説明

3級アミノ基含有プロピルシラノール化合物含有水溶液

【解決手段】γ位に3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液。
【効果】本発明の3級アミノ基含有シラノール化合物含有水溶液は、使用の際にアルコールの生成がなく、高い沸点、低い蒸気圧を有するカップリング剤であり、かつ水溶液のままで長期保存が可能であり、使用時には水で希釈して使用できるといった特徴を持つ水溶液として、シランカップリング剤や表面処理剤の用途で非常に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ位に3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、メタクリロキシアルキルアルコキシシラン、ハロゲン化アルキルアルコキシシラン、アミノアルキルアルコキシシラン並びにポリスルフィドアルキルアルコキシシラン等の有機官能基を有するアルコキシシランは、シランカップリング剤として知られており、例えば、無機材料(例えば、ガラス繊維、金属、酸化物充填剤)と有機ポリマー(例えば、熱可塑性プラスティック、熱硬化性プラスティック、エラストマー)との間のカップリング剤として使用されることは公知である。
【0003】
これらのカップリング剤は無機材料並びに有機ポリマーのいずれにも結合又は相互作用することで無機材料表面並びに有機ポリマーの間に良好な相溶性を生じることができる。また、相溶性を生じることで混合粘度を低下させたり、無機添加剤の分散を容易にすることも可能である。
【0004】
アルコキシシランをカップリング剤として使用する際の混合プロセス中には、水と反応させることが一般的であり、その際に相当量のアルコールが発生することも公知である。この発生するアルコールは安全、環境の面から問題である。
【0005】
また、アルコキシシランは水溶液中で経時変化を伴って不可逆的にゲル化するという問題点もあった。通常、エポキシアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、メタクリロキシアルキルアルコキシシラン、ハロゲン化アルキルアルコキシシラン並びにポリスルフィドアルキルアルコキシシラン等のアルコキシシランの水溶液は不安定であり、室温で保存しておくだけでも不可逆的にゲル化してしまうことは知られている。更に、それら水溶液からアルコールを除去しようとすると容易にゲル化してしまう。
【0006】
一方、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランは水溶液としても安定であり、更にアルコールを除去してもゲル化することなく水溶液となることが報告されていた(特許文献1:特許第2508554号公報)が、3級アミノ基のように窒素原子に直接水素原子が結合していないアミノ基を含有するアルコキシシランは開示がなく、上記2種のようなアミノアルキルアルコキシシラン以外のアルコキシシランでは、未だに上述した使用者の安全・環境に対する問題点は解決されていない。よって、使用時にアルコールが発生せず、使用者に安全で、環境に優しく、かつ、水溶液のままで保存安定性のよいシラノール化合物水溶液の開発が渇望されていた。
【特許文献1】特許第2508554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、使用時にアルコールが発生せず、保存安定性のよい窒素原子に直接水素原子が結合していない3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、γ位に3級アミノ基を有するプロピルアルコキシシランを水中へ添加し、加水分解後、副生した揮発性のアルコールを除去し、所定の濃度に調整することで、γ位に3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液が安定な水溶液となることを見出した。
【0009】
従って、本発明は、下記の3級アミノ基含有プロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体含有水溶液を提供する。
請求項1:
γ位に3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液。
請求項2:
下記一般式(1)
12N−(CH23−SiR3n(OR43-n (1)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であるか、又はR1とR2が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を成してもよく、また、各々同一又は異なっていてもよい。更に、R1及びR2はヘテロ原子を含んでもよい。R3は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、各々同一又は異なっていてもよい。OR4は炭素数1〜10のアルコキシル基である。nは0〜2の整数である。)
で表されるγ位に3級アミノ基を有するプロピルアルコキシシランの1種又は複数を加水分解し、生成アルコールを除去することによって得られた請求項1記載の水溶液。
請求項3:
上記R12N−で表される3級アミノ基が、非置換もしくは置換基を有する含窒素複素環基又はジアルキルアミノ基であることを特徴とする請求項2記載の水溶液。
請求項4:
上記含窒素複素環基が、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピロリドン、ピペリドンから選ばれる含窒素複素環式化合物に由来する1価の有機基であることを特徴とする請求項3記載の水溶液。
請求項5:
ケイ素1モルに対して、水1.5〜50倍モルであり、揮発性アルコールの含有量が水溶液中10質量%未満である請求項2乃至4のいずれか1項記載の水溶液。
【発明の効果】
【0010】
本発明の3級アミノ基含有シラノール化合物含有水溶液は、使用の際にアルコールの生成がなく、高い沸点、低い蒸気圧を有するカップリング剤であり、かつ水溶液のままで長期保存が可能であり、使用時には水で希釈して使用できるといった特徴を持つ水溶液として、シランカップリング剤や表面処理剤の用途で非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、詳細に説明する。
γ位に3級アミノ基含有プロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体含有水溶液は、下記一般式(1)
12N−(CH23−SiR3n(OR43-n (1)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であるか、又はR1とR2が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を成してもよく、また、各々同一又は異なっていてもよい。更に、R1及びR2はヘテロ原子を含んでもよい。R3は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、各々同一又は異なっていてもよい。OR4は炭素数1〜10のアルコキシル基である。nは0〜2の整数である。)
で表されるγ位に3級アミノ基を有するプロピルアルコキシシランの1種又は複数を水中に添加し、加水分解した後、生成する揮発性アルコールを除去し、必要に応じて更に濃縮もしくは希釈することで水溶液は得られる。
【0012】
上記一般式(1)中、R1及びR2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であるか、又はR1とR2が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を成してもよく、また、各々同一又は異なっていてもよい。更に、R1及びR2はヘテロ原子を含んでもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基といった非環状又は環状脂肪族1価炭化水素基、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基等のアラルキル基、アラアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基等の含フッ素アルキル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基等が挙げられる。
【0013】
1とR2が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を成した場合、R12N−は含窒素複素環基となる。この場合、この含窒素複素環基は非置換であってもよく、また環を構成する炭素原子等の原子に結合した水素原子と置換する置換基を有していてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)、アシル基(RCO−:RはC1〜C6のアルキル基)、チオエーテル基(−S−)等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。このような含窒素複素環基を形成する含窒素複素環式化合物としては、具体的には、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、オキシンドール、インドキシル、ジオキシインドール、イサチン、インドリニル、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾロン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、プリン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピペリドン、インドール、インドリン、カルバゾール、フェノチアジン、オキサトリアゾール、オキサジン、チアジン、ヒスチジン、チミン等が挙げられ、より好ましくは、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピロリドン、ピペリドン等が挙げられる。
【0014】
ここで、R12N−で示される3級アミノ基としては、非置換又は置換基を有していてもよい含窒素複素環基又はジアルキルアミノ基が好ましく、含窒素複素環基としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピロリドン、ピペリドンから選ばれる含窒素複素環式化合物に由来する1価の有機基であることが好ましい。
【0015】
上記一般式(1)中、R3は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、各々同一又は異なっていてもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基といった非環状又は環状脂肪族1価炭化水素基、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基等のアラルキル基、アラアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基等の含フッ素アルキル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基である。
【0016】
上記一般式(1)中、OR4は、炭素数1〜10のアルコキシル基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシル基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
nは0〜2の整数であるが、好ましくは0又は1の整数である。
【0017】
次に、本発明のγ位に3級アミノ基含有プロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体含有水溶液の製造方法について述べる。
具体的には、上記一般式(1)で表されるアルコキシシランを水中に添加し、加水分解後、発生したアルコールを除去し、必要に応じて更に濃縮又は希釈することで得られる。
なお、水をアルコキシシラン中に添加した場合は、ゲル化し易いため好ましくない。
【0018】
反応の際に用いる水は、ケイ素1モルに対して1.5倍モル以上用いればよく、好ましくは1.5〜10,000倍モルで、更に好ましくは、1.5〜50倍モルであり、特に好ましくは5〜50倍モルである。
【0019】
水以外の溶媒は特に用いなくてもよいが、溶解性が悪い場合は、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類といった極性溶媒を用いてもよい。
【0020】
アルコキシシランを水中に添加する際は、圧力、温度を問わず、良好に混合しながら添加するとよいが、常圧で0〜120℃の範囲、特に20〜60℃の範囲の温度で行うとよい。その後、20〜60℃の範囲で0.5〜24時間の反応時間の後に、好ましくは1〜12時間の後に、生成したアルコールを除去するとよい。
なお、加水分解反応において、特に触媒は必要としない。
【0021】
生成したアルコールの除去は、圧力、温度を問わないが、常圧もしくは減圧下で除去するとよい。アルコールの残量は、少ないほどよいが、水1.5〜50倍モル用いた場合、少なくとも10質量%未満、より好ましくは5質量%未満であればよい。
【0022】
なお、上述した極性溶媒を用いた場合は、これを減圧留去等の方法で除去することが好ましい。
【0023】
本発明のシラノール化合物及びシラノール縮合体水溶液は、水溶液中に下記一般式(2)
12N−(CH23−SiR3n(OH)3-n (2)
(式中、R1、R2、R3、nは上記の通りである。)
で表されるシラノール化合物と、特に形状は問わないがそのシラノール縮合体である例えば下記一般式(3)及び下記一般式(4)で表されるシロキサンオリゴマーの単独又は混合物であり、その他ラダーやランダムな構造を含むオリゴマー混合物を含んでもよい。
【0024】
【化1】


[式中、R5は下記一般式(5)
12N−(CH23− (5)
(式中、R1、R2は上記の通りである。)
で表される有機基、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基、又はヒドロキシル基であり、各々同一又は異なっていてもよい。qは0〜1,000、好ましくは0〜100の整数であり、pは1〜1,000、好ましくは1〜100の整数である。]
【0025】
この場合、R5のうち、ケイ素1原子に対して1つは上記式(5)のR12N−(CH23−で示される基である。
特に制限はないものの、モノマーであるシラノール化合物の割合は、全体のケイ素化合物に対して0.1〜99.9モル%、好ましくは、0.5〜80.0モル%がよい。
【0026】
本発明の製造方法によるシラノール化合物及びそのシラノール縮合体水溶液は、その目的品質に応じて、ろ過、洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によって更に精製して使用することもできる。
【0027】
なお、このようにして得られた水溶液は、必要により濃縮又は希釈して用いることができるが、本水溶液中のシラノール化合物及びそのシラノール縮合体濃度は0.1〜100質量%、特に10〜100質量%とすることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、γ−ピペラジノプロピルトリエトキシシラン23.2gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で1時間熟成した後、生成したアルコールをゆっくりと抜き出しながら釜温が100℃に達した所で加熱を止め、冷却した。得られた水溶液に不揮発分が32〜33質量%となるように純水を加え、濃度を調整した後、ろ過することで透明な水溶液が得られた。得られた水溶液の分析結果を以下に示す。29Si−NMRスペクトルは、図1に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは2モル%であった。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、残留エタノールは2.1質量%であった。熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は32.2質量%であった。また、室温で1ヶ月以上放置しても更なるアルコールは発生せず、ゲル状化合物等も発生せず、水溶液は透明のままであり、室温で安定に保存できた。更に、純水で25倍に希釈してもアルコールを生成することはなかった。希釈後の29Si−NMRスペクトルは、図2に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは31モル%であった。希釈後の水溶液も室温で安定に保存できた。
【0030】
[実施例2]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、γ−(4−メチルピペラジノプロピル)トリエトキシシラン24.4gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で1時間熟成した後、生成したアルコールをゆっくりと抜き出しながら釜温が100℃に達した所で加熱を止め、冷却した。得られた水溶液に不揮発分が32〜33質量%となるように純水を加え、濃度を調整した後、ろ過することで透明な水溶液が得られた。得られた水溶液の分析結果を以下に示す。29Si−NMRスペクトルは、図3に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは2モル%であった。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、残留エタノールは0.9質量%であった。熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は32.0質量%であった。また、室温で1ヶ月以上放置しても更なるアルコールは発生せず、ゲル状化合物等も発生せず、水溶液は透明のままであり、室温で安定に保存できた。更に、純水で25倍に希釈してもアルコールを生成することはなかった。希釈後の29Si−NMRスペクトルは、図4に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは24モル%であった。希釈後の水溶液も室温で安定に保存できた。
【0031】
[実施例3]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、γ−モルホリノプロピルトリエトキシシラン23.4gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で7時間熟成した後、生成したアルコールをゆっくりと抜き出しながら釜温が100℃に達した所で加熱を止め、冷却した。得られた水溶液に不揮発分が32〜33質量%となるように純水を加え、濃度を調整した後、ろ過することで透明な水溶液が得られた。得られた水溶液の分析結果を以下に示す。29Si−NMRスペクトルは、図5に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは1モル%であった。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、残留エタノールは1.7質量%であった。熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は32質量%であった。また、室温で1ヶ月以上放置しても更なるアルコールは発生せず、ゲル状化合物等も発生せず、水溶液は透明のままであり、室温で安定に保存できた。更に、純水で25倍に希釈してもアルコールを生成することはなかった。希釈後の29Si−NMRスペクトルは、図6に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは20モル%であった。希釈後の水溶液も室温で安定に保存できた。
【0032】
[実施例4]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、γ−ピペラジノプロピルメチルジメトキシシラン18.6gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で1時間熟成した後、生成したアルコールをゆっくりと抜き出しながら釜温が100℃に達した所で加熱を止め、冷却した。得られた水溶液に不揮発分が32〜33質量%となるように純水を加え、濃度を調整した後、ろ過することで透明な水溶液が得られた。得られた水溶液の分析結果を以下に示す。29Si−NMRスペクトルは、図7に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは11モル%であった。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、残留エタノールは0.2質量%であった。熱風オーブン中、105℃で3時間加熱乾固したところ、不揮発分は32質量%であった。また、室温で1ヶ月以上放置しても更なるアルコールは発生せず、ゲル状化合物等も発生せず、水溶液は透明のままであり、室温で安定に保存できた。更に、純水で25倍に希釈してもアルコールを生成することはなかった。希釈後の29Si−NMRスペクトルは、図8に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは74モル%であった。希釈後の水溶液も室温で安定に保存できた。
【0033】
[実施例5]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン16.6gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で4時間熟成した後、10kPaに減圧し釜温を約40℃にしながら生成したアルコールをゆっくりと抜き出した。得られた水溶液に不揮発分が32〜33質量%となるように純水を加え、濃度を調整した後、ろ過することで透明な水溶液が得られた。得られた水溶液の分析結果を以下に示す。29Si−NMRスペクトルは、図9に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは3モル%であった。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、残留エタノールは0.3質量%であった。熱風オーブン中で105℃、3時間加熱乾固したところ、不揮発分は32質量%であった。また、室温で1ヶ月以上放置しても更なるアルコールは発生せず、ゲル状化合物等も発生せず、水溶液は透明のままであり、室温で安定に保存できた。更に、純水で25倍に希釈してもアルコールを生成することはなかった。希釈後の29Si−NMRスペクトルは、図10に示す通りであり、全ケイ素中シラノールは31モル%であった。希釈後の水溶液も室温で安定に保存できた。
【0034】
[比較例1]
ジムロート式冷却凝縮器、ディーンスターク、撹拌機、温度計を備えた100mlの四つ口フラスコを十分窒素置換した。次いで、純水32.1gを仕込み、4−メチルピペラジノメチルトリエトキシシラン22.1gをゆっくりと滴下した。常圧下、60℃で2時間熟成した後、常圧下、生成したアルコールゆっくりと抜きながら釜温を上げていると、ゲル状化合物が生成し水溶液はできなかった。その後純水を55.3g追加し熟成したが、ゲル状化合物は溶解せず、水溶液はできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1の水溶液の重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図2】実施例1の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図3】実施例2の水溶液の重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図4】実施例2の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図5】実施例3の水溶液の重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図6】実施例3の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図7】実施例4の水溶液の重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図8】実施例4の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図9】実施例5の水溶液の重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。
【図10】実施例5の水溶液の25倍希釈水溶液を重水溶液にて測定した29Si−NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ位に3級アミノ基を有するプロピルシラノール化合物及びそのシラノール縮合体を含有する水溶液。
【請求項2】
下記一般式(1)
12N−(CH23−SiR3n(OR43-n (1)
(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であるか、又はR1とR2が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を成してもよく、また、各々同一又は異なっていてもよい。更に、R1及びR2はヘテロ原子を含んでもよい。R3は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、各々同一又は異なっていてもよい。OR4は炭素数1〜10のアルコキシル基である。nは0〜2の整数である。)
で表されるγ位に3級アミノ基を有するプロピルアルコキシシランの1種又は複数を加水分解し、生成アルコールを除去することによって得られた請求項1記載の水溶液。
【請求項3】
上記R12N−で表される3級アミノ基が、非置換もしくは置換基を有する含窒素複素環基又はジアルキルアミノ基であることを特徴とする請求項2記載の水溶液。
【請求項4】
上記含窒素複素環基が、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピロリドン、ピペリドンから選ばれる含窒素複素環式化合物に由来する1価の有機基であることを特徴とする請求項3記載の水溶液。
【請求項5】
ケイ素1モルに対して、水1.5〜50倍モルであり、揮発性アルコールの含有量が水溶液中10質量%未満である請求項2乃至4のいずれか1項記載の水溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−111023(P2008−111023A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294248(P2006−294248)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】