説明

4灯式ヘッドランプのエーミング機構

【課題】光軸調整に必要な回転トルクを低く抑えることができる耐久性の高い4灯式ヘッドランプのエーミング機構を提供すること。
【解決手段】ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に第1及び第2のリフレクタを傾動可能に収容して成る4灯式ヘッドランプの前記第1及び第2のリフレクタにそれぞれ螺合する第1及び第2のアジャストスクリュー15,16を備え、該第1及び第2のアジャストスクリュー15,16を回して第1及び第2のリフレクタを傾動させることによって光軸調整を行う4灯式ヘッドランプのエーミング機構20において、前記第1及び第2のアジャストスクリュー15,16の間に1つの基準ホイール23を配置し、該基準ホイール23の回転をベベルギヤ25〜27,30,31,21,22を介して第1及び第2のアジャストスクリュー15,16にそれぞれ伝達するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に第1及び第2のリフレクタを傾動可能に収容して成る4灯式ヘッドランプの光軸を調整するためのエーミング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4灯式ヘッドランプは、灯室内にハイビーム(走行ビーム)用ランプとロービーム(すれ違いビーム)用ランプを収容して構成されており、各ランプは光源を支持する第1及び第2リフレクタをそれぞれ備えている。
【0003】
斯かる4灯式ヘッドランプにおいては、各ランプの光軸を調整するためのエーミング機構が設けられている。このエーミング機構は、各ランプの第1及び第2のリフレクタをハウジングに対して傾動可能に支持し、これらの第1及び第2のリフレクタにそれぞれ螺合する第1及び第2のアジャストスクリューを回して第1及び第2のリフレクタを傾動させることによって光軸調整を行うものである。
【0004】
ところで、上記エーミング機構によってハイビーム用ランプとロービーム用ランプの光軸を個別に調整することは面倒且つ困難である。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、第1及び第2のアジャストスクリューの回転をベルト機構によって連動させ、第1及び第2のリフレクタを同時に傾動させてハイビーム用ランプとロービーム用ランプの光軸調整を同時に行うようにした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−133913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案された構成では、ベルトがゴム製である場合には、該ベルトの伸び等のために第1及び第2のアジャストスクリューの回転を高精度に同期させることができない可能性があるとともに、ベルトの寿命が短く、光軸調整に必要なトルクが比較的大きいという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、光軸調整に必要な回転トルクを低く抑えることができる耐久性の高い4灯式ヘッドランプのエーミング機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に第1及び第2のリフレクタを傾動可能に収容して成る4灯式ヘッドランプの前記第1及び第2のリフレクタにそれぞれ螺合する第1及び第2のアジャストスクリューを備え、該第1及び第2のアジャストスクリューを回して前記第1及び第2のリフレクタを傾動させることによって光軸調整を行う4灯式ヘッドランプのエーミング機構において、前記第1及び第2のアジャストスクリューの間に1つの基準ホイールを配置し、該基準ホイールの回転をベベルギヤを介して前記第1及び第2のアジャストスクリューにそれぞれ伝達するよう構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基準ホイールと前記第1及び第2アジャストスクリューにベベルギヤをそれぞれ設け、基準ホイールのベベルギヤと第1及び第2のアジャストスクリューのベベルギヤ同士を、両端にベベルギヤが結着された第1及び第2の回転軸によって連結したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記基準ホイールの回転をベベルギヤを介して同一速度比で前記第1及び第2アジャストスクリューに伝達することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ベベルギヤを樹脂成型品としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1及び第2のアジャストスクリューの間に1つの基準ホイールを配置し、該基準ホイールの回転をベベルギヤを介して第1及び第2のアジャストスクリューにそれぞれ伝達するよう構成したため、ベルトの伸びや耐久性等の問題が発生することがなく、1つの基準ホイールの回転を第1及び第2のアジャストスクリューに高精度に伝達して両アジャストスクリューを同期して回転させることができ、比較的小さな回転トルクで正確な光軸調整を行うことができるとともに、エーミング機構の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るエーミング機構を備える4灯式ヘッドランプの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係るエーミング機構の構成図である。
【図4】本発明に係るエーミング機構の基準ホイールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係るエーミング機構を備える4灯式ヘッドランプの正面図、図2は図1のA−A線断面図であり、図1に示す4灯式ヘッドランプ1は、車両の前部左右に設けられるものであって、ハウジング2とその前面開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4内にハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6を横方向に並べた状態で収容して構成されている。
【0017】
上記ハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6は、光源であるバルブ7,8と、各バルブ7,8を保持するリフレクタ9,10をそれぞれ備えており、各リフレクタ9,10はハウジング2に対してピボット軸11,12を中心として傾動可能に支持されている。
【0018】
而して、ハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の各バルブ7,8の光軸調整はエーミング機構によって左右方向及び上下方向についてそれぞれなされる。
【0019】
即ち、各リフレクタ9,10は、各ピボット軸11,12の横に設けられた左右方向調整用のアジャストスクリュー13,14を回すことによってピボット軸11,12を中心としてそれぞれ左右に傾動し、これによって各バルブ7,8の左右方向(水平方向)の光軸が調整される。又、各リフレクタ9,10は、各ピボット軸11,12の下方に設けられた上下方向調整用のアジャストスクリュー15,16を回すことによってピボット軸11,12を中心として上下に傾動し、これによって各バルブ7,8の上下方向(垂直方向)の光軸が調整される。
【0020】
而して、本実施の形態では、上下方向調整用のアジャストスクリュー15,16が同期して同時に回転され、上下方向の光軸調整がハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6について同時になされるよう構成されている。
【0021】
図2に示すように、上下調整用のアジャストスクリュー15,16は、ハウジング2の背面に形成されたボス2aによって回転可能に挿通支持されており、それらの灯室4内に臨むネジ部15a,16aは、各リフレクタ9,10の背面に突設されたリブ9a,10aに保持されたナット17,18にそれぞれ螺合している。又、各アジャストスクリュー15,16のハウジング2の背面から外部に突出する部分には本発明に係るエーミング機構20が設けられている。尚、図示しないが、左右調整用の前記アジャストスクリュー13,14も上下調整用のアジャストスクリュー15,16と同様にハウジング2の背面に回転可能に挿通支持されており、それらの端部のネジ部はリフレクタ9,10の背面に突設されたリブに保持されたナットに螺合している。
【0022】
ここで、本発明に係るエーミング機構20の構成を図3及び図4に基づいて以下に説明する。
【0023】
図3は本発明に係るエーミング機構の構成図、図4は同エーミング機構の基準ホイールの側面図であり、図3に示すように、ハイビーム用ランプ5の上下方向の光軸を調整するアジャストスクリュー15の端部には歯数42のベベルギヤ21が結着されており、ロービーム用ランプ6の上下方向の光軸を調整するアジャストスクリュー16の端部にはアジャスタ19の歯数24のベベルギヤ22が結着されている。
【0024】
又、両アジャストスクリュー15,16の中間位置には1つの基準ホイール23が配置されており、該基準ホイール23の背面には図4に示すように歯数29のクラウンギヤ24が設けられ、同基準ホイール23の正面には歯数27のベベルギヤ25が設けられている。
【0025】
基準ホイール23に設けられた上記ベベルギヤ25には共に歯数7の2つのベベルギヤ26,27が相対向する位置に噛合しており、これらのベベルギヤ26,27は左右方向に延びる回転軸28,29の各一端に結着されている。そして、一方の回転軸28の他端には歯数7のベベルギヤ30が結着されており、このベベルギヤ30はアジャストスクリュー15の端部に結着された前記ベベルギヤ21に噛合している。又、他方の回転軸29の他端にはドライバ形状の歯数4のベベルギヤ31が一体に形成されており、このベベルギヤ31はアジャストスクリュー16の端部に結着された前記ベベルギヤ22に噛合している。尚、本実施の形態では、基準ホイール23及びこれに設けられたベベルギヤ25と他のベベルギヤ26,27,30,31は樹脂成型品として構成されている。
【0026】
而して、以上のように構成されたエーミング機構20を用いてハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の上下方向の光軸調整が以下のように同時になされる。
【0027】
即ち、ハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の上下方向の光軸調整に際しては、図4に示すようにドライバ32の先端を基準ホイール23に設けられたクラウンギヤ24に噛合させ、該ドライバ32を何れかの方向に回転させる。すると、基準ホイール23とベベルギヤ25が一体に回転し、ベベルギヤ25の回転は両ベベルギヤ26,27と回転軸28,29及びベベルギヤ30,31を経てベベルギヤ21,22にそれぞれ伝達され、該ベベルギヤ21,22とアジャストスクリュー15,16がそれぞれ回転する。ここで、ベベルギヤ25の歯数は27、ベベルギヤ26,27の歯数は共に7であるため、ベベルギヤ25の回転は27/7に増速されて回転軸28,29とベベルギヤ30,31にそれぞれ伝達される。そして、一方のベベルギヤ30の歯数は7、ベベルギヤ21の歯数は42であるため、ベベルギヤ30の回転は7/42=1/6に減速されてベベルギヤ21とアジャストスクリュー15に伝達される。又、他方のベベルギヤ31の歯数は4、ベベルギヤ22の歯数は24であるため、ベベルギヤ31の回転は4/24=1/6に減速されてベベルギヤ22とアジャストスクリュー16に伝達される。
【0028】
従って、ドライバ32によって基準ホイール23を回せば、その回転は同一速度比で両アジャストスクリュー15,16に伝達されることとなり、両アジャストスクリュー15,16が同期して同量だけ回転する。
【0029】
上述のように両アジャストスクリュー15,16が同期して同量だけ回転すると、これらのアジャストスクリュー15,16のネジ部15a,16aに螺合するナット17,18がアジャストスクリュー15,16のネジ部15a,16aに沿ってそれぞれ移動するため、ハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の各リフレクタ9,10がピボット軸11,12を中心として上下に傾動する。この結果、リフレクタ9,10にそれぞれ保持されたバルブ7,8の上下方向の光軸調整がドライバ32を回すだけで同時になされる。尚、ハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の左右方向の光軸調整はアジャストスクリュー13,14をドライバ等によって回すことによってなされる。
【0030】
以上のように、本発明に係るエーミング機構20によれば、両アジャストスクリュー15,16の間に1つの基準ホイール23を配置し、該基準ホイール23の回転をベベルギヤ25〜27,回転軸28,29及びベベルギヤ30,31,21,22を経て両アジャストスクリュー15,16にそれぞれ伝達するよう構成したため、ベルトの伸びや耐久性等の問題が発生することがなく、1つの基準ホイール23の回転を両アジャストスクリュー15,16に高精度に伝達して両アジャストスクリュー15,16を同期して回転させることができ、比較的小さな回転トルクでハイビーム用ランプ5とロービーム用ランプ6の正確な光軸調整を同時に行うことができる。
【0031】
又、本実施の形態では、耐久性に劣るベルトに代えて樹脂成型品であるベベルギヤ25〜27、30,31,21,22によってドライバ32の回転を両アジャストスクリュー15,16に伝達するようにしたため、ベベルギヤ25〜27、30,31,21,22の耐久劣化等の問題が発生することがなく、エーミング機構20の耐久性が高められるという効果も得られる。
【符号の説明】
【0032】
1 4灯式ヘッドランプ
2 ハウジング
3 アウタレンズ
4 灯室
5 ハイビーム用ランプ
6 ロービーム用ランプ
7,8 バルブ
9,10 リフレクタ
11,12 ピボット軸
13〜16 アジャストスクリュー
17,18 ナット
19 アジャスタ
20 エーミング機構
21,22 ベベルギヤ
23 基準ホイール
24 クラウンギヤ
25〜27 ベベルギヤ
28,29 回転軸
30,31 ベベルギヤ
32 ドライバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に第1及び第2のリフレクタを傾動可能に収容して成る4灯式ヘッドランプの前記第1及び第2のリフレクタにそれぞれ螺合する第1及び第2のアジャストスクリューを備え、該第1及び第2のアジャストスクリューを回して前記第1及び第2のリフレクタを傾動させることによって光軸調整を行う4灯式ヘッドランプのエーミング機構において、
前記第1及び第2のアジャストスクリューの間に1つの基準ホイールを配置し、該基準ホイールの回転をベベルギヤを介して前記第1及び第2のアジャストスクリューにそれぞれ伝達するよう構成したことを特徴とする4灯式ヘッドランプのエーミング機構。
【請求項2】
前記基準ホイールと前記第1及び第2アジャストスクリューにベベルギヤをそれぞれ設け、基準ホイールのベベルギヤと第1及び第2のアジャストスクリューのベベルギヤ同士を、両端にベベルギヤが結着された第1及び第2の回転軸によって連結したことを特徴とする請求項1記載の4灯式ヘッドランプのエーミング機構。
【請求項3】
前記基準ホイールの回転をベベルギヤを介して同一速度比で前記第1及び第2アジャストスクリューに伝達することを特徴とする請求項1又は2記載の4灯式ヘッドランプのエーミング機構。
【請求項4】
前記ベベルギヤを樹脂成型品としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の4灯式ヘッドランプのエーミング機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−201186(P2012−201186A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66620(P2011−66620)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】