説明

3次元形状計測装置

【課題】対象物体の全周3次元形状モデルの計測に必要な情報を瞬時に取得する。
【解決手段】スタジオ装置10は、パネルを四方に配置して接合することで底面が開放された箱形であり、パネルの内側に鏡面が形成され、天面側から見て鏡面の全部または一部が天面方向に傾斜され、底面側から対象物体を被せて使用する。スタジオ装置10の天面側には、スタジオ装置の内部に指定のパターン映像を投影する投影装置112と、スタジオ装置の内部を撮影する撮影装置113が配置される。この状態で、演算制御装置111は、投影装置112によりパターン映像を投影した状態で撮影装置133により撮影されたスタジオ装置10内の画像からスタジオ装置10内に配置される対象物体の上面から見た形状及び各パネルの鏡面に映る前後左右の形状を3次元情報として取得し、この3次元情報に基づいて全周3次元画像を作成する。作成された全周3次元画像は表示装置114に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体の全周3次元形状を計測する3次元形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象物体を立体的に認識可能とするために、対象物体の3次元形状を全周に渡って計測する装置が提案されている。この装置は、対象物体を回転させながら撮像する、計測装置自体を対象物体の周りを移動させながら撮像する、複数台の撮像装置で同時に複数方向から撮像する、といった手法で対象物体全周の画像を取得し、その全周画像から3次元形状モデルを作成する構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−243497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の3次元形状計測装置では、一度に得られる3次元形状モデルは撮像装置の方を向いている面だけであり、全周の3次元形状モデルを得るためには、対象物体を回転させるまたは撮像装置を移動させることが必要であり、計測に時間がかかるといった問題があった。また、同時に全周の3次元形状モデルを得る手法として、複数台の撮像装置で同時に複数方向から撮像することで対応可能であるが、複数台の撮像装置が必要となるため、コスト面での問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、対象物体の全周3次元形状モデルの計測に必要な情報を瞬時に取得することができ、これによって短時間に対象物体の全周3次元形状モデルを表示することのできる3次元形状計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る3次元形状計測装置は以下のような態様の構成とする。
(1)パネルをN(Nは3以上の整数)方に配置して接合することで底面が開放された箱形であり、前記N方のパネルのM(Mは1以上N以下の整数)枚の内側に鏡面が形成され、天面側から見て前記鏡面の全部または一部が天面方向に傾斜され、前記底面側から対象物体を被せて使用するスタジオ装置と、前記スタジオ装置の天面側に配置され、前記スタジオ装置の内部に指定のパターン映像を投影する投影装置と、前記スタジオ装置の天面側に配置され、前記スタジオ装置の内部を撮影する撮影装置と、前記投影装置でパターン映像を投影した状態で前記撮影装置により撮影されたスタジオ装置内の画像から前記スタジオ装置内に配置される対象物体の上面から見た形状及び各パネルの鏡面に映る前後左右の形状を3次元情報として取得し、この3次元情報に基づいて全周3次元画像を作成する画像処理手段と、前記画像処理手段で作成された全周3次元画像を表示する表示手段とを具備する態様とする。
【0007】
(2)(1)の構成において、前記スタジオ装置は、内部に前記対象物体が配置されたことを検知する検知手段を備え、前記画像処理手段は、前記検知手段が前記対象物体を検知した時点から前記画像処理を開始する態様とする。
(3)(1)において、前記スタジオ装置は、前記N方のパネルのM枚の内側に天面側から見て天面方向に傾斜するように可動自在に取り付けられる複数の小型ミラーと、前記複数の小型ミラーそれぞれに対応して設けられ、前記小型ミラーを個別に前記スタジオ装置の内部方向に傾斜させる複数のアクチュエータとを備える態様とする。
【0008】
(4)(1)において、前記スタジオ装置は、前記N方のパネルのM枚の内側に天面側から見て天面方向に傾斜した状態で固定され、鏡面状態及び透過状態の切り替え機能を有する複数の調光ミラーと、前記複数の調光ミラーそれぞれに対応して設けられ、前記複数の調光ミラーの鏡面状態、透過状態を個別に切り替える調光制御手段とを備える態様とする。
【0009】
(5)(1)において、前記スタジオ装置は、内部の底面周辺に配置される凸面鏡を備え、前記画像処理手段は前記凸面鏡に映る像の歪みを補正する補正手段を備える態様とする。
(6)(1)において、前記投影装置は、同時に異なる波長で複数のパターン像を投影し、前記撮像装置は、前記投影装置の複数の投影波長に対応する波長にピーク感度を持つ態様とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スタジオ装置内部の鏡面が、上方に設置された投影装置が下方に向かって投影する3次元形状計測に必要なパターン光を、内部に向かって反射して対象物体の全周囲にパターンを投影し、パターン光が投影された対象物体の前後左右の様子を反射するようにし、システム上方に設置された撮影装置にてパターン光が投影された対象物体の全周囲を撮影可能にしていることにより、対象物体にスタジオ装置を被せるという簡単な操作によって、対象物体の全周3次元形状計測に必要な情報を瞬時に取得することができる。
【0011】
また、本発明によれば、スタジオ装置の内部に設置される検知手段により、対象物体にスタジオ装置を被せるというユーザにとってわかりやすい動作によって3次元形状計測を開始することが可能となる。
また、小型ミラー及びアクチュエータ、調光ミラー及び調光コントローラにより、スタジオ装置の横幅を小型化することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、凸面鏡を利用することで、スタジオ装置の高さを縮小することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、対象物体の全周3次元形状モデルの計測に必要な情報を瞬時に取得することができ、これによって短時間に対象物体の全周3次元形状モデルを表示することのできる3次元形状計測装置を提供することができる。
【0013】
特に、平面鏡の枚数Mが大きいと視点数が増えるのでオクルージョン(遮蔽)部分が減るという効果があり、Mが小さいと視点数が減るので前処理(キャリブレーション)の工程数が少なく済むという効果がある。
また、隣り合う鏡面からの投影パターンの混合を防ぐために、隣り合う鏡面においては、波長分割または時分割で投影する必要があるが、平面鏡の枚数Mが小さいと、時分割の手段を取った場合に、少ないフレーム数で計測が完了するので、計測速度が速くなる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る3次元形状計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の計測処理装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の3次元情報の取得処理(計測プロセス)を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態の次元形状モデルの作成処理(復元プロセス)を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態の計測処理装置を用いて対象物体を計測するときの設置状態と計測状況を示す概念図である。
【図6】第1の実施形態において、3次元座標算出のための投影パターン画像と撮影取得画像を示す図である。
【図7】第1の実施形態において、テクスチャ情報取得のための投影パターン画像と撮影取得画像を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る3次元形状計測装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態の計測処理装置を用いて対象物体を計測するときの設置状態と計測状況を示す概念図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る3次元形状計測装置の構成を示す斜視図である。
【図11】第4の実施形態の計測処理装置を用いて対象物体を計測するときの設置状態と計測状況を示す概念図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る3次元形状計測装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る3次元形状計測装置の構成を示すブロック図である。この装置は、スタジオ装置10と計測処理装置11とで構成される。まず、スタジオ装置10は、パネルの一方面を鏡面加工した平面鏡101〜104を鏡面が内側になるようにして接合することで、少なくとも底面が開放された箱状となっており、基台に載置した対象物体の上から被せることで、対象物体を撮影するためのスタジオを形成する。天面は天板を備えていてもよいが、その場合には撮影用の穴を形成しておく。側面の平面鏡101〜104は天面に対して角度φmだけ内方向に狭まるように傾斜するようになされている。
【0016】
一方、計測処理装置11は、周辺機器の制御及び3次元形状モデルの計測を行う演算制御装置111を備える。周辺機器として、スタジオ装置10の天面側に配置され、スタジオ内部の対象物体に任意の画像を投影する投影装置112及びスタジオ内部全体を撮影する撮影装置113、演算制御装置111で計測された3次元形状モデルを表示する表示装置114を備える。
【0017】
図2は上記計測処理装置11の具体的な構成を示すブロック図である。この計測処理装置11は、上記演算制御装置111のバス上に、投影装置112、撮影装置113及び表示装置114をそれぞれインターフェース(図示せず)を介して接続したものである。演算制御装置111は、本装置の制御及び情報処理を実行するCPU(演算処理装置)111A、CPU111Aの処理プログラムを格納するためのプログラムメモリ111B、情報処理の作業空間及び取得データ及び演算結果を格納する記憶装置111Cを備え、図3に示す3次元情報の取得処理(計測プロセス)と、図4に示す3次元形状モデルの作成処理(復元プロセス)を実行する。これらの処理については後述する。
【0018】
図5は上記計測処理装置11を用いて対象物体Tを計測するときの設置状態と計測状況を示す概念図である。まず、図5(a)に示すように、スタジオ装置10を底面の開口から対象物体Tに被せ、スタジオ内部のほぼ中央に対象物体Tを配置し、天面中央部に投影装置112及び撮影装置113を配置する。投影装置112はスタジオ内部に向けて指定の画像を投影する。このときの投影の最大広がり角はφp で表される。撮影装置113は、対象物体Tの実像と共に各平面鏡101〜104の反射による対象物体Tの虚像を含む5つの像を同時に撮影する。演算制御装置111は撮影装置113で得られた多面画像から3次元形状モデルを計測する。
【0019】
ここで、天面の鉛直方向から角度φmだけ傾斜された一つの平面鏡104について投影装置112からの光路を見ると、図5(b)に示すように、鏡面から距離Lp に投影装置112から照射された光線のうち、底面から高さh0 で反射した光線は、鏡面から距離dだけ離れた場所では高さhとなるので、計測可能な物体の最大サイズは、距離dにおいては高さhとなる。この高さhは次式によって求められる。
【0020】
【数1】

上記構成において、図6(a),(b)に3次元座標算出のためのパターン画像と取得画像を示し、図7(a),(b)にテクスチャ情報取得のためのパターン画像と取得画像を示し、これらの図と図3及び図4を参照して、以下に上記実施形態の動作を詳細に説明する。
【0021】
まず、ユーザが対象物体に筐体部10を被せ、本装置を起動すると、演算制御装置111ではプログラムメモリ111Bに格納された図3に示す計測プロセス(3次元情報の取得処理)のプログラムをロードしてCPU111Aにそのプログラムを実行させる。
【0022】
この計測プロセスでは、まず、投影装置112に図6(a)に示すストライプ状のパターン画像P1をスタジオ内部に投影させ(ステップS11)、そのときのスタジオ内部全体を撮影装置113により撮影させる(ステップS12)。これにより、図6(b)に示すように、対象物体Tの平面鏡101〜104による4つの虚像領域A11〜A14及び実像領域A15を含む画像、すなわちスタジオ内部に配置され、ストライプ状のパターン画像P1が投影された対象物体Tを前後左右上方から同時に見た画像A1が得られる。この画像A1は3次元情報として記憶装置111Cに蓄積される。
【0023】
尚、予め、虚像領域A11〜A14に関しては、鏡面越しに投影されるパターン画像P1と鏡面越しに撮影される周面画像を用いて、また、実像領域A15に関しては、直接投影装置112から投影されるパターン画像P1と直接撮影装置113で撮影される上面画像を用いて、投影装置112と撮影装置113の間のキャリブレーションをしておくものとする。
【0024】
次に、投影装置112に投影画像の切換を指示し(ステップS13)、投影装置112に図7(a)に示す白色画像P2をスタジオ内部に投影させ(ステップS14)、そのときのスタジオ内部全体を撮影装置113に撮影させる(ステップS15)。これにより、図7(b)に示すように、対象物体Tの平面鏡101〜104による4つの虚像領域A21〜A24及び実像領域A25を含む画像、すなわちスタジオ内部に配置され、対象物体Tを前後左右上方から同時に見た画像A2が得られる。この場合、平面鏡101〜104によって白色画像を内側に反射させ、対象物体を前後左右上方から照らすようにしているため、これを撮影することにより、影のないテクスチャ画像を得ることができる。この画像A2はテクスチャ情報として記憶装置111Cに蓄積される(ステップS16)。
【0025】
上記計測プロセスが完了すると、演算制御装置111ではプログラムメモリ111Bに格納された図4に示す復元プロセス(3次元形状モデルの作成・表示)のプログラムをロードしてCPU111Aにそのプログラムを実行させる。
この復元プロセスでは、まず、記憶装置111Cから領域A1n,A2nの3次元情報及びテクスチャ情報を読み出す(ステップS21)。この時点で、カウントnをいったん0にリセットし(ステップS22)、さらにカウントnにn+1をセットして(ステップS23)、領域A1n,A2nそれぞれで得られた情報より、方向n=1すなわち領域A11,A21に映る対象物体Tの3次元形状を算出する(ステップS24)。このステップS24の処理をnがn>5となるまで繰り返し(ステップS25)、これによって領域A12,A13,A14,A22,A23,A24それぞれに映る対象物体Tの3次元形状(虚像)と領域A15,A25の上方から見た対象物体Tの3次元形状(実像)とが得られる。上記の各領域における3次元形状が取得されると、その5方向の形状を統合して全周3次元モデルを作成し(ステップS26)、表示装置114に表示する(ステップS27)。
【0026】
上記ステップS24,S26による全周3次元モデルの作成方法としては、3次元形状情報とテクスチャ情報の対応する各領域A1n,A2nに対して、それぞれ3次元座標を求める。このとき、3次元形状の復元アルゴリズムは、スリット光投影法や空間コード化法などのアクティブステレオ法を用いるものとする。各方向から見た対象物体の3次元座標が求まったら、これを統合する。予め各領域A1n,A2nに関してキャリブレーションが行われているため、3次元座標を統合する際に各領域間で位置合わせを行う必要はない。統合された全周3次元座標において、3次元ドロネー分割などを用いてテクスチャマッピングを行うことで、全周3次元モデルを得る。
【0027】
また、ステップS27における3次元モデルの表示には、モニタやタッチパネル等の2次元ディスプレイを用いればよいが、AR(Augmented Reality)ディスプレイやHMD(Head Mounted Display)で閲覧してもよいし、3次元ディスプレイで表示してもよい。
【0028】
上記構成によれば、スタジオ上方に設置された投影装置112が下方に向かって投影する3次元形状計測に必要なパターン光を、平面鏡101〜104でスタジオ内部に向かって反射して対象物体Tの全周囲にパターンを投影することを可能にしている。また、パターン光が投影された対象物体Tの前後左右の様子を反射することによりスタジオ上方に設置された撮影装置113にてパターン光が投影された対象物体Tの全周囲を撮影可能にしている。これにより、対象物体Tに箱状のスタジオ装置10を被せるという簡単な操作によって、対象物体Tの全周3次元形状計測に必要な情報を比較的短時間に取得することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態において、計測プロセスは、ユーザがボタン等の入力操作を行うことで計測を開始するようにしてもよいが、その開始を自動化すると、計測の効率がアップする。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態の構成において、スタジオ装置10の内部に照度センサや加速度センサ等の各種物理情報取得センサを配置して駆動しておき、そのセンサ出力を演算制御装置111に入力する。そして、演算制御装置111において、スタジオ装置10の内部に対象物体Tが配置された(スタジオ装置10を対象物体Tに被せた)ことをセンサによりセンシングする。これによって、自動的に計測プロセスを開始することが可能となる。
【0030】
(第3の実施の形態)
図8は第3の実施形態の構成を示す斜視図である。この実施形態は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであるが、スタジオ装置10の平面鏡101〜104の代わりに、図8のように多数の小型ミラー10Aを面状に配置し、各小型ミラー10Aをアクチュエータ10B(図9(a)参照)で角度調整するようにしたパネル105〜108を用いる。この場合、各パネル105〜108は特に傾斜させる必要はない。
【0031】
上記構成において、予め、投影パターンと各小型ミラー10Aを介して映る画像をもとに、キャリブレーションを行う。つまり、n枚の小型ミラー10Aを用いる場合、小型ミラー領域と対象物体情報のn+1回のキャリブレーションが必要となる。各小型ミラー10Aは図9(a)に示すように角度φmを持たせて配置する。小型ミラー10Aの幅をrとすると、各小型ミラー10Aの投影点からの光経路は図9(b)に示すようになる。これにより、各小型ミラー10Aの役割は、第1の実施形態の平面鏡と同等となる。
【0032】
すなわち、全小型ミラー10Aを同時に角度φm を持たせて配置すると、下部にある小型ミラーが上部にある小型ミラーの陰になる。上下小型ミラー間の陰が生じないように角度を調整するために、各小型ミラー10Aは外側にアクチュエータ10Bを備える。動作する小型ミラー10Aのみ、アクチュエータ10Bによって角度φmに傾けられ、それ以外の小型ミラー10Aは、投影装置112の投影光を反射しない角度に格納される。小型ミラー10Aの形状は、微小な正方形でも一片を成す長方形でもよい。一度に動作する小型ミラー10Aは、小型ミラー間に陰が生じなければ、複数枚でもよい。必要な鏡面面積を微小鏡面に分割する構成にすることにより、大きな鏡面を傾けてシステムを構成する場合に比べ、パネルの側面がなす角度が減るので、スタジオ装置10を小型化する効果がある。
【0033】
(第4の実施形態)
図10は第4の実施形態の構成を示す斜視図である。この実施形態は、基本的に第3の実施形態の構成と同じであるが、小型ミラーに変わって調光ミラーガラス10Cを用い、アクチュエータ10Bに変わって調光コントローラ10Dが設けられたパネル109〜1012を用いる。調光ミラーガラス10Cは調光コントローラ10Dからの指示により、鏡面と透過面の切換を電気的に行えるもので、図11(a)に示すように予め角度φm傾斜させて固定しておく。調光ミラーガラス10Cの幅をrとすると、各調光ミラーガラス10Cの投影点からの光経路は図11(b)に示すようになる。
【0034】
上記構成において、各調光ミラーガラス10Cの役割は、第3の実施形態の小型ミラー10Aと同等であり、調光コントローラ10Dによって鏡面と透過面の切り替えを電気的に行うことにより、下部が上部の陰にならないように順に計測を行っていく。調光ミラーガラス10Cの形状は、微小な正方形でも一片を成す長方形でもよい。調光ミラーガラス同士の間隔は、調光ミラーガラスの高さと一致させて配置する。必要な鏡面面積を微小鏡面に分割する構成にすることにより、大きな鏡面を傾けてスタジオ装置10を構成する場合に比べて、スタジオ装置10の側面がなす角度が減るので、スタジオ装置10を小型化する効果がある。
【0035】
(第5の実施形態)
図12は第5の実施形態の構成を示す斜視図である。この実施形態は、第1の実施形態のスタジオ装置10における基本的な構成に加えて、投影装置112と撮影装置113の前方の底面周辺部にそれぞれ凸面鏡10Eを配置する構成とする。この場合、予め投影パターンと各凸面鏡10Eを介して映る画像をもとにキャリブレーションを行う。ここで、投影されるパターンも撮影される画像も、凸面鏡10Eの反射による歪みが生じるが、撮影された画像のうち凸面鏡領域全体に対して対応点をとり、歪み補正テーブルを作成するなどの手法でキャリブレーションを行うによって補正される。
【0036】
投影装置112の画角φpを最大限に利用するためには、投影される光線の最大角度の傾きの絶対値が、光線と凸面鏡10Eの接点と凸面鏡10Eの中心を結ぶ線分の傾きの絶対値よりも大きければよい。凸面鏡10Eの反射特性によって投影装置112と撮影装置113の画角がともに広がるので、投影装置112と撮影装置113をより下方に設置することが可能となり、スタジオ装置10を小型化する効果がある。
【0037】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について説明する。この実施形態では、第1の実施形態の構成において、投影装置112が3次元形状情報を取得するためのパターン投影とテクスチャ情報を取得するためのパターン投影を異なる波長で行い、撮影装置113が投影装置112の投影波長に対応する波長にピーク感度を持つ撮影を行うようにしてもよい。この場合、3次元形状情報とテクスチャ情報を同時に取得することができるので、より高速に3次元モデル生成に必要な情報を取得することができる。
【0038】
(第7の実施形態)
第7の実施形態について説明する。第1の実施形態では、パネルを四方に張り合わせるものとしたが、この実施形態では、パネルを四方のみに限定するのではなく、N(Nは3以上の整数)に配置して接合するようにし、その中のM(Mは1以上N以下の整数)枚のパネルの一部を平面鏡とするものである。M枚の平面鏡を用いた場合、M個の鏡像と1つの実像の、併せてM+1方向からの視点を統合した3次元モデルを作成することができる。
【0039】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…スタジオ装置、101〜104…平面鏡、105〜108…パネル11…計測処理装置、10A…小型ミラー、10B…アクチュエータ、10C…調光ミラーガラス、10D…調光コントローラ、10E…凸面鏡、111…演算制御装置、114…表示装置、111A…CPU、111B…プログラムメモリ、111C…記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルをN(Nは3以上の整数)方に配置して接合することで底面が開放された箱形であり、前記N方のパネルのM(Mは1以上N以下の整数)枚の内側に鏡面が形成され、天面側から見て前記鏡面の全部または一部が天面方向に傾斜され、前記底面側から対象物体を被せて使用するスタジオ装置と、
前記スタジオ装置の天面側に配置され、前記スタジオ装置の内部に指定のパターン映像を投影する投影装置と、
前記スタジオ装置の天面側に配置され、前記スタジオ装置の内部を撮影する撮影装置と、
前記投影装置でパターン映像を投影した状態で前記撮影装置により撮影されたスタジオ装置内の画像から前記スタジオ装置内に配置される対象物体の上面から見た形状及び各パネルの鏡面に映る前後左右の形状を3次元情報として取得し、この3次元情報に基づいて全周3次元画像を作成する画像処理手段と、
前記画像処理手段で作成された全周3次元画像を表示する表示手段と
を具備することを特徴とする3次元形状計測装置。
【請求項2】
前記スタジオ装置は、内部に前記対象物体が配置されたことを検知する検知手段を備え、
前記画像処理手段は、前記検知手段が前記対象物体を検知した時点から前記画像処理を開始することを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測装置。
【請求項3】
前記スタジオ装置は、前記N方のパネルのM枚の内側に天面側から見て天面方向に傾斜するように可動自在に取り付けられる複数の小型ミラーと、前記複数の小型ミラーそれぞれに対応して設けられ、前記小型ミラーを個別に前記スタジオ装置の内部方向に傾斜させる複数のアクチュエータとを備えることを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測装置。
【請求項4】
前記スタジオ装置は、前記N方のパネルのM枚の内側に天面側から見て天面方向に傾斜した状態で固定され、鏡面状態及び透過状態の切り替え機能を有する複数の調光ミラーと、前記複数の調光ミラーそれぞれに対応して設けられ、前記複数の調光ミラーの鏡面状態、透過状態を個別に切り替える調光制御手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測装置。
【請求項5】
前記スタジオ装置は、内部の底面周辺に配置される凸面鏡を備え、前記画像処理手段は前記凸面鏡に映る像の歪みを補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測装置。
【請求項6】
前記投影装置は、同時に異なる波長で複数のパターン像を投影し、前記撮像装置は、前記投影装置の複数の投影波長に対応する波長にピーク感度を持つことを特徴とする請求項1記載の3次元形状計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−101591(P2013−101591A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86433(P2012−86433)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】