説明

3次元CT測定装置

【課題】長尺の被検体を短時間で精密に撮像し、滑らかな3次元CT画像データを得られる3次元CT測定装置を提供する。
【解決手段】小動物をマイクロCTにより測定する3次元CT測定装置であって、被検体にX線コーンビームを回転照射し、1回転ごとに被検体45を撮像する撮像部と、回転照射による1回転分の3次元撮像範囲Lだけ、X線照射方向に垂直な方向Bに、被検体を平行移動させる移動部と、回転照射による各回転分の撮像データから、各3次元部分データを再構成する再構成部と、再構成された3次元部分データのうち、3次元部分データの各結合面の平面データの各結合面について相関の高い位置に隣り合う3次元部分データの一方の座標を補正する補正部と、補正された座標で隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データを介して、複数の3次元部分データを結合する結合部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小形の動物、魚類、両生類等を含めた小動物を、コーンビームX線を用いたマイクロCTにより測定する3次元CT測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元CT技術は医療用として浸透し、効率的な撮影方法が研究開発されている。たとえば、特許文献1記載X線診断装置は、被検体の体軸を回転軸としていわゆるヘリカルスキャンを行い、X線発生部とX線検出部とを被検体の体軸方向に移動させている。そして、画像貼り合わせ時に平均化処理等の画像処理を行っている。また、特許文献2記載のX線CT装置は、ヘリカルスキャンによりガントリの360°正転によるデータ収集の後、ガントリの逆転によりデータを収集している。
【0003】
特許文献3記載の放射線画像形成装置は、コーンビームCTにより得られた投影画像データの相関を用いて位置について重み付け補正を行い、画像データを濃度勾配上滑らかに連結している。また、特許文献4記載の医用画像処理装置は、複数の分割画像を合成する際に、重なり部分の相関値が最大になるときの位置ずれ量を求め、アフィン変換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−194697号公報
【特許文献2】特開平5−7583号公報
【特許文献3】特開2000−152926号公報
【特許文献4】特開2004−105356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、3次元CT技術は、小動物の撮影用としても開発されている。このような用途では、たとえば関心のある臓器の状態を精密に測定したいという要請がある。しかしながら、3次元マイクロCTは測定範囲が小さいため、長尺方向に分割した画像しか得られない。また、このような分割測定は、分割回数だけ測定時間が長くなるので、マウスが麻酔から覚めて動き出すリスクが高く、マウスが動くと所望の位置を正しく測定できない。これに対して、分割測定した画像を結合して1画像化することが考えられるが、画像間における位置ずれおよび回転角度ずれにより、画像を滑らかに結合するのは困難である。
【0006】
動物撮影用のCT装置へ上記の特許文献1、2に記載されるような技術を応用することが考えられなくもないが、ヘリカルスキャンはX線照射部を体軸に沿って移動しつつ体軸回りに回転させており、3次元画像の再構成時に誤差が生じやすく、小動物の撮影には向かない。また、上記の特許文献3、4記載の画像結合技術を適用し、被検体の体軸に沿って平行移動して分割画像を撮影し、後に合成することも考えられるが、移動量が小さいと長尺の被検体を効率よく、素早く測定することができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、長尺の被検体を短時間で精密に撮像し、滑らかな3次元CT画像データを得られる3次元CT測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る3次元CT測定装置は、小形の動物、魚類、両生類等を含めた小動物をマイクロCTにより測定する3次元CT測定装置であって、被検体にX線コーンビームを回転照射し、1回転ごとに前記被検体を撮像する撮像部と、前記回転照射による1回転分の3次元撮像範囲だけ、前記X線照射方向に垂直な方向に、前記被検体を平行移動させる移動部と、前記回転照射による各回転分の撮像データから、各3次元部分データを再構成する再構成部と、前記再構成された3次元部分データのうち、隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データについて相関の高い位置に前記隣り合う3次元部分データの一方の座標を補正する補正部と、前記補正された座標で前記隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データを介して、前記複数の3次元部分データを結合する結合部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように、1回転分の3次元撮像範囲だけ、X線照射方向に垂直な方向に、被検体を平行移動させているため、最大限に移動距離をとることができ、長尺の被検体を短時間で精密に撮像することができる。そして、隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データについて相関の高い位置に座標を補正するため、撮像された画像を再構成して滑らかに結合した3次元CT画像データを得ることができる。
【0010】
(2)また、本発明に係る3次元CT測定装置は、前記補正部が、前記隣り合う3次元部分データの一方の結合面上における平行移動量および回転量のずれ値から、前記隣り合う3次元部分データの一方のずれ値を補正することを特徴としている。これにより、被検体を分割して撮像したときに生じやすい3次元CT画像データの端面上の位置および回転角のずれを補正することができる。
【0011】
(3)また、本発明に係る3次元CT測定装置は、前記撮像部が、直前の撮像における回転照射の方向とは逆方向に回転照射して複数の撮像を行うことを特徴としている。これにより、被検体を素早く撮像することができ、たとえば小動物が麻酔から目覚めないうちに撮像を終えることができる。
【0012】
(4)また、本発明に係る3次元CT測定装置は、前記補正部が、前記隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データの輝度について、ガウス分布による加重平均をとり、前記隣り合う3次元部分データの輝度を調整することを特徴としている。これにより、輝度についても滑らかな3次元CT画像データを得ることができる。
【0013】
(5)また、本発明に係る3次元CT測定装置は、前記補正部が、前記各3次元部分データの各結合面の平面データについて2値化したデータを用い、補正を行うことを特徴としている。これにより、特に関心領域のデータを滑らかに結合することができ、必要とするデータについて正確性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長尺の被検体を短時間で精密に撮像し、滑らかな3次元CT画像データを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る3次元CT測定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る3次元CT測定装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】撮像部と移動部の概略を示す斜視図である。
【図4】3次元CT画像データの補正および結合の原理を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る3次元CT測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】3次元CT画像データの結合処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】比較例の所要時間計測結果を示すフローチャートである。
【図8】実施例の所要時間計測結果を示すフローチャートである。
【図9】比較例の画像処理結果を示す図である。
【図10】実施例の画像処理結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
(3次元CT測定装置の構成)
図1は、3次元CT測定装置10の構成を示す斜視図である。3次元CT測定装置10は、小動物をマイクロCTにより測定する装置であり、制御処理装置20および撮像装置30で構成されている。制御処理装置20は、たとえばPCであり、撮像装置30の制御および画像データの処理を行う。撮像装置30は、設置された動物のX線CT画像の撮像を行う。
【0018】
図2は、3次元CT測定装置10の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、3次元CT測定装置10は、操作部21、制御部22、記憶部23、再構成部24、表示部25、補正部26、結合部27、移動部31および撮像部32を備えている。
【0019】
操作部21は、たとえばキーボードやポインティングデバイスとしてのマウス等であり、ユーザからの操作を受け付ける。ユーザは、撮像装置30の制御や画像処理について指示を入力できる。制御部22は、撮像装置30へ各制御の指示を与える。たとえば、撮像開始の入力を受けたときには、撮像装置30へ撮像開始の指示を与え、所定の条件でX線の照射、ガントリの回転、テーブルの移動を制御する。記憶部23は、撮像装置30が撮像した画像データや再構成された3次元CTデータ等を記憶する。
【0020】
再構成部24は、回転照射による各回転分の撮像データから、各3次元CT画像データ(3次元部分データ)を再構成する。撮像された生データは2次元の投影データであり、投影データから各位置の強度データを算出することで3次元CT画像データを得ることができる。表示部25は、たとえば液晶ディスプレイであり、操作情報、制御情報または再構成された3次元CT画像を表示する。
【0021】
補正部26は、再構成された1回の回転照射分の3次元部分データのうち、隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データについて相関の高い位置に隣り合う3次元部分データの一方の座標を補正する。このように、隣り合うデータの各結合面について相関の高い位置に3次元部分データの座標を補正するため、撮像された画像を再構成して滑らかに結合した3次元CT画像データを得ることができる。
【0022】
また、補正部26は、結合面上における平行移動量および回転量のずれを補正する。これにより、被検体を分割して撮像したときに生じやすい3次元CT画像データの端面上の位置および回転角のずれを補正することができる。
【0023】
また、補正部26は、隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データの輝度について、ガウス分布による加重平均をとり、隣り合う3次元部分データの輝度を調整する。これにより、輝度についても滑らかな3次元CT画像データを得ることができる。また、補正部26は、各3次元部分データの各結合面の平面データについて2値化したデータを用い、補正を行う。たとえば、関心領域を表すためにCT値が所定の範囲にあるピクセルを白、それ以外の範囲にあるピクセルを黒にして表示する。関心領域が骨の場合や脂肪の場合に応じて適切なCT値の範囲を設定しておく。これにより、特に関心領域のデータを滑らかに結合することができ、必要とするデータについて正確性を高めることができる。結合部27は、補正された座標で隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データを介して、複数の3次元部分データを結合する。その結果、長尺の3次元CT画像データを得ることができる。
【0024】
移動部31は、小動物の被検体を載せるテーブルとテーブルを駆動するステッピングモータを有する駆動モジュールで構成されている。この後、回転照射による1回転分の3次元撮像範囲だけ、X線照射方向に垂直な方向に、被検体を平行移動させる。ステッピングモータの駆動により、ミクロン単位で移動を制御することが可能となっている。これにより、最大限に被検体の移動距離をとることができ、長尺の被検体を短時間で精密に撮像することができる。このように、撮像し再構成した3次元部分データのうち隣り合う3次元部分データの端の一層の平面データが隣接し、端面で接するように正確な移動が可能である。
【0025】
撮像部32は、X線コーンビーム発生部と受光部とから構成されており、これらが被検体の周りを回ることにより、被検体にX線コーンビームを回転照射し、1回転ごとに被検体を撮像することができる。撮像部32は、直前の撮像における回転照射の方向とは逆方向に回転照射して複数の撮像を行う。これにより、被検体を素早く撮像することができ、たとえば小動物が麻酔から目覚めないうちに撮像を終えることができる。
【0026】
(測定原理)
上記の構成を有する3次元CT測定装置10に採用されている測定原理を説明する。図3は、撮像装置30の概略を示す斜視図である。テーブル40には、被検体45が固定される。被検体45は、たとえば実験用マウス等の小動物である。したがって、撮影中に被検体45が動かないように麻酔させた上で素早く撮像することが好ましい。いわゆるマイクロCTで画像の解像度を良くして、ピクセルサイズがミクロン単位の測定では、1回の回転照射による撮像範囲が限られるため、1回の回転照射では長尺の被検体の関心領域を撮像しきれない場合がある。
【0027】
このような要請から、テーブル40は、回転照射が連続する場合、1回の回転照射の後、ステッピングモータ(図示せず)により撮像範囲の移動方向長さLだけ移動する。この移動は、非常に精密でありこの移動方向への画像データのずれは無視できる。このように、長尺サンプルについて長尺方向の測定位置を変えて分割測定し、得られた画像を結合することにより、全体を写した3次元マイクロCT画像を得られ、全体を一度に見ることができる。なお、Lは、たとえば60mmとすることができる。
【0028】
X線コーンビーム発生部46と受光部47とは、被検体45の位置を中心として180°相違する位置に配置されている。X線コーンビーム発生部46および受光部47(ガントリ)は、この位置関係を維持しながら、図3のA方向に360°以上回転し、1回転分の撮像データを取得する。回転照射の間は、テーブル40は停止している。なお、本発明の3次元CT測定装置では、図3のA方向の逆回転の場合でも、A方向の回転の場合と同様に撮像データを取得することができる。
【0029】
図3に示す例では、まず、X線コーンビーム発生部46と受光部47とが連動して1回転し、円柱状の撮像範囲51を撮像する。次に、テーブル40が撮像範囲51の移動方向長さL分だけB方向に移動する。そして、テーブル40が移動し終えたら、X線コーンビーム発生部46と受光部47が、撮像範囲51の撮像時とは逆方向に1回転し、次の撮像範囲52を取得する。なお、A方向とB方向とは互いに直交している。撮像データの取得時におけるX線コーンビーム発生部46と受光部47の回転方向は、n回目のデータが図3のA方向とすれば、n+1回目のデータのときは、A方向とは逆方向の回転であることが望ましい。
【0030】
上記のように撮像された撮像範囲51、撮像範囲52の各3次元CTデータ(3次元部分データ)は、ずれを補正した上で結合される。図4は、3次元CT画像データの補正および結合の原理を示す斜視図である。まず、図4に示すように、撮像範囲51、撮像範囲52の各3次元CTデータのうち所定範囲の画像データ61、62を処理の対象とする。そして、画像データ61の結合面71の平面データおよび画像データ62の結合面72の平面データに注目する。そして、これらの結合面71、72の平面データのうちの一方を結合面内で平行移動および回転移動(図中のx移動、y移動、θ移動)させて各移動後の位置において結合面の平面データの相関を算出する。なお、結合面71、72の平面データとは、結合させる3次元部分データの端の一層のデータである。
【0031】
このように、本発明では、隣り合う3次元部分データの端の平面データ同士の相関に応じてずれ量を補正し、各3次元部分データの端の一層の平面データが隣接し、端面で接するように3次元部分データを結合している。3次元部分データを面で結合させるため、結合される3次元部分データには重複部分は存在せず、無駄がない。
【0032】
このようにして得られた相関が最大となる位置に一方の画像データ61を移動するよう位置データを変更し、両方の画像データ61、62を結合する。このように、画像を結合する際、画像処理にて画像間相関が最大になる位置ずれおよび回転角度量を求め、求めたずれ量を補正して画像結合を行うことにより、ずれが無い滑らかな画像を得られる。また、結合箇所において、ガウス分布を用いて輝度を平均化することにより、輝度についても差がない滑らかな画像を得られる。このような原理により、マイクロCTによる撮像範囲を効率的にかせぎつつ、移動方向に長い範囲について正確な3次元CTデータを得ることができる。
【0033】
本発明では、重複した撮像範囲データを全く用いることなく、移動方向に長い範囲ついて正確な3次元CTデータを得られることも特長の一つとなっている。
【0034】
なお、被検体の関心領域は、小動物の体内の一部であることが一般的なので、結合面71のデータと結合面72のデータの画像データは、その外枠位置が同一でないことが多い。これは、小動物の関心領域の軸線と撮像範囲の移動方向の軸線のずれに起因するが、特に不都合な現象ではない。
【0035】
なお、相関計算時の指標:SSD(Sum of Squared Difference)の例としては以下の数式が挙げられる。2値化CT画像1(x,y)は、分割測定して再構成した3次元CTデータの一方の結合面のデータ、2値化&回転&平行移動したCT画像2(x,y)は、分割測定して再構成した3次元CTデータの他方の結合面のデータである。
【数1】

【0036】
(3次元CT装置の動作)
次に、上記のように構成された3次元CT測定装置10の動作を説明する。図5は、3次元CT測定装置10の動作の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、1回目のCT測定を行う(ステップS1)。これにより、1回転分の回転照射の画像データを得ることができる。そして、1回目の3次元CT画像データを再構成する(ステップS2)。これと並行して、1回転の回転照射分だけ測定位置を移動する(ステップS3)。
【0037】
測定位置の移動が完了したら、移動が停止した状態で2回目のCT測定を行う(ステップS4)。そして、1回目の3次元CT画像データの再構成が完了したら、2回目の3次元CT画像データを再構成する(ステップS5)。そして、得られた2回分の3次元CT画像データを結合し(ステップS6)、3次元CT画像データの構成を完了する。3次元CT画像データの結合については一例を用いて以下に説明する。なお、測定は2回分に限ったわけではなく、1回目をn回目、2回目をn+1回目と読みかえれば、多数の3次元CT画像データの結合ができる。
【0038】
図6は、3次元CT画像データの結合処理の一例を示すフローチャートである。まず、2つの結合しようとする画像データについて、有効z領域および結合面の探索を行う(ステップT1)。次に、結合面データを2値化する(ステップT2)。次に、Δθを−1.0〜1.0°の範囲で、Δxを−5〜5ピクセルの範囲で、Δyを−5〜5ピクセルの範囲で変えて(ステップT3)、結合面の回転、平行移動の計算(ステップT4)および、それぞれの移動後の結合面同士の相関の計算(ステップT5)を繰り返す。そして、相関が最大になる場合のΔx、Δy、Δθを取得する(ステップT6)。なお、1ピクセルに対応する長さは、120μm程度とする。
【0039】
なお、有効z領域とは、画像処理の対象となるz座標の領域であり、3次元CT画像データのz方向における端部に存在する場合のある無効な黒画像3次元CT画像データ部分を除くよう設定されたものをいう。
【0040】
次に、有効z領域について、データの回転および平行移動の処理(ステップT8)および輝度の平均化の処理(ステップT9)を行い、3次元CT画像データの結合を終了する。なお、各動作は、制御処理装置20が各処理を実行することで行われる。また、上記の例では、回転照射の回数は2回であるが、3回以上の複数回であってもよい。
【0041】
(所要時間計測の実験)
次に、実施例について説明する。2回転分の回転照射および画像処理について、実施例と比較例とでそれぞれ時間計測を行った。図7は、比較例の所要時間計測結果を示すフローチャートである。図7に示すように、比較例の動作においては、1回目のCT測定および画像処理を完了してから、2回目のCT測定を開始する。まず、1回目のCT測定(ステップP1)には18秒かかり、ガントリを元の位置に戻す(ステップP2)動作には18秒かかり、1回目の3次元CT画像データの再構成(ステップP3)には60秒かかった。
【0042】
そして、測定位置の移動(ステップP4)には4秒かかり、2回目のCT測定(ステップP1)には18秒かかり、ガントリを元の位置に戻す(ステップP5)動作には18秒かかり、2回目の3次元CT画像データの再構成(ステップP6)には60秒かかった。そして、3次元CT画像データの結合処理(ステップP7)には12秒かかった。したがって、動作開始から終了までに208秒を要し、1回目のCT測定の完了から2回目のCT測定の開始までに82秒かかっている。
【0043】
図8は、実施例の所要時間計測結果を示すフローチャートである。図8に示すように、実施例の動作においては、1回目のCT測定を完了してから、2回目のCT測定の準備を開始し、ガントリを1回目の測定時とは逆方向に回転させて測定を行う。このように、分割測定におけるガントリ回転方向を逆回転することにより、測定時間を短縮できる。また、これと平行して1回目の3次元CT画像データを再構成する。
【0044】
まず、1回目のCT測定(ステップR1)には18秒かかり、1回目の3次元CT画像データの再構成(ステップR2)には45秒かかった。また、この間平行して行った測定位置の移動(ステップR2)には4秒かかり、2回目のCT測定(ステップR3)には18秒かかったが、合計22秒であり、画像再構成中に動作を終えることができる。したがって、ステップR2〜R4までの動作については、45秒かかった。
【0045】
2回目の3次元CT画像データの再構成(ステップR5)には45秒かかり、3次元CT画像データの結合処理(ステップR6)には12秒かかった。したがって、動作開始から終了までに120秒を要し、1回目のCT測定の完了から2回目のCT測定の開始までには4秒しかかかっていない。これは、ガントリを元の位置に戻す動作の時間18秒を省き、画像データの再構成に平行して次の測定を行ったことによる短縮である。これにより、小動物の被検体を目覚めさせたり、負担を与えたりすることなく素早く撮像することができる。
【0046】
合計所要時間について比較例208秒に対して実施例120秒、特に1回目CT測定と2回目CT測定の間隔について比較例82秒に対して実施例4秒であり、本発明は従来に比べて所要時間を顕著に短縮できることが実証された。
【0047】
(画像データ結合の検証)
次に、実施例および比較例について画像結合した3次元CT画像を比較した。図9は、比較例の画像処理結果を示す図である。図10は、実施例の画像処理結果を示す図である。それぞれ、骨が関心領域である。図9に示すように、比較例の画像では、画像の結合部分にわずかな歪が見える。一方、図10に示すように、実施例の画像では、結合部分を判断できないほどに滑らかに画像が結合されている。以上のように、長尺の被検体を精密かつ素早く撮像しつつ、滑らかな3次元CT画像を得られることを実証できた。
【符号の説明】
【0048】
10 測定装置
20 制御処理装置
21 操作部
22 制御部
23 記憶部
24 再構成部
25 表示部
26 補正部
27 結合部
30 撮像装置
31 移動部
32 撮像部
40 テーブル
45 被検体
46 X線コーンビーム発生部
47 受光部
51、52 撮像範囲
61、62 画像データ
71、72 結合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小形の動物、魚類、両生類等を含めた小動物をマイクロCTにより測定する3次元CT測定装置であって、
被検体にX線コーンビームを回転照射し、1回転ごとに前記被検体を撮像する撮像部と、
前記回転照射による1回転分の3次元撮像範囲だけ、前記X線照射方向に垂直な方向に、前記被検体を平行移動させる移動部と、
前記回転照射による各回転分の撮像データから、各3次元部分データを再構成する再構成部と、
前記再構成された3次元部分データのうち、隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データについて相関の高い位置に前記隣り合う3次元部分データの一方の座標を補正する補正部と、
前記補正された座標で前記隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データを介して、前記複数の3次元部分データを結合する結合部と、を備えることを特徴とする3次元CT測定装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記隣り合う3次元部分データの一方の結合面上における平行移動量および回転量のずれ値から、前記隣り合う3次元部分データの一方のずれ値を補正することを特徴とする請求項1記載の3次元CT測定装置。
【請求項3】
前記撮像部は、直前の撮像における回転照射の方向とは逆方向に回転照射して複数の撮像を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の3次元CT測定装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記隣り合う3次元部分データの各結合面の平面データの輝度について、ガウス分布による加重平均をとり、前記隣り合う3次元部分データの輝度を調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の3次元CT測定装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記各3次元部分データの各結合面の平面データについて2値化したデータを用い、補正を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の3次元CT測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142961(P2011−142961A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4323(P2010−4323)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】