説明

A−ベータペプチドによる血管新生の調節

血管新生を阻害するのに有用なAβフラグメントを提供する。さらに、Aβフラグメントの有効量を投与して、病的若しくは望ましくない血管新生、並びに血管新生と関連した状態及び疾患を治療する方法を提供する。特別な態様において、ペプチドフラグメントは、HHQKLVFF配列を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年11月10日に提出された米国仮出願第60/735,472号の優先権出願であり、前述の開示は参照により本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、病的血管新生が介在する病気、病態、又は病的過程を治療する組成物と方法に関し、かかる病気にかかり、病態にあり、又は病的過程にいる患者に生物学的に活性な完全長のAβペプチドを投与することにより治療する組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
西洋諸国では、アルツハイマー病(AD)は、老人の認知症の主たる原因であり、細胞内の神経原線維変化(neurofibrillary tangles)、細胞外の実質老人斑(parenchymal senile plaques)、及び脳血管沈着(cerebrovascular deposits )の累進的な蓄積を特徴とする(Sissodia, et al. F.A.S.E.B. J. 9:366-370 (1995))。老人斑と脳血管沈着の主要構成要素は、βアミロイドペプチドで、アミロイド前駆タンパク質(APP)からタンパク質分解的に由来する39〜43アミノ酸残基Aβペプチドからなる凝集形態である。(Naidu, et al. 1995 J. Biol. Chem. 270:1369-1374; Gorevic, et al. 1986 J. Neuropathol. Exp. Neurol. 45, 647-64; Selkoe,

et al. 1986 J. Neurochem. 46, 1820-34)。老人斑の主要タンパク質構成要素は、ベータ/A4アミロイドで、42〜43アミノ酸ペプチドである。
【0004】
大脳性アミロイド血管新生(CAA)は、進行したADにおける通常の血管の病態(Vascular pathology)であり、死体解剖において検出される最も一般的な異常の一つである(Ellis, et al. Neurology 46:1592-1596 (1996))。ほとんどのADケースにおいて,脳内皮や脳室周囲白質病変(periventricular white matter lesions)に影響を及ぼす微小血管の変性などのある種の血管病変が、明らかである(Ellis, et al. Neurology 46:1592-1596 (1996); Kalaria, Ann. N.Y. Acad. Sci. 893:113-125 (1999))。さらに、形態学的変化が、AD脳微小血管や毛細管において観察されており、特に終末細動脈は、病巣の狭窄と、不規則な形や配列の平滑筋細胞とをしばしば有する(Hashimura et al. Jpn. J. Psychiatry Neurol. 45:661-665 (1991))。AD脳の毛細管は、血管に沿って不規則な狭窄と拡張とを伴う異常な反管腔側(abluminal)の表面を示す(Kimura et al. Jpn. J. Psychiatry Neurol. 45:671-676 (1991))。陽電子放出型断層撮影法(positron emission tomography)(PET)や単光子放出コンピュータ断層撮影(single photon emission computerized tomography)(SPECT)は、ADの臨床基準に合致する前に、個人における潅流低下の存在を明らかにしており、血管異常が病気の経過の初期に起こることが示唆される(Nagata et al. Neurobiology of Aging 21:301-307(2000);Johnson et al. Neurobiology of Aging 21:289-292 (2000))。脳血管傷害にかかわる他の障害(外傷性脳損傷、脳卒中及び脳動静脈奇形など)において、血管新生は、顕著な反応である(Mendis et al. Neurochem. Res. 23:1117-23 (1998); Slevin et al. Stroke 31:1863-70(2000); Hashimoto et al. Circ. Res. 89:111-3 (2001))。AD脳における脳血管傷害についての多くの報告があり、血管新生による修復反応(reparative response)の誘導が期待されるが、この領域ではほとんど研究がなされていない。
【0005】
血管新生プロセス(付着、転移(migration)、成長、侵潤(invasion)及び分化(differentiation))にかかわる特異的なステップを研究するためにいくつかのアッセイが開発されてきた。血管新生に対するAβの効果の認識は、ADにおいて観察されるマイクロ脳血管(micro-cerebrovascular)の異常における役割を理解することに価値があるであろう。AD脳では、Aβペプチドは、血管の周囲に線維状沈着物(fibrillar deposits)を形成し、脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy)(CAA)を導くことが知られている(Pardridge, et al. 1987 J. Neurochem. 49, 1394-401; Jellinger K.A., Attems J. 2005 J. Neurol. Sci. 229-230, 37-41)。AD脳における溶解性及び沈着性Aβのレベルの増加は、血管傷害や炎症/グリオーシス、及び脳血流の減少を誘発しうる(Paris, et al. 2000 Ann. N.Y.Acad. Sci. 903, 97-109; Johnson, et al. 2005 Radiology. 234, 851-9)。多数の研究により、血管機能障害及び血流の減少は、AD脳に特有の特徴であることが示されてきた(Nicoll, et al. 2004 Neurobiol. Aging. 25, 589-97 and 603-4; Paris, et al. 2004 Brain Res. 999, 53-61; Beckmann, et al. 2003 J. Neurosci. 23, 8453-9; Farkasm, et al. 2001 “Cerebral microvascular pathology in aging and Alzheimer's disease” Prog. Neurobiol. 64, 575-611)。近年、血管新生は、ADにおいて機能障害を受けることと、血管分化にかかわる遺伝子の変更(alterations)に関連することが示されてきている(Wu, et al. 2005 Nat. Med. 11, 959-65)。脳毛細血管密度の減少が、ADのトランスジェニックマウスモデルにおいて知られている(Paris, et al. 2004 Neurosci. Lett. 360, 80-5; Lee, et al. 2005 Brain Res. Bull. 65, 317-22)。近年実証されたTgAPPswマウスの脳から採取された内皮細胞と動脈の移植片により再構成された基底膜上の、毛細血管様構造の欠陥形成は、TgAPPswマウスにおける血管新生反応の変更が異常であることを示唆している(Paris, et al. 2004 Neurosci. Lett. 360, 80-5)。
【0006】
Paris et al.の米国特許出願公開第2003/0077261号明細書は、Aβペプチドを血管新生阻害剤(anti-angiogenic agents)として用いることができることを開示しており、A−ベータペプチド及びAPPの配列、並びにそれらをコードする核酸を開示し、図10の添付配列表に示している。
【0007】
血管新生は、多種多様なインビトロ及びインビボアッセイにおいて、Aβペプチドにより阻害される(Paris, et al. 2004 Angiogenesis. 7, 75-85)。インビトロでは、Aβ1−40とAβ1−42は、マトリジェル(Matrigel)上に播かれたヒト脳微小血管内皮細胞による毛細管新生を、用量依存的に阻害することができ、高用量の毛細管変性を促進することができる。1又は2のアミノ酸置換を含む完全長のAβペプチドの変異体(mutants)もまた、生物学的に活性な抗血管新生阻害物質(anti-angiogenics)であることが見い出された。しかしながら、低用量では、Aβは、血管新生促進物質(pro-angiogenic)のように思われる(Paris, et al. 2004 Angiogenesis. 7, 75-85; Cantara, et al. 2004 F.A.S.E.B. J. 18, 1943-5)。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0077261号
【非特許文献1】Sissodia, et al. F.A.S.E.B. J. 9:366-370 (1995)
【非特許文献2】Naidu, et al. 1995 J. Biol. Chem. 270:1369-1374
【非特許文献3】Gorevic, et al. 1986 J. Neuropathol. Exp. Neurol. 45, 647-64
【非特許文献4】Selkoe, et al. 1986 J. Neurochem. 46, 1820-34
【非特許文献5】Ellis, et al. Neurology 46:1592-1596 (1996)
【非特許文献6】Kalaria, Ann. N.Y. Acad. Sci. 893:113-125 (1999)
【非特許文献7】Hashimura et al. Jpn. J. Psychiatry Neurol. 45:661-665 (1991)
【非特許文献8】Kimura et al. Jpn. J. Psychiatry Neurol. 45:671-676 (1991)
【非特許文献9】Nagata et al. Neurobiology of Aging 21:301-307 (2000)
【非特許文献10】Johnson et al. Neurobiology of Aging 21:289-292 (2000)
【非特許文献11】Mendis et al. Neurochem. Res. 23:1117-23 (1998)
【非特許文献12】Slevin et al. Stroke 31:1863-70 (2000)
【非特許文献13】Hashimoto et al. Circ. Res. 89:111-3 (2001)
【非特許文献14】Pardridge, et al. 1987 J. Neurochem. 49, 1394-401
【非特許文献15】Jellinger K.A., Attems J. 2005 J. Neurol. Sci. 229-230, 37-41
【発明の開示】
【0008】
(発明の概要)
完全長のAβペプチドの生物学的に活性なフラグメントは、血管新生阻害剤として有用であることが、驚くべきことに発見された。これらの抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、本明細書中の記載の通り、望まれない(undesired)及び/又はコントロールされていない血管新生が介在する病態(血管新生病(angiogenic diseases)と特徴づけられる)を治療するために用いてもよい。
【0009】
それゆえ、最初の態様では、本発明は、多様な抗血管新生Aβペプチドフラグメントと、かかるフラグメントを1又は複数含む組成物とを提供する。一実施態様では、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39アミノ酸長であってもよい。
【0010】
特別な実施態様では、抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、Aβ1−28ペプチドフラグメント、Aβ10−35ペプチドフラグメント、Aβ12−28ペプチドフラグメント、若しくはAβ13−20ペプチドフラグメント、あるいは別の生物学的に活性なフラグメント、又はそのバリアント若しくはホモログである。
【0011】
特定の実施態様では、抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、Aβ12−28であって、アミノ酸配列HHQKLVFF、又はその生物学的に活性なフラグメント、バリアント若しくはホモログを含む。
【0012】
別の特定の実施態様では、抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、Aβ13−20、あるいはアミノ酸配列HHGKLVFF、又はその生物学的に活性なバリアント若しくはホモログである。バリアントは、例えば、アミノ酸置換を含んでもよい。
【0013】
別の実施態様では、本発明は、抗血管新生Aβペプチドフラグメント、及び1又は複数の医薬的に許容される担体(carriers)、希釈剤(diluents)、賦形剤(excipients)を含む医薬組成物である。
【0014】
二番目の態様では、本発明は、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントの有効量を必要とする対象に投与することにより、病的血管新生が介在する病気又は障害(disorder)を治療する方法を提供するものであり、かかるフラグメントは、8〜39アミノ酸長である。抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、任意で、1若しくは複数の治療剤と組み合わせて、又は交互に投与される。対象は、例えば、ヒト等のほ乳類でよい。
【0015】
一実施態様では、本発明は、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントの有効量を必要とする対象に、任意で、1若しくは複数の化学療法剤(chemotherapeutic agents)と組み合わせて又は交互に投与することにより、がんを治療する方法である。
【0016】
特定の実施態様では、本発明は、アミノ酸配列HHQKLVFF、又は、その生物学的に活性なフラグメント、バリアント若しくはホモログを含むAβ12−38ペプチドフラグメントの有効量を必要とする対象に投与することにより、がんを治療する方法である。
【0017】
別の特定の実施態様では、がんの治療方法は、Aβ13−20ペプチドフラグメント、あるいはアミノ酸配列HHQKLVFF、又はその生物学的に活性なバリアント若しくはホモログの有効量を必要とする対象に投与することを含む。
【0018】
生物学的に活性なAβペプチドフラグメントは、任意の適当な手段によって投与することができ、例えば、経口、非経口、静脈内、動脈内、経肺、粘膜、局所性(topical)、経皮(transdermal)、皮下(subcuteaneous)、筋肉内、髄腔内(intrathecal)、又は腹腔内(intraperitoneal)投与を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0019】
本発明の三番目の態様は、生体液及び生体組織における抗血管新生Aβペプチドフラグメント活性の検出と測定のための診断法又は診断キットを提供することである。
【0020】
本発明の四番目の態様は、Aβペプチドフラグメントの抗血管新生効果を妨害することによる、アルツハイマー病の治療における潜在的に療法効果のある化合物をスクリーニングするための診断法又は診断キットを提供することである。
【0021】
本発明の別の態様は、ペプチドフラグメントの使用である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
抗血管新生療法は、腫瘍の成長が十分な血液の供給に依拠するので、腫瘍進行を阻害するための魅力的なアプローチである。Aβ配列に由来する短いペプチドは、血管新生を阻害し、抗がん治療に用いることができることが、本明細書に開示されている。
【0023】
望まれない及び/若しくはコントロールされていない、又は病的な血管新生が介在する病的な状況を治療するために用いられる抗血管新生Aβペプチドフラグメントを提供する。本明細書では、抗腫瘍又は抗血管新生治療において用いてもよい特定の抗血管新生モチーフ(HHQKLVFF)が提供される。
【0024】
(抗血管新生ペプチドフラグメント)
本発明は、病的な又は不要な血管新生に関連する障害又は病気の治療に有用なAβペプチドの抗血管新生フラグメントを提供する。
【0025】
本明細書中の「Aβペプチドフラグメント」なる用語は、完全長のAβペプチド(例えばAβ1−40、Aβ1−42、Aβ1−43)の抗血管新生フラグメントを意味し、特に断りのない限り、Aβペプチドフラグメントバリアント、ホモログ(ほ乳類オルソログなど)及びイソ型(isoforms)を含む。この用語は、1又は複数の等価アミノ酸、又は非天然型(non-natural)アミノ酸と置換したフラグメントをも含む。
【0026】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、完全長のAβペプチドにおいて見いだされるアミノ酸の総数よりも少なくとも1少ない数のアミノ酸である。完全長のAβペプチドは、膜貫通糖タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の1又は複数のアイソフォームのタンパク質分解プロセッシングに由来する(Kang, J. et al. Nature (Lond.). (1987) 325: 733-736)。39〜43アミノ酸長のAβペプチドアミノ酸配列は、APPの細胞外ドメイン(ectodomain)に始まり、膜貫通領域に伸長する。Aβは、β−とγ−セクレターゼによりAPPを順次切断した後に形成される。Aβ1−42及びAβ1−43形態(forms)は、全ての種類のAD斑に特異的に見い出され、これらの形態がAD病状において、非常に重要であることを示唆している。
【0027】
特定の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、完全長のAβ1−40ペプチドにおいて見いだされるアミノ酸の総数よりも少なくとも1少ない数のアミノ酸である。Aβ1−40ペプチドフラグメントは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39アミノ酸からなる。
【0028】
別の特定の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、完全長のAβ1−42ペプチドにおいて見いだされるアミノ酸の総数よりも少なくとも1少ない数のアミノ酸である。Aβ1−42フラグメントは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40又は41アミノ酸からなる。
【0029】
別の特定の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、完全長のAβ1−43ペプチドにおいて見いだされるアミノ酸の総数よりも少なくとも1少ない数のアミノ酸である。Aβ1−43フラグメントは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、41又は42アミノ酸からなる。
【0030】
一実施態様では、フラグメントは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28又はそれ以上のアミノ酸残基からなり、配列HHQKLVFFを含む。
【0031】
一実施態様では、不要な又は病的血管新生に関連する病気又は障害を治療するために、以下の生物学的に活性なAβペプチドフラグメントを1又は複数個用いてもよい。すなわち、Aβ1−28ペプチド、Aβ10−35ペプチド、Aβ12−28ペプチド、Aβ13−20ペプチド、又は生物学的に活性なフラグメント若しくはそのバリアントである。
【0032】
抗血管新生Aβペプチドフラグメントは、HHQKプロテオグリカン結合領域を含むことが好ましく、配列(Aβ25−35、Aβ17−28、及びAβ34−42)がないフラグメントは活性がなかったので、ヘパリン結合モチーフHHQKが、Aβの抗新生血管活性に介在するために必要であることを示唆している。Aβ10−16フラグメントは、HHQK配列を含んでいても不活性であったので、HHQKプロテオグリカン結合モチーフは、新生血管を阻害するためには不十分であり、別の隣接残基が必要であることを示唆している。特に、HHQKドメイン直後のLVFF配列もまた、新生血管の阻害のために必要とされる。それゆえ、好ましいAβペプチドフラグメントは、アミノ酸配列HHQKLVFFを含む。
【0033】
一実施態様では、フラグメントは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又はそれ以上のアミノ酸残基からなり、配列HHQKLVFFを含む。かかるフラグメントは、例えば非天然型アミノ酸を含む、1又は複数の(例えば2、3、又は4個の)等価アミノ酸の置換を含んでもよい。
【0034】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、アミノ酸配列HHQKLVFFを含むAβ12−28ペプチドフラグメント、又はその生物学的に活性なフラグメント若しくはバリアントである。
【0035】
別の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、Aβ13-20ペプチドフラグメント若しくはアミノ酸配列HHQKLVFF、又はそれらの生物学的に活性なフラグメント若しくはバリアントである。
【0036】
別の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、例えば、Aβペプチドの10、20、30、又は40アミノ酸フラグメントである。
【0037】
ペプチドフラグメントは、例えば、化学合成により得られ、又は宿主細胞により組換え技術によって作製される。
【0038】
同様に、バリアント及び相同(homologous)という用語は、同一の意味で用いられる。「バリアント」又は「相同」ペプチドフラグメントは、天然のポリペプチド配列に対して、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、付加若しくは置換、キメラの異種のポリペプチドの切断(truncation)、伸長(extension)、若しくは付加などの改変を含むペプチドフラグメントを指定するものと理解される。「バリアント」又は「相同」ペプチドフラグメントは、変異体又は翻訳後の改変を任意で含んでもよい。
【0039】
「バリアント」又は「相同」ポリペプチド又はペプチドフラグメントとしては、そのアミノ酸配列が、天然のポリペプチド配列と80.0%〜99.9%(包括的に)同一性を示すポリペプチド又はペプチドフラグメントが好ましい。かかるパーセンテージは、純粋に統計的なものであり、2つのペプチド配列の間の相違は、ランダムに、配列長全体に分布しうる。
【0040】
本発明のポリペプチドとパーセンテージで同一性を示す「バリアント」又は「相同の」ポリペプチド配列は、あるいは、本発明のポリペプチド配列と80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有してもよい。本明細書では同等のアミノ酸という表現は、相当するペプチドの生物学的な活性を基本的に改変せずに、基本構造における1つのアミノ酸と置換されることができる全てのアミノ酸を指定するものであり、以下に記載する。
【0041】
ペプチドの抗血管新生特性を潜在的に保持しながら、AβのHHQKLVFF(モチーフ)領域に複数の置換を行うことができる。特に、以下の表記が、HHQKLVFFの等価置換を示すものである。
[RH]−H−[NQ]−[RK]−[ILV]−[ILV]−F−F
【0042】
典型的な(Exemplary)配列は、表1にリストされているモチーフである。
特定のペプチド配列が、天然由来のタンパク質の一部である場合に、出所について言及されている。
【0043】
【表1】



【0044】
http://motif.genome.jp/MOTIF2.htmlからのモチーフ検索は、NR‐AA Trembl/Swissprotデータベースにおいて、ペプチドの組合せを検索するために用いられた。ペプチド配列における物理化学的等価アミノ酸の置換は、当該技術分野で公知である(Eisenberg, et al. 1984 "Amino acid scale: Normalized consensus hydrophobicity scale." J. Mol. Biol. 179:125-142、及びMathura, et al. 2001, "New quantitative descriptors for amino acids based on multidimensional scaling of a large number of physical-chemical properties", J. Mol. Modeling 7:445-453)。
【0045】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、任意で等価アミノ酸置換を有する、表1にリストされているペプチド配列の一つからなり、又は含む。
【0046】
本発明の要旨は、免疫反応を誘発することができる生物学的に活性なペプチドフラグメントをも提供する。免疫反応は、ペプチドフラグメントと反応する細胞性免疫反応の構成要素(抗体、又は構成要素)(例えば、B細胞や、ヘルパー、細胞障害性、及び/又はサプレッサーT細胞)を提供できる。
【0047】
本明細書中のフラグメントは、タンパク質分解酵素(トリプシン、キモトリプシン、若しくはコラゲナーゼなど)で、又は臭化シアン(CNBr)などの化学試薬で、ポリペプチドを切断することにより得ることができる。あるいは、ポリペプチドフラグメントは、例えばpH2.5程度の強い酸性環境において産生できる。かかるポリペプチドフラグメントは、化学合成により、又はポリペプチドフラグメントをコードする核酸を含む発現ベクターにより形質転換された宿主を用いて、調製してもよい。形質転換された宿主細胞は、核酸を含み、周知の技術により培養され、それゆえ、これらのフラグメントの発現は、制御及び/又は発現のための適切な要素の制御の下に可能となる。
【0048】
ペプチドは、Aβ遺伝子の転写産物のスプライシングにおけるバリエーションにより、遺伝子組換えにより、又は化学合成により改変してもよい。かかるペプチドは、改変されたポリペプチド配列に関して少なくとも一の改変を含んでもよい。これらの改変は、ポリペプチド内に含まれるアミノ酸の付加、置換、欠失を含んでもよい。
【0049】
一つのクラスのアミノ酸が、同じタイプの別のアミノ酸と代替される、同類置換(conservative substitutions)は、その置換が、ポリペプチドの生物学的な活性を実質的に変更するものでない限り、発明の要旨の範疇の範囲内に収まる。例えば、非極性アミノ酸のクラスとしては、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Gly及びTrpを挙げることができ、非荷電の極性アミノ酸のクラスとしては、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、及びglnを挙げることができ、酸性アミノ酸のクラスとしては、AspとGluを挙げることができ、塩基性アミノ酸のクラスとしては、Lys、Arg及びHisを挙げることができる。いくつかの例において、ポリペプチドの生物学的に活性の本質を損ねることなく、非同類置換(non-conservative substitutions)を行うことができる。
【0050】
提供されたポリペプチドの寿命を延ばすためには、D型、又はその代わりに含硫型アミノ酸等のアミノ酸アナログなどの非天然型アミノ酸を用いることも好都合である。ポリペプチドの寿命を増加させる別の手段もまた用いてもよい。例えば、ペプチドフラグメントは、血漿又は血清の半減期を増加させる要素を含むように組換えにより改変されてもよい。かかる要素としては、抗体定常領域(米国特許5,565,335号参照のこと、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。)、又は米国特許6,319,691号、6,277,375号、又は5,643,570号に開示されている別の要素を挙げることができ、それぞれの特許につきそれらの全体を参照により本明細書の一部とすることができるが、これらに制限されない。あるいは、ポリヌクレオチド及び遺伝子は、ワクチン製剤を目的として、又は、提供されたポリペプチドの単離に有用な要素のために、免疫原構築の調製において有用な要素に組換えにより融合してもよい。
【0051】
開示されたペプチドフラグメントは、送達又は診断目的で、担体分子にフラグメントを連結することを促進するリンカーをさらに含んでもよい。リンカーは、アフィニティー精製プロトコールにおける使用のために、固体支持マトリックスにフラグメントを連結するために用いてもよい。一実施態様では、フラグメントが、タンパク質配列データベースの検索において同定された別のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の部分列である場合には、リンカーとしては除外される。別の言い方をすれば、タンパク質の、別のペプチド、ポリペプチドの非同一部分(non-identical portions)は、この点で、「リンカー」とはみなされない。本発明の適用に適切な「リンカー」としては、例えば、化学的リンカー(Pierce, Rockford社, Illにより販売されているものなど)、免疫原性フラグメントを担体分子に接続することができるペプチド(例えば、米国特許第6,121,424号、第5,843,464号、第5,750,352号、及び第5,990,275号を参照のこと。これらは、参照により全体を本明細書に組み込まれる)を挙げることができるがこれらに制限されない。様々な実施態様において、リンカーは、50アミノ酸長以下、40アミノ酸長以下、30アミノ酸長以下、20アミノ酸長以下、10アミノ酸長以下、5アミノ酸長以下であってよい。
【0052】
別の特定な実施態様では、ペプチドは、融合又はキメラタンパク質産物(異種タンパク質配列(例えば、異なるタンパク質)に結合するペプチドを通じて結合している)として発現してもよい。かかるキメラ産物は、当該技術分野において公知の方法により、所望のアミノ酸配列をコードする適当な核酸配列を互いに正しいコード枠内にライゲートし、当該技術分野において周知の方法によりキメラ産物を発現して作製してもよい(例えば、参照により、全体として本明細書に組み込まれる米国特許6,342,362号や、Altendorf, et al. 1999-WWW, 2000 "Structure and Function of the Fo Complex of the ATP Synthase from Escherichia Coli," J. of Experimental Biology 203:19-28, G. B.; Baneyx 1999 Biotechnology 10:411-21; Eihauer, et al. 2001 J. Biochem. Biophys. Methods 49:455-65; Jones, et al. 1995 J. Chromatography 707:3-22; Jones, et al. 1995 J. of Chromatography A. 707:3-22; Margolin, et al. 2000 Methods 20:62-72; Puig, et al. 2001 Methods 24:218-29; Sassenfeld, et al. 1990 Tib. Tech. 8:88-93; Sheibani, et al. 1999 Prep. Biochem. & Biotechnol. 29(1):77-90; Skerra, et al. 1999 Biomolecular Engineering 16:79-86; Smith, et al. 1998 The Scientist 12(22):20; Smyth, et al. 2000 Methods in Molecular Biology, 139:49-57; Unger, et al. 1997 The Scientist 11(17):20を参照のこと。それぞれの全体を参照により本明細書に組み込まれる)。あるいは、かかるキメラ産物は、例えば、ペプチドシンセサイザーを用いることによるタンパク質合成技術により作製してもよい。融合ペプチドは、上述のとおり、ポリペプチド及び1又は複数のタンパク質トランスダクションドメインを含んでもよい。かかる融合ペプチドは、細胞膜を通じて積荷(cargo)ポリペプチドを送達するために特に有用である。
【0053】
組織内でAβペプチドフラグメント活性の量を増加させることは、がん、腫瘍、及び/又は悪性腫瘍などの様々な血管新生病を治療することにおいて有用である。それゆえ、本発明の方法によれば、Aβペプチドフラグメント活性の量は、Aβペプチドフラグメントを、血管新生病に罹患している患者に直接投与すること(Aβペプチドフラグメントの外因性送達など)により、又は、間接的な若しくは遺伝学的手段(Aβペプチドフラグメントをコードする、若しくは内因性のAβペプチドフラグメント活性をアップレギュレートするポリヌクレオチドの送達など)により、組織内で増加させることができる。本発明の方法を用いて治療可能ながん、腫瘍、及び/又は悪性腫瘍としては、例えば、前立腺がん(prostate cancer)、乳がん、メラノーマ、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)、子宮頸がん(cervical cancer)、腺がん(adenocarcinomas)、リンパ芽球性白血病(lymphoblastic leukemia)、結腸直腸がん(colorectal cancer)、及び肺がん(lung carcinoma)を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0054】
ペプチドフラグメントと、それらをコードしている核酸は、血管新生又は血管新生が介在する病気に罹患していることが疑われる個人をスクリーニングするため、又は診断においての助けとするために用いてもよい。本明細書で開示されているペプチドフラグメントとそれらをコードしている核酸は、相補的配列を使用したハイブリダイゼーションアッセイにおいてAβペプチドを検出するために用いることができる。Aβペプチドフラグメントの量が顕著に増加して存在するということは、アルツハイマー病との関連を示唆するものである。Aβペプチドの量が顕著に減少して存在するということは、悪性腫瘍又はがんなどの血管新生病との関連を示唆するものである。Aβ遺伝子産物は、例えば、ウエスタンブロット、酵素免疫測定法(ELISAs)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ノーザンブロット、サザンブロット、PCRベースのアッセイ、又は当業者に知られている遺伝子産物を定量化するための他のアッセイなどの周知技術により検出できるがこれらに制限されない。かかる情報は、熟練した医師が利用できる他の情報と共に診断を下すために助けとなるものである。
【0055】
一実施態様では、本発明は、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントを患者に投与することにより、抗血管新生療法を必要とする患者において血管新生を阻害する方法に関する。
【0056】
一実施態様では、がん、関節炎、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、乾癬(psoriasis)、黄斑変性症(macular degeneration)、及び糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)からなる群から選択される病態は、Aβペプチドフラグメントの治療上有効量を患者に投与することにより治療が行われる。
【0057】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントの生物学的に活性なバリアントが用いられ、かかるバリアントは、21番目のアミノ酸部位、又は22番目のアミノ酸部位、又は23番目のアミノ酸部位又はこれらの組合せにおいて置換されている。特定の実施態様では、置換は、ポリペプチドの生物学的活性を実質的に変更しない同類置換である。
【0058】
提供される方法を実行するために、細胞にポリペプチドを送達する様々な手段を用いてもよい。例えば、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)を、融合ポリペプチドを生産するポリペプチドに融合してもよく、PTDは、ポリペプチド積荷(polypeptide cargo)を、原形質膜を横断して形質導入する(transduce)ことができる(Wadia, J. S. and Dowdy, S. F., Curr. Opin. Biotechnol. 2002, 13(1), 52-56)。PTDとしては、例えば、ショウジョウバエホメオティック転写タンパク質アンテナペディア複合体(Antp)、単純ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22、及びヒト免疫不全ウイルス1(HIV‐1)転写アクチベーターTatタンパク質を挙げることができる。
【0059】
本発明で提供される血管新生を阻害する方法によれば、組換え細胞を、患者に投与することができ、かかる組換え細胞は、本明細書で開示するAβペプチドフラグメントを発現するように遺伝学的に改変されている。
【0060】
本発明で提供される血管新生を阻害する方法は、がんに罹患している患者を治療するために、又はがん予防薬として用いてもよい。本発明で提供される腫瘍を阻害する方法は、様々ながん、例えばこれらに制限されないが、乳がん、前立腺がん、メラノーマ、慢性骨髄性白血病、子宮頸がん、腺がん、リンパ芽球性白血病、結腸直腸がん、肺がんを罹患している患者を治療するために用いてもよい。本発明で提供される細胞毒性薬等の様々な他の抗がん又は抗腫瘍化合物は、Aβペプチドフラグメントと併用して投与することができる。
【0061】
(Aβフラグメントをコードするヌクレオチド配列)
別の態様では、本発明は、本明細書で開示するペプチドフラグメントのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された及び/又は精製されたヌクレオチド配列を提供する。
【0062】
本発明の一態様ではまた、Aβペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子が提供される。本発明の一態様では、(a)表1を含む本明細書中のポリペプチドのアミノ酸配列のいずれかをコードするヌクレオチド配列;及び、(b)(a)におけるヌクレオチド配列のいずれかと相補的なヌクレオチド配列;からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する。
【0063】
本発明のさらなる実施態様は、上述の(a)又は(b)におけるヌクレオチド配列のいずれかと少なくとも90%同一の、より好ましくは、95%、96%、97%、98%又は99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含む。
【0064】
ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又は核酸の配列は、本発明によると、二本鎖DNA、一本鎖DNA、又は前記DNAの転写産物(例えばRNA分子)を意味するものと理解される。核酸、ポリヌクレオチド、又はヌクレオチドの配列は、単離され、精製され(又は部分的に精製され)てもよく、分離法としては、イオン交換クロマトグラフィー、分子サイズ排除(molecular size exclusion)クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又は増幅、クローニング、若しくはサブクローニングなどの遺伝子工学的方法を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0065】
あるいは、ポリヌクレオチド配列は、異種ポリペプチド配列(例えば本発明のポリペプチドの精製を促進するタグ(例えば米国特許6,342,362号は参照により全体として本明細書に組み込まれる;Altendorf, et al. 1999-WWW, 2000 "Structure and Function of the Fo Complex of the ATP Synthase from Escherichia Coli," J. of Experimental Biology 203:19-28, G. B.; Baneyx 1999 Biotechnology 10:411-21; Eihauer, et al. 2001 J. Biochem. Biophys. Methods 49:455-65; Jones, et al. 1995 J. Chromatography 707:3-22; Jones, et al. 1995 J. of Chromatography A. 707:3-22; Margolin, et al. 2000 Methods 20:62-72; Puig, et al. 2001 Methods 24:218-29; Sassenfeld, et al. 1990 Tib. Tech. 8:88-93; Sheibani, et al. 1999 Prep. Biochem. & Biotechnol. 29(1):77-90; Skerra, et al. 1999 Biomolecular Engineering 16:79-86; Smith, et al. 1998 The Scientist 12(22):20; Smyth, et al. 2000 Methods in Molecular Biology, 139:49-57; Unger, et al. 1997 The Scientist 11(17):20;についても参照により全体として本明細書に組み込まれる)をコードする1又は複数のポリヌクレオチドをも含んでもよいし、STRATAGENE社(La Jolla, Calif.)、NOVAGEN社(Madison, Wis.)、QIAGEN,Inc.,社(Valencia, Calif.)、又はINVITROGEN社(San Diego, Calif.)のなどの製造者から購入可能なタグを含んでもよい。
【0066】
(ベクター)
別の態様では、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントをコードするヌクレオチドを含むベクターなどのポリヌクレオチドを1又は複数含むベクターが提供される。ベクターは、ワクチン、複製又は増幅ベクターであってもよい。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の発現を引き起こすことができる調節要素と作動可能なように関連する。かかるベクターは、数ある中でも、染色体の、エピソームの、ウイルスに由来するベクターであり、例えばバクテリアプラスミド由来の、バクテリオファージ由来の、トランスポゾン由来の、イーストエピソーム由来の、挿入因子(insertion elements)由来の、イースト染色体要素由来の、バキュロウイルス、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス等のウイルス、並びに、プラスミド及びバクテリオファージの遺伝要素に由来するベクターなどの上述のベクターの起源の組合せに由来するベクター(コスミドやファージミド)を挙げることができる。
【0067】
上述のように、ベクターは、既知の宿主細胞において提供されるヌクレオチド配列によりコードされる、Aβペプチドのフラグメントなどのポリペプチドの発現及び/又は分泌のために提供されることが必要な要素もまた含んでもよい。ベクターは、プロモーター、翻訳開始のシグナル、翻訳停止のシグナル、及び転写の調節のための適当な領域からなる群から選択される1又は複数の要素を含んでもよい。ある実施態様では、ベクターは、宿主細胞内で安定して維持されることができ、翻訳されたタンパク質の分泌を指示するシグナル配列を任意で含んでもよい。別の実施例では、形質転換された宿主細胞において安定しないベクターを提供する。ベクターは宿主ゲノムに組み込まれることができ、また、自律的に複製するベクターとなることもできる。
【0068】
特定の実施態様では、ベクターは、タンパク質又はペプチドをコードした核酸配列、1又は複数の複製起点、及び任意で1又は複数の選択マーカー(例えば、抗生物質抵抗性遺伝子)に作動可能なように結合したプロモーターを含む。ポリペプチドの発現のためのベクターとしては、例えば、pBrタイプベクター、pETタイププラスミドベクター(PROMEGA社製)、pBADプラスミドベクター(INVITROGEN社製)、又は以下の実施例で提供されるベクターを挙げることができるがこれらに制限されない。さらに、ベクターは、提供されるヌクレオチド配列のクローニング又は発現のために宿主細胞を形質転換するために有用である。
【0069】
発現をコントロールするために用いられうるプロモーターとしては、CMVプロモーター、SV40早期プロモーター領域(Bernoist and Chambon 1981 Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの長い3’末端反復に含まれるプロモーター(Yamamoto, et al. 1980 Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al. 1981 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al. 1982 Nature 296:39-42)、β−ラクタマーゼプロモーターなどのプロモーターを含む原核生物のプロモーター(Villa-Kamaroff, et al. 1978 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:3727-3731)、又はtacプロモーター(DeBoer, et al. 1983 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25)を挙げることができるがこれらに制限されない。Scientific American, 1980, 242:74-94の"Useful Proteins from Recombinant Bacteria"、ノパリンシンテターゼプロモーター領域を含む植物発現ベクター(Herrera-Estrella et al. 1983 Nature 303:209-213)、又はカリフラワーモザイクウイルス35SRNAプロモーター(Gardner, et al. 1981 Nucl. Acids Res. 9:2871)、及び光合成酵素リブロースビスホスフェートカルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella et al. 1984 Nature 310:115-120)、Gal4プロモーターなどのイースト菌又は真菌由来のプロモーター要素、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、及び/又はアルカリホスファターゼプロモーターについても参照のこと。
【0070】
(相同ヌクレオチド配列)
本明細書では、「相同の」又は「改変された」ヌクレオチド配列が提供される。改変された核酸配列は、当業者に周知の技術による突然変異により得られる任意のヌクレオチド配列を意味するものと理解され、通常の配列に関連した改変を示す。例えば、ポリペプチドの発現のレベルの改変をもたらすポリペプチドの発現のための制御配列及び/又はプロモーター配列における変異が、「改変されたヌクレオチド配列」を提供する。同様に、ポリヌクレオチドへの核酸の置換、欠失又は付加が、「相同の」又は「改変された」ヌクレオチド配列を提供する。様々な実施態様において、「相同の」又は「改変された」核酸配列は、天然(自然発生的)Aβペプチドフラグメントと同一の生物学的又は血清学的活性を実質的に有する。「相同の」又は「改変された」ヌクレオチド配列は、本発明のポリヌクレオチドのスプライスバリアント、又は、以下に定義される「改変されたポリペプチド」をコードする任意のヌクレオチド配列を意味するものと理解される。
【0071】
本明細書記載の相同なヌクレオチド配列としては、ヌクレオチド配列の塩基が少なくとも(又は少なくとも約)80.0%〜99.9%(包括的に)、又は85%〜99%、90%〜99%、95%〜99%のパーセンテージで同一性を有するヌクレオチド配列を挙げることができる。
【0072】
様々な実施態様において、ヌクレオチド配列の塩基を有する相同な配列としては、本発明のポリヌクレオチド配列の80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%のパーセンテージの同一性を有するポリヌクレオチド配列を挙げることができる。
【0073】
タンパク質と核酸配列の相同性は両方とも、当該技術分野で公知の様々な配列比較アルゴリズムとプログラムのいずれかを用いて評価してもよい。かかるアルゴリズムとプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、及びCLUSTALW(Pearson and Lipman 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85(8):2444-2448; Altschul, et al. 1990 J. Mol. Biol. 215(3):403-410; Thompson, et al. 1994 Nucleic Acids Res. 22(2):4673-4680; Higgins, et al. 1996 Methods Enzymol. 266:383-402; Altschul, et al. 1990 J. Mol. Biol. 215(3):403-410; Altschul, et al. 1993 Nature Genetics 3:266-272)を挙げることができるが決してこれらに制限されない。
【0074】
本明細書で開示しているポリヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列もまた提供される。それゆえ、本発明は、本発明の配列のヌクレオチドに相補的なヌクレオチドであるDNAと方向が逆(例えばアンチセンス配列)であるDNAのいずれかを含むものと理解される。
【0075】
さらに、本明細書で開示しているポリヌクレオチド配列のフラグメントも提供される。ポリヌクレオチド配列の代表的なフラグメントとは、由来する配列の、少なくとも8又は9の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも12の連続するヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも15又は少なくとも20の連続するヌクレオチドを有するヌクレオチドフラグメントのいずれかを意味するものと理解される。かかるフラグメントの上限は、Aβ1-42ペプチドをコードする配列に見い出されるポリペプチドヌクレオチドの総数である(又は、いくつかの態様では、本明細書で同定されるオープンリーディングフレーム(ORF)である)。特定のペプチドをコードする適当なフラグメントもまた有用である。例えば、従前に同定されていたAβペプチドフラグメントホモログ又はそのフラグメントであるヌクレオチド配列は、本発明の血管新生を阻害する方法を実行するために用いることができる。
【0076】
(ハイブリダイゼージョンと検出プローブ)
かかる代表的なフラグメントの中では、ストリンジェントな条件下でヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるフラグメントが好ましい。高度又は中度のストリンジェンシーは以下に示され、2本の相補的DNAフラグメント間のハイブリダイゼーションを可能にするように選択される。300塩基程度のサイズのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションの条件は、当該技術分野で周知の方法により、より大きい又はより小さいサイズのオリゴヌクレオチドのために当業者が適用するものとなる(例えば、Sambrook, et al. 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., pp. 9.47-9.57を参照のこと)。
【0077】
標的配列又は標的配列から作製された単位複製配列(amplicon)とのハイブリダイゼーションのための検出プローブ(例えば開示したポリヌクレオチド配列のフラグメント)も提供される。かかる検出プローブは、少なくとも9、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100ヌクレオチドの配列を配列として有利に有するものである。あるいは、検出プローブは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、そして例えば128までの開示した核酸の連続したヌクレオチドを含んでもよい。検出プローブは、本発明の標識プローブ又はプライマーとして用いてもよい。標識プローブ又はプライマーは、放射性化合物又は別のタイプの標識で標識される。あるいは、非標識ヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして直接用いられてもよいが、配列は、多数の用途において用いることができるプローブを提供するために、放射性元素(32P、35S、H、125I)、又はビオチン、アセチルアミノフルオレン、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、5−ブロモ−デオキシウリジン、フルオレセイン(fluorescein)のような分子で一般的に標識される。
【0078】
開示されているヌクレオチド配列は、DNAチップのような分析システムにおいて用いてもよい。DNAチップとその使用は、当該技術分野においては周知であり(例えば、米国特許番号5,561,071号、5,753,439号、6,214,545号や、Schena, et al. 1996 BioEssays 18:427-431; Bianchi, et al. 1997 Clin. Diagn. Virol. 8:199-208を参照のこと。それぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる)、そして/あるいは、AFFYMETRIX, Inc.社(Santa Clara, Calif.)などの製造供給元から提供される。
【0079】
ハイブリダイゼージョンには多様なストリンジェンシーが用いられる。条件がより厳しくなると、二重鎖形成のためにより多くの相補性が必要となる。条件の厳格さは、温度、プローブの濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間等などによりコントロールしてもよい。ハイブリダイゼーションは、当該技術分野において周知の、例えばKeller, G. H., M. M. Manak 1987 DNA Probes, Stockton Press, New York, N.Y., pp. 169-170に記載されている技術により、中度から高度のストリンジェンシー条件下で実施されることが好ましい。
【0080】
一例として、32Pで標識した遺伝子特異的プローブによるサザンブロット上の固定化DNAのハイブリダイゼーションは、標準的な方法で行ってもよい(Maniatis, et al. 1982 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)。一般的に、ハイブリダイゼーションとそれに続く洗浄は、例示されたポリヌクレオチド配列に相同な標的配列の検出を可能にする中度から高度のストリンジェンシー条件下で実行することができる。二重鎖DNA遺伝子プローブには、ハイブリダイゼーションは、DNAハイブリッドの融解温度(Tm)未満の20〜25℃にて、6×SSPE、5×デンハルト液、0.1%のSDS、0.1mg/mlの変性DNA内で、一晩実行してもよい。融解温度は、以下の式で求めることができる(Beltz et al. 1983 Methods of Enzymology, R. Wu, L. Grossman and K. Moldave [eds.] Academic Press, New York 100:266-285)。
【0081】
Tm=81.5℃+16.6Log[Na]+0.41(%G+C)−0.61(%ホルムアミド)−600/塩基対の二本鎖の長さ
【0082】
洗浄は、以下のように通常行われる。
【0083】
(1)1×SSPE、0.1%のSDSにおいて室温にて15分を2回(低ストリンジェンシー洗浄)。
【0084】
(2)0.2×SSPE、0.1%のSDSにおいてT−20℃にて15分を1回(中度のストリンジェンシー洗浄)。
【0085】
オリゴヌクレオチドプローブには、ハイブリダイゼーションは、一晩、ハイブリッドの融点(Tm)未満の10〜20℃にて、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1%のSDS、0.1mg/mlの変性DNA内で行ってもよい。オリゴヌクレオチドプローブのTmは、以下の式で決定される。
【0086】
Tm(°C)=2(T/A塩基対の数)+4(G/C塩基対の数)(Suggs et al. 1981 ICN-UCLA Symp. Dev. Biol. Using Purified Genes, D. D. Brown [ed.], Academic Press, New York, 23:683-693)。
【0087】
洗浄は以下の通り実行してもよい。
【0088】
(1)1×SSPE、0.1%のSDSにおいて室温にて15分を2回(低ストリンジェンシー洗浄)。
【0089】
(2)1×SSPE、0.1%のSDSにおいてハイブリダイゼーションの温度にて15分を一回(中程度のストリンジェンシー洗浄)。
【0090】
一般的に、ストリンジェンシーを変化させるために、塩及び/又は温度を変更してもよい。70程度より大きい塩基の標識されたDNAフラグメントについて、以下の条件を用いてもよい。
【0091】
1低度:1又は2×SSPE、室温;低:1又は2×SSPE、42℃;中:0.2×又は1×SSPE、65℃;高:0.1×SSPE、65℃
【0092】
別の実施例としては、高度のストリンジェンシーの条件を用いた手順としては、以下の例を挙げることができるがこれらに制限されない。すなわち、DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションは、65℃にて8時間から一晩、6×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、1mのMEDTA、0.02%PVP、0.02%のFicoll、0.02%BSA、及び500μg/mLの変性サケ精子DNAからなるバッファーにおいて行われる。フィルターは、100μg/mlの変性サケ精子DNAと5−20×10cpmの32P標識プローブとを含むプレハイブリダイゼーション混合液において、ハイブリダイゼーションの温度として好ましい65℃にて48時間ハイブリダイズされる。あるいは、ハイブリダイゼーションのステップは、SSCバッファーの存在下で行ってもよく、1×SSCは、0.15MのNaClと0.05Mのクエン酸ナトリウムとに相当する。引き続いて、フィルター洗浄は、37℃にて1時間、2×SSC、0.01%PVP、0.01%Ficoll及び0.01%BSAを含む溶液で行った後に、50℃にて45分間、0.1×SSCにおいて洗浄してもよい。あるいは、フィルター洗浄は、68℃にて15分のインターバルで、2×SSC及び0.1%SDS、又は0.5×SSC及び0.1%SDS、又は0.1×SSC及び0.1%SDSを含む溶液において行ってもよい。洗浄ステップ後、ハイブリダイズされたプローブは、オートラジオグラフィーで検出可能である。当該技術分野において周知の高ストリンジェンシーの別の条件を用いてもよい(例えば、Sambrook, et al. 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., pp. 9.47-9.57、及びAusubel, et al. 1989 Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.,を参照のこと。それぞれは、全体として参照により本明細書に組み込まれる)。
【0093】
さらに、中度のストリンジェンシーの条件を用いた手順としては、以下の例を挙げることができるがこれらに制限されない。すなわち、DNAを含むフィルターは、プレハイブリダイズされ、60℃にて5×SSCバッファーと標識プローブの存在下でハイブリダイズされる。その後、フィルター洗浄は、50℃にて、2×SSCを含む溶液において行われる、ハイブリダイズされたプローブは、オートラジオグラフィーで検出可能である。当該技術分野で周知の中度のストリンジェンシーの条件を用いてもよい(例えば、それぞれが全体として本明細書に組み込まれるSambrook et al. 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., pp. 9.47-9.57; and Ausubel et al 1989 Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照のこと)。
【0094】
二重鎖の形成と安定性は、ハイブリッドの二本のストランドの間の実質的な相補性に依拠し、上述のように、ある程度のミスマッチは、許容されてもよい。それゆえ、本発明のプローブ配列としては、例えば、開示した配列の変異(1又は複数の両方)、欠失、挿入、及びこれらの組合せを挙げることができ、前記変異、挿入、及び欠失は、所望の標的ポリヌクレオチドの安定したハイブリッドの形成を可能にするものである。変異、挿入及び欠失は、多様な方法で既存のポリヌクレオチド配列において産生することができ、これらの方法は、当業者に公知である。別の方法も将来知られることになろう。
【0095】
本発明のDNA配列の機能的フラグメントを得るために、制限酵素を用いてもよいということが、当業者には周知である。例えば、Bal31エクソヌクレアーゼは、DNAの時間コントロール限定消化(一般に、イレーズ・ア・ベース手順(erase-a-base procedure)とも称される)のために好都合に用いることができる。例えば、Maniatis, et al. 1982 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York; Wei, et al. 1983 J. Biol. Chem. 258:13006-13512を参照のこと。開示された核酸配列は、核酸解析手順において、分子量マーカーとしても用いることができる。
【0096】
宿主細胞
本発明のポリヌクレオチドにより形質転換された宿主、及び、形質転換された宿主細胞によるAβペプチドフラグメントの産生物が、提供される。いくつかの実施態様では、形質転換された細胞は、Aβペプチドフラグメントのポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを包含する。別の実施態様では、核酸で形質転換された宿主細胞を提供する。さらに別の実施態様では、Aβポリヌクレオチド配列のフラグメントを含む発現ベクターを包含する形質転換された細胞を提供する。形質転換された宿主細胞は、提供されるヌクレオチド配列の複製及び/又は発現を可能とする条件下で培養されてもよい。発現したポリヌクレオチドは、さらなる使用のために、当該技術分野において公知の方法により、培地から回収され精製される。
【0097】
宿主細胞は、例えば、バクテリア細胞(グラム陰性又はグラム陽性)、イースト菌細胞、動物細胞、植物細胞、及び/又はバキュロウイルスベクターを用いる昆虫細胞などの真核又は原核細胞系から選択してもよい。いくつかの実施態様では、ポリペプチドの発現のための宿主細胞としては、例えば、米国特許第6,319,691号、6,277,375号、5,643,570号、5,565,335号明細書、Unger, et al. 1997 The Scientist 11(17):20; 又は、Smith, et al. 1998 The Scientist 12(22):20において教示されるものを挙げることができるがこれらに制限されず、言及される参照及び特許の各々はそれぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれる。一実施例では、宿主細胞としては、例えば、スタフィロコッカス菌種、エンテロコッカス菌種、大腸菌及び枯草菌;ストレプトマイセス菌種、アスペルギルス菌種、S.セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセラ・ポリモルファ(Hansela polymorpha)、クルベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)、及びヤローウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)などの真菌細胞;ショウジョウバエS2(Drosophila S2)及びヨトウSf9(Spodoptera Sf9)細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293などの動物細胞;ボウズ・メラノーマ細胞;並びに植物細胞を挙げることができるがこれらに制限されない。多種多様な発現システムを、提供されるポリペプチドを産生するために用いることができ、ポリヌクレオチドは、特定の発現システムにおける発現のために最適なコドンの使用を提供するために、当該技術分野で公知の方法により改変してもよい。
【0098】
さらに、挿入した配列の発現を調節し、遺伝子産物を改変し、及び/又は特定の方法で遺伝子産物をプロセスする宿主細胞菌株が、選択されてもよい。ある種のプロモーターからの発現が、ある種のインデューサーの存在下で上昇することがありうるので、遺伝子操作されているポリペプチドの発現をコントロールしてもよい。さらに、異なる宿主は、タンパク質の翻訳及び翻訳後のプロセッシングと改変(例えば、グリコシル化、リン酸化)についての特徴的なそして特異的なメカニズムを有している。発現する外来タンパク質の所望の改変及びプロセッシングを確実にするために、適切な細胞系又は宿主システムを選択することができる。例えば、バクテリアのシステムにおける発現では、非グリコシル化コアタンパク質産物を作製することができるのに対し、イースト菌における発現では、グリコシル化産物が作製される。ほ乳類細胞における発現は、異種タンパク質の「生来の(native)」グリコシル化を提供するために用いることができる。さらに、異なるベクター/宿主発現システムは、異なる範囲でプロセッシング反応に影響を与えることもある。
【0099】
核酸及び/又はベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、及び感染等などの周知の技術により宿主細胞に導入することができる(例えば、Sambrook, et al. 1989 Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2.sup.nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照のこと)。
【0100】
本発明は、本明細書で開示したポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド、誘導体、又はバリアント(例えば、スプライスバリアント)の発現をも提供する。あるいは、本発明は、本明細書で開示したポリヌクレオチド配列に由来するポリヌクレオチドフラグメントにコードされるポリペプチド、誘導体、又はバリアントから得られるポリペプチドフラグメントの発現を提供する。いずれの実施態様でも、ポリペプチド又はフラグメントは、本発明による組換えDNA分子により形質転換される宿主内で発現されるように、開示される配列は、二番目の核酸配列により制御されることができる。例えば、タンパク質又はペプチドの発現は、当該技術分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサー因子により制御してもよい。
【0101】
本発明は、試料中のAβ遺伝子若しくはフラグメント、又はそれらのバリアントの存在を同定するための核酸ベースの方法も提供する。これらの方法は、提供される核酸を利用してもよく、当業者には周知である(例えば、Sambrook, et al. 1989 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., pp. 9.47-9.57、又はAbbaszadega, et al. 2001 Reviews in Biology and Biotechnology, 1(2):21-26を参照のこと)。かかる方法の中でも有用な技術としては、酵素的遺伝子増幅(又はPCR)、サザンブロット、ノーザンブロット、又は試料中のポリヌクレオチド配列の同定のための核酸ハイブリダイゼーションを用いる他の技術を挙げることができる。核酸は、Aβ遺伝子又はその転写産物の異常調節に関連する障害について個々人をスクリーニングするために用いてもよい。
【0102】
本発明は、本発明のヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをも提供する。本発明は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされる少なくとも5アミノ酸のポリペプチドのフラグメントをも提供する。
【0103】
(医薬製剤と投与)
本明細書における「投与(administration)」又は「投与する(administering)」なる用語は、薬剤を患者に送達するプロセスを意味する。投与のプロセスは、(1又は複数の)薬剤、又は所望の効果に拠り変化しうる。投与は、治療薬のために適当な任意の手段によって達成でき、例えば、経口、非経口、粘膜、肺、局所、カテーテルベース、直腸、頭蓋内(intracranial)、脳室内(intracerebroventricular)、大脳内、膣内、又は、子宮内の送達を挙げることができる。非経口送達としては、例えば、皮下静脈(subcutaneous intravenous)、筋肉内(intrauscular)、動脈内(intra-arterial)、及び臓器組織、特に腫瘍組織への注入を挙げることができる。粘膜送達としては、例えば、鼻腔内送達を挙げることができる。経口又は鼻腔内送達としては、噴霧剤(propellant)の投与を挙げることができる。肺投与は、薬剤の吸入を含めることができる。カテーテルベース投与としては、イオン泳動的(iontropheretic)カテーテルベース送達を含めることができる。経口送達としては、コーティング錠の送達、口腔からの液体の投与を挙げることができる。投与としては、医薬的に許容される担体を伴う送達を挙げることができ、例えば、バッファー、ポリペプチド、ペプチド、複合糖質(polysaccharide conjugate)、リポソーム、及び/又は脂質を挙げることができる。遺伝子治療プロトコールは、治療薬が、患者において転写産物又はポリペプチドとして発現する場合に、治療の目的を成就することができるポリヌクレオチドの投与としてみなされる。
【0104】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、病的血管新生を阻害するために有効量を投与される。本明細書において「血管新生(angiogenesis)」なる用語は、新規の血管が形成されるプロセスや、通常の様々な身体活動(生殖、発生、創傷治癒)に不可欠なプロセスを意味することを意図するものである。かかるプロセスは、毛細管の初代細胞である内皮細胞の成長の刺激及び阻害の両方を行う分子の複雑な相互作用に関与すると信じられている。通常の条件では、これらの分子は、長期にわたり、休止状態(quiescent state)(すなわち、毛細管の成長がない)で微小血管系を維持しているようにみえる。しかしながら必要な場合(創傷治癒中など)は、これらの細胞は、迅速に増殖し、短期間に代謝回転することができる。血管新生は、通常の状態では高度に制御されたプロセスであるが、多くの状況(「血管新生病」として特徴づけされる)においては、持続性の無秩序な血管新生により推進される。特に明記のない限り、調節されていない血管新生は、特有の病態を直接的に引き起こし、又は既存の病態を悪化させるかのいずれかである。例えば、眼球新血管新生(ocular neovascularization)は、失明の最も一般的な原因としてかかわっており、ほぼ20種類の眼病において優位に立つものである。関節炎などのある種の状態では、新たに形成された毛細管は、関節に侵入し、軟骨を破壊する。糖尿病においては、網膜に新たに形成された毛細管が硝子体(vitreous)に侵入し、出血し、失明を引き起こす。腫瘍の成長と転移(metastasis)もまた、血管新生に依存する(Folkman, J., Cancer Research, 46:467-473, 1986; Folkman, J., Journal of the National Cancer Institute, 82:4-6, 1989)。例えば、2mmを超えて肥大する腫瘍は、自ら血液の供給を得なければならないが、新たに毛細管の成長を誘導することでそれを行う。かかる新たな毛細管は、いったん腫瘍内に組み込まれると、腫瘍細胞が循環血液中に入り、肝臓、肺、骨のような離れた部位に転移する手段を提供することになる(Weidner, N. et al., The New EnglandJournal of Medicine, 324(1):1-8, 1991)。
【0105】
本発明の医薬組成物は、医薬的に有用な組成物を調製する公知の方法により製剤してもよい。処方は、当業者が容易に利用できる周知の多数の文献に記載がある。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Martin E W 1995 Easton Pennsylvania Mack Publishing Company, 19.sup.th ed.)は、本発明と関連して用いることのできる処方を記載している。非経口的投与のために適切な処方としては、例えば、処方を目的のレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、バッファー、静菌薬(bacteriostats)、及び溶質を含みうる水性滅菌注射液(aqueous sterile injection solutions)や、懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性滅菌懸濁液を挙げることができる。処方は、例えば、密閉されたアンプル及びバイアルなどの単位用量(unit-dose)又は複数回投与(multi-dose)定量で調製してもよく、注射用の水などの滅菌液体担体の使用前であるという条件のみを要件としてフリーズドライの(凍結乾燥の)条件下で保存してもよい。注射液及び注射縣濁液は、滅菌パウダー、滅菌顆粒、滅菌タブレット、その他から即時に調製されてもよい。上記に特に記載されている成分に加え、本発明の処方は、問題の処方のタイプに関する当該技術分野で認められる別の薬剤を含んでもよいことが理解されなければならない。
【0106】
一実施態様では、Aβフラグメントは、徐放性(sustained release)製剤において送達される。製剤は、持続放出性(extended release)及び半減期の延長(extended half-life)を提供する。使用に適切な放出制御システム(controlled release systems)としては、拡散律速制御(diffusion-controlled)、溶媒制御(solvent-controlled)、化学的制御(chemically-controlled)システムを挙げることができるがこれらに制限されない。拡散律速制御システムとしては、例えば、1又は複数のAβフラグメントが、ペプチドフラグメントの放出が、拡散障壁を通した透過により制御されているような装置内に囲まれている貯蔵装置(reservoir devices)を挙げることができる。通常の貯蔵装置としては、例えば、膜(membranes)、カプセル、マイクロカプセル、リポソーム及び中空糸(hollow fiber)を挙げることができる。モノリシック(マトリックス)装置は、拡散制御システムの二番目のタイプであり、Aβペプチドフラグメントは、律速マトリックス(例えばポリマーマトリックス)内で分散し、また溶解する。ペプチドフラグメントは、律速マトリックスを通じて均一に分散し、薬剤放出速度は、マトリックスを通じて拡散により制御される。モノリシックマトリックス装置における使用に適切なポリマーとしては、天然ポリマー、合成ポリマー、天然ポリマーを改変して合成ポリマーとしたもの、及びポリマー誘導体を挙げることができる。
【0107】
Aβペプチドフラグメントの、治療効果があり、最適な容量の範囲が、当該技術分野における公知の方法を用いて決定することができる。抗血管新生及び/又は抗腫瘍効果を達成するための適当な容量についてのガイダンスが、本明細書中に例示されたアッセイにより提供される。治療効果を達成するためのAβペプチドフラグメントの必要最低限量が、同様に決定することができる。一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、1μM用量範囲内の当量で投与される。別の実施態様では、約1μM〜約100μM当量のAβペプチドフラグメントが投与される。また別の実施態様では、約2μM〜約10μM当量のAβペプチドフラグメントが投与される。投与できる医薬製剤としては、例えば、1〜10,000mg、10〜1000mg、50〜900mg、100〜800mg、又は200〜500mgを挙げることができる。
【0108】
本発明は、アルツハイマー病の治療において、Aβペプチドフラグメントの抗血管新生効果を妨害することにより潜在的に治療効果のある化合物をスクリーニングするための治療方法及び/又はスクリーニングする方法ならびにキットに関するものでもある。
【0109】
一態様では、本発明の方法は、Aβに誘導される血管新生阻害を妨害する化合物を同定する方法を含み、かかる方法は、(a)血管新生を起こすことができる(can undergo)第一生体試料を、被検化合物と、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントと、血管新生剤とに接触させるステップ;と(b)第一生体試料において起こる血管新生の程度を測定するステップ;とを含む。任意で、本発明の方法は、(c)血管新生を起こすことができる第二生体試料を、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントと、血管新生剤とに別個に接触させるステップ;と(d)第二生体試料において起こる血管新生の程度を決定するステップ;と(e)第一生体試料において起こる血管新生の程度と第二生体試料において起こる血管新生の程度とを比較するステップ;とをさらに含んでもよい。ここにおいて、ステップ(c)〜(d)は、対照として用いることができる。同一のAβペプチドフラグメントが、第一と第二の生体試料において用いられることが好ましい。
【0110】
血管新生の範囲の決定は本明細書記載の方法などの、当該技術分野で公知の方法を用いて実行することができ、定量的に又は定性的に行うことができる。例えば、がん又は腫瘍成長の分子マーカーや細胞マーカーを用いることができる。血管新生の範囲は、生体試料における内皮細胞増殖の量又は血管成長の程度の量を測定することにより決定することもできる。
【0111】
本発明の方法及びキットにおいて用いられる生体試料としては、例えば、血管新生及び/又は腫瘍成長を示すことができる様々な体液(biological fluids)及び生体組織を挙げることができる。生体試料としては、例えば、動脈組織、角膜組織、内皮細胞、臍帯組織(umbilical cord tissue)、絨毛アラントイド膜、その他を挙げることができる。
【0112】
血管新生剤は、生体試料において血管新生を誘導することができる任意の分子、化合物又は細胞でよい。例えば、血管新生剤は、神経栄養因子などの栄養因子でよい。血管新生因子は、サイトカイン、又は血管内皮増殖因子、血小板に由来する増殖因子、及び塩基性線維芽細胞増殖因子などの増殖因子でよい。本発明の診断方法及び/又はスクリーニング方法は、動物モデルのようにインビボで実行でき、又はインビトロでも実行できる。
【0113】
別の態様では、本発明はAβに誘導される血管新生の阻害を妨害する化合物を同定するためのキットを含む。キットは、少なくとも一つのAβペプチドフラグメントを含むコンパートメントと、任意で、血管新生剤(angiogenic agent)を含むコンパートメントを含んでもよい。さらに、キットは、任意で、1又は複数の生体試料を含むコンパートメントを含んでもよい。
【0114】
別の態様では、本発明の方法は、Aβに誘導される抗腫瘍活性を妨害する化合物を同定するために提供され、(a)第一腫瘍組織を、被検化合物と、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントとに接触させるステップ;と(b)腫瘍組織において起こる腫瘍の成長の範囲を測定するステップ;とを含む。任意で、本発明の方法は、(c)第二腫瘍組織を、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントに別個に接触させるステップ;と(d)第二腫瘍組織において起こる腫瘍成長の程度を決定するステップ;と(e)第一腫瘍組織において起こる腫瘍成長の程度と第二腫瘍組織において起こる腫瘍成長の程度とを比較するステップ;とをさらに含んでもよい。ここにおいて、ステップ(c)〜(d)は、対照として用いることができる。腫瘍の成長の程度は、当該技術分野で公知の方法を用いて定量的に又は定性的に決定でき、本明細書記載の方法を含む。例えば、がん若しくは腫瘍の分子や細胞マーカーを用いることができる。
【0115】
別の態様では、本発明はAβに誘導される抗腫瘍活性を妨害する化合物を同定するためのキットを含む。キットは、少なくとも一つのAβペプチドフラグメントを含むコンパートメントと、任意で、少なくとも一つの腫瘍組織を含むコンパートメントを含んでもよい。さらに、キットは、任意で1又は複数の生体試料を含むコンパートメントを含んでもよい。
【0116】
本発明の方法及びキットを用いてスクリーニングすることができる被検化合物は、例えば、小分子、及び生細胞若しくは死細胞などの任意の物質、薬剤、又は分子を挙げることができる。
【0117】
あらゆる脊椎動物種を含む様々な患者を治療することができる。患者は、ほ乳類種が好ましい。開示した治療方法により利益を受けるほ乳類としては、類人猿(apes)、チンパンジー、オランウータン、ヒト、猿(monkeys);イヌ、ネコ、モルモット(guinea pigs)、ハムスター、ベトナムポットベリードピッグ(Vietnamese pot-bellied pigs)、ウサギ、フェレットなどの家畜(domesticated animals)(例えばペット);ウシ、バッファロー、バイソン、ウマ、ロバ、ブタ(swine)、ヒツジ、及びヤギなどの家畜(domesticated farm animals)、クマ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、カバ、サイ、キリン、アンテロープ、ナマケモノ(sloth)、ガゼル、シマウマ、ウィルドビースト、プレーリードッグ、コアラ、カンガルー、フクロネズミ(opossums)、アライグマ(raccoons)、パンダ、ハイエナ、アザラシ(seals)、アシカ(sea lions)、ゾウアザラシ(elephant seals)、カワウソ(otters)、ネズミイルカ(porpoises)、イルカ、及びクジラなどの一般に動物園で見ることができるような珍しい動物を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0118】
(腫瘍及びがんの治療)
一実施態様では、本明細書記載のAβペプチドフラグメントの治療上有効量を、任意で剤形単位で投与することを含む、動物やヒトにおいて治療を必要とする腫瘍、がん又は他の増殖性障害を治療する方法が提供される。本明細書記載のAβペプチドフラグメントの治療上有効量を、任意で剤形単位で投与することを含む、治療を必要とする動物やヒトにおいて血管新生を阻害する方法をも提供される。
【0119】
Aβペプチドフラグメント及びフラグメントを含む医薬組成物が提供され、一実施形態では、腫瘍及びがんを治療するために用いることができ、例えば、以下の組織や臓器の腫瘍及びガン、すなわち、胸部(breast)、前立腺、肺、気管支、大腸、尿道、膀胱(bladder)、腎臓、膵臓、甲状腺、胃、脳、食道(esophagus)、肝臓、肝内胆管(intrahepatic bile duct)、頸部(cervix)、皮膚(skin)、喉頭(larynx)、心臓、睾丸、小腸、甲状腺、外陰部(vulva)、胆嚢(gallbladder)、肋膜(pleura)、眼、鼻、耳、鼻咽腔(nasopharnx)、尿管(ureter)、胃腸系、直腸組織(rectal tissue)、膵臓、頸部を挙げることができるがこれらに制限されない。治療できるがんとしては、例えば、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma)、メラノーマ、多発性骨髄腫(multiple myeloma)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、カルシノマ、腺がん(adenocarcinomas)、肉腫(sarcoma)、リンパ腫(lymphomas)、白血病(leukemias)を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0120】
一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、前立腺がん、肺がん、結腸直腸がん、膀胱がん、皮膚黒色腫(cutaneous melanoma)、すい臓がん、白血病、乳がん、子宮内膜がん(endometrial cancer)、非ホジキンリンパ腫、及び卵巣がんを治療するために用いてもよい。
【0121】
別の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、皮膚がん、子宮頸がん(cervical cancer)、肛門がん(anal carcinoma)、食道がん(esophageal cancer)、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)(肝臓(liver)における)、喉頭がん(laryngeal cancer)、腎細胞がん(renal cell carcinoma)(腎臓(kidneys)における)、胃がん、睾丸がん(testicular cancers testicular cancers)、及び甲状腺がんを含む。上皮細胞がん及び腫瘍を治療するために用いてもよい。
【0122】
また別の実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む悪性血液疾患(hematological malignancies)(血液と骨髄)を治療するために用いてもよい。
【0123】
さらに別の一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、骨肉腫(骨の)、軟骨肉腫(chondrosarcoma)(軟骨(cartilage)から生じる)、及び横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)(筋肉の)を含む肉腫(sarcoma)を治療するために用いてもよい。
【0124】
さらにまた別の一実施態様では、Aβペプチドフラグメントは、脳腫瘍、消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumors)(GIST)、中皮腫(mesothelioma)(肋膜(pleura)又は心膜(pericardium)における)、胸腺腫(thymoma)や奇形腫(teratomas)、及びメラノーマを含む種々の起源のがんや腫瘍を治療するために用いてもよい。
【0125】
治療可能な腫瘍としては、例えば、膠芽細胞腫(glioblastomas)、腺がん等の肺悪性腫瘍、又は胸部、大腸、腎臓、膀胱、頭部、若しくは頸部の悪性腫瘍を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0126】
治療可能な増殖症(proliferative disorder)としては、例えば、白血病、リンパ腫、又は赤血球増加症のような造血障害(hematopoietic disorders)、及び糖尿病性網膜症、黄斑変性症、緑内障(glaucoma)、又は網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)のような眼障害を挙げることができるがこれらに制限されない。治療可能な炎症性障害としては、リウマチ性関節炎、変形性関節症(osteoarthritis)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、サルコイド肉芽腫、乾癬、又はぜんそくを挙げることができるがこれらに制限されない。
【0127】
一実施態様では、aβペプチドフラグメントは、カルシノマ、肉腫、リンパ腫、白血病、及び/又は骨髄腫(myeloma)を治療するために用いることができる。別の実施態様では、本明細書に開示しているaβペプチドフラグメントは、充実性腫瘍(solid tumors)を治療するために用いることができる。
【0128】
また別の実施態様では、本明細書に開示しているaβペプチドフラグメントは、以下の表2aにリストされているがんの治療に用いることができるがこれらに制限されない。
【0129】
【表2】



【0130】
(Aβペプチドフラグメントの抗血管新生活性)
論理に縛られることは好まないが、配列HHQKLVFFは、抗血管新生活性を付与するAβの配列である可能性がある。
【0131】
数々の研究により、細胞表面上のヘパリンと様々なプロテオグリカンが、Aβペプチドと結合することが示され(Snow, et al. 1995 Arch. Biochem. Biophys. 320, 84-95; McLaurin, et al. 2000 Eur. J. Biochem. 267, 6353-61; McKeon J, Holland LA. 2004 Electrophoresis 25, 1243-8)、ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、AD脳におけるアミロイドの蓄積と関連していることが示された(van Horssen, et al. 2001 Acta Neuropathol. (Berl). 102, 604-14)。ヘパリン硫酸プロテオグリカンは、細胞表面と、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor)(bFGF)や、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)(VEGF)などの特定の増殖因子との相互作用を可能とすることにより、血管新生中に大きな役割をも果たす。ここにおいて、プロテオグリカンは、受容体と増殖因子との相互作用を調節すると考えられている(Rusnati M, Presta M. 1996 Int. J. Clin. Lab. Res. 26, 15-23; Dougher, et al. 1997 Growth Factors. 14, 257-68)。外因性ヘパリンの付加は、Aβ1−42の抗血管新生活性を効率的に反転できることが本明細書で示されている。外因性ヘパリンの付加は、血管新生の軽微な阻害を引き起こすが、血管新生に対する過剰なヘパリンの阻害的効果を示唆する研究と一致する。この効果のメカニズムは、組織因子経路阻害剤(tissue factor pathway inhibitor)の放出の増加を経由していることが示唆されている(Mousa SA, Mohamed S. 2004 Thromb. Haemost. 92, 627-33)。
【0132】
ヘパラン硫酸プロテオグリカンなどの細胞表面プロテオグリカンは、増殖因子に結合し、VEGFとbFGFを含む様々な増殖因子を活性化する(Iozzo RV, San Antonio JD. 2001 J. Clin. Invest. 108, 349-55; Presta, et al. 2005 Cytokine Growth Factor Rev. 16, 159-78; Sanderson, et al. 2005 J. Cell Biochem. Sep 7, (advance electronic publication))。Aβは、これらのプロテオグリカンに結合し、細胞と、増殖因子との結合と相互作用に影響を与えることが可能である。それゆえ、抗血管新生アッセイは、ヘパリン結合増殖因子を含んでいるので、過剰なヘパリンの添加は、Aβペプチドが結合できないように(bind out)作用し、細胞表面への結合を妨害して、それゆえ抗血管新生活性に対抗するのかもしれない。あるいは、Aβは、VEGFへのヘパリン結合モチーフと直接相互作用していることも示されており、(Yang, et al. 2005 J. Neurochem. 93, 118-27)、ゆえにAβのヘパリンへの結合は、VEGFへのAβの結合を妨害することができ、Aβの抗血管新生活性を逆転するものとなっている。あるいは、Aβは、VEGFへのヘパリン結合モチーフとの直接の相互作用を示すものでもあり(Yang, et al. 2005 J. Neurochem. 93, 118-27)、それゆえ、ヘパリンへのAβの結合がVEGFへの結合を阻害でき、Aβの抗血管新生活性を逆転するものである。ヘパリン(そして他のグリコサミングリカン)がAβペプチドの立体配置的特性に影響を与え、線維形成の速度を変化させることも可能であり(Castillo, et al. 1999 J. Neurochem. 72, 1681-7; Cohlberg, et al. 2002 Biochemistry. 41, 1502-11)、それゆえ、ペプチドは、血管新生をブロックすることができない。βシートをより多く含むAβの調製物が、血管新生においてはより強いので、Aβペプチドの抗血管新生活性は、インビトロではその立体配置的特性(Gebbink, et al. 2000 Biochim. Biophys. Acta. 1502, 16-3)に関連しているようにみえる。さらに、ペプチドの可溶性オリゴマーが特に抗血管新生であり、繊維状形態は不活性であり(Paris, et al. 2005 Brain Res. Mol. Brain Res. 136, 212-30; Skovseth, et al. 2005 Blood 105, 1044-51)、Aβペプチドにおける特定の残基が、血管新生を阻害するために露出されていることが必要であることを示唆している。
【0133】
抗血管新生活性を付与するために重要なAβペプチド配列内の一つのモチーフは、推定プロテオグリカン結合領域であるHHQKであるかもしれない(Cardin, A.D.; Weintaub, H.J.R. 1989 Arteriosclerosis. 9, 21-32; Snow, et al.1995 Arch. Biochem. Biophys. 320, 84-95; McLaurin , et al. 2000 Eur. J. Biochem. 267, 6353-61; McKeon, et al. 2004 Electrophoresis. 25, 1243-8)。プロテオグリカンは、血管新生中に調節的な役割を果たすことが知られている(Moon, et al. 2005 J. Cell Physiol. 203, 166-76; Tkachenko , et al. 2005 Circ. Res. 96, 488-500; Presta, et al. 2005,Cytokine Growth Factor Rev. 16, 159-78)。また、多数の研究により、AD病変形成におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの重要な役割が示唆されており、Aβへのかかる分子の結合を妨害することは、治療的には有用であることが示唆されている(Leveugle, et al. 1994) Neuroreport. 5, 1389-92; Kisilevsky, et al. 2002 J. Mol. Neurosci. 19, 45-50)。
【0134】
抗血管新生活性のための別の潜在的に有意な配列としては、C末端部に向かってHHQK(配列番号9)モチーフに隣接した4つのアミノ酸(LVFF)を挙げることができる。この領域は、βストランドの構成要素(constitute part)として知られており、それゆえ、ペプチドのオリゴマー形成のために重要である(Morimoto , et al. 2004 J. Biol. Chem. 279, 52781-8; Irie, et al. 2005 J. Biosci. Bioeng. 99, 437-47)。近年、Aβ10−42の高次構造モデル(conformational model)においては、高度に疎水的な残基である17−20が、二量体で露出していることが示されたが、別のグループの研究では、この領域は、繊維状の形態で覆い隠されていることが明らかになっている(Mathura, et al. 2005 Biochem. Biophys. Res. Commun. 332, 585-92; Olofsson, et al. 2005 J. Biol. Chem. Oct 7, (advance electronic publication))。
【0135】
Aβが、細胞表面のプロテオグリカンに増殖因子が結合することを妨害する作用をする可能性があるかをさらに調査するために、3つの残基を、推定上のプロテオグリカン結合配列であるAβ12−28のHHQKで置換した。本明細書では、中性アミノ酸GGQG又はAAQAを野生型HHQKにおいて置換することで、野生型Aβ12−28ペプチドの抗血管新生の影響を完全に無効にすることが示されている。さらに、インビボでのAβ12−28の抗血管新生の効力は、VEGFに誘導される血管新生のVEGFのラットの角膜マイクロポケットモデルを用いて確定された。VEGFのレベルは、ADの患者の脳において増加するが(Kalaria, et al. 1998 Brain Res. Mol. Brain Res. 62, 101-5; Tarkowski, et al. 2002 Neurobiol Aging. 23, 237-43)、しかし、脳管化の増加と関連するものではない(Buee, et al. 1997 Ann. N.Y.Acad. Sci. 826, 7-24)。AD脳におけるAβの蓄積は、それゆえ、VEGF活性の阻害をもたらすこともある。VEGFは、神経栄養性であり、血管の統合性を維持することが重要で、脳卒中後又は頭部損傷後の血管リモデリングにおいて鍵となる因子でもある(Slevin, et al. 2000 Neuroreport 11, 2759-64; Shore, et al. 2004 Neurosurgery. 54, 605-12)。AD脳におけるVEGFに対するAβの血管新生作用は、なぜ、ADの患者やADのトランスジェニックマウスモデルが、脳卒中後に状態が悪くなるのかを説明することになるのかもしれない。(Koistinaho, et al. 2002 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99, 1610-5; Wen, et al. 2004 J. Biol. Chem. 279, 22684-92; Koistinaho M, Koistinaho J. 2005 Brain Res. Brain Res. Rev. 48, 240-50)
【0136】
本明細書で提供する実施例は、プロテオグリカン結合モチーフ単独では、抗血管新生効果を導くために十分ではないかもしれないこと、かかる配列(LVFF)に直接隣接しているアミノ酸がAβの抗血管新生活性を仲介するために必要であることを裏付けるものである。Aβオリゴマーの立体構造モデルにおいて、LVFF配列(アミノ酸17−20)は、ペプチドの露出部位であることが示されている(Mathura, et al. 2005 Biochem. Biophys. Res. Commun. 332, 585-92)。
【0137】
Aβ34−42の血管新生促進の影響は、注目されてきた。本明細書記載のネットワークアッセイで観察されるAβ34−42フラグメントの血管新生促進活性は、従前に観察された低濃度でのAβ1−40/42ペプチドの血管新生促進活性と一致する(Paris, et al. 2004 Angiogenesis. 7, 75-85; Cantara, et al. 2004 F.A.S.E.B. J. 18, 1943-5)。Aβのフォールディングは、モノマーとダイマーが形成される場合には、C末端の34−42配列は露出されたままになる。その後、この領域は、高次構造のオリゴマー又は線維形成に埋没されても(buried upon)よい。Aβ1−42の小線維の近年のNMRの研究により、28−42残基は溶媒が到達しにくく、バックボーンのアミドは、重水素交換のために長時間経た後でも、受け入れられないが示された(Olofsson, et al. 2005 J. Biol. Chem. Oct 7, (advance electronic publication))。それゆえ、Aβ1−40/42ペプチドの低濃度での血管新生促進効果は、主として、C末端領域における血管新生促進モチーフを露出しているモノマー又はダイマーの状態によるものであろう(Olofsson, et al. 2005 J. Biol. Chem. Oct 7, (advance electronic publication); Fraser, et al. 1994 J. Mol. Biol. 244, 64-73; van Horssen, et al. 2001 Acta Neuropathol. (Berl). 102, 604-14; Rusnati, M; Presta, M. 1996 Int. J. Clin. Lab. Res. 26, 15-23; Dougher, et al. 1997 Growth Factors. 14, 257-68; Mousa, et al. 2004 Thromb. Haemost. 92, 627-33; Iozzo, et al. 2001 J. Clin. Invest. 108, 349-55; Presta, et al. 2005 Cytokine Growth Factor Rev. 16, 159-78; Sanderson, et al. 2005 J. Cell Biochem. Sep 7, (advance electronic publication))。
【0138】
(併用療法)
一態様では、本明細書で開示しているペプチドフラグメントは、がん、腫瘍又は他の増殖症を治療するために、少なくとも一つの追加化学療法剤を組み合わせて用いてもよい。追加治療薬は、本明細書で開示する組成物と組み合わせて、又は交互に投与してもよい。薬(drug)は、同一の組成物の一部分を形成してもよいし、同時に又は異なる時間に投与するために別個の組成物として提供してもよい。
【0139】
第二治療薬としては、例えば、IL−12、レチノイド、インターフェロン、アンギオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)、サリドマイド、トロンボスポンジン(thrombospondin)−1、トロンボスポンジン−2、カプトプリル(captopryl)や、アルファインターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン(vincristine)、メトトレキセート(methortrexate)及びプレドニゾン))、エトポシド(etoposide)、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン(doxorubicin)、シクロホスファミド、ビンクリスチン、及びデキサメタゾン(dexamethasone))、PRO-MACE/MOPP(プレドニゾン(prednisone)、メトトレキセート(methotrexate)(ロイコビン(leucovin)のレスキュー有)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール(taxol)、エトポシド/メクロレタミン(mechlorethamine)、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン(procarbazine))、ビンクリスチン、ビンブラスチン(vinblastine)、アンギオインヒビン(angioinhibins)、TNP−470、ペントサンポリサルフェート、プレートレットファクター4、アンギオスタチン、LM−609、SU−101、CM−101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP−PG、及びに放射線照射などの抗腫瘍剤を挙げることができるがこれらに制限されない。
【0140】
その他、タキサン(taxane)薬剤(タキソール、パクリタキセル(paclitaxel)、タキソテール(taxotere)、ドセタキセル(docetaxel)等)、ポドフィロトキシン(podophylotoxins)又はビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン(vinblastine))などの微小管調節剤を含む、細胞骨格要素を標的とする薬剤等の抗有糸分裂性(antimitotic)効果を有する他の薬剤(抗有糸分裂阻害剤);代謝拮抗薬剤(antimetabolite drugs)(5-フルオロウラシル、シタラビン(cytarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチン、メトトレキサートなどのプリンアナログなど);アルキル化剤又はナイトロジェンマスタード(ニトロソウレア、 シクロホスファミド又はイフォスフアミド(ifosphamide)など);アントラサイクリン薬剤であるアドリアマイシン(adriamycin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ファルモルビシン(pharmorubicin)又はエピルビシン(epirubicin)などDNAを標的とする薬剤;エトポシドなどのトポイソメラーゼを標的とする薬剤(トポイソメラーゼ阻害剤);エストロゲン、アンチエストロゲン、(タモキシフェン(tamoxifen)及び関連化合物)、並びにアンドロゲン、フルタミド(flutamide)、リュープロレリン(leuprorelin)、ゴセレリン(goserelin)、シプロテロン(cyproterone)又はオクトレオチド(octreotide)などのホルモン及びホルモンアゴニスト又はアンタゴニスト;ハーセプチン(herceptin)などの抗体誘導体を含む腫瘍細胞におけるシグナルトランスダクションを標的とする薬剤;プラチナ薬剤(シスプラチン(cis-platin)、キサリプラチン(oxaliplatin)、パラプラチン) 又はニトロソウレアなどのアルキル化剤;腫瘍転移に潜在的に影響を与えるマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤などの薬剤;遺伝子治療、及びアンチセンス剤;治療抗体;アピリジン(aplidine)等のジデムニン(didemnins)などの他の海洋起源の生物活性化合物;副腎皮質ステロイド;デキサメタゾンなどのステロイドアナログ;非ステロイド剤(アセトアミノフェン又はイブプロフェンなど)又はステロイド及びその誘導剤、特にデクサメタソン及び5HT−3−阻害剤(グラニセトロン又はオンダンセトロンなどを含む抗炎症薬剤を挙げることができる。
【0141】
第二化学療法剤としては、他に以下の表1aに開示される例を挙げることができる。
【0142】
【表3】





【0143】
本明細書で開示するペプチドの有用なアッセイ
【0144】
当該技術分野で公知の血管新生アッセイを用いることができる。例えば、Paris, et al.の米国特許出願2003/0077261A1公報は、ラットの大動脈輪、ウシ、マウス及びヒトの血管新生アッセイについて記載している。
【0145】
Paris, et al.の米国特許出願2003/0077261A1号明細書に記載している、例えば、リング微細血管伸長(ring microvessel outgrowths)の定量化が用いられてもよく、リング培養(ring culture)が、オリンパスBX60顕微鏡に接続されたデジタルビデオカメラを用いて撮影され、伸長エリアが、選択的に測定されて、Image Pro Plusソフトウェアにより検出される。
【0146】
Paris, et al.の米国特許出願2003/0077261A1号明細書に記載している内皮細胞遊走(Endothelial Cell Migration)アッセイを用いてもよく、ヒトの成人の脳の内皮細胞の遊走(migration)が、文献に記載されているように(Soker et al. 1998; Nakamura et al. 1997)、改良型ボイデンチェンバーアッセイ(BDバイオコートマトリジェルインベーションチャンバー)を用いて評価される。
【0147】
例えば、Paris, et al.の米国特許出願2003/0077261A1号明細書に記載されているヌードマウス腫瘍異種移植片(Tumor Xenograft)を用いてもよく、A‐549(ヒト肺腺がん)とU87‐MG(ヒト膠芽細胞腫)細胞とが8週齢の雌ヌードマウスに移植される。動物において成長する腫瘍が、Aβペプチドの治療前、治療後及び治療中に測定される。それぞれのインビボの抗腫瘍研究における最終日に腫瘍が抽出され、微細血管が定量化される。
【0148】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に制限されるものではない。
【0149】
[実施例]
材料と方法は、実施例1〜7において提示される。
【実施例1】
【0150】
(細胞培養と試薬)
インビトロの実験はすべて、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC,VA)から購入した3〜4代継代した一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells)(HUVEC)を用いて行われた。細胞は、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen社製、CA)、0.1mg/mlヘパリン及び0.03mg/ml内皮細胞成長補助剤(endothelial cell growth supplement)(Sigma-Aldrich社製, MO)を補完したF12K培地(ATCC、VA)に培養された。細胞は、37℃にて5%COの存在下で、滅菌細胞培養インキュベーターに常に保持された。
【実施例2】
【0151】
(Aβペプチドの調製)
ペプチドはすべて、依頼の上Biosource社CAで調製され、同社より購入した。凍結乾燥されたペプチド1mgを、β−シート構造の形成を最小化し、α−へリックス二次構造を促進するために、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解した。ペプチドは、化学物質蒸気用ドラフト(chemical fume hood)内で、1時間空気乾燥後、スピードバック(speed-vac)(Thermo-Savant社製、NY)でさらに30分乾燥した。得られた透明被膜は、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に濃度が1mMになるように再懸濁した。ペプチドは、その後等分され(aliquoted)、−80℃にて保存した。
【実施例3】
【0152】
(毛細管形成アッセイ(Capillary Tube Formation Assay))
500μlの培地中のHUVEC(7.5×10細胞/ml)は、24ウェルプレートに、4%血清(Invitrogen社製、CA)、0.1mg/mlヘパリン及び0.03mg/ml内皮細胞成長補助剤(Sigma-Aldrich社製、MO)を含むF12K培地(ATCC、VA)における、マトリジェル基底膜マトリックスの層の表面に播種された。細胞は、ペプチドと共に(又は、コントロール条件で)24時間インキュベートした。コントロールウェルに、ペプチドを希釈するために用いる同容量のビヒクル(vehicle)(DMSO)を添加した。ネットワーク形成実験は3回行われ、少なくとも2つのランダムに選択されたフィールドを、対象の4倍の倍率で、各ウェルについて撮影した。毛細管長(capillary length)は、イメージプロプラスソフトウェア(Image Pro Plus software)(Media Cybernetic, Inc.,社製 MD)を用いて測定された。
【実施例4】
【0153】
HUVEC(ウェル当たり5×10細胞)は、96ウェルプレートに播種された。細胞は、ペプチドと(又はコントロール条件)で24時間インキュベートされた。急速細胞増殖アッセイは、製造者のプロトコール(Biovision Inc.,社製、CA)のとおり行われた。
【実施例5】
【0154】
(細胞付着アッセイ)
HUVEC(ウェル当たり1×10細胞)は、タンパク質複合体の基底膜でプレコートされた96ウェルプレートに播種された。細胞は、ペプチドと(又はコントロール条件)2.5時間インキュベートされた。細胞付着の測定としては、イノサイト(Innocyte)細胞付着アッセイが用いられ(Calbiochem社製、CA)、製造者の指示どおりのプロトコールに従った。
【実施例6】
【0155】
(ラットの角膜マイクロポケットアッセイ(Corneal Micropocket Assay))
このアッセイは、文献記載の通り(Paris D, Townsend K, Quadros A, Humphrey J, Sun J, Brem S, Wotoczek-Obadia M, DelleDonne A, Patel N, Obregon DF, Crescentini R, Abdullah L, Coppola D, Rojiani AM, Crawford F, Sebti SM, Mullan M. (2004) Angiogenesis. 7, 75-85)、VEGF(200ng)のみを含む、又は異なる量のAβペプチドフラグメントと組み合わせたヒドロンペレットを用いて行われた。血管増殖反応は、移植後7日目に測定された。血管伸長(vessel outgrowths)の縦横が測定され、血管新生インデックス(angiogenic index)(AI)がL×W=AIの式を用いて計算された。ラットは、コロイド状炭素でかん流し(perfused)、眼は、除核して(enucleated)10%緩衝ホルマリンで固定した。オリンパスの解剖顕微鏡下で角膜を除去し、クリスタルマウント培地を用いてガラススライド上にマウントした。
【実施例7】
【0156】
(統計学的分析)
統計学的分析は、ウィンドウズ(登録商標)の10.1版のSPSSを用いて、シェフェ又はボンフェローニを用いる事後解析比較のANOVAを用いて行った。
【実施例8】
【0157】
(毛細管形成に対するAβペプチドフラグメントの効果)
多様なAβペプチド及びペプチドフラグメント、例えば、Aβ1−42、Aβ1−40、Aβ1−28、Aβ12−28、Aβ17−28、Aβ25−35、Aβ10−35、Aβ10−16及びAβ34−42)について、1μM、5μM及び10μMで、実施例3記載のアッセイにおいて、毛細管ネットワーク形成の阻害能を試験された。毛細管の全長は、各処理グループ(n≧8)について定量化し、コントロール処理した場合のパーセンテージで表現された(図1参照)。
【0158】
事後分析では、コントロール並びに5μMと10μM用量でのAβ1−40、Aβ1−42、Aβ1−28、Aβ10−35及びAβ12−28の間の顕著な相違が明らかになった(P<0.005)。試験されたペプチドの内、Aβ1−28、Aβ12−28、Aβ10−35、Aβ1−40及びAβ1−42が最も活性があった。Aβ25−35は、5μMにおいてやや活性があったが10μMにおいてはなく、他のペプチド(Aβ10−16、Aβ17−28及びAβ34−42)は、抗血管新生活性を何ら示さなかった(図1参照)。反対に、Aβ34−42は、用量依存的に血管新生を促進した。これらのデータは、Aβペプチドの抗血管新生活性を維持するために必要な最小限の配列は、12−28の残基を含むことを示唆するものである。さらに、Aβ1−28フラグメントが抗血管新生である一方、17−28フラグメント(HHQKモチーフを欠いている)が不活性であるという観察は、残基13−16の間に存在するプロテオグリカン結合領域(HHQK)が、抗血管新生活性のために必要であることを示唆するものである。
【実施例9】
【0159】
(細胞増殖と細胞付着に対するAβペプチドフラグメントの効果)
様々なAβペプチドフラグメントが、それぞれ実施例4及び5に記載しているアッセイを用いて、細胞増殖と基底膜複合体への細胞付着との阻害能について試験された。
【0160】
すべてのペプチド処理は、細胞増殖を顕著に阻害した(P<0.005)。ANOVAは、試験されたいずれのペプチド間においても顕著で、中心的な効果を示さなかった。事後試験(post hoc testing)は、異なるペプチド間に何ら顕著な効果を示さなかった(P>0.005)。試験されたすべてのフラグメントは、HUVECの細胞増殖を阻害することができたのに対し、異なるペプチド間における効力には、ほとんど相違がなかった(図2a参照)。しかしながら、ANOVAと事後試験の両方において、試験されたフラグメントはいずれも、ラミニン、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン及びエンタクチン(entactin)を含む基底膜複合体への細胞付着に顕著な影響を及ぼすことができなかった(P>0.005)(図2b参照)。Aβペプチドフラグメントの抗血管新生活性の相違は、細胞増殖又は細胞付着への効果に関係するものではそれゆえありえなかった。
【実施例10】
【0161】
(毛細管形成におけるヘパリンの効果)
Aβペプチドにおける推定上のヘパリン結合配列の重要性を検証するために、ヘパリンを試料に添加し、実施例3に記載している毛細管形成アッセイを用いて、Aβペプチドの抗血管新生活性を定量化した。
【0162】
毛細管の全長は、各処理グループ(n≧8)について定量化され、コントロール処理をした場合のパーセンテージとして表現された。事後分析により、コントロールと全処理グループとの間、並びに、AβとAβ+ヘパリン500μg/mL(P<0.001)、AβとAβ+ヘパリン1mg/mL(P<0.001)、との間の有意な相違が明らかとなった。ヘパリンの500μg/mLと1mg/mLの添加は、Aβ1−42(図3参照)により誘導される毛細管形成の阻害を効果的に反転させた。ヘパリン単独の添加もまた、わずかな血管新生の阻害を引き起こした。
【実施例11】
【0163】
(毛細管形成に対するプロテオグリカン結合領域変異体Aβペプチドフラグメントの効果)
ヘパリンの添加が、Aβ1−42の抗血管新生活性を反転させたので、ペプチド内のプロテオグリカン結合領域は、抗血管新生活性を与えるために重要であるかもしれないと仮説が立てられていた。この仮説を試験するために、Aβのヘパラン硫酸プロテオグリカンへの結合を阻害することが知られているアミノ酸置換(HHQK(配列番号9)に存在する3つのアミノ酸をGGQG又はAAQAへ置換)(McLaurin et al. Eur. J. Biochem. 2000, 267, 6353-61; Olofssen, et al. J. Biol. Chem 2005, Oct 7, advance electronic publication)が、抗血管新生ペプチドフラグメントの一つ(Aβ1−28)に対して行われた。変異体Aβペプチドフラグメントの効果は、実施例3記載の毛細管形成アッセイにおいてその後試験された。
【0164】
毛細管の全長は、各処理グループ(n≧8)を定量化し、コントロールのパーセンテージとして表現された。ANOVAによると、野生型Aβ1−28の用量依存的な有意な主要な効果が明らかになったが(P<0.001)、Aβ1−28GGQGL(P=0.566)、又はAβ1−28AAQAL(P=0.380)については明らかにならなかった。事後分析により、野生型Aβ1−28は、1μM、5μM及び10μMにおける有意な効果が明らかになったが(P<0.005)、変異体Aβ1−28ペプチドは、いずれの試験濃度においても有意な効果が明らかにならなかった。
【0165】
Aβのプロテオグリカン結合領域におけるアミノ酸置換は、Aβ1−28ペプチドの抗血管新生活性を完全に欠失させた(図4参照)(ペプチド配列のリストについては表2を参照のこと)。
【0166】
【表4】

【実施例12】
【0167】
(毛細管形成に対するLVFF変異体Aβペプチドフラグメントの効果)
HHQK配列のC末端に隣接するVFFアミノ酸配列の役割が、実施例3記載の毛細管形成アッセイにおいて、HHQK配列(表2、フラグメント1〜3)で開始される9アミノ酸からなるペプチドフラグメントを試験することで立証された。
【0168】
毛細管の全長は、各処理グループ(n≧6)を定量化し、コントロールのパーセンテージとして表現された(図1参照)。ANOVAにより、野生型(HHHQKLVFF)の有意な主要な効果が明らかになったが、変異ペプチドについては明らかにならなかった。事後分析により、1μM、5μM及び10μMの有意な効果が明らかになったが(P<0.005)、LVFF変異ペプチドは、いずれの試験濃度においても有意な効果が明らかにならなかった。
【0169】
これらの結果は、HHQKとVFFモチーフとの両方を含むペプチド配列のみが、毛細管形成アッセイにおいて血管新生を阻害することを裏付けるものである(図6参照)。しかしながら、YEVHHQK配列のみを含むAβ10−16フラグメントは不活性であり、この領域単独では、抗血管新生活性には不十分であることを示すものである。
【実施例13】
【0170】
(ラットの角膜マイクロポケットアッセイにおけるAβ12−28ペプチドフラグメントの効果)
インビトロで抗血管新生と思われるAβ12−28ペプチドフラグメントが、インビボでも抗血管新生であるか否かを決定するために、実施例6に記載しているラットの角膜マイクロポケットアッセイにより試験された。角膜マイクロポケットは、7日間インキュベートされた。200ngのVEGF、VEGF+0.5μgAβ12−28、VEGF+2.5μgAβ12−28及びVEGF+5.0μgAβ12-28に反応するラットの角膜マイクロポケットアッセイからのデータの数量化である。ANOVAにより、Aβ投与の有意な主要な(main)効果が明らかになり、事後分析により、5μg用量(P<0.001)の有意な効果が明らかになった。血管新生インデックスは、平均+/−SEMとしてあらわされる。
【0171】
これらの結果は、Aβ12−28が、このインビトロアッセイにおいてVEGFにより誘導される血管新生を用量依存的に阻害することができることを支持し(図7参照)、インビトロの実験データを裏付けるものである。
【実施例14】
【0172】
(ラットの角膜マイクロポケットアッセイにおけるAβ12−28、Aβ12−28変異体及びAβ13−20の効果)
実施例6に記載のラットの角膜マイクロポケットアッセイにより、様々なAβペプチドフラグメント及び変異体の効果が試験された。200ngのVEGF、5.0μgのAβ12−28GGQGL変異体ペプチド、並びに0.5μg、2.5μg及び5.0μgのAβ12−28及びAβ13−20(HHH−ペプチド又はHHQKLVFF)に対する反応におけるアッセイによるデータを数量化した。Aβ12−28GGQGL変異体は、インビボでの血管新生の阻害について不活性であった。より短いHHHペプチドは、インビボで抗血管新生であると思われる(P<0.05用量依存的に)。結果を図8に示す。毛細管が4倍に拡大された写真を図9に示す。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】実施例8記載の様々なAβペプチドフラグメントの0μM、1μM、5μM及び10μM用量における、毛細管の全長をコントロール処理した場合のパーセンテージとして示したグラフである。
【図2】図2Aと図2Bは、実施例9記載の様々なAβペプチドフラグメントとのインキュベート後のHUVEC試料の細胞増殖と細胞付着のチャートをコントロール処理した場合のパーセンテージとして示したグラフである。
【図3】実施例10記載のヘパリン(0.5又は1mg/ml)、Aβ1−42ペプチド、Aβ+ヘパリン(500μg/ml)、及びAβ+ヘパリン(1mg/ml)で処理した毛細管の全長を、コントロール処理した場合のパーセンテージとして示したチャートである。
【図4】実施例11記載の0、1、5及び10μMの用量のAβ1−28、Aβ1−28GGQGL、及びAβ1−28AAQALについて、毛細管の全長をコントロール処理した場合のパーセンテージとして示したグラフである。
【図5】実施例11記載のAβペプチドフラグメントとのインキュベート後に形成された毛細管の写真を示す(4倍)。
【図6】実施例12記載の0、1、5及び10μMの用量のペプチド、HHHQKLVFF、VHHQKLVII、VHHQKLVKKについて、毛細管の全長をコントロール処理した場合のパーセンテージとして示したグラフである。
【図7】実施例13記載の200ngのVEGF、VEGF+0.5μgAβ12−28、VEGF+2.5μgAβ12−28、及びVEGF+5.0μgAβ12−28に反応するラット角膜マイクロポケットアッセイの血管新生インデックス(AI)を示すチャートである。
【図8】実施例14記載のVEGF、5μgのAβ1−28GGQGL、並びに0.5μg、2.5μg、及び5.0μgのAβ1−28とHHH−ペプチド(HHHQKLVFF)に反応するラット角膜マイクロポケットアッセイの血管新生インデックス(AI)を示すチャートである。
【図9】実施例14記載の、VEGFコントロール、並びに0.5μg、2.5μg、及び5.0μgのAβ12−28を含む、7日間のインキュベート後のラット角膜マイクロポケットの代表的な写真である。
【図10−1】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−2】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−3】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−4】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−5】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−6】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。
【図10−7】Paris et al.の米国特許番号2003/0077261号記載のA−ベータペプチドとAPP、及びこれらのコードする核酸の配列表を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8〜39のアミノ酸長のフラグメント、又はその変異型若しくはホモログであることを特徴とする抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項2】
フラグメントが、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39アミノ酸長であることを特徴とする、請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項3】
フラグメントが、Aβ1−28、Aβ10−35、Aβ12−28又はAβ13−20であることを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項4】
フラグメントが、Aβ12−28であることを特徴とする請求項3記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項5】
フラグメントが、Aβ13−20であることを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項6】
Aβ12−28フラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログを含むことを特徴とする請求項5記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項7】
Aβ13−20ペプチドフラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログであることを特徴とする請求項5記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項8】
変異型又はホモログが、天然型Aβペプチドフラグメントと約80.0%〜約99・9%のアミノ酸同一性を示すことを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項9】
フラグメントが、少なくとも一つのアミノ酸置換を含む変異型であることを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項10】
置換するアミノ酸が、非天然型アミノ酸又はアミノ酸アナログであることを特徴とする請求項9記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項11】
リンカーをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項12】
フラグメントが、二番目のペプチド又はタンパク質と連結していることを特徴とする請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント。
【請求項13】
請求項1記載の抗血管新生Aβペプチドフラグメント及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物が、放出制御製剤であることを特徴とする請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
放出制御製剤が、ポリマーマトリックスであることを特徴とする請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
生物学的に活性なAβペプチドフラグメント、又はその変異型若しくはホモログの有効量を必要とする対象に投与することを含み、前記フラグメントが、8〜39アミノ酸長であることを特徴とする病的血管新生が介在する病気又は障害の治療方法。
【請求項17】
フラグメントが、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39アミノ酸長であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
フラグメントが、Aβ1−28であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
フラグメントが、Aβ10−35であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項20】
フラグメントが、Aβ12−28であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項21】
フラグメントが、Aβ13−20であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項22】
フラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログであることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項23】
病気又は障害が、がんであることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項24】
病気又は障害が、増殖性障害であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項25】
病気又は障害が、炎症性障害であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項26】
対象が、ほ乳類であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項27】
対象が、ヒトであることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項28】
生物学的に活性なAβペプチドフラグメントが、経口、非経口、静脈内、動脈内、経肺、粘膜、局所性、経皮、皮下、筋肉内、直腸、頭蓋内、脳室内、大脳内、膣内、子宮内、髄腔内又は腹腔内への投与からなる群から選択される経路によって投与されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項29】
生物学的に活性なAβペプチドフラグメントが、医薬的に許容される担体と組み合わせて対象に投与されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項30】
Aβペプチドフラグメントが、放出制御製剤として対象に投与されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項31】
放出制御製剤が、ポリマーマトリックスを含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項32】
1又は複数の追加治療薬を、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントと組み合わせて又は交互に投与することをさらに含むことを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項33】
追加治療薬が、化学療法剤であることを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
追加治療薬を、融合ペプチドとして患者に投与することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項35】
生物学的に活性なAβペプチドフラグメント、又はその変異型若しくはホモログの有効量を必要とする対象に投与することを含み、前記フラグメントが、8〜39アミノ酸長であることを特徴とするがんを治療する方法。
【請求項36】
フラグメントが、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39アミノ酸長であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項37】
フラグメントが、Aβ1−28、Aβ10−35、Aβ12−28及びAβ13−20からなる群から選択されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項38】
フラグメントが、Aβ13−20であることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】
Aβ13−20ペプチドフラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログであることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
がんが、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、大腸がん及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択されることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項41】
対象が、ほ乳類であることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項42】
対象が、ヒトであることを特徴とする請求項35記載の方法。
【請求項43】
1又は複数の追加治療薬剤を投与することをさらに含むことを特徴とする、請求項35記載の方法。
【請求項44】
追加治療薬剤が、化学療法剤であることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
化学療法剤が、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、副腎皮質ステロイド阻害剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項44記載の方法。
【請求項49】
Aβが誘導する血管新生阻害を妨害する組成物を同定する方法であって、
(a)血管新生を起こすことができる第一生体試料を、被検化合物と、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントと、血管新生剤とに接触させるステップ;と
(b)第一生体試料において起こる血管新生の程度を測定するステップ;
とを含む方法。
【請求項50】
(c)血管新生を起こすことができる第二生体試料を、生物学的に活性な量のAβペプチドフラグメントと、血管新生剤とに別個に接触させるステップ;と
(d)第二生体試料において起こる血管新生の程度を測定するステップ;と
(e)第一生体試料において起こる血管新生の程度と第二生体試料において起こる血管新生の程度とを比較するステップ;と
をさらに含む請求項49記載の方法。
【請求項51】
病的血管新生と関連する病気又は障害を治療するための薬物の製造において、任意で医薬的に許容される担体における、生物学的に活性なAβペプチドフラグメントの使用であって、該フラグメントが、8〜39のアミノ酸長のフラグメント又はそれらの変異型若しくはホモログであることを特徴とする使用。
【請求項52】
フラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログを含むAβ12−28フラグメントであることを特徴とする、請求項51記載の使用。
【請求項53】
ペプチドフラグメントが、アミノ酸配列HHQKLVFF又はその変異型若しくはホモログを有することを特徴とする請求項51記載の使用。
【請求項54】
医薬的に許容可能な担体が、経口、非経口、静脈内、動脈内、経肺、粘膜、局所性、経皮、皮下、筋肉内、直腸、頭蓋内、脳室内、大脳内、膣内、子宮内、髄腔内又は腹腔内への投与からなる群から選択される経路によって投与されることを特徴とする請求項51記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【公表番号】特表2009−516654(P2009−516654A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540237(P2008−540237)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/043921
【国際公開番号】WO2007/059000
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508121603)ロスキャンプ リサーチ, エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】ROSKAMP RESEARCH, LLC
【Fターム(参考)】