説明

4−[(2,4−ジクロロ−5−メトキシフェニル)アミノ]−6−メトキシ−7−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)プロポキシ]−3−キノリンカルボニトリルの結晶形態およびその調製方法

本発明は、x線回折パターンを有する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の結晶に関し、ここで、2θ角度(°)の有意なピークが約9.19、11.48、14.32、19.16、19.45、20.46、21.29、22.33、23.96、24.95、25.29、25.84、26.55、27.61および29.51に存在し、そして転移温度が約109℃〜約115℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの結晶形態、その形態を調製する方法、およびそれを含む医薬組成物に関する。これらの化合物は、癌、特に膵臓癌および前立腺癌を処置するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
(関連の背景技術)
3−シアノキノリン誘導体は、抗腫瘍活性を有することが示された。この活性は、、種々の癌(膵臓癌、黒色腫、リンパ系の癌、耳下腺の腫瘍、バレット食道、食道癌、頭部および頸部の腫瘍、卵巣癌、乳癌、類表皮腫瘍、主要器官(例えば、腎臓、膀胱、咽頭、胃および肺、結腸ポリープ)の癌ならびに結腸直腸癌および前立腺癌が挙げられる)を処置する際の化学物質(chemoagent)として、3−シアノキノリン誘導体を有用なものとすることができる。
【0003】
以下の米国特許において、3−シアノキノリン誘導体が開示され、抗腫瘍活性を有することが示される:第6,002,008号(特許文献1)、同第6,432,979号(特許文献2)および同第6,617,333号(特許文献3)。
【特許文献1】米国特許第6,002,008号明細書
【特許文献2】米国特許第6,432,979号明細書
【特許文献3】米国特許第6,617,333号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より安定であるが依然として高溶解度を有する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの形態についての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離された多形結晶に関し、図1および図11に示されるようなx線回折パターンを有する形態I、形態II、形態III、形態IV、形態Vおよび形態VIが挙げられる。特定の好ましい多形は、2θ角度(°)の有意なピークが約9.19、11.48、14.32、19.16、19.45、20.46、21.29、22.33、23.96、24.95、25.29、25.84、26.55、27.61および29.51のうちの少なくとも1種以上、最も好ましくはこれらの全てであるx線回折パターンを有する1水和物(形態I)である。
【0006】
本発明の別の局面は、約109℃〜約115℃の液体への転移温度を有する結晶4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)である。
【0007】
本発明はまた、パターンA、B、C、D、EおよびFからなる群より選択される図1および11に実質的に示されるx線回折パターンを有し、存在する50%重量を超える結晶4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルが選択される1形態である、治療上有効な量の結晶4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルを含む医薬組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの結晶形態(1水和物、アルコラートおよびそれらの両方の混合物が挙げられる)を調製するための方法にも関する。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)を調製する方法は、無水4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(本明細書中、形態Vとして知られる)を熱水にて処理する工程を含む。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)を調製する別の方法は、図1および11に示されるパターンB、C、DおよびFのうちの1つと実質的に同じx線回折パターンを有する他の多形の4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルを、水を用いた処理によって転換する工程を含む。水は加熱されていてもよいし、その水が室温にある場合は、加熱源も冷却源も利用されることのない温度であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(詳細な説明)
本発明は、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶に関し、これは6種の異なる形態(無水形態、および4つの異なる水和形態またはアルコラート形態(alcoholated form))で存在し得る。本明細書中で使用される場合、用語「単離した」とは、存在する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの50%超の結晶が形態I、形態II、形態III、形態IV、形態Vおよび形態VIのうちの1つであり、そしてより好ましくは存在する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル結晶の少なくとも70%〜90%が、形態I、形態II、形態III、形態IV、形態Vおよび形態VIのうちの1つである。
【0010】
形態Iは1水和物であり、他の多形形態よりも安定である。図1および図10に示されるように、XRDによってスキャンされる場合、実質的にパターンAを示す。形態Iは一般に、10日間相対湿度0%に曝される場合か、または100時間にわたって90℃に加熱される場合でも水を失わない。形態Iは、吸湿性でない。なぜなら、一般に相対湿度約90%に供される場合に、図2に動的水蒸気吸収プロットによって示されるように約0.52%の重量が増加するのみだからである。形態Iはまた、全ての水和形態の中で最も転移温度が高い。
【0011】
形態IIはまた、Karl Fisher分析により測定される場合1水和形態であり、XRDによりスキャンされる場合に図1および図5に記載のパターンBを実質的に示す。形態IIIは、GLCおよびNMRによって測定される場合にモノイソプロピルアルコレートである。形態IVは水和多形であるようであるが、その構造は未知である。XRDによりスキャンする場合、形態IIIおよび形態IVは、実質的にパターンCおよびパターンDを示し、それぞれ図6および7に示されるとおりである。形態VIはメタノラート形態(methanolate form)であり、図11に示されるように実質的にXRDパターンFを示す。
【0012】
形態II、形態III、形態IVおよび形態VIは全て、水による処理によって(例えば、水中で加熱することによって)形態Iへと転換することができる。この水は、室温であり得る。この水は、少なくとも約90℃に加熱される必要がある場合があり、少なくとも約95℃ほどに加熱される必要がある場合がある。
【0013】
形態Vは無水形態であり、XRDによりスキャンされる場合に実質的に図1および図8におけるパターンEを生じ、全ての多形形態のうち最も高い転移温度(すなわち、約148℃)を有する。またこれは、加熱した水を用いた処理によって形態Iへと容易に転換される。水は少なくとも約90℃に加熱され、より好ましくは少なくとも約95℃に加熱される。さらに、図3において示差走査熱量測定および熱重量分析によって示されるように、形態Vは2ヶ月の期間にわたる室温での水を用いた処理によって、水和形態IIへと転換することができる。この水和形態は、図4においてXRDスキャンによって示されるように、形態Iまたは形態Vのいずれとも異なっている。この理由のため、形態Vがより高い転移温度を有していても、形態Iはより安定な形態と考えられる。
【0014】
形態II、形態III、形態IVおよび形態Vのx線回折パターンからの角度2θが表1に示される。これらのピークのうち少なくとも1つのピークが所定の形態で存在するはずであり、好ましくは列挙されるピークの少なくとも大半が所定の形態で存在することが理解されるべきである。最も好ましい実施形態において、全てのピークは所定の形態で存在するが、当業者は、全てのピークが所定の形態で観察されるかどうかは、その形態の濃度レベルに高度に依存し得ることを認識する。
【表1】

【0015】
形態Iはまたより安定であり、したがってより望ましい。なぜなら、分解することなくより長い期間、種々の環境への暴露に耐えることができるからである。例えば、形態Iは、XRDおよびHPLCにより測定すると、約510フィートカンデラ(約5490ルクス)の光に2週間曝された後、湿度75%で40℃にて3ヶ月間曝された後、および90℃で2週間曝された後に、実質的に純粋かつ物理的に変化しないままである。
【0016】
形態Iは、全ての水和形態のうちで最も高い転移温度を有する。代表的に、形態Iは加熱の際に95℃〜110℃の間で脱水和し、次いで109℃〜115℃の範囲で液体へと転移するが、実質的に純粋である場合、最も可能性の高い転移温度は112℃である。他の水和形態は、通常76℃〜90℃の間で液体へと転移する。表2は、種々の形態の転移温度を示す。
【表2−1】

【表2−2】

【0017】
形態I、形態II、形態III、形態IV、形態Vまたは形態VIのXRDパターンは、分析化学およびX線結晶学の当業者に公知の技術および装置を使用して決定することができる。図1、4、5、6、7、8および11に示されるXRDパターンは、X線粉末回折(Scintag Inc.、Cupertino、CA)を使用して、電圧45kV、電流40.OmA、電力1.8OkW、スキャン範囲(2θ)3°〜40°、スキャンステップサイズ0.02°、およびスキャン総時間22’38”にて生じた。
【0018】
図1、4、5、6、7、8、10および11に示されるXRDパターンは、粉末サンプルを使用して生じた。各形態のXRDパターンは、その形態に固有である。各パターンは、1組の回折ピークを含み、これらピークは角度2θ、格子間隔d(d-spacing)および/または相対ピーク強度で表現することができる。
【0019】
2θの回折角度および対応する格子間隔d値は、XRDパターンに見出されたピーク位置を説明する。格子間隔d値は、Braggの公式を使用して実測の2θおよび銅Ka1波長を用いて計算される。これらの数のバリエーションは、異なる回折装置を使用すること、またサンプル調製方法より生じ得る。しかしながら、相対ピーク強度についてより多くのバリエーションが想定され得る。従って、種々の形態の同定は、実測の2θ角度および格子間隔dに基づくはずであり、強度に対してはあまり重視する必要はない。
【0020】
形態Iは、以下の特徴的な角度2θ(°)ピークのうちの少なくとも1つ、好ましくは大部分、より好ましくは全てを有する:9.19、9.98、11.48、14.32、14.85、15.64、19.16、19.45、19.71、20.46、21.29、22.33、22.58、23.96、24.95、25.29、25.84、26.55、27.61、28.42、29.51、30.32、31.40および32.39。
【0021】
当業者は、本明細書中に記載される、取得した形態I、形態II、形態III、形態IV、形態Vおよび形態VIのXRDパターンがさらなるピークを含む場合があることを理解する。
【0022】
本明細書中に記載される形態の含水率は、Karl Fisher方法により測定された(この方法は当業者に周知である)。この方法は、標準としてHYDRANAL-WATER Standard 1.00を使用して756 KF Brinkmann Coulometerを使用する。
【0023】
本明細書中に記載される水和形態(図3および9を含む)含水率は、熱重量分析を使用して測定した。Perkin Elmer熱重量分析計をこれらの分析に使用した。条件は、20mL/分の窒素ガスパージ、スキャン範囲25℃〜300℃、スキャン速度10℃/分であった。
【0024】
無水形態Vと水和形態との水和度(hydroscopicity)は、図2に示される形態Iに対するプロットを含め、動的水蒸気吸収(dyanamic vapor sorption)を使用して決定された。これは以下の条件下で実施された。RHは0%、30%、52.5%、75%および90%に設定し、2回の完全サイクルの間にサンプルを3時間各RHに曝した。
【0025】
種々の形態に対する転移温度および熱流(図3および9に示されるプロットが挙げられる)は、Perkin Elmer示差走査熱量計を使用して決定した。この条件は窒素ガスパージ20mL/分、スキャン範囲25℃〜300℃、およびスキャン速度10℃/分であった。
【0026】
純粋な結晶性固体は、その物体の状態を変化させる(この場合、固体の液体への転移)特徴的な転移温度を有する。固体と液体との間の転移は、純粋な物体の小さなサンプルについては非常に鋭敏なので、転移温度は0.1℃まで測定される場合がある。転移温度より高い温度に固体を加熱することが難しいので、そして純粋な固体は非常に小さな温度範囲で転移する傾向があるので、転移温度はしばしば化合物を同定するのを助けるために使用される。固体の転移温度の測定は、その物体の純度についての情報も提供することができる。純粋な結晶性固体は、非常に狭い温度範囲で転移する一方、混合物は幅広い範囲にわたって転移する。混合物はまた、純粋な固体の転移温度より低い温度で転移する傾向がある。
【0027】
本発明の結晶性化合物は、経口で、病巣内注射、腹腔内注射、筋肉内注射または静脈内注射;注入;リポソーム媒介性送達;局所的送達、鼻腔内送達、肛門送達、膣内送達、舌下送達、尿道内送達、経皮送達、髄腔内送達、眼内送達または耳内送達によって提供することができる。本発明の化合物を提供する場合の一貫性を得るため、本発明の化合物は単位用量形態であることが好ましい。適切な単位用量形態としては、錠剤、カプセルおよびサチェまたはバイアル中の粉末が挙げられる。このような単位用量形態は、本発明の化合物の0.1mg〜300mgを含むことができ、好ましくは2mg〜100mgである。なおさらに好ましい単位投薬形態は、本発明の化合物を50〜150mg含む。本発明の結晶化合物は、経口投与することができる。このような化合物は、1日当たり1〜6回、より一般には1日当たり1〜4回投与することができる。有効量は、当業者に公知である:これはまた、その化合物の形態に依存する。当業者は、実証可能な活性試験を慣用的に実施して、バイオアッセイにおいて化合物の生物活性を決定でき、これによって投与者に対して投薬量を決定することができる。
【0028】
本発明の結晶化合物は、通常の賦形剤(例えば、増量剤、分解剤、結合剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、着色料またはキャリア)を用いて処方することができる。このキャリアは、例えば、希釈剤、エアロゾル、局所的キャリア、水系溶液、非水系溶液または固体キャリアであり得る。キャリアは、ポリマーまたは練り歯磨き様(toothpaste)であり得る。本発明のキャリアは、標準的な薬学的に許容可能なキャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、酢酸緩衝化生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョンまたはトリグリセリドエマルジョン)、種々の型の湿潤剤、錠剤、コーティング錠、およびカプセル)をいずれも含む。
【0029】
経口によるかまたは局所に提供される場合、このような化合物は、異なるキャリア中での送達により被験体に提供される。代表的に、このようなキャリアは賦形剤(例えば、デンプン、ミルク、糖、特定の型のクレー、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物性の脂肪もしくは油、ガムまたはグリコール)を含む。特定のキャリアは所望の送達方法に基づき選択される必要がある。例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、静脈内送達または全身送達に使用でき、植物性の脂肪、クリーム、軟膏(salve)、軟膏(ointment)またはゲルは、局所送達に利用することができる。
【0030】
本発明の結晶化合物は、新生物の処置または予防に有用な適切な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはキャリアと一緒に送達することができる。このような組成物は液体であるか、または凍結乾燥もしくはそれ以外で乾燥された処方物であり、種々の緩衝成分(例えば、Tris-HCl、酢酸、リン酸)、pH強度およびイオン強度の希釈剤、添加物(例えば、表面に対する吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチン)、界面活性剤(例えば、TWEEN 20、TWEEN 80、PLURONIC F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、重炭酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、嵩を増やす物質もしくは張力改変剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、共有結合ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、金属イオンとの錯体、またはヒドロゲルもしくはリポソームの粒子調製物中もしくは粒子調製物外側上への化合物の組込み、ミクロエマルジョン、ミセル、単ラメラもしくは多重ラメラの小胞、赤血球ゴースト、またはスフェロプラスト(spheroblast)が挙げられる。これらのような組成物は、その化合物または組成物の物理的状態、可溶性、安定性、インビボのクリアランス速度、およびインビボの排出速度に影響する。組成の選択は、新生物を処置または予防可能な化合物の物理的特性および化学的特性に依存する。
【0031】
本発明の結晶化合物は、ある時間期間にわたる化合物の徐方性放出を可能にするカプセルを介して局所送達することができる。制御放出または徐方性放出の組成物としては、脂肪親和性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の処方物が挙げられる。
【0032】
本発明の組成物の1実施形態は、パターンA、B、C、D、EおよびFからなる群より選択される、実質的に図1および図11に示されるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの少なくとも1種の結晶形態の治療上有効な量、ならびに薬学的に許容可能なキャリアを含む。好ましい実施形態において、50%重量を超える結晶形態、より好ましくは少なくとも80%重量を超える結晶形態、より好ましくは90%重量を超える結晶形態が形態Iである。より具体的な実施形態は、本組成物が酢酸もしくは界面活性剤、またはその両方のいずれかを含む場合である。より好ましくは、本組成物は、約0.01%〜約0.1%の範囲の重量パーセントの酢酸、および約0.5%〜約5.0%の範囲の重量パーセントの界面活性剤を含む。本発明の最も好ましい実施形態は、この組成物が約2.0%重量の界面活性剤および約0.06%重量の酢酸を含む場合である。
【0033】
本発明の組成物の別の好ましい実施形態は、パターンA、B、C、D、EおよびFからなる群より選択される、実質的に図1および11に示されるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの少なくとも1つの結晶形態の治療上有効な量、ならびに糖またはポリオールまたはセルロースから選択される薬学的に受容可能なキャリアを含む。好ましい実施形態において、50%重量を超える結晶形態、より好ましくは少なくとも80%重量を超える結晶形態、より好ましくは90%重量を超える結晶形態が、図1に示されるパターンAと実質的に同じ形態のx線回折パターンを有する形態Iである。より好ましい実施形態は、上記の糖またはポリオールがマンニトール、ソルビトールまたはキシリトールである場合であり、マンニトールが最も好ましい。より具体的な実施形態において、本組成物は、マンニトールとソルビトールとの両方を含み、そしてより好ましくは、存在する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの結晶形態、マンニトールおよびソルビトールが、別個に、約20〜約50%重量の量で存在する。本発明の組成物の最も好ましい実施形態は、表3に示される。
【表3】

【0034】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルは弱塩基であり、pH8.0において約0.06μg/mLの固有の溶解性(中和形態)を有する。これは脱イオン水中で部分的にイオン化され、1.8μg/mLまで溶解して、pH7.2を生じる。溶解度は、約2%の界面活性剤Tween 80の添加により0.1〜0.4mg/mLへと約100倍に増強される。溶解度は、約0.06%の酢酸(インサイチュの酢酸塩ビヒクル)の添加により3〜4mg/mLへと(約1000倍)さらに増強される。酢酸塩処方物は、多形に起因する溶解度の可変性を排除するのに利点を有する。(以下の表4を参照のこと)。
【0035】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルは弱水溶性かつ弱湿潤性である。しかしながら、この化合物はインサイチュ酢酸塩ビヒクルに首尾よく溶解するため、ミクロ化は処方のためには必要とされない。さらに、胃酸中で高溶解度(>200mg/mL)および良好な湿潤性を有するので、ミクロ化はまた、ヒト処方のためには必要とされない。
【表4】

【0036】
患者に提供される用量は、投与されているもの、その投与目的、投与様式などに依存して変動する。「治療上有効な用量」は、処置されている疾患(例えば、癌)の症状を治療または改善するのに十分な量である。
【0037】
本発明の結晶化合物は、単独でかまたは他の化合物と組合わせて送達することができる。
【0038】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルは、スキーム1に記載されるように調製された。7-(3-クロロプロポキシ)-4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-3-キノリンカルボニトリル「1」は、そのままでかまたは溶媒(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル)中のいずれかのヨウ化ナトリウムの存在下で、N−メチルピペラジンとアルキル化された。この調製物は、文献に報告されている[Boschelli、D. H.、et. al.、J. Med. Chem.、44、3965(2001)]。
【化1】

【0039】
(図面の詳細な説明)
図1。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの5種の異なる多形のXRDスキャン。この結晶の1水和物形態(形態I)はパターンAと示され、一方無水結晶形態(形態V)はパターンEと示される。パターンB、CおよびDは、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの3種の他の多形または多形の混合物(これらは完全には特徴付けされていない)である。
【0040】
図2。これは、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)が、0%RH〜90%RHまでわずか0.52%増加したことを示す動的水蒸気吸収プロットである。従って、この形態は非含水性とみなさなさればならない。
【0041】
図3。これは、室温において水中に懸濁した2ヶ月と10日後の形態Vの示差走査熱量計(DSC)プロットおよび熱重量測定(TGA)プロットである。DSCに示される低い転移性温度およびTGAに示される急速な脱水は、水中に懸濁した2ヶ月と10日後に無水物が準安定性の水和結晶形態へと水和されたことを示す。
【0042】
図4。形態I、形態Vおよび室温において2ヶ月と10日間水中に懸濁した後の形態VのXRDスキャン。これは、その曝露から生じる準安定性の水和物が形態Iとも形態Vともいずれとも異なる構造を有することを示す。
【0043】
図5。形態IIの2つの異なるバッチのXRDスキャン。これは、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの1水和物結晶である。
【0044】
図6。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(形態III)の結晶のXRDスキャン。
【0045】
図7。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(形態IV)の結晶のXRDスキャン。
【0046】
図8。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(形態V)の無水結晶形態のXRDスキャン。
【0047】
図9。これは、形態IのDSCプロットおよびTGAプロットである。このDSCプロットは、形態Iが約108℃〜120℃の転移性範囲を有することを示す。150℃に加熱した際に約3.5%の重量損失があることが示されるので、TGAプロットから、形態Iが一水和物であることが証明される。
【0048】
図10。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)の結晶の5つのバッチのXRDスキャン。
【0049】
図11。形態VI(下側)、形態I(上側)、および形態VIを水中で加熱して生じる形態(中央)のXRDスキャン。これにより、形態II、形態III、形態IVおよび形態Vと同様に、形態VIが水への曝露によって形態Iへと転換され得ることを示す。
【0050】
本発明は、以下の具体的な実施形態と組合わせてより完全に記載される。この例は本発明の範囲を限定するようにみなされるべきではない。
【実施例1】
【0051】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物、形態I〜形態Vの調製)
非結晶性4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルを、アセトンと水との50:50(v/v)溶液から結晶化して形態Vを得た。得られた結晶固体を濾過により回収し、次いで約80℃に加熱した水に約5分間懸濁した。次いでこの混合物を濾過して、109℃〜115℃の転移温度範囲を有する表題の化合物を生じた。
【実施例2】
【0052】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(1.8 kg)、イソプロピルアルコール(12L)、および水(6L)を窒素下で50-Lのフラスコに加えた。この混合物を75℃に加熱して、ポリプロピレン布地を通して濾過した。この混合物を室温まで冷却した(結晶化は約37℃で開始した)。この混合物をさらに4℃に冷却し、次いで濾過した。ケークを5Lのイソプロピルアルコール/水の50/50(v/v)混合物で洗浄した。得られた湿ったケークおよび14Lの水を50-Lフラスコに加えた。この混合物を95℃に加熱して、5時間保持した。この熱い混合物をポリプロピレン布地を通して濾過した。濾過したケークを2.5Lの水で洗浄し、通風式オーブン(forced air oven)で40℃にて乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(XRDスキャンにより形態I)を1.37kg得た。
【実施例3】
【0053】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル 形態IIの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(5g)およびイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物50mLを125mLフラスコに加え、加熱して還流させた。この混合物を一晩室温に冷まし、次いで5℃に冷却した。濾過の後、そのケークをイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物15mLで洗浄し、45℃にて減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(XRDスキャンにより形態II)を3.92g得た。
【実施例4】
【0054】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルモノイソプロピルアルコラート 形態IIIの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(5g)およびイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物40mLを125mLフラスコに加え、加熱して還流させた。この混合物を一晩室温に冷まし、そして濾過した。そのケークをイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物15mLで洗浄し、45℃にて減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルモノイソプロピルアルコラート(GLCおよびNMRにより決定し、そしてXRDスキャンにより形態IIIであると決定した)を4.51g得た。
【実施例5】
【0055】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルモノイソプロピルアルコラート 形態IIIの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(5g)およびイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物40mLを125mLフラスコに加え、70℃に加熱した。この熱い混合物を濾過した;濾過したものを70℃に加熱してこの物質を再溶解した。この混合物を室温に冷ました。結晶化が約45℃で開始した。一晩撹拌した後、この混合物を5℃に冷却した。そのケークをイソプロピルアルコール/水の2/1(v/v)混合物15mLで洗浄し、次いで20mLの水で洗浄して、湿った4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルを6.58g得た。湿った生成物のサンプル(0.30g)を40℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルモノイソプロピルアルコラート(GLCおよびNMRにより決定し、そしてXRDスキャンにより形態IIIであると決定した)を0.19g得た。
【実施例6】
【0056】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル 形態IVの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(5g)および30mLのアセトンを100mLフラスコに加え、加熱して還流して溶液を得た。この熱い混合物を濾過して清澄化した。濾紙上の少量の残渣を3mlのアセトンで洗浄した。熱い濾過物に水(10ml)を加えた。この混合物を冷水浴により0〜5℃に冷却し、濾過した。そのケークをアセトン/水の3/1(v/v)混合物15mLで洗浄し、45℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(XRDスキャンにより形態IV)を3.48g得た。
【実施例7】
【0057】
(4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル 形態VIの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル(10g)および200mLのメタノールを65℃に加熱して、撹拌しながら30分間保持した。この熱い混合物を室温に冷まし、濾過した。得られた物質を80mLのMeOHにて洗浄し、減圧下で乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルメタノラート(XRDスキャンにより形態VI)を8.31g得た。
【実施例8】
【0058】
(形態IIからの4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピ
ペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの形態II(1.0g)を水30mlを用いて16時間還流した。この混合物を室温まで冷まして濾過した。そのケークを10mlの水で洗浄し、45℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(XRDスキャンにより形態I)を0.89g得た。
【実施例9】
【0059】
(形態IIIからの4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの形態III(2.0g)を水40mlとともに、95℃で24時間撹拌した。この混合物を室温まで冷まして濾過した。そのケークを10mlの水で洗浄し、45℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(XRDスキャンにより形態I)を1.83g得た。
【実施例10】
【0060】
(形態IIIからの4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
実施例5からの湿った4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルモノイソプロピルアルコラートの形態III(6.28g)および水40mlを100mLフラスコに加えた。
【0061】
この混合物を95℃に加熱して、3時間後、5時間後および20時間後にサンプリングした。3つのサンプル全ては、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(XRDスキャンにより形態I)をもたらした。
【実施例11】
【0062】
(形態IVからの4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
【0063】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの形態IV(1.0g)を水20mlを用いて24時間還流した。この混合物を35℃に冷まして濾過した。そのケークを10mlの水で洗浄し、45℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(XRDスキャンにより形態I)を0.95g得た。
【実施例12】
【0064】
(形態VIからの4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物 形態Iの調製)
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルメタノラートの形態VI(1.0g)を水12mL中で95℃に撹拌しながら5時間加熱した。この混合物を室温に冷まして濾過した。そのケークを2mLの水で洗浄し、45℃で減圧乾燥して、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(XRDスキャンにより形態I)を0.9g得た。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1。4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの5つの異なる多形についてのXRDスキャン。
【図2】図2。形態Iの動的水蒸気吸収等温線プロット。
【図3】図3。室温で2ヶ月と10日間水中で懸濁した後の、形態Vの示差走査熱量計プロットおよび熱重量系分析プロット。
【図4】図4。室温で2ヶ月と10日間水中で形態Vを懸濁したままの後形成される、形態I、形態Vおよび準安定化水和物のXRDスキャン。
【図5】図5。形態IIの二種のバッチのXRDスキャン。
【図6】図6。形態IIIのXRDスキャン。
【図7】図7。形態IVのXRDスキャン。
【図8】図8。形態VのXRDスキャン。
【図9】図9。形態Iの示差走査熱量測定プロットおよび熱重量測定分析プロット。
【図10】図10。形態Iについて5バッチのXRD。
【図11】図11。形態I(上側)を標準として、形態VI(下側)のXRDスキャン、および形態VIを熱水に曝して得られた形態のXRDスキャン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ角度(°)の有意なピークのうち少なくとも1つが約9.19、11.48、14.32、19.16、19.45、20.46、21.29、22.33、23.96、24.95、25.29、25.84、26.55、27.61および29.51であるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の単離結晶形態。
【請求項2】
2θ角度(°)の有意なピークが約9.19、9.98、11.48、14.32、14.85、15.64、19.16、19.45、19.71、20.46、21.29、22.33、22.58、23.96、24.95、25.29、25.84、26.55、27.61、28.42、29.51、30.32、31.40、および32.39であるx線回折パターンを有する、請求項1に記載の4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の結晶形態。
【請求項3】
パターンAとして実質的に図1に示されるx線回折パターンを有する、請求項2に記載の4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の結晶形態。
【請求項4】
約109℃〜約115℃の液体への転移温度を有する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の単離結晶形態。
【請求項5】
前記液体への転移温度が約112℃である、請求項4に記載の4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の結晶形態。
【請求項6】
無水4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルを熱水により処理する工程を含む、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)を調製する方法。
【請求項7】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの多形を転換する工程を含む、水による処理によって図1および図11に示されるパターンB、C、DおよびFのものと実質的に同じx線回折パターンを有する4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)アミノ]-6-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物(形態I)を調製する方法。
【請求項8】
前記水が少なくとも約90℃に加熱される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記水が少なくとも約95℃に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水が加熱源も冷却源も適用されない温度である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記水が室温である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
パターンA、B、C、D、EおよびFからなる群より選択される図1および11に実質的に示されるx線回折パターンを有し、存在する50%重量を超える結晶形態が選択される1形態である4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの結晶形態の治療上有効な量、ならびに薬学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
【請求項13】
前記4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの選択される結晶形態が、図1のパターンAに実質的に示されるx線回折パターンを有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
さらに酢酸を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
さらに界面活性剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
さらに約0.5%重量〜5.0%重量の界面活性剤と、約0.01%重量〜0.1%重量の酢酸とを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
さらに約2.0%重量の界面活性剤と約0.06%重量の酢酸とを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容可能なキャリアが、糖、ポリオールおよびセルロース、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容可能なキャリアがポリオールおよびセルロースである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリオールがマンニトール、ソルビトールおよびキシリトールから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリオールがマンニトールである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-1-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの結晶形態、マンニトールおよびセルロースが、約20%重量〜50%重量の量で別個に存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
実質的に図5に示されるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリル1水和物の単離結晶形態。
【請求項24】
実質的に図6に示されるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶形態。
【請求項25】
実質的に図7に示されるx線回折パターンを有する、4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶形態。
【請求項26】
実質的に図8に示されるx線回折パターンを有する、無水4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶形態。
【請求項27】
実質的に図11に示されるx線回折パターンを有する、無水4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶形態。
【請求項28】
約145℃〜約148℃の間に液体への転移温度を有する、無水4-[(2,4-ジクロロ-5-メトキシ-7-[3-(4-メチル-3-ピペラジニル)プロポキシ]-3-キノリンカルボニトリルの単離結晶形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−500332(P2009−500332A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519519(P2008−519519)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025160
【国際公開番号】WO2007/005462
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】