説明

3次元空間データ処理装置及びプログラム

【課題】平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元空間について、3次元空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する技術に関し、交差判定に係る処理の負荷を軽減する。
【解決手段】候補選定部22が、3次元空間上の背景オブジェクトのポリゴン及びキャラクタオブジェクトの移動線分を2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴンを選定して交差判定部23に供給し、交差判定部23が、候補選定部22により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するか否かを判定し、ポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴン(キャラクタオブジェクトが衝突するポリゴン)を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて仮想的に表現される3次元空間について処理する技術に関し、特に、3次元の空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて3次元の仮想的なゲーム空間を表現し、当該ゲーム空間内でゲームを展開する3Dゲームが実現されている。
このような3Dゲームでは、例えば、ゲーム空間内を移動する物体とゲーム空間内に存在する他の物体との衝突を判定し、これらの衝突が検出された場合に所定の画像や音響等の出力を行って、物体同士の衝突が発生したことをゲームのプレイヤに知らせることなどが行われている。このような衝突の判定では、例えば、移動する物体の移動元(始点)と移動先(終点)を結ぶ線分が、他の物体を形成するポリゴンの面を通過するかを判定する交差判定により当該線分と交差するポリゴンの有無を調べ、該当するポリゴンが存在する場合に衝突が発生したと判定される。
【0003】
また、3Dゲームでは、例えば、ゲーム空間内を自律的に行動する自律キャラクタを用意してゲームの趣向性を高める工夫なども行われている。このような自律キャラクタの移動に係るルート探索用の技術としては、ナビゲーションメッシュ(Navigation Meshes)と呼ばれる技術が知られている。
ナビゲーションメッシュでは、例えば、背景やオブジェクト等を表現するためのポリゴンとは別に、キャラクタがゲーム内の場面(マップ等)を移動する際に利用する経路データを用意しておく。この経路データは、三角形ベースで構築された「道」であり、各三角形に対して隣の三角形との隣接情報を含めてあり、この経路データを用いてキャラクタが移動可能なルートの探索を行う。
ナビゲーションメッシュの詳細については、例えば、非特許文献1の「SECTION3 人工知能」の「3.6 ナビゲーションメッシュによる3D移動とパスの発見の単純化」、非特許文献2の「SECTION3 人工知能」の「3.7 高速なナビゲーションメッシュ」、非特許文献3の「SECTION3 人工知能」の「3.1 ナビゲーションメッシュによる自動的な退避場所探索」などに記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mark DeLoura 他、「Game ProgrammingGems 日本語版」、株式会社ボーンデジタル、平成13年6月25日
【非特許文献2】Dante Treglia 他、「Game ProgrammingGems 3 日本語版」、株式会社ボーンデジタル、平成16年12月21日
【非特許文献3】Kim Pallister 他、「Game ProgrammingGems 5 日本語版」、株式会社ボーンデジタル、平成18年9月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、プレイヤの操作入力に応じて自己キャラクタが行動するアクションゲームのように即時応答性(リアルタイム性)が要求される3Dゲームでは、交差判定などの処理に手間取って遅延(タイムラグ)が生じるとゲームとしての興趣性が損なわれかねないことから、処理の負荷を軽減させて即時応答性を高めることが求められている。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みなされたものであり、平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元空間について、3次元空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する技術に関し、交差判定に係る処理の負荷を軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元空間について、3次元空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する3次元空間データ処理装置において、選定手段が、3次元空間上の線分及びポリゴンを2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺が前記線分と交差するポリゴンを選定し、特定手段が、前記選定手段により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面が前記線分と交差するポリゴンを特定する。
【0008】
すなわち、本発明に係る3次元空間データ処理装置では、3次元空間内に存在する全てのポリゴンを対象にして、当該ポリゴンの面が線分と交差するかの交差判定を行うのではなく、3次元空間に比べて処理負担が少ない2次元平面上でポリゴンの選定を行い、当該選定により絞り込まれたポリゴンを対象にして3次元空間上で交差判定を行うことで、3次元空間上で実行する交差判定の回数を減少させている。
このように、本発明では、3次元空間上での交差判定の対象とするポリゴンを2次元平面上で効果的に絞り込むことで、交差判定に係る処理の全体的な負荷を軽減している。
【0009】
また、一構成例として、始点と終点が定められた線分について、前記選定手段が、2次元平面において、前記線分の始点を内部に有するポリゴンの各辺について、前記線分と交差し且つ当該辺に対して前記線分の終点が外側にあるという条件を満たすかを判定する処理を行い、当該条件を満たす辺を共有する他のポリゴンの各辺について前記処理を行うことを、前記条件を満たす辺を有しないポリゴンが検出されるまで繰り返し、前記処理の対象となったポリゴンを選定するように構成すればよい。
【0010】
このような構成によれば、線分とポリゴンの各辺との交差の判定を、線分の始点から終点に向かう一方向の処理を1回行うだけで済ませることができ、該当するポリゴンの選定を効率的に行うことができる。
なお、上記の構成例において、前記選定手段が、辺を共有するポリゴン同士を関連付けたリンクデータを用いて、前記条件を満たす辺を共有する他のポリゴンを特定するように構成すれば、辺を共有する他のポリゴンの特定を簡易に行うことができる。
【0011】
また、本発明は、上記のような3次元空間データ処理装置としてではなく、当該装置をコンピュータにより実現するためのプログラム(或いは当該プログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶した記憶媒体)としても実現することができ、当該装置やプログラムなどにより実施される方法として把握することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3次元空間内に存在する全てのポリゴンを対象にして、当該ポリゴンの面が線分と交差するかの交差判定を行うのではなく、3次元空間に比べて処理負担が少ない2次元平面上でポリゴンの選定を行い、当該選定により絞り込まれたポリゴンを対象にして3次元空間上で交差判定を行うため、3次元空間上で実行する交差判定の回数が減少される。すなわち、3次元空間上での交差判定の対象とするポリゴンが2次元平面上で効果的に絞り込まれるので、交差判定に係る処理の全体的な負荷が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るゲーム装置のハードウェア構成を例示する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るゲーム装置の機能ブロックを例示する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るゲーム装置による衝突判定を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るゲーム装置による衝突判定を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るゲーム装置による衝突判定を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るゲーム装置により候補選定処理の処理フローを例示する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るゲーム装置による候補選定処理を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るゲーム装置におけるポリゴンのデータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る3次元空間データ処理装置として動作するゲーム装置のハードウェア構成を例示してある。
本例のゲーム装置は、各種演算処理を行うCPU(Central Proccessing Unit)11、CPU11の作業領域となるRAM(Random Access Memory)12、基本的な制御プログラムを記録したROM(Read Only Memory)13、他の装置と有線又は無線により通信を行う通信部14、プレイヤからの操作入力をキーボタン等により受け付ける操作受付部15、ゲーム画像をディスプレイ(表示装置)により出力する画像出力部16、ゲーム音声をスピーカ(音響装置)により出力する音声出力部17、装置に装填された外部媒体にアクセスする外部媒体アクセス部18、といったハードウェア資源を有している。
【0015】
本例のゲーム装置は、ゲームプログラムを記憶した外部媒体を装置に装填した状態で起動されると、外部媒体アクセス部18により当該外部媒体からゲームプログラムを読み出してRAM12に展開し、これをCPU11により演算処理させることで、ゲームプログラムを実行する。すなわち、本例のゲーム装置は、本発明の一実施形態に係るゲームプログラムを記憶した外部媒体を用いることで、本発明の一実施形態に係る3次元空間データ処理装置として動作する。
【0016】
なお、外部媒体としては、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、CD(Compact Disc)−ROM、メモリーカートリッジなどの種々の記憶媒体を用いることができ、記憶媒体に応じた形式のアクセス機構を外部媒体アクセス部18として設ければよい。
また、外部媒体アクセス部18により外部媒体からゲームプログラムを読み取る構成ではなく、例えば、通信部14により外部のサーバ装置からゲームプログラムを受信し、これをRAM12に展開してCPU11により演算処理させるようにしてもよい。
また、本例のゲーム装置は、上記のハードウェア資源を一体的に備えた携帯型のゲーム装置であるが、例えば、装置本体とは別体に設けられたディスプレイやスピーカによりゲーム画像や音声を出力する据置型のゲーム装置としてもよい。
【0017】
本例のゲーム装置は、一例として、平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元の仮想的なゲーム空間内において、プレイヤの操作入力に応じて行動する自己キャラクタとコンピュータの制御により自律的に行動する敵キャラクタとが対戦するゲームを提供するものであり、自己キャラクタや敵キャラクタ等のキャラクタオブジェクトとゲーム空間内の地形や構造物等の背景オブジェクトとの衝突を判定し、これらのオブジェクトの衝突が検出された場合に所定の画像や音響等の出力を行って、衝突が発生したことをプレイヤに知らせるようにしてある。
【0018】
本例のゲーム装置では、このような3次元のゲーム空間内におけるオブジェクトの衝突検出を、図2に例示するような機能部により実現する。
すなわち、本例のゲーム装置は、キャラクタオブジェクトと背景オブジェクトとの衝突を検出する衝突検出部21と、これらのオブジェクトを形成するポリゴンのデータを記憶するポリゴンデータ記憶部24と、を備えている。
また、衝突検出部21は、背景オブジェクトを形成する複数のポリゴンの中からキャラクタオブジェクトが衝突する候補のポリゴンを選定する候補選定処理を行う候補選定部22と、候補選定部22により選定された候補のポリゴンを対象にして、キャラクタオブジェクトの移動予定の経路を示す移動線分との交差を判定する交差判定処理を行い、キャラクタオブジェクトが衝突するポリゴンを特定する交差判定部23と、を有している。
【0019】
候補選定部22による候補選定処理及び交差判定部23による交差判定処理について、図3〜図5を参照して説明する。
図3には、3角形形状のポリゴンを用いて形成された背景オブジェクトを有する3次元のゲーム空間内において、キャラクタオブジェクトが位置Tから位置T’へ向かって移動しようとしている状況を示してある。また、キャラクタオブジェクトの移動について、移動元(始点)を位置Tとし且つ移動先(終点)を位置T’とした有向線分(ベクトル)である移動線分Lで表現している。
【0020】
ここで、背景オブジェクトのポリゴンを成す3角形の各頂点及びキャラクタオブジェクトの移動線分Lの始点(位置T)並びに終点(位置T’)の各点は、3次元の座標値(x,y,z)で表現されるものとする。なお、x座標は、3次元空間における幅方向(X軸方向)の座標であり、y座標は、3次元空間における高さ方向(Y軸方向)の座標であり、z座標は、3次元空間における奥行き方向(Z軸方向)の座標である。また、各軸の方向は、所定の視点方向を基準に定められている。
【0021】
候補選定部22の候補選定処理では、キャラクタオブジェクトの移動予定の経路を示す移動線分のデータ及びポリゴンデータ記憶部24に記憶された背景オブジェクトのポリゴンのデータに基づいて、交差判定部23による交差判定処理の対象とするポリゴン(キャラクタオブジェクトが衝突する候補のポリゴン)を選定する。
具体的には、候補選定部22は、3次元空間上の背景オブジェクトのポリゴン及びキャラクタオブジェクトの移動線分を2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴンを検索し、該当するポリゴンをキャラクタオブジェクトが衝突する候補のポリゴンに選定して交差判定部23に供給する。例えば、XZ平面において候補のポリゴンの検索を行う場合には、各点(ポリゴンの各頂点及び移動線分の各端点)を示す3次元の座標値(x,y,z)のうちの2次元の座標値(x,z)を用いることでXZ平面への投影結果が得られるので、2次元の座標値(x,z)を用いてポリゴンの辺と移動線分との交差を判定すればよい。
【0022】
図4には、XZ平面においてポリゴンの検索を行った結果を例示してある。図4では、XZ平面において移動線分Lと交差する辺を有するポリゴンに斜めハッチパターンを付してあり、背景オブジェクトを形成する多数のポリゴンのうちの12個のポリゴンが選定されている。当該選定されたポリゴンは、3次元空間において移動線分Lと交差する可能性があるポリゴンであり、交差判定部23による交差判定処理の対象となる。
【0023】
交差判定部23の交差判定処理では、候補選定部22により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するか否かを判定し、ポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴン(キャラクタオブジェクトが衝突するポリゴン)を特定する。3次元空間におけるポリゴンの面と線分との交差は種々の公知技術を用いて判定することができ、詳細な説明については割愛する。
【0024】
図5の例では、移動線分Lと交差するポリゴンとして2つのポリゴンが特定されている。なお、選定された各ポリゴンの面と移動線分Lとの交差判定を、移動線分Lの始点(位置T)から終点(位置T’)に向かう方向に沿ったポリゴン順に実行し、ポリゴンの面が移動線分Lに交差するポリゴンが見付かった時点で処理を終了してもよい。この場合には、キャラクタオブジェクトが最初に衝突するポリゴン(移動線分Lの始点(位置T)側に位置するポリゴン)のみが特定される。
【0025】
図6には、候補選定部22による候補選定処理の処理フローを例示してある。
候補選定処理では、2次元平面(例えば、XZ平面)において、移動線分の始点を内部に有するポリゴンの各辺について、移動線分と交差し且つ当該辺に対して移動線分の終点が外側にあるという条件を満たすかを判定する(ステップS11)。
ステップS11において、条件を満たす辺が見付からなかった場合には処理を終了し、条件を満たす辺が見付かった場合には当該辺を共有する他のポリゴンを検索する(ステップS12)。
ステップS12において、他のポリゴンが検索されなかった場合には処理を終了し、他のポリゴンが検索された場合にはステップS11に戻り、当該他のポリゴンについて上記の処理(ステップS11、S12)を行うことを、上記の条件を満たす辺を有しないポリゴンが検出されるまで繰り返す。
そして、これらの処理の対象となった各ポリゴンを、交差判定部23による交差判定処理の対象に選定する。
【0026】
上記の候補選定処理について、図7に例示する具体例を参照しつつ説明する。
図7には、ポリゴンa、ポリゴンb、ポリゴンcと、ポリゴンaの内部に始点Aを有し且つポリゴンcの内部に終点Bを有する移動線分ABを示してある。なお、ポリゴンaは、頂点0,頂点1,頂点2を有しており、ポリゴンbは、頂点0,頂点2,頂点3を有しており、ポリゴンcは、頂点2,頂点4,頂点3を有している。
【0027】
本例では、上記のポリゴンについて、図8に例示するようなデータをポリゴンデータ記憶部24に記憶している。
図8(a)は頂点データを例示しており、ポリゴンの各頂点となる3次元空間上の点の座標値を保持している。
図8(b)はポリゴンデータを例示しており、ポリゴン毎に、ポリゴンの各頂点及びその並び順を特定する情報を保持している。本例では、ポリゴンの各頂点の並びにより当該ポリゴン面の向き(表裏)も定めている。すなわち、並び順に沿って各頂点を結んでポリゴンの輪郭線を描いた場合に、反時計回りの輪郭線であれば表面(背景オブジェクトの外面側)とし、時計回りの輪郭線であれば裏面(背景オブジェクトの内面側)とする。例えば、ポリゴンaの輪郭線は、頂点0→頂点1を結ぶ外辺と、頂点1→頂点2を結ぶ外辺と、頂点2→頂点0を結ぶ外辺とで表現され、これらの外辺を繋げた輪郭線が反時計回りであれば表面と判断される。
【0028】
図8(c)はリンクデータを例示しており、ポリゴンの輪郭線を成す外辺(2つの頂点間を結ぶ線)の終点となる頂点毎に、当該終点に至る外辺の始点となる頂点と当該外辺を有するポリゴンとの組を特定する情報を保持している。このようなリンクデータを用いれば、或るポリゴンの外辺を共有する他のポリゴンの特定を簡易に行える。すなわち、例えば、ポリゴンaの各外辺のうち、頂点2→頂点0を結ぶ外辺(始点を頂点2とし且つ終点を頂点0とした外辺)を共有する他のポリゴンは、頂点0→頂点2を結ぶ外辺(始点を頂点0とし且つ終点を頂点2とした外辺)を有するポリゴンbであることを、リンクデータの参照により特定できる。
【0029】
候補選定処理では、まず、移動線分ABの始点Aを内部に有するポリゴンaの各外辺について、移動線分ABと交差し且つ当該外辺に対して移動線分ABの終点Bが外側にあるという条件を満たすかを判定する。この結果、頂点2→頂点0を結ぶ外辺が特定される。
次に、リンクデータを参照して、頂点2→頂点0を結ぶ外辺とは逆向きの外辺を有するポリゴンを検索する。この結果、頂点0→頂点2を結ぶ外辺を有するポリゴンbが特定される。
次に、ポリゴンbの各外辺について、移動線分ABと交差し且つ当該外辺に対して移動線分ABの終点Bが外側にあるという条件を満たすかを判定する。この結果、頂点2→頂点3を結ぶ外辺が特定される。
次に、リンクデータを参照して、頂点2→頂点3を結ぶ外辺とは逆向きの外辺を有するポリゴンを検索する。この結果、頂点3→頂点2を結ぶ外辺を有するポリゴンcが特定される。
次に、ポリゴンbの各外辺について、移動線分ABと交差し且つ当該外辺に対して移動線分ABの終点Bが外側にあるという条件を満たすかを判定する。この結果、当該条件を満たす辺が存在しないので、検索を終了する。
そして、上記の処理の対象となったポリゴンa、b、cを、交差判定部23による交差判定処理の対象に選定する。
【0030】
なお、或る外辺に対して移動線分の終点が外側にあるか否かは、移動線分と外辺との外積により判定できる。ポリゴンの輪郭線(各外辺)が反時計回りの場合に表向きとした本例では、移動線分のベクトルについて外辺のベクトルとの外積を算出した場合に、外積の符号が正であれば移動線分の終点が内側にあると判定し、外積の符号が負であれば移動線分の終点が外側にあると判定する。
【0031】
本例では、候補選定部22による一連の候補選定処理が終了した後に、これにより選定された複数のポリゴンを順番に対象にして、交差判定部23による交差判定処理を行っているが、例えば、候補選定部22によりポリゴンが選定される毎に、当該選定されたポリゴンを対象にして交差判定部23による交差判定処理を行うようにしてもよい。
【0032】
以上のように、本例のゲーム装置では、候補選定部22が、3次元空間上の背景オブジェクトのポリゴン及びキャラクタオブジェクトの移動線分を2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴンを選定して交差判定部23に供給し、交差判定部23が、候補選定部22により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するか否かを判定し、ポリゴンの面がキャラクタオブジェクトの移動線分と交差するポリゴン(キャラクタオブジェクトが衝突するポリゴン)を特定している。
このように、本例のゲーム装置では、3次元空間上での交差判定の対象とするポリゴンを2次元平面上で効果的に絞り込むことで、衝突判定に係る処理負担を軽減している。
【0033】
なお、以上の説明では、3角形形状のポリゴンを用いたが、例えば6角形形状のポリゴンなど、他の形状のポリゴンを用いるようにしてもよい。
また、本発明は、キャラクタオブジェクトと背景オブジェクトとの衝突判定以外に適用してもよく、例えば、キャラクタオブジェクト同士の衝突判定に適用してもよい。また、例えば、キャラクタオブジェクトの視線の先にある背景オブジェクトを特定するに際し、視線の向きを示す線分と背景オブジェクトのポリゴンとの交差判定に適用してもよい。
また、本発明は、ゲーム装置以外の3次元空間データ処理装置にも適用することができ、例えば、航空機やレーシングカー等の訓練を仮想的な3次元空間上で行うための装置における衝突判定などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
11:CPU、 12:RAM、 13:ROM、 14:通信部、 15:操作受付部、 16:画像出力部、 17:音声出力部、 18:外部媒体アクセス部、
21:衝突検出部、 22:候補選定部、 23:交差判定部、 24:ポリゴンデータ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元空間について、3次元空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する3次元空間データ処理装置において、
3次元空間上の線分及びポリゴンを2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺が前記線分と交差するポリゴンを選定する選定手段と、
前記選定手段により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面が前記線分と交差するポリゴンを特定する特定手段と、
を備えたことを特徴とする3次元空間データ処理装置。
【請求項2】
前記線分には始点と終点が定められており、
前記選定手段は、2次元平面において、前記線分の始点を内部に有するポリゴンの各辺について、前記線分と交差し且つ当該辺に対して前記線分の終点が外側にあるという条件を満たすかを判定する処理を行い、当該条件を満たす辺を共有する他のポリゴンの各辺について前記処理を行うことを、前記条件を満たす辺を有しないポリゴンが検出されるまで繰り返し、前記処理の対象となったポリゴンを選定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の3次元空間データ処理装置。
【請求項3】
前記選定手段は、辺を共有するポリゴン同士を関連付けたリンクデータを用いて、前記条件を満たす辺を共有する他のポリゴンを特定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の3次元空間データ処理装置。
【請求項4】
平面多角形の形状を有する複数のポリゴンを用いて表現される3次元空間について、3次元空間上の線分とポリゴンとの交差を判定する処理に係るプログラムであって、
コンピュータに、
3次元空間上の線分及びポリゴンを2次元平面に投影し、2次元平面上においてポリゴンの辺が前記線分と交差するポリゴンを選定する選定機能と、
前記選定機能により選定されたポリゴンを対象にして、3次元空間上においてポリゴンの面が前記線分と交差するポリゴンを特定する特定機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−133701(P2012−133701A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286990(P2010−286990)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(505068468)株式会社シフト (2)
【Fターム(参考)】