60分耐熱建材およびその製造方法
【課題】60分耐火試験に合格する量産可能な耐火建材の提供する。
【解決手段】(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなり、不燃試験で30%以上の重量ロスがなく、60分耐火試験で芯材の焼け崩れがない物性を有する。
【解決手段】(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなり、不燃試験で30%以上の重量ロスがなく、60分耐火試験で芯材の焼け崩れがない物性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外壁・内壁下地用軽量セメントボードの改良に関し、特に芯材して熱可塑性樹脂と水和金属化合物とからなる複合材を有効利用し、60分耐火試験を通過するように改良された耐火建材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁・内壁下地用軽量セメントボードは米国では40年の長きにわたって外壁・内壁下地として使用されてきた。日本では屋根工事・外壁工事に用いられている。
【0003】
このセメントボードはポルトランドセメントにシェイルという火山れき(軽量骨材)を混入し水で練り合わせたものを芯材とし、その表裏に耐アルカリ性ガラス繊維メッシュをセメントスラリーで埋め込んだもので、対クラック性、耐久性、防耐火性を発揮するほか、しなやかな特性(可とう性)を持っているため、曲面施工が可能であるという特徴を有している。
【0004】
この種セメントボードは木造の軸組、枠組構法、鉄骨造にも使用できるもので、素材として不燃材認定の対象となっている。通気構法の無機系断熱材充填工法で、30分防火構造(木造軸組・枠組)、45分準耐火(木造軸組・枠組)の認定を受けるに至っているが、60分耐火構造とするためには、不十分であり、現状では外壁ではコンクリート壁とすることが要求されており、他方、内壁ではガラス繊維を封入した12mm厚の石こうボードを使用することが要求されているため、この種の耐火構造を実現するには作業性、施工コストから極めて困難な状況となっている。
【0005】
そこで、耐火被覆材としてケイ酸カルシウム板と繊維補強セメントボードもしくは石膏ボードを一体化したもの(特許文献1)や繊維強化セメントボード1の片面にガラスメッシュあるいはカーボンメッシュとウレタン発砲体を積層し、積層後プラスターボードを付設する積層構造体(特許文献2)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−71169号公報
【特許文献2】特開2006−112038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は鉄骨構造の柱もしくは梁の耐火被覆を目的としたもので、一般外壁内壁下地用途には適さない。他方、特許文献2記載の積層構造では積層数が多く、量産には適さない。そこで、 本発明はかかる問題点に鑑み、量産性に優れ、しかも軽量薄型で60分耐火構造試験に適合するセメントボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、60分耐火構造とするためには、セメントボードの内面にある芯材の耐火性が重要であり、ここに水和金属化合物、好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムを70重量%以上、好ましくは75重量%以上配合した複合材で芯材を形成するか、またはセメントまたは石こうあるいはケイ酸カルシウムで芯材を形成するときの骨材として使用すると、通常30分または45準耐火構造のセメントボードが60分耐火構造となる物性を備えるようになることを見出し、本発明を完成したものであり、
その要旨とするところは(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント、モルタル又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯材が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合耐火シートからなるので、耐火性に富むとともに、その両面をファイバーネットにより挟持しているので、不燃試験でも30%以上の重量ロスがなく、芯材はファイバーネットによりしっかりと挟持され、60分耐火試験でも焼け崩れがなく、十分な耐火性能を有することになる。
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシート(a-2)もモルタル材料の耐火性能が水和金属化合物の配合によりさらに向上するので、芯材が上記複合耐火シートである場合に比して優るとも劣ることはない60分耐火性能を示すことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の好ましい構造を備えるセメントボードであって、(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合耐火シートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、複合耐火シートを挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して複合耐火シートの片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなる。
【0011】
上記複合耐火シートは図2に示すように、芯材(a)として熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント,モルタル又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる軽量複合モルタルシート(a-2)であってもよい。
【0012】
上記複合耐火シート(a-1)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状又は粒状組成物を溶融混練して固化させた複合素材を一旦破砕した後加熱圧縮成形してなる複合材であるのが好ましい。熱可塑性樹脂が15重量%以下であると、水和金属化合物との混練性、破砕された複合材の成形性に問題が出る。他方、30重量%を超えると、不燃試験での重量ロスに影響を与えるので、30%以下の重量ロスに維持するのが困難となるので好ましくない。特に15重量%以上25重量%以下が好ましい。
【0013】
ここで、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET,PETE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、テフロン(登録商標)(PTFE)ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、飽和ポリエステル、ABS樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)等の各種の熱可塑性樹脂を用途に応じて選択することができる。
【0014】
複合材として添加する水和金属化合物としては、例えば水酸化アルミニウム(分解開始温度200℃、吸熱量470cal/g)、水酸化カルシウム(分解開始温度380℃、吸熱量222cal/g)、水酸化マグネシウム(分解開始温度340℃、吸熱量320cal/g)、カルシウムアルミネート(分解開始温度250℃、吸熱量340cal/g)などの各種添加物を選択することができ、この種水和金属化合物の物性を阻害しない範囲で各種の難燃化剤が併用されてよく、ZnO,硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、カーボンブラック、硝酸銅、硝酸鉄、スルホン酸金属塩、フォスファゼン化合物、ナノコンポジットフィラー、フームドシリカ、PAN等を適宜使用することもできる。
【0015】
熱可塑性樹脂と水和金属化合物の組み合わせは水和金属化合物の分解温度が熱可塑性樹脂の溶融温度以下であるように選択されるのが肝要であり、分解温度と吸熱量を考慮して2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
両者を均一に混合するためには熱可塑性樹脂に対する水和金属化合物の配合量が70重量%以上と極めて高いため、混合時のせん断熱により樹脂分が溶融し、水和金属化合物との十分な混合ができるように、熱可塑性樹脂と水和金属化合物の種類および混合比率が最適化される。熱可塑性樹脂はその溶融温度、流動性にもよるが粉状または粒状として水和金属化合物と混合されるのが好ましい場合が多い。また破砕された中間片を加熱圧縮して流動化させ一体化成形できるように中間片の溶融流動化物性を調整するために、2種以上の熱可塑性樹脂を混合するのがよい場合がある。例えば、熱可塑性樹脂の流動性を調整するためにエラストマーを一部配合する場合もある。
【0017】
中間層(b)をなすファイバーネットは通常、ガラス繊維ネットが使用されるが、カーボン樹脂等の合成樹脂繊維が使用されても支障がない。
【0018】
上記外層(c)としてはセメントボートとして通常使用されるセメント、モルタル又は石こう等の組成物が使用されるが、骨材を使用する場合は、上記熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを使用するのが無機耐火性能を向上させるので好ましい。上記複合チップは熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状組成物を溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径およそ30mmφ以下に破砕して細骨材、粗骨材として調製することができる。上記複合チップは熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状又は粒状組成物に天然又は合成ファイバーを添加し、溶融混練して固化させた複合素材を破砕して製造するようにしてもよい。混練時の分解を防ぐ意味で溶融温度の比較的低い樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂を使用する場合は水酸化アルミニウムでよいが、さらに高い溶融温度を有する場合は水酸化アルミニウムの一部または全部を水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムと混合して使用するのがよい。
【0019】
本発明に係る耐火建材は工場生産して現場でそのまま使用できるようにしてもよいが、図3及び図4に示すように、(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)の両面に、グラスファイバーネットからなる中間層(b)を付設して挟持する半製品であっても、現場でその表面にセメント層を形成するようにして使用することもできるので有用である。
【0020】
本発明によれば、以下の3種の方法により60分耐火建材を製造することができる。
ます、第1の方法は、図5に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、両者をせん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、該破砕中間片を加熱成形面上に配置した型枠内に投入し(e)、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、溶融一体化して複合耐熱シート(f)を形成し、複合耐熱シートの両面に接着剤を介してグラスファイバーネットを付設し(g)、グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させて仕上げる工程(h)からなる。
【0021】
第2の方法は、図6に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、せん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、下加熱成形面上にグラスファイバーネットを配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片を投入し、該型枠内の破砕中間片上面にグラスファイバーネットを付設して成形準備し(e)、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、上記破砕中間片を溶融一体化するとともにその表裏面をグラスファイバーネットで挟持した複合耐熱シート(g)を形成し、グラスファイバーネット面にセメント又は石こう層を塗布し、乾燥させて仕上げる工程からなる。
【0022】
第3の方法は、図5及び図6の工程において複合樹脂ボードに代えて複合モルタルボードを用いる場合で、図7に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、せん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、該破砕中間片(d)を骨材としてモルタル材と混合した組成物を型枠に注入凝固成形して複合モルタルボード(f)を形成するが、複合モルタルボード(f)の成形の際に、成形面上にグラスファイバーネット(b)を配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片とセメント、モルタル又は石こうを混合した組成物を投入し(e)、上方から押し型で型枠内に押し込め、ファイバーネットから外方に組成物を幾分滲出させ、グラスファイバーネット面にモルタル層を形成した後(f),さらに該型枠内の組成物上面にグラスファイバーネットを付設し(g)、ファイバーネット面にセメント又は石こう層を塗布し、乾燥させ仕上げる(h)ことができる。図7の場合は、ファイバーネットは片面ずつ形成したが、モルタルボードととともに両面を同時に形成し、モルタル面を形成することもできるし、先にモルタルボードを形成した後、両面にファイバーネットを付設し、モルタル層を形成することもできる。ここで、モルタル層とはセメント、モルタルまたは石こう等の無機耐火物層を意味する。
【0023】
熱可塑性樹脂と水和金属化合物は粉状組成物として混練するのが混練機のせん断により溶融混練が可能であるので好ましい。混練機としては、せん断の掛かりやすい混練機を使用するのが好ましく、1軸又は2軸押し出し機を使用するよりも加圧ニーダ、インテンシブミキサーを使用するのが好ましい。
【0024】
破砕は公知の破砕機を使用することができる。熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状組成物をせん断をかけて溶融し混練して固化させた複合素材を破砕して中間片を作成する。中間片には粉又は粒状の破砕粒、薄片状の破砕片及び塊状の破砕塊が含まれるが、次工程での成形性、流動性を考慮すると平均粒径おおよそ30mmφ以下であるのが好ましい。
【0025】
かかる中間片の加熱加圧は上下のローラで加圧してもよく、上下一対の加熱成形金型内で溶融して流動化し、一体成形するようにするのがよい。
【0026】
図10は芯材として複合樹脂シートを使用する場合の半製品の連続成形方法の概念図であり、搬送ベルト上にガラス繊維メッシュシートを連続的に送り出すとともに、一定の間隔で型枠を載せ、次いで破砕中間片をその型枠内に充填し、均一に広げた後に加熱圧縮して中間片を型枠内で一部溶融流動化して一体化する。所定の温度まで降下すると、押し型を開放し、その上にガラス繊維メッシュを敷いて接着剤またはセメント層を塗布し、縁を切断して半製品を製造することができる。
【0027】
図11は芯材として複合モルタルシートを使用する場合の半製品の連続成形方法の概念図であり、搬送ベルト上に一定の間隔で型枠を載せ、その上にガラス繊維メッシュシートを連続的に送り出すとともにスラリー材を塗布し、次いで破砕中間片を骨材として混合した複合モルタル組成物をその型枠内に充填し、均一に広げた後に成型し、一体化する。次いで、その上にガラス繊維メッシュを敷いてスラリー材を塗布し、ガラス繊維メッシュ縁を切断して養生し、半製品を製造することができる。
【0028】
本発明に係る耐火建材は従来のセメントボードと同様に塗り壁システムに適用することができる。図11は塗り壁システムの構成を示す斜視図であって、構造用合板の上に透湿防水シートを張り、一定の間隔で並列配置した胴縁材を介してセメントボード(本発明に係る耐火建材)をウッドスクリューを用いて構造用合板全面に付設する。そして、このセメントボードの上に適宜ガラス繊維テープを張り、その上に外壁ベースコートを施し、そのベースコート上に外壁材を付設して外張断熱工法を達成する。本発明に係るセメントボードは60分耐火性能を有するため、図12に示す塗り壁システムは優れた耐火構造を有することになる。
【0029】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図8及び図9は本発明に係る耐火建材の製造方法の好ましい実施形態を示す。芯材を製造する場合、水和金属化合物、例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムを準備する。この水和金属化合物や炭酸カルシウムは平均外径10μm〜35μmの粉状のものを用いる。
【0030】
また、熱可塑性樹脂は、例えば適当な大きさの粉状又は粒状のポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を準備する。
【0031】
他方、混練機の加熱ヒータを作動させ、混練機内部を熱可塑性樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、粉状熱可塑性樹脂を混練機内に投入し、せん断をかけ攪拌しながら溶融させる。樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生するので、加熱ヒータによる加熱温度は樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂が十分に軟化又は溶融すると、準備した充填剤、例えば水和金属化合物や炭酸カルシウムを一度に又は複数回に分けて混練機内に投入し、軟化・溶融した熱可塑性樹脂と充填剤及び着色剤を実質的に均一になるように混練する。混練には加圧式ニーダが好ましいが、その他の混練機であっても混練物を硬化させては破砕し、再度溶融混練する作業を繰り返すことにより均一混練性を向上させるのが好ましい。充填剤は一度に大量に投入すると、軟化・溶融した樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機への投入前に複合素材の原料を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。
【0033】
また、熱可塑性樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、加熱温度や熱可塑性樹脂の物性によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0034】
十分な混練が済むと、混練物を取り出し、破砕機で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜40mmの大きさの粒状、片状又は塊状に破砕し、中間片とする。
【0035】
こうして中間片が得られると、図8及び図9に示す具体的成形法を採用し、芯材(a)の成形を行い、図5又は図6の方法を採用し、ファイバーネット(b)及び外層(c)を形成してセメントボードを製造する。
【0036】
図8において、まず、(a)では成型する厚みに応じた型枠を上面に備える加熱成形台を用意する。次いで(b) では成形芯材の体積に相応するように計量された中間片を投入する。このとき、破砕中間片が型枠からはみ出しやすいので、型枠の内枠に沿ってホーミング用枠を挿入する場合もある。そして、中間片を均等に広げる(c)。その後、加熱プレスを行う(d)。成形が終了すると、図9に示されるように、上加熱成形台を開放し(e)、冷却後型枠から成形物を取り出す(f)。そして、はみ出た耳部分を切断して芯材を製造する(j)。
【0037】
好ましい熱可塑性樹脂としてポリプロピレン15〜20重量%に5重量%以下のエラストマーを配合し、これに水酸化アルミニウムに10重量%以下の水酸化マグネシウムを配合した充填材を80〜75重量%を配合し、両者をほぼ均一に混練し、固化した複合素材を平均粒径25mm程度に破砕した中間片を加熱一体成形した厚み3〜10mmの芯材に従来と同様のガラス繊維ネットを敷設し、セメント層を形成したものは60分耐火試験に合格する物性を有することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の模式的断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の半製品の模式的断面図である。
【図4】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の半製品の模式的断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法を示す概要図である。
【図6】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法の変形例を示す概要図である。
【図7】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法を示す概要図である。
【図8】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の芯材の具体的製造方法を示す概要図である。
【図9】図8に続く工程を示す概要図である。
【図10】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の連続製造方法を示す概要図である。
【図11】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の連続製造方法を示す概要図である。
【図12】本発明に係る耐火建材の施工例を示す一部分解斜視図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は外壁・内壁下地用軽量セメントボードの改良に関し、特に芯材して熱可塑性樹脂と水和金属化合物とからなる複合材を有効利用し、60分耐火試験を通過するように改良された耐火建材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁・内壁下地用軽量セメントボードは米国では40年の長きにわたって外壁・内壁下地として使用されてきた。日本では屋根工事・外壁工事に用いられている。
【0003】
このセメントボードはポルトランドセメントにシェイルという火山れき(軽量骨材)を混入し水で練り合わせたものを芯材とし、その表裏に耐アルカリ性ガラス繊維メッシュをセメントスラリーで埋め込んだもので、対クラック性、耐久性、防耐火性を発揮するほか、しなやかな特性(可とう性)を持っているため、曲面施工が可能であるという特徴を有している。
【0004】
この種セメントボードは木造の軸組、枠組構法、鉄骨造にも使用できるもので、素材として不燃材認定の対象となっている。通気構法の無機系断熱材充填工法で、30分防火構造(木造軸組・枠組)、45分準耐火(木造軸組・枠組)の認定を受けるに至っているが、60分耐火構造とするためには、不十分であり、現状では外壁ではコンクリート壁とすることが要求されており、他方、内壁ではガラス繊維を封入した12mm厚の石こうボードを使用することが要求されているため、この種の耐火構造を実現するには作業性、施工コストから極めて困難な状況となっている。
【0005】
そこで、耐火被覆材としてケイ酸カルシウム板と繊維補強セメントボードもしくは石膏ボードを一体化したもの(特許文献1)や繊維強化セメントボード1の片面にガラスメッシュあるいはカーボンメッシュとウレタン発砲体を積層し、積層後プラスターボードを付設する積層構造体(特許文献2)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−71169号公報
【特許文献2】特開2006−112038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は鉄骨構造の柱もしくは梁の耐火被覆を目的としたもので、一般外壁内壁下地用途には適さない。他方、特許文献2記載の積層構造では積層数が多く、量産には適さない。そこで、 本発明はかかる問題点に鑑み、量産性に優れ、しかも軽量薄型で60分耐火構造試験に適合するセメントボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、60分耐火構造とするためには、セメントボードの内面にある芯材の耐火性が重要であり、ここに水和金属化合物、好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムを70重量%以上、好ましくは75重量%以上配合した複合材で芯材を形成するか、またはセメントまたは石こうあるいはケイ酸カルシウムで芯材を形成するときの骨材として使用すると、通常30分または45準耐火構造のセメントボードが60分耐火構造となる物性を備えるようになることを見出し、本発明を完成したものであり、
その要旨とするところは(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント、モルタル又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、芯材が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合耐火シートからなるので、耐火性に富むとともに、その両面をファイバーネットにより挟持しているので、不燃試験でも30%以上の重量ロスがなく、芯材はファイバーネットによりしっかりと挟持され、60分耐火試験でも焼け崩れがなく、十分な耐火性能を有することになる。
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシート(a-2)もモルタル材料の耐火性能が水和金属化合物の配合によりさらに向上するので、芯材が上記複合耐火シートである場合に比して優るとも劣ることはない60分耐火性能を示すことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の好ましい構造を備えるセメントボードであって、(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合耐火シートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、複合耐火シートを挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して複合耐火シートの片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなる。
【0011】
上記複合耐火シートは図2に示すように、芯材(a)として熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント,モルタル又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる軽量複合モルタルシート(a-2)であってもよい。
【0012】
上記複合耐火シート(a-1)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状又は粒状組成物を溶融混練して固化させた複合素材を一旦破砕した後加熱圧縮成形してなる複合材であるのが好ましい。熱可塑性樹脂が15重量%以下であると、水和金属化合物との混練性、破砕された複合材の成形性に問題が出る。他方、30重量%を超えると、不燃試験での重量ロスに影響を与えるので、30%以下の重量ロスに維持するのが困難となるので好ましくない。特に15重量%以上25重量%以下が好ましい。
【0013】
ここで、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET,PETE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、テフロン(登録商標)(PTFE)ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、飽和ポリエステル、ABS樹脂(ABS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)等の各種の熱可塑性樹脂を用途に応じて選択することができる。
【0014】
複合材として添加する水和金属化合物としては、例えば水酸化アルミニウム(分解開始温度200℃、吸熱量470cal/g)、水酸化カルシウム(分解開始温度380℃、吸熱量222cal/g)、水酸化マグネシウム(分解開始温度340℃、吸熱量320cal/g)、カルシウムアルミネート(分解開始温度250℃、吸熱量340cal/g)などの各種添加物を選択することができ、この種水和金属化合物の物性を阻害しない範囲で各種の難燃化剤が併用されてよく、ZnO,硼酸亜鉛、錫酸亜鉛、カーボンブラック、硝酸銅、硝酸鉄、スルホン酸金属塩、フォスファゼン化合物、ナノコンポジットフィラー、フームドシリカ、PAN等を適宜使用することもできる。
【0015】
熱可塑性樹脂と水和金属化合物の組み合わせは水和金属化合物の分解温度が熱可塑性樹脂の溶融温度以下であるように選択されるのが肝要であり、分解温度と吸熱量を考慮して2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
両者を均一に混合するためには熱可塑性樹脂に対する水和金属化合物の配合量が70重量%以上と極めて高いため、混合時のせん断熱により樹脂分が溶融し、水和金属化合物との十分な混合ができるように、熱可塑性樹脂と水和金属化合物の種類および混合比率が最適化される。熱可塑性樹脂はその溶融温度、流動性にもよるが粉状または粒状として水和金属化合物と混合されるのが好ましい場合が多い。また破砕された中間片を加熱圧縮して流動化させ一体化成形できるように中間片の溶融流動化物性を調整するために、2種以上の熱可塑性樹脂を混合するのがよい場合がある。例えば、熱可塑性樹脂の流動性を調整するためにエラストマーを一部配合する場合もある。
【0017】
中間層(b)をなすファイバーネットは通常、ガラス繊維ネットが使用されるが、カーボン樹脂等の合成樹脂繊維が使用されても支障がない。
【0018】
上記外層(c)としてはセメントボートとして通常使用されるセメント、モルタル又は石こう等の組成物が使用されるが、骨材を使用する場合は、上記熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを使用するのが無機耐火性能を向上させるので好ましい。上記複合チップは熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状組成物を溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径およそ30mmφ以下に破砕して細骨材、粗骨材として調製することができる。上記複合チップは熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる粉状又は粒状組成物に天然又は合成ファイバーを添加し、溶融混練して固化させた複合素材を破砕して製造するようにしてもよい。混練時の分解を防ぐ意味で溶融温度の比較的低い樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂を使用する場合は水酸化アルミニウムでよいが、さらに高い溶融温度を有する場合は水酸化アルミニウムの一部または全部を水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムと混合して使用するのがよい。
【0019】
本発明に係る耐火建材は工場生産して現場でそのまま使用できるようにしてもよいが、図3及び図4に示すように、(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)の両面に、グラスファイバーネットからなる中間層(b)を付設して挟持する半製品であっても、現場でその表面にセメント層を形成するようにして使用することもできるので有用である。
【0020】
本発明によれば、以下の3種の方法により60分耐火建材を製造することができる。
ます、第1の方法は、図5に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、両者をせん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、該破砕中間片を加熱成形面上に配置した型枠内に投入し(e)、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、溶融一体化して複合耐熱シート(f)を形成し、複合耐熱シートの両面に接着剤を介してグラスファイバーネットを付設し(g)、グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させて仕上げる工程(h)からなる。
【0021】
第2の方法は、図6に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、せん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、下加熱成形面上にグラスファイバーネットを配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片を投入し、該型枠内の破砕中間片上面にグラスファイバーネットを付設して成形準備し(e)、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、上記破砕中間片を溶融一体化するとともにその表裏面をグラスファイバーネットで挟持した複合耐熱シート(g)を形成し、グラスファイバーネット面にセメント又は石こう層を塗布し、乾燥させて仕上げる工程からなる。
【0022】
第3の方法は、図5及び図6の工程において複合樹脂ボードに代えて複合モルタルボードを用いる場合で、図7に示すように、混練機(ニーダ)に粉状又は粒状熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を投入し、せん断をかけて溶融混練し、固化させた複合素材(b)を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕(c)して破砕中間片(d)を製造し、該破砕中間片(d)を骨材としてモルタル材と混合した組成物を型枠に注入凝固成形して複合モルタルボード(f)を形成するが、複合モルタルボード(f)の成形の際に、成形面上にグラスファイバーネット(b)を配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片とセメント、モルタル又は石こうを混合した組成物を投入し(e)、上方から押し型で型枠内に押し込め、ファイバーネットから外方に組成物を幾分滲出させ、グラスファイバーネット面にモルタル層を形成した後(f),さらに該型枠内の組成物上面にグラスファイバーネットを付設し(g)、ファイバーネット面にセメント又は石こう層を塗布し、乾燥させ仕上げる(h)ことができる。図7の場合は、ファイバーネットは片面ずつ形成したが、モルタルボードととともに両面を同時に形成し、モルタル面を形成することもできるし、先にモルタルボードを形成した後、両面にファイバーネットを付設し、モルタル層を形成することもできる。ここで、モルタル層とはセメント、モルタルまたは石こう等の無機耐火物層を意味する。
【0023】
熱可塑性樹脂と水和金属化合物は粉状組成物として混練するのが混練機のせん断により溶融混練が可能であるので好ましい。混練機としては、せん断の掛かりやすい混練機を使用するのが好ましく、1軸又は2軸押し出し機を使用するよりも加圧ニーダ、インテンシブミキサーを使用するのが好ましい。
【0024】
破砕は公知の破砕機を使用することができる。熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状組成物をせん断をかけて溶融し混練して固化させた複合素材を破砕して中間片を作成する。中間片には粉又は粒状の破砕粒、薄片状の破砕片及び塊状の破砕塊が含まれるが、次工程での成形性、流動性を考慮すると平均粒径おおよそ30mmφ以下であるのが好ましい。
【0025】
かかる中間片の加熱加圧は上下のローラで加圧してもよく、上下一対の加熱成形金型内で溶融して流動化し、一体成形するようにするのがよい。
【0026】
図10は芯材として複合樹脂シートを使用する場合の半製品の連続成形方法の概念図であり、搬送ベルト上にガラス繊維メッシュシートを連続的に送り出すとともに、一定の間隔で型枠を載せ、次いで破砕中間片をその型枠内に充填し、均一に広げた後に加熱圧縮して中間片を型枠内で一部溶融流動化して一体化する。所定の温度まで降下すると、押し型を開放し、その上にガラス繊維メッシュを敷いて接着剤またはセメント層を塗布し、縁を切断して半製品を製造することができる。
【0027】
図11は芯材として複合モルタルシートを使用する場合の半製品の連続成形方法の概念図であり、搬送ベルト上に一定の間隔で型枠を載せ、その上にガラス繊維メッシュシートを連続的に送り出すとともにスラリー材を塗布し、次いで破砕中間片を骨材として混合した複合モルタル組成物をその型枠内に充填し、均一に広げた後に成型し、一体化する。次いで、その上にガラス繊維メッシュを敷いてスラリー材を塗布し、ガラス繊維メッシュ縁を切断して養生し、半製品を製造することができる。
【0028】
本発明に係る耐火建材は従来のセメントボードと同様に塗り壁システムに適用することができる。図11は塗り壁システムの構成を示す斜視図であって、構造用合板の上に透湿防水シートを張り、一定の間隔で並列配置した胴縁材を介してセメントボード(本発明に係る耐火建材)をウッドスクリューを用いて構造用合板全面に付設する。そして、このセメントボードの上に適宜ガラス繊維テープを張り、その上に外壁ベースコートを施し、そのベースコート上に外壁材を付設して外張断熱工法を達成する。本発明に係るセメントボードは60分耐火性能を有するため、図12に示す塗り壁システムは優れた耐火構造を有することになる。
【0029】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図8及び図9は本発明に係る耐火建材の製造方法の好ましい実施形態を示す。芯材を製造する場合、水和金属化合物、例えば水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、あるいは炭酸カルシウムを準備する。この水和金属化合物や炭酸カルシウムは平均外径10μm〜35μmの粉状のものを用いる。
【0030】
また、熱可塑性樹脂は、例えば適当な大きさの粉状又は粒状のポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を準備する。
【0031】
他方、混練機の加熱ヒータを作動させ、混練機内部を熱可塑性樹脂の溶融温度、例えば100°C〜300°Cの範囲内の温度まで上昇させておき、粉状熱可塑性樹脂を混練機内に投入し、せん断をかけ攪拌しながら溶融させる。樹脂の投入は一度に行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。樹脂の溶融中に攪拌羽根の回転による溶融樹脂の攪拌によって熱が発生するので、加熱ヒータによる加熱温度は樹脂の溶融温度よりも多少低温であってもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂が十分に軟化又は溶融すると、準備した充填剤、例えば水和金属化合物や炭酸カルシウムを一度に又は複数回に分けて混練機内に投入し、軟化・溶融した熱可塑性樹脂と充填剤及び着色剤を実質的に均一になるように混練する。混練には加圧式ニーダが好ましいが、その他の混練機であっても混練物を硬化させては破砕し、再度溶融混練する作業を繰り返すことにより均一混練性を向上させるのが好ましい。充填剤は一度に大量に投入すると、軟化・溶融した樹脂の温度が低下してしまうことがあるので、混練機への投入前に複合素材の原料を予め加熱ヒータ等で適当な温度に加熱してもよい。
【0033】
また、熱可塑性樹脂を溶融状態のままで長時間加熱すると、樹脂本来の物性が損なわれることもあるので、十分に溶融した後、短時間で混練を完了させるのが好ましい。本件発明者の実験によれば、溶融してから混練が完了するまでの時間は5分〜30分程度が好ましいことが判明したが、加熱温度や熱可塑性樹脂の物性によって異なるので、最適な時間は実験などによって求めるのがよい。
【0034】
十分な混練が済むと、混練物を取り出し、破砕機で適切な寸法、例えば一辺が3mm〜40mmの大きさの粒状、片状又は塊状に破砕し、中間片とする。
【0035】
こうして中間片が得られると、図8及び図9に示す具体的成形法を採用し、芯材(a)の成形を行い、図5又は図6の方法を採用し、ファイバーネット(b)及び外層(c)を形成してセメントボードを製造する。
【0036】
図8において、まず、(a)では成型する厚みに応じた型枠を上面に備える加熱成形台を用意する。次いで(b) では成形芯材の体積に相応するように計量された中間片を投入する。このとき、破砕中間片が型枠からはみ出しやすいので、型枠の内枠に沿ってホーミング用枠を挿入する場合もある。そして、中間片を均等に広げる(c)。その後、加熱プレスを行う(d)。成形が終了すると、図9に示されるように、上加熱成形台を開放し(e)、冷却後型枠から成形物を取り出す(f)。そして、はみ出た耳部分を切断して芯材を製造する(j)。
【0037】
好ましい熱可塑性樹脂としてポリプロピレン15〜20重量%に5重量%以下のエラストマーを配合し、これに水酸化アルミニウムに10重量%以下の水酸化マグネシウムを配合した充填材を80〜75重量%を配合し、両者をほぼ均一に混練し、固化した複合素材を平均粒径25mm程度に破砕した中間片を加熱一体成形した厚み3〜10mmの芯材に従来と同様のガラス繊維ネットを敷設し、セメント層を形成したものは60分耐火試験に合格する物性を有することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の模式的断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の模式的断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の半製品の模式的断面図である。
【図4】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の半製品の模式的断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法を示す概要図である。
【図6】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法の変形例を示す概要図である。
【図7】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の製造方法を示す概要図である。
【図8】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の芯材の具体的製造方法を示す概要図である。
【図9】図8に続く工程を示す概要図である。
【図10】本発明に係る第1実施例の耐火建材(セメントボード)の連続製造方法を示す概要図である。
【図11】本発明に係る第2実施例の耐火建材(セメントボード)の連続製造方法を示す概要図である。
【図12】本発明に係る耐火建材の施工例を示す一部分解斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなり、不燃試験で30%以上の重量ロスがなく、60分耐火試験で芯材の焼け崩れがないことを特徴とする耐火建材。
【請求項2】
上記複合樹脂シート(a-1)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物を溶融混練して固化させた複合素材を一旦破砕した後加熱圧縮成形してなる複合材である請求項1記載の耐火建材。
【請求項3】
上記外層(c)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材として含むセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層である請求項1記載の耐火建材。
【請求項4】
上記複合チップが熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物を溶融混練して固化させた複合素材を破砕してなる複合材である請求項3記載の耐火建材。
【請求項5】
上記複合チップが熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物に天然又は合成ファイバーを添加し、溶融混練して固化させた複合素材を破砕してなる複合材である請求項3記載の耐火建材。
【請求項6】
水和金属化合物が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムの1種または2種以上からなる請求項1記載の耐火建材。
【請求項7】
(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するグラスファイバーネットからなる中間層(b)とからなることを特徴とする60分耐火建材用半製品。
【請求項8】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕して中間片を製造する工程と、
該破砕中間片を加熱成形面上に配置した型枠内に投入し、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、溶融一体化して複合樹脂シートを形成する工程と、
複合耐熱シートの両面に接着剤を介してファイバーネットを付設する工程と、
グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕して中間片を製造する工程と、
加熱成形面上にファイバーネットを配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片を投入し、その上面にファイバーネットを付設し、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、上記破砕中間片を溶融一体化するとともにその表裏面をファイバーネットで挟持した複合耐熱シートを形成する工程と、
ファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融し混練して固化させた複合素材を破砕して複合骨材を製造する工程と、
成形面上にファイバーネットを配置し、その上に上記破砕中間片を骨材としてセメント又は石こう等の無機耐火材と混合したモルタル組成物を投入し、さらに該モルタル組成物上面にグラスファイバーネットを付設し、上方から押圧成形し、ファイバーネットから外方に組成物を幾分滲出させ、グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を形成し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【請求項1】
(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するファイバーネットからなる中間層(b)と、該ファイバーネットを介して芯材の片面又は両面に形成されたセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層からなる外層(c)とからなり、不燃試験で30%以上の重量ロスがなく、60分耐火試験で芯材の焼け崩れがないことを特徴とする耐火建材。
【請求項2】
上記複合樹脂シート(a-1)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物を溶融混練して固化させた複合素材を一旦破砕した後加熱圧縮成形してなる複合材である請求項1記載の耐火建材。
【請求項3】
上記外層(c)が熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を混合成形してなる複合チップを骨材として含むセメント、モルタル又は石こう組成物からなる無機耐火層である請求項1記載の耐火建材。
【請求項4】
上記複合チップが熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物を溶融混練して固化させた複合素材を破砕してなる複合材である請求項3記載の耐火建材。
【請求項5】
上記複合チップが熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を添加してなる組成物に天然又は合成ファイバーを添加し、溶融混練して固化させた複合素材を破砕してなる複合材である請求項3記載の耐火建材。
【請求項6】
水和金属化合物が水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウムの1種または2種以上からなる請求項1記載の耐火建材。
【請求項7】
(a-1)熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを加熱圧縮成形してなる複合樹脂シートまたは(a-2) 熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%からなる複合チップを骨材としてセメント又は石こう等の壁材中に混合して形成してなる複合モルタルシートからなる芯材(a)と、該芯材の両面に付設され、芯材を挟持するグラスファイバーネットからなる中間層(b)とからなることを特徴とする60分耐火建材用半製品。
【請求項8】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕して中間片を製造する工程と、
該破砕中間片を加熱成形面上に配置した型枠内に投入し、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、溶融一体化して複合樹脂シートを形成する工程と、
複合耐熱シートの両面に接着剤を介してファイバーネットを付設する工程と、
グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融混練して固化させた複合素材を平均粒径おおよそ30mmφ以下に破砕して中間片を製造する工程と、
加熱成形面上にファイバーネットを配置し、その上に配置される上下を開放した型枠内に上記破砕中間片を投入し、その上面にファイバーネットを付設し、上方から加熱成形面で型枠内に押し込め、上記破砕中間片を溶融一体化するとともにその表裏面をファイバーネットで挟持した複合耐熱シートを形成する工程と、
ファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を塗布し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂15〜30重量%に対し水和金属化合物85〜70重量%を含んでなる粉状又は粒状組成物をせん断をかけて溶融し混練して固化させた複合素材を破砕して複合骨材を製造する工程と、
成形面上にファイバーネットを配置し、その上に上記破砕中間片を骨材としてセメント又は石こう等の無機耐火材と混合したモルタル組成物を投入し、さらに該モルタル組成物上面にグラスファイバーネットを付設し、上方から押圧成形し、ファイバーネットから外方に組成物を幾分滲出させ、グラスファイバーネット面にセメント、モルタル又は石こう層を形成し、乾燥させる工程からなることを特徴とする60分耐火建材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−270380(P2009−270380A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123540(P2008−123540)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(508139538)有限会社マイテック (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(508139538)有限会社マイテック (4)
【Fターム(参考)】
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