説明

4−メチルピラゾールを使用してヒト対象を治療する遺伝子型特異的方法

本明細書で提供されるのは、アルコール脱水素酵素及びアルデヒド脱水素酵素遺伝子の特定の多型を発現している遺伝的亜集団の対象に、4-メチルピラゾール(4-MP)又は生理学的に許容し得るその塩を投与する方法である。本明細書で提供されるのは、また、エタノール不耐を予防又は改善する、或いはエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を低下又は改善する、或いはエタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害のリスクを低下させるための方法であって、これらの亜集団の対象に4-MP又は生理学的に許容し得るその塩を投与することを含む前記方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.相互参照)
本願は、2009年6月10日に出願の米国特許出願第61/185,884号(その開示の内容全体を参照により本明細書に組み込む)の利益を主張する。
【0002】
(2.技術分野)
本明細書で提供されるのは、アルコール脱水素酵素及びアルデヒド脱水素酵素遺伝子の特定の多型を発現している遺伝的亜集団の対象に、4-メチルピラゾール(4-MP)又は生理学的に許容し得るその塩を投与することを含む方法である。本明細書で提供されるのは、また、エタノール不耐を予防又は改善する、或いはエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を軽減又は改善する、或いはエタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害のリスクを低下させるための方法であって、これらの亜集団の対象に4-MP又は生理学的に許容し得るその塩を投与することを含む前記方法である。
【背景技術】
【0003】
(3.発明の背景)
エタノールは、ヒトでは、様々な社会的、娯楽的、及び医用目的で摂取される。過剰なエタノール摂取は、肝臓、脳、骨格筋、及び心筋を含めた広く様々な組織に傷害を引き起こし、また、公衆衛生上の相当な割合の罹患及び死亡に関与する。
【0004】
エタノールのこれらの影響の多くは、エタノール代謝中に2段階経路で産生されるアセトアルデヒドによって仲介される。この経路では、エタノールがアルコール脱水素酵素(ADH)によって酸化されてアセトアルデヒドとなり、アセトアルデヒドは続いて、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)、すなわちミトコンドリアの肝臓酵素によって速やかに酢酸に代謝される(図1参照)。
【0005】
ADH及びALDH遺伝子は、アルコール酸化能力の個人差を加減する多型を示す(Bosronらの文献、Hepatology 1986, 6, 502-510)。東アジアの人々は、R47Hアミノ酸置換を伴う、ADH酵素をコードするアルコール脱水素酵素サブタイプ2(ADH2*2)の変異型対立遺伝子をもつ(Matsuoらの文献、Carcinogenesis 2006, 27(5), 1018-1023; Tamakoshiらの文献、Alcohol 2003, 38, 407-410)。H47 ADH酵素は、「超活性」であり、「通常の」対立遺伝子(ADH2*1)によってコードされる、より活性の低いR47 ADH酵素よりも、約40倍高いVmaxを示す(Bosronらの文献、Hepatology 1986, 6, 502-510; Yoshidaらの文献、Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 1991, 40, 255-287)。ADH2*2対立遺伝子は、アセトアルデヒドの蓄積に関連している(Crabbらの文献、Proc. Nutr. Soc. 2004, 63(1), 49-63)。
【0006】
東アジアの人々によく見られるのは、また、E487Kアミノ酸置換を伴う、ALDH酵素をコードするアルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2*2)の変異型対立遺伝子である(Chenらの文献、Am. J. Hum. Genet. 1999, 65(3), 795-807)。K487 ALDH酵素は、「通常の」対立遺伝子(ALDH2*1)によってコードされる、より活性の高いE487 ALDH2酵素と比較すると、アセトアルデヒド排出の速度が40%〜90%低下することとなるような、活性の低下を示し、その結果、この変異型対立遺伝子を発現している人は、ALDH2活性の低下又は欠如を示す。
【0007】
アセトアルデヒドは、顔面紅潮、頻脈、息切れ、めまい、吐き気、嘔吐、及び頭痛などの急性症状に、また、上部消化管の癌、乳癌、肝疾患、アルツハイマー病、高血圧、及び心筋梗塞の長期的健康リスクの増大に関連付けられる(Visapaaらの文献、Gut 2004, 55, 871-876; Yokoyamaらの文献、Jpn. J. Clin. Oncol. 2003, 33(3), 111-121; Ohsawaらの文献、J. Hum. Genet. 2003, 48, 404-409; 及びこれらの文献中に引用された参考文献を参照されたい)。ALDH2活性が低下又は欠如しているALDH2*2対立遺伝子を発現している人々は、少量のエタノールを飲むと、アルコールに対する感受性、例えば、顔面紅潮、頻脈などを示す(Goeddeらの文献、Hum. Genet. 1992, 88, 344-346; Xiaoらの文献、J. Clin. Invest. 1995, 96, 2180-2186)。したがって、ALDH2活性が低下又は欠如している人々におけるアセトアルデヒドレベルを低下させることは、これらの人々がエタノールを摂取した時に見舞われる急性系(system)及び長期的健康リスクを低下させるのに役立つ可能性がある。
【0008】
4-メチルピラゾール(フォメピゾール又は4-MPとしても知られている)の投与は、アセトアルデヒドレベル上昇の症状を改善することが示されている。例えば、WO 2005/085392及び特開昭57-106620号公報を参照されたい。しかし、4-MP治療は、すべてのヒト遺伝的亜集団に適しているわけではないことが次第に明らかになりつつある。4-MPを用いる有効な治療に寄与する個別の遺伝因子に関する追加情報が求められている。
【発明の概要】
【0009】
(4.発明の概要)
一態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール不耐又はアセトアルデヒド蓄積の症状を予防、軽減、又は改善するための方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。
【0010】
ある態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール不耐の症状を予防又は改善するための方法であって、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を対象に投与することを含む前記方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。
【0011】
ある態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防、軽減、又は改善するための方法であって、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を対象に投与することを含む前記方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。ある実施態様では、アセトアルデヒド蓄積は、エタノール摂取に付随する。
【0012】
対象におけるエタノール不耐又はアセトアルデヒド蓄積の症状は、例えば、紅潮、心拍数上昇、動悸、低血圧、吐き気、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、胃の不調(upset stomach)、運動失調、及び意識の混乱からなる群から選択することができる。
【0013】
別の態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)が低下又は欠如している対象における、エタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害の可能性又はリスクを低下させるための方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。エタノールの摂取に関連する状態又は疾患としては、例であり限定はされないが、二日酔い、アルコール性胃炎、アルコール誘発性肝臓障害、上部気道消化管癌、消化管癌、乳癌、遅発型アルツハイマー病、高血圧、心筋梗塞、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び脳虚血を含めることができる。好ましい実施態様では、エタノールの摂取に関連する疾患としては、上部気道消化管癌、消化管癌、乳癌、遅発型アルツハイマー病、高血圧、心筋梗塞、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び脳虚血が含まれる。
【0014】
ある実施態様では、エタノールの摂取によって引き起こされる、対象における疾患又は障害の可能性又はリスクを低下させるための方法であって、該対象におけるアセトアルデヒドの異化を増大させるのに有効な量の4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を、投与の必要がある対象に投与し、これによって、アセトアルデヒドへの暴露によって引き起こされる、対象における疾患又は障害の可能性又はリスクを低下させることを含む前記方法が提供される。ある実施態様では、アセトアルデヒドは、エタノール摂取の産物である。
【0015】
ある実施態様では、提供される方法は、対象の体重1キログラムあたり約0.1mgから約5mgの4-MP、又は生理学的に許容し得る塩の形の同等量の4-MPを対象に投与することを含む。ある実施態様では、提供される方法は、対象の体重1キログラムあたり約0.1mgから約4mgの4-MP、又は生理学的に許容し得る塩の形の同等量の4-MPを対象に投与することを含む。ある実施態様では、提供される方法は、対象の体重1キログラムあたり約1mgから約4mgの4-MP、又は生理学的に許容し得る塩の形の同等量の4-MPを対象に投与することを含む。
【0016】
ある実施態様では、提供される方法は、対象の体重1キログラムあたり約0.1mgから約5mg、約0.1mgから約4.5mg、約0.1mgから約4mg、約0.1mgから約3.5mg、約0.1mgから約3mg、約0.1mgから約2.5mg、約0.1mgから約2mg、約0.1mgから約1.5mg、約0.1mgから約1mg、約0.1mgから約0.5mg、約1mgから約4.5mg、約1mgから約4mg、約1mgから約3.5mg、約1mgから約3mg、約1mgから約2.5mg、約1mgから約2mg、約1mgから約1.5mg、約0.1mgから約3mg、約0.5mgから約2mg、若しくは約2mgから約4mgの4-MP、又は生理学的に許容し得る塩の形の同等量の4-MPを対象に投与することを含む。
【0017】
ある実施態様では、提供される方法は、対象の体重1キログラムあたり約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、約3.5mg、約4mg、約4.5mg、若しくは約5mgの4-MP、又は生理学的に許容し得る塩の形の同等量の4-MPを対象に投与することを含む。
【0018】
ある実施態様では、4-MPは、経口的に投与される。
【0019】
ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取する前に経口的に投与される。
【0020】
ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取する約2時間から約15分前に経口的に投与される。
【0021】
他の実施態様では、4-MPは、対象のエタノールの摂取と同時に、又は、対象がエタノールを摂取した後に、経口的に投与される。
【0022】
ある実施態様では、対象のエタノール排出速度の低下率は、4-MPが投与されていない対象のエタノール排出速度と比較して約10%以下である。
【0023】
ある実施態様では、該方法は、アセトアルデヒド蓄積を、4-MPが投与されていない対象と比較して約25%から約60%低下させる、有効量の4-MPを投与することを含む。
【0024】
ある実施態様では、該方法は、対象におけるアルコール脱水素酵素のエタノール-酸化活性を低下又は阻害するのに有効な量の4-MP又は4-MPの生理学的な許容し得る塩を投与することを含む。
【0025】
ある実施態様では、4-MPの有効量の塩酸塩が投与される。
【0026】
ある実施態様では、対象のALDH2及びADH2遺伝子型は、4-MPの投与の前に判定される。
【0027】
別の態様では、対象への経口投与に適した、4-MP又は生理学的に許容し得るその塩と、生理学的に許容し得る賦形剤とを含む組成物が提供される。
【0028】
ある実施態様では、該組成物は、ALDH2活性が低下又は欠如している対象における、エタノール不耐の症状、又はエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防、軽減、又は改善するために使用することができる。ある実施態様では、該組成物を、ALDH2活性が低下又は欠如している対象におけるエタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害のリスクを低下させるために使用することができる。
【0029】
さらなる態様では、ALDH2活性が低下又は欠如している対象における、エタノール不耐の症状、又はエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防、軽減、又は改善するための、場合によっては医薬品の製造における、4-MP又は医薬として許容し得るその塩の使用が提供される。
【0030】
さらなる態様では、ALDH2活性が低下又は欠如している対象における、エタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害のリスクを低下させるための、場合によっては医薬品の製造における、4-MP又は医薬として許容し得るその塩の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
(5.図面の説明)
【図1】エタノールの代謝。
【0032】
【図2】ALDH2活性が低下しており、ADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある対象において測定された平均血清中アセトアルデヒド濃度のグラフ。1mg/kg 4-MPでの投薬後(黒丸);プラセボを用いる対照(白丸)。
【0033】
【図3】ALDH2活性が低下又は欠如しており、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象において測定された平均血清中アセトアルデヒド濃度のグラフ。1mg/kg 4-MPでの投薬後(黒丸);プラセボを用いる対照(白丸)。
【0034】
【図4】ALDH2活性が低下又は欠如しているすべての対象にわたる平均血清中アセトアルデヒド濃度のグラフ。4-MPでの投薬後(黒丸);プラセボを用いる対照(白丸)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(6.用語論)
一般に、本明細書で使用する用語法、並びに本明細書に述べる医薬品化学、生化学、及び薬理学における実験手順は、当分野で周知でありかつ通常用いられるものである。別段の定義のない限り、本明細書に使用される技術及び科学用語はすべて、概してこの開示が属する分野の技術者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語について、複数の定義が存在する場合には、別段の記述のない限り、このセクションの定義が優先される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「約」は、+/-10%の範囲を指す。例えば、「約4mg 4-MP」は、3.6mgから4.4mgまでの4-MPの範囲を意味する。
【0037】
用語「対象」とは、限定はされないが、霊長類(例えばヒト)、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、シカ、クマ、ラット、マウスなどを含めた哺乳類などの動物をいう。好ましい実施態様では、対象は、ヒトである。
【0038】
用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」とは、本明細書で使用される場合、障害及び/又は障害に伴う症状を緩和又は抑制する方法をいう。
【0039】
用語「予防する」、「予防すること」、又は「予防」とは、ある実施態様では、対象に障害及び/又は障害に伴う症状がもたらされるのを避ける方法をいう。ある実施態様では、用語「予防する」、「予防すること」、又は「予防」とは、障害及び/又は障害に伴う症状がもたらされる、対象の可能性又はリスクを低下させる方法をいう。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「生理学的に許容し得る塩」とは、本発明の化合物の比較的毒性のない無機及び有機の酸付加塩をいう。
【0041】
表現「エタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積の症状」とは、本明細書で使用される場合、エタノールを摂取した時に、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象が見舞われるいかなる症状もいう。症状としては、限定はされないが、紅潮、心拍数上昇、動悸、低血圧、吐き気、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、胃の不調、運動失調、又は意識の混乱を含めることができる。
【0042】
表現「アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象」とは、Goeddeらの文献、Hum. Genet. 1992, 88, 344-346、及びXiaoらの文献、J. Clin. Invest. 1995, 96, 2180-2186(その内容全体を参照により本明細書に組み込む)に記載されている通りの、ALDH2遺伝子の変異型ALDH2*2対立遺伝子のホモ接合型又はヘテロ接合型の保因者である対象をいう、或いは、Xiaoらの文献、J. Clin. Invest. 1995, 96, 2180-2186に記載されているアルデヒド脱水素酵素活性アッセイによって決定される場合に正常型のALDH2酵素よりも低い活性を示すような、いかなる変異型ALDH2酵素も発現する対象をいう。
【0043】
表現「対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)、又は、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である」とは、「通常の」ADH2*1対立遺伝子のホモ接合型又はヘテロ接合型の保因者である対象をいう。
【0044】
本明細書で使用される場合、「エタノール不耐」とは、対象が、エタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積の症状に見舞われるような状態をいう。
【0045】
本明細書で使用される場合、「エタノール排出速度」とは、対象がエタノールを摂取した後の、該対象の血流中のエタノール濃度の経時的な低下をいう。通常、エタノール排出速度は、エタノール(ミリモル)/対象の体重(キログラム)/(時間)に換算して表すことができる。血液採取、及び血液中のエタノールレベルの分析のための技術は、当分野の技術者に周知である。例えば、Inoueらの文献、Alcoholism: Clinical and Experimental Research 1984, 8, 319-322(その内容全体を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。「エタノール排出速度の変化率」は、以下の通りに算出することができる:
【数1】

ここで、EtOHは、エタノールを表し、エタノール排出の変化率の100未満である数値は、EtOH排出の変化率の低下である。血中エタノールレベルはまた、例えば、対象によるエタノール摂取の量、対象の体重、及びエタノールの摂取後の期間を利用するアルゴリズムに基づいて算出することもできる。或いは、別の例として、血中エタノールレベルは、対象の呼気などの、当分野の技術者に公知である通りの分析値から推定することもできる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「アセトアルデヒド蓄積」とは、エタノールを摂取した対象におけるアセトアルデヒドの産生をいう。血液採取、及び血液中のアセトアルデヒドレベルの分析のための技術は、当分野の技術者に周知である。例えば、Inoueらの文献、Alcoholism: Clinical and Experimental Research 1984, 8, 319-322を参照されたい。例えば、Stowellの文献、Clin. Chim. Acta. 1979, 98, 201-5、McCarver-Mayらの文献、Journal of Analytical Toxicology 1997, 21, 134-141、及びNagyらの文献、Rapid Communications in Mass Spectrometry 2004, 18, 2473-2478(これらの内容全体を参照により本明細書に組み込む)も参照されたい。通常、アセトアルデヒド蓄積の最大濃度には、ALDH2活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール摂取の15分から1時間後に到達する。「アセトアルデヒド蓄積の変化率」が、本明細書で使用される場合、これは、ALDH2活性が低下又は欠如している対象におけるアセトアルデヒドの最大濃度の変化(これは、以下の通りに算出することができる)を意味するものと理解されよう:
【数2】

ここで、アセトアルデヒド蓄積の変化率の100未満である数値は、アセトアルデヒド蓄積の変化率の低下である。血中アセトアルデヒド濃度はまた、対象の呼気の分析から、又は、心拍数又は紅潮などの当分野の技術者に公知である通りの他のパラメータの測定可能な生理学的変化から推定することもできる。
【0047】
本明細書で定義する場合、4-MPの質量、例えば「2mg 4-MP」を述べる場合、その量とは、その遊離塩基の形の4-MPの同等量をいう。したがって、例えば、ある塩の形の2mg 4-MPが、本明細書に開示する方法で投与されることとなる場合、当分野の技術者は、塩の形の4-MPの分子質量と、遊離塩基の形の4-MPの分子質量を用いて、必要な変換を行って、遊離塩基の形の同等量の2mg 4-MPを得るのに必要な、塩の形の4-MPの実際の質量を決定することができる。別の例では、遊離塩基の形の2mg 4-MPが、本明細書に開示する方法で投与されることとなる場合、変換は必要ない。
【0048】
用語「有効量」とは、本明細書で使用される場合、例えば、アルコール脱水素酵素という酵素と接触した場合に、又は、別の例としては、対象に投与された場合に、所望の又は有益な効果をもたらすのに十分である、4-MP又は生理学的に許容し得るその塩の量をいう。ある実施態様では、「有効量」は、例えば、対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防、軽減、又は改善する、或いは、エタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害の、対象における可能性又はリスクを低下させる量である。
【0049】
用語「症状」は、本明細書で使用される場合、「徴候」と交換可能である。したがって、本明細書で使用される場合、「症状」とは、特定の疾患若しくは障害を患う対象に認められる、又は、前記対象からの言葉による情報無しに対象以外の人に認められる、特定の病気若しくは障害が表れる身体的状態(例えば、ロングマン現代英英辞典(Longman Dictionary of Contemporary English) 1995. 第3版)をいう。
【0050】
用語「AUC」とは、本明細書で使用される場合、対象への4-MPの投与後の、時間に対する血清アセトアルデヒド濃度のプロットの曲線下面積をいう。ある実施態様では、AUCは、0から8時間に境界設定される(AUC0-8H)。
【0051】
用語「AUC平均」とは、本明細書で使用される場合、サンプル集団の対象への4-MPの投与後の、時間に対する平均血清アセトアルデヒド濃度のプロットの曲線下面積をいう。ある実施態様では、AUC平均は、0から8時間に境界設定される(AUC0-8H平均)。
【0052】
用語「Cmax」とは、本明細書で使用される場合、対象への4-MPの投与後の最大血清アセトアルデヒド濃度をいう。
【0053】
用語「Cmax平均」とは、本明細書で使用される場合、サンプル集団の対象への4-MPの投与後の、平均最大血清アセトアルデヒド濃度をいう。
【0054】
用語「P値」とは、本明細書で使用される場合、ある結果を得る確率をいう。P値が低いほど、可能性が低いので、結果の統計的有意性は高くなる。ある実施態様では、0.05のP値は、ある結果を得る5%の偶然性に相当する。
【0055】
用語「SE」とは、本明細書で使用される場合、サンプル集団の平均値の標準誤差をいう。ある実施態様では、SEとは、サンプル集団において測定されるサンプルデータから算出される標準偏差の推定値をいう可能性がある。
【0056】
(7.発明の詳細な説明)
本発明は、アルコール脱水素酵素及びアルデヒド脱水素酵素遺伝子の特定の多型を発現している遺伝的亜集団の一員である対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する不都合な生理的症状の重症度を軽減又は改善する、或いは該症状を予防するのに有用な方法を提供する。
【0057】
下に説明する通り、提供される方法は、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩の投与を含む。いかなる特定の理論や機序にも拘泥されることを意図しないが、4-MPは、アルコール脱水素酵素(ADH)を阻害するように働き、エタノールの摂取に起因するアセトアルデヒド産生の蓄積を低下させると考えられる。いかなる特定の理論や機序にも拘泥されることを意図しないが、下に特定するアルコール不耐のヒト対象の、ある遺伝的亜集団は、本明細書に記述する方法によって恩恵を受ける可能性が高いであろうのに対して、下に特定するアルコール不耐のヒト対象の、他の遺伝的亜集団は、本明細書に記述する方法によって恩恵を受ける可能性が低いであろうとも考えられる。
【0058】
(7.1.ALDH2及びADH2遺伝子の特定の多型を発現しているヒト対象の遺伝的亜集団におけるエタノール不耐の症状、又はアセトアルデヒド蓄積の症状を予防又は改善するための方法)
一態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール不耐又はアセトアルデヒド蓄積の症状を予防、軽減、又は改善するための方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。
【0059】
ある実施態様では、該方法は、4-メチルピラゾール(4-MP)を対象に投与することを含む。
【0060】
4-メチルピラゾール(4-MP、フォメピゾールとしても知られている)は、例えば、Sigma Aldrich社(St. Louis, MO)を含めた化学薬品製造業者から市販品として入手できるし、医薬品等級の商業的に存立可能な量で容易に合成することもできる。
【0061】
ある実施態様では、対象のALDH2及びADH2遺伝子型は、4-MPの投与の前に判定される。
【0062】
ある実施態様では、該方法は、対象の体重1キログラムあたり約1mgから約4mgの4-MPを該対象に投与することを含む。
【0063】
ある実施態様では、該方法に使用するための化合物は、4-MPの遊離塩基である。他の実施態様では、4-MPの生理学的に許容し得る塩を、該方法に使用することができる。ある実施態様では、4-MP塩酸塩を、本明細書に記述する方法に使用することができる。
【0064】
4-MPは、単独で、又は他の物質若しくは活性な薬剤と組み合わせて投与することができる。ある実施態様では、4-MPと、下に記述する通りの他の成分とを含む組成物が投与される。
【0065】
4-MPは、当分野の技術者に公知のいかなる技術に従って投与することもできる。ある実施態様では、4-MPは、経皮的に送達させることができる。より好ましい実施態様では、対象は、4-MPを、自分自身で投与することができる。より好ましい実施態様では、4-MPは、経口的に投与することができる。経口的に投与される場合、4-MPは、固体剤形で、例えば、散剤、錠剤、カプセルなどとして、又は液体剤形であり得る。
【0066】
ある実施態様では、投与される4-MPの量は、約0.1mg/kgから約5mg/kgとすることができる。ある実施態様では、投与される4-MPの量は、約0.1mg/kgから約4mg/kgとすることができる。ある実施態様では、投与される4-MPの量は、約1mg/kgから約5mg/kgとすることができる。ある実施態様では、投与される4-MPの量は、約1mg/kgから約4mg/kgとすることができる。当分野の技術者には明らかであろう通り、投与されることとなる4-MPの量は、本明細書に記述する通り、キログラムで表される対象の体重に基づく。いくつかの実施態様では、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、又は約5mg/kgの4-MPが、アルデヒドALDH2活性が低下又は欠如している対象に投与される。ある実施態様では、投与される4-MPの量は、0.1mg/kgから3mg/kgの範囲内、0.5mg/kgから2mg/kgの範囲内、又は2mg/kgから4mg/kgの範囲内とすることができる。
【0067】
ある実施態様では、投与される4-MP又は生理学的に許容し得るその塩の量は、対象におけるアルコール脱水素酵素のエタノール-酸化活性を軽減又は阻害するのに有効であり得る。
【0068】
ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取する前に投与することができる。ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取する約1分、約15分、又は約1時間前に投与することができる。ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取する約2時間から約15分前に経口的に投与することができる。
【0069】
ある実施態様では、4-MPは、エタノールの摂取と同時に投与することができる。ある実施態様では、4-MPは、エタノールの摂取の直前又は直後に投与することができる。ある実施態様では、4-MPは、対象がエタノールを摂取した後に、該対象に投与することができる。
【0070】
対象がエタノールの影響下にある期間が比較的長いという結果を避けるために、随伴するエタノール排出速度の低下を伴わずに、ALDH2活性が低下又は欠如している対象の血液中のアセトアルデヒドのピーク濃度を最小にすることが、特に有利であり得る。本明細書で企図される、ある用量の4-MP、すなわち約0.1mg/kgから約4mg/kgを用いると、エタノール排出速度の低下率を、下に論述する通りに、無視できるほど又は最小限にしか影響を受けない程度にすることができる。
【0071】
ある実施態様では、エタノール排出の低下率が、約0%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、又は約6%、乃至約10%以下の範囲であるような、4-MPの投与を含む方法が提供される。例えば、4-MPで治療されていない対象のエタノール排出速度が2.50mmol/kg/hrで、4-MPを投与されるとエタノール排出速度が2.30mmol/kg/hrである場合、エタノール排出の低下率は8%である。
【0072】
ある実施態様では、対象のエタノール排出速度の低下率を、低下無し又は1〜2%の低下から、約7%、約8%、約9%、又は約10%未満の低下の範囲にすることができる方法が提供される。ある実施態様では、提供される方法は、エタノール排出を約5%から約10%低下させることとなる。ある実施態様では、対象のエタノール排出速度の低下率は、4-MPで治療されていない対象のエタノール排出速度と比較して約10%以下である。
【0073】
当該の方法において企図される4-MPの用量を用いると、血中アセトアルデヒド濃度ピークの低下率を、ALDH2活性が低下している対象において下げることができる。
【0074】
ある実施態様では、提供される方法は、ALDH2活性が低下又は欠如している対象においてアセトアルデヒド蓄積を、対象に4-MPが投与されていない場合と比較して約50%から約60%低下させることができる。ある実施態様では、アセトアルデヒド蓄積ピークを、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は約5%、効果的に除去又は低下させることができる。
【0075】
ある実施態様では、提供される方法は、紅潮、心拍数上昇、動悸、低血圧、吐き気、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、胃の不調、運動失調、又は意識の混乱からなる群から選択される、対象におけるエタノール不耐又はアセトアルデヒド蓄積の症状を予防又は改善する。
【0076】
(7.2.ALDH2及びADH2遺伝子の特定の多型を発現しているヒト対象の遺伝的亜集団における、エタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害の、対象における可能性又はリスクを低下させるための方法)
別の態様では、アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象における、エタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害の可能性又はリスクを低下させるための方法が提供される。ある実施態様では、対象はまた、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である。
【0077】
ある実施態様では、該方法に使用するための化合物は、4-MPの遊離塩基である。他の実施態様では、4-MPの生理学的に許容し得る塩を、該方法に使用することができる。ある実施態様では、4-MP塩酸塩を、本明細書に記述する方法に使用することができる。
【0078】
ある実施態様では、該方法は、対象の体重1キログラムあたり約1mgから約4mgの4-MPを該対象に投与することを含む。
【0079】
ある実施態様では、対象のALDH2及びADH2遺伝子型は、4-MPの投与の前に判定される。
【0080】
ある実施態様では、該方法は、対象におけるアセトアルデヒドの異化を増大させることによって、アセトアルデヒドへの暴露によって引き起こされる、対象における疾患又は障害の可能性又はリスクを低下させるのに有効である。
【0081】
ある実施態様では、アセトアルデヒドは、対象によるエタノール摂取の産物である。
【0082】
ある実施態様では、疾患又は障害は、上部気道消化管癌、消化管癌、又は乳癌を含む。さらなる実施態様では、上部気道消化管癌は、食道、中咽頭、下咽頭、喉頭、頭頸部癌を含む。さらなる実施態様では、消化管癌は、胃又は大腸癌を含む。
【0083】
ある実施態様では、疾患又は障害は、遅発型アルツハイマー病、高血圧、心筋梗塞、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び脳虚血を含む。
【実施例】
【0084】
(8.実施例)
(8.1.ALDH2及びADH2遺伝子の特定の多型を発現しているヒト対象の遺伝的亜集団におけるアセトアルデヒド濃度を軽減すること)
この実施例は、ALDH2及びADH2遺伝子の特定の多型を発現しているヒト対象の遺伝的亜集団における、エタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積を低下させるために、4-MPが働くことを実証する。
【0085】
(8.1.1.方法)
エタノール代謝の先天的変化の症状を患う対象における、エタノール暴露に伴う、アセトアルデヒド関連の毒性の緩和に関する、4-MPの盲検的な対象内コントロール型の単回投与の用量漸増研究を行った。
【0086】
エタノール摂取後の紅潮、心臓の動悸、及び/又は吐き気という既往歴と、皮膚エタノールパッチテストに対する陽性の結果の呈示とによって、エタノールに対して不耐であることが分かっている、日系の32人の(n=32)健康な21から50歳のヒト対象を、研究集団に選んだ。
【0087】
24人の対象(n=24)をランダムに選択し、1mg/kg、3mg/kg、又は5mg/kgの4-MPを経口投与し、その30分後に20%エタノール(5mg/kg)の経口量を、経口投与した。投薬プロトコルを、表1に示す。
【表1】

【0088】
4-MPをプラセボと置き換えて同じプロトコルを使用して、ランダムに選択したこの24人の対象の各々を、自らの対照とした。
【0089】
次いで、ランダムに選択したこの24人の対象に血液採取を行い、採取した血液を、エタノール摂取後の選択された時点でのアセトアルデヒドレベルについて分析した。
【0090】
アセトアルデヒド分析のために、内部標準(アセトアルデヒド-d4)での希釈、ジニトロフェニルヒドラジンの塩酸溶液を用いるアセトアルデヒドの誘導体化、液液分配、及び溶媒交換によって、血液サンプルを調製した。この誘導体化によって、アセトアルデヒド-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体が形成され、この分子の沸点、ひいてはアセトアルデヒドそれ自体と比較した相対的安定性が劇的に上昇する(Nagyらの文献、Rapid Communications in Mass Spectrometry 2004, 18, 2473-2478)。誘導体化された分析物を、28℃に設定したオーブン内で行うJones Chromatography(Grace-Vydac社)(50mm×2.1mm、3μmカラム)を使用して分離した。0.1%ギ酸を含む、30:70アセトニトリル:水と、90:10アセトニトリル:水からなる2種の移動相を、グラジエントで使用した。この誘導体化された分析物を、質量分析計を備え付けた高速液体クロマトグラフ(HPLC/MS/MS)で検出した。アセトアルデヒドの水への希釈によって調製した、1/x重み付けを用いる不純物標準の線形回帰曲線適合を使用して、定量化を行った。サンプル及び標準物質は、2μLで注入した。
【0091】
次いで、32人の対象をすべて、Indiana UniversityのAlcohol Research Centerで、(i)ゲノムDNA単離及び(ii)対立遺伝子識別のためのTaqManアッセイを使用して、ALDH2及びADH2について遺伝子型同定した。
i.ゲノムDNA単離:PCRクオリティのゲノムDNAを単離するための「HotSHOT」法(Truettらの文献、Biotechniques 2000, 29(1), 52, 54)を使用して、まずDNAを単離した。簡単に言うと、濾紙(3mm円)上にブロットした血液を、96ウェルプレートのウェルに入れ、75μL 25mM NaOH/0.3mM EDTA溶液と混合し、40分間95℃に加熱し、その後、75μL 40mM Tris-HCl(pH5)溶液で中和した。各PCRのために、1〜5マイクロリットルを使用した。
ii.対立遺伝子識別のためのTaqManアッセイ:この対立遺伝子識別アッセイは、多重化された(1反応あたり2以上のプライマー/プローブ対の)、エンドポイント(PCRプロセスの最後にデータを収集する)アッセイを使用した。各アッセイミックスは、VIC又はFAM蛍光レポーター色素で標識された2種の異なるTaqManプローブ(Applied BioSystems社, Foster City, CA)(対立遺伝子の一方に選択的に結合する)を含有していた。各サンプルの遺伝子型を、レポーター色素の蛍光レベルによって判定し、同じ遺伝子型の他のサンプルと共に、グラフ上でクラスタ化した。各反応物は、5μLの2X TaqMan Universal PCR Mastermix, No AmpErase UNG、3.75μLの水、0.25μLの40X Assay Mix、及び1μLのDNAサンプルを含有していた。各96ウェルプレートには、8又は11のコントロール、すなわち2つのテンプレート無しのコントロール、2又は3のヘテロ接合型サンプル、及び2又は3のそれぞれのホモ接合型サンプルを含んだ。MJ Research PTC-200熱循環器内で、熱循環を実施した。次いで、PCR産物を、ABI PRISM(登録商標)7300 Sequence Detection System (SDS)装置で分析した。SDS Software 1.3.1によって、生データを純粋な色素成分に変換し、対立遺伝子X-対-対立遺伝子Y(例えばADH2*1対ADH2*2)の散布図に、対立遺伝子識別の結果をプロットした;各遺伝子型は、点の集合としてグラフ上に現れた。
【0092】
上で述べたALDH2及びADH2遺伝子型同定に基づくと、対象は、7つの遺伝子型群(A、B、C、D、E、F、及びG群)に分類されることが判明した:
A群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ALDH2*1/ALDH2*2)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1);この群の対象は2人(n=2)であった;
B群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*2についてホモ接合型(ALDH2*2/ALDH2*2)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1);この群の対象は1人(n=1)であった;
C群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ALDH2*1/ALDH2*1)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2);この群の対象は4人(n=4)であった;
D群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ALDH2*1/ALDH2*2)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2);この群の対象は6人(n=6)であった;
E群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ALDH2*1/ALDH2*1)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*2についてホモ接合型(ADH2*2/ADH2*2);この群の対象は5人(n=5)であった;
F群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ALDH2*1/ALDH2*2)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*2についてホモ接合型(ADH2*2/ADH2*2);この群の対象は13人(n=13)であった;並びに
G群:アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2*2についてホモ接合型(ALDH2*2/ALDH2*2)、かつアルコール脱水素酵素サブタイプ2*2についてホモ接合型(ADH2*2/ADH2*2);この群の対象は1人(n=1)であった。
【0093】
表2は、32人の対象の各々のADLH2及びADH2遺伝子型を示す。
【表2】

【0094】
上で述べた7群の各々の対象の血液サンプルから測定されたアセトアルデヒド濃度に関するデータを、遺伝子型の関数として比較した。
【0095】
(8.1.2.結果)
(8.1.2.1. A及びD群)
図2は、ALDH2活性が低下しており、ADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある6人の対象(n=6)(A及びD群)において、1mg/kg 4-MPでの投薬後に測定された平均血清中アセトアルデヒド濃度、及びプラセボを用いる対照のグラフを示す。
【0096】
表3は、当分野の技術者に公知である標準の数学的モデルを使用して図2に示されたデータから算出した「Cmax平均」及び「AUC0-8H平均」の薬物動態パラメータを示す。P値及び標準誤差は、データの統計分析から決定し、また、表3に示した。
【表3】

【0097】
図2は、ALDH2活性が低下し、ADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある対象において、エタノールの飲酒による血液中の平均アセトアルデヒド濃度ピークを、1mg/kg 4-MPでの投与後に下げることができることを実証する。
【0098】
表3は、エタノールの飲酒による血液中のアセトアルデヒド濃度のCmax平均及びAUC0-8H平均を、ALDH2活性が低下しており、ADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある対象において、エタノール飲酒後の4-MP無しの該対象におけるCmax平均及びAUC0-8H平均と比較して、1mg/kg 4-MPでの投与後に有意に下げることができることを実証する。例えば、表3によれば、プラセボと比較して、Cmax平均は、64.7±8.4μg/mgから41.3±5.2μg/mgに下がり、AUC0-8H平均は、186±14.8μg*hr/mLから162±18.7μg*hr/mLに下がる。Cmax平均の低下は、およそ36%の低下に相当する。
【0099】
これらの結果は、1mg/kg 4-MPが、ALDH2活性が低下しており、例えばADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある対象の、ある遺伝的亜集団における、エタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積を軽減するのに有効であるということを実証する。
【0100】
(8.1.2.2. F及びG群)
図3は、ALDH2活性が低下又は欠如しており、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある6人の対象(n=6)(F及びG群)において、1mg/kg 4-MPでの投薬後に測定された平均血清中アセトアルデヒド濃度、及びプラセボを用いる対照のグラフを示す。
【0101】
表4は、当分野の技術者に公知である標準の数学的モデルを使用して図3に示されたデータから算出した「Cmax平均」及び「AUC0-8H平均」の薬物動態パラメータを示す。P値及び標準誤差は、データの統計分析から決定し、また、表4に示した。
【表4】

【0102】
図3は、ALDH2活性が低下又は欠如しており、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象では、エタノールの飲酒による血液中の平均アセトアルデヒド濃度ピークは、1mg/kg 4-MPでの投与後に下がらないことを実証する。
【0103】
表4は、エタノールの飲酒による血液中のアセトアルデヒド濃度のCmax平均及びAUC0-8H平均は、ALDH2活性が低下又は欠如しており、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象では、エタノール飲酒後の4-MP無しの該対象におけるCmax平均及びAUC0-8H平均と比較して、1mg/kg 4-MPでの投与後に有意には下がらないことを実証する。
【0104】
これらの結果は、ALDH2活性が低下又は欠如しており、例えば、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象の、ある遺伝的亜集団は、ある用量の4-MP、例えば1mg/kg 4-MPの投与によって恩恵を受ける可能性が低いことを示す。この結果は、アルコール不耐のヒト対象における4-MPの投与に対する反応の差の存在を示す。
【0105】
(8.1.2.3. A、B、D、F、及びG群)
図4は、ALDH2活性が低下又は欠如している23人の対象(n=23)(A、B、D、F、及びG群)にわたる、1mg/kg、3mg/kg、又は5mg/kg 4-MPでの投薬後に測定された平均血清中アセトアルデヒド濃度、及びプラセボを用いる対照のグラフを示す。
【0106】
表5は、当分野の技術者に公知である標準の数学的モデルを使用して図4に示されたデータから算出した「Cmax平均」及び「AUC0-8H平均」の薬物動態パラメータを示す。P値及び標準誤差は、データの統計分析から決定し、また、表5に示した。
【表5】

【0107】
図4は、ALDH2活性が低下又は欠如しているすべての対象にわたって、エタノールの飲酒による血液中の平均アセトアルデヒド濃度ピークは、1mg/kg、3mg/kg、又は5mg/kg 4-MPでの投与後に下がらないことを実証する。
【0108】
表5は、エタノールの飲酒による血液中のアセトアルデヒド濃度のCmax平均及びAUC0-8H平均は、ALDH2活性が低下又は欠如しているすべての対象では、エタノール飲酒後の4-MP無しの該対象におけるCmax平均及びAUC0-8H平均と比較して、1mg/kg、3mg/kg、又は5mg/kg 4-MPでの投与後に有意には下がらないことを実証する。
【0109】
これらの結果は、ALDH2活性が低下又は欠如しており、例えば、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象の、ある遺伝的亜集団は、1〜5mg/kgの範囲の用量の4-MPの投与によって恩恵を受ける可能性が低いことを示す。
【0110】
まとめると、上の研究は、アルコール不耐のヒト対象における4-MPの投与に対する反応の差の存在を示す:すなわち、アルコール不耐のヒト対象、例えば、ALDH2活性が低下しており、ADH2*1/ADH2*1ホモ接合型又はADH2*1/ADH2*2ヘテロ接合型でもある対象の、ある遺伝的亜集団は、アルコール不耐のヒト対象、例えば、ALDH2活性が低下しており、ADH2*2/ADH2*2ホモ接合型でもある対象の、他の亜集団よりも、1〜5mg/kgの範囲の4-MPの投与によって恩恵を受ける可能性が高い。
【0111】
(8.2.ヒト対象への4-MPの投与例)
下の例で、ヒト対象への4-MPの例示的投与を説明する。
【0112】
遊離塩基、液体の形の4-MPを、オレンジジュースと混合し、0.5%(w/v)4-MP溶液を作製する。この4-MPは、4-MPが投与される予定の異なる体重の人々に使用されることとなるように、溶液の様々な量を示す印を付けた付属の投薬用カップを備えた、容器中で保管することができる。エタノールを飲酒する予定の、ALDH2活性が低下又は欠如している体重75kgの人のために、約60ミリリットルの4-MPを投薬用カップに注ぐと、ALDH2活性が低下又は欠如しているこの人物は、アルコールを飲酒する数分又は数時間前に、カップから4-MP溶液を飲むことができる。
【0113】
上の発明を、理解を確実にする目的で、実例及び実施例として、ある程度詳細に記述してきたが、ある種の変更及び修正が実施されるであろうことは、当分野の技術者には明らかとなるであろう。したがって、説明及び実施例は、添付の特許請求の範囲によって詳述される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0114】
この明細書に引用したすべての刊行物及び特許出願を、まるで、こうした各刊行物又は特許出願が、具体的かつ個々に、参照により本明細書に組み込まれることが示されるかのように、参照により本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象における、エタノール不耐の症状を予防又は改善するための方法であって、対象の体重1キログラムあたり約0.1ミリグラムから約4ミリグラムの4-メチルピラゾール(4-MP)を該対象に経口的に投与することを含み、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記方法。
【請求項2】
エタノール不耐の前記症状が、紅潮、心拍数上昇、動悸、低血圧、吐き気、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、胃の不調、運動失調、及び意識の混乱からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
4-MPが、遊離塩基の形で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
4-MPが、生理学的に許容し得る塩の形で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
4-MPが、前記対象がエタノールを摂取する前に経口的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
4-MPが、前記対象がエタノールを摂取する約1時間から約15分前に経口的に投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
4-MPが、前記対象のエタノールの摂取と同時に、又は、前記対象がエタノールを摂取した後に、経口的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防又は軽減する方法であって、アセトアルデヒド蓄積を、4-MPが投与されていない対象と比較して約50%から約60%低下させる、有効量の4-MPを投与することを含み、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記方法。
【請求項9】
前記対象のエタノール排出速度の低下率が、4-MPが投与されていない対象のエタノール排出速度と比較して約10%以下である、請求項1又は8記載の方法。
【請求項10】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積の症状を改善する方法であって、対象におけるアルコール脱水素酵素のエタノール-酸化活性を低下又は阻害するのに有効な量の4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を投与することを含み、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記方法。
【請求項11】
アセトアルデヒド蓄積の前記症状が、紅潮、心拍数上昇、動悸、低血圧、吐き気、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、胃の不調、運動失調、及び意識の混乱からなる群から選択される、請求項8又は10記載の方法。
【請求項12】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象における、エタノールの摂取によって引き起こされる、該対象における疾患又は障害のリスクを低下させるための方法であって、該対象におけるアセトアルデヒドの異化を増大させるのに有効な量の4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を投与することを含み、該アセトアルデヒドが、該対象によるエタノール摂取の産物であり、かつアセトアルデヒドの異化を増大させることが、エタノールの摂取によって引き起こされる、該対象における疾患又は障害のリスクを低下させ、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記方法。
【請求項13】
前記対象がヒトである、請求項1、8、10、及び12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記疾患又は障害が、上部気道消化管癌、消化管癌、又は乳癌を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記上部気道消化管癌が、食道、中咽頭、下咽頭、喉頭、頭部、又は頸部癌を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記消化管癌が、胃又は大腸癌を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記疾患又は障害が、遅発型アルツハイマー病、高血圧、心筋梗塞、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び脳虚血を含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
有効量の4-MPの塩酸塩が投与される、請求項10又は12記載の方法。
【請求項19】
対象の体重1キログラムあたり約0.1ミリグラムから約4ミリグラムの4-MPが投与される、請求項8、10、及び12のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール不耐の症状を予防又は改善するのに使用するための、メチルピラゾール(4-MP)を含む組成物であって、該組成物が対象に経口的に投与される場合、4-MPの用量が、該対象の体重1キログラムあたり約0.1ミリグラムから約4ミリグラムの4-MPであり、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記組成物。
【請求項21】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積に関連する症状を予防又は軽減するのに使用するための、メチルピラゾール(4-MP)を含む組成物であって、該組成物が該対象に投与される場合、4-MPの量が、アセトアルデヒド蓄積を、該組成物が投与されていない対象と比較して約50%から約60%低下させるのに有効であり、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記組成物。
【請求項22】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノール摂取に伴うアセトアルデヒド蓄積の症状を改善するのに使用するための、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を含む組成物であって、該組成物が該対象に投与される場合、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩の量が、該対象におけるアルコール脱水素酵素のエタノール-酸化活性を低下又は阻害するのに有効であり、該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記組成物。
【請求項23】
アルデヒド脱水素酵素サブタイプ2(ALDH2)活性が低下又は欠如している対象におけるエタノールの摂取によって引き起こされる疾患又は障害の、該対象におけるリスクを低下させるのに使用するための組成物であって、該組成物が、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩を含み、該組成物が該対象に投与される場合、4-MP又は4-MPの生理学的に許容し得る塩の量は、該対象におけるアセトアルデヒドの異化を増大させるのに有効であり、該アセトアルデヒドが、該対象によるエタノール摂取の産物であり、かつアセトアルデヒドの異化を増大させることが、エタノールの摂取によって引き起こされる、該対象における疾患又は障害のリスクを低下させ、かつ該対象が、アルコール脱水素酵素サブタイプ2*1についてホモ接合型(ADH2*1/ADH2*1)である、又はアルコール脱水素酵素サブタイプ2*1及び2*2についてヘテロ接合型(ADH2*1/ADH2*2)である、前記組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529526(P2012−529526A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515088(P2012−515088)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/037879
【国際公開番号】WO2010/144518
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(510201849)ラプトル トヘラペウトイクス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】