説明

4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の結晶形態及び2つの溶媒和物形態

4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の結晶形態又は多形、ならびに、それを製造する方法、それを含む医薬組成物及びそれを用いる治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の結晶形態、ならびに、それを製造する方法、それを含む医薬組成物及びそれを用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連する背景技術]
多形性とは、ある物質の複数の結晶構造が存在することを意味する。複数の結晶変態に結晶化する化学物質のこの能力は、有効期間、溶解度、製剤特性、及び薬物の加工特性に重大な影響を及ぼす可能性がある。その上、薬物の作用は薬物分子の多形性によって影響され得る。異なる多形は、身体において異なる取り込み速度を有し、結果として望ましい生物活性よりも低い又は高い生物活性を導く可能性がある。極端な場合は、望ましくない多形が毒性を示すことさえあり得る。製造中に未知の多形体が出現することは非常に大きな影響を有し得る。
【0003】
多形性を理解及び制御することは、その結果、市場に新薬をもたらす際に明確な利点を与える。何よりもまず、製剤に起こり得るあらゆる多形の知識を用いて、薬物の製造又は貯蔵中のその他の多形体による汚染の可能性を減少させることができる。汚染を見つけることに失敗すると、場合によっては生命を危うくする結果を招く可能性がある。製造中に予期せぬ多形を結晶化することは、科学者が新規な結晶形の原因を発見し修正するか、あるいはその新規な形態に対する認可を得るために別の一連の試験を行う間の、数週間又はさらに数ヶ月もの製造休止期間を意味し得る。
【0004】
第二に、ある場合にどの結晶構造が起こり得るかを理解することにより、研究者が化合物の望ましい特性、例えば溶解度、製剤特性、加工特性、及び有効期間などを最大限にすることが可能となる。新薬開発の初期段階にこれらの要因を理解することは、より高活性の、より高安定性の、又はより安価な薬物を製造することを意味し得る。
【0005】
化合物4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンは、米国特許第6,774,237号及び国際公開第2006/127926号に記載されるように、式(I):
【化1】


を有する。国際公開第2006/127926号は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの多形及び溶媒和物の形態の情報を記載している。国際公開第2006/127926号は、新規な無水形態II、本発明の4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩のヘミペンタヒドラート(hemi-pentahydrate)形態又はメタノール溶媒和物形態あるいはそのDMF溶媒和物の情報を記載していない。4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の起こり得る多形体を知ることは、適した剤形の開発に有用である。これは、臨床研究又は安定性研究の間に単一の多形体を利用することができないと、使用されているか又は研究されている正確な剤形が一方のロットと他方のロットで同等でないという結果をもたらす可能性があるためである。ひとたび選択されれば、多形体は再現性よく調製することができ、開発した剤形のまま長期間変わらないことが重要である。また、不純物の存在は望ましくない毒性効果を生じる可能性があるため、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩を高純度で製造するためのプロセスを有することも望ましい。
【0006】
さて、驚くことに、下に特徴付けられる4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の様々な結晶変態(新規な多形体又は溶媒和物形態)を、特別に選択されたプロセス条件、例えば、溶媒系の選択、結晶化の持続時間などの選択により調製可能であることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,774,237号
【特許文献2】国際公開第2006/127926号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の新規な無水形態、ヘミペンタヒドラート形態、メタノール溶媒和物形態又はDMF溶媒和物形態の実質的に純粋な結晶形態に関する。
【0009】
本発明は、さらに
(a)本発明の4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩のその無水形態、ヘミペンタヒドラート形態、メタノール溶媒和物形態又はDMF溶媒和物形態の、治療的有効量の結晶形態;及び
(b)少なくとも1種類の医薬的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル又は賦形剤
を含む医薬組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、米国特許第6,774,237号及び国際公開第2006/127926号に記載される受容体チロシンキナーゼの阻害に応答する疾患を治療する方法に関する。これらの方法には、限定されるものではないが、そのような治療を必要とする被験体に、本発明の4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩のその無水形態、ヘミペンタヒドラート形態又はメタノール溶媒和物形態又はDMF溶媒和物形態の、治療的有効量の結晶形態を投与する段階を含む、VEGFR2及びFGFR3の活性の阻害が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩の新規な無水形態についてのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図2】図2は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のヘミペンタヒドラート形態についてのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図3】図3は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のメタノール溶媒和物形態についてのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図4】図4は、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のDMF溶媒和物形態についてのX線粉末回折パターンを示す図である。
【図5A】図5Aは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩の新規な無水形態についてのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図5B】図5Bは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のヘミペンタヒドラート形態についてのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図5C】図5Cは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のメタノール溶媒和物形態についてのFT−IRスペクトルを示す図である。
【図6A】図6Aは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩の新規な無水形態についてのラマンスペクトルを示す図である。
【図6B】図6Bは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のヘミペンタヒドラート形態についてのラマンスペクトルを示す図である。
【図6C】図6Cは、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの乳酸塩のメタノール溶媒和物形態についてのラマンスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の詳細な説明]
4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の無水形態の多形体、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩のヘミペンタヒドラート形態の多形体及び4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩のメタノール溶媒和物形態は、本出願人の同時継続出願国際公開第2006/127926号に記載される多形及び溶媒和物の変換(transformation)により得ることができる。これらの「結晶変態」(又は「多形形態」、「多形」、又は「結晶形態」;これらの用語は本明細書において同義的に使用される)は、熱力学的安定性、物理的パラメータ、X線構造及び/又は調製プロセスに関して異なり、さらに国際公開第2006/127926号に記載される多形及び溶媒和物とは異なる。本発明が対象とする4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の結晶形態は、図1〜4に示されるX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。
【0013】
本明細書において使用される場合、用語「単離された」及び/又は「実質的に純粋な」とは、50%を上回るその結晶性4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩が本明細書に記載される形態のうちの一形態で存在し、かつ、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の本明細書に記載される結晶形態のうちの一形態が存在することを意味する。
【0014】
本発明の第1の実施形態は、図1に示される4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な多形無水形態に関する。本明細書において無水形態IIとして知られる本発明の無水形態は、エタノール、エタノール/アセトニトリル(98:2)又はイソプロパノールから、本出願人の同時継続出願国際公開第2006/127926号に記載される多形形態Aを用いて単離することができる。無水形態IIはまた、エタノール、アセトニトリル、又はイソプロパノールから、本出願人の同時継続出願国際公開第2006/127926号に記載される形態B(一水和物)を用いて単離することもできる。
【0015】
本発明の第2の実施形態は、図2に示される4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な多形ヘミペンタヒドラート形態に関する。本発明のヘミペンタヒドラート形態は、エタノール/水混合物中での結晶化によって単離することができる。また、ヘミペンタヒドラート形態は、エタノール/水混合物(約80:20〜約60:40)から、あるいはエタノール/水/テトラヒドロフラン混合物又はアセトン/水混合物から、本出願人の同時継続出願国際公開第2006/127926号に記載される多形形態Aを用いて単離することもできる。
【0016】
本発明の第3の実施形態は、図3に示される4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な多形メタノール溶媒和物形態に関する。
【0017】
様々な方法を用いて4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の上記の塩の多形体を実現することができる。そのような方法は、下に示される実施例に記述される。
【0018】
本発明の別の実施形態は、
(a)図1〜4に示されるXRPDパターンのうちの一つによって特徴付けられる4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶形態の治療的有効量;及び
(b)少なくとも1種類の医薬的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル又は賦形剤
を含む医薬組成物に関する。好ましくは、組成物中に存在する結晶形態の50%より多くが、選択された形態のうちの一形態である。
【0019】
「治療的有効量」は、治療を必要とする被験体に投与した場合に、VEGFR2及びFGFR3の活性の阻害により軽減される疾患状態の治療をもたらすために十分な、本発明の多形の量を意味することを意図する。治療効果のある本発明の所与化合物の量は、例えば、疾患状態及びその重篤度、治療を必要とする被験体の同一性(identity)などの要因によって変化し、その量は当業者により常套的に決定されてもよい。
【0020】
限定されるものではないが、微晶質セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)(NaSG)、クロスポビドン、クロスカルメロース(crosscarmellose)(CC)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、Tween、ポリエチレングリコール(PEG)、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸、ステアリン酸フマル酸ナトリウム(sodium stearate fumarate)及び二酸化ケイ素を含む、少なくとも1種類の医薬的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル又は賦形剤は、当業者により容易に選択することができ、所望の投与様式で投与される。適した投与様式の説明となる例としては、経口、鼻腔、非経口、局所、経皮及び直腸投与が挙げられる。本発明の医薬組成物は、当業者が適していると認識できるあらゆる医薬形態をとってもよい。適した医薬形態には、固体、半固体、液体、又は凍結乾燥製剤、例えば、錠剤、粉末、カプセル剤、坐剤、懸濁液、リポソーム及びエアロゾルが含まれる。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、そのような治療を必要とする被験体に、図1〜4に示されるXRPDパターンのうちの一つによって特徴付けられる4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶形態の治療的有効量を投与する工程を含む、VEGFR2及びFGFR3の活性の阻害に応答する疾患を治療する方法に関する。
【0022】
VEGFR2及びFGFR3の活性の阻害に応答する疾患としては、限定されるものではないが、例えば前立腺癌、結腸直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、膵臓癌、小細胞癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、非小細胞白血病(nonsmall cell leukemia)、小細胞白血病(small cell leukemia)、慢性リンパ性白血病、肉腫、黒色腫、リンパ腫、甲状腺癌、神経内分泌癌、腎細胞癌、胃癌、消化管間質性癌(gastrointestinal stromal cancer)、神経膠腫、脳癌、膀胱癌又は胆管癌などの疾患が挙げられる。さらなる適応症は、本出願人の特許及び/又は特許出願の米国特許第6,774,237号、米国特許公報第10/644,055号、同第10/983,174号、同第10/839,793号、同第11/041,191号及び国際公開第2006/127926号に記載されている。
【0023】
上で述べたように、説明となる投与様式には、経口、鼻腔、非経口、局所、経皮及び直腸投与が含まれる。結晶形態の投与は、本発明の医薬組成物の投与によるか、又は任意のその他の有効な手段を介して達成されてもよい。
【0024】
本発明の具体的な実施形態を以下の実施例を参照することにより実証する。これらの実施例が単に本発明を説明する目的で開示されるものであり、決して本発明の範囲を制限すると考えられるものでないことは理解されるべきである。
[定義]
THF−テトラヒドロフラン
DMF−ジメチルホルムアミド
[機器の種類及び分析機器の較正]
X線粉末回折(XRPD):機器:Bruker D8 Advance、Reflection、CuKα
ヌジョール法のFT−IR 装置:Bruker VERTEX 70
単結晶構造:機器:Bruker AXS、CuKα
FT−ラマン:Bruker RFS100-S、レーザー粉末50mW(1004nm)
【実施例】
【0025】
[実施例1: 4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩無水形態II]
無水形態A及び好ましくは過剰の乳酸の、有機溶媒、例えばエタノール、又はエタノール98:2(v/v)アセトニトリル、イソプロパノール中のスラリーを攪拌することによる平衡化により、無水形態Aは無水形態IIに変換される。
【0026】
好ましくは過剰の乳酸の存在下の一水和物形態Bの平衡化により、無水形態IIがエタノール又はイソプロパノール又はアセトニトリル中に得られる。
【0027】
過塩素酸による4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オンの滴定及び乳酸の滴定は、塩基及び乳酸の化学量論が1:1であることを示す。熱重量分析、水<0.5%、HPLC純度>99.5%。
【0028】
無水形態IIの加熱は、約160℃でのX線加熱細胞により観察されるように、無水形態Aに変換される。示差走査熱量測定(DSC)によれば、変換は、無水A及び無水IIがエナンチオトロピー関係であることを示す吸熱によって起こる。これは、25℃の水中溶液の熱により確認され、形態Bのほうが形態Aよりも吸熱性が高い:4.6KJ/モルに比べて9.2KJ/モルである。
【0029】
スラリー中のエタノール/水混合物において、無水形態IIは、一水和物形態B(含水量が少ない)又はヘミペンタヒドラート(含水量が多い)に変換され得る。
【0030】
一水和物形態Bを100〜140℃で加熱すると、無水形態A又は無水形態IIあるいは混合物が得られる。
【表1】

【0031】
[調製例]
70mlの無水エタノール中、7gの4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩一水和物形態Bのスラリーを、24時間の間25℃にて攪拌することにより平衡化する。濾過した固体を乾燥させると、その固体は4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩無水形態IIからなる。
【0032】
単結晶X線構造を決定し、X線粉末回折を確認する。
【0033】
[実施例2: 4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩ヘミペンタヒドラート]
含水量の多いエタノール/水混合物中の結晶化により、ヘミペンタヒドラートを得る。
【0034】
無水形態Aの平衡化により、25〜50℃の60:40までの80:20エタノール/水混合物(mixtures ethanol/water 80:20 until 60:40)において、あるいはエタノール/水/THF混合物において、あるいは90:10アセトン/水混合物において、ヘミペンタヒドラートへの完全な変換が観察される。乳酸を失う前の熱重量分析による乾燥減量:8.6%(ヘミペンタヒドラートの理論値8.5%)。
【0035】
過塩素酸による滴定:100.0%、無水物に基づく乳酸の滴定18.9%、水:8.1〜8.6%、HPLCによる純度>99.5%。
【0036】
ヘミペンタヒドラートは、無水形態A又はBと比較して25℃の水中溶液の吸熱による熱をより多く有する:30KJ/モル。
【0037】
ヘミペンタヒドラートを加熱することにより、新規な形態、おそらくは約100℃のX線加熱細胞により観察される0.5水和物(hemi-hydrate)(TG:1.39%)へ変換される。DSCによりこの変換が起こり、それに続いて130〜140℃での融解及び再結晶化により無水形態Aとなる。同じ知見はX線機器を加熱することにより得られる。有機溶媒、例えばエタノール、アセトン、THF中のヘミペンタヒドラートのスラリーを平衡化することにより、ヘミペンタヒドラートは無水形態A又は無水形態Aと一水和物形態Bの混合物へ変換される。
【0038】
25℃のヘミペンタヒドラートの溶解度:水:6.2mg/ml;HCl 0.1N:55mg/ml;エタノール:2mg/ml。
【0039】
[調製例]
5gの4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン遊離塩基を、27.6gのエタノール及び2.4gの水の混合物に溶解する。0.5gの乳酸を添加し、この溶液を攪拌下50℃にて40〜48時間保持する。懸濁液が得られ、濾過した固体を乾燥させると、それは4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩ヘミペンタヒドラートからなる。
【0040】
単結晶X線構造を決定し、X線粉末回折により確認する(表1参照)。
【0041】
[実施例3: 4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩メタノール溶媒和物]
メタノール中の一水和物又は無水形態A又は無水形態IIのスラリーの平衡化により、溶媒和物への完全な変換が25℃で観察される。
【0042】
単結晶X線構造を決定し、X線粉末回折により確認する(表1参照)。
【0043】
[実施例4: 4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩DMF溶媒和物]
DMF中の一水和物又は無水形態Aのスラリーの平衡化により、溶媒和物への変換が25℃で観察される:例では(example)一水和物は完全に溶媒和物に変換される:TG:15.5%(理論値:13.1%)。
【0044】
単結晶X線構造を決定し、X線粉末回折により確認する(表1参照)。
【表2】

【0045】
図5A、5B及び5CのFT−IRスペクトル吸収帯は表2に見られる。
【表3】

【0046】
図6A、6B、6Cのラマンスペクトル吸収帯は表3に見られる。
【表4】

【0047】
本発明をその具体的な実施形態に関連して上に述べてきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、及び変形を行うことができることは明らかである。したがって、添付される特許請求の範囲の精神及び広範な範囲内にあるすべてのそのような変更、修正、及び変形が包含されることが意図される。本明細書に引用されるすべての特許出願、特許、及びその他の刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
18.5°、2θで特徴的な最大値を示すX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性の無水形態II。
【請求項2】
図1に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性の無水形態II。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが、8.2°、11.8°、12.9°、13.8°、14.7°、16.6°、18.5°、20.3°、23.5°、2θで特徴的な最大値を示す、請求項2に記載の実質的に純粋な結晶形態。
【請求項4】
22.5°、2θで特徴的な最大値を示すX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性のヘミペンタヒドラート形態。
【請求項5】
図2に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性のヘミペンタヒドラート形態。
【請求項6】
X線粉末回折パターンが、6.8°、9.3°、12.1°12.7°、13.1°13.4°、16.5°、17.3°、18.7°、19.3°、19.8°、20.4°、22.5°、23.3°、25.8°、26.2°、27.1°、2θで特徴的な最大値を示す、請求項5に記載の実質的に純粋な結晶形態。
【請求項7】
19.5°、2θで特徴的な最大値を示すX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性のメタノール溶媒和物形態。
【請求項8】
図3に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、4−アミノ−5−フルオロ−3−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]キノリン−2(1H)−オン乳酸塩の実質的に純粋な結晶性のメタノール溶媒和物形態。
【請求項9】
X線粉末回折パターンが、6.5°、9.4°、11.9°、12.2°、18.0°、19.5°、22.5°、24.0°、26.3°、2θで特徴的な最大値を示す、請求項8に記載の実質的に純粋な結晶形態。
【請求項10】
(a)請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療的有効量の結晶形態;及び
(b)少なくとも1種類の医薬的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル又は賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項11】
VEGFR2及びFGFR3の活性の阻害に応答する疾患を治療する方法であって、
そのような治療を必要とする被験体に、請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療的有効量の結晶形態を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
前記疾患が、前立腺癌、結腸直腸癌、乳癌、多発性骨髄腫、膵臓癌、小細胞癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、非小細胞白血病、小細胞白血病、慢性リンパ性白血病、肉腫、黒色腫、リンパ腫、甲状腺癌、神経内分泌癌、腎細胞癌、胃癌、消化管間質性癌(gastrointestinal stromal cancer)、神経膠腫、脳癌、膀胱癌及び胆管癌からなる群より選択される、請求項11に記載の疾患を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2011−515370(P2011−515370A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500221(P2011−500221)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053222
【国際公開番号】WO2009/115562
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】