説明

3軸光電界センサ

【課題】 高感度、小型で、かつ各アンテナ間の離間距離も狭まるため、空間分解能の高い3軸光電界センサを提供すること。
【解決手段】 この光電界センサは、直交する3軸方向の電界を測定するためのマッハツェンダ干渉計からなる光変調器部1およびプリント基板上に形成された金属アンテナ電極3からなる1軸光電界センサを正三角柱基台5の各側面に配置した構造で、アンテナの電界検出方向が分岐光導波路の方向に対して略54.7°傾け、互いに直交する3軸方向の電界を検出できるようにプリント基板2を隣接するプリント基板2と立体的に交差する構造に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学効果を利用して電界を測定する光電界センサに係り、特に、直交する3軸方向の電界強度およびその3軸方向の各電界強度の合成計算により求まる総電界強度の測定に好適な3軸光電界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学効果を利用した干渉型光導波路を用いた光電界センサは、次のような優れた性質を有する。
(1)アンテナを除いて金属部をほとんど持たないために被測定電界を乱さない。
(2)光ファイバで検出信号を伝送するので途中で誘導や電気的雑音の影響を受けない。
(3)結晶の電気光学効果を利用するので高速応答が可能で、その検出信号をそのまま少ない損失で伝送できる。
(4)センサ部に電源を必要としない。
このような特質から光電界センサは、EMC分野などの広範な電界測定に用いられる。
【0003】
従来の直交する3軸方向の電界を検出する3軸光電界センサには光変調電極と電界検出用アンテナ電極を一体化した金属電極を電気光学基板上に配した1軸光電界センサ3個を正三角柱の各側面に配置したものがある(特許文献1参照)。
【0004】
以下、図4、図5および図6を用いて従来の3軸光電界センサについて説明する。図4は、従来の3軸光電界センサに使用される1軸方向の電界を測定する反射型1軸光電界センサの構造を示す斜視図である。図5は、従来の3軸光電界センサの構造を示す斜視図である。図6は、従来の3軸光電界センサを上方から見た断面図である。
【0005】
図4に示すように、光ファイバ4から入射した光は電気光学結晶基板であるLiNbO3基板6上の光導波路7を経て、2本の分岐光導波路8aおよび8bに分岐される。金属電極9により一方の分岐光導波路8aに電界を印加すると、その分岐光導波路8aに屈折率変化が生じるのに対して、分岐光導波路8bに電界による屈折率変化は生じない。いずれの分岐光導波路を伝播する光も反射ミラー10によって反射され、分岐光導波路を逆方向に伝播し、再び合波される。その後、合波光は光ファイバ4に出射し、光検出器に導かれ電気信号に変換される。2つの光路の屈折率差により生じた位相差に応じて、合波後の光強度は変化する。この光強度変化は、被検出電界の強度変化に相当する。
【0006】
分岐光導波路8aおよび8bに対し54.7°傾いた電界検出方向の感度が高い電界検出アンテナになるように金属電極9が形成される。次に、図4に示した反射型1軸光電界センサを図5に示すように正三角柱固定基台の各側面に配置することで、直交する3軸方向の電界を測定できる3軸光電界センサを作製する。図6に示すように、構造上、正三角柱断面の各辺の長さと比較して1軸光電界センサの幅が同じか、あるいは短くなっているのがわかる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−219088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光電界センサの感度を上げるには、アンテナ長を長くすることが最も簡単な方法である。上述した特許文献1の3軸方向の電界測定用光電界センサは、光変調電極と電界測定用アンテナが電気光学結晶基板上に一体化して形成しているので、アンテナ長を長くして高感度化すると、下地となる電気光学結晶基板もアンテナ長に合わせて大きくする必要があった。しかしながら、電気光学結晶を大きくすると各軸間のアンテナ中心までの距離が長くなり、3次元の測定分解能が悪くなるという問題があった。また、LiNbO3、LiTaO3といった光変調用の電気光学結晶基板は誘電率が高いので、基板を大きくすると被測定電界に与える影響が無視できないという問題があった。さらに、電気光学結晶基板は複雑な形状への加工は困難で高価である。したがって、電気光学結晶基板は可能な限り小さく、加工形状が簡素である方がコスト的に良い。また、できるだけ湿度変化に強い構造の3軸光電界センサが求められていた。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたもので、その技術課題は、高感度、小型で、空間分解能の高い、湿度変化に強い構造の3軸光電界センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1の発明は、分岐光導波路、並びにアンテナ取り付け電極および変調電極からなる金属電極が電気光学結晶基板上に形成された分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計を3個備えて、互いに直交する3軸方向の電界を検出する3軸光電界センサにおいて、前記分岐光導波路と同方向に長手方向を有するプリント基板上に前記分岐光導波路の方向から略54.7°傾いた方向に金属アンテナが形成され、前記プリント基板の形状は矩形の対角線上の2隅にそれぞれ長方形状の切り欠き部が設けられ、前記切り欠き部のそれぞれの前記長手方向の長さは対角線上の他の切り欠き部の形成によって相対的に突出した凸部の前記長手方向の長さよりも大きく、かつ前記金属アンテナは前記矩形の全幅にわたって形成され、前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は正三角柱基台の3つの側面にそれぞれ配置され、前記プリント基板の前記切り欠き部と隣接するプリント基板の前記凸部が立体的に交差するように配置された3軸光電界センサである。
【0011】
上記目的を達成するための第2の発明は、前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は、入出力を共通にし、反射型にした3軸光電界センサである。
【0012】
上記目的を達成するための第3の発明は、前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計を真空封止する容器を備えてなる3軸光電界センサである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分岐光導波路、並びにアンテナ取り付け電極および変調電極からなる金属電極が電気光学結晶基板上に形成された分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計を3個備えて、互いに直交する3軸方向の電界を検出する3軸光電界センサにおいて、プリント基板の主面の上部側は、前記分岐光導波路の方向を中心として左側に幅広部があり、前記プリント基板の主面の下部側は、前記分岐光導波路の方向を中心として右側に幅広部がある鉤状の形状のプリント基板上に形成された金属アンテナからなる1軸光電界センサを前記金属アンテナが前記分岐光導波路の方向から略54.7°傾いた互いに直交する3軸方向の電界を検出できるように正三角柱基台の3つの側面に配置し、隣接するプリント基板を立体的に互いに交差させることで、極めて簡単で小型の構造の3軸光電界センサを実現し、3軸間の距離を狭めることができるので、3軸光電界センサの空間分解能を高くできる。また、分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は、入出力を共通にし、反射型にしたことでより小型の3軸光電界センサを実現できる。更に、真空封止するガラス製容器からなる光変調基部を備えることで湿度変化に変化に強い3軸光電界センサを実現できる。
【0014】
その結果、高感度、小型で、空間分解能の高い、湿度変化に強い構造の3軸光電界センサの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図面を参照して説明する。図1は、本発明を実施するための最良の形態に係る1軸光電界センサを示す斜視図である。図2は、本発明を実施するための最良の形態に係る3軸光電界センサを示す模式的斜視図である。図3は、本発明を実施するための最良の形態に係る3軸光電界センサの上面から見た断面図である。
【0016】
本発明を実施するための最良の形態に係る1軸光電界センサはLiNbO3などの電気光学基板上に作製されたTi拡散導波路とそこに電圧を印加する金属電極と反射ミラーと光ファイバを備えて構成されるマッハツェンダ干渉計、アンテナ電極を配したプリント基板およびマッハツェンダ干渉計を真空封止するガラス製容器12(図3参照)から構成される。
【0017】
図1に示すように、1はマッハツェンダ干渉計、2はプリント基板で、3はプリント基板上に形成された金属アンテナ電極で、4は光ファイバである。金属のアンテナ電極パターンは、3軸光電界センサの構成に用いる正3角柱基台上の分岐光導波路の方向に対して略54.7°傾いた方向に伸びた形状に作製され、この検出方向で最大感度になる。プリント基板は、プリント基板の主面の上部側は、分岐光導波路の方向を中心として左側に幅広部があり、プリント基板の主面の下部側は、分岐光導波路の方向を中心として右側に幅広部がある2つの鉤を合わせた形状で、3軸光電界センサを構成する際に隣り合うプリント基板と金属アンテナの中心を境として立体的に交差する形状で作製される。
【0018】
図2に示すように、正三角柱基台5の各側面には、図1で示した1軸光電界センサを配置する。図3および図4に示すように、3つの1軸光電界センサの電界検出方向は互いに直交する方位となる。
【0019】
このように、本発明を実施するための最良の形態に係る3軸光電界センサは、プリント基板の主面の上部側は、分岐光導波路の方向を中心として左側に幅広部があり、プリント基板の主面の下部側は、分岐光導波路の方向を中心として右側に幅広部がある鉤状の形状のプリント基板上に形成された金属アンテナからなる1軸光電界センサを金属アンテナが分岐光導波路の方向から略54.7°傾いた互いに直交する3軸方向の電界を検出できるように正三角柱基台の3つの側面に配置し、隣接するプリント基板を立体的に互いに交差させることで、極めて簡単で小型の構造の3軸光電界センサを実現する。3軸間の距離を狭めることができるので、3軸光電界センサの空間分解能を高くできる。また、分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は、入出力を共通にし、反射型にしたことでより小型の3軸光電界センサを実現できる。更に、真空封止するガラス製容器からなる光変調基部を備えることで湿度変化に変化に強い3軸光電界センサを実現できる。
【0020】
その結果、高感度、小型で、空間分解能の高い、湿度変化に強い構造の従来の3軸光電界センサのようにアンテナ長を長くして高感度化する手法をとらない3軸光電界センサの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を実施するための最良の形態に係る1軸光電界センサを示す正面図。
【図2】本発明を実施するための最良の形態に係る3軸光電界センサを示す模式的斜視図。
【図3】本発明を実施するための最良の形態に係る3軸光電界センサの上面から見た断面図。
【図4】従来の3軸光電界センサに使用される1軸方向の電界を測定する反射型1軸光電界センサの構造を示す斜視図。
【図5】従来の3軸光電界センサを示す斜視図。
【図6】従来の3軸光電界センサを上方から見た断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 光変調器部
2 プリント基板
3 金属アンテナ電極
4 光ファイバ
5 正三角柱基台
6 LiNbO3基板
7 光導波路
8a,8b 分岐光導波路
9 金属電極
10 反射ミラー
11 1軸光電界センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐光導波路、並びにアンテナ取り付け電極および変調電極からなる金属電極が電気光学結晶基板上に形成された分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計を3個備えて、互いに直交する3軸方向の電界を検出する3軸光電界センサにおいて、前記分岐光導波路と同方向に長手方向を有するプリント基板上に前記分岐光導波路の方向から略54.7°傾いた方向に金属アンテナが形成され、前記プリント基板の形状は矩形の対角線上の2隅にそれぞれ長方形状の切り欠き部が設けられ、前記切り欠き部のそれぞれの前記長手方向の長さは対角線上の他の切り欠き部の形成によって相対的に突出した凸部の前記長手方向の長さよりも大きく、かつ前記金属アンテナは前記矩形の全幅にわたって形成され、前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は正三角柱基台の3つの側面にそれぞれ配置され、前記プリント基板の前記切り欠き部と隣接するプリント基板の前記凸部が立体的に交差するように配置されたことを特徴とする3軸光電界センサ。
【請求項2】
前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計は、入出力を共通にし、反射型にしたことを特徴とする請求項1記載の3軸光電界センサ。
【請求項3】
前記分岐光導波路型マッハツェンダ干渉計を真空封止する容器を備えてなる請求項1又は請求項2記載の3軸光電界センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−313072(P2006−313072A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134884(P2005−134884)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000147350)株式会社精工技研 (154)
【Fターム(参考)】