説明

3次元オブジェクトのポイントの変換による3次元オブジェクトの保護法及び装置

【課題】3次元モデルのグラフィカルオブジェクトを保護する方法を提供する。
【解決手段】3Dオブジェクトは、3Dオブジェクトを受信し、3Dオブジェクトのポイントに加算される並進ベクトルを生成して保護された3Dオブジェクトを取得し、保護された3Dオブジェクトを出力する第一の装置により保護される。保護された3Dオブジェクトは、保護された3Dオブジェクトを受信し、保護された3Dオブジェクトのポイントから減算される並進ベクトルを生成して保護が解除された3Dオブジェクトを取得し、保護が解除された3Dオブジェクトを出力する第二の装置により保護が解除される。また、第一の装置、第二の装置及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元モデルに関し、より詳細には係るモデルのグラフィカルオブジェクトの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、以下に記載及び/又は特許請求される本発明の様々な態様に関連する当該技術分野の様々な態様を読者に導入することが意図される。この説明は、背景情報を読者に提供して本発明の様々な態様の良好な理解を容易にすることに役立つすると考えられる。従って、これらの説明は、この点から読まれるべきであって、従来技術の認定として読まれるべきではない。
【0003】
3次元(3D)オブジェクトの使用は、特にメタバースの出現により、この数年間増加している。ソーシャライジングワールド、ゲーム、ミラーリングワールド、シミュレーションツール、3Dユーザインタフェース、アニメーションムービー及びテレビの視覚効果といった、多くの3Dオブジェクトの使用がある。3D仮想オブジェクトは、実際の金銭の価値を表す。ソーシャライジングワールド及びゲームでは、プレーヤは、仮想オブジェクト又はアバターを実際の金銭について他のプレーヤに売る。オンラインゲームにおいて経験豊かなキャラクターを構築することは、キーボードの背後で数百時間を必要とする可能性がある非常に長いプロセスである。シミュレーションツールからの現実世界の3Dモデルは、実際(偽造)のオブジェクトを製造して売るのを可能にする。ハリウッドの映画スタジオからの次の大ヒットのシーンの3Dモデルを漏らすことは、スタジオにとってマスコミの悪評となる場合がある。以上のように、多くの場合、3Dオブジェクトは、それらの所有者にとって大きな価値の財産である。
【0004】
コンテンツ保護のストラテジは、例えば暗号化といった、許可されないユーザがコンテンツにアクセスするのを不可能にすることが意図される秘密での保護、及びコンテンツを広めたユーザがそのようにするのを追跡するのを可能にすることが意図されるウォーターマークを含む。
【0005】
3Dコンテンツ保護の基本的な方法は、データ全体に注目するものであり、すなわち全てのデータが暗号化されるかウォーターマークされるかのいずれか(又は両者)であるが、これらの方法は、幾分粗雑である。
【0006】
3Dコンテンツを保護する更に適切な方法は、3Dコンテンツの3Dオブジェクトの1以上を保護することである。これは、3Dコンテンツがある設定に位置される多数の異なるオブジェクトから構成されるときに可能である。それぞれの3Dオブジェクトが個別のエンティティとして符号化されるとき、これらのエンティティのそれぞれを個別に保護することができ、これらのエンティティの全てを保護することは必要ではない。
【0007】
例えば、US2008/0022408は、オブジェクトの「バウンディングボックス」を非暗号化データとしてあるファイルに記憶し、保護された3Dオブジェクトを暗号化データとして別のファイルに記憶することで、3Dオブジェクト保護の方法を記載している。任意のユーザは、非暗号化データにアクセスする場合があるが、許可されたユーザは、暗号化データにアクセスすることができ、許可されていないユーザは、自動車の代わりに平行六面体のような、その基本表現(即ちバウンディングボックス)を見る。しかし、この方法は、3Dレンダリングソフトウェアと使用されるために開発され、ビデオ及びフィルムのようなマルチメディアコンテンツに適していない。さらに、ファイルフォーマット(1つのファイルを非暗号化データ及び1つのファイルを暗号化データ)は非標準的であり、従って標準的でない、適合されたレンダリング装置によってのみ使用可能である。確かに、暗号化データは、大部分の3D技術のシンタックスを配慮せず、従って通常は使用することができない。
【0008】
US6678378は、暗号化により3D CAD(Computer Aided Design)オブジェクトを暗号化により保護するソリューションを記載する。このソリューションは、非線形又はアフィン変換により、ノードの座標値及びエッジ又は輪郭の式のうちの1つを暗号化して、これにより3Dオブジェクトを歪ませるか、又はRSAのような「通常の」暗号化による。
【0009】
このソリューションの問題は、(RSAを使用するときに特に)計算のコストがかかり、悪意のあるユーザがコンテンツを使用するのを阻止するために歪が十分でないという問題がある。さらに、「通常の」暗号化の場合、3Dオブジェクトは、コンピュータ又はテレビジョンのようなコンテンツを消費する装置により全く読み取ることができない場合があり、これは、幾つかの場合において障害となる。
【0010】
デジタル著作権により使用可能なグラフィックス処理システムは、2006年にShi,W., Lee,H., Yoo,R及びBoldyreva,Aによる“A Digital Rights Enabled Graphics Processing System”In GH '06: Proceedings of
the 21st ACM SIGGRAPH/ EUROGRAPHICS symposium on Graphics hardwareで提案されている。このシステムによれば、3Dオブジェクト(頂点、テクスチャの集合)を構成するデータが暗号化される。それらの復号は、ライセンスの制御下で、グラフィックス処理ユニットにおいて扱われる。また、3Dエレメントの保護されたバージョン及び保護されていないバージョンを同時に伝送するため、多解像度メッシュを使用することも提案されている。システム自身はセキュアな3D環境に向かうリアルプログレス(Real Progress)であるが、保護されたシーンと他のVRML(Virtual Reality Modeling Language)レンダラーとの使用は、相互運用の問題につながる。
【0011】
David Koller及びMarc Levoyは、高精細度3Dデータがサーバに記憶される3Dデータの保護のシステムを記載している。ユーザは、ユーザが操作することができる低精細度3Dデータへのアクセスを有し、ユーザがあるビューを選択したとき、要求がサーバに送出され、サーバは、そのビューに対応する二次元のJPEGを送り返す。従って、高精細の3Dデータは、ユーザに決して供給されないので保護される(David Koller及びMarc Levoyによる“Protecting 3D Graphics Content”Communications of the ACM, June 2005, vol.48, no.6を参照されたい)。このシステムは、その意図された使用について良好に機能するが、フル3Dデータがユーザに転送されるべき場合に適用することができない。
【0012】
従来技術のソリューションにおける共通の問題は、これらのソリューションはフォーマットを保持(format preserving)するものではなく、3Dデータの暗号化に基づくものであり、例えばバウンディングボックスといった何かをユーザが見ることができるように、許可されていない装置により使用可能な3Dデータの第二のセットを提供する。
【0013】
欧州特許出願第10305692.5号は、ポイントのリストを含む3Dオブジェクトがそのポイントの少なくとも幾つかの座標を並べ替えることで保護される、フォーマットを保持するソリューションを記載している。欧州特許出願第10306250.1号は、3Dオブジェクトの頂点の少なくとも1つの次元の座標が他の次元とは独立に並べ替えられる類似のソリューションを記載している。ポイントがどのように接続されるかを詳述するリストは、変化しないままであるが、3Dオブジェクトは、これらのポイントはもはや最初の値を有さないので、もはや「意味をなさない」。これらのソリューションの利点は、保護される3Dオブジェクトは、保護される3Dオブジェクトを「復号」することができない装置によっても、非常に奇妙ではあるが解読可能であることであり、保護される3Dオブジェクトは、オリジナルの3Dオブジェクトと同じサイズのバウンディングボックスで登録される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
後者のソリューションは良好に機能するが、その見ることを満足できないものにするやり方で、許可されていないコンテンツ消費装置が3Dオブジェクトを読取り及び表示するのを可能にする迅速な計算で3Dオブジェクトの保護を可能にする代替的なソリューションの必要があることが理解される。本発明は、係るソリューションを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第一の態様では、本発明は、グラフィカルオブジェクトを保護する方法に向けられる。装置は、複数のポイントを含むグラフィカルオブジェクトを受信し、複数のポイントのうちの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントに並進ベクトルを加算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護されたグラフィカルオブジェクトを出力する。グラフィカルオブジェクト及び保護されたグラフィカルオブジェクトは、視覚的に異なる。
【0016】
第一の好適な実施の形態では、グラフィカルオブジェクトは、3次元オブジェクトである。
【0017】
第二の好適な実施の形態では、並進ベクトルは、秘密の値を使用して鍵をベースにした発生関数を使用して生成される。
【0018】
グラフィカルオブジェクトがバウンディングボックスに関連すること、並進ベクトルによって変換されたポイントがバウンディングボックスの外にあるかを検証し、並進ベクトルによって変換されたポイントがバウンディングボックスの外にある場合、変換されたポイントがバウンディングボックス内に位置されるように、少なくとも1つの次元についてバウンディングボックスのサイズを法として並進ベクトルを調節することは利点がある。
【0019】
さらに、並進ベクトルの少なくとも1つの値を制御する下限及び上限のうちの少なくとも1つを使用することは利点がある。
【0020】
第二の態様について、本発明は、保護されたグラフィカルオブジェクトの保護を解除する方法に向けられる。装置は、複数のポイントを含む保護されたグラフィカルオブジェクトを受信し、複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントから並進ベクトルを引くことで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得し、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを出力する。
第一の好適な実施の形態では、出力はレンダリングを含む。
【0021】
第三の態様では、本発明は、グラフィカルオブジェクトを保護する装置に向けられる。装置は、複数のポイントを含むグラフィカルオブジェクトを受信する手段、複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントを並進ベクトルに加算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段、保護されたグラフィカルオブジェクトを出力する手段とを備える。グラフィカルオブジェクト及び保護されたグラフィカルオブジェクトは、視覚的に異なる。
【0022】
第四の態様では、本発明は、保護されたグラフィカルオブジェクトの保護を解除する装置に向けられる。本装置は、複数のポイントを含む保護されたグラフィカルオブジェクトを受信する手段、複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントを並進ベクトルから引くことで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを出力する手段を備える。
【0023】
第一の好適な実施の形態では、並進ベクトルは、秘密の値を使用した鍵をべースにした発生関数を使用して生成される。
【0024】
グラフィカルオブジェクトがバウンディングボックスに関連付けされていること、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段が、並進ベクトルによって変換されたポイントがバウンディングボックスの外にあるかを検証し、並進ベクトルによって変換されたポイントがバウンディングボックスの外にある場合、変換されたポイントがバウンディングボックス内に位置されるように、少なくとも1つの次元についてバウンディングボックスのサイズを法として並進ベクトルを調節することは利点がある。
【0025】
さらに、並進ベクトルは、並進ベクトルの少なくとも1つの値を制御する下限及び上限のうちの少なくとも1つを使用して生成されることは利点がある。
【0026】
第二の好適な実施の形態では、グラフィカルオブジェクトは、3次元オブジェクトである。
【0027】
第五の態様では、本発明は、プロセッサにより実行されたときに、本発明の第一の態様の方法をプロセッサに実行させる命令を含むプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に向けられる。
【0028】
第六の態様では、本発明は、プロセッサにより実行されたときに、本発明の第二の態様の方法をプロセッサに実行させる命令を含むプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の好適な特徴は、添付図面を参照して、限定されるものではない例を通して以下に記載される。
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトを保護するシステムを例示する図である。
【図2】本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトを保護する方法を例示するフローチャートである。
【図3】本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトの異なる態様を例示する図である。
【図4】本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトの異なる態様を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
例えばVRML(Virtual Reality Modeling Language)及び×3Dのような幾つかの3Dコンテンツフォーマットにおいて、3Dグラフィカルオブジェクト(3Dオブジェクト)は、それぞれのポイントが特定の座標のセットを有する、第一のポイントのリスト(又はアレイ)として表現され、第二のリストは、ポイントをどのように互いに連結するかに関する情報をもつ。
【0031】
本発明の顕著な発明の発想は、暗号化アルゴリズム、好ましくは第一のリストにおける少なくとも1つの次元についてポイントの座標に、鍵をベースとした変換を実行することで、3Dオブジェクトを保護することである。この変換により、新たなポイントのセットが作成され、これにより保護された3Dオブジェクトは、任意の標準的な3Dモデルレンダリング装置によりなお理解することができるが、結果として得られる表示は、奇妙であって且つビューアにとって殆ど使用することができない。言い換えれば、3Dオブジェクトは暗号化される。当業者であれば、特に以下の記載の観点で、EP10305692.5及びEP10306250.1におけるソリューションと比較した違いは、本発明に従って新たな座標値が形成されることを理解されるであろう。
【0032】
許可されたユーザは、オリジナルのポイントを取得するために変換を逆転する手段を有する。
【0033】
図1は、本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトを保護するシステム100を例示し、図2は、本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクトを保護する方法を例示する。限定するものではない例として、ポイントは、グラフィカルオブジェクトを構成する表面の頂点に対応し、3D座標で表現され、第二のリストは、線及び面を形成するために頂点をどのように連結させるかに関する情報を含む。変換は、静止した部分(VRMLシンタックスにおけるCoordinateノード)又はアニメーション部分(VRMLシンタックスにおけるCoodinateInterpolatorノード)で実行されるか、好ましくは両者で実行される。
【0034】
システム100は、送信器110及び受信器140を備え、それぞれ少なくとも1つのプロセッサ(Proc)111,141、メモリ(Mem)112,142、好ましくはユーザインタフェース(UI)113,143及び少なくとも1つの入力/出力ユニット(I/O)114,144を備える。送信器110は、例えばパーソナルコンピュータ又はワークステーションであり、受信器120は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションであるだけでなく、テレビジョンセット、ビデオレコーダ、セットトップボックス等である場合もある。
【0035】
送信器110は、保護されるべき3Dオブジェクト120を受信し(ステップ210)、鍵を使用して、3Dオブジェクト120のポイントのx座標、y座標及びz座標の少なくとも1つを(好ましくは3つ全部を及び好ましくは他の次元に独立に)変換し(ステップ220)、保護された3Dオブジェクト130を取得し、この保護された3Dオブジェクトは、記憶されるか又は受信機140に送出される(ステップ230)。
【0036】
座標は以下のように変換される。保護されるべきそれぞれのポイントP=(x,y,z)について、並進ベクトル(a,b,c)が生成され、この場合、(a,b,c)=f(secret)であり、fは鍵をベースにした発生関数である。次いで、並進ベクトル(a,b,c)をポイントP=(x,y,z)に加えて、保護されたポイントP’=(x’,y’,z’)が生成される。言い換えれば、(x’,y’,z’)=(x+a,y+b,z+c)である。
【0037】
保護されたポイントは、並進ベクトルに依存し、並進ベクトルは、鍵をベースにした発生関数f(secret)に依存する。
【0038】
第一の変形例によれば、fは、秘密情報を入力パラメータとする鍵をベースとした擬似ランダム発生器を使用する。係る関数によれば、動作は、非常にシンプルであるが、変換されたオブジェクトのバウンディングボックスのサイズについて僅かな制御があるか又は制御がない。
【0039】
第二の変形例によれば、fは、変形の影響を調節するため、鍵をベースとした擬似ランダム発生器を使用して更なる制約を考慮した値を生成する。第一の例は、バウンディングボックスを考慮することからなる。この場合、バウンディングボックスの関連のある次元のサイズを法として並進ベクトルが計算される。この場合、モデルの爆発(explosion)がなく、オブジェクトのバウンディングボックスは、サイズ的に増加しない。バウンディングボックスと原点は、関数fの更なるパラメータとして指定される必要がある。
【0040】
第二の変形例の例示として、8で保護されるポイントをもつ1〜10までの1次元のバウンディングボックスを仮定する。並進ベクトルが例えば6である場合、14でバウンディングボックスの外にあるポイントが得られる。これを回避するため、並進ベクトルは、バウンディングボックスのサイズにより調節され、6(最初の並進ベクトル)−10(バウンディングボックスのサイズ)=−4(最終的な並進ベクトル)となる。並進ベクトルをポイントに加えることで、8+(−4)=4となる。
【0041】
受信機で、逆転された計算により、バウンディングボックスの外にあるポイントが得られ、4(「保護された」ポイント)−6(「反対の方向における」最初の併進ベクトル)=−2となる。これは、バウンディングボックスの外にあるので、並進ベクトルは、バウンディングボックスのサイズにより調節され、6−10=−4である。次いで、この値は、「保護された」ポイントから減算され、4−(−4)=8となり、これは、最初の値である。これを見る別の方法は、バウンディングボックスのサイズ(10)は、バウンディングボックスの外にあるポイントの値に加算され、すなわち‐2+10=8となり、これは、同じ結果である。
【0042】
第二の例は、好ましくは予め決定された範囲内の並進ベクトルの値を制御することで、変形の影響を制限することである。この範囲は、1以上の更なる入力パラメータ、(それぞれの次元について異なる場合がある)バウンディングボックスの下限及び上限又は所定のパーセンテージとして表現される場合がある。この場合、モデルの「爆発」が制御される。
【0043】
受信器で、受信器120は、保護された3Dオブジェクト130を受信し(ステップ240)、秘密情報(その受信器への配信は本発明の範囲を超える)を使用して変換された座標の変換を逆転することでポイントを回復し(ステップ250)、保護されていない3Dオブジェクト150を表示するか、又はさもなければ使用する場合がある(ステップ260)。言い換えれば、受信器は、関数f(secret)を使用して、並進ベクトル(a,b,c)を生成し、この並進ベクトルは、保護されたポイントから減算され、(x,y,z)=(x’−a,y’−b,z’−c)となる。なお、最初の3Dオブジェクト120及び保護されていない3Dオブジェクト150は同じである。
【0044】
結果として、許可されたユーザは、全てのオブジェクトが正しく表示されるので、異常な点に気付かず、許可されないユーザは、誤ったやり方でレンダリングされた保護された1以上のオブジェクトをもつ全体のシーンを見ることになる。
【0045】
第一のコンピュータ読み取り可能な記録媒体160は、送信器110のプロセッサ111により実行されたとき、記載された3Dオブジェクトを保護する命令を含むプログラムを記録する。第二のコンピュータ読み取り可能な記録媒体170は、受信機140のプロセッサ141により実行されたとき、記載された3Dオブジェクトの保護を解除する命令を含むプログラムを記録する。
【0046】
図3及び図4は、本発明の好適な実施の形態に係る3Dオブジェクト投影の異なる態様を例示する。図3は、保護されていないポイント310のリスト、例えば変換後320に、保護されたポイントのリスト330となるオブジェクトのスタティックな部分を示す。例として、x座標値のみが変換され、y座標値及びz座標値は、変化しないままである。図3では、座標値のセットの左にインデックスが示され、並進ベクトル315(x座標のみが変換されるとき値a及び0のみを含む)は、保護されていないリスト310と保護されたリスト330との間に見られる。
【0047】
x座標は2つのリストにおいて異なることが分かり、例えばインデックス1について、オリジナルのx座標(17)は、並進ベクトル(124)のx座標に加えられ、保護されたポイント141の変換されたx座標が得られる。図4は、3Dオブジェクトのレンダリングを例示し、レンダリングされた保護されていない3Dオブジェクト410は、レンダリングされた保護された3Dオブジェクト420の隣に両者間の比較を可能にするために示される。図示されるように、レンダリングされた保護された3Dオブジェクト420は、保護されていない3Dオブジェクト410との僅かな類似性のみを有する。これは、第二の変形例の第二の例に従って並進ベクトルが生成されたこと、すなわちベクトルのサイズが制限されたことの事実による。
【0048】
代替的な実施の形態では、3Dグラフィカルオブジェクトのポイントは、グラフィカルオブジェクトを構成する表面のテクスチャのマッピングに対応し、二次元座標で表される。
【0049】
当業者は、ユーザの許可及び鍵の管理は本発明の範囲外にあることを理解されるであろう。
【0050】
このように座標が変換されることが分かる。従来のアプローチは、頂点のデータを暗号化することであり、これは、せいぜい、3D空間全体を通して拡がるランダム数を有して完全なシーンの他のオブジェクトとオーバラップすることになり、最悪の状態で、3Dオブジェクトをレンダリングすることは可能ではない。本発明のアプローチによれば、保護された3Dオブジェクトは、オリジナルの、即ち保護されていない3Dオブジェクトの幾何学的な制限内でさえ、一纏まりとなったままでいる。従って、ユーザがあるオブジェクトの保護を解除することが許可されていないとき、全体のシーンがこの保護されたオブジェクトの表示により余り混乱されない。
【0051】
本発明は3次元について記載されたが、1次元だけでなく、2次元又は3を超える任意の次元といった、他の次元におけるオブジェクトを保護することにも適用される。
【0052】
本発明は、3Dモデルの機密性を保証するメカニズムを提供できること、このメカニズムは許可されていないユーザについて保護されたモデルと保護されていないモデルを視覚的に区別できることを理解されるであろう。また、保護された3Dオブジェクト(及び3Dオブジェクトを含むシーン)は、多かれ少なかれ認識可能であるが、鍵をベースとした発生器について使用される制約に依存して常にレンダリングできることを理解されるであろう。
【0053】
実施の形態及び(必要に応じて)特許請求の範囲及び図面に開示されたそれぞれの特徴は、独立に提供されるか又は任意の適切な組み合わせで提供される場合がある。ハードウェアで実現されるとして記載された特徴は、ソフトウェアで実現される場合もあり、逆にソフトウェアで実現されるとして記載された特徴は、ハードウェアで実現される場合もある。請求項で現れる参照符号は、例示するのであって、請求項の範囲を制限する影響を有するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィカルオブジェクトを保護する方法であって、
当該方法は、装置において、
複数のポイントを含むグラフィカルオブジェクトを受信するステップと、
前記複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントに前記並進ベクトルを加算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護されたグラフィカルオブジェクトを取得するステップと、
前記保護されたグラフィカルオブジェクトを出力するステップとを含み、
前記グラフィカルオブジェクトと前記保護されたグラフィカルオブジェクトは、視覚的に異なる、方法。
【請求項2】
前記グラフィカルオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記並進ベクトルは、秘密情報を使用した鍵をベースとした発生関数を使用して生成される、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記グラフィカルオブジェクトは、バウンディングボックスに関連され、
当該方法は、前記並進ベクトルにより変換されたポイントが前記バウンディングボックスの外にあるかを確認するステップと、前記並進ベクトルにより変換されたポイントが前記バウンディングボックスの外にある場合に、前記変換されたポイントが前記バウンディングボックス内に位置されるように、少なくとも1つの次元について前記バウンディングボックスのサイズを法として前記並進ベクトルを調節するステップとを更に含む、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記並進ベクトルの少なくとも1つの値を制御する下限と上限の少なくとも1つが使用される、
請求項3記載の方法。
【請求項6】
保護されたグラフィカルオブジェクトの保護を解除する方法であって、
当該方法は、装置において、
複数のポイントを含む保護されたグラフィカルオブジェクトを受信するステップと、
前記複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞえのポイントから前記並進ベクトルを減算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得するステップと、
前記保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを出力するステップと、
を含む方法。
【請求項7】
前記出力は表示を含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
グラフィカルオブジェクトを保護する装置であって、
当該装置は、
複数のポイントを含むグラフィカルオブジェクトを受信する手段と、
前記複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントに前記並進ベクトルを加算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段と、
前記保護されたグラフィカルオブジェクトを出力する手段とを備え、
前記グラフィカルオブジェクトと前記保護されたグラフィカルオブジェクトは視覚的に異なる、装置。
【請求項9】
保護されたグラフィカルオブジェクトの保護を解除する装置であって、
当該装置は、
複数のポイントを含む保護されたグラフィカルオブジェクトを受信する手段と、
前記複数のポイントの少なくとも幾つかのそれぞれのポイントについて、並進ベクトルを生成し、前記それぞれのポイントを前記並進ベクトルから減算することで前記それぞれのポイントを変換することにより、保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段と、
前記保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを出力する手段と、
を含む装置。
【請求項10】
前記並進ベクトルは、秘密情報を使用した鍵をベースとした発生関数を使用して生成される、
請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記グラフィカルオブジェクトは、バウンディングボックスに関連され、
前記保護が解除されたグラフィカルオブジェクトを取得する手段は、前記並進ベクトルにより変換されたポイントが前記バウンディングボックスの外にあるかを確認し、前記並進ベクトルにより変換されたポイントが前記バウンディングボックスの外にある場合に、前記変換されたポイントが前記バウンディングボックス内に位置されるように、少なくとも1つの次元について前記バウンディングボックスのサイズを法として前記並進ベクトルを調節する、
請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記並進ベクトルは、前記並進ベクトルの少なくとも1つの値を制御する上限及び下限の少なくとも1つを使用して生成される、
請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記グラフィカルオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
請求項9記載の装置。
【請求項14】
プロセッサにより実行されたときに、前記プロセッサに、請求項1乃至5の何れか記載の方法を実行させる命令を含むプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
プロセッサにより実行されたときに、前記プロセッサに、請求項6乃至7の何れか記載の方法を実行させる命令を含むプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243319(P2012−243319A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−111467(P2012−111467)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】