフラップホイールを用いると、フラップホイールの外周部が溶接予定箇所に沿って撓みながら溶接予定箇所に圧接されるので、溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に研磨することができる。
【0015】
また、前記リムを保持したときにおける保持ローラの突出量を測定する測定手段を設け、該測定手段からの出力に基づいてホイールの直径を演算し、演算結果に基づいて研磨布紙が適正な溶接予定箇所に当接するように研磨手段を移動させる移動手段を設けることもできる。この場合には、リムの外径サイズに応じて研磨手段とリムの位置関係を自動調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る3ピースホイールのメッキ除去装置によれば、研磨により溶接予定箇所のメッキを除去するので、溶接予定箇所のメッキを綺麗に且つ効率的に除去することが可能となる。また、溶接予定箇所のメッキを綺麗に除去できるので、両リムの溶接不良を防止して、溶接不良による強度低下や溶接不良箇所からのタイヤのエア漏れを効果的に防止できる。
【0017】
更に、重合部における溶接予定箇所は外側へ突出した断面形状なので、メッキを除去した溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に形成することが可能となり、マスキングによる場合や切削による場合と比較して、境界部におけるメッキの剥離を効果的に防止できる。しかも、研磨によりメッキを除去するので、切削により除去する場合と比較して、メッキを剥離させる方向への研磨力を格段に少なくでき、境界部からのメッキの剥離を効果的に防止できる。
【0018】
更にまた、マスキングによる場合と比較して、マスキングテープの貼り付け作業が不要となるので、メッキ処理の工賃を安くして、ホイールの製造コストを低減できる。
【0019】
前記研磨布紙として研磨布を放射状に配置したフラップホイールを用い、研磨手段により溶接予定箇所の中央部にフラップホイールを略垂直に圧接させて溶接予定箇所を研磨すると、フラップホイールの外周部が溶接予定箇所の曲面に沿って撓みながら溶接予定箇所を研磨できるので、1回の研磨処理で必要幅の溶接予定箇所を綺麗に研磨できるとともに、溶接予定箇所が過剰に研磨されることを防止しつつ、溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に形成することが可能となり、境界部におけるメッキの剥離を一層効果的に防止できる。また、溶接予定箇所における曲率半径が異なるホイールでも、同一フラップホイールで研磨処理することができ、研磨処理の作業性を向上できる。
【0020】
また、測定手段と移動手段とを設けると、リムの外径サイズに応じて研磨手段とリムの位置関係を自動設定することが可能となり、メッキ除去作業を一層効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、3ピースホイール1の構成について説明する。
図1に示すように、3ピースホイール1は、一端部に内側へ延びる環状の重合部2aを有する略筒状のアウタリム2A及びインナリム2Bと、両リム2A、2Bの重合部2aにボルト3で固定したディスク4とを備えている。
【0022】
ディスク4は、アルミニウム合金等の軽量な金属材料を用いて、鋳造やプレス成形や鍛造等により一体成形したもので、全面にクロムメッキなどのメッキ処理を施したものである。メッキ処理は、メッキ液にディスク4を浸漬する周知の方法で行われている。但し、ディスク4には必ずしもメッキ処理を施す必要はなく、塗装を施すことも可能である。
【0023】
ディスク4は、車輪支持部材(図示略)への取付部5と、取付部5を取り囲むように設けた環状のリング部6と、取付部5とリング部6とを連結するスポーク部7とを備えている。
【0024】
両リム2A、2Bは、アルミニウム合金などの延伸性に優れた金属材料で構成されている。アウタリム2Aの全面には、意匠性を高めるため、クロムメッキなどのメッキ処理が、メッキ液にアウタリム2Aを浸漬するなどの周知の方法で行われている。インナリム2Bには、アウタリム2Aと同様にクロムメッキを施すことも可能であるが、意匠性にほとんど影響を及ぼさない部材なので、安価に実施可能なアルマイト処理が施されている。
【0025】
リム2A、2Bには重合部2aに連なる略円筒状の胴体部2bが形成され、リム2Aのデザイン面側の端部及びリム2Bの取付面側の端部には、肉厚を増加させて他の部分より厚肉に構成したフランジ部2cがそれぞれ形成されている。このようにフランジ部2cを肉厚の増加により厚肉に構成しているので、アウタリム2Aをメッキ処理するときに、フランジ部2c内にメッキ液等が残留することを確実に防止して、メッキ液が残留することによるフランジ部2cの腐食を防止できる。また、両リム2A、2Bのフランジ部2cを厚肉に構成しているので、旋回時等におけるホイール1の強度剛性を十分に確保できる。
【0026】
重合部2aから胴体部2bに連なる湾曲部外周面には、メッキや酸化被膜を除去して地肌を露出させた溶接予定箇所Rがそれぞれ形成されている。アウタリム2Aの溶接予定箇所Rは、後述するメッキ除去装置10によりメッキを除去して、地肌を露出させることになり、インナリム2Bの溶接予定箇所Rは、ワイヤーブラシなどにより酸化被膜を除去して、地肌を露出させることになる。但し、インナリム2Bに対してメッキ処理を施す場合には、アウタリム2Aと同様に後述するメッキ除去装置10により、溶接予定箇所Rのメッキを除去することになる。
【0027】
ホイール1を組み立てる際には、両リム2A、2Bの重合部2aを重ね合わせるとともに、この重合部2aにディスク4の外周部をボルト3で固定して、両リム2A、2Bとディスク4とを一体化してから、両溶接予定箇所Rを外周側から溶接して組み立てることになる。
【0028】
次に、リム2A、2Bの溶接予定箇所Rのメッキを除去するメッキ除去装置10について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図2〜図4に示すように、メッキ除去装置10は、軸心を略鉛直にしてリム2Aを回転自在に支持する支持手段11と、支持手段11に支持されたリム2Aを外周側から保持して回転駆動する回転駆動手段12と、リム2Aの湾曲部外周面の溶接予定箇所Rを研磨布紙13で研磨して、該溶接予定箇所Rのメッキを除去する研磨手段14とを備えている。
【0030】
支持手段11について説明すると、図2〜図4、図8に示すように、下部フレーム20上には支持台21が固定設置され、支持台21上には支持筒22が立設固定され、支持筒22内には軸部材23が回転自在に支持されている。軸部材23の上端部には回転板24が固定され、回転板24の外周部には、環状の治具板25が着脱自在に且つピン部材26により相対回転不能に取り付けられている。治具板25の外径はリム2Aの重合部2aの内径よりもやや大きなサイズに設定され、治具板25の外周部には環状の段差部27が形成され、リム2Aはその重合部2aを段差部27に外嵌させて治具板25に対して着脱自在に支持されている。そして、治具板25を外径サイズの異なるものと交換することで、各種サイズのリム2Aを支持手段11に支持できるように構成されている。
【0031】
回転駆動手段12について説明すると、図2、図3、図6、図7に示すように、支持台21には軸部材23を中心として周方向に約120°の間隔をあけて外方へ延びる支持アーム28が設けられている。支持アーム28の外端部の上側には上方へ延びる支持ブラケット29が設けられ、支持ブラケット29の上端側部にはエアシリンダ30が出力ロッド31及びガイドロッド32を支持手段11側へ向けて設けられている。エアシリンダ30の出力ロッド31及びガイドロッド32の先端部には取付部材33が設けられ、取付部材33には保持ローラ34が軸心を鉛直方向にして回転自在に支持され、支持手段11に支持したリム2Aは、3つの保持ローラ34をフランジ部2cの外周部に圧接させることで回転自在に保持される。
【0032】
図2〜図4に示すように、下部フレーム20の右部には支持フレーム35が立設され、支持フレーム35の高さ方向の途中部には前方へ延びる第1支持アーム36が設けられ、第1支持アーム36の前端部には左側へ延びる第2支持アーム37が設けられ、第2支持アーム37の下面には左右方向に延びるガイドレール38が設けられている。右側のエアシリンダ30の取付部材33には第2支持アーム37の下側へ延びる支持板39が固定され、支持板39の前端部は第2支持アーム37のガイドレール38に対して左右方向に移動自在に支持され、支持板39は右側のエアシリンダ30により保持ローラ34とともに左右方向に移動するように構成されている。支持板39には電動モータ41を主体とした駆動手段67が設けられ、駆動手段67により右側の保持ローラ34を回転駆動することで、3つの保持ローラ34に保持したリム2Aを低速回転できるように構成されている。
【0033】
研磨手段14について説明すると、図2〜図5に示すように、支持フレーム35の上部の左側には前後方向に延びる上下1対のガイドレール42が固定され、ガイドレール42には可動枠43が前後移動自在に支持されている。この可動枠43は、支持フレーム35に回転自在に支持したスクリュー軸44と、スクリュー軸44の途中部に螺合させたナット部材45と、スクリュー軸44を回転駆動する電動モータ66とからなる移動手段46により、前後方向に位置調整可能に支持されている。
【0034】
可動枠43の左側には上下方向に延びる前後1対のガイドレール47が設けられ、ガイドレール47には昇降板48が上下移動自在に設けられ、可動枠43の中央部にはエアシリンダ49が上下方向に設けられ、昇降板48はエアシリンダ49により上下移動可能に支持されている。
【0035】
昇降板48の左側には角度設定板50が軸部材51を中心に回動可能に設けられ、昇降板48には軸部材51を中心とした細長い上下1対の円弧孔52が形成されている。この角度設定板50は、メッキ除去装置10の組み立て時に、支持手段11にセットしたリム2Aに対する研磨布紙13の角度が最適になるように設定するためのものであるが、メッキ除去装置10の組み立て後は傾動しないように昇降板48に固定されるので、省略することも可能である。
【0036】
角度設定板50の左側上部には電動モータ53が設けられ、電動モータ53の下側には枢支軸54が回転自在に設けられ、枢支軸54の途中部には左方へ延びる揺動板55が固定されている。角度設定板50の上端部には左方へ延びるアーム部材56が設けられ、アーム部材56の左端部と揺動板55の左端部間には加圧用シリンダ57と引っ張りコイルバネ58とが並列状に設けられている。揺動板55の左端下部には研磨布紙13を支持する支軸59が回転自在に支持され、支軸59の前端部には略円板状のフラップホイールからなる研磨布紙13が取付けられている。但し、研磨布紙13としては、フラップホイール以外のものを用いることも可能である。特に、溶接予定箇所Rの曲面に沿って外周面が変形可能な研磨布紙を用いると、溶接予定箇所Rを1回の処理でメッキを綺麗に研磨除去できるので好ましい。
【0037】
電動モータ53の回転軸60の後端部には第1プーリ61が固定され、枢支軸54の後端部には第2プーリ62及び第3プーリ63が固定され、支軸59の後端部には第4プーリ64が固定され、第1プーリ61と第2プーリ62間と第3プーリ63と第4プーリ64間にはそれぞれベルト65が張設され、電動モータ53の回転力が2本のベルト65を介して支軸59に伝達され、研磨布紙13が回転するように構成されている。
【0038】
リム2Aの回転速度は任意に設定できるが、処理能力及び地肌の表面性状を十分に確保するため、例えば5〜100rpmに設定され、研磨布紙13の回転速度は、1500〜3000rpmに設定され、研磨布紙13のリム2Aに対する圧接力は0.5kN〜1.5kNに設定され、リム2Aを1回転させる間に溶接予定箇所Rを研磨処理できるように構成されている。但し、リム2を複数回回転させた状態で、研磨処理が完了するように構成したり、軸方向に複数回に分けて研磨処理したりすることもできる。研磨布紙13の幅は、1回の研磨処理により溶接予定箇所Rのメッキを研磨除去できるように、溶接予定箇所Rよりもやや大きな幅に設定することが好ましい。
【0039】
次に、メッキ除去装置10の作動について説明する。
先ず、図4、図6(a)に示すように、処理するリム2Aのサイズに適合した治具板25を回転板24にセットし、治具板25に軸心を略鉛直にし且つ重合部2a側を上側にして、重合部2aから胴体部2bが下側へ延びるようにリム2Aをセットする。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、エアシリンダ30により保持ローラ34を前進移動させて、支持手段11にセットしたフランジ部2cの外周部を3つの保持ローラ34で保持する。
【0041】
こうして、回転駆動手段12の3つの保持ローラ34によりリム2Aを保持した状態で、駆動手段67により右側の保持ローラ34を回転駆動して、例えば20rpmでリム2Aを低速回転駆動する。
【0042】
一方、図4、図7(a)に示すように、リム2Aのサイズに応じて研磨布紙13がリム2Aの溶接予定箇所Rに僅かな隙間をあけて対面するように、エアシリンダ49及び電動モータ66にて研磨布紙13の上下方向位置及び前後方向位置を調整する。尚、研磨布紙13の上下方向位置及び前後方向位置の調整は、リム2Aの外径サイズ毎に予め設定した数値をメッキ除去装置10に入力することで適正位置に調整できるように構成してもよいし、エアシリンダ30の出力ロッド31の突出量を測定する測定手段を設け、リム2Aのフランジ部3cを保持した状態での保持ローラ34の突出量を測定手段で測定して、この測定結果に基づいてリム2Aの外径サイズを演算し、研磨布紙13の上下方向位置及び前後方向位置をセットしたリム2Aの外径サイズに応じて自動的に調整できるように構成してもよい。
【0043】
そして、図7(b)に示すように、電動モータ53により研磨布紙13を回転させながら、加圧用シリンダ57により研磨布紙13をリム2Aの溶接予定箇所Rに圧接させて、溶接予定箇所Rのメッキを研磨除去する。このとき、研磨布紙13は溶接予定箇所Rの中央部に略垂直に圧接され、研磨布紙13の外周面は、図8に示すように溶接予定箇所Rの曲面に沿ってその厚さ方向の中央部が少し窪んだ状態に変形し、幅広な溶接予定箇所Rを一度に研磨処理することになる。また、研磨処理した後の溶接予定箇所R及びその付近は、図9に示すように、溶接予定箇所Rの地肌部8aとメッキ部8bとが滑らかに連なった状態となり、地肌部8aとメッキ部8bとの境界部に段差が形成されないので、メッキ部8bの剥離を効果的に防止できることになる。
【0044】
こうして、回転駆動手段12でリム2Aを1回転させている間に溶接予定箇所Rを順次研磨処理し、溶接予定箇所Rの研磨が完了すると、加圧用シリンダ57による押圧を停止して、研磨布紙13をリム2Aから離間させるとともに、研磨布紙13の回転を停止させ、保持ローラ34を後退させて研磨処理したリム2Aを治具板25から取り外し、新たなリム2Aを治具板25にセットして、前記と同様に溶接予定箇所Rのメッキを研磨除去することになる。尚、本実施例では、リム2Aを1回転させている間に溶接予定箇所Rを順次研磨処理したが、複数回転させている間に研磨処理することもできるし、溶接予定箇所Rを幅方向に複数回に分けて順次研磨することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】3ピースホイールの断面図
【図2】メッキ除去装置の正面図
【図3】メッキ除去装置の平面図
【図4】メッキ除去装置の左側面図
【図5】研磨処理時における作動説明図
【図6】(a)はリムを支持手段にセットした状態の説明図、(b)は保持ローラでリムを保持した状態の説明図
【図7】(a)は研磨手段でリムの溶接予定箇所を研磨する直前の説明図、(b)は研磨手段でリムの溶接予定箇所を研磨している状態の説明図
【図8】研磨布紙による研磨作業時の説明図
【図9】研磨箇所の説明図
【図10】従来技術に係るマスキング或いは切削による研磨箇所の説明図
【符号の説明】
【0046】
1 3ピースホイール
2A アウタリム 2B インナリム
2a 重合部 2b 胴体部
2c フランジ部 3 ボルト
4 ディスク 5 取付部
6 リング部 7 スポーク部
8a 地肌部 8b メッキ部
10 メッキ除去装置 11 支持手段
12 回転駆動手段 13 研磨布紙
14 研磨手段
20 下部フレーム 21 支持台
22 支持筒 23 軸部材
24 回転板 25 治具板
26 ピン部材 27 段差部
28 支持アーム 29 支持ブラケット
30 エアシリンダ 31 出力ロッド
32 ガイドロッド 33 取付部材
34 保持ローラ 35 支持フレーム
36 第1支持アーム 37 第2支持アーム
38 ガイドレール 39 支持板
40 エアシリンダ 41 電動モータ
42 ガイドレール 43 可動枠
44 スクリュー軸 45 ナット部材
46 移動手段 47 ガイドレール
48 昇降板 49 エアシリンダ
50 角度設定板 51 軸部材
52 円弧孔 53 電動モータ
54 枢支軸 55 揺動板
56 アーム部材 57 加圧用シリンダ
58 コイルバネ 59 支軸
60 回転軸 61 第1プーリ
62 第2プーリ 63 第3プーリ
64 第4プーリ 65 ベルト
66 電動モータ 67 駆動手段
R 溶接予定箇所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナリムとアウタリムとディスクとからなる3ピースホイールにおけるリム同士の重合部から円筒状の胴体部に連なる湾曲部外周面の溶接予定箇所のメッキを除去するメッキ除去装置であって、
前記リムを回転自在に支持する支持手段と、
前記支持手段に支持されたリムを外周側から保持する少なくとも3本の保持ローラと、
前記保持ローラにて保持したリムを回転駆動する回転駆動手段と、
前記リムの湾曲部外周面の溶接予定箇所を研磨布紙で研磨して、該溶接予定箇所のメッキを除去する研磨手段と、
を備えたことを特徴とする3ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項2】
前記研磨布紙として研磨布を放射状に配置したフラップホイールを用い、研磨手段では溶接予定箇所の中央部にフラップホイールを略垂直に圧接させて溶接予定箇所を研磨する請求項1記載の3ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項3】
前記リムを保持したときにおける保持ローラの突出量を測定する測定手段を設け、該測定手段からの出力に基づいてホイールの直径を演算し、演算結果に基づいて研磨布紙が適正な溶接予定箇所に当接するように研磨手段を移動させる移動手段を設けた請求項1又は2記載の3ピースホイールのメッキ除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−83386(P2007−83386A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155692(P2006−155692)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(390007397)株式会社ワーク (4)
【Fターム(参考)】