説明

4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法

本発明は、1)7〜8範囲のpH条件下で式(2)のエピクロロヒドリンを式(3)のシアン化塩と反応させて、式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを形成し;及び2a)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをアルコール溶媒に溶解して塩化水素と反応するか、または、2b)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを塩化水素で飽和されたアルコール溶媒中で反応して、式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル酸エステルを形成する段階を含む、アトルバスタチン製造のための中間体である、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを高純度及び高収率で製造する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法に関する。より具体的には、本発明は反応pH、反応物添加順序、及び/又は反応溶媒及び反応物の量などの最適化を通じて、高い光学活性及び化学的純度を有する、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを高収率で製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルは高脂血症治療剤である、アトルバスタチン(atorvastatin)を製造する中間体として有用である。
【0003】
【化10】

【0004】
式中のRはC1−4アルキルである。
【0005】
前記4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法であって、
1)下記式(2)のエピクロロヒドリンを
【0006】
【化11】

【0007】
下記式(3)のシアン化塩と反応させて、
【0008】
【化12】

【0009】
(式中、Mはカチオン、nは1〜3の整数である)
下記式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを形成する工程:
【0010】
【化13】

【0011】
2)前記式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを酸加水分解させて、上記式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを形成する工程を含有してなる方法は、当該技術分野で知られている。
【0012】
上記方法は下記反応式で表わすことができる。
【0013】
【化14】

【0014】
まず、工程1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造する幾つかの方法としては、キラルエピクロロヒドリンを密封容器内で液体シアン化水素と数日間熱反応させる方法[Hormann, Ber., 1879, 12, 23]、シアン化カリウムを触媒としてシアン化水素を利用する方法[F. Binon, Bull. Soc. Chim. Belges., 1963, 72, 166]、シアン化ナトリウムとシアン化カリウムの混合水溶液を酢酸水溶液と同時に投入することで、中性条件下で反応させる方法[Culvenor, J. Chem. Soc., 1950, 3123]などが知られている。
【0015】
しかし、液体シアン化水素を用いるHormannの方法は液体シアン化水素を扱うことが非常に危険であり、産業的利用ために非常に長い反応時間と特殊耐圧容器が求められるので、商業的生産に好適な方法でない。Binonの方法もまた、シアン化水素を用いる同様の問題を持っている。また、Culvenorの方法は最適なpHを保持するために、金属シアン化塩水溶液と酸溶液を同時に投入する速度を調節するという困難さを有している。
【0016】
前述した課題の解決及び工業的大量生産に好適な経済的な工程を提供するために、種々の改善方法が開発されている。例えば、日本のダイソー社の日本特許第5310671号は、エピクロロヒドリン水溶液に無機酸溶液とシアン化アルカリ金属塩水溶液を同時に投入して反応液のpHを8〜10の塩基性に保持することを特徴とする方法を開示している。この方法は、文献[Org. Syntheses, CV 5, 614]に記載されたように、塩基性のpH及び高温下で3−ヒドロキシグルタロニトリルと4−ヒドロキシクロトニトリルの副産物が形成されるような課題を解決しようとするものである。しかし、硫酸溶液と塩基性のシアン化塩水溶液をエピクロロヒドリン溶液に同時に投入してpHを調節することはそれほど容易ではなく、特に、酸と塩基を同時に投入することから発生する中和熱は、反応温度の調節の点から関係があるかも知れない。
【0017】
その後に、工程2)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法は、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを水性の酸性条件下で加水分解してカルボン酸(4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸)を形成した後、さらに、このカルボン酸を4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルに変換する工程を含む。前記方法は下記反応式で表わすことができる。
【0018】
【化15】

【0019】
前記反応で、中間体としてR−C(OH)=NHが形成され、イミン(=NH)の加水分解によりカルボン酸が形成される。この反応は通常の酸水溶液を用いた加水分解反応であり、反応は還流温度で遂行しなければならなく、ほとんど加水分解されないアミド中間体でしばしば停止するという問題を有している。
【0020】
他の公知の方法(Pinner反応)は4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをアルコール又はアルコールと不活性溶媒の混合液に溶かし、塩化水素ガスを吹き付けて低温で長時間反応を遂行し、中間体としてイミダートを形成し、これを酸水溶液で加水分解する工程を含む。前記方法は下記反応式で表わすことができる。
【0021】
【化16】

【0022】
式中のR’はClCHCH(OH)CH−、R”はC1−4アルキルである。
【0023】
文献[Geza Braun, J. Amer. Chem. Soc., 1930, 52, 3167]に記載された方法によると、反応物をエタノールとエチルエーテルとの混合溶液で冷却し、数時間かけて極度に過量の塩化水素ガスを利用して反応を遂行し、溶媒蒸留を通じて 反応溶液を濃縮し、残留塩化水素ガスを除去する。前記反応から得られるイミデート化合物をまた水に溶解し、加水分解すると目的化合物のエステルが得られる。このとき、過量の塩化水素が除去されないと、エチルエステルとともに副産物としてカルボン酸が形成されるので、溶媒を減圧蒸留するとき、可能な限り完全に濃縮しなければならない。産業上の利用のために、前記方法は、 過量の塩化水素の存在によって耐腐食性反応器を注意深く選定しなえればならなく、反応時間が非常に長いことによって生産性が低いという問題がある。さらに、本発明者らが前記文献に従って反応を遂行した結果、この反応は、構造がわからない不純物が形成されるので、蒸留などの精製工程の後にようやく高純度の目的化合物を得ることができ、反応時間も数日間のように長時間かかるという不便な反応であることがわかった。
【0024】
従って、前記問題の解決及び工業的大量生産に好適な経済的な工程を提供するために、種々改善された方法が開発されている。例えば、日本公開特許第04124157号には高光学活性のある4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸の製造方法が開示されている。この方法は、濃塩酸溶液中でで4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを加熱し、この溶液を抽出して4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸を得て、分離されたカルボン酸をアルコール溶媒中で少量の酸触媒でエステル化して高い光学活性の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを提供する。この特許によれば、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを濃塩酸で処理し、加熱すると、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸の水溶液が得られる。生成した水溶液を減圧濃縮し、溶媒で抽出する。この抽出濃縮物をカラムクロマトグラフィーで精製した後、酸触媒下に適当なアルコールと反応させると、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルが得られる。しかし、この方法は過度に過量の濃塩酸を使用した後、減圧濃縮することは機器の腐食問題を引き起こす可能性があるという点で実用化には適していない。さらに、反応溶媒として使われた水を減圧濃縮することは容易ではなく、さらにまた、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸が水相に良く溶解されるので、数回抽出を繰り返すことがひつようである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明者らは前記したような従来技術の問題点を解決するために、鋭意研究を遂行した。その結果、本発明者らは反応に最適のpH範囲を見出した。反応物の添加順序の変化、及び/又は反応溶媒と反応物の種類、量などを調整することによって、高光学活性を持つ目的化合物を高純度及び高収率で製造することができることを見い出した。
【0026】
従って、本発明の目的は高光学活性及び高純度を持つ4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを高収率で、低コストで、そして工業的大量生産に良く適合するように、製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の第1の態様は、式(4)
【0028】
【化17】

【0029】
の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造する方法を提供することであり、この方法は、
1)式(2)
【0030】
【化18】

【0031】
のエピクロロヒドリンを式(3)
【0032】
【化19】

【0033】
(式中、Mはカチオンであり、nは1〜3の整数である)
のシアン化塩と、7から8の範囲のpH条件下で、反応させて式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造するする工程を含有してなる。
【0034】
本発明の第2の態様は、式(1)
【0035】
【化20】

【0036】
(式中、RはC1−4アルキルである)
の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法でを提供することであり、この方法は、
2a)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをアルコール溶媒に溶解させた後、塩化水素と反応させるか、又は
2b)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを塩化水素で飽和されたアルコール溶媒中で反応させて、式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを形成する工程を含有してなる。
【0037】
本発明の第3の態様は、前記工程1)及び工程2a)又は2b)を含む式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する方法を提供することである。
【0038】
以下、発明を詳細に説明する。
【0039】
1) 工程1):4−クロロ−3−ヒドロキシ−ブチロニトリルの製造
本発明者らは下記反応式に記載するように、エピクロロヒドリンがシアン化塩と反応するとき、反応生成物の組成がpHによって変わることを見い出した。
【0040】
【化21】

【0041】
第1に、反応液が酸性の場合には、酸触媒によってエピクロロヒドリンの開環反応が促進され、相当量の3,4−ジヒドロキシブチロニトリルと1,3−ジクロロイソプロパノールが生成され、これらの量は酸性が強くなるほど増加する。
【0042】
第2に、反応液が塩基性の場合には、エポキシ環がシアン基の攻撃を受けて、所望の4−シアノ−3−ヒドロキシブチロニトリルが主に生成されるが、反応中に発生したヒドロキシアニオンがクロロメチル基を分子内攻撃して、3,4−エポキシブチロニトリル内に新しいエポキシ環を形成し、これが再びシアン基の攻撃を受けて3−ヒドロキシグルタロニトリルが生成される。また、塩基の作用による3,4−エポキシブチロニトリルのβ−除去反応が、4−ヒドロキシクロトニトリルを形成する。
【0043】
従って、ダイソー社によって明らかになったように、本発明者らは反応液のpHを調節することが非常に重要であることを確認した。ダイソー社は、8〜10のpH範囲が最も好ましいと報告したが、本発明者らは反応液のpHを7〜8、特に7.3〜7.8範囲に調節することによって、副産物の生成を最小化して反応を最も效率的に遂行することができることを新たに見いだした。さらにまた、反応系のpHを一定範囲内に微細に保持して酸性と塩基性の両試料を同時に添加することは容易ではないので、本発明者らは工程1)で反応物の添加順序を変えことによって、反応の操作と条件を非常に精密に制御できる工程を開発した。
【0044】
具体的に、本発明では反応器に金属シアン化塩と無機酸を入れてpHを所望範囲に調節する。その後、エピクロロヒドリンを添加し、pHが比較的に単純な方法で制御されている条件下で反応を遂行する。即ち、反応液のpHを7.0〜8.0、好ましくは7.3〜7.8に調節した後、エピクロロヒドリンを滴下する。
【0045】
前記工程に使われる金属シアン化塩の種類はシアン化ナトリウム、シアン化カリウムなどのシアン化アルカリ金属塩、シアン化カルシウム、シアン化バリウムなどが挙げられるが、入手が容易で、産業的に広く使われることからシアン化ナトリウムとシアン化カリウムが特に好ましい。pHを調節するために導入される無機酸の種類は塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、メタンスルホン酸などが挙げられる。好ましいのはスルホン酸、硫酸及び塩酸である。
【0046】
無機酸との反応はアルコールと水の混合系中又は水中、好ましくは水中で、遂行され得るが、水の量はエピクロロヒドリンに対して2〜20の重量比で使用することができる。しかし、攪拌効率と経済性を考慮すると、3〜6、より好ましくは3〜4重量比で水を使用することが好ましい。反応温度は0〜90℃の範囲内が可能だが、適当な反応速度の保持、及び副産物の生成を抑制するためには10〜40℃の範囲が好ましい。特に、15〜25℃の温度範囲が最も好ましい。
【0047】
反応が終結された後、反応液内に導入されたシアン塩と酸の種類によって生成された塩化合物を濾過し、濾液を有機溶媒で抽出し、抽出物を濃縮して所望の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを得ることができる。抽出溶媒の適当な種類はトルエン、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタンなどが挙げられる。抽出能力の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、ジクロロメタンなどが好ましく、酢酸エチルとジクロロメタンがさらに好ましい。
【0048】
2)工程2):4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造
本工程で、本発明者らは最小量の酸を使用し、中間体として4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸を抽出する操作を避けると同時に、短時間内に高収率と高純度で目的物質を得ようと努力した。その結果、本発明者らは4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをアルコール類の溶媒に溶解し、そこに塩化水素ガスを吹き込むことによって、所望のカルボン酸エステルを高純度で速やかに得ることができることを見い出した。また、予め塩化水素ガスで飽和されたアルコール溶媒を使用しても類似の反応効果を得ることができた。
【0049】
この工程で使用されるアルコール溶媒はC1−4アルコールである。アルコール単独、又は他の溶媒との組合せで使用できる。その場合、共存溶媒としてはジエチルエーテル又はジイソプロピルエーテルを使用することが好ましい。最も好ましくは、アルコールを単一溶媒で使用する。アルコールの重量比は4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルに対して1〜10の範囲でありうるが、経済性と反応速度の点から、1.5〜4が好ましく、より好ましくは、1.5〜2.5である。
【0050】
塩化水素の量は1〜10モル当量でありうるが、反応の迅速性及び残った塩化水素の後処理などを考慮するとき、1〜6モル当量が好ましい。反応温度は0〜80℃の範囲内でありうるが、反応純度を考慮するとき、15〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜25℃である。もし出発物質として光学活性を持ったエピクロロヒドリンを使用する場合は、前記反応で得られる4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルは光学純度を保持する。
【0051】
さらに、反応の終了後、従来の方法ではアルコール類溶媒を減圧蒸留しているのに対し、本発明ではアルコール溶媒の濃縮なしで、直接有機溶媒で抽出可能な、相対的に非常に少量のアルコール溶媒を使用することによって、製造工程上操作が減り、生産の効率が上がる長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明を下記実施例よって、さらに具体的に説明する。しかし、下記実施例は本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【実施例1】
【0053】
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造(NaCN/HSO
蒸留水60mLにシアン化ナトリウム(9.93g)を溶かし、溶液を氷浴で冷却した。この溶液に硫酸9.87gを温度が20℃を越えないように保持しながらして滴下し、pHを測定して7.7であることを確認した。前記溶液に15gのエピクロロヒドリンを添加した後、混合液を常温で攪拌した。反応が終結した後、反応液を酢酸エチルで3回抽出し、減圧濃縮して表題化合物17.2g(収率:89%)を濃黄色油として得た。化学純度(GC):96.5%
【0054】
H-NMR(CDCl)δ4.21(1H, m), 3.66(2H, d, J=5.6 Hz), 3.03(1H, d, J=5.6 Hz,-OH), 2.73(2H, m)
13C-NMR(CDCl)δ117.1, 67.3, 47.3, 23.3
【実施例2】
【0055】
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造(KCN/HSO
シアン化ナトリウムの代わりにシアン化カリウムを使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で、表題化合物17.8g(収率:92%)を得た。化学純度(GC):96.7%
【実施例3】
【0056】
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造(KCN/HCl)
シアン化ナトリウムの代わりにシアン化カリウムと、硫酸の代わりに濃塩酸を使用したことを除いては、実施例1と質的に同様の方法で、表題化合物17.4g(収率:90%)を得た。化学純度(GC):95.8%
【実施例4】
【0057】
4−クロロ−3(S)−ヒドロキシブチロニトリルの製造(KCN/HSO
シアン化ナトリウムの代わりにシアン化カリウムと、エピクロロヒドリンとして(S)−エピクロロヒドリンを使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で、表題化合物17.6g(収率:91%)を得た。化学純度(GC):96.5%;光学純度(HPLC):99.2%ee
【実施例5】
【0058】
4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルエステルの製造
エタノールを冷却し、そこに無水塩化水素ガスをゆっくり吹き込んだ。得られた溶液を滴定して10Nの塩化水素エタノール溶液を製造した。この塩化水素エタノール溶液30mLと4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリル11.96gを混合し、窒素雰囲気で、60℃に加熱しながら反応させた。反応が終結した後、反応液を冷却し、蒸留水30mLと酢酸エチル50mLで抽出し、水層は酢酸エチル50mLでさらに2回抽出した。抽出液を集め、減圧濃縮して表題化合物15.5g(収率:93%)を得た。化学純度(GC):96.8%
【0059】
H-NMR(CDCl)δ4.20〜4.30(1H, m), 4.18(2H, q, J=7.3Hz), 3.55〜3.65(2H, m), 3.17(1H, br), 2.55〜2.70(2H, m), 1.28(3H, t, J=7.3Hz)
13C-NMR(CDCl)δ171.8, 68.0, 61.0, 48.2, 38.5, 14.1
【実施例6】
【0060】
4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸メチルエステルの製造
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルとして4−クロロ−3(S)−ヒドロキシブチロニトリルと、エタノールの代わりにメタノールを使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で、表題化合物15.8g(収率:95%)を得た。化学純度(GC):97.1%;光学純度(HPLC):99.2%ee
【0061】
H-NMR(CDCl)δ4.28(1H, m), 3.70(3H, s), 3.61(2H, m), 3.40(1H, br), 2.65(2H, m)
13C-NMR(CDCl)δ172.2, 68.0, 52.0, 38.2, 38.8
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の方法によると、シアン化塩とエピクロロヒドリンをpH7〜8、特に7.3〜7.8の範囲で反応することによって、好ましくは室温、室圧でシアン化塩と無機酸を予め混合してpHを前記範囲に調整した後、そこにエピクロロヒドリンを添加して反応を遂行し、高純度の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを高収率で得ることができる。また、キラルエピクロロヒドリンを使用すれば高光学活性を持つ4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを得ることができる。さらにまた、4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルから1工程の反応で、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを高純度及び高収率で大量生産することができる。さらに、光学活性を持つ4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルからその光学純度を保持する、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを高収率及び高純度で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)
【化1】

のエピクロロヒドリンを式(3)
【化2】

(式中、Mはカチオンであり、そしてnは1〜3の整数である)
のシアン化塩と、7から8の範囲のpH条件下で、反応させて式(4)
【化3】

の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造する工程を含有してなる、式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルの製造方法。
【請求項2】
式(4)
【化4】

の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを
a)アルコール溶媒に溶解させた後、塩化水素と反応させるか、又は
b)塩化水素で飽和されたアルコール溶媒中で反応させて、式(1)
【化5】

(式中、RはC1−4アルキルである)
の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する工程を含有してなる、式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
1)式(2)
【化6】

のエピクロロヒドリンを式(3)
【化7】

(式中、Mはカチオンであり、そしてnは1〜3の整数である)
のシアン化塩と、7から8の範囲のpH条件下で、反応させて、式(4)
【化8】

の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを製造する工程、及び
2)
a)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルをアルコール溶 媒に溶解させた後、塩化水素と反応させるか、又は
b)式(4)の4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルを塩化水素で飽 和されたアルコール溶媒中で反応させて、
式(1)
【化9】

(式中、RはC1−4アルキルである)
の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルを製造する工程
を含有することよりなる、式(1)の4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
pHを7.3から7.8の範囲に調節する、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
シアン化塩溶液に無機酸を加えてpHを調節した後、エピクロロヒドリンを加える、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項6】
無機酸が塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、及びリン酸よりなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
無機酸が硫酸又は濃塩酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シアン化塩がシアン化ナトリウム又はシアン化カリウムである、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項9】
アルコール溶媒がメタノール又はエタノールである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項10】
塩化水素が無水塩化水素ガスである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項11】
4−クロロ−3−ヒドロキシブチロニトリルに対するアルコール溶媒の重量比が1.5:1から2.5:1の範囲内である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項12】
エピクロロヒドリン又は4−ヒドロキシブチロニトリルが光学活性を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523686(P2006−523686A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507807(P2006−507807)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000869
【国際公開番号】WO2004/092114
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(502345599)エルジー・ライフ・サイエンシーズ・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LG Life Sciences Ltd.
【Fターム(参考)】