説明

3方向ダイヤフラム弁

【課題】構造が簡易であるとともに配管系の設計、分解及び組み立てが容易で、特に、薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる場合、液溜りの発生を有効に防止することが可能であるとともに、簡易かつ確実な滅菌処理が可能で、そのための別配管の配設も容易な3方向ダイヤフラム弁を提供する。
【解決手段】第1〜第2の作動手段(エアシリンダー)300、350によって、ダイヤフラム200の係止箇所204(204a、204b)をそれぞれ独立して押圧又は押圧解除させて、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通をそれぞれ独立して遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除させることが可能なようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3方向ダイヤフラム弁に関する。さらに詳しくは、1つの流体を2に分配するか、2つの流体のうちの1つを選択するか、又は2つの流体を1つに混合することが可能で、構造が簡易であるとともに配管系の設計、分解及び組み立てが容易で、特に、薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる場合、液溜りの発生を有効に防止することが可能であるとともに、簡易かつ確実な滅菌処理が可能で、そのための別配管の配設も容易な3方向ダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
3方向ダイヤフラム弁は、例えば、薬液を分配、混合する装置(液調装置)の配管系に組み込まれて用いられている。このような液調装置は、例えば、図7に、液調装置900として示すように、混合槽901に、所定量の原薬と蒸留水と投入し、混合した後、窒素ガス等で混合した液体を除菌フィルタ903に圧送し、熱交換器904で温度を調整した後、貯留槽902に一旦溜めておき、窒素ガス等で調合液を充填機等に移送することができる。この場合、混合する原薬を換える場合(仕込み換え)は、系内を洗浄してされ、例えば、121℃のスチームで滅菌する操作(CSIP:Cleaning and Sterilization in place)が必須であり、混合液を送る配管にCSIPを可能にするために必要な配管(図においては破線で示す)が接続される。これらは複数のバルブを適宜開閉して、所定の操作をし、図8〜10に示すように、1つのポートを有するダイヤフラム弁801をエルボ管803、T字管802に接続し、系全体を液調装置内で鉛直方向に設置して、系内部の液が重力により下方へ流れ、系内の液溜りが最少となるようにしている。しかし、図10に示す系の図面左側のバルブを例に取れば、バルブ閉止状態では斜線を付した部分に液溜りが発生するため、仕込み換えの場合は、CSIPによって系内を洗浄するが、運転のためにダイヤフラム弁801を閉止すると、系内の壁に付着した洗浄液がダイヤフラム弁801のポート807付近に滞留し、仕込み換えの液を汚染するという問題があった。なお、図9、10において、符号808はダイヤフラム、符号809は空気アクチュエーター、符号810は液溜りをそれぞれ示す。
【0003】
このため、図10の図面右側のバルブに示すように、これまでのCSIPノズル805に加えて、ダイヤフラム弁801の流路に直接CSIPノズル806を取り付けて、ダイヤフラム弁801の液溜り810を減少させることが行われるが、液溜り810の発生を完全になくすことは困難であった。また、エルボ管803、T字管802を組み合わせ、さらにフェルールフランジ804を利用してダイヤフラム弁と上述の配管とを接続するため、切り替え弁としてスペースを浪費するという問題があった。さらに、配管内をCSIPするための別配管を取り付ける手間が大であり、特に、CSIP配管の方向が一方向でないため、配管系が錯綜し、定期的に装置全体を分解して洗浄する場合に、配管の分解、再組立ての手間が大であるという問題があった。
【0004】
このような問題に対応するため、第1弁座と共働する第1ダイヤフラムと、第2弁座と共働する第2ダイヤフラムとを備え、第1仕切り壁の第1通路側の最低面を第1弁座から第2弁座にかけて水平に形成し、また、第3通路の最低面を上記最低面と同一水平レベル又はそれより下方に設けた3方向ダイヤフラム弁が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−329154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された3方向ダイヤフラム弁は、相応に液溜りの発生を防止することができるものの、2つのダイヤフラム弁が用いられる等、構造が複雑であるとともに、その構造上、設置の際のポートの向きによっては液溜りの発生を完全に防止することが困難であり、配管系の設計、分解及び組み立てや、確実な滅菌処理、そのための別配管の配設が容易ではなく、必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、構造が簡易であるとともに配管系の設計、分解及び組み立てが容易で、特に、薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる場合、液溜りの発生を有効に防止することが可能であるとともに、簡易かつ確実な滅菌処理が可能で、そのための別配管の配設も容易な3方向ダイヤフラム弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の3方向ダイヤフラム弁が提供される。
【0008】
[1]流体の出入り口となる第1〜第3のメインノズル、前記第1〜第3のメインノズルにそれぞれ連通し、上方に開放した第1〜第3の流路室、前記第1の流路室と前記第2の流路室とを仕切る所定高さの第1の仕切り壁、及び前記第1の流路室と第3の流路室とを仕切る所定高さの第2の仕切り壁を有する弁本体と、前記第1〜第3の流路室の周縁上端面に前記第1〜第3の流路室を密閉するように架設、固定された、前記第1〜第2の仕切り壁の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除するように上下動するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの、前記第1〜第2の仕切り壁の上端面との係止又は係止解除に対応する係止箇所をそれぞれ独立して押圧又は押圧解除して、前記係止箇所を前記第1〜第2の仕切り壁の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除させ、前記第1〜第2の流路室間及び前記第1〜第3の流路室間の連通をそれぞれ独立して遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除させるように作動する第1〜第2の作動手段とを備えたことを特徴とする3方向ダイヤフラム弁。
【0009】
[2]前記第1の流路室が、外部と連通する第1のサブノズルを、また、前記第2の流路室が、外部と連通する第2のサブノズルを、さらに、前記第3の流路室が、外部と連通する第3のサブノズルを、それぞれ有する前記[1]に記載の3方向ダイヤフラム弁。
【0010】
[3]前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルが、同一方向に並設された前記[1]又は[2]に記載の3方向ダイヤフラム弁。
【0011】
[4]前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルが、鉛直方向に並行する状態で設置されて用いられる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【0012】
[5]前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルの、外部配管との接続用のフランジが、それぞれフェルール型である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【0013】
[6]前記第1〜第2の作動手段が、それぞれエアシリンダーである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【0014】
[7]薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる前記[1]〜[6]のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、構造が簡易であるとともに配管系の設計、分解及び組み立てが容易で、特に、薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる場合、液溜りの発生を有効に防止することが可能であるとともに、簡易かつ確実な滅菌処理が可能で、そのための別配管の配設も容易な3方向ダイヤフラム弁が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明の3方向ダイヤフラム弁の一の実施の形態を模式的に示す断面図であり、図2は、図1に示す実施の形態における弁本体部分を模式的に示す斜視図であり、図3は、図1に示す実施の形態の全体の外観を模式的に示す斜視図であり、図4は、図1に示す実施の形態に用いられるダイヤフラムを模式的に示し、図4(a)は平面図、図4(b)はそのA−A線断面図であり、図5は、図1に示す実施の形態を液調装置に組み込んで用いた場合の一例を模式的に示す説明図であり、図6は、図1に示す実施の形態を液調装置に組み込んで用いた場合の他の例を模式的に示す説明図である。
【0017】
図1、2に示すように、本実施の形態の3方向ダイヤフラム弁10は、流体の出入り口となる第1〜第3のメインノズル101、102、103、第1〜第3のメインノズル101、102、103にそれぞれ連通し、上方に開放した第1〜第3の流路室111、112、113、第1の流路室111と第2の流路室112とを仕切る所定高さの第1の仕切り壁121、及び第1の流路室111と第3の流路室113とを仕切る所定高さの第2の仕切り壁122を有する弁本体100と、第1〜第3の流路室111、112、113の周縁上端面に第1〜第3の流路室111、112、113を密閉するように架設、固定された(固定箇所205)、第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除するように上下動するダイヤフラム200と、ダイヤフラム200の、第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面との係止又は係止解除に対応する係止箇所(タッチライン)204(第1の係止箇所204a、第2の係止箇所204b)をそれぞれ独立して押圧又は押圧解除して、係止箇所(タッチライン)204(204a、204b)を第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除させ、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通をそれぞれ独立して遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除させるように作動する第1〜第2の作動手段(エアシリンダー)300、350とを備えたことを特徴とするものである。なお、ダイヤフラム200の係止箇所204(204a、204b)と、第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面との間の、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通が遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除される部分を「ポート」、また、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通が遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除されることを「ポートが開閉される」と併記することがある。
【0018】
上述のように構成された本実施の形態の3方向ダイヤフラム弁10は、第1〜第2の作動手段(エアシリンダー)300、350を作動させることによって、ダイヤフラム200の係止箇所204(204a、204b)が第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除し、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通をそれぞれ独立して遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除して(ポートが開閉して)、第1〜第3のメインノズル101、102、103のうちのいずれか1つから流入させた流体を、残りの2つのメインノズルのうちの少なくとも1つから流出させることができるとともに、第1〜第3のメインノズル101、102、103のうちのいずれか2つから流入させた流体のうちの少なくとも1つを、残りの1つのメインノズルから流出させることができる。
【0019】
図1においては、図面左側の第1の作動手段(エアシリンダー)300が下降して、ダイヤフラム200の第1の係止箇所(タッチライン)204aが押圧され、第1〜第2の流路室111、112間の連通が遮断(閉止)され(ポートが閉じられ)た場合であって、かつこれとは独立して、右側の第2の作動手段(エアシリンダー)350が上昇して、ダイヤフラム200の第2の係止箇所(タッチライン)204bの押圧が解除され、第1〜第3の流路室111、113間の連通の遮断(閉止)が解除された(ポートが開かれた)場合を示す。
【0020】
本実施の形態に用いられる弁本体100の材質としては、耐久性を有するものであれば特に制限はないが、上述の調液装置等に用いられる場合には、SUS316等のステンレス製とすることが好ましい。特に、異物の付着防止と洗浄性とを確保する必要がある場合には、液と接触する表面は、電解研磨をして、表面粗さが1〜2μmの鏡面仕上げとすることがさらに好ましい。また、耐蝕性を必要とする場合は、フッ素系樹脂、例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、エチレン四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等でライニング成形することが好ましい。さらに、耐摩耗性を必要とする場合は、アルミナ、部分安定化ジルコニア等のセラミックス製とすることが好ましい。弁本体100は、精密鋳造した素材を機械加工して作製することができる。
【0021】
図4(a)、(b)に示すように、本実施の形態に用いられるダイヤフラム200は、係止箇所(タッチライン)204(第1の係止箇所204a、第2の係止箇所204b)及び固定箇所205を有するダイヤフラム本体201が、センターネジ202(ネジ部202a、拡径部202b)、203(ネジ部203a、拡径部203b)によって係止されて構成されている。センターネジ202、203の拡径部202b、203bは、ダイヤフラム本体201の回転を防止するため、外形を四角形や星型にして、ダイヤフラム本体201の成形時に埋設することが好ましい。ダイヤフラム本体201の材質としては、可撓性、靭性、繰り返しの変形に対する耐久性等を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、シリコーンゴム等を好適例として挙げることができる。ダイヤフラム本体201として、PTFEを用いる場合には、所定の金型に、センターネジ202、203の拡径部202b、203b及びPTFEパウダーを入れて、ホットプレスで成形すると同時に焼成することが好ましい。PFAやシリコーンゴムを用いる場合には、所定の金型に、センターネジ202、203の拡径部202b、203bを取り付けて、金型の隙間に溶融したPFAやシリコーンゴム注入することが好ましい。なお、係止箇所(タッチライン)204(204a、204b)は、第1〜第2の仕切り壁121、122(図1参照)の上端面とのそれぞれ独立した係止(シール)を行う際における、必要な面圧を減少させるために、断面が半円形、矩形等の所定高さを有するものであることが好ましい。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に用いられる第1〜第2の作動手段300、350としては、ダイヤフラム200(ダイヤフラム本体201)の係止箇所(タッチライン)204(204a、204b)を、第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面に確実に係止(シール)又は係止解除させることができるものであれば特に制限はないが、例えば、エアシリンダーを好適例として挙げることができる。このように構成することによって、第1〜第2の仕切り壁121、122の上端面との、それぞれ独立した係止又は係止解除、延いては第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通のそれぞれ独立した遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除(ポートの開閉)を簡易かつ確実に行うことができる。作動手段300、350として、上述のエアシリンダーを用いることの他に、ステム303、353(図1参照)に適宜螺動機構を取り付けて、ハンドルを手動で回すようにしてもよい。作動手段300、350は、同一のものでも異なったものであってもよいが、同一のものであることが好ましい。
【0023】
本実施の形態においては、第1の流路室111が、外部と連通する第1のサブノズル131を有するものであることが好ましい。このように構成することによって、第1のサブノズル131は、例えば、第1の流路室111におけるドレイン配管として用いることができ、第1の流路室111における液溜りの発生を有効に防止することができる。
【0024】
また、第2の流路室112が、外部と連通する第2のサブノズル132を、また第3の流路室113が、外部と連通する第3のサブノズル133を、それぞれ有するものであることが好ましい。このように構成することによって、第2のサブノズル132及び第3のサブノズル133は、例えば、ドレイン用の配管として、またCSIP用のスチームや薬剤の導入配管として用いることができ、液溜りの発生を有効に防止することができるとともに、簡易かつ確実な滅菌処理を可能とし、そのための別配管の配設を容易化することができる。
【0025】
また、第1〜第3のメインノズル101、102、103及び第1〜第3のサブノズル131、132、133が、同一方向に並設されたものであることが好ましい。このように構成することによって、構造を簡易にすることができるとともに配管系の設計、分解及び組み立てを容易化することができる。また、液溜りの発生を有効に防止することができる。
【0026】
また、第1〜第3のメインノズル101、102、103及び第1〜第3のサブノズル131、132、133が、鉛直方向に並行する状態で設置されて用いられることが好ましい。このように構成することによって、液溜りの発生をさらに有効に防止することができる。
【0027】
また、第1〜第3のメインノズル101、102、103及び第1〜第3のサブノズル131、132、133の、外部配管との接続用のフランジ101a、102a、103a、131a、132a、133aが、それぞれフェルール型であることが好ましい。このように構成することによって、ダイヤフラム弁全体のメンテナンス・洗浄・再組立時に、ダイヤフラム弁と他の配管との分解・再接続を容易化することができる。
【0028】
さらに、本発明の3方向ダイヤフラム弁は、上述の説明から明らかなように、薬液を分配、混合する装置(液調装置)に組み込まれて用いられることによって、特にその効果を十全に発揮することができる。
【0029】
以下、本実施の形態の3方向ダイヤフラム弁の組み立て方について説明する。図1に示すように、蓋体部301に、シリンダー本体306、356をネジ込み、ロックナット307、357で固定する。ダイヤフラム本体201に、押圧部302、352を被せて、センターネジ202、203を止めナット304、354で固定する。ステム303、353を押圧部302、352に入れ、押圧ピン305、355でステム303、353及び押圧部302、352を固定する。ステム303、353をシリンダー本体306、356に入れる。ステム303、353にピストン308、358を入れ、固定ナット309、359でピストン308、358を固定する。シリンダー本体306、356に、シリンダーキャップ310、360を嵌め、固定する。プラグ312、362でストッパボルト311、361からの空気漏れを防止する。このようにして組み立てたものを弁本体100に載せ、図3に示すボルト401を、弁本体201のネジ孔(図示せず)にネジ込むことによって、ダイヤフラム200(ダイヤフラム本体201)の固定箇所205が第1〜第3の流路室111、112、113の周縁上端面に固定されることで第1〜第3の流路室111、112、113が密閉され、組み立てが完了する。組み立てが完了したダイヤフラム弁10の、第1の給気孔313、363に空気を入れると、ピストン308、358が上方に移動し、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通の遮断(閉止)を解除する(ポートを開く)ことができる。一方、第2の給気孔314、364に空気を入れると、ピストン308、358が下方に移動し、第1〜第2の流路室111、112間及び第1〜第3の流路室111、113間の連通を遮断(閉止)する(ポートを閉じる)ことができる。このような連通及び遮断はそれぞれ独立して行うことができる。
【0030】
以下、本実施の形態の3方向ダイヤフラム弁を液調装置に組み込んで用いた場合の一例ついて説明する。図5に示すように、第2のメインノズル102及び/又は第3のメインノズル103から流入した薬液は、第1〜第2の流路室111、112間及び/又は第1〜第3の流路室111、113間を連通させる(ポートを開く)と、第1の流路室111を経由して第1のメインノズル101から次工程に移送される。第1〜第2の流路室111、112間及び/又は第1〜第3の流路室111、113間を閉止させる(ポートを閉じる)と、第2のメインノズル102及び第2の流路室112、並びに/又は第3のメインノズル103及び第3の流路室113に残留した薬液は、第2のサブノズル132及び/又は第3のサブノズル133から外部に排出する。第2のメインノズル102及び第2の流路室112、並びに/又は第3のメインノズル103及び第3の流路室113をCSIPするときは、第2のメインノズル102及び/又は第3のメインノズル103の上流側から、洗浄液、スチームを流入させ、第2のサブノズル132及び/又は第3のサブノズル133から外部に排出する。第1のメインノズル101及び第1の流路室111をCSIPするときは、第1のメインノズル101の上流側から、洗浄液、スチームを流入させ、第1のサブノズル131から外部に排出する。また、図6に示すように、図5に示す場合を倒立させた(逆さまにした)状態で設置してもよい。この場合は、第1のメインノズル101から流入した薬液は、第1〜第2の流路室111、112間及び/又は第1〜第3の流路室111、113間を連通させる(ポートを開く)と、第2の流路室112及び/又は第3の流路室113を経由して第2のメインノズル102及び/又は第3のメインノズル103から次工程に移送される。CSIPについては図5に示す場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の3方向ダイヤフラム弁は、1つの流体を2つに分配するか、2つの流体のうちの1つを選択するか、又は2つの流体を1つに混合することが必要で、特に、仕込み換えが必須とされる医薬品工業、食品工業、化学工業等の各種産業分野で有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の3方向ダイヤフラム弁の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す実施の形態における弁本体部分を模式的に示す斜視図である。
【図3】図1に示す実施の形態の全体の外観を模式的に示す斜視図である。
【図4】図1に示す実施の形態に用いられるダイヤフラムを模式的に示し、図4(a)は平面図、図4(b)はそのA−A線断面図である。
【図5】図1に示す実施の形態を液調装置に組み込んで用いた場合の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】図1に示す実施の形態を液調装置に組み込んで用いた場合の他の例を模式的に示す説明図である。
【図7】液調装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図8】従来のダイヤフラム弁を液調装置に組み込んで用いた場合の一例を模式的に示す正面図である。
【図9】図8に示す例の側面図である。
【図10】図8に示す例における液溜りの状態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10…3方向ダイヤフラム弁、100…弁本体、101、102、103…第1〜第3のメインノズル、101a、102a、103a…第1〜第3のメインノズルのフランジ、111、112、113…第1〜第3の流路室、121、122…第1〜第2の仕切り壁、131、132、133…第1〜第3のサブノズル、131a、132a、133a…第1〜第3のサブノズルのフランジ、200…ダイヤフラム、201…ダイヤフラム本体、202、203…センターネジ、202a、203a…ネジ部、202b、203b…拡径部、204…ダイヤフラムの係止箇所(タッチライン)、204a…第1の係止箇所(タッチライン)、204b…第2の係止箇所(タッチライン)、205…ダイヤフラムの固定箇所、300、350…作動手段(エアシリンダー)、301…蓋体部、302、352…押圧部、303、353…ステム、304、354…止めナット、305、355…押圧ピン、306、356…シリンダー本体、307、357…ロックナット、308、358…ピストン、309、359…固定ナット、310、360…シリンダーキャップ、311、361…ストッパボルト、312、362…プラグ、313、363…第1の給気孔、314、364…第2の給気孔、315〜319、365〜369…Oリング、401…ボルト、801…ダイヤフラム弁、802…T字管、803…エルボ管、804…フェルールフランジ、805…CSIPノズル、806…バルブ付属のCSIPノズル、807…ポート、808…ダイヤフラム、809…空気アクチュエーター、810…液溜り、901…混合槽、902…貯留槽、903…除菌フィルタ、904…熱交換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の出入り口となる第1〜第3のメインノズル、前記第1〜第3のメインノズルにそれぞれ連通し、上方に開放した第1〜第3の流路室、前記第1の流路室と前記第2の流路室とを仕切る所定高さの第1の仕切り壁、及び前記第1の流路室と第3の流路室とを仕切る所定高さの第2の仕切り壁を有する弁本体と、
前記第1〜第3の流路室の周縁上端面に前記第1〜第3の流路室を密閉するように架設、固定された、前記第1〜第2の仕切り壁の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除するように上下動するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの、前記第1〜第2の仕切り壁の上端面との係止又は係止解除に対応する係止箇所をそれぞれ独立して押圧又は押圧解除して、前記係止箇所を前記第1〜第2の仕切り壁の上端面とそれぞれ独立して係止又は係止解除させ、前記第1〜第2の流路室間及び前記第1〜第3の流路室間の連通をそれぞれ独立して遮断(閉止)又は遮断(閉止)解除させるように作動する第1〜第2の作動手段とを備えたことを特徴とする3方向ダイヤフラム弁。
【請求項2】
前記第1の流路室が、外部と連通する第1のサブノズルを、また、前記第2の流路室が、外部と連通する第2のサブノズルを、さらに、前記第3の流路室が、外部と連通する第3のサブノズルを、それぞれ有する請求項1に記載の3方向ダイヤフラム弁。
【請求項3】
前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルが、同一方向に並設された請求項1又は2に記載の3方向ダイヤフラム弁。
【請求項4】
前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルが、鉛直方向に並行する状態で設置されて用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【請求項5】
前記第1〜第3のメインノズル及び前記第1〜第3のサブノズルの、外部配管との接続用のフランジが、それぞれフェルール型である請求項1〜4のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【請求項6】
前記第1〜第2の作動手段が、それぞれエアシリンダーである請求項1〜5のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。
【請求項7】
薬液を分配、混合する装置に組み込まれて用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の3方向ダイヤフラム弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112562(P2006−112562A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301884(P2004−301884)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】