説明

4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物を調製するためのプロセス

本発明は、下記式(I)の化合物またはその塩を調製するプロセスおよび中間体に関する:式中、a、RおよびR3〜6は本明細書に定義されるとおりである。式(I)の化合物はセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。本発明は、セロトニン再取り込み阻害活性およびノルエピネフリン再取り込み阻害活性を有することが明らかになった化合物を調製するための新規な中間体およびプロセスを提供する。一実施形態では、式Iの化合物は4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンまたはその薬学的に許容される塩である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン(5−HT)およびノルエピネフリン(NE:norepinephrine)再取り込み(reuptake)阻害薬としての活性を持つ4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物を調製するためのプロセスおよび中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛とは、組織損傷が実際に起こった、もしくは起こりそうなときの、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚体験および情動体験である(国際疼痛学会:International Association for the Study of Pain(IASP)、疼痛用語(Pain Terminology))。慢性疼痛とは、急性疼痛の通常の経過あるいは障害の治癒のための予測される時間を超えて持続する痛みである(米国疼痛協会(American Pain Society).「Pain Control in the Primary Care Setting」,2006:15)。神経因性疼痛とは、神経系の一次的な損傷または機能障害が原因となる、あるいはそれによって惹起される疼痛である。その損傷または機能障害が末梢神経系に影響するときに起こるのが末梢性神経因性疼痛であり、その損傷または機能障害が中枢神経系に影響ときに起こるのが中枢性神経因性疼痛である(IASP)。
【0003】
現在、神経因性疼痛の処置には、たとえば、三環系抗鬱薬、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害薬、カルシウムチャネルリガンド(たとえば、ガバペンチンおよびプレガバリン)、局所リドカインおよびオピオイドアゴニスト(たとえば、モルヒネ、オキシコドン、メサドン、レボルファノールおよびトラマドール)など様々な種類の治療薬が使用されている。
【0004】
本明細書に記載した4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン化合物は、セロトニントランスポーターおよびノルエピネフリントランスポーターに結合することによりセロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みを共に阻害する。こうした化合物を調製する効率的なプロセスが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、セロトニン再取り込み阻害活性およびノルエピネフリン再取り込み阻害活性を有することが見い出された化合物を調製するための新規な中間体およびプロセスを提供する。
【0006】
本発明の一態様は、下記式Iの化合物
【0007】
【化1】

【0008】
またはその塩を調製するプロセスであって、式中:aは0、1、2、3または4であり;Rは各々独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Rは水素、ハロまたは−C1〜6アルキルであり;R、RおよびRは独立に水素またはハロであり;前記プロセスは:
(a)下記式1の化合物:
【0009】
【化2】

【0010】
またはその塩を塩基の存在下で下記式2の化合物:
【0011】
【化3】

【0012】
と反応させて下記式3の化合物:
【0013】
【化4】

【0014】
またはその塩を得るステップであって、式中、Lは脱離基であり、Pはアミノ保護基であるステップ;
(b)式3の化合物またはその塩からアミノ保護基Pを除去して式Iの化合物またはその塩を得るステップ
を含む、プロセスに関する。
【0015】
一実施形態では、式Iの化合物は4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンまたはその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式Iの化合物は下記のとおり定義される化合物
またはその薬学的に許容される塩である:
(a)RおよびRは水素であり、かつ:
(i)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、そしてaは0である;
(ii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは1であり、そしてRは4−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである;
(iii)Rはフルオロであり、Rはフルオロであり、aは2であり、そしてRは4,5−ジフルオロ、4,6−ジフルオロまたは5,6−ジフルオロである;
(iv)Rはフルオロであり、Rはクロロであり、そしてaは0である;
(v)Rはクロロであり、Rはフルオロであり、そしてaは0である;または
(vi)Rはブロモであり、Rはクロロであり、そしてaは0である;あるいは
(b)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、Rはクロロであり、かつ:
(i)aは0である;
(ii)aは1であり、そしてRは5−フルオロまたは6−フルオロである;または
(iii)aは2であり、そしてRは4,6−ジフルオロである;あるいは
(c)RおよびRは水素であり、Rはフルオロであり、かつ;
(i)Rはフルオロであり、そしてaは0である;
(ii)Rはフルオロであり、aは1であり、そしてRは3−フルオロ、5−フルオロ、5−トリフルオロメチルまたは6−フルオロである;
(iii)Rはフルオロであり、aは2であり、そしてRは4,6−ジフルオロである;または
(iv)Rはクロロまたはメチルであり、そしてaは0である;あるいは
(d)R、RおよびRは水素であり、かつ:
(i)RはHであり、そしてaは0である;
(ii)RはHであり、aは1であり、そしてRは5−フルオロまたは6−フルオロである;
(iii)Rはフルオロであり、そしてaは0である;
(iv)Rはフルオロであり、aは1であり、そしてRは4−フルオロ、5−フルオロまたは6−フルオロである;
(v)Rはフルオロであり、aは2であり、そしてRは4,5−ジフルオロまたは4,6−ジフルオロである;
(vi)Rはクロロであり、そしてaは0である;
(vii)Rはクロロであり、aは1であり、そしてRは4−フルオロ、6−フルオロまたは5−トリフルオロメチルである;
(viii)Rはクロロであり、aは2であり、そしてRは4,5−ジフルオロである;または
(ix)Rはブロモであり、そしてaは0である。
【0016】
本発明の別の態様は、式1の化合物またはその塩を調製するプロセスであって:
(a’)下記式4の化合物:
【0017】
【化5】

【0018】
またはその塩を還元剤と反応させて下記式5の化合物:
【0019】
【化6】

【0020】
またはその塩を得るステップ;および
(b’)上記式5の化合物のヒドロキシル基またはその塩を脱離基Lに変換して式1の化合物またはその塩を得るステップ
を含む、プロセスに関する。
【0021】
本発明のなお別の態様は、本発明のプロセスに使用される新規な中間体に関する。こうした一態様では、本発明の新規な中間体は下記式1またはその塩を持つ:
【0022】
【化7】

【0023】
式中:Lはブロモ、ヨードまたは−OS(O)−Rであり、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルであり、フェニルは任意に−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されており;aは0、1、2、3または4であり;Rは各々独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Pはアミノ保護基である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、下記式Iの化合物:
【0025】
【化8】

【0026】
および下記式1の化合物:
【0027】
【化9】

【0028】
またはその塩を調製する新規なプロセスに関する。
【0029】
整数「a」は0、1、2、3または4である。特定の一実施形態では、aは0(すなわち、Rは存在しない)、1または2である。R部分は各々独立にハロまたはトリフルオロメチルである。R部分は水素、ハロまたは−C1〜6アルキルである。R、RおよびR部分は各々独立に水素またはハロである。特定の一実施形態では、aは0である。別の実施形態では、aは0であり、RおよびRは水素であり、RおよびRはフルオロである。
【0030】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスについて記載する場合、以下の用語は、他に記載がない限り、以下の意味を持つ。また、本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、対応する複数形を含む。「を含む(comprising)」、「を含む(including)」および「を持つ(having)」という用語は、包括的であるということ意図しており、記載された要素以外に別の要素が存在し得ることを意味する。本明細書に使用する成分、分子量などの特性、反応条件などの量を表す数字はみな、他に記載がない限り、すべての場合において「約」という用語により修飾されているものと理解されたい。したがって、本明細書に記載する数字は、本発明が得ようとする所望の特性によって変化し得る近似値である。いずれにしても、各数字は少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め法を適用して解釈すべきものであるが、これは均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではない。
【0031】
本明細書に記載の化合物は通常、市販されているMDL(登録商標)ISIS/Drawソフトウェア(Symyx,Santa Clara,California)のAutoNomプログラムを用いて命名してある。典型的には、式Iの化合物は、4−[2−(2−フルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンと命名した。本明細書に記載の化合物の番号付けは以下のとおりである:
【0032】
【化10】

【0033】
本明細書で使用する場合、「式を持つ」または「構造を持つ」という語句は限定的であることを意図するものではなく、「を含む(comprising)」という用語が一般に使用されるのと同じ要領で使用される。
【0034】
「アルキル」という用語は、直鎖でも分枝でもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。他に定義しない限り、こうしたアルキル基は典型的には1〜10個の炭素原子を含むものであり、たとえば−C1〜2アルキル、−C1〜3アルキル、−C1〜4アルキル、−C1〜6アルキルおよび−C1〜8アルキルが挙げられる。代表的なアルキル基として、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルおよび同種のものが挙げられる。
【0035】
本明細書に使用する特定の用語について具体的な炭素原子の数を意図する場合、用語の前に下付きでその炭素原子数を示す。たとえば、「−C1〜6アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を持つアルキル基を意味し、炭素原子は許容可能な任意の立体配置である。
【0036】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「式の」、「式を持つ」または「構造を持つ」という語句は、限定的であることを意図するものではなく、「を含む(comprising)」という用語が一般に使用されるのと同じ要領で使用される。
【0038】
「塩」という用語は、化合物と組み合わせて使用する場合、無機もしくは有機塩基または無機もしくは有機酸から得られる化合物の塩を意味する。さらに、式Iの化合物がアミンなどの塩基性部分とカルボン酸などの酸性部分とを共に含む場合、双性イオンが形成される場合があり、これも本明細書で使用する「塩」という用語に含まれる。無機塩基から得られる塩として、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩(三価の鉄塩)、第一鉄塩(二価の鉄塩)、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩(三価のマンガン塩)、第一マンガン塩(二価のマンガン塩)、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩および同種のものが挙げられる。特に好ましいのはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。有機塩基から得られる塩として、置換アミン、環状アミン、天然アミンおよび同種のものを含む第一級、第二級および第三級アミンの塩があり、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンおよび同種のものが挙げられる。無機酸から得られる塩としては、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が挙げられる。有機酸から得られる塩として、脂肪族ヒドロキシル酸(たとえばクエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(たとえば酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(たとえば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(たとえば安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(たとえばo−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(たとえば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(たとえば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸(edisylic acid)、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸および同種のものの塩が挙げられる。特に好ましいのはクエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸である。「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳動物などの患者への投与が許容される、塩基または酸から調製される塩(たとえば哺乳動物に対して所定の投与計画での安全性が許容される塩)を意味する。ただし、患者への投与を意図していない中間体化合物の塩など、本発明に包含される塩は薬学的に許容される塩である必要はないことが理解されよう。
【0039】
本明細書に使用する他の用語はすべて、当該技術分野の当業者が理解している通常の意味を有するものとする。
【0040】
プロセス条件
本発明のプロセスに使用するのに好適な不活性希釈液として、限定としてではなく例示として、酢酸、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)、アセトニトリル(MeCN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF:N,N−dimethylformamide)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)、トルエン、ジクロロメタン(DCM:dichloromethane)、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテル、クロロホルム(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよび同種のものなどの有機希釈液が挙げられる。また、水性希釈液を使用してもよく、水のほか、塩基性および酸性の水性希釈液が含まれる。さらに前述の希釈液のいずれかの組み合わせも企図している。
【0041】
本発明のプロセスに使用するのに好適な塩基は多くある。例示的な有機塩基としては、限定としてではなく例示として、第一級アルキルアミン(たとえばメチルアミン、エタノールアミン、トリス緩衝剤および同種のもの)、第二級アルキルアミン(たとえばジメチルアミン、メチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA:diisopropylethylamine)および同種のもの)、第三級アミン(たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンおよび同種のもの)を含むアミン;水酸化アンモニウムおよびヒドラジンなどのアンモニア化合物;水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水酸化カリウム、カリウムt−ブトキシドおよび同種のものなどのアルカリ金属水酸化物;金属ヒドリド;さらに酢酸ナトリウムおよび同種のものなどのアルカリ金属カルボン酸塩が挙げられる)。例示的な無機塩基として、限定としてではなく例示として:炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムおよび同種のものなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウムおよび同種のものなど他の炭酸塩;さらにリン酸カリウムおよび同種のものなどのアルカリ金属リン酸塩が挙げられる)。
【0042】
すべての反応は通常約−78℃〜約110℃の範囲内の温度、たとえば室温で行われる。反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC:thin layer chromatography)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high performance liquid chromatography)および/またはLCMSを用いて終了するまでモニターすればよい。反応は数分で終了する場合もあれば、典型的には1〜2時間など数時間から48時間まで、あるいは、3〜4日までなど数日かかる場合もある。
【0043】
プロセスの各ステップのいずれかが終了したら、所望の生成物を得るため、得られた混合物または反応生成物をさらに処理してもよい。たとえば、得られた混合物または反応生成物を以下の手順:希釈(たとえば飽和NaHCOまたはEtOAcを使用);抽出(たとえばEtOAc、CHCl、DCM、水性HClを使用);洗浄(たとえばDCM、1.0MのNaOH水溶液、飽和NaCl水または飽和NaHCOを使用);蒸留;乾燥(たとえばMgSOまたはNaSOの使用または真空中);沈殿;濾過;再溶解(たとえば1:1酢酸:HO溶液中);精製(たとえば分取HPLC、逆相分取HPLCまたは結晶化による);および/または結晶化(たとえばEtOAc/エタノールまたはイソプロパノール/水から);および/または濃縮(たとえば真空中)の1つまたは複数に付してもよい。
【0044】
式Iの化合物またはその塩を調製するプロセスは2つのステップで行う。プロセスの第1のステップは求核置換カップリング反応であり、塩基の存在下で式1の化合物またはその塩を式2の2−フルオロフェノール化合物と合わせて式3の化合物またはその塩を形成する。
【0045】
式1の化合物およびその塩は、当該技術分野において公知の技法、または本明細書に記載の方法により調製することができる。2−フルオロフェノール化合物は市販品を使用するか、あるいは、当該技術分野において周知の技法により容易に合成される。
【0046】
一実施形態では、式1の化合物の量に対してやや過剰量の2−フルオロフェノール化合物を使用する。一実施形態では、約1.0〜約2.0当量の2−フルオロフェノール化合物を使用し、別の実施形態では、約1.0〜1.5当量を使用する。
【0047】
典型的には、式1の化合物を不活性希釈液に溶解させ、次いで2−フルオロフェノール化合物および塩基を加える。一実施形態では、式1の化合物の量に対して過剰量の塩基を使用する。一実施形態では、約2.0〜約4.0当量の塩基を使用し、別の実施形態では、約3.0当量を使用する。一実施形態では、塩基はアルカリ金属炭酸塩であり、特定の一実施形態では、炭酸カリウムである。例示的な不活性希釈液としてアセトニトリルがある。
【0048】
式3の化合物またはその塩の形成は典型的には約40℃〜約60℃の範囲の温度で行い;一実施形態では約45℃〜約55℃の範囲の温度で約5〜約24時間行う。次いで反応混合物を室温まで放冷する。
【0049】
式3の化合物またはその塩の形成が実質的に終了したら、上清を塩基および他の固体から分離し、次のステップに使用すればよい。あるいは、脱保護ステップの前に、得られた生成物を従来の手順により単離および精製してもよい。
【0050】
式1の化合物は、求核置換反応などの置換反応において別の官能基または原子で置換され得る官能基または原子である脱離基を持ち、これを「L」で示す。たとえば、代表的な脱離基として、ハロゲン(たとえば、クロロ基、ブロモ基およびヨード基);メシラート、トシラート、ブロシラート(brosylate)、ノシラートおよび同種のものなどのスルホン酸エステル基;およびアセトキシ、トリフルオロアセトキシおよび同種のものなどのアシルオキシ基が挙げられる。特に興味があるのは、式−OS(O)−Rで表すことができるスルホン酸エステル基であり、式中、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルで、フェニル基は−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されていてもよい。特定の一実施形態では、脱離基は−OS(O)−CHまたは−OS(O)−4−メチルフェニルである。
【0051】
式1および式3の化合物はアミノ保護基を持ち、これを「P」で示す。アミノ保護基はアミノ官能基に共有結合した基であり、官能基が好ましくない反応を起こすのを防ぐものであるが、保護基を好適な試薬で処理すると官能基を再生(すなわち脱保護または保護基除去)することができる。代表的なアミノ保護基として、t−ブトキシカルボニル(Boc:t−butoxycarbonyl)、トリチル(Tr:trityl)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz:benzyloxycarbonyl)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc:fluorenylmethoxycarbonyl)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS:trimethylsilyl)、t−ブチルジメチルシリル(TBS:t−butyldimethylsilyl)および同種のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。特定の一実施形態では、アミノ保護基はBocである。その他の代表的なアミノ保護基については、たとえば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999に記載されている。
【0052】
プロセスの第2のステップは脱保護ステップであり、アミノ保護基Pを式3の化合物またはその塩から除去して式Iの化合物またはその塩を得るステップを含む。P基の除去には、標準的な脱保護法およびTFA(単独またはDCM中)またはHCl(1,4−ジオキサンまたはエタノール中)などの試薬を使用する。たとえば、Boc基は塩酸、トリフルオロ酢酸および同種のものなどの酸性試薬を用いて除去できるが、Cbz基はH(1気圧)、アルコール溶媒中の10%Pd/Cなど触媒的水素化条件を用いて除去することができる。
【0053】
典型的には、式3の化合物と脱保護試薬とを任意に不活性希釈液中で合わせる。試薬は過剰量で使用する。一実施形態では、式3の化合物の量に対して約5.0〜約25.0当量の試薬を使用し;別の実施形態では、約10.0〜約20.0当量の試薬を使用する。
【0054】
この脱保護ステップは典型的には約10℃〜約30℃の範囲の温度で行い;一実施形態では、約15℃〜約25℃の範囲の温度で約20〜約28時間行い、一実施形態では、約24時間または一晩または反応が実質的に終了するまで行う。一実施形態では、脱保護試薬はEtOH中のTFAまたはHClである。
【0055】
式Iの化合物またはその塩の形成が実質的に終了したら、次いで得られた生成物を従来の手順により単離および精製すればよい。式Iの化合物は、酢酸エチルおよびエタノールでさらに結晶化し、さらに任意にイソプロパノールおよび水で再結晶化してもよい。
【0056】
式1の化合物またはその塩の調製プロセスは2つのステップで行う。プロセスの第1のステップはボランによる還元反応で、1当量の式4の化合物またはその塩を1当量以上の還元剤と合わせて式5の化合物またはその塩を形成するステップを含む。
【0057】
典型的には、テトラヒドロフランなどの不活性希釈液中で式4の化合物の混合物に還元剤をゆっくりと加える。一実施形態では、式4の化合物の量に対して約1.5〜2.5当量の還元剤を使用し;別の実施形態では、約2.0当量を使用する。
【0058】
式4の化合物、たとえば、4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(P=Boc)は、市販されている。好適な還元剤としては、ボランジメチルスルフィド錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン1,2−ビス(t−ブチルチオ)エタン錯体、ボランt−ブチルアミン錯体、ボランジ(t−ブチル)ホスフィン錯体、ボラン−テトラヒドロフラン錯体などが挙げられる。特定の一実施形態では、還元剤はボランジメチルスルフィド錯体またはボラン−テトラヒドロフラン錯体である。
【0059】
式5の化合物の形成は典型的には約20℃〜約70℃の範囲の温度で行い;一実施形態では室温で短時間撹拌し、次いで約40℃〜60℃に加熱し、加熱時間は40〜120分の範囲、一実施形態では60分または式5の化合物の形成が実質的に終了するまでとする。反応は典型的には窒素下で行う。式5の化合物の形成が実質的に終了したら、反応をクエンチすればよく、次いで得られた生成物を従来の手順により単離および精製する。
【0060】
プロセスの第2のステップは式5の化合物またはその塩のヒドロキシル基を脱離基Lに変換して式1の化合物またはその塩を得るステップを含む。
【0061】
典型的には1当量の式5の化合物を、ヒドロキシル基を脱離基に変換するのに好適な1当量以上の試薬と合わせる。一実施形態では、式5の化合物の量に対して約1.0〜1.7当量の試薬を使用し;別の実施形態では、約1.1〜約1.5当量を使用する。
【0062】
式1またはその塩の形成は典型的には約−10℃〜約10℃の範囲の温度で行い;約0℃で40〜120分の範囲、一実施形態では60〜90分または式1の化合物またはその塩の形成が実質的に終了するまで行う。反応は典型的には窒素下で行う。式1の化合物またはその塩の形成が実質的に終了したら、次いで得られた生成物を従来の手順により単離および/または精製する。
【0063】
ヒドロキシル基のハロゲン脱離基への変換に好適な試薬として、ハロゲン化剤:チオニルクロリドまたは三塩化リン(L=Cl);四臭化炭素(トリフェニルホスフィンまたは炭酸カリウムとの併用)、臭化水素または三臭化リン(L=Br);ヨウ化セシウム(三塩化アルミニウム(((L=I);などが挙げられる。
【0064】
ヒドロキシル基のスルホン酸エステル基脱離基への変換に好適な試薬として、p−トルエンスルホニルクロリド(トシラートを形成、L=−OS(O)−4−メチルフェニル)、メタンスルホン酸無水物(メシラートを形成、L=−OS(O)−CH)、p−ブロモベンゼンスルホニルクロリド(ブロシラートを形成、L=−OC(O)−4−ブロモフェニル)、p−ニトロベンゼンスルホニルクロリド(ノシラートを形成、L=−OC(O)−4−ニトロフェニル)などが挙げられる。この反応は典型的には好適な塩基を用いて行う。一実施形態では、式5の化合物の量に対して約1.2〜1.8当量の塩基を使用し;別の実施形態では、約1.4〜1.6当量を使用する。こうした試薬と併用できる例示的な塩基として、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの第二級アルキルアミン、およびトリエチレンジアミンなどの第三級アミンが挙げられる。
【0065】
ヒドロキシル基のアシルオキシ基脱離基への変換に好適な試薬として、アセチルクロリド(L=アセトキシまたは−OC(O)CH)、トリフルオロアセチルクロリド(L=トリフルオロアセトキシ−OC(O)CF)などが挙げられる。こうした試薬は典型的にはテトラヒドロフランなどの不活性希釈液と併用される。
【0066】
一実施形態では、ヒドロキシル基を変換する試薬はp−トルエンスルホニルクロリドまたはメタンスルホン酸無水物である。この反応に関するさらなる詳細は、たとえば、Hartung et al.(1997)Synthesis 12:1433−1438に記載されている。
【0067】
本明細書に記載の中間体の中には新規な中間体と考えられるものもあり、したがって、たとえば、下記式1の化合物またはその塩は本発明のさらなる態様として提供される:
【0068】
【化11】

【0069】
式中、Lはブロモ、ヨードまたは−OS(O)−Rであり、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルであり、フェニルは任意に−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されており;aは0、1、2、3または4であり;Rは各々独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Pはアミノ保護基である。特定の一実施形態では、Lは−OS(O)−Rであり、Rはメチルまたは4−メチル−フェニルであり;aは0であり;Pはt−ブトキシカルボニルである。
【0070】
代表的な本発明の化合物またはその中間体を調製する具体的な反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、以下に示す実施例に記載する。
【実施例】
【0071】
以下の調製および実施例は、本発明の具体的な実施形態を説明することを目的として提供される。ただし、こうした具体的な実施形態は、特に記載がない限り、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0072】
以下の略語は、他に記載がない限り、下記の意味を持ち、本明細書に使用するその他の任意の略語で定義されていないものは、標準的な意味を持つ:
AcOH 酢酸
Boc t−ブトキシカルボニル
DCM ジクロロメタン(すなわち、塩化メチレン)
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
IPA イソプロピルアルコール
IPAc 酢酸イソプロピル
MeCN アセトニトリル(CHCN)
MeOH メタノール
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TsCl p−トルエンスルホニルクロリドまたは4−メチルベンゼンスルホニルクロリド
本明細書に使用するその他の任意の略語で定義されていないものは、一般に受け入れられている標準的な意味を持つ。他に記載がない限り、試薬、出発材料および溶媒などの材料はすべて商業事業者(Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haenなど)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0073】
調製1
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0074】
【化12】

【0075】
4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、16mmol、1.0当量)およびTHF(130mL、1.7mol)を窒素下、室温で合わせた。ボランジメチルスルフィド錯体(2.9mL、33mmol、2.0当量)を滴下して加え、混合物を5分間撹拌し、次いで還流状態で1時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、MeOH(40mL)を滴下して反応をクエンチし、次いで回転蒸発法(rotary evaporation)により濃縮した。この材料をMeOH(2×40mL)で共沸した。次いで混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、1MのHCl(2×50mL)、次いでNaHCO(2×50mL)、次いで飽和NaCl水(1×50mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.8g)を淡黄色の透明な油として得、静置し凝固させた。
H NMR (CDCl) δ (ppm) 7.34 - 7.22 (m, 3H); 7.19 (dt, J = 1.6 Hz, 7.2, 1H); 4.73 (s, 2H); 4.32−4.14 (m, 2H); 3.00 (tt, J = 4.0 Hz, 12.0, 1H); 2.80 (t, J = 11.6 Hz, 2H); 1.78− 1.56 (m, 4H); 1.47 (m, 9H)。
【0076】
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(0.4g、1.0mmol、1.0当量)およびトリエチレンジアミン(220mg、2.0mmol、1.4当量)をDCM(11mL、170mmol)に溶解させた。混合物を窒素下、0℃で冷却し、TsCl(290mg、1.5mmol、1.1当量)を加え、混合物を0℃でさらに60分間撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(2×25mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、回転蒸発法により濃縮して表題化合物(500mg)を得、さらに精製することなく使用した。
H NMR (CDCl) δ (ppm) 7.81 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.79 (t, J = 2.0 Hz, 1H); 7.37−7.32 (m, 4H); 7.25−7.21 (m, 1H); 7.21−7.13 (m, 1H), 5.12 (s, 2H); 4.34−4.12 (m, 2H); 2.81−2.61 (m, 3H); 2.45 (s, 3H); 1.70−1.52 (m, 4H); 1.48 (s, 9H)。
【0077】
調製2
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル
【0078】
【化13】

【0079】
4−(2−カルボキシフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(5.0g、160mmol、1.0当量)およびTHF(100mL、1.0mol)を窒素下、室温で合わせた。1.0Mのボラン−THF錯体を含むTHF(32.7mL、32.7mmol、2.0当量)を10分にわたり滴下して加えた(5℃で発熱、ガス発生)。混合物を室温で5分間撹拌し、次いで50℃で1時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、反応をMeOH(30mL)でゆっくりとクエンチし(穏やかに発熱、顕著なガスの発生)、次いで回転蒸発法により濃縮した。この材料をMeOH(2×50mL)で共沸した。粗生成物をEtOAc(100mL、1mol)に溶解させ、NaHCO(50mL)、次いで飽和NaCl水(50mL)で洗浄した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(4.4g)を淡黄色の透明な油として得、静置し凝固させた。
【0080】
4−(2−ヒドロキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(50.0g、172mmol、1.0当量)をDCM(500mL、8000mmol)に溶解させた。混合物を窒素下、0℃で冷却し、メタンスルホン酸無水物(44.8g、257mmol、1.5当量)を一度に加えた。DIPEA(47.8mL、274mmol、1.6当量)を5分にわたり滴下して加え、混合物を0℃で90分間撹拌した。水(400mL、20mol)を加え、混合物を5分間撹拌した。相を分離し、有機層を水(300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、溶媒を除去して表題化合物(70g)を粘性(thick)油として得、さらに精製することなく使用した。
H NMR (400 MHz, DMSO−d) δ (ppm) 7.37−7.43 (m, 3H), 7.31 (d, 1H), 7.22 (m, 2H), 5.38 (s, 2H), 4.28 (m, 2H), 2.92−3.10 (m, 1H), 2.92 (s, 3H), 2.80−2.92 (m, 2H), 1.63−1.81 (m, 4H), 1.51 (s, 9H)。
【0081】
(実施例1)
4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン
【0082】
【化14】

【0083】
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(2.1g、4.7mmol、1.0当量)をMeCN(46mL、890mmol)に溶解させ、KCO(1.9g、14mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(1.0g、7.0mmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で一晩振盪し、次いで室温まで冷却した。上清をKCOおよび他の固体から分離した。上清にTFA(7mL、90mmol、20.0当量)を加え、混合物を一晩室温で振盪した。次いでこの溶液を濃縮して粗残渣を得た。残渣を5.0mLの1:1 AcOH/HO、次いで追加の2.0mLのAcOHに溶解させ、濾過し、分取HPLCにより精製して表題化合物をTFA塩(1.3g、97.5%純度)として得た。MS m/z:[M+H]1818NOの計算値,322.13;観測値 322.2。
H NMR (CDCl) δ (ppm) 9.83 (br.s, 1H); 9.32 (br.s, 1H); 7.46−7.39 (m, 2H); 7.32 (d, J = 6.8 Hz, 1H); 7.26−7.21 (m, 1H); 6.76−6.66 (m, 2H); 5.07 (s, 2H); 3.69−3.50 (m, 2H); 3.38 (t, J = 11.6 Hz, 1H); 3.20−3.02 (m, 2H); 2.19 (q, J = 12.8 Hz, 2H); 2.12−2.01 (m, 2H)。
【0084】
HCl塩としての4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジンの合成
4−(2−メタンスルホニルオキシメチルフェニル)ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(27.0g、60.6mmol、1.0当量)をMeCN(540mL)に溶解させ、KCO(25g、180mmol、3.0当量)および2,4,6−トリフルオロフェノール(13.5g、90.9mmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で6時間激しく撹拌し、熱を除去し、一晩撹拌した。混合物を室温で冷却し、EtOAc(700mL)および水(700mL)で希釈した。相を分離し、有機層を1.0MのNaOH水溶液(2×400mL)および飽和NaCl水(1×400mL)で2回洗浄し、次いでNaSOで乾燥させ、溶媒を除去して粗4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)−フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(25.0g)を得た。粗生成物を、より小規模な実験で得られたものと合わせて合計30gとし、クロマトグラフィー(ヘキサン中0〜10%EtOAc)により精製して4−[2−(2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(22.0g)を得た。
【0085】
このt−ブチルエステル(22.0g、31.3mmol、1.0当量)を1.25MのHClを含むEtOH(250mL、310mmol、10.0当量)と合わせた。混合物を室温で8時間撹拌し、次いで−10℃で約48時間にわたり保存した。溶媒の大部分を回転蒸発法により除去した。得られた粘性スラリーにEtOAc(80mL)を加え、続いて室温で2時間撹拌した。第1の収穫物(crop)を濾過により単離し、濾過ケークをEtOAc(20mL)で洗浄し、乾燥させて表題化合物をヒドロクロリド塩(8.5g、>99%純度)の白色の固体として得た。濾液のHPLCから、生成物の面積の約25%であることが示される。第2の収穫物では、溶媒を回転蒸発法により除去し、得られた固体(約10g)をEtOAc(40mL)で最初に室温、次いで60℃、再度室温にてスラリー化して表題化合物をヒドロクロリド塩(1.7g、>99%純度)として得た。
【0086】
(実施例2)
4−[2−(2,6−ジフルオロフェノキシメチル)フェニル]ピペリジン
【0087】
【化15】

【0088】
4−[2−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)フェニル]ピペリジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル(225mg、505μmol、1.0当量)をMeCN(5.0mL、97mmol)に溶解させ、KCO(210mg、1.5mmol、3.0当量)および2,6−ジフルオロフェノール(98mg、760μmol、1.5当量)に加えた。混合物を50℃で一晩振盪し、次いで室温まで冷却した。上清をKCOおよび他の固体から分離した。
【0089】
上清にTFA(800μL、10mmol、20.0当量)を加え、混合物を一晩室温で振盪した。次いで溶液を濃縮して粗残渣を得た。残渣を1.5mLの1:1 AcOH/HO、次いで追加の0.3mLのAcOHに溶解させ、濾過し、分取HPLCにより精製して表題化合物をTFA塩(115mg、95%純度)として得た。MS m/z:[M+H]1819NOの計算値 304.14;観測値 304.2。
【0090】
本発明についてその具体的な態様または実施形態を参照しながら記載してきたが、本発明の真の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であり、あるいは、等価物に置き換えることが可能であることを当業者であれば理解するであろう。加えて、適用される特許法(statues)および規則で認められる範囲で、本明細書に引用する刊行物、特許および特許出願はすべて、各文書を参照によって本明細書に個別に援用してあるのと同じ程度に参照によってその全体を本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物:
【化16】


またはその塩を調製するプロセスであって、式中:aは0、1、2、3または4であり;Rは各々独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;Rは水素、ハロまたは−C1〜6アルキルであり;R、RおよびRは独立に水素またはハロであり;前記プロセスは:
(a)下記式1の化合物:
【化17】


またはその塩を塩基の存在下で下記式2の化合物:
【化18】


と反応させて下記式3の化合物:
【化19】


またはその塩を得るステップであって、式中、Lは脱離基であり、Pはアミノ保護基である、ステップ;および
(b)前記式3の化合物またはその塩から前記アミノ保護基Pを除去して式Iの化合物またはその塩を得るステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
aは0であり、RおよびRは水素であり、そしてRおよびRはフルオロである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Lはハロゲン基、スルホン酸エステル基およびアシルオキシ基から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Lは式−OS(O)−Rを持つスルホン酸エステル基であり、式中、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルであり、そして前記フェニル基は任意に−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されている、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
Lは−OS(O)−CHまたは−OS(O)−4−メチルフェニルである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
Pはt−ブトキシカルボニル、トリチル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、ホルミル、トリメチルシリルおよびt−ブチルジメチルシリルから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
Pはt−ブトキシカルボニルである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(a)の前記塩基はアルカリ金属炭酸塩である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルカリ金属炭酸塩は炭酸カリウムである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記式1の化合物またはその塩は:
(a’)下記式4の化合物:
【化20】


またはその塩を還元剤と反応させて下記式5の化合物:
【化21】


またはその塩を得るステップ;および
(b’)前記式5の化合物またはその塩のヒドロキシル基を脱離基Lに変換して式1の化合物またはその塩を得るステップ
を含むプロセスにより調製される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
aは0である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
Lはハロゲン基、スルホン酸エステル基およびアシルオキシ基から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
Lは式−OS(O)−Rを持つスルホン酸エステル基であり、式中、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルであり、そして前記フェニル基は任意に−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されている、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
Lは−OS(O)−CHまたは−OS(O)−4−メチルフェニルである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記還元剤はボランジメチルスルフィド錯体またはボラン−テトラヒドロフラン錯体である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項16】
ステップ(b’)でp−トルエンスルホニルクロリドまたはメタンスルホン酸無水物が使用される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項17】
下記式1の化合物であって:
【化22】


式中:Lはブロモ、ヨードまたは−OS(O)−Rであり、Rは−C1〜4アルキルまたはフェニルであり、前記フェニルは任意に−C1〜4アルキル、ハロまたはニトロで置換されており;aは0、1、2、3または4であり;Rは各々独立にハロまたはトリフルオロメチルであり;そしてPはアミノ保護基である
化合物またはその塩。
【請求項18】
Lは−OS(O)−Rであり、Rはメチルまたは4−メチル−フェニルであり;aは0であり;そしてPはt−ブトキシカルボニルである、請求項17に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−508759(P2012−508759A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536490(P2011−536490)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/064304
【国際公開番号】WO2010/056938
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】