説明

7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンのマルチアーム型ポリマー性複合体と組み合わせたHER2受容体拮抗薬を用いるHER2陽性がんの治療方法

本発明は、哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法に関する。本発明は、それを必要とする哺乳動物にHER2拮抗薬を7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリマー性プロドラッグと組み合わせて投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2009年7月22日に出願の米国特許仮出願第61/227,599号に基づく優先権の特典を要求する。
【0002】
本発明は、HER2陽性がんの治療方法に関する。詳細には、本発明は、HER2拮抗薬を7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリエチレングリコール複合体と組み合わせて投与することによって、哺乳動物におけるHER2陽性がんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳がんは、合衆国の女性の間で最も広く知られた部類のがんである。最近の研究は、乳がんのほぼ20〜25%がHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)陽性であることを示している。HER2タンパク質は、HER2受容体又はHER2/neu又はErbB2とも呼ばれ、体中の一部の正常細胞の表面上で見出される。HER2は、細胞の成長及び生存を調節することに関して役割を演じる。HER2タンパク質、コードしている遺伝子、及びHER2タンパク質に対する抗体は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第6,165,464号中に詳細に記載されている。
【0004】
研究は、乳がん腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現している場合に、乳がんはより侵襲性である可能性があることを示している。HER2陽性腫瘍は、HER2陽性でない腫瘍に比べてより急速に成長し拡大する。HER2陽性乳がんにおいて、がん細胞は、細胞当たりの異常に大きなHER2遺伝子コピー数を有する。Slamon DJ.ら、Science 244:707〜712,1989;及びPegram M.ら、Semin.Oncol.27:13〜19,2000を参照されたい。HER陽性乳がんは、HER2陽性でないがんに比べて2.5倍より多く再発することが報告されている。また、HER2の過剰発現は、化学療法薬に対する抵抗性と関連していることが示唆されている。
【0005】
トラスツズマブは、HER2(又はHER2/neu)受容体のドメインIVに選択的に結合するヒト化モノクロナール抗体である。トラスツズマブは、HER2タンパク質に結合することによって腫瘍細胞の成長を抑制する。臨床研究は、トラスツズマブの使用が、侵襲性HER2陽性がんを有する者の中での再発リスクを半分未満まで低減することを示した。
【0006】
治療薬の相乗効果を達成するか、或いはその副作用を低減するための試みにおいて、化学療法薬と組み合わせたトラスツズマブを用いてがんを治療する種々の試験がおこなわれてきた。少し例を挙げれば、トラスツズマブとの併用療法には、ドセタキセル/ゲフィチニブ/トラスツズマブ、カペシタビン/パクリタキセル/トラスツズマブ、カルボプラチン/ドセタキセル/トラスツズマブ、カルボプラチン/ゲムシタビン/パクリタキセル/トラスツズマブ、カルボプラチン/パクリタキセル/トラスツズマブ、シスプラチン/ドセタキセル/トラスツズマブ、シクロホスファミド/ドキソルビシン/トラスツズマブ、シクロホスファミド/フルオロウラシル/メトトレキサート/トラスツズマブなどがある。また、例えば、米国特許第6,313,138号、6,462,017号、6,537,988号、及び6,846,816号を参照されたい。化学療法と組み合わせたトラスツズマブは、初期及び後期の双方の転移性がんの女性を延命することが示されている。例えば、生存期間中央値は、化学療法のみを受け入れている患者での20.0ヶ月と比較して、トラスツズマブ及び化学療法を受け入れている患者では26.2ヶ月まで増加する。
【0007】
残念ながら、患者は、1年などの長期にわたってトラスツズマブ療法を受け入れる必要がある。トラスツズマブでのこのような長期治療は、有害な効果を有する。トラスツズマブの単独又は化学療法と組み合わせた治療は、心不全をもたらしたことが報告されている。また、患者が、トラスツズマブを、アントラサイクリンをベースにした化学療法と組み合わせて受け入れることは危険であることも報告されている。トラスツズマブを、ドキソルビシン、シクロホスファミド、及びパクリタキセル又はドセタキセルのどちらかなどの化学療法薬と組み合わせて受け入れているかなりの数の患者が心不全を発症した。かくして、トラスツズマブを含めた療法は、トラスツズマブを含めた療法に先立って、及び療法中に、患者が心機能検査を受けることを必要とし、心臓に問題がある患者は、トラスツズマブを含めた療法を受け入れないか、或いは中止することが推奨される。トラスツズマブの長期使用は、また、化学療法で誘発される好中球減少症を悪化させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、HER2陽性がんの治療方法に対する必要性が相変わらず存在する。本発明は、この必要性に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様において、哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法が提供される。該方法は、哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を、有効量の式(I)の化合物:
【化1】

【0010】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、R1、R2、R3及びR4のすべてがOHであることはないとの条件で、独立に、OH、又は
【化2】

【0011】
(ここで、Lは、二官能性リンカーであり、各Lは、(m)が2以上であるなら、同一であるか或いは異なり、(m)は0又は正の整数である)
であり、
(n)は正の整数である]
又は哺乳動物に対して薬学的に許容されるその塩と組み合わせて投与することを含む。
【0012】
代わりの態様では、哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法が提供される。該方法は、前記哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を、有効量のカンプトテシン、カンプトテシン類似体、カンプトテシン又はその類似体のポリマー性複合体、或いはそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む。
【0013】
一実施形態において、該方法は、HER2陽性がんを有する哺乳動物にHER2受容体拮抗薬をカンプトテシン又はその類似体のポリマー性複合体をプラスして投与することによって実施される。ポリマー性複合体は、式(II)又は(III)の化合物:
【化3】

【0014】
(ここで、
Z1、Z2、Z3及びZ4は、Z1、Z2、Z3及びZ4のすべてがOHであることはないとの条件で、独立にOH又は(L)m-Dであり、
Lは、二官能性リンカーであり、
Dは、カンプトテシン又はカンプトテシン類似体であり、
M1は、O、S、又はNHであり、
(d)は、0、又は約1〜約10の正の整数であり、
(z)は、0、又は1〜約29の正の整数であり、
(m)は、0、又は正の整数であり、(m)が2以上であるなら、各Lは同一であるか、或いは異なる、且つ
(n)は約10〜約2,300の正の整数であり、その結果、化合物のポリマー性部分は約2,000〜約100,000ダルトンの数平均総分子量を有する)
を含む。
【0015】
一実施形態において、本明細書に記載の方法中で採用されるHER2拮抗薬としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,821,337号及び6,165,464号によって詳細に説明されているような、Herceptin(登録商標)の商標で市販されているトラスツズマブが挙げられる。
【0016】
一つの好ましい実施形態において、本明細書に記載の方法中で採用される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリマー性プロドラッグとしては、次の構造:
【化4】

【0017】
(式中、(n)は、約28〜約341、好ましくは約114〜約239、より好ましくは約227である)
を有する4アーム型PEG-7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン複合体が挙げられる。
【0018】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載の方法は、
(a)がんを有する哺乳動物におけるHER2陽性がんの存在を判定すること;及び
(b)HER2陽性がんを有する哺乳動物に有効量のHER2受容体拮抗薬を、有効量の式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物と組み合わせて投与することを含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、HER2陽性がんを有する哺乳動物におけるHER2受容体拮抗薬の効果を増大させる方法を提供する。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、HER2陽性細胞の成長又は増殖を抑制する方法、並びに7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンなどのカンプトテシンを哺乳動物中のHER2陽性細胞に送達する方法を提供する。
【0021】
本発明の一つの利点は、本発明が、HER2拮抗薬を含む療法に応答しなかった患者、又はHER2拮抗薬に初めは応答したが後に抵抗性を発現した患者を治療するために、HER2拮抗薬をベースにした療法を有効に利用する手段を提供する。患者は、トラスツズマブ及びペルツズマブなどのHER2拮抗薬に対する抵抗性の予想外の欠如及び/又は低下から利益を得ることができる。
【0022】
別の利点は、本発明が、予後の思わしくない患者を治療する手段を提供することである。HER2は、薬物抵抗性及び全般的に思わしくない予後と相互に関連していると考えられる。HER2拮抗薬は、本発明による本明細書に記載の式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)と共に投与すると、HER2拮抗薬を本明細書に記載の化合物と組み合わせないで投与する治療と比較して、腫瘍の成長及び/又は増殖を抑制する上で有意に効果的である。
【0023】
さらに別の利点は、本発明が、HER2拮抗薬の治療効力を増加させ、且つ必要とする特定の患者が、HER2の関連する療法をHER2療法の単独と比較してより短い期間又はより少ない量で受け入れることを許容することである。HER2の関連する療法に付随する、又は由来する任意の副作用を、HER2拮抗薬療法の高められた効力によって軽減することができる。
【0024】
さらなる利点は、以下の説明及び図面から明らかであろう。
【0025】
本発明の目的に関して、「HER2陽性がん」及び「HER2過剰発現性がん」は、互換的に使用される。HER2陽性のがん細胞には、過剰な量の細胞表面上のHER2タンパク質、及び/又はHER2/neuをコードする遺伝子の増幅が存在する。HER2の発現レベルは、当技術分野で公知の技術、及び後に記載の方法で測定することができる。HER2陽性がんは、HER2非陽性がん又は正常な細胞若しくは組織に比較して、HER2タンパク質又は遺伝子のより大きな発現を有する。例えば、HER2は、がん細胞の表面上に発現されたHER2タンパク質の量を測定する免疫組織化学(「IHC」)アッセイによって測定される。IHCアッセイは、染色強度及び細胞膜染色の完全性に基づいて0〜3+の尺度で評点化される。例えば、IHCアッセイで評点が3+であるがんは、HER2陽性がんであると見なされる。IHCアッセイで評点が2+であるがんは、蛍光in-situハイブリダイゼーション(「FISH」)アッセイによってさらに検査することができ、そこで陽性のFISHアッセイは、そのがんがHER2陽性であることを裏付ける。FISHアッセイは、がん細胞中に存在するHER2/neu遺伝子のコピー数を測定する。FISH検査の結果は、腫瘍細胞中の20個の間期核中でのHER2のシグナル数の染色体17のシグナル数に対する比率によって示される。正常検体は、2.0未満の比率を示し、一方、HER2/neuの増幅を有する検体は、2.0以上の比率を有し、HER2陽性(FISH+)と画定される。
【0026】
用語「HER2受容体拮抗薬」及び「HER2拮抗薬」は、HER2のタンパク質又は遺伝子の発現又は機能を抑制する化合物を指す。本発明の目的に関して、HER2拮抗薬は、例えば、受容体チロシンキナーゼ阻害薬、特にHER2受容体タンパク質阻害薬を指す。単純に例を挙げれば、HER2拮抗薬には、抗HER2抗体が含まれる。HER2拮抗薬の定義は、また、アンチセンスHER2オリゴヌクレオチドを包含すると解釈される。
【0027】
本発明の目的に関して、用語「補助治療」は、一次(初期)治療に付加して与えられる治療を指す。補助治療は、最終目標に到達するのを助けるように設計された付加的治療である。
【0028】
本発明の目的に関して、用語「早期」又は「初期」乳がんは、そのがんが、乳房又は上腕下のリンパ節(腋窩リンパ節として知られる)を超えて拡がっていないことを意味する。ステージ0、I及びII、並びにステージIIIの一部のがんは、通常、初期と見なされる。
【0029】
本発明の目的に関して、不応性又は抵抗性がんは、本明細書に記載の式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)を含まない先行の抗がん療法又は治療に対して応答しなかったがんと定義される。一態様において、がんは、単独で又は式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)を含まない化学療法と組み合わせて使用した場合に、HER2抗体(例えば、トラスツズマブ及びペルツズマブ)などのHER2受容体拮抗薬に対して抵抗性又は不応性である。一実施形態において、がんは、Herceptin(登録商標)治療の単独に対して、又は本明細書に記載の式(I)の化合物を含まない化学療法をプラスしたHerceptin(登録商標)に対して不応性又は抵抗性である。がんは、治療の初期段階で不応性又は抵抗性であることがあり、或いはがんは、治療中/治療後に不応性又は抵抗性になる可能性もある。したがって、不応性がんは、治療の開始時に応答しない、又は初めに短期間応答するが、治療に応答しなくなる腫瘍を包含する。不応性がんは、また、抗がん療法での治療に応答するが、それに続く療法の繰り返しに応答しなくなる腫瘍を包含する。本発明の目的に関して、不応性がんは、また、抗がん療法での治療によって抑制されるように見えるが、治療を中止した後に5年までに、時には10年、又はそれ以上までに再発する腫瘍を包含することができる。抗がん療法は、化学療法薬の単独、放射線の単独、又はこれらの組合せを採用することができる。限定するものではないが説明を容易にするため、不応性がんは、抵抗性がんと互換性があると理解される。
【0030】
本発明の目的に関して、不応性又は抵抗性がんの成功的治療は、不応性又は抵抗性の症状又は状態が、本明細書に記載の併用治療の間及び/又は後に、本明細書に記載の併用療法の不在下で観察されるものと比較して、抑制され、最小化され、又は和らげられることを意味すると理解されるものとする。最小化され、和らげられ、又は抑制された不応状態は、当業者によって想定される臨床マーカーによって確認することができる。一例において、不応性又は抵抗性がんの成功的治療は、本明細書に記載の治療の不在下で観察されるものと比較して、当業者によって想定されるその他の臨床マーカーを含め、少なくとも5%、好ましくは10%、より好ましくは20%以上(すなわち、30、40、又は50%以上)の抑制、或いは腫瘍成長及び/又は再発の減少が認識される場合に、実現したと考えるものとする。臨床医は、不応性がんの重症度及び重大性の変化を示す臨床マーカーを判定することができる。
【0031】
本発明の目的に関して、用語「がん」及び「腫瘍」は、そうでないことを指摘しない限り、互換的に使用される。がんは、そうでないことを指摘しない限り、良性、悪性、及び/又は転移性がんを包含する。がんは、より侵襲性であっても、或いはより侵襲性が小さくてもよい。侵襲性表現型は、腫瘍を形成し、且つ転移する増殖速度及び能力を指す。侵襲性がんは、侵襲性のより小さい腫瘍と比較して、より急速に増殖し、腫瘍を形成し、より容易に転移する。
【0032】
本発明の目的に関して、「腫瘍/がんの治療」は、本明細書に記載の併用療法の完了後に、本明細書に記載の併用療法を受け入れなかった患者と比較して、患者において認識される腫瘍成長、腫瘍量及び転移の抑制、低下、又は改善、腫瘍の緩解、或いは腫瘍再発及び/又は新生物成長の抑制を意味すると理解されるものとする。成功的治療は、患者が肯定的な臨床結果を達成する場合に現れると考えられる。例えば、腫瘍の成功的治療は、本明細書に記載の併用治療の不在下で観察されるものと比較して、当業者によって想定されるその他の臨床マーカーを含め、腫瘍成長の少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%以上の減少が認識される場合に、現れると考えられるものとする。本明細書に記載の治療に由来する腫瘍臨床状態の変化を判定するためのその他の方法としては、腫瘍生体組織検査などの生検、抗体、放射性同位元素、色素を使用する免疫組織化学研究、及び総血球数(CBC)が挙げられる。
【0033】
本発明の目的に関して、本発明により想定されるHER2の過剰発現に関連する疾患又は障害は、HER2のタンパク質又は遺伝子が状態の病理又は進行において役割を演じる状態を包含する。
【0034】
本発明の目的に関して、用語「有効量」及び「十分な量」は、そのような効果が当業者によって理解されるような、所望の効果又は治療効果を達成する量を意味するものとする。治療すべき各哺乳動物又はヒト患者に対する有効量は、良好な実施と相反する望ましくない効果を回避しながら、所望の臨床応答を提供する範囲で当業者が容易に決定する。投与量の範囲は後に示される。
【0035】
本発明の目的に関して、用語「残留物」は、化合物が別の化合物との置換反応を受けた後に残留している、例えば、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン、アミノ酸などを指す化合物の一部を意味すると理解されるものとする。
【0036】
本発明の目的に関して、用語「ポリマー性残基」又は「PEG残基」は、それが、例えば、アミノ酸、化合物を含有する7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンとの反応を経た後に残留しているポリマー又はPEGの部分をそれぞれ意味すると理解されるものとする。
【0037】
本発明の目的に関して、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。用語「アルキル」は、また、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びC1〜6アルキルカルボニルアルキル基を包含する。好ましくは、該アルキル基は1〜12個の炭素を有する。より好ましくは、それは、約1〜7個の炭素、さらにより好ましくは約1〜4個の炭素からなる低級アルキルである。該アルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されているなら、置換基としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1〜6ヒドロカルボニル、アリール、及びアミノ基が挙げられる。
【0038】
本発明の目的に関して、用語「置換された」は、ある官能基又は化合物内に含まれる一つ又は複数の原子が、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1〜6アルキルカルボニルアルキル、アリール、及びアミノ基からなる群に由来する部分の一つでもって付加されること、或いは置き換えられることを指す。
【0039】
本発明の目的に関して、用語「アルケニル」は、直鎖、分枝鎖、及び環状基を含み、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む基を指す。好ましくは、該アルケニル基は、約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは、それは、約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素からなる低級アルケニルである。該アルケニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されているなら、置換基としては、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1〜6ヒドロカルボニル、アリール、及びアミノ基が挙げられる。
【0040】
本発明の目的に関して、用語「アルキニル」は、直鎖、分枝鎖、及び環状基を含み、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を含む基を指す。好ましくは、該アルキニル基は、約2〜12個の炭素を有する。より好ましくは、それは、約2〜7個の炭素、さらにより好ましくは約2〜4個の炭素からなる低級アルキニルである。該アルキニル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されているなら、置換基としては、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル-チオ、アルキル-チオ-アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、シアノ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1〜6ヒドロカルボニル、アリール、及びアミノ基が挙げられる。「アルキニル」の例には、プロピニル(すなわち、プロパルギル)、及び3-ヘキシニルが含まれる。
【0041】
本発明の目的に関して、用語「アリール」は、少なくとも一つの芳香族環を含む芳香族炭化水素の環系を指す。該芳香族環は、任意選択で、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環と縮合しているか、さもなければ結合していることができる。アリール基の例には、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン及びビフェニルが含まれる。アリール基の好ましい例には、フェニル及びナフチルが含まれる。
【0042】
本発明の目的に関して、用語「シクロアルキル」は、C3〜8環状炭化水素を指す。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。
【0043】
本発明の目的に関して、用語「シクロアルケニル」は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含むC3〜8環状炭化水素を指す。シクロアルケニルの例には、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、及びシクロオクテニルが含まれる。
【0044】
本発明の目的に関して、用語「シクロアルキルアルキル」は、C3〜8シクロアルキル基で置換されたアルキル基を指す。シクロアルキルアルキル基の例には、シクロプロピルメチル及びシクロペンチルエチルが含まれる。
【0045】
本発明の目的に関して、用語「アルコキシ」は、指定数の炭素原子からなり、酸素橋を介して親分子部分に結合されたアルキル基を指す。アルコキシ基の例には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが含まれる。
【0046】
本発明の目的に関して、「アルキルアリール」基は、アルキル基で置換されたアリール基を指す。
【0047】
本発明の目的に関して、「アラルキル」基は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0048】
本発明の目的に関して、用語「アルコキシアルキル」基は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0049】
本発明の目的に関して、用語「アミノ」は、一つ又は複数の水素基ラジカルを有機基で置き換えることによってアンモニアから誘導される当技術分野で周知の窒素含有基を指す。例えば、用語「アシルアミノ」及び「アルキルアミノ」は、それぞれアシル及びアルキル置換基を有する特定のN-置換有機基を指す。
【0050】
本発明の目的に関して、用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0051】
本発明の目的に関して、用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素、及び硫黄を指す。
【0052】
本発明の目的に関して、用語「ヘテロシクロアルキル」は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含む非芳香族環系を指す。該ヘテロシクロアルキル環は、任意選択で、他のヘテロシクロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環へ縮合されているか、さもなければ結合されていてもよい。好ましいヘテロシクロアルキル基は、3〜7個の環員を有する。ヘテロシクロアルキル基の例には、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、及びピラゾールが含まれる。好ましいヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、及びピロリジニルが挙げられる。
【0053】
本発明の目的に関して、用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含む芳香族環系を指す。該ヘテアリール環は、一つ又は複数のヘテロアリール環、芳香族又は非芳香族の炭化水素環又はヘテロシクロアルキル環へ縮合されているか、さもなければ結合されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、及びピリミジンが含まれる。ヘテロアリール基の好ましい例には、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、及びベンゾピラゾリルが含まれる。
【0054】
一部の実施形態において、置換アルキルには、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、及びメルカプトアルキルが含まれ、置換アルケニルには、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニル、及びメルカプトアルケニルが含まれ、置換アルキニルには、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニル、及びメルカプトアルキニルが含まれ、置換シクロアルキルには、4-クロロシクロヘキシルなどの部分が含まれる。
【0055】
本発明の目的に関して、「正の整数」は、1以上の整数(例えば、約1〜約10、約1〜約6の整数)を含むと理解されるものとし、且つ当業者によって道理に合う範囲内にあると理解されるものとする。
【0056】
本発明の目的に関して、用語「連結された」は、ある基の別の基への、すなわち化学反応の結果としての共有(好ましくは)又は非共有結合を含むと理解されるものとする。
【0057】
本発明の目的に関して、用語「核酸」又は「ヌクレオチド」は、そうでないことを特記しない限り、一本鎖であろうと二本鎖であろうと、デオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)及びその任意の化学修飾体にあてはまる。
【0058】
好ましくは、本発明により治療される予定の哺乳動物はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例4で説明する、ヒト血漿、リン酸塩緩衝液、及び生理食塩水中での4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の安定性を例示する図である。
【図2】実施例4で説明する、4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の安定性に対するpHの効果を例示する図である。
【図3】図3Aは、実施例5で説明する、4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の薬物動態プロフィールを例示する図である。図3Bは、実施例5で説明する、4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の薬物動態プロフィールを例示する図である。4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の腸肝循環を示す。
【図4】実施例6で説明する、Herceptin(登録商標)及びペルツズマブに不応性であるヒトJIMT-1乳房腫瘍を異種移植されたマウスにおける腫瘍成長の抑制を例示する図である。
【図5】実施例7で説明する、ヒトN87胃がんを異種移植されたマウスにおける腫瘍成長の抑制を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
A.概要
本発明の一態様では、哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法が提供される。該方法は、前記哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を有効量の式(I)の化合物:
【化5】

【0061】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、R1、R2、R3及びR4のすべてがOHであることはないとの条件で、独立にOH、又は
【化6】

【0062】
(ここで、
Lは、二官能性リンカーであり、
(m)は、0又は正の整数であり、好ましくは0又は約1〜約10(例えば、1、2、3、4、5、6)の整数であり、(m)が2以上であるなら、各Lは同一であるか、或いは異なる)
であり、
(n)は、正の整数である]
又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む。
【0063】
一つの好ましい実施形態において、該方法は、哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を、該式中のR1、R2、R3及びR4がすべて:
【化7】

である式(I)の化合物と組み合わせて投与することを含む。
【0064】
より好ましい態様において、該方法は、HER2受容体拮抗薬を、式(Ia)の化合物:
【化8】

【0065】
(ここで、(n)は約227であり、その結果、該化合物のポリマー性部分は約40,000ダルトンの総数平均分子量を有する)
と組み合わせて投与することを含む。
【0066】
代わりの態様では、哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法が提供される。該方法は、前記哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を、有効量のカンプトテシン、カンプトテシン類似体、カンプトテシン又はその類似体のポリマー性複合体、或いはそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む。
【0067】
一実施形態において、該方法は、HER2陽性がんを有する哺乳動物にHER2受容体拮抗薬をカンプトテシン又はその類似体のポリマー性複合体をプラスして投与することによって実施される。ポリマー性複合体は、式(II)又は(III)の化合物:
【化9】

【0068】
(ここで、
Z1、Z2、Z3及びZ4は、Z1、Z2、Z3及びZ4のすべてがOHであることはないとの条件で、独立にOH又は(L)m-Dであり、
Lは、二官能性リンカーであり、
Dは、カンプトテシン又はカンプトテシン類似体であり、
M1は、O、S、又はNH、好ましくはOであり、
(d)は、0、又は約1〜約10の正の整数であり、好ましくは0、1、2又は3であり、より好ましくは0又は1であり
(z)は、0、又は1〜約29の正の整数であり、好ましくは1、5、13又は29であり、
(m)は、0、又は正の整数であり、好ましくは0又は約1〜約10(例えば、1、2、3、4、5、6)の整数であり、(m)が2以上であるなら、各Lは同一であるか、或いは異なる、且つ
(n)は約10〜約2,300の正の整数であり、その結果、化合物のポリマー性部分は約2,000〜約100,000ダルトンの数平均総分子量を有する)
を含む。
【0069】
一つの特定の実施形態では、SN38を、その20-OHの位置で式(II)又は(III)のマルチアーム型ポリエチレングリコールにグリシン、アラニン、メチオニンなどの二官能性リンカーを介して結合する。代わりに、カンプトテシン、トポテカン、又はCPT-11を、その20-OHの位置で式(II)又は(III)のマルチアーム型ポリエチレングリコールにグリシン、アラニン、メチオニン、サルコシンなどの二官能性リンカーを介して結合する。
【0070】
HER2拮抗薬及び式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)を、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与する。
【0071】
本明細書に記載の方法で治療することのできるHER2陽性がんには、限定はされないが、固形腫瘍、乳がん、胃がん(gastric cancer)、卵巣がん、胃がん(stomach cancer)、子宮がん、子宮体漿膜性子宮内膜癌、前立腺がん、膀胱がん、唾液腺癌、腎腺癌、及び乳腺癌が含まれる。前記リストは、排他的であることを意味せず、当業者は、本明細書中で具体的に言及しないHER2がんも包含されると解釈されることを認識するであろう。
【0072】
HER2陽性がんは、転移性又は非転移性であり得る。
【0073】
一態様において、本明細書に記載の方法は、単独で、又は式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)を含まない化学療法と組み合わせて使用した場合に、トラスツズマブ及びペルツズマブなどのHER2受容体拮抗薬に抵抗性又は不応性であるHER2陽性がんの治療において有用であり得る。本明細書に記載の併用治療は、また、抗HER2抗体に敏感であるHER2陽性がんを治療するのに有用である。何らかの理論によって拘束されるものではないが、本明細書に記載の方法は、HER2拮抗薬の治療効力を増強し、且つ/又は本明細書に記載の式(I)の化合物を含まない抗HER2抗体での治療と比較して、HER2陽性がんによるHER2受容体拮抗薬に対する抵抗性を軽減する。
【0074】
さらなる態様において、本明細書に記載の方法は、HER2陽性がんを有する患者を識別するステップを含む。
【0075】
代わりの態様において、本発明は、HER2の発現が正常な(又はHER2の過剰発現がない)哺乳動物で観察されるレベルと比較してより高いHER2タンパク質又は遺伝子のレベル(例えば、遺伝子発現)に関連する疾患又は障害を治療する方法を提供する。HER2タンパク質又は遺伝子の過剰発現に関係する病理学的状態は、本明細書に記載の治療から利益を得る。該方法は、HER2受容体拮抗薬を式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与して実施することができる。
【0076】
一実施形態において、HER2受容体拮抗薬は、式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)と共に、同時に又は逐次的に投与することができる。
【0077】
別の実施形態において、HER2受容体拮抗薬としては、抗HER2抗体、アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチド、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0078】
一つの好ましい実施形態において、該方法は、
(a)例えば、哺乳動物におけるHER2を過剰発現するがんの存在を判定することによってHER2陽性がんを有する哺乳動物を識別するステップ、及び
(b)HER2陽性がんを有する哺乳動物に、有効量のHER2受容体拮抗薬、好ましくはトラスツズマブを有効量の式(Ia)の化合物:
【化10】

【0079】
(ここで、(n)は、好ましくは約227であり、その結果、式(Ia)の化合物のポリマー性部分の総分子量は約40,000ダルトンである)
又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与するステップを含む。
【0080】
代わりの態様において、哺乳動物におけるチロシンキナーゼ依存性の疾患又は障害の治療方法が提供される。HER2受容体はチロシンキナーゼであり、それは、がんなどの病理学的状態に関与する。該方法は、過剰発現しているHER2に依存する疾患を有する哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を、式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物と組み合わせて投与することを含む。これらの方法は、好ましくは、このような疾患又は障害を有する患者を識別するステップを含む。
【0081】
さらに別の態様において、本発明は、HER2陽性がんを有する哺乳動物においてHER2受容体拮抗薬の効果を増大させる方法を提供する。該方法は、HER2受容体拮抗薬を、有効量の式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)と組み合わせて投与することを含む。
【0082】
さらに別の態様において、本発明は、哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を本明細書に記載の式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することによって、或いは本明細書に記載の式(I)の化合物(或いは、式(II)又は(III)の化合物)又はその薬学的に許容される塩と組み合わせたHER2受容体拮抗薬をがんの細胞又は組織と接触させることによって、哺乳動物におけるHER2陽性細胞の成長、増殖、又は転移を抑制する方法を提供する。一つの特定の実施形態において、該方法は、
(a)細胞中のHER2発現の存在を測定すること、及び
(b)HER2受容体拮抗薬、及び有効量の請求項1に記載の式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む。特定の態様において、細胞は癌性細胞である。
【0083】
B.ポリマー性化合物
1.マルチアーム型ポリマー
本明細書に記載の化合物のポリマー性部分は、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの20-OH基に結合されたマルチアーム型PEGを含む。本発明の一態様において、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリマー性プロドラッグは、複合化に先立って、次の構造:
【化11】

【0084】
(ここで、(n)は正の整数である)
を有する4アーム型PEGを含む。
【0085】
別法として、該ポリマー性化合物は、複合化に先立って、構造:
【化12】

を有する4アーム型PEGを採用する。
【0086】
マルチアーム型PEGは、その開示が参照により本明細書に組み込まれるNOF社のDrug Delivery Systemカタログ、バージョン8、2006年4月の中に記載のものである。
【0087】
本発明の一つの好ましい実施形態において、ポリマーの重合度(n)は、約28〜約341であり約5,000Da〜約60,000Daの総数平均分子量を有するポリマーを提供し、好ましくは約114〜約239であり約20,000Da〜約42,000Daの総数平均分子量を有するポリマーを提供する。(n)は、ポリマー鎖中での繰返し単位の数を表し、ポリマーの分子量に依存する。本発明の一つの特に好ましい実施形態において、(n)は約227であり、約40,000Daの総数平均分子量を有するポリマー性部分を提供する。
【0088】
2.二官能性リンカー
本発明の特定の好ましい態様において、二官能性リンカーにはアミノ酸が含まれる。天然に存在する既知のL-アミノ酸のいずれかから選択することのできるアミノ酸は、少し例を挙げれば、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、及び/又はこれらの組合せである。代わりの態様において、Lはペプチド残基であってもよい。ペプチドは、例えば、約2〜約10個(例えば、2、3、4、5又は6個)のアミノ酸残基の大きさに及ぶことができる。
【0089】
疎水性又は非疎水性の天然に存在するアミノ酸、及び当技術分野で公知の天然に存在しない種々のアミノ酸(D又はL)の誘導体及び類似体も、本発明の範囲に包含されると考えられる。単に例を挙げれば、アミノ酸の類似体及び誘導体には、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、β-アラニン、β-アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-アミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン若しくはサルコシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチルリシン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、及び参照により本明細書に組み込まれる連邦官報63FR29620、29622中に挙げられている言及するにはあまりにも多いその他のものが含まれる。一部の好ましいL基としては、グリシン、アラニン、メチオニン又はサルコシンが挙げられる。例えば、化合物は、
【化13】

の中の一つでよい。限定するものではないが説明を容易にするため、4アーム型PEGの一つのアームのみを示す。4アーム型PEGの一つのアームから四つのアームまでを、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンと複合化することができる。
【0090】
より好ましくは、本明細書に記載の治療は、リンカー基(L)としてグリシンを含む化合物を採用する。
【0091】
本発明の代わりの態様において、ポリマーと7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンとの間の連結をねらったLは、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-O-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t-NR26-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26-、
-[C(=O)]v(CR22R23O)t-、
-[C(=O)]vO(CR22R23O)t-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23O)t-、
-[C(=O)]v(CR22R23O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]vO(CR22R23O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]v(CR22R23O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]v(CR22R23)t(CR24R25O)y-、
-[C(=O)]vO(CR22R23O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24R25O)y-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25O)y-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tO-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]v(CR22R23)tS-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tO-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)tS-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tO-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tNR26-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)tS-(CR28R29)t'-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)tNR26-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)tNR26-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)tNR26-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t-、
-[C(=O)]v(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)y-、
-[C(=O)]v (CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]v (CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)y-、
-[C(=O)]v (CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)yNR26-、
-[C(=O)]vO(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)y-、
-[C(=O)]vO(CR22R23)t(CR24CR25CR28R29O)yNR26-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23CR28R29O)t(CR24R25)yO-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)y-、
-[C(=O)]vNR21(CR22R23)t(CR24R25CR28R29O)yNR26-、
【化14】

の中から選択することができ、ここで、
R21〜R29は、水素、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シリルエーテル、スルホニル、メルカプト、C1〜6アルキルメルカプト、アリールメルカプト、置換アリールメルカプト、置換C1〜6アルキルチオ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜19分枝アルキル、C3〜8シクロアルキル、C1〜6置換アルキル、C2〜6置換アルケニル、C2〜6置換アルキニル、C3〜8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1〜6へテロアルキル、置換C1〜6へテロアルキル、C1〜6アルコキシ、アリールオキシ、C1〜6へテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2〜6アルカノイル、アリールカルボニル、C2〜6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2〜6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2〜6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2〜6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2〜6置換アルカノイルオキシ、及び置換アリールカルボニルオキシの中から独立に選択され;
(t)、(t')及び(y)は、0又は正の整数から、好ましくは約1〜約10、例えば、1、2、3、4、5及び6から独立に選択され;且つ
(v)は、0又は1である。
【0092】
本発明の範囲内で考えられる二官能性リンカーには、そのような組合せが安定な化合物をもたらすような、置換基と変数との組合せが許容されるものが含まれる。
【0093】
一部の好ましい実施形態では、Lとして、
-[C(=O)]v(CH2)t-、
-[C(=O)]v(CH2)t-O-、
-[C(=O)]v(CH2)t-NH-、
-[C(=O)]vO(CH2)t-、
-[C(=O)]vO(CH2)tO-、
-[C(=O)]vO(CH2)tNH-、
-[C(=O)]vNH(CH2)t-、
-[C(=O)]vNH(CH2)tO-、
-[C(=O)]vNH(CH2)tNH-、
-[C(=O)]v(CH2O)t-、
-[C(=O)]vO(CH2O)t-、
-[C(=O)]vNH(CH2O)t-、
-[C(=O)]v(CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]vO(CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]vNH(CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]v(CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]v(CH2)t(CH2O)y-、
-[C(=O)]vO(CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]vO(CH2)t(CH2O)y-、
-[C(=O)]vNH(CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]vNH(CH2)t(CH2O)y-、
-[C(=O)]v(CH2)tO-(CH2)t'-、
-[C(=O)]v(CH2)tNH-(CH2)t'-、
-[C(=O)]v(CH2)tS-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vO(CH2)tO-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vO(CH2)tNH-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vO(CH2)tS-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vNH(CH2)tO-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vNH(CH2)tNH-(CH2)t'-、
-[C(=O)]vNH(CH2)tS-(CH2)t'-、
-[C(=O)]v(CH2CH2O)tNH-、
-[C(=O)]v(CH2CH2O)t-、
-[C(=O)]vO(CH2CH2O)tNH-、
-[C(=O)]vO(CH2CH2O)t-、
-[C(=O)]vNH(CH2CH2O)tNH-、
-[C(=O)]vNH(CH2CH2O)t-、
-[C(=O)]v(CH2CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]vO(CH2CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]vNH(CH2CH2O)t(CH2)y-、
-[C(=O)]v(CH2CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]v (CH2)t(CH2CH2O)y-、
-[C(=O)]v (CH2)t(CH2CH2O)yNH-、
-[C(=O)]vO(CH2CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]vO(CH2)t(CH2CH2O)y-、
-[C(=O)]vO(CH2)t(CH2CH2O)yNH-、
-[C(=O)]vNH(CH2CH2O)t(CH2)yO-、
-[C(=O)]vNH(CH2)t(CH2CH2O)y-、
-[C(=O)]vNH(CH2)t(CH2CH2O)yNH-、
【化15】

を挙げることができ、ここで、
(t)、(t')及び(y)は、0又は正の整数、好ましくは約1〜約10(例えば、1、2、3、4、5及び6)から独立に選択され;且つ
vは、0又は1である。
【0094】
本発明の一部の態様において、式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物は、1〜約10(例えば、1、2、3、4、5又は6)単位の二官能性リンカーを含む。本発明の一部の好ましい態様において、該化合物は、1単位の二官能性リンカーを含み、それゆえ(m)は1である。
【0095】
さらなるリンカーは、その内容が参照により本明細書に組み込まれるGreenwaldら(Bioorganic & Medicinal Chemistry,1998,6:551〜562)の表1中に見出される。
【0096】
3.カンプトテシン及び関連するカンプトテシン類似体
カンプトテシンは、中国原産の樹木であるカンレンボク(camptoteca accuminata)、及びインド原産の樹木であるクサミズキ(nothapodytes foetida)によって産生される非水溶性の細胞障害性アルカロイドである。カンプトテシン並びに関連する化合物及び類似体は、また、潜在的な抗がん又は抗腫瘍薬であることが知られており、インビトロで及び実験動物でのインビボでこれらの活性を呈示することが示されている。例えば、本明細書に記載の治療で有用なカンプトテシン類似体には、SN38、カンプトテシン、トポテカン、及びCPT-11が含まれる。
【0097】
カンプトテシン及び特定の関連類似体は、構造
【化16】

を共有する。このコア構造から、いくつかの既知類似体が調製されている。例えば、A環は、10-及び11-位のどちらか又は双方がOHで置換されていてもよい。A環は、ヘテロ原子、すなわち-O又は-Sによって環に連結されていてもよい直鎖又は分枝鎖のC1〜30アルキル又はC1〜17アルコキシで置換されていてもよい。B環は、7-位が直鎖又は分枝鎖のC1〜30アルキル(好ましくはC2アルキル)、C5〜8シクロアルキル、C1〜30アルコキシ、フェニルアルキルなど、アルキルカルバメート、アルキルカルバジド、フェニルヒドラジン誘導体などで置換されていてもよい。C、D及びE環でのその他の置換も可能である。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,004,758号、4,943,579号、米国再発行特許RE32,518号を参照されたい。当業者が認識するように、10-ヒドロキシカンプトテシン、11-ヒドロキシカンプトテシン、及び10,11-ジヒドロキシカンプトテシン類似体は、カンレンボク及びその近縁植物中の少量成分の1種として天然に存在する。これらの化合物に対するさらなる置換、すなわち、7-アルキル-、7-置換アルキル-、7-アミノ-、7-アミノアルキル-、7-アラルキル-、9-アルキル-、9-アラルキル-カンプトテシンなどの誘導体を、過度の実験なしに公知の合成技術を使用して調製することができる。一部のカンプトテカ属アルカロイドは、下記に示す構造:
【化17】

を有し、ここで、
R7は、NO2、NH2、N3、水素、ハロゲン、F、Cl、Br、I、COOH、OH、O-C1〜8アルキル、SH、S-C1〜3アルキル、CN、CH2NH2、NH-C1〜3アルキル、CH2-NH-C1〜3アルキル、N(C1〜3アルキル)2、CH2N(C1〜3アルキル)2、O-、NH-及びS-CH2CH2N(CH2CH2OH)2、O-、NH-及びS-CH2CH2CH2N(CH2CH2OH)2、O-、NH-及びS-CH2CH2N(CH2CH2CH2OH)2、O-、NH-及びS-CH2CH2CH2N(CH2CH2CH2OH)2、O-、NH-及びS-CH2CH2N(C1〜3アルキル)2、O-、NH-及びS-CH2CH2CH2N(C1〜3アルキル)2、CHO及びC1〜3アルキルの中から選択され;
R8は、C1〜8アルキル及びCH2NR9R10の中から選択され(ここで、R9は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル-C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ヒドロキシ-C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシ-C1〜6アルキルからなる群から選択され、
R10は、水素、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル-C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ヒドロキシ-C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ-C1〜6アルキル、及びCOR11の中から選択され、ここで、R11は、水素、C1〜6アルキル、パーハロ-C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル-C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ヒドロキシ-C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、及びC1〜6アルコキシ-C1〜6アルキルからなる群から選択される);
R110〜R111は、水素、ハロ、アシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アジド、アミド、ヒドラジン、アミノ、置換アミノ、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、カルバモイルオキシ、アリールスルホニルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、-C(R117)=N-(O)j-R118(ここで、R117は、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、又はアリールであり、jは、0又は1であり、R118は、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルである)、及びR119C(O)O-(ここで、R119は、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、又はR120-O-(CH2)k-であり、(k)は1〜10の整数であり、R120は、アルキル、フェニル、置換フェニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、又は置換ヘテロシクロアルキルである)の中からそれぞれ独立に選択される
或いは
R7はR110と一緒になって、又はR110はR111と一緒になって、置換又は非置換のメチレンジオキシ、エチレンジオキシ、又はエチレンオキシを形成し;且つ
R112は、H又はOR'(ここで、R'は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルである)である。
【0098】
好ましいアリール基は、フェニル及びナフチルである。好ましいヘテロシクロアルキル環としては、ビピペリジンが挙げられる。R9及びR10が、それらが結合されている窒素原子と一緒になっている適切な複素環としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、イソキサゾリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、テトラヒドロアゼピン、N-メチル-テトラヒドロアゼピン、チアゾリジンなどが挙げられる。
【0099】
限定ではなく説明を容易にするために、説明は、好ましい且つ例示化合物としてのカンプトテシン類似体として、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン、又はCPT-11を引き合いに出す。特許を請求する発明は、類似体が、ポリマーへの結合点として20-OH基などのOHを有する限り、すべてのこのような誘導体及び類似体を包含すると理解される。カンプトテシン又はカンプトテシン類似体は、ラセミ混合物又は光学的に純粋な異性体でよい。好ましくは、20(S)カンプトテシン又はカンプトテシン類似体などの実質的に純粋で活性な形態が、マルチアーム型ポリマー性プロドラッグ中で採用される。
【0100】
4.ポリマー性化合物の合成
一般に、本明細書に記載の治療で採用されるポリマー性化合物は、活性化されたマルチアーム型ポリマーの1種又は複数の同等物を、例えばアミノ酸-(20)-7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの活性部位ごとに1種又は複数の同等物と、アミノ基がポリマーのカルボン酸との反応をへて結合の形成を効果的に引き起こすのに十分である条件下で反応させることによって調製される。合成の詳細は、その内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる米国特許第7,462,627号中に記載されている。
【0101】
好ましい二官能性リンカー基の例には、グリシン、アラニン、メチオニン、サルコシンなどが含まれ、合成は、米国特許第7,462,627号の実施例中に記載されている。
【0102】
本発明によれば、投与される化合物としては、
【化18】


が挙げられる。
【0103】
一つの特に好ましい実施形態は、構造(Ia)を有する化合物:
【化19】

【0104】
(ここで、ポリマーの四つのアームは、すべて、グリシンを介して7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンと複合されており、ポリマー部分は、約40,000ダルトンの総数平均分子量を有する)
を投与することを含む。
【0105】
本明細書に記載の治療で有用な代わりの実施形態は、
【化20】

を含み、ここで、(n)は、約28〜約341の整数であり、結果として、式(II)の化合物のポリマー性部分の総分子量は、約5,000〜約60,000ダルトン、好ましくは約20,000又は40,000ダルトンの範囲にある。
【0106】
さらなる実施形態において、本明細書に記載の治療は、その内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる国際公開第2005/028539号中に記載のポリマー性化合物を採用する。
【0107】
C.HER2拮抗薬
多くの部類のがんは、HER2タンパク質及び遺伝子のレベル上昇に関連している。HER2タンパク質は、ATPからタンパク質基質のチロシン残基への末端リン酸の移転を触媒する。HER2受容体拮抗薬及びHER2拮抗薬は、一般に、HER2タンパク質又は遺伝子の機能又は発現を抑制する化合物を指す。HER2受容体拮抗薬は、HER2受容体の機能を直接的に又はHER2タンパク質が関与する下流又は上流の細胞シグナル伝達経路を介して抑制することができる。詳細には、本明細書に記載の併用治療で使用されるHER2受容体拮抗薬としては、抗HER2抗体、及び下流又は上流のシグナル伝達経路を介してHER2受容体の機能を抑制する代わりに、HER2受容体の機能、又はHER2受容体の発現を直接的に抑制するアンチセンスHER2オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0108】
一実施形態において、本明細書に記載の併用治療は、抗HER2受容体抗体を式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物と組み合わせて投与することによって実施される。抗体は、HER2受容体タンパク質(p185)に結合する。好ましくは、本明細書に記載の治療で有用な抗体は、HER2受容体の細胞外ドメイン、例えばHER2のドメインII及び/又はIVなどに結合する。一つの特定の実施形態は、トラスツズマブを採用する。別の特定の実施形態は、ペルツズマブを採用する。
【0109】
Herceptin(登録商標)の商品名で知られるトラスツズマブは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に向けられた組換えヒト化モノクロナール抗体である。腫瘍細胞表面上のHER2受容体に結合した後、トラスツズマブは、HER2受容体を過剰発現する腫瘍細胞に対して抗体依存性の細胞介在性細胞毒性を誘発する。HER2は、多くの腺癌、とりわけ乳房腺癌によって過剰発現される。トラスツズマブは、CAS登録番号180288-69-1で登録されている。トラスツズマブについての詳細な情報は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,165,464号中に記載されている。
【0110】
Omnitarg(商標)の商品名で知られるペルツズマブも、HER2受容体の細胞外二量形成領域に向けられた組換えヒト化モノクロナール抗体(2C4)である。(CAS登録番号380610-27-5)。ペルツズマブは、HER2受容体の二量形成領域に結合し、HER2受容体タンパク質が、他のHERチロシンキナーゼ受容体タンパク質と二量化する能力を抑制する。受容体タンパク質の二量化を抑制すると、HERシグナル伝達経路の活性化が妨害され、腫瘍細胞のアポトーシスをもたらす。rhuMAb 2C4としても知られるペルツズマブは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,949,245号及び5,821,337号中に記載されている。
【0111】
別の実施形態において、本明細書に記載の方法は、式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物をアンチセンスHER2(ErbB2)オリゴヌクレオチド又はその薬学的に許容される塩と共に投与して実行することができる。アンチセンスHER2オリゴヌクレオチドは、同時に又は逐次的に投与することができる。
【0112】
一実施形態において、アンチセンスHER2オリゴヌクレオチドは、HER2のプレmRNA又はmRNAの少なくとも8個の連続したヌクレオチドに相補的な核酸を含む。
【0113】
「オリゴヌクレオチド」は、一般に、例えば、大きさが約2〜約200個のヌクレオチド、好ましくは約8〜約50個のヌクレオチド、又はより好ましくは約8〜約30個のヌクレオチドに及ぶ、比較的短いポリヌクレオチドである。本発明によるオリゴヌクレオチドは、そうでないことを明記しない限り、一般に、合成核酸であり、且つ一本鎖である。用語「ポリヌクレオチド」及び「ポリ核酸」は、本明細書中で同義的に使用することもできる。
【0114】
オリゴヌクレオチド(類似体)は、単一種のオリゴヌクレオチドに限定されないが、代わりに、広範な種類のこのような部分と作用するように設計される。考えられる核酸分子としては、ホスホロチオエート化ヌクレオチド間結合改変体、糖改変体、核酸塩基改変体、及び/又はリン酸骨格改変体を挙げることができる。オリゴヌクレオチドは、天然のホスホロジエステル骨格又はホスホロチオエート骨格、或いはその内容が参照により本明細書に組み込まれるTides 2002,Oligonucleotide and Peptide Technology Conference、2002年5月6〜8日、ラスベガス、ネバダ州;及びOligonucleotide & Peptide Technologies、2003年11月18及び19日、ハンブルグ、ドイツで開示されたような、LNA(ロックド核酸)、PNA(ペプチド骨格を有する核酸)、CpGオリゴマーなどの任意のその他の改変された骨格類似体を含むことができる。
【0115】
オリゴヌクレオチドに対する本発明により想定される改変には、例えば、オリゴヌクレオチドに対してさらなる電荷、分極性、水素結合、静電相互作用、及び機能性を組み込む、機能性部分の付加又は置換が含まれる。このような改変には、限定はされないが、2'-位の糖の改変、5-位のピリミジンの改変、8-位のプリンの改変、環外アミン位での改変、4-チオウリジンの置換、5-ブロモ又は5-ヨードウラシルの置換、骨格の改変、メチル化、イソ塩基であるイソシチジン及びイソグアニジンなどの塩基対組合せ、及び類似の組合せが含まれる。本発明の範囲内で想定されるオリゴヌクレオチドは、3'及び/又は5'のキャップ構造を含むこともできる。
【0116】
本発明の目的に関して、「キャップ構造」は、オリゴヌクレオチドのどちらかの末端に組み込まれている化学的改変を意味すると理解されるものとする。キャップは、5'-末端(5'-キャップ)又は3'-末端(3'-キャップ)に存在することができ、或いは双方の末端に存在することができる。5'-キャップの非限定的例には、反転脱塩基型残基(部分)、4',5'-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、改変型塩基ヌクレオチド、ホスホロジチオエート連鎖、threo-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3',4'-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3'-3'-反転型ヌクレオチド部分、3'-3'-反転脱塩基型部分、3'-2'-反転型ヌクレオチド部分、3'-2'-反転脱塩基型部分、1,4-ブタンジオールホスフェート、3'-ホスホルアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3'-ホスフェート、3'-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又は架橋又は非架橋のメチルホスホネート部分が含まれる。詳細は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第97/26270号中に記載されている。3'-キャップとしては、例えば、4',5'-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4'-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、5'-アミノ-アルキルホスフェート、1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート、6-アミノヘキシルホスフェート、1,2-アミノドデシルホスフェート、ヒドロキシプロピルホスフェート、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、改変型塩基ヌクレオチド、ホスホロジチオエート、threo-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3',4'-セコヌクレオチド、3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5'-5'-反転型ヌクレオチド部分、5'-5'-反転脱塩基型部分、5'-ホスホルアミデート、5'-ホスホロチオエート、1,4-ブタンジオールホスフェート、5'-アミノ、架橋及び/又は非架橋の5'-ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、及び/又はホスホロジチオエート、架橋又は非架橋のメチルホスホネート、及び5'-メルカプト部分を挙げることができる。その内容が参照により本明細書に組み込まれるBeaucage及びIyerの論文、1993年、Tetrahedron、49巻、1925頁を参照されたい。
【0117】
ヌクレオチド類似体の非限定的リストは、次の構造を有する:
【化21】


その内容が参照により本明細書に組み込まれるFreier及びAltman、Nucl.Acid Res.,1997,25,4429〜4443、及びUhlmann、Curr Opinion in Drug Development,2000,3(2),293〜213に記載のヌクレオチド類似体のより多くの例を参照されたい。
【0118】
用語「アンチセンス」は、本明細書中で使用する場合、遺伝子産物をコードする、又は調節配列をコードする特定のDNA又はRNA配列に対して相補的であるヌクレオチド配列を指す。用語「アンチセンス鎖」は、「センス」鎖に対して相補的である核酸鎖を言及するのに使用される。正常な働きの細胞代謝において、DNA分子のセンス鎖は、ポリペプチド及び/又は他の遺伝子産物をコードする鎖である。アンチセンス鎖は、メッセンジャーRNA(「mRNA」)転写物(センス鎖)を合成するための鋳型として役立ち、次いで、該転写物は、コードされた任意の遺伝子産物の合成を指図する。アンチセンス核酸分子は、注目の遺伝子を、相補鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターに対して逆配向で連結することによる合成を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって作り出すことができる。細胞中に一旦導入されると、この転写された鎖は、細胞によって産生される天然の配列と結合して二本鎖を形成する。これらの二本鎖は、次いで、さらなる転写又は翻訳のどちらかを遮断する。呼称「ネガティブ」又は(-)は、また、アンチセンス鎖を指すことが当技術分野で公知であり、「ポジティブ」又は(+)も、センス鎖を指すことが当技術分野で公知である。
【0119】
本発明の目的に関して、「相補的」は、ある核酸配列が、別の核酸配列と水素結合を形成することを意味すると理解されるものとする。パーセント相補性は、第二の核酸配列と水素結合、すなわちワトソン-クリックの塩基対を形成することができる核酸分子中の近接残基の比率を示す。すなわち、10のうちの5、6、7、8、9、10個が近接するなら、50%、60%、70%、80%、90%及び100%相補的である。「完全に相補的」は、核酸配列のすべての近接残基が、第二の核酸配列中の同数の近接残基と水素結合を形成することを意味する。
【0120】
本明細書に記載の方法で有用なオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド誘導体としては、約10〜約100個の核酸、及び好ましくは、大きさが、例えば約8〜約30個(例えば、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個)のヌクレオチド長の範囲の比較的短いポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0121】
本明細書に記載の方法中で使用される有用な核酸の一態様において、天然のホスホロジエステル骨格又はホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチド及びオリゴデオキシヌクレオチド、或いは任意のその他の改変された骨格類似体としては、その内容が参照により本明細書に組み込まれるTides 2002,Oligonucleotide and Peptide Technology Conference、2002年5月6〜8日、ラスベガス、ネバダ州;及びOligonucleotide & Peputide Technologies、2003年11月18及び19日、ハンブルグ、ドイツで開示されたような、
LNA(ロックド核酸)、
PAN(ペプチド骨格を有する核酸)
短鎖干渉RNA(siRNA)、
microRNA(miRNA)、
ペプチド骨格を有する核酸(PNA)、
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、
トリシクロ-DNA、
デコイODN(二本鎖オリゴヌクレオチド)、
触媒性RNA配列(RNAi)、
リボザイム、
アプタマー、
スピーゲルマー(spiegelmer)(L-配置のオリゴヌクレオチド)、
CpGオリゴマー、などが挙げられる。
【0122】
本明細書に記載の方法中で使用される核酸の別の態様において、オリゴヌクレオチドとしては、任意選択で、下表1に列挙するもの:
【表1】

を含む、任意の適切な当技術分野で公知のヌクレオチド類似体及び誘導体を挙げることができる。
【0123】
特定の一実施形態において、アンチセンスHER2(ErbB2)オリゴヌクレオチドには、配列番号1(GenBank受入れ番号X03363)に示す配列の少なくとも8個の連続ヌクレオチドに対して相補的であるヌクレオチドが含まれる。また、そのそれぞれの内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれるYamamoto,T.らの論文、Nature 319:230〜234,1986、Papewalis,J.らの論文、Nucleic Acids Res.1:5452,1991を参照されたい。
【0124】
好ましくは、本明細書に記載の本発明によるオリゴヌクレオチドには、一つ又は複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連鎖(骨格)及び一つ又は複数のロックド核酸(LNA)が含まれる。好ましくは、LNAモノマーには、下記に示す2'-O、4'-Cメチレンビシクロヌクレオチドが含まれる:
【化22】

【0125】
D.HER2陽性がんを有する患者の選抜
本明細書に記載の治療は、HER2陽性がんを有する患者の利益になる。本明細書に記載の治療は、生存を有意に延長する。HER2陽性がんを有し本明細書に記載の治療を受け入れる患者の選抜は、HER2の発現レベルを測定することによって、あらかじめ決められる。本明細書に記載の治療に向けた患者を選抜するに際しては、HER2の発現レベルに加えて、患者の臨床履歴を考慮しなければならない。
【0126】
HER2タンパク質又は遺伝子のレベルは、限定はされないが、免疫組織化学(IHC)、シルバーin situハイブリダイゼーション(SISH)、化学発色in situハイブリダイゼーション(CISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、仮想核型分析、PCRをベースにした方法、及び当技術分野で公知のその他の方法を含む、当技術分野で公知の技術で測定することができる。それぞれの種類のアッセイは、長所及び制約を有する。したがって、HER2陽性がんを有する患者の選抜は、本明細書に記載の治療の潜在的利益を排除する単一のアッセイに依拠するよりも、アッセイの組合せによって確認すると、より信頼できる場合がある。現在、推奨されるアッセイは、IHCとFISHとの組合せである。
【0127】
概して、細胞又は組織中でのHER2発現は、HER2受容体タンパク質の発現レベル、又はHER2遺伝子の増幅レベルを測定することによって評価することができる。FDAは、HER2の発現を測定するのを助けるいくつかのHER2検査を承認しており、商業的に利用できるいくつかの検査が存在する。これらのアッセイは、IHC及び/又はFISHアッセイを利用する。例えば、商業的に利用できるアッセイには、HER2タンパク質のレベル(IHCアッセイ)を測定するDako HercepTest(商標)(Carpinteria社、カリフォルニア州、米国)及びVentana Pathway(登録商標)HER-2/neu(アリゾナ州、米国)、並びに遺伝子増幅のレベル(FISHアッセイ)を測定するPathVysion(登録商標)及びHER2 FISH pharmDx(商標)が含まれる。検体中のHER2発現を評価するための詳細な情報及び指針は、それぞれの検査キットの包装内挿入物中に示され、前述の検査キットのそれぞれの包装内挿入物の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。HER2発現測定の評価及び検証は、検査キットの包装内挿入物中に見出される指針に従うべきである。
【0128】
HercepTest(商標)及びPathway(商標)検査キットは、双方とも、IHCを利用し、検査組織/細胞中のHER2タンパク質のレベルを測定する。これらは、高度に標準化された半定量的アッセイである。IHCの検査結果の解釈は、染色強度及び細胞膜染色の完全性に関する審査員の解釈をベースにした0〜3+の尺度:0(陰性)、1+(陰性)、2+(境界線/弱陽性)、又は3+(陽性)に基づく評点化システムを使用する。評点0は、細胞当たり20,000未満の受容体が存在すること、及び認識できる膜染色が存在しないか、膜染色が腫瘍細胞の10%未満で観察されることを示す。評点1+は、細胞当たりほぼ100,000の受容体が存在すること、微弱な膜染色が10%を超える腫瘍細胞中で観察されるが、膜は部分的に染色されていることを示す。評点2+は、細胞当たりほぼ500,000の受容体が存在すること、微弱から中程度の完全膜染色が10%を超える腫瘍細胞中で観察されることを示す。評点3+は、細胞当たりほぼ2,000,000の受容体が存在すること、及び強烈で完全な膜染色が10%を超える腫瘍細胞中で得られることを示す。
【0129】
FISH検査で、腫瘍は、HER2/neu遺伝子のコピー数を数えることによって、HER2陰性(FISH-)又は陽性(FISH+)と解釈される。HER2タンパク質の過剰発現及び遺伝子増幅の存在は、高度に相関している。FISH分析は、IHC 2+又はIHC 3+を有する一部の患者が、遺伝子増幅を有さない(FISH-)ことを明らかにし、これらの患者は偽陽性である可能性があることを示唆する。PathVysion(登録商標)技術によれば、IHC陽性(2+/3+)患者のほぼ40%は、遺伝子増幅を有さず、FISH陰性であった。したがって、IHCで2+の患者は、FISH検査に廻されることが推奨される。
【0130】
本明細書に記載の併用治療は、好ましくは、IHCで2+又は3+、及び/又はFISH+の患者に付与される。さらに、該併用治療は、PCR法などのその他の技術をHER2陽性患者の選抜に使用した場合に、IHC 2+若しくは3+及び/又はFISH+に匹敵するHER2状態を有する患者に付与することができる。
【0131】
E.組成物/製剤
本明細書に記載のポリマー複合体及びHER2拮抗薬を含む医薬組成物は、例えば、種々の周知の混合、溶解、造粒、摩砕、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥方法を使用する、当技術分野で周知の方法によって製造することができる。該組成物は、活性化合物の薬理学的に使用できる調合製剤への加工処理を容易にする、添加剤及び補助薬を含む1種又は複数の生理学的に許容される担体と一緒にして製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。非経口経路は、本発明の多くの態様において好ましい。
【0132】
限定はされないが、静脈内、筋内及び皮下注射を含む注射の場合、本明細書に記載の式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物は、水溶液中、好ましくは生理食塩水緩衝液又は限定はされないがピロリドン又はジメチルスルホキシドを含む極性溶媒などの生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化することができる。
【0133】
本明細書に記載の化合物は、また、例えば、ボーラス注入又は連続点滴による非経口投与用に製剤化することができる。注入用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで又は複数回投与容器で提供することができる。有用な組成物としては、限定はされないが、懸濁液、溶液、又は油性若しくは水性媒質中の乳液が挙げられ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの添加物を含むことができる。非経口投与用の医薬組成物としては、限定はされないが、活性化合物の塩(好ましくは)などの水溶性形態の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液を、親油性媒質中で調製することができる。適切な親油性媒質としては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチル及びオレイン酸トリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームなどの材料が挙げられる。注入用水性懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、該懸濁液の粘度を高める物質を含むことができる。任意選択で、懸濁液は、また、適切な安定剤、及び/又は化合物の溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含むことができる。代わりに、活性成分は、適切な媒質、例えば無菌で発熱物質を含まない水を用いて使用前に再構成するための粉末形態で存在することができる。一実施形態において、トラスツズマブは、注射用静菌水を用いて再構成することができる。
【0134】
経口投与の場合、化合物は、活性成分を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化することができる。このような担体は、本発明の化合物を、患者が経口で摂取するための錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、パスタ剤、スラリー剤、溶液剤、懸濁剤、患者の飲料水で希釈するための濃縮溶液剤及び懸濁剤、患者の食事で希釈するための事前混合物として製剤化することを可能にする。経口で使用するための医薬調合製剤は、固形添加剤を使用し、場合によっては生じる混合物を磨り潰し、且つ所望なら錠剤又は糖衣錠剤の芯を得るためにその他の適切な補助薬を添加した後に顆粒の混合物を加工して、調製することができる。有用な添加剤は、とりわけ、乳糖、蔗糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類、例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉などのセルロース調合製剤、並びにゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのその他の材料などの賦形剤である。所望なら、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸などの崩壊剤を添加することができる。アルギン酸ナトリウムなどの塩を使用することもできる。
【0135】
吸入で投与する場合、本発明の化合物は、好都合には、加圧容器又はネブライザーと適切な噴射剤を使用するエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。
【0136】
化合物は、例えば、カカオバター又はその他のグリセリドなどの通常の座剤用基剤を使用して、座剤又は貯留浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0137】
前に記載した製剤に加えて、化合物をデポー調合製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば、皮下又は筋内)によって、又は筋内注入によって投与することができる。この投与経路のためには、本発明の化合物を、適切なポリマー性又は疎水性材料(例えば、薬理学的に許容されるオイルを用いたエマルジョン中の)と共に、イオン交換樹脂と共に、又は限定はされないがやや難溶性の塩などのやや難溶性の誘導体として製剤化することができる。
【0138】
リポソーム及びエマルジョンなどのその他の送達システムも使用できる。
【0139】
さらに、該化合物は、治療薬を含む固体の疎水性ポリマーからなる半透性マトリックスなどの徐放性システムを使用して送達することができる。種々の徐放性材料が、確立されており、当技術分野で周知である。徐放性カプセルは、それらの化学的性質に応じて、化合物を数週間から100日間にわたって放出し得る。個々の化合物の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、さらなる安定化戦略を採用することができる。
【0140】
F.投与量
本発明の方法で使用される任意の化合物に関して、治療有効量は、初めはin vitroアッセイから推定することができる。次いで、動物モデルで使用するために、投与量を、有効投与量を含む循環濃度範囲を達成するように製剤化することができる。次いで、このような情報を利用して患者で有用な投与量をより正確に決定することができる。
【0141】
例えば、プロドラッグとして使用される組成物の量は、該組成物中に含まれる親分子(この場合、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)によって決まる。一般に、本明細書に記載の方法で使用されるプロドラッグの量は、哺乳動物で所望の治療結果を効果的に達成する量である。当然、種々のプロドラッグ化合物の投与量は、親化合物、in vivoでの加水分解速度、ポリマーの分子量などに応じて多少変化することができる。加えて、投与量は、もちろん、剤形及び投与経路に応じて変化することができる。
【0142】
しかし、一般に、本明細書に記載の7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリマー性エステル誘導体は、全身送達の場合、約0.3〜約90mg/m2(体表面)/回、好ましくは約0.5〜約50mg/m2(体表面)/回、さらに好ましくは約1〜約18mg/m2(体表面)/回、さらにより好ましくは約1.25mg/m2(体表面)/回〜約16.5mg/m2(体表面)/回の範囲の量で投与することができる。一部の特定の投与は、次の量:1.25、2.5、5、9、10、12、13、14、15、16及び16.5mg/m2/回の中の一つを含む。一つの好ましい投与量は、5mg/m2(体表面)/回を含む。
【0143】
本明細書に記載の式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物は、約0.3〜約90mg/m2(体表面)/週、例えば約1〜約18mg/m2(体表面)/週の範囲の量で投与することができる。特定の実施形態において、投与レジメンは、例えば、4週間サイクルで3週間は毎週約5〜約7mg/m2(体表面)の注入、3週毎に約1.25〜約45mg/m2の1回注入、及び/又は4週間サイクルで毎週約1〜約16mg/m2の3回注入でよい。
【0144】
治療プロトコールは、例えば、3週毎に1回投与される単回投与に基づくか、或いは複数週の治療プロトコールの一部として付与される複数回投与に分割することができる。したがって、治療レジメンは、例えば、各治療サイクルに対して3週毎に1回の投与、或いは、各サイクルに対して3週間の間、毎週1回の投与とそれに続く1週間の休薬を含むことができる。また、治療は、所望の臨床結果が得られるまで、1又は複数のサイクルが付与されることが想定される。
【0145】
前に示した範囲の集合は、例示であり、当業者は、臨床経験及び治療徴候に基づいて選択されるプロドラッグの最適投与量を決定するであろう。さらに、的確な製剤化、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。正確な用量は、当業者が認識するように、治療される患者の状態の段階及び重症度、及び個別的特性に依存する。
【0146】
さらに、本明細書に記載の化合物の毒性及び治療効力は、当技術分野で周知の方法を使用する細胞培養又は実験動物において標準的な薬学的手順によって判定することができる。
【0147】
一部の好ましい実施形態において、治療プロトコールは、3週間の間、毎週、約1.25〜約16.5mg/m2(体表面)/回の範囲の量を投与し、続いて1週間治療を休止すること、そして所望の結果が観察されるまで約3サイクル以上繰り返すことを含む。各サイクルにつき投与される量は、約2.5〜約16.5mg/m2(体表面)/回の範囲でよい。
【0148】
一つの特定の実施形態において、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのポリマー性エステル誘導体は、3週間の間、毎週5、9又は10mg/m2などの1回投与で投与し、続いて1週間治療を休止することができる。治療サイクルの投与量は、2回以上の治療サイクルを適用するなら、投与量を段階的に増大させるレジメンとして計画することができる。ポリマー性薬物は、好ましくは静脈内(IV)点滴で投与される。
【0149】
別の特定の実施形態において、式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物は、約12〜約16mg/m2(体表面)/回の投与量で投与される。投与量は毎週付与することができる。治療プロトコールは、3週間の間、毎週、式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物を、約12〜約16mg/m2(体表面)/回の範囲の量で投与し、続いて治療を1週間休止することを含む。
【0150】
さらに別の特定の実施形態において、投与レジメンは、3週間毎の約10mg/m2(体表面)/回でよい。
【0151】
代わりの実施形態は、小児患者の治療の場合、3週間毎に5日間毎日の約1.85mg/m2(体表面)/回のプロトコール、25日間毎に3日間毎日の約1.85〜約7.5mg/m2(体表面)/回のプロトコール、又は3週間毎に1回の約22.5mg/m2(体表面)/回のプロトコールに基づいたレジメン、成人患者の治療の場合、3週間毎に約13mg/m2(体表面)/回、又は6週間毎に4週間毎週の約4.5mg/m2(体表面)/回に基づいたプロトコールを含む。本明細書に記載の化合物は、第二の治療薬剤と組み合わせて投与することができる。一実施形態において、併用療法は、第二薬剤と組み合わせた、サイクル毎に5日間毎日の約0.75mg/m2(体表面)/回のプロトコールを含む。
【0152】
代わりに、化合物は、体重に基づいて投与することができる。哺乳動物における式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物の全身送達のための投与量範囲は、約1〜約100mg/kg/週であり、好ましくは約2〜約60mg/kg/週である。したがって、量は、約0.1mg/kg体重/回〜約30mg/kg体重/回、好ましくは約0.3mg/kg〜約10mg/kgの範囲でよい。2日毎に5回投与(q2d×5)(複数回投与)レジメンでの5又は10mg/kg、又は単回投与レジメンでの20又は30mg/kgなどの具体的投与量を投与することができる。
【0153】
ポリマー性複合体が投与される本発明のすべての態様において、言及される投与量は、投与されるポリマー性複合体の量ではなく、活性薬剤(好ましくは、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の量に基づく。治療は、1又は複数サイクルの間、所望の臨床結果が得られるまで付与されることが想定される。本発明の化合物の正確な量、投与の頻度及び期間は、もちろん、患者の性別、年齢及び医学的状態、並びに掛かりつけ臨床医によって判定された疾患の重症度に応じて変化する。前に挙げた重量は、治療に採用されるPEG複合型7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン中に存在する7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの重量を表す。PEG複合型7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの実際の重量は、PEGの負荷量(例えば、任意選択で1モルのPEGにつき1〜4モルの7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)に応じて変化する。
【0154】
HER2拮抗薬は、式(I)(或いは式(II)又は(III))の化合物と組み合わせて、同時に又は逐次的に投与することができる。併用療法のプロトコールは、約0.5mg/kg〜約15mg/kg体重、すなわち、約2mg/kg〜約8mg/kg/回の範囲の、例えば、2、4、5、6、8mg/kg/回の抗HER2抗体を投与することを含む。
【0155】
一実施形態において、トラスツズマブは、プロトコール: 4mg/kg(静脈内)の初期投与、それに続く併用療法の間及び後の毎週2mg/kg/回(静脈内)、或いは8mg/kg(静脈内)の初期投与、それに続く所望の臨床結果が達成されるまでの3週間毎の6mg/kg(静脈内)に基づいて投与される。トラスツズマブの詳細な投与情報は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Herceptin(登録商標)の包装内挿入物中に記載されている。
【0156】
別の実施形態において、ペルツズマブは、本明細書に記載の併用治療の間又は後に、3週間毎に約0.5〜約15mg/kg(静脈内)/回の範囲の量で投与される。ペルツズマブは、プロトコール:3週間毎に5mg/kg/回に基づいて付与される。その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Agus,D.B.らの論文、Journal of Clinical Oncology,23:2534〜2543,2005を参照されたい。
【0157】
併用療法のプロトコールは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを約2〜約100mg/kg/回(例えば、2、3、4、5、6、8、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、100mg/kg/回)の量で投与することを含む。例えば、併用療法のレジメンは、約2〜約50mg/kg/回の量のアンチセンスHER2オリゴヌクレオチドでの治療を含む。好ましくは、併用療法で投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約4〜約25mg/kg/回の量で存在する。
【0158】
併用療法の一態様において、プロトコールは、アンチセンスHER2オリゴヌクレオチドを併用療法の間、毎週約4〜約18mg/kg/回、又は毎週約4〜約9.5mg/kg/回の量で投与することを含む。
【0159】
一つの特定の実施形態において、併用療法のプロトコールは、6週サイクルでの3週間の間、毎週約4〜約18mg/kg/回(すなわち、約8mg/kg/回)の量のアンチセンスHER2オリゴヌクレオチドを含む。別の特定の実施形態は、毎週約4〜約9.5mg/kg/回(すなわち、約4.1mg/kg/回)を含む。
【0160】
本発明に包含されるHER2拮抗薬が、本明細書に記載の式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物と組み合わせて投与される場合、該組合せの個々の成分は、別々の又は合わせた医薬製剤の状態で、任意の都合のよい経路で逐次的又は同時的のどちらかで投与することができる。HER2拮抗薬及び式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物を逐次的に投与する場合、式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物又はHER拮抗薬のどちらかを最初に投与することができる。例えば、HER2拮抗薬及び式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物を、組合せの有益な効果を提供するレジメンにおいて逐次的方式で投与することができる。HER2拮抗薬及び式(I)(或いは、式(II)又は(III))の化合物を同時的方式で投与する場合、該組合せは、同一又は異なる医薬組成物の状態のどちらかで投与することができる。
【0161】
本発明のさらなる態様は、HER2拮抗薬及び本明細書に記載の化合物を、さらなる利益のためにその他の化学療法又は放射線療法と組み合わせることを含む。
【実施例】
【0162】
以下の実施例は、本発明に関するさらなる認識を提供するのに役立つが、いかなる意味でも本発明の有効範囲を限定することを意味しない。
【0163】
(実施例1)毒性データ
4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)(化合物9)の最大耐容量(「MTD」)を、ヌードマウスを使用して調べた。マウスを、死亡数及び病気の徴候について14日間モニターし、体重減少が治療前体重の20%を超えた時点で屠殺した。
【0164】
下記表2に、単回投与及び複数回投与の場合の各化合物の最大耐容量を示す。複数回投与の場合の各用量は、1日おきに10日間マウスに与えられ、マウスを、さらに4日間、したがって全部で14日間観察した。
【表2】

【0165】
4アーム型-PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)(化合物9)について見出されたMTDは、単回投与で与えた場合には30mg/kg、複数回投与(2日ごとに5回)で与えた場合には10mg/kgであった。
【0166】
(実施例2)PEG複合体の特性
下記表3に、4種の異なるPEG-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の生理食塩水溶液への溶解度を示す。4種のPEG-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体は、すべて、4mg/mLまでの7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンに相当する良好な溶解度を示した。ヒト血漿中で、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンは、PEG複合体から22〜52分の倍増時間で絶え間なく放出され、該放出は、次の実施例3に記載のように、pH及び濃度に依存すると思われた。
【表3】

【0167】
PEG-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体は、生理食塩水及びその他の水性媒質中、室温において24時間まで良好な安定性を示す。
【0168】
(実施例4)安定性に対する濃度及びpHの効果
本発明者らの以前の研究によれば、20-OH位のアシル化は、活性な閉環形態のラクトン環を保護する。ラット及びヒトの血漿中での水に対する安定性及び加水分解特性を、UVをベースにしたHPLC法でモニターした。4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体を各サンプルと共に室温で5分間インキュベートした。
【0169】
緩衝液中でのPEG-7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン複合体の安定性は、pH依存性であった。図1に、種々のサンプル中での4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の安定性を示す。図2は、PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体からの7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの放出速度が、pHの増加と共に増大することを示す。
【0170】
(実施例5)薬物動態特性
腫瘍のないBalb/Cマウスに、20mg/kgの4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体を単回注入した。異なる時点でマウスを屠殺し、血漿を、完全な複合体及び放出された7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンについてHPLCで分析した。薬物動態の解析は、非コンパートメント解析(WinNonlin)を使用して行った。下記表4に詳細を示す。
【表4】

【0171】
図3A及び3Bに示すように、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのPEG化は、長い循環半減期及び本来の薬物7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンに対する高い暴露を可能にする。4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の腸肝循環が観察された。マウスでのPEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の薬物動態プロフィールは二相性であり、複合体に関する最初の2時間中の急速な血漿分布相、それに続く18〜22時間の終末排出半減期、及び7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンに関する随伴性の18〜26時間の終末排出半減期を示す(図3B)。
【0172】
さらに、4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体の薬物動態プロフィールをラットで調べた。ラットにおいて、3、10及び30mg/kgの7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン相当量を使用した。ラットでの薬物動態プロフィールは、マウスでのそれと一致した。
【0173】
ラットにおいて、4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体は、12〜18時間の排出半減期での循環からの二相性クリアランスを示した。4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体から放出される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンは、21〜22時間の見掛けの排出半減期を有した。最大血漿中濃度(Cmax)及び曲線下面積(AUC)は、ラットにおいて用量依存的方式で増加した。マウス又はラットにおいて4アーム型PEG-Gly複合体から放出される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの見掛けの半減期は、CPT-11から放出される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの報告された見掛けの半減期に比べて有意により長く、4アーム型PEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)複合体から放出される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの露出は、CPT-11から放出される7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの報告された露出に比べて有意により高い。親化合物のクリアランスは、ラットで0.35mL/hr/kgであった。親化合物の予測される定常状態での分布容積(Vss)は、5.49mL/kgであった。放出された7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンのクリアランスは、ラットで131mL/hr/kgであった。放出された7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの予測されるVssは、ラットで2384mL/kgであった。放出された7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの腸肝循環は、マウス及びラットの双方で観察された。
【0174】
(実施例6)ヒト乳房腫瘍を異種移植されたHerceptin(登録商標)不応性マウスにおける治療効力
HER2受容体拮抗薬を含む療法のヌードマウス中で成長した不応性ヒトJIMT乳房腫瘍に対する治療効力を評価した。腫瘍は、小さな腫瘍断片をヌードマウスの左副側腹領域の一つの皮下部位中へ埋め込むことによって確立した。腫瘍埋込み部位を、週に2回観察し、1回は触診で測定した。各マウスの腫瘍体積を、キャリパーで二次元を測定し、計算した。腫瘍が100mm3の平均体積に到達したら、マウスを、非治療対照、Herceptin(登録商標)のみ、化合物9のみ、及び化合物9+Herceptin(登録商標)の組合せからなるそれらの実験群に分割した。Herceptin(登録商標)は、5mg/kg体重/回を週1回腹腔内で与えた。化合物9は、4mg/kg/回を2日ごとに5回静脈内で与えた。併用治療の場合には、Herceptin(登録商標)及び化合物9を、それぞれ、5mg/kg/回を週1回、4mg/kg/回を2日ごとに5回与えた。化合物9は、0日目のHerceptin(登録商標)治療の1分後に投与した。その他の日は、化合物9とHerceptin(登録商標)での治療は同時に行われる。これらの実験において、投与される化合物9の量は、投与されるポリマー性複合体の量ではなく、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの量に基づいた。マウスの体重及び腫瘍の大きさを、研究開始時及び28日目に測定した。
【0175】
Herceptin(登録商標)及び化合物9の単独での治療は、28日にそれぞれ約28%及び51%のTGI(腫瘍増殖阻害率)に至った。Herceptin(登録商標)と化合物9との組合せでの治療は、約81%のTGIをもたらした。結果を表5に示す。
【表5】

【0176】
いくつかの時点で測定された腫瘍体積を図4に示す。化合物9とHerceptin(登録商標)との組合せは、化合物9又はHerceptin(登録商標)の単独と比較して、腫瘍の成長を有意に抑制した。結果は、乳がんの治療において化合物9と共に投与されるとHerceptin(登録商標)は、Herceptin(登録商標)又は化合物9のどちらと比べても有意により有効であることを示す。
【0177】
本明細書に記載の化合物をHER2受容体拮抗薬と組み合わせて使用する療法は、HER2拮抗薬を含む療法に付随する抵抗性を予想外に改善及び/又は回避する。ヒトJIMT-1乳房腫瘍は、トラスツズマブ及びペルツズマブなどのHER2抗体に対して不応性である。本明細書に記載の療法は、HER2拮抗薬に対して不応性のがんを、潜在的な薬物抵抗性を回避及び低減することによってより効果的に治療する方策を提供する。患者及び臨床医は、HER2拮抗薬を本明細書に記載の化合物と共に投与すると、HER2拮抗薬を含む療法に対する抵抗性の予想外の欠如及び/又は低減から利益を得ることができる。
【0178】
(実施例7)ヒト胃癌を異種移植されたマウスでの治療効力
HER2受容体拮抗薬を含む療法のヌードマウス中で成長したヒト胃癌N87に対する治療効力を測定した。ヒトN87胃癌は、ヌードマウス中で皮下注入によって確立した。マウスの群を無作為に分割し、Herceptin(登録商標)単独、化合物9単独、及び双方の組合せで治療した。Herceptin(登録商標)は、20mg/kg体重/回で週1回腹腔内で与えた。化合物9は、5mg/kg/回で2日ごとに5回静脈内で与えた。併用治療の場合には、化合物9及びHerceptin(登録商標)を、それぞれ、5mg/kg/回で2日ごとに5回、及び20mg/kg/回で週1回与えた。投与した化合物9の量は、7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの量に基づいた。
【0179】
結果を図5に示す。腫瘍は、Herceptin(登録商標)単独で治療されたマウスでは成長し続けた。40日目に、腫瘍体積は、0日目に比較して613%まで増加した。Herceptin(登録商標)単独で治療されたマウスでの腫瘍体積は、非治療対照マウスと同等であった。Herceptin(登録商標)の単独は、胃の腫瘍成長を抑制しなかった。化合物9単独での治療は、腫瘍の成長を効果的に抑制した。Herceptin(登録商標)と化合物9との組合せで治療されたマウスにおいて、腫瘍体積は、0日目と比較して、40日目までに23%まで減少した。組合せ治療を受けている腫瘍は、研究5日目から48日目まで縮退(ベースライン値未満)した。Herceptin(登録商標)の単独で治療された動物の71%を、過剰な腫瘍量(>1700mm3)又は腫瘍潰瘍化のため、52日目まで屠殺した。Herceptin(登録商標)+化合物9で治療された群において、マウスの86%は、95日目(研究の最終日)まで生存した。4アーム型40KPEG-Gly-(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)で治療された5匹の生存マウス(71%)の中で、すべてが、80日目まで1500mm3未満の腫瘍を有した。結果は、HER2受容体拮抗薬の治療効力及び生存率が、本明細書に記載の化合物と組み合わせて投与した場合に、有意に高められたことを示す。本明細書に記載の治療は、HER2拮抗薬をベースにした療法をより効果的に利用する方策を提供する。
【0180】
種々の参考文献が本明細書中で引用されているが、そのすべての内容は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法であって、前記哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を有効量の式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
R1、R2、R3及びR4は、独立にOH、又は
【化2】

(ここで、
Lは、二官能性リンカーであり、
(m)は、0又は正の整数であり、(m)が2以上であるなら、各Lは同一であるか、或いは異なる)
であり、
(n)は、正の整数である、
但し、R1、R2、R3及びR4のすべてがOHであることはない]
又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む方法。
【請求項2】
HER2受容体拮抗薬が、抗HER2抗体、アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチド、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗HER2抗体が、細胞外ドメインのHER2ドメインIV又はHER2ドメインIIに結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抗HER2抗体が、トラスツズマブ又はペルツズマブを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
HER2陽性がんが、転移性又は非転移性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
HER2陽性がんが、HER2受容体拮抗薬に対して抵抗性又は不応性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HER2陽性がんが、固形腫瘍、乳がん、胃がん(gastric cancer)、卵巣がん、胃がん(stomach cancer)、子宮がん、子宮体部漿液性子宮内膜癌、前立腺がん、膀胱がん、唾液腺癌、腎腺癌、及び乳腺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(n)が約28〜約341の整数であり、その結果、式(I)の化合物のポリマー性部分の総分子量が、約5,000〜約60,000ダルトンの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(n)が約114〜約239の整数であり、その結果、式(I)の化合物のポリマー性部分の総分子量が、約20,000〜約42,000ダルトンの範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物が、
【化3】



からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の化合物が、(Ia)
【化4】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物が、哺乳動物に約0.5mg/m2体表面/回〜約50mg/m2体表面/回の量で投与され、該量が、式(I)の化合物中に含まれる7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物が、哺乳動物に約1mg/m2体表面/回〜約18mg/m2体表面/回の量で投与され、該量が、式(I)の化合物中に含まれる7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物が、約1.25mg/m2体表面/回〜約16.5mg/m2体表面/回の量で週1回、3週間の間付与され、続いて1週間治療を休止するプロトコールに従って、哺乳動物に投与され、該量が、式(I)の化合物中に含まれる7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物に週1回投与される量が、約5mg/m2体表面/回であり、該量が、式(I)の化合物中に含まれる7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシンの重量である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗HER2受容体抗体が、哺乳動物に約2mg/kg〜約8mg/kgの量で投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチド又はその薬学的に許容される塩が、哺乳動物に式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、ErbB2プレmRNA又はmRNAの少なくとも8連続のヌクレオチドに対して相補的である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、長さが約8〜50個のヌクレオチドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、配列番号1に示された少なくとも8連続のヌクレオチドに対して相補的であるヌクレオチドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、一つ又は複数のホスホロチオエートヌクレオチド間連結を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、一つ又は複数のロックド核酸(LNA)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
アンチセンスErbB2オリゴヌクレオチドが、約2〜約50mg/kg/回の量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物におけるHER2陽性がんの存在を判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法であって、
(a)哺乳動物におけるHER2を過剰発現するがんの存在を判定することによってHER2陽性がんを有する哺乳動物を識別すること、及び
(b)HER2陽性がんを有する哺乳動物にトラスツズマブを含む有効量のHER2受容体拮抗薬を有効量の式(Ia)の化合物:
【化5】

(ここで、(n)は約227であり、その結果、式(Ia)の化合物のポリマー性部分の総分子量は約40,000ダルトンである)
又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与すること、を含む方法。
【請求項26】
HER2陽性がんを有する哺乳動物におけるHER2受容体拮抗薬の効果を増強する方法であって、哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む方法。
【請求項27】
哺乳動物におけるHER2陽性細胞の成長又は増殖を抑制する方法であって、
(a)哺乳動物の細胞中でのHER2発現の存在を判定すること、及び
(b)HER2陽性細胞を有する哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を請求項1に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与すること、を含む方法。
【請求項28】
哺乳動物におけるHER2陽性がんの治療方法であって、
前記哺乳動物にHER2受容体拮抗薬を有効量のカンプトテシン、カンプトテシン類似体、カンプトテシン又はその類似体のポリマー性複合体、或いはこれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む方法。
【請求項29】
ポリマー性複合体が、式(II)又は式(III)の化合物:
【化6】

(ここで、
Z1、Z2、Z3及びZ4は、独立にOH又は(L)m-Dであり、
Lは、二官能性リンカーであり、
Dは、カンプトテシン又はカンプトテシン類似体であり、
M1は、O、S、又はNHであり、
(d)は、0、又は約1〜約10の正の整数であり、
(z)は、0、又は約1〜約29の正の整数であり、
(m)は、0、又は正の整数であり、かつ
(n)は約10〜約2300の正の整数であり、その結果、化合物のポリマー性部分は約2,000〜約100,000ダルトンの総数平均分子量を有する、
但し、Z1、Z2、Z3及びZ4のすべてがOHであることはない)
である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
Dが、カンプトテシン、SN38、トポテカン、及びCPT-11からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ポリマー性複合体が、
【化7】

(ここで、(n)は約28〜約341の整数であり、その結果、式(II)の化合物のポリマー性部分の総分子量が、約5,000〜約60,000ダルトンの範囲にある)
である、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500253(P2013−500253A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521744(P2012−521744)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042686
【国際公開番号】WO2011/011474
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】