説明

5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンおよび肺疾患の処置におけるその使用

本発明は、哺乳動物におけるβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法において用いるための、式(I)


で示されるヒドロキシキノリノン誘導体、そのラセミ体形、立体異性体形もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容される塩形もしくは溶媒和物を提供し、該化合物は、5μg未満の定量名目用量を吸入経路により投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、哺乳動物における喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患の処置ための、全身的なβアゴニスト作用を最小にしながら、βアゴニストを用いる新規の治療法に関する。また、該新規治療法に用いるのに適する医薬組成物および吸入器を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンは、効果のある長時間作用型の選択的β2アドレナリン受容体アゴニストであり、WO2006/122788に記載されている。それは、以下の式(I)
【化1】


で示される。
この化合物の塩形態は、WO2008/095720に記載されている。
【0003】
現在利用可能な長時間作用型β2アドレナリン受容体アゴニストには、サルメテロール (2−(ヒドロキシメチル)−4−{1−ヒドロキシ−2−[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシルアミノ]エチル}フェノール)およびホルモテロール (N−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド)が含まれる。
【0004】
アドレナリンは、主として交感神経系と関係するホルモンであり、神経伝達物質である。それは、心臓、血管、気道および消化管器官の機能の制御を補助する。アドレナリンアゴニストは、アドレナリン受容体でアドレナリンの効果を模倣する。アドレナリン受容体は、5つのカテゴリーに分類される:α1、α2、β1、β2およびβ3。β2アドレナリン受容体でアドレナリンを模倣する化合物は、それらが平滑筋の収縮を引き起こし、気管支経路の拡張をもたらすため、呼吸器疾患の処置に有用である。
【0005】
しかしながら、呼吸器疾患の処置でのβ2アドレナリンアゴニストの使用に関わる1つの問題は、全身的なβアドレナリン受容体アゴニスト作用に関連する副作用の危険性である。これらには、例えば、心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および振戦が含まれる。心拍数の増加および動悸は、既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態、例えばアテローム性動脈硬化症、再狭窄または冠状動脈プラーク、不整脈性向、狭心症、心筋梗塞、過去の心臓発作による損傷および鬱血性心不全を有する患者に、特に危険であり得る。
【0006】
従って、特に、呼吸器疾患、とりわけ、喘息およびCOPDのためのβ2アドレナリンアゴニスト治療が必要とされ、それは、β2アドレナリンアゴニストと一般的に関係する有害な全身的副作用を最小とする。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明で、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンは、治療濃度域が広く、肺における最大の治療効果が非常に低い用量においてさえ達成され得ることを発見した。特に、低い投与量が、薬剤の有効性を減じることなく全身的アドレナリンアゴニスト作用の副作用を最小にすることを見いだした。
【0008】
従って、本発明は、第一の態様において、哺乳動物におけるβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法において用いるための、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン化合物のラセミ体形、立体異性体形または立体異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量を吸入により投与することができる化合物を提供する。
【0009】
上記の通り、既存の心臓病または頻脈により悪化し得る状態を有する患者は、頻脈のような全身的βアゴニストの副作用により特別に危険な状態にある。
【0010】
従って、本発明は、第2の態様において、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置方法における使用のための、本明細書に記載の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である化合物であって、該哺乳動物に、全身的アドレナリン作用を生じることのない化合物を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、本明細書に記載の哺乳動物(既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態を有する)における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置方法における使用のための、本明細書に記載された5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0012】
また、新規医薬組成物および特定の量の本発明の化合物を含む吸入器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
発明の詳細な説明
【図1】図1は、図中、“化合物1”と称する、単回用量(5、10および25μg)の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンについて、時間経過(時間)に対する平均FEV1値(リットル)を示す。また、0および12時間の時点での、50μgのサルメテロールの2回投与およびプラセボ単回投与後の平均FEV1値も示す。
【0014】
用語“治療的有効量”は、処置の必要な患者に投与したとき、有効な処置に十分な量を意味する。
【0015】
用語“定量名目用量”は、送達デバイスの計量チャンバーに含まれる製剤原料の量を意味し、通常、1回の吸入当たりの量として表される。製剤原料は、作動によってデバイスから出て、該デバイスの機構のために、通常定量名目用量よりも少ない、いわゆる“放出用量”として患者に利用され得る。
【0016】
本明細書で用いる用語“処置”は、
(a)疾患または医学的状態を未然に防ぐこと、すなわち、患者の予防的処置;
(b)疾患または医学的状態を改善すること、すなわち、患者における疾患または医学的状態の緩解をもたらすこと;
(c)疾患または医学的状態を抑制すること、すなわち、患者における疾患または医学的状態の進行を遅延させること;または、
(d)患者における疾患または医学的状態の症状を緩和させること
を含む、ヒト患者における疾患または医学的状態の処置を意味する。
【0017】
用語“β2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態”には、現在公知であるか、または将来見出される、β2アドレナリン受容体活性と関係する全ての肺疾患および/または状態が含まれる。かかる疾患には、喘息および慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎および気腫を含む)が含まれるが、これらに限定されない。好ましいβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態は、喘息およびCOPDである。
【0018】
用語“薬学的に許容される塩”は、例えば哺乳動物である患者への投与に許容される塩基もしくは酸から製造される塩を意味する。かかる塩は、薬学的に許容される無機もしくは有機塩基から、および薬学的に許容される無機もしくは有機酸から誘導され得る。
【0019】
薬学的に許容される酸から誘導される塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩(ナパジシル酸塩)、硝酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キナホン酸塩(1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)等が含まれる。特に好ましいのは、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、キナホン酸および酒石酸から誘導される塩である。最も好ましいのは、メタンスルホン酸およびナフタレン−1,5−ジスルホン酸から誘導される塩である。
【0020】
ナフタレン−1,5−ジスルホン酸から誘導される塩は、典型的に、モノナパジシレート塩またはヘミナパジシレート塩およびそれらの薬学的に許容される溶媒和物である。
【0021】
典型的に、本発明の化合物のナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩は、式(II):
【化2】


[式中、nは、1または2である。]
で示される。
【0022】
メタンスルホン酸から誘導される塩はまた、メシラートとしても公知である。
【0023】
薬学的に許容される無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩等が含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。
【0024】
薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等のような、置換アミン、環状アミン、天然に生じるアミン等を含む、第一級、第二級および第三級アミンの塩が含まれる。
【0025】
用語“溶媒和物”は、1個以上の溶質分子、すなわち、本発明の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、ならびに1個以上の溶媒分子により形成される複合体または凝集体を意味する。かかる溶媒和物は、溶質および溶媒の実質的に一定の分子比率を有する典型的な結晶固体である。代表的な溶媒には、一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等が含まれる。溶媒が水であるとき、形成される溶媒和物は水和物である。
【0026】
本発明の化合物は、キラル中心を有する。従って、本発明の化合物は、ラセミ混合物、エナンチオマー、または1個以上の立体異性体が富化された混合物の形態で使用され得る。記載されかつ特許請求される本発明の範囲は、本発明の化合物のラセミ形態ならびに個別のエナンチオマー、および立体異性体が富化された混合物を包含する。
【0027】
最も好ましいエナンチオマーは、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンである。
【0028】
用語“またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物”は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩の溶媒和物のような、全ての塩および溶媒和物を包含することを意図することが理解され得る。
【0029】
本発明において、5μg未満の本発明の化合物である1回の吸入当たりの定量名目用量が投与され得る。当然、少なくとも若干量の本発明の化合物が存在しなければならないことが理解される。故に、最小量の本発明の化合物は、0μgより多い、好ましくは0.01μgより多い、より好ましくは0.025μgより多い、最も好ましくは0.05μgより多い。
【0030】
好ましい態様において、本発明の化合物は、4.5μg未満、4μg未満、3.5μg未満、3μg未満、2.5μg未満、2μg未満、1.5μg未満、1μg未満、0.5μg未満、0.25μg未満、または0.1μg未満の1回の吸入当たりの定量名目用量で投与される。
【0031】
典型的に、本発明の化合物は吸入により投与される。本発明の化合物は、好ましくは、吸入器またはネブライザーからの吸入により投与される。
【0032】
典型的に、本発明の化合物は、適切な賦形剤または薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、吸入に適する乾燥粉末または溶液の形態である。
【0033】
典型的に、本発明の化合物は、1回の吸入当たり、乾燥粉末吸入器で投与される5μg未満のヘミナパジシル酸塩の定量名目用量と同量を投与される。
【0034】
典型的に、化合物が、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンまたはその薬学的に許容される溶媒和物の結晶モノナパジシレートおよび/またはヘミナパジシル酸塩であるとき、該化合物は、1μg未満、好ましくは0.5μg未満、より好ましくは0.25μg未満、最も好ましくは0.1μg未満の1回の吸入当たりの定量名目用量で吸入経路により投与される。
【0035】
さらなる態様において、化合物は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンまたはその薬学的に許容される溶媒和物の結晶モノナパジシレートおよび/またはヘミナパジシル酸塩ではない。
【0036】
典型的に、本発明の化合物は、1日当たり1以上の用量で、好ましくは1日当たり1ないし4用量で、より好ましくは1日当たり1ないし2用量で、さらにより好ましくは、1日当たり1用量で、単回用量処置または継続処置として投与される。
【0037】
典型的に、β2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態は、喘息またはCOPDである。
典型的に、処置される哺乳動物はヒトである。
【0038】
典型的に、式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体は、(R,S)5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンおよび5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンから選択される。
【0039】
好ましくは、式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体は、R−エナンチオマーとして存在する。
あるいは、式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体は、S−エナンチオマーとして存在する。
【0040】
典型的に、本発明の化合物は、本明細書に記載の式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体の薬学的に許容される塩である。好ましくは、本発明の化合物は、本明細書に記載の式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体のメシレート、モノナパジシレート塩またはヘミナパジシル酸塩である。
【0041】
好ましくは、式(I)のヒドロキシキノリノン誘導体は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン ヘミナパジシレート、またはその薬学的に許容される溶媒和物、ならびに5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシレート、またはその薬学的に許容される溶媒和物のうち1つから選択される。
【0042】
典型的に、化合物は、治療的有効量の別の治療剤と共投与される。
【0043】
別の治療剤は、典型的に、コルチコステロイド、抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤である。
【0044】
好適なPDE4阻害剤の例は、二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン(cipamfylline)、ザルダベリン(Zardaverine)、アロフィリン、フィラミナスト(filaminast)、チペルカスト(tipelukast)、トフィミラスト(tofimilast)、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム(mesopram)、塩酸ドロタベリン、リリミラスト(Lirimilast)、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト(apremilast)、テトミラスト、フィラミナスト(filaminast)、(R)−(+)−4−[2−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−2−フェニルエチル]ピリジン (CDP−840)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミド (GSK−842470)、9−(2−フルオロベンジル)−N6−メチル−2−(トリフルオロメチル)アデニン (NCS−613)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−8−メトキシキノリン−5−カルボキサミド (D−4418)、塩酸3−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジル]−6−(エチルアミノ)−8−イソプロピル−3H−プリン(V−11294A)、塩酸6−[3−(N,N−ジメチルカルバモイル)フェニルスルホニル]−4−(3−メトキシフェニルアミノ)−8−メチルキノリン−3−カルボキサミド (GSK−256066)、4−[6,7−ジエトキシ−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン−1−イル]−1−(2−メトキシエチル)ピリジン−2(1H)−オン (T−440)、(−)−トランス−2−[3'−[3−(N−シクロプロピルカルバモイル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−1,8−ナフチリジン−1−イル]−3−フルオロビフェニル−4−イル]シクロプロパンカルボン酸 (MK−0873)、CDC−801、UK−500001、BLX−914、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−オン、シス[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサn−1−オール、CDC−801、5(S)−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]−3(S)−(3−メチルベンジル)ピペリジン−2−オン (IPL−455903)、ONO−6126 (Eur Respir J 2003、22(Suppl. 45): Abst 2557)ならびにPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692において特許請求される塩である。
【0045】
好適なコルチコステロイドおよびグルココルチコイドの例は、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、デキサメタゾンシペシル酸エステル、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメサゾン、チプレダン(tipredane)、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、ジプロピオン酸アルクロメタゾン(alclometasone)、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RPR−106541、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17−吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21−クロロ−11ベータ−ヒドロキシ−17アルファ−[2−(メチルスルファニル)アセトキシ]−4−プレグネン−3,20−ジオン、デスイソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、NS−126、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ヒドロコルチゾンプロブテート(probutate)、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、ならびにプロピオン酸クロベタゾールである。
【0046】
好適なM3アンタゴニスト(抗コリン剤)の例は、チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、NPC−14695、BEA−2108、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特に、アクリジニウム塩、より好ましくは臭化アクリジニウム)、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−3−カルボン酸 エンド−8−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル エステル塩 (DAU−5884)、3−(4−ベンジルピペラジン−1−イル)−1−シクロブチル−1−ヒドロキシ−1−フェニルプロパン−2−オン (NPC−14695)、N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロ−1(R)−シクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド (J−104135)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−[4(S)−メチルヘキシル]ピペリジン−4−イル]−2−フェニルアセトアミド (J−106366)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−(4−メチル−3−ペンテニル)−4−ピペリジニル]−2−フェニルアセトアミド (J−104129)、1−[4−(2−アミノエチル)ピペリジン−1−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロシクロペント−1(R)−イル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン−1−オン (万有−280634)、N−[N−[2−[N−[1−(シクロヘキシルメチル)ピペリジン−3(R)−イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]−3,3,3−トリフェニルプロピオンアミド (万有CPTP)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニル酢酸 4−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル)−2−ブチニルエステル (Ranbaxy 364057)、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−[2−オキソ−2−(3−チエニル)エチル]ピロリジニウム アイオダイド、N−[1−(3−ヒドロキシベンジル)−1−メチルピペリジニウム−3(S)−イル]−N−[N−[4−(イソプロポキシカルボニル)フェニル]カルバモイル]−L−チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB−101333、OrM3(Merck)、7−エンド−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルアセトキシ)−9,9−ジメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]ノナン塩、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−(2−フェニルエチル)ピロリジニウム アイオダイド、トランス−4−[2−[ヒドロキシ−2,2−(ジチエン−2−イル)アセトキシ]−1−メチル−1−(2−フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド(Novartis (412682))、7−(2,2−ジフェニルプロピオニルオキシ)−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン塩、7−ヒドロキシ−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン 9−メチル−9H−フルオレン−9−カルボン酸エステル塩であり、それらの全ては、所望によりそれらのラセミ体形、エナンチオマー形態、ジアステレオマー形態およびそれらの混合物、ならびに所望によりそれらの薬理学的に適合性の酸付加塩形態である。該塩のうち、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩およびメタンスルホン酸塩が好ましい。
【0047】
特に好ましいさらなる治療剤は、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩 (特にアクリジニウム塩、好ましくは臭化アクリジニウム)、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラストならびにPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692において特許請求される化合物からなる群から選択される。
【0048】
故に、本発明の一局面は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置方法における、同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、およびコルチコステロイドを提供し、ここで本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0049】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法に使用するための本発明の化合物も提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、本発明の化合物は、コルチコステロイドと共投与される。
【0050】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本発明の化合物と共投与されるコルチコステロイドも提供し、ここで本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0051】
特に好ましいコルチコステロイドは、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるものである。
【0052】
本発明の別の局面は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における、同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、および抗コリン剤、および所望によりコルチコステロイドを提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0053】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、本発明の化合物は、抗コリン剤、所望によりコルチコステロイドと共投与される。
【0054】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本発明の化合物と共投与される抗コリン剤、所望によりコルチコステロイドを提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0055】
特に好ましい抗コリン剤は、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩および1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩からなる群から選択されるものである。任意のコルチコステロイドは、好ましくは、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択される。
【0056】
本発明のさらなる局面は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、およびPDE4阻害剤、所望によりコルチコステロイド、および/または抗コリン剤を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0057】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、PDE4阻害剤、および所望によりコルチコステロイド、および/または抗コリン剤と共投与される本発明の化合物を提供する。
【0058】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本発明の化合物、および所望により、コルチコステロイド、および/または抗コリン剤と共投与されるPDE4阻害剤を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0059】
特に好ましいPDE4阻害剤は、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラスト、ならびにPCT特許出願WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692に特許請求される化合物からなる群から選択されるものである。任意のコルチコステロイドは、好ましくは、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択される。任意の抗コリン剤は、好ましくは、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩および1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩からなる群から選択される。
【0060】
本発明の特に好ましい態様は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、および治療的有効量の、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ならびに所望により、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤を提供し、ここで、本発明の化合物は、5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0061】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための本発明の化合物を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、そして治療的有効量の3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、および所望により、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤と共投与される。
【0062】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における、本発明の化合物、および所望により、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤と共投与するための、治療的有効量の3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0063】
本発明の別の特に好ましい態様は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、および治療的有効量のフロ酸モメタゾン、および所望により、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0064】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための本明細書に記載の本発明の化合物を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、そして治療的有効量のフロ酸モメタゾン、および所望により、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤と共投与される。
【0065】
また、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本発明の化合物、および所望により、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤と共投与される治療的有効量のフロ酸モメタゾンを提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0066】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における同時、一時、個別または逐次使用のための、本明細書に記載の本発明の化合物、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤を提供し、ここで、本発明の化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
【0067】
典型的に、本発明の化合物の吸入による投与は、該薬剤の投与後1.5ないし24時間で、より典型的には、薬剤の投与後1ないし24時間で、より典型的には薬剤の投与後0.5ないし24時間で、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの本発明の化合物をもたらさない。好ましくは、本発明の化合物の吸入による投与は、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの化合物をもたらすことはない。
【0068】
本明細書で用いる定量可能なレベルは、典型的に、2.5pg/mlまたはそれ以上の量である。
【0069】
本発明の化合物は、典型的に、βアゴニストの使用と関係する1種以上の全身的βアゴニスト作用を防ぐため有利である。故に、哺乳動物は、典型的に、本発明の化合物の投与後の心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および/または振戦を実質的に有しない。
【0070】
上記の通り、本発明は、さらなる態様において、本明細書に記載の哺乳動物(既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態を有する)における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法における使用のための、本明細書に記載の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である化合物であって、該哺乳動物に全身的アドレナリン作用を生じることのない化合物を提供する。
【0071】
典型的に、これらの態様において、該化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
典型的に、これらの態様において、該化合物は、1日1回投与される。
典型的に、これらの態様において、該化合物は、治療的有効量のコルチコステロイド、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤と共投与される。
【0072】
典型的に、これらの態様において、本発明の化合物の吸入による投与は、該薬剤の投与後1.5ないし24時間で、より典型的には、薬剤の投与後1ないし24時間で、より典型的には薬剤の投与後0.5ないし24時間で、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの本発明の化合物をもたらさない。好ましくは、本発明の化合物の吸入による投与は、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの化合物をもたらすことはない。
【0073】
典型的に、これらの態様において、哺乳動物は、本発明の化合物の投与後の心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および/または振戦を実質的に有しない。
【0074】
既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態は、典型的に、アテローム性動脈硬化症、再狭窄または冠状動脈のプラーク、不整脈傾向、狭心症、心筋梗塞、以前の心臓発作による損傷および鬱血性心不全から選択される。
【0075】
典型的に、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物は、好ましくは吸入により投与され、さらに本明細書に記載の治療的有効量の1種以上の他の治療剤を含み得る。しかしながら、局所、非経腸または経口適用の何れか他の形態が可能である。吸入投与量形態の適用は、とりわけ肺疾患または障害の治療において、好ましい適用形態を具体化している。
【0076】
医薬組成物は、医薬分野の当業者によく知られている何れかの方法によって製造され得る。全ての方法は、有効成分(複数可)を担体と関連づける工程を含む。一般に、医薬組成物は、有効成分を液体担体もしくは微粉化固体担体または両者と均一かつ均質に関連付けること、次いで、必要ならば、製品を望ましい形態に成形することにより製造される。
【0077】
乾燥粉末形態の医薬組成物のための担体は、一般に、デンプン、またはラクトースもしくはグルコースのような薬学的に許容される糖から選択される。ラクトースが好ましい。
【0078】
さらなる好適な担体は、「レミントン:薬局の科学および実践、第20版」(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition)、Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2000の中に見出すことができる。
【0079】
吸入のための医薬組成物は、乾燥粉剤吸入器、エアロゾル吸入器またはネブライザーのような吸入器を利用して送達される。吸入器は、一般に、作動により、本明細書に記載の、治療的有効量の1種以上の他の治療剤を送達するように設定されている。
【0080】
吸入器への本発明の化合物の包装は、単位用量または複数回用量の送達のために適当であり得る。本発明の化合物は、予め計量されるか、または使用時に計量され得る。
吸入器は、一般に、単回用量吸入器、複数の単位用量吸入器、または複数回用量吸入器である。
【0081】
吸入による肺への局所送達用の乾燥粉末組成物は、例えば、吸入器または吹き入れ器(insufflator)での使用のために、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジまたは例えばラミネート加工したアルミ箔のブリスターに充填されていてよい。
【0082】
乾燥粉末吸入器は、3つの群:(a)単回用量デバイス、(b)複数の単位用量デバイス、および(c)複数回用量デバイスに分類される。
【0083】
第一のタイプの吸入器(a)については、単回用量は、大抵は硬ゼラチンカプセルである小さい容器中に製造業者により計り入れられている。カプセルは、別の箱もしくは容器から取り出され、吸入器の受容部位(receptacle area)に挿入されなければならない。次に、カプセルを開封するか、ピンまたは切刃で孔を開けて、吸入の際の遠心力を用いてこれらの孔を通してカプセルから粉剤を飛散させるか、または排出させるために、吸気流がカプセルを通ることを可能にしなければならない。吸入後に、空のカプセルを吸入器から再び除去しなければならない。多くの場合、カプセルを挿入しかつ除去するために吸入器の分解が必要であり、このことは、ある種の患者にとって困難であり、かつ負担となり得る操作である。
【0084】
吸入粉末用の硬ゼラチンカプセルの使用に関する他の欠点は、(a)環境雰囲気からの湿気の取り込みに対する予防が不十分であること、(b)カプセルが前もって極度の相対湿度に暴露されていた後での開封もしくは穿孔に関係する問題(破砕もしくは凹み(indenture)が起る)、および(c)カプセル破片の吸入の可能性である。さらに、多くのカプセル吸入器について、不十分な放出が報告されている(例えば、Nielsen et al, 1997)。
【0085】
カプセル吸入器の中には、WO92/03175に記載の通り、それから個々のカプセルを受入チャンバー(receiving chamber)(その中で穿孔および排出が起こる)へ移動することができる貯蔵庫を有しているものもある。他のカプセル吸入器は、用量放出のための空気路と直線上に並び得るカプセルチャンバーを有する回転式貯蔵庫を有する(例えば、WO91/02558およびGB2242134)。それらには、ディスクまたはストリップ上に供される限定された数の単位用量を有するブリスター吸入器と共に複数回単位用量型の吸入器(b)が含まれる。
【0086】
ブリスター吸入器は、カプセル吸入器と比較して、優れた薬剤の湿気防止を提供する。粉末剤の利用は、カバーならびにブリスター箔を穿孔すること、またはカバー箔を剥離することにより可能である。帯状ブリスター(blister strip)をディスクの代わりに用いるとき、用量の数を増すことができるが、空のブリスター帯を交換することは患者にとって不便である。故に、このような装置は、帯の輸送およびブリスターポケットの開口に利用する仕組みを含む用量システムと共に、使い捨てとされる。
【0087】
複数回用量吸入器(c)は、予め測定された量の粉末製剤を装填していない。それらは、比較的大きい容器および患者によって用いられるべき用量測定方式(principle)で構成される。該容器は、容積置換(volumetric displacement)により大量の粉末から個々に小分けされる複数回用量を含有する。回転膜(例えば、EP0069715)もしくはディスク(例えば、GB2041763;EP0424790;DE4239402およびEP0674533)、回転可能シリンダー(例えば、EP0166294;GB2165159およびWO92/09322)および回転可能錐台(例えば、WO92/00771)を含む様々な用量測定方式を有し、それらは全て、容器からの粉末で充填されるべき空洞を有している。他の複数回用量デバイスは、一定量の粉末を容器から送達チャンバーもしくは空気路(air conduit)に移動させるための局所または周辺のくぼみを持つ測定用プランジャー(例えば、EP0505321、WO92/04068およびWO92/04928)、または以下の特許出願:WO97/000703、WO03/000325およびWO03/061742に記載の、Genuair(登録商標)としても公知のNovolizer SD2FL(例えば、Sofotec)のような測定用スライドを有している。
【0088】
再現性のある用量測定は、複数回用量吸入デバイスにとって主要な問題の一つである。 粉末製剤は、投与量を測定するカップもしくは空洞の充填が多くは重力の影響下にあるので、良好でかつ安定な流動特性を示さなければならない。再充填された単回用量および複数の単位用量吸入器については、用量測定精度および再現性は、製造業者により保証され得る。他方、複数回用量吸入器は、遥かに多数の用量を含有することができ、投与量を充填するための操作数は概して少なくなる。
【0089】
複数回用量デバイス中の吸気性気流は、用量測定用空洞をしばしば直線的に通過し、そして複数回用量吸入器のかさ高く堅牢な用量測定システムは、この吸気性気流により撹拌されることがないため、粉末塊は空洞から単純に移送されるだけで、放出中に解凝集されることが殆どない。
【0090】
そのため、別の崩壊手段が必要となる。しかしながら、実際には、それらは必ずしも吸入器設計の一部でなくてもよい。複数回用量デバイス中の用量が多数であるため、空気路の内壁上の粉剤付着および解凝集手段は最小でなければならず、そして/またはこれらの部分の定期的な洗浄が、デバイス内の残存用量に影響することなく、可能でなければならない。ある複数回用量吸入器は、処方された用量が使用された後、取り替えられ得る使い捨ての薬物容器を有する(例えば、WO97/000703)。使い捨ての薬物容器を有するそのような半永久的な複数回用量吸入器のために、薬物の蓄積を防止する要求がなお更に厳格となる。
【0091】
吸入による投与用医薬は、制御された粒子サイズを有することが望ましい。気管支系内に吸入するための最適な粒子サイズは、通常1〜10μ、好ましくは2〜5μである。20μ以上のサイズを有する粒子は、吸入されるときに末梢気道に到達するには一般的には大き過ぎる。これらの粒子サイズを達成するために、製造される活性成分の粒子を、常套手段により、例えば微粉化法により、サイズの縮小が可能である。望ましい画分を、空気分粒(air classification)もしくは篩過により分離し得る。好ましくは、粒子は結晶であり得る。
【0092】
微分化粉剤で高用量の再現性を達成することは、それらの乏しい流動性および極度に高い凝集化傾向のために困難である。乾燥粉剤組成物の効率を改善するために、粒子は、吸入器中では大きいが、気道中に排出されるときには小さくなければならない。故に、ラクトースもしくはグルコースのような賦形剤が一般的に使用される。賦形剤の粒子サイズは、本発明中では吸入される薬剤より通常は遥かに大きいであろう。賦形剤がラクトースであるとき、それは、典型的に、粉末ラクトース、好ましくは、結晶性アルファラクトース一水和物として存在し得る。
【0093】
乾燥粉剤吸入器による利用とは別に、本発明の組成物を、噴射ガスを介して、もしくはいわゆる噴霧器により操作するエアロゾルで投与することができ、それを介して薬理学的に有効な物質の溶液を、吸入可能な粒子の霧が生じるように、高圧下で噴霧することができる。かかる噴霧器は、例えば、WO91/14468およびWO97/12687に記載されている。
【0094】
これらの液体製剤は、一般的に、MDI投与のための噴射剤または噴霧器を介する投与のための水の何れかであり得る適当な担体を含む。該製剤は、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール);pH安定化剤(例えば、酸性薬剤、アルカリ性薬剤、緩衝系);等張安定化剤(例えば、塩化ナトリウム);界面活性剤および湿潤剤(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル);および/または、吸収促進剤(例えば、キトサン、ヒアルロン酸、界面活性剤)のようなさらなる成分を含み得る。該製剤はまた、本発明の塩と混合したとき、他の有効化合物の溶解性を改善する添加剤を含み得る。溶解促進剤は、シクロデキストリン、リポソーム、またはエタノール、グリセロールおよびプロピレングリコールのような共溶媒のような成分を含み得る。
【0095】
本発明の活性塩の製剤用のさらなる適当な担体は、「レミントン:薬局の科学および実践、第20版」(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition)、Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2000の中に見出すことができる。
【0096】
加圧エアロゾル組成物は、バルブ、特に定量バルブを備えたキャニスター中に一般的に充填され得る。キャニスターは、W096/32150に記載の通り、所望により、例えばフルオロカーボン高分子であるプラスチック材料でコーティングされ得る。キャニスターは、口腔送達用に適した作動装置中に組み込まれ得る。
【0097】
故に、本発明はまた、本明細書に記載の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される担体を含む吸入用の医薬組成物であって、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量を提供する医薬組成物を提供する。
【0098】
本発明はまた、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法であって、該哺乳動物に、5μg未満の定量名目用量の、本明細書に記載の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である化合物を吸入により投与することを含む方法を提供する。
【0099】
典型的に、この方法において、該化合物は1日1回投与される。
典型的に、この方法において、該化合物は、治療的有効量のコルチコステロイドおよび/または抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤と共投与される。
【0100】
典型的に、この方法において、本発明の化合物の吸入による投与は、該薬剤の投与後1.5ないし24時間で、より典型的には、薬剤の投与後1ないし24時間で、より典型的には薬剤の投与後0.5ないし24時間で、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの本発明の化合物をもたらさない。好ましくは、本発明の化合物の吸入による投与は、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの化合物をもたらすことはない。
【0101】
典型的に、この方法において、哺乳動物は、本発明の化合物の投与後の心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および/または振戦を実質的に有しない。
【0102】
本発明はまた、本明細書に記載の哺乳動物(既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態を有する)における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法であって、該哺乳動物に、本明細書に記載の治療的有効量の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、該哺乳動物に全身的アドレナリン作用を生じることのない化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0103】
典型的に、この方法において、該化合物は、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される。
典型的に、この方法において、該化合物は、1日1回投与される。
典型的に、この方法において、該化合物は、治療的有効量のコルチコステロイド、および/または抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤と共投与される。
【0104】
典型的に、この方法において、本発明の化合物の吸入による投与は、該薬剤の投与後1.5ないし24時間で、より典型的には、薬剤の投与後1ないし24時間で、より典型的には薬剤の投与後0.5ないし24時間で、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの本発明の化合物をもたらさない。好ましくは、本発明の化合物の吸入による投与は、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの化合物をもたらすことはない。
【0105】
典型的に、この方法において、該哺乳動物は、本発明の化合物の投与後の心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および/または振戦を実質的に有しない。
【0106】
本発明はまた、本明細書に記載の哺乳動物における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置のための医薬(5μg未満の本発明の化合物を含む)の製造における本発明の化合物の使用を提供する。
【0107】
本発明はまた、本明細書に記載の哺乳動物(既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態を有する)における、本明細書に記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置のための医薬の製造における本発明の化合物の使用であって、該哺乳動物に全身的アドレナリン作用を生じることのない化合物の使用を提供する。
【実施例】
【0108】
実施例1
第二相臨床試験:喘息患者における吸入による、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの単回用量の有効性、安全性、耐容性および薬物動態を、無作為化二重盲検ダブルダミー、プラセボおよび活性対照、並行群間比較試験で評価する。
【0109】
方法:2006 GINAガイドラインに定義の通り、スクリーニングの少なくとも6ヶ月前から、(Quanjerら、1993による)予測正常値の61−85%のFEV1を有する、軽度から中度の永続性喘息であると診断された男性を無作為に抽出し、いずれも乾燥粉末吸入器による、単回用量投与の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン(Cyclohaler(登録商標)装置中、25μgの定量名目用量で)、2回投与(0および12時間の時点で)のサルメテロール (Cyclohaler(登録商標)装置中、50μgの定量名目用量で)、およびプラセボ投与を含む一連の処置を受けさせた。肺機能測定は、(肺活量測定による)FEV1、PEF、FVC、FEF25−75、および(ボディプレチスモグラフィーによる)sGawおよびRawを含んだ。
【0110】
結果:25名の男性(年齢18ないし70歳)が該試験に参加した。5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンは、プラセボおよびサルメテロールと比較して、平均ピークおよびトラフFEV1が明確に増加した。平均トラフFEV1の増加は、2回用量で投与されたサルメテロールと比較して統計的に顕著に有意であった。これらのデータを図1に示す。
【0111】
全ての用量(5、10および25μg)の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンが、投与後36時間までに気管支拡張作用を示した。異なる用量の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンで用量による作用に違いは見られなかった。同様の傾向が、PEF、FVC、FEF25−75、sGawおよびRawで見られる。血漿レベルの5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンは、5μg(LLOQ 2.5pg/ml)の用量を受容する対象の血漿サンプル中で定量不可能である。アドレナリン刺激後に通常見られる有害事象、例えば振戦、頻脈および情動不安は、2種のより高用量(10および25μg)の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンを試験したときにのみ起こった。
【0112】
結論:単回用量の5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン(5μg)は、全身的アドレナリン作用を生じることなく喘息を有する患者に
、驚くほど強力な長時間続く気管支拡張をもたらす。この治療濃度域の広さは、この化合物が、顕著な治療的気管支拡張作用を生じながら、有害作用を起こさない低用量で安全に使用され得ることを保証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置法において用いるための、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン化合物のラセミ体形、立体異性体形もしくは立体異性体の混合物、または薬学的に許容される塩形もしくは溶媒和物であって、1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与される、化合物。
【請求項2】
1日1回投与される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
β2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態が、喘息またはCOPDである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
哺乳動物がヒトである、請求項1ないし3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンが、R−エナンチオマーとして存在する、請求項1ないし4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
薬学的に許容される塩が、メシレート塩、モノナパジシレート塩またはヘミナパジシレート塩である、請求項1ないし5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
治療的有効量のコルチコステロイド、抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤と共投与される、請求項1ないし6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
化合物の投与が、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの該化合物をもたらさない、請求項1ないし7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
哺乳動物が、該化合物の投与後に、心拍数の増加(頻脈)、動悸、不眠症、不安、悪心および/または振戦を実質的に有さない、請求項1ないし8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
請求項1および4のいずれか一項記載の哺乳動物において、該哺乳動物に全身的アドレナリン作用を生ずることなく、請求項1および3のいずれか一項記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置で使用するための、請求項1、5および6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
請求項1および4のいずれか一項記載の哺乳動物であって、既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態を有する哺乳動物において、請求項1および3のいずれか一項記載のβ2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態の処置で使用するための、請求項1、5および6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量で吸入により投与され、そして/または1日1回投与され、そして/または治療的有効量のコルチコステロイド、および/または抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤と共投与され、そして/または吸入による化合物の投与が、哺乳動物の血漿中に定量可能なレベルの該化合物をもたらさない、請求項10または11記載の化合物。
【請求項13】
既存の心臓病または頻脈によって悪化し得る状態が、アテローム性動脈硬化症、再狭窄または冠状動脈のプラーク、不整脈傾向、狭心症、心筋梗塞、以前の心臓発作による損傷および鬱血性心不全から選択される、請求項11または12記載の化合物。
【請求項14】
1回の吸入当たり5μg未満の定量名目用量を提供するように、請求項1、5または6のいずれか一項記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、吸入用医薬組成物。
【請求項15】
請求項7記載の治療的有効量の1種以上の他の治療剤をさらに含む、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
作動により、5μg未満の定量名目用量の請求項1、5または6のいずれか一項記載の化合物を送達するように設定された吸入器。

【図1】
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【公表番号】特表2012−518020(P2012−518020A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550475(P2011−550475)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001027
【国際公開番号】WO2010/094484
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(598032139)アルミラル・ソシエダッド・アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
【Fターム(参考)】