説明

9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造法

【課題】 本発明は、工業的な実施に好適であり、且つ、経済的に有利な9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法、即ち、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを副生成物が少なく、且つ短時間で効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ヘテロポリ酸存在下、フルオレノンとフェノキシエタノールを反応させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、14×10Pa以下の減圧下、90〜150℃の温度範囲で反応させることを特徴とする9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、変性アクリル樹脂等の原料として有用な9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマー(例えばエポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等)を製造するための原料として有望であり、光学レンズ、フィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基盤、耐熱性樹脂やエンジニヤリングプラスチックなどの素材原料として期待されている。
【0003】
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては、硫酸とチオール類を触媒としてフルオレノンと2−フェノキシエタノールを脱水縮合させる方法(特許文献1)が開示されている。しかし、この方法では大量の硫酸を用いるため、反応後の精製に煩雑な操作が必要であり、また製品中に触媒由来のイオウ分が混入することにより、製品の着色や安定性の低下などの問題が生じる。更に光学樹脂原料など、高純度の製品を得るにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要がある。
【0004】
硫酸を使用しない方法として、金属交換型モンモリロナイトを使用する方法(特許文献2)が開示されている。しかし、この方法では市販のモンモリロナイトと金属塩化物を反応させて金属置換モンモリロナイト触媒を製造する必要がある。また反応収率を上げるためには、助触媒としてβ‐メルカプトプロピオン酸等のチオール類を使用するため、製品中にイオウ分が混入する。よって、高純度の製品を得るにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要がある。
【0005】
これに対し、本発明者等は、先にヘテロポリ酸触媒下、フルオレノンと2−フェノキシエタノールから9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法(特許文献3)、および融点が160℃〜166℃である9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法(特許文献4)を提案している。これらの方法を用いれば一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることが出来るが、経済的で工業的有利に製造するためには、反応時間を短縮すると共に、副生成物の生成を抑えて、精製を容易にする必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−165657号
【0007】
【特許文献2】特開2000−191577号
【0008】
【特許文献3】特開2007−23016号
【0009】
【特許文献4】特許第4140975号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、工業的な実施に好適であり、且つ、経済的に有利な9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法、即ち、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを副生成物が少なく、且つ短時間で効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、フルオレノンと2−フェノキシエタノールをヘテロポリ酸触媒存在下、特定の温度範囲及び減圧下で反応を行うことにより、反応時間を短縮することができ、合わせて副生成物、特に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの多量体成分の生成が抑制されることにより精製が容易となり、ポリマー原料として優れた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンをより経済的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記(1)〜(3)を提供するものである。
(1)ヘテロポリ酸存在下、フルオレノンとフェノキシエタノールを反応させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、14×10Pa以下の減圧下、90〜150℃の温度範囲で反応させることを特徴とする9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造法。
(2)ヘテロポリ酸存在下、フルオレノンとフェノキシエタノールを14×10Pa以下の減圧下、90〜150℃の温度範囲で反応させて得られた反応混合物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上の温度で結晶種を添加して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることを特徴とする前記(1)項に記載製造法。
(3)6.7×10Pa以下の減圧下、反応させることを特徴とする前記(1)〜(2)項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘテロポリ酸触媒下、フルオレノンと2−フェノキシエタノールの反応による9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造において、イオウ分を含まず、かつポリマー原料として優れた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを経済的で工業的有利に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をその実施の形態とともに記載する。
【0015】
本発明においては、特定の減圧脱水条件下、ヘテロポリ酸触媒を用いてフルオレノンと2−フェノキシエタノールとを反応させて9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得る。その他の反応条件は特に限定されるものではないが、通常、フルオレノンと2−フェノキシエタノールとヘテロポリ酸を反応装置に仕込み、空気中又窒素、ヘリウムなど不活性ガス雰囲気下で加熱攪拌することにより行うことができる。反応はバッチ方式でも連続方式でもよい。
【0016】
本発明における反応温度は使用する2−フェノキシエタノール量、ヘテロポリ酸の種類や減圧度により異なるが、90〜150℃であり、好ましくは100〜140℃、更に好ましくは120〜140℃である。反応温度が150℃より高いと副生成物の増加により純度、収率が低下する。また、製品の着色が生じ好ましくない。反応温度が90℃より低いと反応が進行しないかまたは反応が完結するのに長時間を要するため好ましくない。
【0017】
本発明における減圧度は、14×10Pa以下であり、好ましくは6.7×10Pa以下、更に好ましくは4.0×10Pa〜0.3×10Paである。減圧度が14×10Paより高い場合、反応温度を150℃より高くしなければ反応が進行しないか、または、反応が完結するのに長時間を要するため好ましくない。共沸脱水溶媒を用いた還流脱水反応の場合、常圧で150℃以下で反応する場合もあるが、この場合、反応が完結するのに長時間を要するため好ましくない、また、反応スケールが大きくなるほど反応時間が長くなる傾向があり、それに伴い多量体成分量も多くなるため好ましくない。本発明の方法においては反応時間が短縮されるばかりではなく、設備や反応スケールの影響が小さく多量体成分の生成を低く抑えることが出来、精製が容易になる。
【0018】
本発明に用いられるヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の無機酸素酸が縮合して生成した化合物の総称であり、中心の酸素酸とその周りで縮合する別種の酸素酸の組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。中心の酸素酸を形成する数の少ない元素をヘテロ元素といい、その周りで縮合する酸素酸を形成する元素をポリ元素という、ポリ元素は単一種類の元素であってもよいし、複数種類の元素であってもよい。
【0019】
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸のヘテロ元素は特に限定されるものではないが、例えば、銅、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、セリウム、トリウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、セレン、テルル、マンガン、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、オスミウム、イリジウム、白金が挙げられる。好ましくはリンまたはケイ素である。また、ヘテロポリ酸を構成する酸素酸のポリ元素は特に限定されるものではないが、例えば、バナジウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタルが挙げられる。好ましくはバナジウム、モリブデン、タングステンである。
【0020】
ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば、XM1240、XM1242、XM1862、XM24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM1240である。各式中、Xはヘテロ元素であり、Mはポリ元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として、具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸などが例示される。
【0021】
ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトンと置換可能なカチオンとしては例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。
【0022】
ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよいが、無水物の方がより反応が早く、また副生成物の生成が抑制され好ましい。結晶水含有物の場合、予め減圧乾燥や溶媒との共沸脱水等の脱水処理を行うことにより無水物と同様の効果を得ることができる。ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でヘテロポリ酸以外の他の触媒を併用してもよい。
【0023】
ヘテロポリ酸の使用量は特に限定されるものではないが、充分な反応速度を得るには、フルオレノンに対して、0.0001重量倍以上、好ましくは0.001〜30重量倍、更に好ましくは0.01〜5重量倍である。
【0024】
本発明における2−フェノキシエタノールの使用量は、特に限定されるものではないが、副反応抑制及び経済性の点から、通常、フルオレノン1モルに対して、2〜50モル、好ましくは2.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルである。2−フェノキシエタノールが減圧反応中、反応系外に留出する場合は、留出した2−フェノキシエタノールをそのまま系外に除去しても良いし、留出水と分離して反応系内に戻しても良い。
【0025】
本発明において、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で溶媒共存下で減圧反応することもできる。共存してもよい溶媒としては、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの脂肪族および環状エーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド溶媒、などが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。
【0026】
得られた反応混合物は、目的物である9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、未反応の2−フェノキシエタノール、触媒の他に、副生成物として、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの異性体や9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの二量体、三量体、ビスフェノール類、トリスフェノール類等(以下多量体成分と称す)を含む。
【0027】
反応後、得られた反応混合物は、そのまま冷却晶析することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させてもよいが、通常、洗浄、濃縮、希釈等の後処理を施した後に、冷却晶析により9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。この際、反応混合物中に副生成物、特に多量体成分が多い場合は、通常、結晶析出開始温度が50℃より低く、かかる結晶は、通常、融点が100〜130℃である。この為、ポリマー原料として優れた融点が160℃〜166℃である9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を得るには精製を繰り返す必要がある。本発明の方法においては反応混合物中の多量体成分量が少ない為、1回の晶析操作で9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを融点が160℃〜166℃の結晶として取り出すことが出来る。
【0028】
本発明における精製方法は、反応混合物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に50℃より高い温度で溶解させた後に、得られた混合物を冷却して、50℃以上、溶媒の沸点未満(好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃)の温度範囲で9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶の析出を開始させることにより実施される。溶解時の温度は特に限定されるものではないが、好ましくは、55℃以上、使用する溶媒の沸点以下、より好ましくは60〜150℃、更に好ましくは70〜110℃である。この温度が低いと実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。50℃以上で結晶の析出を開始させた後は、混合物をさらに冷却してもよい。冷却終点の温度は特に限定されるものではないが、通常−20〜50℃、好ましくは0〜40℃、更に好ましくは10〜30℃である。この温度が低いと純度が低下する傾向にあり、この温度が高いと溶媒へのロス量が多くなり経済性、生産性が悪くなる。冷却速度は特に限定されるものではないが、通常、毎分0.01〜2℃、好ましくは、毎分0.1〜0.5℃である。冷却途中で、好ましくは混合物中に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として添加する。結晶種を添加する方法は特に限定するものではないが、通常、融点160〜166℃の結晶種を準安定域幅、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの飽和溶解点の温度より1〜10℃、好ましくは1〜3℃低い温度で加える。添加される結晶種の量は、用いたフルオレノンに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0029】
析出した結晶は濾過等により回収される。得られた結晶は用いた溶媒等を用いて洗浄されてもよいし、乾燥されてもよい。かくして得られる9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶の融点は160〜166℃であり、ポリマー原料として優れている。
【0030】
(実施例)
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例中、純度および多量体成分量は逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー(島津製作所(株)製)を用い、254nmの波長で測定した面積百分率値であり、融点は示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製)を用い、下記条件で測定した示差走査熱量(DSC)の融解吸熱最大値である。
示差走査熱量(DSC)測定条件:
試薬 :酸化アルミニウム
昇温速度:10℃/min
測定範囲:40−260℃
雰囲気 :開放、窒素40ml/min
【実施例1】
【0031】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に、フルオレノン40.0g(0.222モル)、2−フェノキシエタノール306.7g(2.22モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]1.0gを加え、温度120℃、1.3×10Paの減圧下で5時間反応した。反応終了後得られた反応混合物中の多量体成分量は4.5%であった。得られた反応混合物にトルエン400.0gを加え、水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗した後、有機層を分液した。得られた有機層から減圧濃縮によりトルエン及び過剰の2−フェノキシエタノールを除いた。得られた濃縮物にトルエン280.0gを加え、80℃で1時間加熱攪拌した後、そのまま65℃まで冷却した。その後9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として0.4g添加し、65℃で2時間保温した後、そのまま20℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶78.3g(収率80.4%、純度98.3%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【実施例2】
【0032】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器に、フルオレノン80.0g(0.444モル)、2−フェノキシエタノール613.5g(4.44モル)、および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]2.0gを加え、温度130℃、2.0×10Paの減圧下で4時間反応した。反応終了後得られた反応混合物中の多量体成分量は3.9%であった。得られた反応混合物にトルエン800.0gを加え、水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗した後、有機層を分液した。得られた有機層から減圧濃縮によりトルエン及び過剰の2−フェノキシエタノールを除いた。得られた濃縮物にトルエン560.0gを加え、80℃で1時間加熱攪拌した後、そのまま70℃まで冷却した。その後9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として0.4g添加し、70℃で2時間保温した後、そのまま20℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶78.0g(収率90.2%、純度99.2%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【実施例3】
【0033】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に、フルオレノン40.0g(0.222モル)、2−フェノキシエタノール306.7g(2.22モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]1.0gを加え、温度140℃、2.7×10Paの減圧下で4時間反応した。反応終了後得られた反応混合物中の多量体成分量は5.1%であった。得られた反応混合物にトルエン400.0gを加え、水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗した後、有機層を分液した。得られた有機層から減圧濃縮によりトルエン及び過剰の2−フェノキシエタノールを除いた。得られた濃縮物にトルエン280.0gを加え80℃で1時間加熱攪拌した後、そのまま65℃まで冷却した。その後9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として0.2g添加し、65℃で2時間保温した後、そのまま20℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶77.3g(収率89.9%、純度99.0%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【実施例4】
【0034】
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた反応器に、フルオレノン50.0kg(0.277kモル)、2−フェノキシエタノール384.2kg(2.78kモル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]1.25kgを加え、温度130℃、2.0×10Paの減圧下で7時間反応した。反応終了後得られた反応混合物中の多量体成分量は5.0%であった。得られた反応混合物にトルエン500.0kgを加え、水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗した後、有機層を分液した。得られた有機層から減圧濃縮によりトルエン及び過剰の2−フェノキシエタノールを除いた。得られた濃縮物にトルエン350.0kgを加え80℃で1時間加熱攪拌した後、そのまま67℃まで冷却した。その後9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として0.3kg添加し、67℃で2時間保温した後、そのまま20℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶77.5g(収率88.7%、純度98.9%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【0035】
(比較例1)
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に、フルオレノン86.4g(0.48モル)、2−フェノキシエタノール397.9g(2.88モル)、トルエン350gおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)]4.3gを加え、常圧にてトルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら12時間反応した。反応終了後得られた反応混合物中の多量体成分量は9.1%であった。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。得られた有機層を徐々に10℃まで冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶146.2g(収率75.1%、純度99.0%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は109℃であった。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン60.0gとトルエン300.0gの懸濁液を100℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ、70℃で結晶が析出し始め、そのまま10℃まで冷却し、同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶53.9g(収率89.9%(通算67.5%)、純度99.5%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【0036】
(比較例2)
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えた反応器に、フルオレノン40.0kg(0.222kモル)、2−フェノキシエタノール307.0kg(2.22kモル)、トルエン160.1kgおよび触媒としてリンタングステン酸[(HPW1240)]0.92kgを加え、常圧にてトルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら27時間反応した。得られた反応混合物中の多量体成分量は12.1%であった。この反応液にトルエン150.0kgを加え、水49kgを用いて80℃で水洗をおこなった。得られた有機層を徐々に10℃まで冷却し析出した結晶を濾過、乾燥することにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶71.0kg(収率73.0%、LC純度97.9%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は109℃であった。この粗精製物59.0kgとトルエン300.0kgの懸濁液を100℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ、65℃で結晶が析出し始め、そのまま10℃まで冷却し、同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶51.3kg(収率87.0%(通算63.5%)、純度98.7%)を得た。得られた9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの融点は163℃であった。
【0037】
(比較例3)
攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に、フルオレノン40.0g(0.222モル)、2−フェノキシエタノール306.7g(2.22モル)および触媒としてリンタングステン酸[(H3PW1240)・nH2O]1.0gを加え、常圧にて温度170℃で2時間反応した。得られた反応混合物中の多量体成分量は14.0%であった。得られた反応混合物にトルエン400.0gを加え、水酸化ナトリウム水溶液で中和、水洗した後、有機層を分液した。得られた有機層から減圧濃縮によりトルエン及び過剰の2−フェノキシエタノールを除いた。得られた濃縮物にトルエン280.0gを加え80℃で1時間加熱攪拌した後、そのまま0℃まで冷却したが油状物となり結晶を得ることが出来なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロポリ酸存在下、フルオレノンとフェノキシエタノールを反応させ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを製造する方法において、14×10Pa以下の減圧下、90〜150℃の温度範囲で反応させることを特徴とする9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造法。
【請求項2】
ヘテロポリ酸存在下、フルオレノンとフェノキシエタノールを14×10Pa以下の減圧下、90〜150℃の温度範囲で反応させて得られた反応混合物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上の温度で結晶種を添加して9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
6.7×10Pa以下の減圧下で反応させることを特徴とする請求項1〜2に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−248095(P2010−248095A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97067(P2009−97067)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】