説明

6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−B]ピラジンの配合物

遊離塩基の水溶解性/溶解を胃腸管のpHに非依存性とする、ゾピクロン[(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)]の医薬組成物が開示される。本組成物は、経口投与に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離塩基の水溶解性/溶解を胃腸管のpHに非依存性とする、(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)の医薬組成物に関する。本組成物は、経口投与に有用である。
【背景技術】
【0002】
(S)−ゾピクロン又は(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)としても公知のエスゾピクロンは、遊離塩基として配合され、LUNESTA(商標)として販売されている。エスゾピクロンは、様々なタイプの睡眠障害、例えば、入眠困難、夜間睡眠維持困難及び早朝覚醒を治療するために使用される。不眠症のほとんどの人々は、これらの問題の1種超を有する。例えば、WO93/10787;Brun,J.P.,Pharm.Biochem.Behav.29:831 832(1988)参照。
【0003】
化合物エスゾピクロン及び種々の治療方法は、少なくとも以下の米国特許第7,125,874号、同第6,864,257号、同第6,444,673号、同第6,319,926号、及び同第5,786,357号に開示されている。
【0004】
ラセミ体ゾピクロンのrac−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)も、遊離塩基として配合され、様々なタイプの睡眠障害を治療するために欧州において長年にわたり販売されている。
【発明の概要】
【0005】
或る観点において、本発明は、(a)エスゾピクロン遊離塩基と、(b)超化学量論量の固体酸とを含む経口医薬剤形(dosage form)に関する。
【0006】
別の観点において、本発明は、(1)経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮された(enantioenriched)ゾピクロンの溶解をpH非依存性とする方法、(2)経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの食後溶解を促進する方法、及び(3)経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンのバイオアベイラビリティを改善する方法に関する。本発明の方法は、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロン遊離塩基を、上記のものから選択される化学量論過剰の酸の存在下で経口投与することを含む。あるいは、本発明の方法は、上記の剤形を経口投与することを含む。
【0007】
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】変動するpHにおける、9%のフマル酸と調合されたエスゾピクロン遊離塩基の例示的溶解プロファイルを示す図である。
【0009】
【図2】水中の遊離塩基と比較した、種々の酸と調合されたエスゾピクロン遊離塩基の例示的溶解プロファイルを示す図である。
【0010】
【図3】pH1における、エスゾピクロン遊離塩基及び9%のフマル酸と調合されたエスゾピクロンの例示的溶解プロファイルを示す図である。
【0011】
【図4】水中でpH6.8における、エスゾピクロン遊離塩基、並びに、1%のフマル酸、3%のフマル酸、9%のフマル酸及び20%のフマル酸と調合されたエスゾピクロンの例示的溶解プロファイルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明は、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの遊離塩基の経口剤形に関する。驚くべきことに、これらの遊離塩基形態は、化学量論過剰の固体酸、特に、アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸から選択される酸と配合することができることを見出した。得られた経口固体剤形は、溶解媒体のpHに非依存性の溶解プロファイルを示す。用語「固体酸」は、25℃において固体である酸、例えば、カルボン酸、スルホン酸又はリン酸を指す。用語「超化学量論量」は、酸と塩基との1:1のモル比を超過する酸の量を指す。従って、一塩基酸とのゾピクロンの塩、例えば、ベンゼンスルホン酸塩は、ゾピクロンとベンゼンスルホン酸との1:1のモル比を含有し、超化学量論量は、1モル当量のベンゼンスルホン酸を超える量である。二塩基酸とのゾピクロンの塩、例えば、リンゴ酸塩は、ゾピクロンとリンゴ酸との2:1又は1:1のモル比を含有することができ、それでもやはり、本発明の目的のための超化学量論量は、1モル当量のリンゴ酸を超える量である。三塩基酸との塩、例えば、クエン酸塩は、ゾピクロンとクエン酸との3:1、2:1又は1:1のモル比を含有することができ、本発明の目的のための超化学量論量は、やはり1モル当量のクエン酸を超える量である。酸は、剤形の全重量に対して、最低範囲については、約0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%又は3重量%の量で、最高範囲については、約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%及び30重量%の量で存在し得る。
【0013】
一部の実施態様において、酸は、剤形の約0.5重量%〜約30重量%の量で存在する。一部の実施態様において、酸は、剤形の約1重量%〜約20重量%の量で存在する。一部の実施態様において、酸は、剤形の約2重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0014】
或る実施態様において、酸は、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸及びリン酸モノナトリウムから選択される。或る実施態様において、酸はマレイン酸であり得、別の実施態様において、酸はフマル酸であり得、別の実施態様において、酸はL−リンゴ酸であり得、別の実施態様において、酸はD−リンゴ酸であり得る。
【0015】
種々の実施態様において、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンは、0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、4mg及び5mg又はこれらの中間の0.1mg漸増の量で存在し得る。特定の実施態様は、約1mg〜約3mgの量のエスゾピクロンと、約3〜約9mgの量の酸とを含む100mgの錠剤である。
【0016】
本発明はまた、睡眠障害の治療を必要とする対象に上記の組成物を投与することを含む、対象において睡眠障害を治療する方法を対象とする。本発明は、原発性不眠症及び睡眠覚醒リズム障害(例えば、ワークシフト症候群(work-shift syndrome)、時間帯症候群(時差ぼけ))を含む睡眠障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。不眠症は、睡眠困難又は睡眠パターンの撹乱を特徴とする。不眠症は、即時的な肉体的又は精神的事象との明らかな関係をほとんど有しない一次的性質であるか、あるいは、一部の獲得疼痛、不安又はうつ病に続くものであり得る。
【0017】
別の観点において、本発明は、不安の治療を必要とする対象に上記の組成物を投与することを含む、対象において不安を治療する方法を提供する。本明細書において使用される用語「不安」は、不安障害を指す。本明細書に開示の組成物及び方法により治療可能な不安障害の例は、限定されるものではないが、パニック発作、広場恐怖症、急性ストレス障害、特定恐怖症、パニック障害、精神活性物質不安障害、器質性不安障害、強迫神経不安障害、外傷後ストレス障害及び全般性不安障害を含む。本明細書において称される不安は、状況不安(例えば、実演者により実演前に経験されるもの)も含む。不安障害という名称は、DSM-IV-R.Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Revised,4th Ed.(1994)に特性決定されている。DSM-IV-Rは、Task Force on Nomenclature and Statistics of the American Psychiatric Associationにより作成され、診断カテゴリーの明確な説明を提供する。
【0018】
本明細書において使用される用語ゾピクロン及び6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジンは、以下の構造:
【化1】

により表される化合物を指し、用語エスゾピクロン、LUNESTA(商標)及び[(9S)−8−(5−クロロピリジン−2−イル)−7−オキソ−2,5,8−トリアザビシクロ[4.3.0]ノナ−1,3,5−トリエン−9−イル]4−メチルピペラジン−1−カルボキシレートは、以下の構造:
【0019】
【化2】

により表される上記の個々のエナンチオマーを指す。
【0020】
【0021】
本発明の組成物及び方法は、ラセミ混合物(ゾピクロンとしても公知)の両方を企図し、特定の実施態様において、単一エナンチオマー、例えば、S−エナンチオマー(エスゾピクロン)を企図する。エスゾピクロンは、化合物ゾピクロンのS−(+)−光学異性体であり、米国特許第6,319,926号及び同第6,444,673号に記載されている。この異性体は、以下、このUSAN承認一般名によりエスゾピクロンと称され、光学的に純粋な、及び実質的に光学的に純粋な(例えば、90%、95%又は99%の光学的純度)S−(+)−ゾピクロン異性体を含む。従って、本発明の組成物は、立体異性体混合物のみだけでなく、他の立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体も含む。特定の実施態様において、本発明の組成物は、同一化合物の立体異性体の非ラセミ混合物(例えば、約90、80、70又は60重量パーセントの一方のエナンチオマー及び約10、20、30又は40重量パーセントの他方のエナンチオマー)、及び種々のラセミ体又は立体異性体的に純粋な化合物の混合物(例えば、約90、80、70又は60重量パーセントの一方の化合物及び約10、20、30又は40重量パーセントの他方の化合物)を包含する。本明細書において使用される用語「エナンチオ濃縮された」は、他方よりも多い一方のエナンチオマーからなるキラル化合物の試料を指す。試料がエナンチオマー的に濃縮される程度は、エナンチオマー純度又はエナンチオマー過剰率により定量化される。例えば、用語「エナンチオ濃縮されたゾピクロン」は、(S)−ゾピクロン(エスゾピクロン)が(R)−ゾピクロンよりも多く存在する試料を指すものとする。一部の実施態様において、「エナンチオ濃縮されたゾピクロン」は、(R)−ゾピクロンを実質的に含まないエスゾピクロンを指す。例えば、「エナンチオ濃縮されたゾピクロン」は、エナンチオマー純度が約15%以下の(R)−ゾピクロン又は約10%以下の(R)−ゾピクロン又は約5%以下の(R)−ゾピクロン又は好ましくは、約2%以下の(R)−ゾピクロン又はより好ましくは、約1%以下の(R)−ゾピクロンであるエスゾピクロンを指すものとする。
【0022】
本発明の化合物は、当分野において公知の技術により合成することができる。本発明の化合物の合成において使用される出発材料及び特定の中間体は、市販源から入手可能であるか、又は本明細書に説明されるこれらの合成スキームを含む当業界で公知の試薬及び技術を使用してこれら自体を合成することができる。
【0023】
ラセミ体ゾピクロンは市販されており、種々の方法、例えば、米国特許第3,862,149号及び同第4,220,646号に開示の方法を使用して作製することができる。
【0024】
用語「治療する」又は「治療される」は、本明細書に記載の化合物を対象に投与して、疾患、疾患の症状又は疾患素因を根治し、治癒し、緩和させ、軽減させ、変化させ、救済し、好転させ、改善し、又はこれに影響を及ぼすことを指す。
【0025】
「有効量」は、治療される対象に治療効果を付与する化合物の量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、一部の試験又はマーカーにより測定可能)又は主観的(すなわち、対象が効果の指摘又は与え、又は効果を感じる)であり得る。有効用量はまた、投与経路に応じて変動する。
【0026】
本明細書において使用される用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及び「予防的」は、特に記載のない限り、本明細書に開示の疾患の発症、再発又は増大の予防を指す。用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及び「予防的」は、本明細書に開示の障害の症状の発生を好転及び/又は低減させることを含む。
【0027】
本発明は、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの遊離塩基と、アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸から選択される超化学量論量の酸とを含有する医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の医薬組成物及び剤形は、本明細書に開示の活性成分の1種以上を含む。本発明の医薬組成物及び剤形は、典型的には、1種以上の医薬的に許容される賦形剤又は希釈剤も含む。
【0029】
本明細書において使用される用語「医薬的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを示さずにヒト及び他の哺乳動物の組織との接触における使用に好適であり、妥当なベネフィット/リスク比に相応する構成成分を指す。好ましくは、本発明の組成物は、医薬的使用(「医薬組成物」)のために配合され、ここで、担体は、医薬的に許容される担体である。(1種以上)の担体は、配合物(formulation)の他の成分と適合するという意味で「許容され」なければならず、医薬的に許容される担体の場合、医薬品において典型的に使用される量でこのレシピエントに有害であってはならない。
【0030】
本発明の医薬組成物において使用することができる医薬的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルは、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含む。
【0031】
調製方法は、投与すべき分子と、成分(例えば、1種以上の副成分を構成する担体)とを会合させる工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体、リポソーム又は微細固体担体又はこれらの両方と均等かつ緊密に会合させ、次いで必要であれば生成物を成形することにより調製される。
【0032】
本発明の単一の単位剤形は、患者への経口投与に好適である。剤形の例は、限定されるものではないが:錠剤;カプレット剤;カプセル剤、例えば、軟弾性ゼラチンカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ剤及び分散液を含む。
【0033】
本発明の剤形の組成、形状及びタイプは、典型的には、これらの使用に応じて変動する。例えば、障害の急性治療において使用される剤形は、同一疾患の慢性治療において使用される剤形よりも多い量の活性成分の1種以上を含有することができる。本発明により包含される具体的な剤形が互いに変動するこれらの及び他の手法は、当業者には容易に明らかである。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,MackPublishing,Easton Pa.(1990)参照。
【0034】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1種以上の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、製薬分野における当業者に周知であり、好適な賦形剤の非限定的な例は、本明細書に提供される。特定の賦形剤が医薬組成物又は剤形への取り込みに好適か否かは、限定されるものではないが、剤形が患者に投与される手法を含む当分野において周知の種々の要因に依存する。例えば、経口剤形、例えば、錠剤は、非経口剤形における使用に好適でない賦形剤を含有することができる。特定の賦形剤の好適性は、剤形中の具体的な活性成分にも依存し得る。例えば、一部の活性成分の分解が、一部の賦形剤、例えば、ラクトースにより、又は水に曝露された場合に促進され得る。本発明は、ラクトース、他の単糖又は二糖を、たとえ存在するとしてもほとんど含有しない医薬組成物及び剤形を包含する。本明細書において使用される用語「ラクトース不含」は、たとえ存在するとしても、存在するラクトースの量が活性成分の分解速度を実質的に増加させるのに不十分であることを意味する。
【0035】
本発明のラクトース不含組成物は、当分野において周知の賦形剤を含むことができる。一般に、ラクトース不含組成物は、活性成分、結合剤/充填剤及び滑剤を、医薬的に適合され且つ医薬的に許容される量で含む。好ましいラクトース不含剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン(pre-gelatinized starch)及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0036】
水は一部の化合物の分解を促進し得るので、本発明は、活性成分を含む無水医薬組成物及び剤形を更に包含する。例えば、水の添加(例えば、5%)は、経時的な配合物の保存寿命又は安定性などの特徴を決定するための長期貯蔵を模擬する手段として、製薬分野において広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen,Drug Stability:Principles& Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,N.Y.,1995,pp.379 80参照。実際には、水及び熱が一部の化合物の分解を促進する。従って、一般に水分及び/又は湿気は、製造、取扱、包装、貯蔵、出荷及び配合物の使用の間に遭遇するので、配合物に対する水の影響は非常に重要であり得る。
【0037】
本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水成分又は低水分含有成分及び低水分条件又は低湿気条件を使用して調製することができる。製造、包装及び/又は貯蔵の間に水分及び/又は湿気との実質的な接触が予期される場合、ラクトース及び第1級又は第2級アミンを含む少なくとも1種の活性成分を含む医薬組成物及び剤形が無水であることが好ましい。
【0038】
無水医薬組成物は、この無水性が維持されるように調製及び貯蔵すべきである。従って、無水組成物は、好ましくは、水への曝露を防止することが公知の材料を使用して、無水組成物を好適な配合キット中に含むことができるように包装される。好適な包装の例は、限定されるものではないが、気密封止箔、プラスチック、単位用量容器(例えばバイアル)、ブリスター包装及びストリップ包装を含む。
【0039】
本発明は、活性成分が分解する速度を低減させる1種以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形を更に包含する。本明細書において「安定化剤」と称されるこのような化合物は、限定されるものではないが、酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸を含む。これに関して、アスコルビン酸は、上記の別の酸とともに、組成物中に酸化防止剤として存在することができるか、又は超化学量論量の酸及び酸化防止剤の両方としてこれ自体機能することができる。
【0040】
本発明の典型的な経口剤形は、慣用の医薬調合技術に従って、緊密混合物の(1種以上の)活性成分と少なくとも1種の賦形剤とを合わせることにより調製される。経口剤形における使用に好適な賦形剤は、限定されるものではないが、付香剤、保存剤及び着色剤を含む。固体経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤及びカプレット剤)における使用に好適な賦形剤の例は、限定されるものではないが、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑剤、結合剤及び崩壊剤を含む。
【0041】
これらの容易な投与のため、錠剤及びカプセル剤は、固体賦形剤が用いられる最も有利な経口単位剤形を表す。所望であれば、錠剤は、標準的な水系又は非水系技術によりコーティングすることができる。このような剤形は、製薬方法のいずれかにより調製することができる。一般に、医薬組成物及び剤形は、活性成分を液体担体、微粉固体担体又はこれらの両方と均等かつ緊密に混合し、次いで必要であれば生成物を所望の提供物に成形することにより調製される。
【0042】
例えば、錠剤は、圧縮又は成形(molding)により調製することができる。圧縮錠剤は、好適な機械中で、自由流動形態、例えば、粉末又は顆粒の活性成分を場合により賦形剤と混合して圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、好適な機械中で、湿潤させた粉末化化合物と不活性液体希釈剤との混合物を成形することにより作製することができる。錠剤は、任意の慣用の医薬固体剤形操作、例えば、乾式ブレンディング、湿式又は乾式造粒、粉砕、圧縮、ペレット化及びコーティングを使用して調製することができる。
【0043】
乾式ブレンディング及び直接圧縮アプローチにおいて、活性(エスゾピクロン)は、酸味剤及び他の賦形剤と段階希釈で混合される。乾式ブレンディング及び直接圧縮の例は、以下に概略する工程において提供される:適切な半量の微結晶性セルロース及びエスゾピクロン並びに酸味剤を混合機に添加し、混合する工程;残部の微結晶性セルロース、コロイダル二酸化ケイ素及びクロスカルメロースナトリウムを上記からの混合物に添加し、混合する工程;無水二塩基性リン酸カルシウムを上記からの混合物に添加し、混合する工程;ステアリン酸マグネシウムを上記からの混合物に添加し、混合する工程;並びにロータリー打錠機を使用して混合物を錠剤に圧縮する工程。
【0044】
一部の実施態様において、湿式造粒法は、固体投与単位を形成するために使用することができる。本発明により使用することができる湿式造粒法の例は、以下のものである。湿式造粒アプローチの結合剤は、エスゾピクロンを含有する予備混合物に添加される。エスゾピクロン及び酸味剤を含有する得られた湿式顆粒は、例えば、棚段乾燥機又は流動床乾燥機を使用して乾燥される。乾燥した顆粒は、錠剤に圧縮するか、又はカプセル剤中に充填する。結合剤は、溶媒、例えば、水又はアルコール、あるいは水及びアルコールの混合物であり得る。ポリマー、例えば、デンプンを結合剤の一部として溶媒に添加することができる。酸味剤は、結合剤の一部として溶媒に添加することができる。予備混合物は、エスゾピクロン及び酸味剤であり得る。予備混合物は、エスゾピクロン、酸味剤及び他の賦形剤からなっていてよい。予備混合物は、酸味剤が結合剤に完全に取り込まれた場合、エスゾピクロン及び他の賦形剤からなっていてよい。粒子サイズ分布の制御が望まれる場合、乾燥した顆粒を粉砕することができる。湿式造粒アプローチは、高剪断造粒装置又は流動床技術又は技術中の噴霧により達成することができる。
【0045】
本発明の経口剤形において使用することができる賦形剤の例は、限定されるものではないが、結合剤、充填剤、崩壊剤及び滑剤を含む。医薬組成物及び剤形における使用に好適な結合剤は、限定されるものではないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又は他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成ガム、例えば、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末化トラガカント、グアーガム、セルロース及びこの誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、番号2208、2906、2910)、微結晶性セルロース並びにこれらの混合物を含む。
【0046】
本明細書に開示の医薬組成物及び剤形における使用に好適な充填剤の例は、限定されるものではないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン及びこれらの混合物を含む。本発明の医薬組成物中の結合剤及び充填剤は、典型的には、医薬組成物又は剤形の約50〜約99重量パーセントで存在する。
【0047】
崩壊剤は、水系環境に曝露された場合に崩壊する錠剤を提供するために本発明の組成物において使用される。多すぎる崩壊剤を含有する錠剤は貯蔵時に崩壊し得る一方、少なすぎる崩壊剤を含有する錠剤は、所望の速度又は所望の条件下で崩壊し得ない。従って、活性成分の放出を不利益に変化させるほど多すぎず少なすぎない十分な量の崩壊剤を使用して本発明の固体経口剤形を形成すべきである。使用される崩壊剤の量は配合物のタイプに基づいて変動し、当業者に容易に認識可能である。典型的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤、好ましくは、約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0048】
本発明の医薬組成物及び剤形において使用することができる崩壊剤は、限定されるものではないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン類、クレー類、他のアルギン類、他のセルロース類、ガム類及びこれらの混合物を含む。
【0049】
本発明の医薬組成物及び剤形において使用することができる滑剤は、限定されるものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天及びこれらの混合物を含む。追加の滑剤は、例えばサイロイドシリカゲル(Baltimore Md.のW.R.Grace Co.により製造されているAEROSIL 200)、合成シリカの凝固化エアロゾル(Plano,Tex.のDeaussa Co.により市販されている)、CAB−O−SIL(Boston,Mass.のCabot Co.により販売されている発熱性二酸化ケイ素製品)及びこれらの混合物を含む。滑剤は、使用される場合、典型的には、これらが取り込まれる医薬組成物又は剤形の約1重量パーセントの未満の量で使用される。
【0050】
本発明の活性成分は、当業者に周知の制御放出手段により、又は送達装置により投与することができる。例は、限定されるものではないが、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123、及び同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号及び同第5,733,566号に記載のものを含む。このような剤形は、変動する比率の所望の放出プロファイルを提供するため、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、浸透性膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア又はこれらの組合せを使用して1種以上の活性成分の持続放出又は制御放出を提供するために使用することができる。本明細書に記載のものを含む、当業者に公知の好適な制御放出配合物は、本発明の活性成分を用いた使用について容易に選択することができる。従って、本発明は、経口投与に好適な単一の単位剤形、例えば、限定されるものではないが、制御放出に適合される錠剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤及びカプレット剤を包含する。
【0051】
全ての制御放出性医薬製品は、薬物療法をこの対応する非制御放出性医薬製品により達成されるものよりも改善するという共通の目的を有する。理想的には、最適に設計された制御放出性製剤の医療における使用は、病態を最小の時間量で根治又は制御するために用いられる薬物物質が最小であることを特徴とする。制御放出性配合物の利点は、薬物活性の延長、投与頻度の低減及び患者のコンプライアンスの増加を含む。更に、制御放出性配合物は、作用の開始時間又は他の特徴、例えば、薬物の血中レベルに影響を与えるために使用することができ、従って副(例えば、有害)作用の発生に影響を与えることができる。
【0052】
多くの制御放出性配合物は、最初に、所望の治療効果を早急に生じさせる量の薬物(活性成分)を放出し、延長された期間にわたりこの治療又は予防的効果のレベルを維持するため、徐々にかつ継続的に薬物の残量を放出するように設計される。体内のこの薬物の一定レベルを維持するため、薬物は、代謝されかつ体内から排泄される薬物の量を置き換える速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、限定されるものではないが、pH、温度、酵素、水、あるいは他の生理的条件又は化合物を含む種々の条件により刺激することができる。
【0053】
ゾピクロンは、例えば、約0.001〜約0.2mg/kg体重の範囲の投与量、あるいは0.1mg〜15mg/用量又は約0.1mg〜約10mg/用量、好ましくは、約0.2mg〜約5mg/用量の投与量で、又は特定の治療の要求に従って投与することができる。本発明の方法は、本明細書において、所望の、又は記載された効果を達成するための有効量の化合物又は化合物組成物の投与を企図する。典型的には、本発明の医薬組成物は、1日当たり約1〜約6回投与される。このような投与は、慢性又は急性治療として使用することができる。単一剤形を生成するために担体材料と合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与方式に応じて変動する。一部の実施態様において、このような製剤は、約20%〜約80%(w/w)の活性化合物を含有する。一部の実施態様において、このような製剤は、約0.5%〜約20%の活性化合物を含有する。典型的な製剤は、約0.5%〜約5%(w/w)の活性化合物を含有する。
【0054】
上記の用量よりもより少ない又はより多い用量が要求され得る。任意の特定の患者についての具体的な投与量及び治療レジメンは、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物組合せ、疾患の重症度及び過程、病態又は症状、患者の疾患に対する体内動態、病態又は症状並びに治療する医師の判断を含む種々の要因に依存する。
【0055】
賦形剤の量及びタイプと同様に、剤形中の活性成分の量及び具体的なタイプは、限定されるものではないが、患者に投与することができる経路などの要因に応じて異なり得る。ヒト治療において、用量は、求められる効果及び治療期間に依存し、経口服用される場合、用量は、一般に、成人につき1日当たり0.5〜15mgである。多くの用途のため、0.5mg、1mg、2mg又は3mgの本エスゾピクロン塩を含有する単位投与量が好適である。一部の実施態様において、エスゾピクロン塩の単位投与量は、0.5mg、1mg、2mg又は3mgのモル当量のエスゾピクロン遊離塩基を含有するように調整することができる。
【0056】
本発明の或る観点は、組合せ療法に関する。活性成分の同時投与により、単一の治療剤のみの投与により達成される治療効果を超える治療効果が達成されるので、このタイプの治療は有利である。或る実施態様において、2種以上の治療剤の同時投与により相乗効果、すなわち、組合せの個々の構成成分の治療効果の合計を超える治療的影響が達成される。別の実施態様において、2種以上の治療剤の同時投与により増強効果が達成される。組合せ治療を含む活性成分は、単一剤形を介して一緒に投与することができる。薬剤は、単一の錠剤、丸剤、カプセル剤などに配合することができる。
【0057】
活性剤の投与量は、一般に、組合せの各薬剤の薬力学的特徴、(1種以上の)活性剤の投与方式及び経路、治療されている患者の健康、所望される治療の程度、併用療法の性質及び種類、並びに存在するとすれば、治療の頻度及び所望される効果の性質を含む多数の要因に依存する。一般に、活性剤の投与量範囲は、1日当たり約0.001〜約250mg/kg体重の範囲であることが多い。例えば、約70kgの体重を有する正常な成人について、約0.1〜約25mg/kg体重の範囲内の投与量が典型的には好ましい。しかしながら、この一般的な投与量範囲のいくらかの変動性が、治療されている対象の年齢及び体重、投与されている特定の薬剤などに応じて要求され得る。2種以上の異なる活性剤が組合せ療法において一緒に使用されているので、各薬剤の有効性及びこれらを一緒に使用して達成される相互作用効果を考慮しなければならない。重要なことに、特定の哺乳動物についての投与量範囲及び最適投与量の決定も、本開示の利益を有する当業者の能力の十分な範囲内である。
【0058】
特定の実施態様において、医薬組合せが、第2の構成成分と比較して相対的に多い量の第1の構成成分を有することが有利であり得る。特定の例において、第1の活性剤と第2の活性剤との比は、30:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1又は5:1である。特定の実施態様において、医薬剤のより等しい分布を有することが好ましいことがある。ある例において、第1の活性剤と第2の活性剤との比は、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3又は1:4である。特定の実施態様において、医薬組合せが、第1の構成成分と比較して相対的に多い量の第2の構成成分を有することが有利であり得る。特定の例において、第2の活性剤と第1の活性剤との比は、30:1、20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1又は5:1である。
【0059】
例えば、ヒトへの経口投与が意図される配合物は、0.1mg〜5gの第1の治療剤及び0.1mg〜5gの第2の治療剤を含有することができ、この両方は、全組成物の約5〜約95パーセントの変動する適切かつ慣用の量の担体材料と調合される。単位投与量は、一般に、約0.5mg〜約1500mgの第1の治療剤及び0.5mg〜約1500mgの第2の治療剤を含有する。好ましい実施態様において、投与量は、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mgなど、最大1500mgの第1の治療剤を含む。好ましい実施態様において、投与量は、0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg又は1000mgなど、最大1500mgの第2の治療剤を含む。第1及び第2の治療剤の最適比は、当分野において公知の標準的なアッセイにより決定することができる。
【0060】
或る実施態様において、本発明は、本発明の医薬組成物及び1種以上の抗うつ薬を含む剤形に関する。抗うつ薬の非限定的な例としては、以下に限定されるものではないが、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、ドーパミン再取り込み阻害剤、5HT2A受容体モジュレーター、トリプル再取り込み阻害剤及びダブル再取り込み阻害剤を挙げることができる。別の観点において、本発明は、気分障害の治療を必要とする患者に本発明の治療有効量の組成物及び抗うつ薬を同時投与する工程を含む、気分障害を罹患する患者を治療する方法を開示する。5−HT2A受容体モジュレーターの非限定的な例としては、MDL100907、SR46349B、YM992、ファナンセリン、オキサゾリジン化合物A、フェニルインドール化合物A、ピペリジニル化合物B、スピロアザ環式化合物C又はアザ環式化合物D、あるいは、これらのいずれか1種の医薬的に許容される塩、包接化合物、多形又は共晶を挙げることができる。セロトニン再取り込み阻害剤の非限定的な例としては、シタロプラム、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、パロキセチン、セルトラリン、クロミンプラミン(clominpramine)、フェモキセチン、インダプリン(indapline)、アラプロクラート、セリクラミン又はイホキセチン、あるいは、これらのいずれか1種の医薬的に許容される塩、包接化合物、多形又は共晶を挙げることができる。ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の非限定的な例としては、デシプラミン、マプロチリン、ロフェプラミン、レボキセチン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン又は(S,S)−ヒドロキシブプロピオン、あるいは、これらのいずれか1種の医薬的に許容される塩、包接化合物、多形又は共晶を挙げることができる。
【0061】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【0062】
以下の配合実施例の調製に、乾式ブレンディング及び直接圧縮調製法を使用した。
(実施例1)
エスゾピクロン 3mg
フマル酸 1mg
MCC 63.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例2)
エスゾピクロン 3mg
フマル酸 3mg
MCC 61.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例3)
エスゾピクロン 3mg
フマル酸 9mg
MCC 55.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例4)
エスゾピクロン 3mg
フマル酸 18mg
MCC 46.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例5)
エスゾピクロン 3mg
L−リンゴ酸 3mg
MCC 61.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例6)
エスゾピクロン 3mg
マレイン酸 9mg
MCC 55.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
(実施例7)
エスゾピクロン 3mg
MCC 64.3mg
A−Tab 30mg
SiO2 0.2mg
クロスカルメロース 2mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
【0063】
【0064】
実施例2〜4において、フマル酸を約9%まで増加させた場合に水中の溶解が顕著に増加する。約9%を超える酸の添加は、水中の溶解に更に影響を及ぼさなかった。L−リンゴ酸は、溶解に対してフマル酸と同様の影響を有した。同一重量パーセントにおいて、例えば、3%のL−リンゴ酸は、フマル酸よりもわずかに早い水中の溶解をなすと考えられた。9%におけるマレイン酸の添加は、水中の溶解に対して9%のフマル酸と同様の影響を有した。
【0065】
3mgのエスゾピクロン核錠の7種のバッチを、3種の異なる酸を異なる濃度において用いて調製した。使用された酸は、フマル酸(1%、3%、9%及び20%)、L−リンゴ酸(3%及び12%)及びマレイン酸(9%)であった。全ての核錠を、乾式ブレンド及び直接圧縮法により作製した。配合:
《表》


錠剤を、以下のプロトコルに従って溶解性について試験した。結果を表形式及び4つの図面(図1、図2、図3及び図4)で提供する。図1は、pH1、4.5、6.8における、及び脱イオン水中の、9%のフマル酸と調合されたエスゾピクロン遊離塩基の溶解プロファイルを示す。溶解は、比較的pHに依存性であることを理解することができる。図2は、エスゾピクロン遊離塩基並びに遊離塩基と比較した3%のフマル酸、3%のL−リンゴ酸及び9%のマレイン酸と調合された遊離塩基の水中の溶解プロファイルを示す。溶解は、本発明の組成物については急速かつ完全であり、遊離塩基については緩慢かつ不完全(1時間において)であることを理解することができる。図3は、pH1における、エスゾピクロン遊離塩基及び9%のフマル酸と調合されたエスゾピクロンの溶解プロファイルを示す。pH1において、両方の組成物は、急速かつ完全に溶解する。図4は、水中における、エスゾピクロン遊離塩基並びに1%のフマル酸、3%のフマル酸、9%のフマル酸及び20%のフマル酸と調合されたエスゾピクロンの溶解プロファイルを示す。本発明の組成物は、急速かつ完全な溶解を提供し、遊離塩基は、1時間において溶解が50%未満のままである。本発明は、錠剤からの活性成分の放出速度又は溶解速度を調整するために使用することができる。例えば、急速で完全な放出が望まれる場合、経口剤形は、約1%超の固体酸、より好ましくは、約3%超の固体酸を含むことができる。
【0066】
種々の固体酸と調合されたエスゾピクロン遊離塩基の経時的な溶解を、Hanson Research SR8-Plus Dissolution Apparatus及びC-Technologies Fiber Optic UV Probesを305nm(賦形剤を410nmにおいて差し引く)において使用して、種々のpH値における溶解媒体中の体温(37℃)で遊離塩基と比較した。使用される溶解媒体は、以下のものであった(a)pH1(0.1NのHCl)6Lの水と混合した50mlの濃縮HCl、(b)pH4.5酢酸塩緩衝液(20mM)6Lの水中に溶解させた5.88gの酢酸ナトリウム三水和物、酢酸によりpHを4.5に調整、(c)pH5.5リン酸塩緩衝液(20mM)6Lの水中の16.3gのリン酸二水素カリウム。NaOHによりpHを5.5に調整、(d)pH6.8リン酸塩緩衝液(20mM)6Lの水中の16.3gのリン酸二水素カリウム。NaOHによりpHを6.8に調整。標準的な溶解プロトコルを使用した。標準溶液(0.006mg/mLのエスゾピクロン遊離塩基)を、既知量(約20mg)の遊離塩基を100mLの容積フラスコ中に秤量することにより調製した。10mLのアセトニトリルをフラスコ中に添加し、固体が完全に溶解するまで超音波処理した。溶液を室温に冷却し、媒体を使用して100mL標線までメスアップし、十分に混合した。媒体を使用して3mLを100mLに希釈した。500mLの溶解媒体を6個の容器中に移すことにより表を準備した。媒体を使用してブランク読取りを全てのプローブについて行った。スタンダードを個々の容器について読み取った。プローブを媒体により洗浄し、次いで各容器に再び挿入した。1個の錠剤を各容器中に移した。溶解プログラムを即時に開始し、読取りを305nmにおいて60分間行った(20分間について1分毎、次いで10分毎)。
【0067】
以下の表は、種々の酸を有する3mgの遊離塩基IRエスゾピクロン(0.3%以下の(R)−ゾピクロンを有する)から形成された素錠の脱イオン(DI)水中での溶解実験の結果を示す。報告される平均(Avg)は、溶解実行において使用された錠剤の数について溶解した平均%である。nは、溶解実行において使用された錠剤の数である。%RSDは、観察された平均からの相対標準偏差である。媒体のpH値は、12%のリンゴ酸を有する3mgの遊離塩基IRエスゾピクロンから形成された素錠の脱イオン(DI)水中での溶解実験実行中の種々の時点において現場でpH紙を使用して測定した。pHは、10分、20分、30分、40分、50分及び60分において6であった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のラセミ体又はアルファ化デンプンゾピクロンの遊離塩基と超化学量論量の固体酸とを含む経口医薬剤形。
【請求項2】
酸が、アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の経口医薬剤形。
【請求項3】
賦形剤を更に含む、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項4】
前記酸が、前記剤形の約0.5重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項5】
前記酸が、前記剤形の約1重量%〜約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項6】
前記酸が、前記剤形の約2重量%〜約10重量%の量で存在する、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項7】
前記酸が、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸及び酒石酸から選択される、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項8】
前記酸が、マレイン酸、フマル酸、L−リンゴ酸及びD−リンゴ酸から選択される、請求項1に記載の経口剤形。
【請求項9】
前記ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンが、約0.5mg〜約5mgの量で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項10】
前記エナンチオ濃縮されたゾピクロンが、エスゾピクロンである、請求項8に記載の経口剤形。
【請求項11】
前記経口剤形が、約0.5mg〜約3mgのエスゾピクロンと約0.5mg〜約20mgの酸とを含む100mgの錠剤である、請求項10に記載の経口剤形。
【請求項12】
アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸からなる群から選択される化学量論過剰の酸の存在下で、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロン遊離塩基を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの溶解をpH非依存性とする方法。
【請求項13】
請求項1〜8、10又は11のいずれか一項に記載の経口剤形を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの溶解をpH非依存性とする方法。
【請求項14】
アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸からなる群から選択される化学量論過剰の酸の存在下で、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロン遊離塩基を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの食後溶解を促進する方法。
【請求項15】
請求項1〜8、10又は11のいずれか一項に記載の経口剤形を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの食後溶解を促進する方法。
【請求項16】
アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸からなる群から選択される化学量論過剰の酸の存在下で、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロン遊離塩基を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンのバイオアベイラビリティを改善する方法。
【請求項17】
請求項1〜8、10又は11のいずれか一項に記載の経口剤形を経口投与することを含む、経口投与されたラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンのバイオアベイラビリティを改善する方法。
【請求項18】
前記エナンチオ濃縮されたゾピクロンが、エスゾピクロンである、請求項12、14又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸が、マレイン酸、フマル酸、L−リンゴ酸及びD−リンゴ酸から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
睡眠障害の治療のための、ラセミ体又はエナンチオ濃縮されたゾピクロンの遊離塩基と、アジピン酸、アスパラギン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、リン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、リン酸モノナトリウム及びグルクロン酸から選択される超化学量論量の酸とを含む経口医薬剤形の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532866(P2012−532866A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519525(P2012−519525)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049768
【国際公開番号】WO2011/005250
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(500114922)サノビオン ファーマシューティカルズ インク (14)
【氏名又は名称原語表記】Sunovion Pharmaceuticals Inc.
【Fターム(参考)】