説明

5−アミノレブリン酸誘導体及びその塩

【課題】5−アミノレブリン酸(ALA)の投与量を増加させることなく、細胞内のプロトポルフィリンIX(PpIX)の集積量を増大させ、光線力学的療法(PDT)の効果を向上させることができる、ALA誘導体及びその塩を提供すること
【解決手段】5−アミノレブリン酸アミドと糖の間にスペーサーとしてアルキレン鎖を導入することにより、がん細胞の糖認識部位に結合しやすくなることが期待できる、安定したALA誘導体:


(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アミノレブリン酸(ALA)の誘導体であって、悪性腫瘍治療剤などとして有用であり、生体に投与後に悪性腫瘍組織への集積性が高く、細胞内で速やかに5−アミノレブリン酸を生成することができる5−アミノレブリン酸誘導体又はその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本における悪性新生物(がん)の罹患率又は死亡率は増加の一途をたどっており、日本人の約1/3はがんで死亡するといわれている。がんの撲滅は現代の科学技術をもってしても成し得ることのできない人類共通の課題といえる。日本におけるがん治療法は、外科的切除がその大半を占め、外科的切除単独、及び外科的切除と薬剤投与等との併用療法を合わせると約7割に達する。しかし、外科的切除によるがん治療は、生体侵襲性が高く、臓器の温存ができないなどの問題点がある。また、現代医療においては、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上が強く要請されており、今後、さらなる高齢化社会を迎えるにあたり、その要請はますます強くなると考えられる。したがって、患者のQOLを考慮した新たながん治療法が求められている。
【0003】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:以下「PDT」ともいう。)は、光に反応する化合物を投与し、光を照射することにより標的箇所を治療する方法であり、治療が簡便で、生体侵襲性が小さく、臓器温存が可能であることなどから、近年、QOLを考慮した新たながん治療法として注目されている。PDTによるがん治療にあたっては、腫瘍親和性を有し、効率よく光に反応する光増感作用を有する化合物を用いることが望まれているが、このような性質を有する化合物として、プロトポルフィリンIX(PpIX)が注目されている。PpIXは、ヘムやクロロフィル等の色素の前駆体として知られており、がん組織へ特異的に集積する性質を有し、がん細胞内に蓄積したPpIXは、光照射されることにより周囲の酸素分子を光励起し、その結果生成する一重項酸素が、その強い酸化力による殺細胞効果を有するとされている。
【0004】
一方、5−アミノレブリン酸(以下「ALA」ともいう)は、色素生合成経路の中間体として知られており、動物や植物や菌類に広く存在し、それ自身は光増感作用を有さないが、色素生合成経路を経てPpIXを誘導するとされている。かかるALA又はその誘導体の投与による効果を利用して開発された、病変の検出及び治療方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ALA及びPpIXを利用したPDTの特長として、1)生体内に存在する化合物であり毒性が低い、2)代謝が速く副作用が少ない、3)経口投与が可能である、4)腫瘍選択性が高い、5)水溶性である点等を挙げることができるといわれているが、生体内に投与後、細胞に取り込まれるALA量はわずかであり、治療効果をもたらすためには多量に投薬する必要がある。しかしながら、ALAを生体内に20〜60mg/kgB.W以上投与すると、日光過敏症や嘔吐、一時的な肝機能障害を引き起こすことが知られており、ALAの投与量を増加させることなく、細胞内PpIXの集積量を増大させ、PDT効果を向上させるため、種々の検討がなされている。
【0006】
例えば、ALAにエステル結合を介して長鎖アルコールを結合したALAエステル(例えば、特許文献2〜4及び非特許文献1〜3参照)や、ALAにエステル結合を介して芳香族系アルコールを結合したALAエステル(例えば、非特許文献4参照)が合成され、その細胞内集積性について詳細に報告されている。その結果、これらのALAエステルは、ALAと比較して疎水性が高いこと、また細胞内への取込機序がALAとは異なることなどが確認され、細胞内へのALA及びPpIXの集積性が向上することが明らかにされている。しかし、ALAと比較して細胞毒性が高くなること、疎水性の増加はALA及びPpIXの正常細胞への集積性も増加させることなどの問題点が指摘されており、それらの問題を生じることなく、ALAが効率よくがん組織に取り込まれ、PpIXが、がん細胞内に蓄積するための新たな方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】特許2731032号公報
【特許文献2】国際公開第2002/010120号パンフレット
【特許文献3】米国特許第7217736号明細書
【特許文献4】加国特許第2327393号明細書
【非特許文献1】Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology, 34(1),95-6(1996)
【非特許文献2】Photochemistry and Photobiology, 64(6),994-1000 (1996)
【非特許文献3】Drugs in R&D, 6(4),235-8 (2005)
【非特許文献4】Photochemistry and Photobiology, 78 (5), 481-486 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ALAの投与量を増加させることなく、細胞内のPpIXの集積量を増大させ、PDTの効果を向上させることができる、ALA誘導体及びその塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、従来と異なるALA誘導体とその生体内における挙動との関係を見出すべく鋭意研究を重ねていたが、ALAに水溶性を付与したALA配糖体との着想に至り、今回、5−アミノレブリン酸アミドと糖の間にスペーサーとしてアルキレン鎖を導入することにより、がん細胞の糖認識部位に結合しやすくなることが期待できる、安定したALA誘導体を製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、[1]式(I)で表される5−アミノレブリン酸誘導体又はその塩;
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)や、[2]上記式(I)中、Qで表される単糖残基を提供する単糖が、以下の式(II)で表されることを特徴とする前記[1]記載の化合物又はその塩;
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、OH、NHCOR、又は保護基を導入したOHを表す。但し、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHである。また、Rは−(CH−CHを表し、mは0〜5の整数を表す)や、[3]上記式(I)中、Qで表される単糖残基が、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、L−フコース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−マンノサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンからなる群から選択される残基であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の化合物、又はその塩や、[4]上記式(I)中、nが、2又は3であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか記載の化合物又はその塩や、[5]式(I)で表される化合物の塩が、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩又はリン酸塩であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか記載の化合物又はその塩に関する。
【0015】
さらに本発明は、単糖又はオリゴ糖と、アミノアルコールとを反応させてアミノアルキルグリコシドを得る工程、及び、かかるアミノアルキルグリコシドと5−アミノレブリン酸とを反応させて式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程を有することを特徴とする、式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法;
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物又はその塩は、悪性腫瘍治療剤として有効なALA誘導体であって、生体に投与後に悪性腫瘍組織への集積性が高く、細胞内で速やかにALAが生成し、ALAの投与量を増加させることなく、細胞内のPpIXの集積量を増大させ、PDTの効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の化合物又はその塩としては、式(I)で表される化合物又はその塩;
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)であれば特に制限されず、上記式(I)における“Q”、すなわち単糖残基又はオリゴ糖残基としては、還元末端を有する単糖やオリゴ糖由来の残基を例示することができ、上記単糖残基を提供する単糖としては、一例としては、以下の式(II);
【0022】
【化5】

【0023】
で表される単糖を挙げることができ、また具体的には、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、タガトース、ラムノース、セドヘプツロース、デオキシリボース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、グルクロン酸、フルクトース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、等のD体及びL体など、並びにそれらのデオキシ糖、アミノ糖、チオ糖等の誘導体を挙げることができる。また、ヒトの細胞に多く認められることや、市販品として入手がしやすいことから、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、L−フコース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンを好適に例示することができる。他方、上記オリゴ糖残基を提供するオリゴ糖としては、2個以上3個以下の単糖がグリコシド結合により1分子となった化合物を挙げることができ、例えば、上記1又は複数の単糖が構成成分として選択され、グリコシド結合を形成して1分子となった化合物を挙げることができ、具体的には、ラクトース、マルトース、セロビオース、パラチノース、ゲンチオビオース、スクロース、トレハロース、ニゲロース、ラミナリビオース、コージビオース、イソマルトース、ソホロース、イソマルトトリオース、メリビオース、キトビオース、マルトトリオース、パノース等を挙げることができる。そして、上記還元末端を有する単糖又はオリゴ糖を、α又はβ結合により5−アミノレブリン酸アミドのアミドの部分とアルキレン鎖を介してO−グリコシド結合することにより、上記式(I)で表される化合物又はその塩を形成することができ、また、上記式(I)中、nは、上記式(I)で表される化合物又はその塩の親水性の維持のため、2〜8が好ましく、2〜5がより好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0024】
上記式(II)中、R、R、R、R、R、R、及び、Rは、例えば、互いに独立して、H、OH、NHCOR、又は保護基を導入したOH(水酸基)を表し、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHであり、また、Rは−(CH−CHを表し、mは0〜5の整数を表し、上記OH(水酸基)に導入する保護基としては、ピバロイル基、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、シリル基、アルキル基等を挙げることができ、また、例えば、上記式(II)で表される単糖がα結合により5−アミノレブリン酸アミドとアルキレン鎖を介してO−グリコシド結合した場合は、以下の式(III)にて、
【0025】
【化6】

【0026】
また、上記式(II)で表される単糖がβ結合により5−アミノレブリン酸アミドとアルキレン鎖を介してO−グリコシド結合した場合は、以下の式(IV)にて、
【0027】
【化7】

【0028】
上記式(I)で表される化合物が表現される。
【0029】
本発明の化合物の塩としては、上記式(I)で表される化合物と同効であれば特に制限されないが、例えば、薬学的に許容される塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の酸付加塩や、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸の酸付加塩などを挙げることができ、5−アミノレブリン酸塩酸塩又は5−アミノレブリン酸リン酸塩を好適に例示することができる。なお、本発明の塩は、使用時において水溶液、懸濁液、粉体等として用いることができ、本発明の化合物又はその塩は単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の化合物又はその塩は、生体内に投与されることで、色素生合成経路を経て腫瘍親和性を有するPpIXを産生し、PpIXが蓄積したがん細胞内にPDTを施すことにより、その結果生成する一重項酸素が、その強い酸化力による殺腫瘍細胞効果をもたらすことが期待される。また、腫瘍細胞は、正常細胞より分裂、増殖が盛んなため貪食性が高く、特にエネルギー源として糖を多量に必要とすること、また腫瘍細胞表面に発現する糖鎖認識タンパク質であるレクチンにより糖が認識されることによって、腫瘍組織に対して能動的、かつ、効率的にALAが送達されることが期待できる。
【0031】
本発明の化合物又はその塩はPDTにおいて光増感剤として用いることができ、光増感剤としてのPpIXの前駆体として本発明の化合物を用いる場合には、経口又は非経口の形態で投与することができ、本発明の化合物又はその塩を用いた経口投与における剤型としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等を挙げることができ、本発明の化合物又はその塩を用いた静脈注射、筋肉注射、局所注射等の非経口投与における剤型としては、注射剤、点滴剤等を挙げることができる。また、本発明の化合物又はその塩を用いた光増感剤には、必要に応じて他の薬効成分、栄養剤、担体等の他の成分を添加することができ、例えば、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
【0032】
本発明の化合物又はその塩を製造する方法としては、上記式(I)で表される化合物又はその塩を得ることができる方法であれば特に制限されないが、一例として、単糖又はオリゴ糖とアミノアルコールとを反応させてアミノアルキルグリコシドを得る工程、及び、かかるアミノアルキルグリコシドと5−アミノレブリン酸とを反応させて上記式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程を有することを特徴とする、本発明の化合物又はその塩を製造する方法を挙げることができ、上記各工程において、単糖若しくはオリゴ糖、アミノアルコール、及び/又は5−アミノレブリン酸は、保護基を導入することなく反応に用いてもよいが、慣用に従って、単糖やオリゴ糖のアノマー位の水酸基以外の水酸基、アミノアルコールのアミノ基、及び5−アミノレブリン酸のアミノ基に保護基を導入する工程と、導入した保護基の脱離を行う工程を追加して行うことが、副反応を抑え、目的化合物の収率を増やすことができる点で好ましい。
【0033】
上記式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法に用いられる単糖又はオリゴ糖としては、上記式(I)における“Q”、すなわち還元末端を有する単糖残基又はオリゴ糖残基を提供する、単糖又はオリゴ糖であれば特に制限されず、単糖又はオリゴ糖のアノマー位以外の水酸基に保護基を導入した単糖又はオリゴ糖誘導体を含み、上記単糖又はオリゴ糖のアノマー位以外の水酸基に保護基を導入する方法としては、例えば、単糖又はオリゴ糖と水酸基の保護剤とを溶媒に溶解して還流し、減圧濃縮後、洗浄・乾燥し、再度、減圧濃縮して、精製をする方法を挙げることができ、上記水酸基の保護基としては、ベンゾイル基、ピバロイル基、アセチル基、ベンジル基、シリル基等を挙げることができるが、上記単糖の場合は、ピバロイル基が好ましく、上記オリゴ糖の場合は、アセチル基又はベンゾイル基が好ましく、上記溶媒としては、ピリジン溶媒を例示することができ、上記精製方法としては、再結晶を例示することができる。
【0034】
上記式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法に用いられるアミノアルコールとしては、HO−(CH−NHで表されるアミノアルコールの他、該アミノアルコールのアミノ基に保護基が導入されたアミノアルコール誘導体が含まれ、上記式中、nは、2〜8が好ましく、2〜5がより好ましく、2又は3が特に好ましい。かかるアミノアルコールの入手方法としては、市販品を購入する方法や、化学的に合成する方法や、植物体から分離・抽出する方法や、微生物の代謝物より分離・抽出する方法や、酵素的に生産する方法などの公知の方法を含め特に制限されないが、化学的に合成する方法としては、例えば、以下の式(V)に表されるように、相当するアルケン鎖長を有するジオール化合物から、トシラートを調製して、さらにトシラートのアジド化を経て還元する方法を挙げることができる。
【0035】
【化8】

【0036】
上記アミノアルコールのアミノ基に保護基を導入する方法としては、例えば、アミノアルコールを塩素系溶媒に溶解し、氷冷下で、アミノ基の保護剤を添加し、室温で一晩攪拌し、セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、再度、極性溶媒に溶解して酸洗浄した後、乾燥剤で乾燥し、減圧濃縮する方法を挙げることができ、上記アミノ基の保護基としては、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(Troc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、フタロイル基(Phth基)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)等を挙げることができるが、Troc基が好ましく、上記塩素系溶媒としては、ジクロロメタンを例示することができ、上記乾燥剤としては、硫酸ナトリウムを例示することができる。
【0037】
上記式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法における、上記単糖又はオリゴ糖とアミノアルコールとを反応させて、アミノアルキルグリコシドを得る工程としては、例えば、上記アミノアルコールと脱水剤と反応促進剤とを極性溶媒に懸濁し、次に、上記単糖又はオリゴ糖を添加して反応させ、その後、セライトを通して濾過した後に濾液を減圧濃縮し、希釈剤で希釈し、洗浄後、乾燥剤で乾燥・減圧濃縮し、精製してアミノアルキルグリコシドを得る工程を挙げることができる。上記脱水剤としては、モレキュラーシーブス(3A〜5A)を例示することができ、上記反応促進剤としては、銀(I)−シリカアルミナを例示することができ、上記極性溶媒としては、クロロホルム、ピリジン等を例示することができ、上記希釈剤としては、ジクロロメタンを例示することができ、上記乾燥剤としては、硫酸ナトリウムを例示することができ、上記精製の方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。
【0038】
また、上記単糖又はオリゴ糖とアミノアルコールとを反応させてアミノアルキルグリコシドを得る工程においては、上記単糖又はオリゴ糖のアノマー位の水酸基をハロゲン原子で置換した、単糖又はオリゴ糖のハロゲン化物を用いることが好ましく、上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素等を挙げることができるが、単糖の場合は、臭素が好ましく、オリゴ糖の場合は、臭素又は塩素が好ましい。
【0039】
上記アミノアルキルグリコシドに保護基が導入されている場合にアミノ基の保護基を脱離する方法としては、例えば、N−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノアルキルグリコシドを亜鉛粉末試薬で処理し、セライトを通して濾過した後に、固形分を塩素系溶媒に溶解して酸洗浄後、水層を洗浄し、乾燥・減圧濃縮し、精製する方法を例示することができ、上記塩素系溶媒としては、ジクロロメタンを例示することができ、上記精製の方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。
【0040】
上記式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法に用いられる5−アミノレブリン酸としては、以下の式(VI)で表される5−アミノ−4−オキソペンタン酸又はその誘導体及びそれらの塩や、上記5−アミノレブリン酸のアミノ基に保護基を導入した、5−アミノレブリン酸誘導体を含み、かかる5−アミノレブリン酸の入手方法としては、市販品を購入する方法や、化学的に合成する方法(例えば、特開平2−76841号参照)や、植物体から分離・抽出する方法や、微生物の代謝物より分離・抽出する方法(例えば、特開2008−29272号参照)や、酵素的に生産する方法などの公知の方法を含め特に制限されず、
【0041】
【化9】

【0042】
上記5−アミノレブリン酸のアミノ基に保護基を導入する方法としては、例えば、5−アミノレブリン酸塩を極性溶媒に溶解し、アミノ基の保護剤を添加し、室温で数時間攪拌し、セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、再度、極性溶媒で希釈し、酸洗浄、乾燥及び減圧濃縮して、精製する方法を例示することができ、5−アミノレブリン酸のアミノ基に導入される保護基としては、Troc基、Cbz基、フタロイル基(Phth基)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)等を挙げることができるが、Troc基が好ましく、上記極性溶媒としては、テトラヒドロフランを例示することができ、上記精製の方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。
【0043】
本発明の化合物又はその塩の製造方法における、上記アミノアルキルグリコシドと、上記5−アミノレブリン酸とを反応させて上記式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程としては、例えば、塩基性物質に溶解した5−アミノレブリン酸と、塩素系溶媒に溶解したアミノアルキルグリコシドとを、脱水縮合剤を添加して反応させ、その後、洗浄・乾燥し、減圧濃縮し、精製する方法を挙げることができ、上記塩基性物質としては、4−ジメチルアミノピリジンを例示することができ、上記塩素系溶媒としては、ジクロロメタンを例示することができ、上記脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、又は1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を例示することができ、上記精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。
【0044】
本発明の化合物又はその塩の製造方法における、5−アミノレブリン酸のアミノ基の保護基を脱離する方法としては、例えば、上記式(I)で表される化合物又はその塩の保護基が導入された誘導体と亜鉛−銅試薬とを酸性溶媒に添加し、室温で反応させ、濾過・減圧濃縮して洗浄後、乾燥剤で乾燥、減圧濃縮し、精製する方法を挙げることができ、上記酸性溶媒としては酢酸を例示することができ、乾燥剤としては硫酸ナトリウムを例示することができ、精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。さらに、本発明の化合物又はその塩の製造方法における、上記単糖及びオリゴ糖の保護基を脱離する方法としては、上記5−アミノレブリン酸のアミノ基の保護基が脱離した上記式(I)で表される化合物又はその塩を溶媒に溶かし、加溶媒分解試薬を用いて精製して、上記式(I)で表される化合物又はその塩を得る方法を例示することができ、上記溶媒としては、メタノールを例示することができ、上記加溶媒分解試薬としては、ナトリウムメトキシドを例示することができ、上記精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィを例示することができる。
【0045】
上記式(I)で表される化合物又はその塩は、5−アミノレブリン酸とアミノアルコールとを反応させる工程の後、単糖又はオリゴ糖とを反応させる工程を経ることによっても製造することができる。各反応は、前記各製造工程に準じて行うことができる。また、上記式(I)で表される化合物の塩を得る方法としては、上記式(I)で表される化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製する方法を挙げることができ、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解若しくは懸濁させ、酸を添加して通常の方法により塩を形成させる方法を挙げることができる。
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
[2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル−β−D−グルコピラノシドの合成]
本発明の化合物は、式(VII)〜(XV)で示される以下の工程に従って合成された。
[2−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノエタノールの合成]
2−アミノエタノール0.3mL(5.0mmol)をジクロロメタン200mLに溶解し、氷冷下、炭酸ナトリウム1.2g(11.3mmol)と2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルクロリド0.95mL(6.95mmol)を添加し、室温で一晩攪拌した。セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、ジエチルエーテル120mLに溶解し、1N塩酸120mL、水(3×120mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧濃縮し、シロップとして、2−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノエタノール(1)を得た。
【0048】
【化10】

【0049】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:3.50(2H, dd, CH2NH), 3.65(2H, t, CH2OH), 4.69(2H, s, CH2CCl3), 6.00(1H, s, NH)
JCH2NH=5.5 Hz, JCH2OH=5.2 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:43.32(CH2NH), 61.25(CH2OH), 74.36(CH2CCl3), 95.34(CCl3), 155.13(CONH)
【0050】
[ペンタ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドの合成]
クロロホルム37.5mLとピリジン22.5mLに塩化ピバロイル22.75g(0.19mol)を添加し、30分攪拌し、D−グルコース5.45g(0.03mol)を添加し、2日間還流しながら攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタン380mLに溶解し、2N硫酸54mL、10%炭酸水素ナトリウム(5×270mL)、水(2×270mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮してエタノールから再結晶し、ペンタ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド(2)を白色粉末結晶として得た。
【0051】
【化11】

【0052】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:3.83(1H, ddd, H-5), 4.07(1H, dd, H-6a), 4.12(1H, dd, H-6b), 5.10(1H, dd, H-4), 5.18(1H, dd, H-2), 5.34(1H, dd, H-3), 5.66(1H, d, H-1)
J1,2=8.1 Hz, J2,3=10.4 Hz, J3,4=9.1 Hz, J4,5=9.9 Hz, J5,6a=5.1 Hz, J5,6b=2.2 Hz, J6a,6b=12.4 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:27.00, 27.02, 27.05(CH3), 38.68, 38.74, 38.84{COC(CH3)3}, 61.44(C-6), 67.73(C-4), 70.09(C-2), 72.33(C-3), 72.77(C-5), 91.83(C-1), 176.39, 176.41, 177.01, 178.00(C=O)
【0053】
[2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−α−D−グルコピラノシルブロミドの合成]
上記ペンタ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド5g(8.3mol)をジクロロメタン12mLに溶解し、氷冷下で30%臭化水素酸‐酢酸溶液12mLを滴下し、室温で一晩攪拌した。トルエンを添加して濃縮乾固し、ジエチルエーテル100mLに溶解し、10%炭酸水素ナトリウム(2×120mL)、水(2×120mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、ヘキサン:酢酸エチル=4:1から再結晶し、白色粉末結晶として、2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−α−D−グルコピラノシルブロミド(3)を得た。
【0054】
【化12】

【0055】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:4.09(1H, dd, H-6a), 4.13(1H, dd, H-6b), 4.28(1H, ddd, H-5), 4.78(1H, dd, H-2), 5.18(1H, dd, H-4), 5.59(1H, dt, H-3), 6.58(1H, d, H-1)
J1,2=4.0 Hz, J2,3=9.7 Hz, J3,4=9.9 Hz, J4,5=10.0 Hz, J5,6a=2.0 Hz,J5,6b=2.6 Hz, J6a,6b=8.5 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:26.96, 27.00, 27.04, 27.12(CH3), 38.62, 38.71, 38.86{COC(CH3)3}, 60.84(C-6), 66.51(C-4), 69.54(C-3), 70.84(C-2), 72.47(C-5), 86.84(C-1), 176.32, 176.68, 177.24, 177.90(C=O)
【0056】
[N−Troc−5−アミノレブリン酸の合成]
5−アミノレブリン酸塩酸塩(コスモ石油株式会社製)167.6mg(1.0mmol)をテトラヒドロフラン(THF)20mLに懸濁し、炭酸ナトリウム480mg(4.52mmol)と2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルクロリド190μL(1.42mmol)を添加し、室温で4時間攪拌した。セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタン30mLで希釈し、0.02N塩酸50mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル:アセトニトリル=10:1)で精製し、白色粉末結晶としてN−Troc−5−アミノレブリン酸(4)を得た。
【0057】
【化13】

【0058】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:2.65(2H, s, COOHCH2CH2), 2.75(2H, s, CH2CH2CO), 4.12(1H, t, COCH2NH), 4.70(2H, s, CH2CCl3), 5.83(1H, s, NH)
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:27.45(COOHCH2CH2), 34.07(CH2CH2CO), 50.45(COCH2NH), 74.65(CH2CCl3), 95.27(CCl3), 154.45(OCONH), 177.08(COOH), 203.38(CH2COCH2)
【0059】
[2−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドの合成]
上記2−(トリクロロエトキシカルボニル)−アミノエタノール204.1mg(0.87mmol)とMS−3A862.8mgと銀[I]−シリカアルミナ1.55gをジクロロエタン8.6mLに添加し、0℃にて30分攪拌した。次に、上記2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−α−D−グルコピラノシルブロミド1g(1.73mmol)を添加し、0℃にて1時間、10℃にて1時間、さらに室温にて30分攪拌した。セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタン130mLで希釈し、10%炭酸水素ナトリウム130mL、水(130mL×2)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製し、シロップとして、2−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド(5)を得た。
【0060】
【化14】

【0061】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:3.64(2H, dd, CH2NH), 3.79(1H, ddd, H-5), 3.97(1H, dd, H-6a), 4.15(1H, dd, H-6b), 4.22(2H, t, OCH2), 4.54(1H, d, H-1), 4.63(2H, d, CH2CCl3), 4.88(1H, dd, H-2), 5.16(1H, dd, H-4), 5.30(1H, dt, H-3)
J1,2=8.0 Hz, J2,3=9.0 Hz, J3,4=9.9 Hz, J4,5=9.5 Hz, J5,6a=4.5 Hz, J5,6b=2.0 Hz, J6a,6b=12.0 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:26.86{C(CH3)3}, 38.45(CH2N), 60.16(C-6), 66.78(OCH2), 67.51(C-4), 71.70(C-2), 72.28(C-3), 73.59(C-5), 74.30(CH2CCl3), 95.18(C-1), 101.01(CCl3), 175.90, 177.78{C(CH3)3}
【0062】
[2−アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドの合成]
上記2−(トリクロロエトキシカルボニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド411.4mg(0.56mmol)と亜鉛粉末1.743g(26.7mmol)を酢酸7.5mLに添加し、50℃にて2時間攪拌した。セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン36mLに溶解し、1N塩酸24mLで洗浄後、水層をジクロロメタン25mLと10%炭酸ナトリウム50mLで洗浄し、さらに水層をジクロロメタン20mLと10%炭酸ナトリウム15mLで洗浄し、油層を合わせ、10%炭酸ナトリウム15mLと水50mLで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィ(トルエン:酢酸エチル=10:1、→酢酸エチル:メタノール=1:1)で精製し、白色粉末結晶として、2−アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド(6)を得た。
【0063】
【化15】

【0064】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:3.40(2H, s, NH2), 3.82(1H, dd, H-6a), 3.92(1H, ddd, H-5), 4.12(2H, m, CH2O), 4.65(1H, d, H-1), 4.76(1H, dd, H-6b), 4.84(1H, dd, H-2), 5.20(1H, dt, H-4), 5.52(1H, dd, H-3)
J1,2=8.0 Hz, J2,3=9.5 Hz, J3,4=9.7 Hz, J4,5=9.5 Hz, J5,6a=3.0 Hz, J5,6b=2.0 Hz, J6a,6b=8.4 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:38.70(CH2N), 61.61(C-6), 67.35(C-4), 70.18(C-2), 70.55(C-3), 72.85(C-5), 90.00(C-1), 176.93, 177.59, 178.25{C(CH3)3}
【0065】
[2−(N−Troc−5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドの合成]
上記N−Troc−5−アミノレブリン酸35.5mg(0.12mmol)と、上記2−アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド65.4mg(0.12mmol)と、4−ジメチルアミノピリジン4.8mgとをジクロロメタン7.2mL中に0℃にて溶解した。次に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)24.4mgを添加し、0℃で2時間、次いで室温で一晩攪拌した。酢酸エチル11mLと水2.5mLで分配し、油層を5%炭酸ナトリウム(2×4.4mL)、水(3×4.4mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=3:4)で精製し、白色粉末として、2−(N−Troc−5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド(7)を得た。
【0066】
【化16】

【0067】
1H-NMR(400MHz, CDCl3)
δ:2.51(2H, dt, COCH2CH2), 2.63(2H, dt, CH2CH2CO), 3.35(2H, ddd, CH2CH2NH), 3.68(2H, m, OCH2CH2), 3.78(1H, ddd, H-5), 4.02(1H, dd, H-6a), 4.07(2H, d, COCH2NH), 4.12(1H, dd, H-6b), 4.47(1H, d, H-1), 4.67(2H, s, CH2CCl3), 5.09(1H, dd, H-2), 5.29(1H, t, H-4), 5.44(1H, t, H-3), 5.77(1H, t, COCH2NHCO), 6.13(1H, d, CH2CH2NHCO)
J1,2=8.0 Hz, J2,3=10.0 Hz, J3,4=9.9 Hz, J4,5=9.5 Hz, J5,6a=4.0 Hz, J5,6b=2 Hz, J6a,6b=10.2 Hz
13C-NMR(100MHz, CDCl3)
δ:29.64(COCH2CH2), 33.79(CH2CH2CO), 38.73, 38.82, 39.26{COC(CH3)3}, 50.39(COCH2NH), 60.32(C-6), 67.15(C-4), 69.35(OCH2CH2), 70.08(C-2), 70.31(C-3), 70.49(C-5), 74.65(OCH2CCl3), 89.05(CCl3), 95.30(C-1), 154.32(NHCOO), 171.11(NHCOCH2), 176.18, 176.71, 177.29 {COC(CH3)3}, 203.85(CH2COCH2)
【0068】
[2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドの合成]
上記2−(N−Troc−5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド93mg(0.11mmol)と亜鉛−銅試薬を酢酸4mL中に添加し、室温で1.5時間反応させた。セライトを通して濾過した後に、濾液を減圧濃縮し、トルエン(3×14mL)で共沸後、酢酸エチル47mLに溶解し、10%炭酸水素ナトリウム23mL及び食塩水23mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製し、無色シロップとして、2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0069】
【化17】

【0070】
1H-NMR(400 MHz, CD3OD)
δ:2.41(2H, dt, COCH2CH2), 2.72(2H, dt, CH2CH2CO), 3.25(2H, m, OCH2CH2), 3.81(1H, ddd, H-5), 3.87(1H, dd, H-6a), 3.99(1H, ddd, CH2CH2NH), 4.03(1H, dd, H-6b), 4.16(2H, d, COCH2NH), 4.64(1H, d, H-1), 4.95(1H, dd, H-2), 5.07(1H, dt, H-4), 5.35(1H, dd, H-3),5.76(1H, t, COCH2NHCO), 6.00(1H, t, CH2CH2NHCO)
J1,2=8.4 Hz, J2,3=10.0 Hz, J3,4=10.0 Hz, J4,5=10.0 Hz, J5,6a=2 Hz, J5,6b=7.5 Hz,J6a,6b=11 Hz
【0071】
[2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル β−D−グルコピラノシドの合成]
上記2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル 2,3,4,6−テトラ−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド10.4mgをメタノール1.0mLに溶解し、28%ナトリウムメトキシド48μLを添加し、室温で2時間反応させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(メタノール)で精製し、2−(5−アミノレブリニル)アミノエチル β−D−グルコピラノシド(9)を得た。
【0072】
【化18】

【0073】
1H-NMR (400MHz, CD3OD)
δ:2.1及び2.3 (2 × 1H, m, NHCOCH2), 2.46 (2H, m, NHCOCH2CH2), 2.75 (1H, dd, H-3), 2.89 (1H, dd, H-4), 3.09 (2H, m, OCH2CH2), 3.18 (1H, dd, H-2), 3.26 (1H, m, H-5), 3.4 (2H, m, OCH2CH2), 3.69 (1H, m, H-6a), 3.84 (1H, dd, H-6b), 4.18 (2H, m, COCH2NH2), 4.28 (1H, d, H-1)
J1,2= 8.0 Hz, J2,3= 9.0 Hz, J3,4= 8.0 Hz, J5,6a= 4.0 Hz, J5,6b= 1.5 Hz, J6a,6b= 10.0 Hz
13C-NMR (100MHz, CD3OD)
δ:25.12 (NHCOCH2), 30.58 (NHCOCH2CH2), 58.21 (OCH2), 62.71 (C-6), 67.92 (COCH2NH2), 74.92 (C-2), 78.08 (C-5), 104.34 (C-1), 104.49 (CONH), 179.61 (CH2COCH2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される5−アミノレブリン酸誘導体又はその塩;
【化1】

(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)。
【請求項2】
式(I)中、Qで表される単糖残基を提供する単糖が、以下の式(II)で表されることを特徴とする請求項1記載の化合物又はその塩;
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、OH、NHCOR、又は保護基を導入したOHを表す。但し、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHであり、RとRの少なくとも一方はHである。また、Rは−(CH−CHを表し、mは0〜5の整数を表す)。
【請求項3】
式(I)中、Qで表される単糖残基が、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、L−フコース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−マンノサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンからなる群から選択される残基であることを特徴とする請求項1又は2記載の化合物、又はその塩。
【請求項4】
式(I)中、nが、2又は3であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
式(I)で表される化合物の塩が、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩又はリン酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
単糖又はオリゴ糖と、アミノアルコールとを反応させてアミノアルキルグリコシドを得る工程、及び、かかるアミノアルキルグリコシドと5−アミノレブリン酸とを反応させて式(I)で表される化合物又はその塩を得る工程を有することを特徴とする、式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法;
【化3】

(式中、Qは、単糖残基又はオリゴ糖残基を表し、nは、2〜8の整数を表す)。

【公開番号】特開2010−53079(P2010−53079A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220006(P2008−220006)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(593232206)学校法人桐蔭学園 (33)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【出願人】(508123858)SBIアラプロモ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】