説明

5−ケトグルコン酸産生能を有する高温耐性菌、および高温耐性菌を用いた5−ケトグルコン酸の製造方法

【課題】工業的な5−ケト−D−グルコン酸生産に応用できる、高温耐性菌を提供する。
【解決手段】グルコノバクター属に属し、30〜38℃で5−ケト−D−グルコン酸産生能を有する、高温耐性菌、または、FAD−GADH遺伝子を破壊した変異株である、高温耐性菌。該高温耐性菌を、PQQおよび/またはCaイオン存在下、30〜37℃で培養して、5−ケト−D−グルコン酸を生産させる、5−ケト−D−グルコン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温で5−ケトグルコン酸(5KGA)産生能を有する高温耐性菌、および該高温耐性菌を用いた5KGAの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコノバクターは、糖、糖アルコール、糖酸などの広い範囲の化合物を酸化することができ、酸化された産物を高い収率で培地中に蓄積できる酢酸菌の種類である。これらの酸化反応に関与する酵素は、D−グルコース、D−ソルビトール、D−マンニトール、グリセロール、グルコン酸やケトグルコン酸の脱水素酵素である。それら全ての酵素は、細胞質膜表層に固く結合しており、基質から引き抜かれた電子は、ユビキノンを介して末端のユビキノン酸化酵素へ伝達され、その電子伝達反応に伴って生物エネルギーを生成する。
【0003】
D−グルコースのケト−D−グルコン酸への酸化は、細胞膜外に存在する酵素により触媒されることが知られている。D−グルコースは、膜結合ピロロキノリンキノン(PQQ)−グルコース脱水素酵素により、グルコノ−δ−ラクトンへ酸化され、グルコノ−δ−ラクトンは、グルコノラクトナーゼにより、D−グルコン酸へ変換される。グルコノバクター菌で見られたケトグルコン酸の形成は、膜結合グルコン酸脱水素酵素の2つのタイプにより触媒されることをMatsushitaらは報告している(非特許文献1)。1つは、FAD含有2−ケトグルコン酸生産酵素、すなわちFAD−グルコン酸脱水素酵素(FAD−GADH:Gluconate 2−dehydrogenase flavoprotein)、もう1つは、PQQ含有5ケト−D−ケトグルコン酸生産酵素、すなわちPQQ−グリセロ−ル脱水素酵素(PQQ−GLDH:Pyrroloquinoline quinone−glycerol dehydrogenase)である(図1)。また、FAD−GADHが、3つのサブユニットを持つことは、Shinagawaらにより報告されており(非特許文献2)、3つのサブユニットとは、FAD含有脱水素酵素サブユニット、three−heme含有チトクロームCサブユニット、そして未公知の小さなサブユニットである。5KGA生産を触媒する後者の酵素は、PQQ含有ポリオール脱水素酵素と同一であることが、Matsushitaらにより明らかにされており(非特許文献3)、PQQ−GLDHは、D−アラビトール脱水素酵素、D−ソルビトール脱水素酵素、あるいはグリセロール脱水素酵素など、種々の糖アルコールの酸化酵素として知られている。PQQ−GLDHは、多方面の基質と反応できるが、いわゆる「Bertrand−Hudson法」に従って反応が触媒される高い立体特異性をもつ。この酵素は、5KGAをD−グルコン酸から生産するために、D−グルコン酸のC5位置だけを酸化することができるが、D−グルコン酸との酵素親和性は低い。この酵素の遺伝子は、グルコノバクター・サブオキシダンス IFO3255からクローニングされ、2つのオープンリーディングフレームが見出された。1つは、5−膜貫通領域の疎水性領域蛋白をコードすると推定され、もう1つは、いくつかのPQQ依存酵素に類似した脱水素酵素サブユニットをコードしていて、特に膜結合グルコース脱水素酵素のPQQドメインに類似している。一方、細胞質に位置する2KGA還元酵素や5KGA還元酵素は、輸送蛋白により、細胞質に輸送された後で、2KGAや5KGAをそれぞれD−グルコン酸へ変換し、資化するために機能している。
【0004】
5KGAは酒石酸、キシル酸、ビタミンCや重要な香料化合物などの原料となる有用な物質である(非特許文献4)。Greyらは、5KGAを使用したビタミンCの生産方法を提供しており、今日工業的に行われているReichsteind法よりも、緩和な条件下で工業的に製造可能な方法である(特許文献1、2)。
【0005】
ほとんどのグルコノバクター菌株は、D−グルコースから2KGAと5KGAを生産する。このように、グルコノバクター菌による5KGAは、主な副生産物として2KGAを生産し、2つのケトグルコン酸の生産は生体内で競合する。本発明者らは、D-グルコ−スの基質に対し、変換率が80%以上である5KGAを特異的生産するグルコノバクター菌を野生株から選別する方法を報告した(特許文献3)。また、2KGA生産がFAD−GADH遺伝子に触媒されることから、グルコノバクター・オキシダンス 621H (グルコノバクター・サブオキシダンス IFO12528と同一)のFAD−GADH欠損変異株を作製し、D−グルコースからほとんど特異的に5KGAを生産させたという報告がある(非特許文献5)。しかしながら、この常温菌株を使った5KGAの生産のための最適温度は20℃近辺である。工業的規模の培養工程では、培養温度の上昇を下げるための冷却装置が必要である。コスト削減の面からも、より高温で5KGAを生産する菌株が望まれている。本発明者らは、タイ国において、種々の材料から得られた菌株について高温耐性を有するグルコノバクター属菌を報告した(非特許文献6)。しかしながら、高い5KGA生産株については明らにしていない。
【非特許文献1】Matsushita,K.,et al,1994.p.247−301.In D.W.T.A.H.Rose(ed.),Advance In Microbial Pysiology,vol.36.Academic Press Ltd.,London
【非特許文献2】Shinagawa,E.,et al,Agricultural Biological Chemistry 48:1517−1522,1984
【非特許文献3】Matsushita,K.,et al,Applied and Environmental Microbiology 69:1959−1966,2003
【非特許文献4】Salusjarvi,T.,et al,Applied Microbiology and Biotechnology 65:306−314,2004
【非特許文献5】Elfari,M.,et al,Applied Microbiology and Biotechnology 66:668−674,2005
【非特許文献6】Moonmangmee,D.,et al,Bioscience,Biotechnology and Biochemistry 64:2306−2315,2000
【特許文献1】米国特許公報第2421621号
【特許文献2】米国特許公報第2421612号
【特許文献3】特開2008−237191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、工業的な5KGA生産に応用できる高温耐性菌を提供することをその主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、常温菌が生育できない37℃の高温で生育し、5KGAを生産できる菌株をスクリーニングすることにより、新規な3種の高温耐性グルコノバクター属菌を分離した。さらに、FAD−GADH遺伝子系の破壊を行うことにより、5KGAを特異的に生産できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)を提供する。
【0009】
(1)グルコノバクター属に属し、30〜38℃で5KGA産生能を有する高温耐性菌、またはその変異株である5KGA産生能を有する高温耐性菌。
【0010】
(2)上記(1)に記載の変異株が、FAD−GADH遺伝子を破壊した変異株である高温耐性菌。
【0011】
(3)FAD−GADH遺伝子を破壊した変異株が、配列番号7,8,9に示す塩基配列を有するDNA断片を増幅して得られたPCR産物に、カナマイシンカセットを挿入したプラスミドを細胞内に導入して相同組み換えを行うことにより構築した株である上記(2)に記載の高温耐性菌。
【0012】
(4)グルコノバクター・フラテウリ THE42株(受託番号 NITE−P−655)、グルコノバクター・フラテウリ THG 42株(受託番号 NITE−P−657)、グルコノバクター・フラテウリ THF55株(受託番号 NITE−P−659)、グルコノバクター・フラテウリ THE42 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−656)、グルコノバクター・フラテウリ THG42 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−658)、グルコノバクター・フラテウリ THF55 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−660)から選ばれる1種以上の5KGA産生能を有する高温耐性菌。
【0013】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のグルコノバクター属に属する高温耐性菌を、PQQおよび/またはCaイオン存在下、30〜37℃で培養して5KGAを生産させ、5KGAを採取することを特徴とする、5KGAの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、有用な工業製品の原料となる5KGAを、高温条件下で培養することが可能となり、培養中の適正な温度を維持するために、常温菌では必要とされる高い冷却コストを削減することができる。また、変異株は5KGAを特異的に生産するため、精製工程が容易で工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の高温耐性菌は、30〜38℃の高温で5KGAを生産できるグルコノバクター属菌である。グルコノバクター属菌としては、例えばグルコノバクター・サブオキシダンス(Gluconobacter suboxydans)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、グルコノバクター・フラテウリ(Gluconobacter frateurii)などがあげられるが、さらに、これらの野生株を形質転換した変異株であっても良い。
【0016】
本発明の高温耐性菌は、以下のスクリーニング法で得ることができる。すなわち、初期スクリーニングとして、適切な培地、例えばポテト寒天培地に保存した高温耐性グルコノバクター属菌から1つのコロニーをグルコース−グルコン酸培地に接種し、30℃〜37℃で2〜3日間培養し、培地中に茶色の化合物を生産した菌株を2,5−ジケトグルコン酸(2,5DKGA)生産株として除外する。2,5DKGAは,いくつかのグルコノバクター属菌に存在する膜結合FAD−2−ケトグルコン酸脱水素酵素により触媒された2KGA酸化産物である。2,5DKGAを多く生産する菌株は、2KGAを多く形成し、5KGA形成は低いと予想されるため、それらの菌株は除くことが望ましい。残りの菌について、さらに30〜38℃で、グルコース−グルコン酸培地で培養し、培養液の5KGAを定量することで、5KGA生産株を選ぶ。5KGAの生産量は、例えば、還元反応により発色するレゾルシノール試薬による発色反応などで調べることができる。
【0017】
得られた高温耐性グルコノバクター属の野生株は、日本国に寄託されている。受託番号は、グルコノバクター・フラテウリ THE42株が、受託番号 NITE−P−655、グルコノバクター・フラテウリ THG 42株が、受託番号 NITE−P−657、グルコノバクター・フラテウリ THF55株が、受託番号 NITE−P−659である。
【0018】
本発明の高温で5KGA生産能を有する高温耐性グルコノバクター属菌の変異株は、親株として上記野生株だけではなく、2,5DKGA生産株からも選ぶことができ、親株の2KGAを形成に関与する酵素であるFAD−GADH遺伝子を破壊することによって、特異的に5KGAの生産を行うよう改変されたものである。FAD−GADH遺伝子が破壊された欠損株は、野生株の染色体上のFAD−GADH遺伝子、またはその一部のDNA配列を欠失、あるいは該遺伝子の内部に薬剤耐性遺伝子を挿入するなどして正常に機能する酵素を産生しないように修飾した遺伝子を含むDNAで菌を形質転換し、染色体上の正常な遺伝子との間で相同組換えを起こさせることにより、染色体上の該遺伝子を破壊することによって作製する。このような相同組換えの遺伝子置換による遺伝子破壊は、直鎖状DNAやプラスミドを用いる方法として既に確立している。本発明の高温耐性グルコノバクター属菌のFAD−GADH遺伝子破壊株の作製は、以下の操作方法、手順で行なうことができる。
【0019】
1)高温耐性グルコノバクター属菌からDNAの抽出を行う。高温耐性グルコノバクター属菌のからのゲノムDNA抽出法は、Sambrookらの方法(Sambrook,J.,et al,1989.Molecular cloning:a laboratory manual,2nd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)により行うことができる。
【0020】
2)ターゲットとなるFAD−GADH遺伝子のクローニングをする。FAD−GADH遺伝子のクローニングは、常温性グルコノバクター属菌や、エルビニア菌のGADHの遺伝子の中の脱水素酵素サブユニットに維持されている領域からデザインしたプライマーを用いたPCR法や、FAD−GADH遺伝子を用いたハイブリダイゼーションにより行うことができるが、最も効率的な方法としては、グルコノバクター・オキシダンス 621Hのゲノムで報告されている、FAD−GADH遺伝子の配列を基にデザインしたプライマーを用い、1)で得られたゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、FAD−GADH遺伝子の全長を含む遺伝子をPCRにより増幅・取得することができる。クローニングした遺伝子の全配列は、ABI PRISM 310(PE Biosystems社製)を使用して、GENETYX−MAC(Software Development,Tokyo,Japan)やClone Manager(Scientific and Educational Software,Cary,NC)などのソフトウエアで解析し、配列データを得ることができる。また、ホモロジー検索や整列解析(alignment)は、それぞれBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)やCLUSTAL W(www.ebi.ac.uk/clustalw)を使用して得ることができる。
【0021】
本発明のFAD−GADH遺伝子をクローニングして得られるDNA断片としては、gndF(配列番号7)、gndG(配列番号8)、gndH(配列番号9)などがあげられる。これらのDNA断片は増幅して、FAD−GADH遺伝子破壊用プラスミドに使用することができる。
【0022】
3)クローニングした遺伝子の配列情報を基に、FAD−GADH遺伝子破壊用プラスミドを作製する。FAD−GADH遺伝子の破壊用プラスミドの作製は、高温耐性グルコノバクター属菌内で複製不可能なpGEM−T Easy Vector等の大腸菌ベクターに、PCRで増幅したFAD−GADH遺伝子を組み込み、得られたDNAの制限酵素サイトに、カナマイシン等の薬剤耐性物質等からなるカセットを挿入して作製することができる。
【0023】
4)ついで、プラスミド導入によるFAD−GADH遺伝子破壊株の作製を行う。FAD−GADH遺伝子破壊株の作製は、上記遺伝子破壊用プラスミドを、高温耐性グルコノバクター属菌への電気パルス法(Agric.Biol.Chem.,54:443−447,1990、Res.Microbiol.,144:181−185,1993)や、プラスミドを接合法(transconjugation)などの高効率遺伝子導入法により細胞内に導入し、染色体への相同性組換えにより、FAD−GADH遺伝子を破壊(または不活性化)することにより行うことができる。FAD−GADH遺伝子の破壊の確認は、薬剤耐性遺伝子断片が染色体に挿入されている菌株を、適切な濃度の当該薬剤を含むプレート培地上に塗布することにより形質転換された高温耐性グルコノバクター属菌を選抜し、選抜した菌株で2KGA生産のための酵素活性が消失していることを確かめることにより行うことができる。
【0024】
上記の如くして作製された、本発明の形質転換した高温耐性グルコノバクター属菌は、適切な培地、例えばポテト寒天培地(20gグリセロール、5gグルコース、10g酵母エキス、10gポリペプトン、2g寒天、100mlのポテトエキスを蒸留水で1Lとする)で、0〜5℃の低温で保存しておくことができる。長期間の保存は50%グリセロールを含むポテト培地を用い、−80℃で行うことが出来る。
【0025】
本発明の形質転換した高温耐性グルコノバクター属菌の変異株としては次の菌があげられる。グルコノバクター・フラテウリ THE42株(受託番号 NITE−P−655)の変異株が、グルコノバクター・フラテウリ THE42 gndG::Km株で、受託番号 NITE−P−656として日本国に寄託されている。また、グルコノバクター・フラテウリTHG 42株(受託番号 NITE−P−657)の変異株は、グルコノバクター・フラテウリ THG42 gndG::Km株で、受託番号 NITE−P−658として同様に寄託されており、さらに、グルコノバクター・フラテウリ THF55株(受託番号 NITE−P−659)の変異株は、グルコノバクター・フラテウリ THF55 gndG::Kmで、受託番号 NITE−P−660として同様に寄託されている。
【0026】
本発明の5KGAの生産においては、本発明の高温耐性グルコノバクター属菌の野生株または変異株を、好気条件下で増殖培養し、培地中に5KGAを生成蓄積させることができる。
【0027】
本発明の高温耐性グルコノバクター属菌の培養は、炭素源、窒素源および無機塩等を含む通常の栄養培地を用いて行うことが出来る。炭素源として、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトースやマンノースなどの単糖類、ラクトース、シュークロース、マルトースなどの二糖類、グルコン酸ナトリウムやグルコン酸ポタジウムなどのグルコン酸塩、グリセリン、マルチトール、ラクリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アラビトールなどの糖アルコール類が用いられ、このうち、グルコースまたはグルコン酸が好ましく、グルコースが最も好ましい。
【0028】
窒素源としては、例えばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムまたは尿素等をそれぞれ単独もしくは混合して用いることが出来る。また、無機塩として、例えばリン酸一水素カリウム、リン酸ニ水素カリウムまたは硫酸マグネシウム等を使用することが出来る。この他にも必要に応じて、ポリペプトン、肉エキス、酵母エキス、ポテトエキス、コーンスティープリカー等の各種栄養素を培地に適宜添加することもできる。
【0029】
また、本発明においては、5KGAの生産に関わる酵素のために培地にコファクターを添加することができる。本発明の5KGAの生産に関わるPQQ−GLDHは、高温耐性グルコノバクター属菌を高温で生育するとき、酵素の構造的な変化を起こすことが明らかになっている。そのため、培地にコファクターを補充することにより酵素の活性を高い状態で維持することができる。コファクターとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンがあげられ、これらのイオンは、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの化合物で培地中に添加することができる。好ましい化合物としては、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウムであり、最も好ましいのは、塩化カルシウムである。これらの化合物の培地への添加量は、1〜50mM、好ましくは5mMである。
【0030】
さらに、本発明における5KGAの生産に関わる酵素活性のため、培地に添加するコファクターとして、補酵素のピロロキノリンキノン(PQQ)があげられる。酵素活性を維持するために、補酵素の培地への補充を行い、5KGAの生産を高めることができる。PQQの添加量は、0.1〜100μM、好ましくは1〜10μMを培地中に添加する。
【0031】
培養は、通常、通気撹拌または振盪等の好気的条件下、28℃〜38℃、好ましくは30〜37℃の温度で行うことができる。培養時のpHは約5〜7の範囲がよく、培養中のpH調整は酸またはアルカリを添加することにより行うことが出来る。培養期間は、1〜7日間、好ましくは2〜5日間行うことにより5KGAが得られる。5KGAの生産は、最初の成長段階で見られるが、最も高い生産量は、成長安定期に見られる。
【0032】
本発明の高温耐性グルコノバクター属菌の培養菌体および培地からの5KGAの回収は、一般的な発酵生産法に準じて行うことができ、例えば遠心分離、膜分離、カラムクロマトグラフィー等の公知の方法を用いることができる。
【0033】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0034】
<グルコノバクター菌の高温耐性5KGA生産株のスクリーニング>
【0035】
1.野生株のスクリーニング
スクリーニング実験に使用する全てのグルコノバクター菌は、タイ国の種々の材料からMoonmangmee,D.らの方法(Bioscience,Biotechnology and Biochemistry 64:2306−2315,2000)で分離し、ポテト寒天培地(20gグリセロール、5gグルコース、10g酵母エキス、10gポリペプトン、2g寒天、100mlのポテトエキスを蒸留水で1Lとする)に保存した。初期スクリーニングのために、分離菌全てから1つのコロニーを2%グルコース−グルコン酸培地(20gグルコース、20gグルコン酸ナトリウム、3gポリペプトン、3g酵母エキスを蒸留水で1Lとする)に接種し、30℃で48時間、または37℃で60時間培養し、培地中に茶色の化合物を生産した菌株を2,5−ジケトグルコン酸生産株として除外した。その後、200μlの培地と、1mlのResorcinol試薬(0.5%Resorcinol49ml、濃塩酸168ml、蒸留水273ml)とを、80℃で20分間反応させた。Resorcinol試薬とD−グルコースの反応生成物は赤い化合物で、5KGAの場合は黒い茶系緑色の沈殿が生じた。一方、D−グルコン酸と2KGAは確認反応生産物には見出されなかった。高温耐性の5KGA生産株として最も優れた菌株を得るために、初期スクリーニングで分離した24株の菌(表1)をポテト培地(20gグリセロール、5gグルコース、10g酵母エキス、10gポリペプトン、100mlのポテトエキスを蒸留水で1Lとする)で1日予備培養し、その後、培養液10μlを2%グルコース−グルコン酸培地の1mlに接種し、30℃で36時間、または37℃で48時間培養した。培養液は、Resorcinol試薬で反応させた。さらに、生育と5KGA蓄積は、反応で生じた反応生産物の吸光度を測定することにより比較した。
【0036】
2.2KGAと5KGAの決定
2KGAと5KGAは、それぞれ2KGA還元酵素と5KGA還元酵素により、Saichana.Iらの方法(Bioscience,Biotechnology and Biochemistry 71:2478−2486,2007)に準じて酵素的に定量した。2KGAと5KGAの定性分析は、薄層クロマトグラフィー分析で行った。サンプルはシリカゲル60プレート(メルク製)にスポットし、酢酸エチル:酢酸:メタノール:無イオン水(6:1.5:1.5:1)を含む溶媒で展開した。プレートを乾燥し、発色試薬(2gのジフェニルアミン、2mlのアニリン、100mlのアセトン、15mlのリン酸の使用前調整液)をスプレーし、発色するまで120℃で10〜20分間加熱した。5KGAと2KGAは、それぞれ濃紫色と、赤褐色のスポットとして現れた。
【0037】
3.スクリーニング結果
24分離株の中の3株、THE42,THF55,THG42について、30℃、37℃の両方で5KGAの高い生産が見られた(表1)。
【0038】
【表1】

【0039】
選ばれた3つの高温耐性菌による5KGAの形成は、図2のTLCにより確認し、3つの菌株の生育と生産の特徴については、30℃と37℃における2KGAと5KGA生産を、常温菌の5KGA生産グルコノバクター・サブオキシダンス IFO12528菌と、比較して検討した。結果を表2に示した。3つの高温耐性菌は、生育も、主生産物として2KGAを生産することも同じであった。30℃、48時間の培養で、常温菌は高温耐性菌に比べ、低い生育、低い2KGA生産、高い5KGA生産を示した。37℃では、30℃よりも全ての菌の生育が遅いことから、2KGAと5KGAの生産物を高めるために培養時間を72時間とした。常温菌は、37℃でほとんど成長せず、低い2KGAと5KGAの生産を示した。この温度で3つの高温耐性菌は、30℃と比較して、生育、および2KGAと5KGAの生産は低いものの、常温菌では不可能であった37℃での成長と5KGA生産の可能性を示した。
【0040】
【表2】

【実施例2】
【0041】
<高温耐性グルコノバクター菌の変異株の作製>
高温耐性グルコノバクター菌について、特異的に5KGAを生産する菌を作製した。2KGAはFAD−グルコン酸脱水素酵素(FAD−GADH)により生成される。5KGAと競合して、主生産物に2KGAを生産する分離した高温耐性グルコノバクター菌において、FAD−GADH遺伝子を破壊することにより、2KGA生産を排除した。以下のクローニングに使用するプライマーは、表3に示した。
【0042】
【表3】

【0043】
1.高温耐性グルコノバクター菌からFAD−グルコン酸脱水素酵素遺伝子のクローニング
FAD−GADH構造遺伝子は、グルコノバクター・オキシダンス 621Hのゲノム配列中で報告されている(Nature Biotechnology 23:195−200,2005)。3つのサブユニット(脱水素酵素サブユニット、チトクロムサブユニット、小サブユニット)から構成されている。このFAD−GADH遺伝子の配列を基にデザインしたgndL−Fプライマー(配列番号1)とgndL−Rのプライマー(配列番号2)をPCR用プライマーとした。この配列は、エルビニア・シプリペディ(Journal of Bacteriology 179:6566−6572,1997)、グルコノバクター・ジオキシアセトニカスIFO3271(Microbiology 73:6551−6556,2007)、グルコノバクター・オキシダンス 621H(Nature Biotechnology 23:195−200,2005)のGADH遺伝子の中の脱水素酵素サブユニットに保存されている領域から設計した。このプライマーペアを、各高温耐性菌のゲノムDNAを鋳型として使用し、PuReTaq Ready−To−Go PCR Beads kit (GE Healthcare社製)を用いてPCRを行った。PCRは、mGeneAmpPCR System 2400(Perkin Elmer社製)を用い、PCRの温度サイクルは、以下のように行った。95℃で30秒を1サイクル、その後、95℃で30秒、55℃で1分、68℃で1分を25サイクル行い、すべてのサイクルが終了すると最後は37℃に保った。DNA断片は、アガロースゲルで分離し、QIAquick Gel Extraction Kit (Qiagen, Hilden,Germany)や MagExtracter DNA fragment purification kit(Toyobo,Tokyo,Japan)で精製した。この結果、PCRの525bp生産物が得られた。この配列は、グルコノバクター・オキシダンス 621HのFAD−GADH遺伝子の脱水素酵素サブユニットであるGOX1231と相同性が見られた。
【0044】
遺伝子の全配列を得るために、上記PCR生産物をシークエンスして得られた配列からデザインした特異的なプライマーペアである、F−igL−1(配列番号3)とF−igL−2(配列番号4)を用い、ゲノムDNAのEcoRI消化物の再環状化したものを鋳型として、TaKaRa LA TaqTM(タカラバイオ社製)に2mM MgClと0.5% DMSOを添加してPCRを行った。95℃で30秒を1サイクル、その後、95℃で30秒、55℃で1分、68℃で6分を25サイクル行い、すべてのサイクルが終了すると最後は37℃に保った。脱水素酵素と小サブユニットの遺伝子の全配列は、ゲノムDNAのSacIIまたはEcoRI消化物を再環状化したものを鋳型として、プライマーのF−igL−1(配列番号3)とR−igL−2(配列番号4)で増幅した。チトクロームCサブユニットの遺伝子は、in vitroクローニング法から得られた。
【0045】
各菌株から得られたFAD−GADH遺伝子由来と予測される3つのORF(gndF、gndG、gndH)と、機能不明のタンパク質をコードする3ORFを含む6kb以上の断片をシークエンスし、配列を同定した。配列は、ABI PRISM 310(PE Biosystems社製)を使用して行った。配列データは、GENETYX−MAC (Software Development社製)やClone Manager(Scientific and Educational Software社製)を使用して解析した。ホモロジー検索や整列解析(alignment)は、それぞれBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)とCLUSTAL W(www.ebi.ac.uk/clustalw)を使用して行った。1例としてTHF55菌株から得られた断片地図を図3に示した。ORF−1、ORF−2、ORF−3は、グルコノバクター・オキシダンス 621Hのゲノムで示されているGOX1234、GOX1233、GOX1229でコード化されている機能不明タンパク質に相同性を示した。gndF、gndG、gndHの3つのORFは、ゲノムでFAD−GADH遺伝子と確認されたGOX1232、GOX1231,GOX1230に76%、89%、68%の同一性があった。この研究で得られた配列は、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)に登録申請中である。
【0046】
決定したGndFのアミノ酸配列は、N末端に、Berks,B.C.らが報告した(Molecular Microbiology 35:260−274,2000)、2つのアルギニン残基を含むtat依存の特殊なシグナル配列が存在することがわかった。GndFはまた、FAD−GADHの小サブユニットとして、Toyama.Hらの報告(Applied and Environmental Microbiology 73:6551−6556,2007)で明らかにされたグルコノバクター・ジオキシアセトニカス IFO3271のGndSへ44%の同一性を示した。
【0047】
決定したGndGのアミノ酸配列は、いくつかのFAD含有酵素に同様の配列がみられるように、N末端にFADが結合するためのシグナルであるグリシンボックス(GxGxxG)を示した。GndGは、コファクターとしてのFADと結合する蛋白ファミリーであるグルコース−メタノール−コリン(GMC)酸化還元酵素ファミリーの中に維持された領域配列を持っていた。また、前記Toyama.Hらが見出したグルコノバクター・ジオキシアセトニカス IFO3271のFAD−GADHの脱水素酵素サブユニッのGndLと61%の同一性を示した。
【0048】
GndHは、アルコール脱水素酵素、ソルビトール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素のように、グルコノバクター菌で見出される膜結合の多くのチトクロームcサブユニットと類似し、3つのヘムc結合モチーフ(CxxCH)配列を示した。さらに、グルコノバクター・ジオキシアセトニカス IFO3271(20)のGndCに44%の同一性を示した。
【0049】
2.高温耐性グルコノバクター属菌のFAD-GADH依存変異株の構築
テンプレートとするゲノムDNAは、Marmurの方法(J.Mol.Biol.3:208−218,1961)に準じて、対数増殖期におけるグルコノバクター菌から分離した。gndGの破壊のためのプラスミドは、大腸菌 DH5α株から、QIA Prep Spin Miniprep kit(Qiagen社製)を使用して調製した。F−gnDH−3プライマー(配列番号5)とR−gnDH−2プライマー(配列番号6)を使用し、テンプレートのゲノムDNAを増幅して得られた1.9kbのPCR断片のSmaIサイトに、pTKmからKmrカセットを含むEcoRV断片を挿入することにより構築した(pGEM−CA−F::Km)。制限酵素切断パターンの分析により、KmrカセットはgndGと同じ転写方向に挿入したことを確認した。作製したプラスミドをエレクトロポレーションで、グルコノバクター菌へ導入し、導入した細胞は、遺伝子組み換えのために30℃で6時間、ポテト培地で培養した。2〜3日後、カナマイシン50μg/mlを含むSG寒天培地(1%ソルビトール、1%グリセロール、0.3%ポリペプトン、0.3%酵母エキス、2%寒天)上に得られたコロニーをピックアップしてカナマイシン50μg/mlを含む1mlのSG培地(1%ソルビトール、1%グリセロール、0.3%ポリペプトン、0.3%酵母エキス)へ接種した。その後、変異株は、カナマイシン50μg/mlと、アンピシリン50μg/ml添加または無添加の2つの新しい寒天培地に接種し、カナマイシン耐性コロニーでアンピシリンに耐性を示さないものを選抜した。Kmrカセットの挿入領域をカバーして増幅するプライマーを用いたPCRで遺伝子破壊を確かめた(図4)。その結果、THE42,THF55,THG42株からのgndG:Km変異株が得られ、3つの変異株全ては、TLC分析から2KGA生産性がないことを確認した(図5)。
【0050】
3.酵素活性による変異株の確認
野生株と変異株のD−アラビトールやグルコースに対する膜結合酵素活性は、30℃と37℃で生育させた細胞から膜分画により調製し、Toyama.Hらの方法(Bioscience Biotechnology and Biochemistry 69:1120−1129,2005)で行った。膜結合酵素活性は、フェリシアナイドとPMSを用いた還元活性により測定し、フェリシアナイド還元酵素活性、あるいはPMS−DCIP還元酵素活性として表した(図6a,b)。
【0051】
フェリシアナイド還元酵素活性は、カリウムフェリシアナイドを電子受容体として測定した。25℃で、0.1Mの基質、McIlvaine buffer(McB,pH 5.0)、および適当な量の酵素液を含む0.9mlの反応液を、5分間インキュベート後、0.1Mのカリウムフェリシアナイドの0.1mlを添加し、撹拌した。一定時間のインキュベート後、0.5ml Dupanol試薬(0.3% Fe(SO、8.1%リン酸、0.3%SDS)を添加して反応を止めた。色が安定するため20分間放置した後、混合液の総量が5mlになるよう3.5mlの蒸留水で希釈し、分光光度計U2000(日立製作所社製)で、660nmの吸光度を測定した。酵素活性の1ユニットは、1分間に1μモルの基質を酸化した酵素の量とした。
【0052】
膜画分のフェナジンメソスルフェイト(PMS)還元活性は、25℃で、1mlの反応液中、100mMの基質、0.2mMのPMS、1.2mMのNaN、適量の酵素、McB(pH5.0)を、0.11mMの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)とカップリング反応させ、600nmの青色の退色を分光光度計U2000(日立製作所社製)で測定した。酵素活性の1ユニットは、このアッセイ系で1分間に1μモルの基質を酸化した酵素の量とした。
【0053】
図6aに示すように、30℃で生育した野生株と変異株のD−アラビトール脱水素酵素活性は、同じであったが、D−グルコン酸脱水素酵素活性は変異株で野生株の30%以上減少した。活性の減少は、FAD−GADHの脱水素酵素サブユニットをコードするgndG遺伝子の不活性化によるのであり、D−グルコン酸に反応するPQQ−GLDH活性はそのまま維持した。図6bでは、野生株と変異株において、37℃で生育した細胞からの膜結合酵素活性が、30℃での活性より低く、変異株のD−アラビトール脱水素酵素活性は野生株と同じであったが、変異株におけるD−グルコン酸脱水素酵素活性が、30℃の場合と同じように減少したことを示した。また、37℃では、PQQの添加により、野生株と変異株両方で、活性が2倍以上増加した。このことは、菌が高温で生育するときに、PQQ−GLDHに必要なPQQが不足していることを示している。
【実施例3】
【0054】
<FAD−GADH欠損変異株による5KGAの生産>
野生株と変異株は、2%グルコース−2%グルコン酸培地で30℃と37℃で培養し、2KGAと5KGAの生産量を培養時間に沿って測定した(図7a,b)。37℃における野生株の生育は30℃よりわずかに低く、30℃と37℃両方で主生産物として2KGAを生産しており、生産量も5KGAの2倍以上であった。2つの生産物の生産は、最初の生育段階から見られたが、最も高い生産量は、生育定常期に見られた。30℃では、2KGAと5KGAの減少が培養60時間以降に見られたが、これは37℃の培養では見られなかった。gndG::Km変異株による5KGAの生産を、野生株と比較した場合、30℃で、3つの変異株全てで、5KGA生産が主で2KGA生産はわずかとなった。2KGAと5KGAの最も高い生産量は、野生株と同様に60時間後に見られた。37℃においても、変異株はやはり5KGAを主に生産し、2KGAの生産はわずかであったが、生産量は30℃での生産量の半分であった。最終的な変換の収量は、37℃、96時間培養で原料の50%であった。
【実施例4】
【0055】
<高温での5KGA生産の改良>
37℃での野生株と変異株のPQQ−GLDH活性はコファクター(PQQおよび/またはCa2+)の添加に依存した(図8a)。種々の濃度のCaClをグルコノバクター属 THF55(gndG::Km)の培地に添加して、37℃で培養した結果、培養3日後に5KGAの蓄積を確認した。CaCl添加による生育への効果は認められないが、5mMのCaCl添加で、5KGAの生産に高い効果を起こした。これは原料の90%が5KGAに変換される収率であった。5mMより高い濃度のCaCl添加では、5KGA生産は減少し、生育もわずかに阻害された。この結果より、37℃の培養において、5KGA生産を増加させる適正なCaClの添加濃度は5mMであった(図8b)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の菌株を用いた5KGAの発酵生産法は、高温条件下で培養することにより、培地を冷却する必要がなくなり、コストを大幅に削減することができる。また、本発明のグルコノバクター属菌の変異株は、5KGAを特異的に生産するため精製工程が容易になることから、本発明の新規な菌株は、工業的に利用される可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】グルコースから5KGAおよび2KGAを生成する酵素反応を示す図面である。
【図2】分離された高温耐性グルコノバクター属菌による培地中の2KGAと5KGAの生産を示す図面に代わる写真である。(1:D−グルコース、2:NaGA、3:2KGA、4:5KGA、5:培地、6:THE42、7:THF55、8:THG42、9:THE42、10:THF55、11:THG42、ただし、6−8は30℃で、9−11は37℃で培養した。)
【図3】高温耐性グルコノバクター・フラテウリ THF55株から得られたゲノム断片の模式図である。
【図4】高温耐性グルコノバクター属菌のカナマイシン耐性カセットでの変異をPCRで確認したことを示す図面に代わる写真である。(M:マーカーであるλDNA、1:THE42、2:THE42 gndG::Km、3:THF55、4:THF55 gndG::Km、5:THG42、6:THG42 gndG::Km)
【図5】高温耐性グルコノバクター属菌のFAD欠損株による2KGAと5KGAの生産を示す図面に代わる写真である。(1:D−グルコース、2:NaGA、3:2KGA、4:5KGA、5:培地、6:THE42 gndG::Km、7:THF55 gndG::Km、8:THG42 gndG::Km、9:THE42 gndG::Km、10:THF55 gndG::Km、11:THG42 gndG::Km、ただし、6−8は30℃で、9−11は37℃で培養した。)
【図6】高温耐性グルコノバクター属菌のD−アラビトールとD−グルコースに対する膜結合酵素の活性を示す図面である。(a:30℃で培養、b:37℃で培養、グレイのカラム:コファクター無添加で培養したD−アラビトールの活性、黒のカラム:15μMPQQと10mMCaCl添加で培養したD−アラビトールの活性、白のカラム:コファクター無添加で培養したD−グルコースの活性、斜線のカラム:15μMPQQと10mMCaCl添加で培養したD−グルコースの活性)
【図7】高温耐性グルコノバクター属菌のケトグルコン酸生産を示す図面である。(a:30℃で培養、b:37℃で培養、グレイのカラム:2KGA濃度、黒のカラム:5KGA濃度)
【図8】高温耐性グルコノバクター・フラテウリ THF55株の37℃での培養において、菌の生育と5KGA生産へのCaClの添加効果を示す図面である。(a:生育曲線(黒の四角:0mM、黒のダイヤモンド型2.5mM、白の三角:5mM、4方クロス:7.5mM、6方クロス:10mM)、b:5KGA生産量)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコノバクター属に属し、30〜38℃で5−ケト−D−グルコン酸(5KGA)産生能を有する高温耐性菌、またはその変異株である5KGA産生能を有する高温耐性菌。
【請求項2】
請求項1に記載の変異株が、FAD−グルコン酸脱水素酵素(FAD−GADH)遺伝子を破壊した変異株である高温耐性菌。
【請求項3】
FAD−GADH遺伝子を破壊した変異株が、配列番号7,8,9に示す塩基配列を有するDNA断片を増幅して得られたPCR産物に、カナマイシンカセットを挿入したプラスミドを細胞内に導入して相同組み換えを行うことにより構築した株である請求項2に記載の高温耐性菌。
【請求項4】
グルコノバクター・フラテウリ THE42株(受託番号 NITE−P−655)、グルコノバクター・フラテウリ THG 42株(受託番号 NITE−P−657)、グルコノバクター・フラテウリ THF55株(受託番号 NITE−P−659)、グルコノバクター・フラテウリ THE42 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−656)、グルコノバクター・フラテウリ THG42 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−658)、グルコノバクター・フラテウリ THF55 gndG::Km株(受託番号 NITE−P−660)から選ばれる1種以上の5KGA産生能を有する高温耐性菌。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のグルコノバクター属に属する高温耐性菌を、PQQおよび/またはCaイオン存在下、30〜37℃で培養して5KGAを生産させ、5KGAを採取することを特徴とする、5KGAの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44868(P2012−44868A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320867(P2008−320867)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】