AAVベクターの対流増加送達
【課題】被検体の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供すること。
【解決手段】被検体に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、対流増加送達(CED)を介してrAAVビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでrAAVビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。CEDは、例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプのいずれかを使用することによって実施され得る。
【解決手段】被検体に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、対流増加送達(CED)を介してrAAVビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでrAAVビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。CEDは、例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプのいずれかを使用することによって実施され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、ウイルスベクターのCNSへの効率的な送達に関する。より詳細には、本発明は、中枢神経系(CNS)障害(特に、神経伝達物質であるドパミンに関与する中枢神経系障害)の処置のための遺伝子治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
CNS障害は、主な公衆衛生問題である。パーキンソン病(PD)のみで、合衆国において100万人を超える人々が罹患している。臨床的に、PDは、突発的な運動、歩行困難、体位不安定性、硬直、および震えにおける減少によって特徴付けられる。パーキンソン病は、ドパミンの有効性の減少をもたらす脳の黒質における色素沈着ニューロンの変性によって引き起こされる。ドパミンの変性した代謝はまた、脳の特定領域におけるドパミンの増大を示す神経分裂病患者においても関係している。
【0003】
現在、多くのCNS障害(例えば、PD)は、治療剤の全身投与によって処置される。しかし、全身投与はしばしば、血液脳関門を通過するための薬物の不能性が理由で、そして多くの薬物は末梢性の副作用を引き起こすので、有効ではない。従って、多くの潜在的に有用な化合物(例えば、タンパク質)は、全身的に投与され得ない。これらの化合物が血液脳関門を貫通する際に首尾よい場合、これらはまた、中枢神経系の副作用もまた誘導し得る。現在、PDの処置は、しばしば、ドパをドパミンへと脱カルボキシル化させる酵素である芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)の末梢インヒビターであるカルビドパのような化合物との組み合わせにおける、ドパミン前駆体であるL−ドパの経口投与を含む。しかし、患者の大半において、罹患した脳領域におけるAADCの生成は、PDの進行につれて減少し、結果として、より多用量のL−ドパが必要とされ、患者の治療的効果を減少させ、そして副作用を増大させる。
【0004】
現在の全身的療法の制限を考慮すると、遺伝子送達は、PDのようなCNS障害の処置のための有望な方法である。遺伝子移入目的のために多くのウイルスに基いた系が記載されている(例えば、この目的のために現在最も広範に使用されるウイルスベクター系であるレトロウイルス系)。種々のレトロウイルス系の説明については、例えば、特許文献1;非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;ならびに、非特許文献5を参照のこと。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)系は、遺伝子治療における使用のための優れた候補として存在する。AAVは、Dependovirus属に属するヘルパー依存性DNAパルボウイルスである。AAVは、増殖性感染を起こすために、無関係のヘルパーウイルス(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、または痘疹のいずれか)との感染を必要とする。ヘルパーウイルスは、AAV複製の大半の工程に必要である付属機能(accessory function)を供給する。AAVの概説については、例えば、非特許文献6を参照のこと。
【0006】
AAVは広範な組織に感染し、そして他のウイルスベクターで観察された、動物モデルにおける細胞傷害性効果および有害な免疫反応を誘発しなかった(例えば、非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13を参照のこと)。AAVは、非分裂組織を形質導入し得るので、AAVは、遺伝子を中枢神経系(CNS)に送達するために十分に適合され得る。特許文献2は、AAVベクターを作製する方法を記載する。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にある治療用遺伝子を含むAAVベクターは、哺乳動物の脳を形質導入すること、および疾患のモデルにおいて機能的効果を有することが示されている。
【0007】
導入遺伝子を保有するAAVベクターは、例えば、非特許文献14;特許文献3(1995年10月26日公開);特許文献4(1995年12月21日公開);非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17に記載されている。しかし、AAVベクターのCNSへの送達は、困難であることが証明されている。AAVは、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子をマウスの実験的神経膠腫に移入させるために使用されており、そしてAAV−tkが、ガンシクロビルの細胞殺傷効果に対してこれらの脳腫瘍を感受性にさせる能力が実証されている。非特許文献18;非特許文献19。ヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)遺伝子(アミノ酸チロシンのドパへの変換に関与する酵素)を含むAAV−CMVベクターの、成体ラット脳への注入は、ニューロンおよびグリアの両方の形質導入をもたらした(非特許文献20;非特許文献21)。同じベクターのサル線条への送達は、2.5ヶ月までの間に強力なTH発現をもたらした(Duringら、前出)。さらに、AAV−CMV−THは、パーキンソン病のげっ歯目モデルにおいて試験され、ここでこれは6−ヒドロキシドパミン病変ラットの回転挙動において有意な改善を引き起こした(非特許文献22;非特許文献23)。
【0008】
しかし、これらがCNSを標的化するためのAAVの可能性を実証するような報告である一方で、それらはまた、CNSへのAAVベクターの直接的注射が、限られた数のトランスフェクトされた細胞をもたらし、そしてこのトランスフェクトされた細胞が注射経路付近の狭い領域に集中発生することを実証した(例えば、Duringら、前出;Fanら、前出を参照のこと)。CNSへの複数回の注射は、所望されない合併症を引き起こすので、最少数の注射部位を使用して脳のより広い領域にAAVベクターを送達する方法についての必要性が残存する。さらに、注射されるベクターの用量と脳組織におけるその得られる分布との間の関係は、以前に報告されていない。
【0009】
さらに、PDの遺伝子治療は、ドパミン合成に関与する酵素をコードする少なくとも2つの遺伝子(すなわち、THおよびAADC)の送達に集中されてきた。これらの方法は、上記に議論された送達問題のすべての対象であり、そしてさらに、これらの方法は、両方の遺伝子が適切な量で発現されることを必要とする。従って、L−ドパと組み合わせてAAV−AADCを使用するPDの処置もまた、実証されていない。
【特許文献1】米国特許第5,219,740号明細書
【特許文献2】米国特許第5,677,158号明細書
【特許文献3】国際公開第95/28493号パンフレット
【特許文献4】国際公開第95/34670号パンフレット
【非特許文献1】MillerおよびRosman(1989)BioTechniques 7:980-990
【非特許文献2】Miller,A.D.(1990)Human Gene Therapy 1:5-14
【非特許文献3】Scarpaら、(1991)Virology 180:849-852
【非特許文献4】Burnsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037
【非特許文献5】Boris−LawrieおよびTemin(1993)Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109
【非特許文献6】BernsおよびBohenzky(1987)Advances in Virus Research(Academic Press,Inc.)32:243−307
【非特許文献7】Muzyczka(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97−129
【非特許文献8】Flotteら(1993)PNAS USA 90:10613−10617
【非特許文献9】Kass−eiserら(1992)Gene Therapy 1:395−402
【非特許文献10】Yangeら、PNAS USA 91:4407−4411
【非特許文献11】Conradら(1996)Gene Therapy 3:658−668
【非特許文献12】Yangら(1996)Gene Therapy 3:137−144
【非特許文献13】Brynesら(1996)J.Neurosci.16:3045−3055
【非特許文献14】Kaplittら(1994)Nature Genetics 8:148−153
【非特許文献15】Duringら(1998)Gene Therapy 5:820−827
【非特許文献16】Mandelら(1998)J.Neurosci.18:4271−4284
【非特許文献17】Szcypkaら(1999)Neuron 22:167−178
【非特許文献18】Okadaら(1996)Gene Therapy 3:959−964
【非特許文献19】Mizunoら(1998)Jpn.J.Cancer Res.89:76−80
【非特許文献20】Kaplittら(1995)VIRAL VECTORS、GENE THERAPY AND NEUROSCIENCE APPLICATION、KaplittおよびLoewy編、12:193−210、Academic Press、San Diego
【非特許文献21】Bankiewiczら(1997)Exper.Neurol.144:147−156
【非特許文献22】Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527−2537
【非特許文献23】Mandelら(1997)PNAS USA 94:14083−14088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検体の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、対流増加送達(convention−enhanced delivery)(CED)を使用する、被検体(例えば、ヒト)の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えAAV(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供する。CEDは、例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプのいずれかを使用することによって実施され得る。好ましい実施態様において、導入遺伝子は、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)またはその活性フラグメントをコードする。この導入遺伝子がAADCをコードする場合、CNSの線条内へrAAVビリオンを投与することが好ましい。
【0012】
別の局面において、本発明は、組換えAAVビリオンをCNS障害を有する被検体に送達するための方法を提供する。rAAVビリオンは、適切な治療用ポリペプチドをコードし、そしてCEDを使用して被検体のCNSに投与される。好ましい実施態様において、CNS障害は、パーキンソン病(PD)であり、rAAVビリオンは、CNSの線条に投与され、そしてこの核酸配列は、AADCをコードする。
【0013】
別の局面においては、被検体における神経変性疾患を処置するための方法が提供される。形質導入された細胞において発現可能な治療用核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンの調製物は、対流増加送達(CED)を使用して、CNSに投与される。1つの実施態様において、神経変性疾患はPDであり、そして治療用ポリペプチドはAADCである。なお別の実施態様において、神経変性疾患を処置する方法はまた、少なくとも1つのさらなる治療用化合物を被検体に投与する工程、例えば、L−ドパおよび必要に応じてカルビドパを、全身的に投与する工程を含む。
【0014】
なお別の局面において、被検体のCNSにおけるドパミン活性のレベルを測定する方法が提供される。標識されたトレーサが、被検体に投与される。トレーサは、好ましくは、ドパミンを利用する細胞に結合する化合物であり、そして標識は、好ましくは、ラジオアイソトープ(例えば、6−[18F]−フルオロ−L−m−チロシン(18F−FMT))である。標識の検出は、トレーサの結合を介したドパミン活性の指標である。好ましくは、例えば、陽子射出断層撮影法(PET)走査を使用することによって、被検体のCNSは画像化される。
【0015】
神経変性疾患を処置する方法における使用のための、第1および第2の医薬の製造における第1および第2の治療用化合物の使用(ここで、第1の医薬は、治療用ポリペプチドをコードする導入遺伝子を含有する組換えAAV(rAAV)ビリオンを含み、この第1の医薬は、対流増加送達(CED)によって被検体に投与され、そしてここでこの第2の医薬は、被検体に全身的に投与される治療用化合物を含む)もまた、提供される。
【0016】
本発明はさらに、以下の項目を提供する。
(項目1) 被検体に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、この方法は、対流増加送達(CED)を介してrAAVビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでrAAVビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。
(項目2) 上記投与する工程が、浸透圧ポンプを使用して実施される、項目1に記載の方法。
(項目3) 上記投与する工程が、注入ポンプを使用して実施される、項目1に記載の方法。
(項目4) 上記核酸配列が、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードする、項目1に記載の方法。
(項目5) 上記被検体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目6) 上記rAAVビリオンが、線条内に投与される、項目1に記載の方法。
(項目7) CNS障害を有する患者に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、方法は対流増加送達(CED)を介してビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。
(項目8) 上記CNS障害がパーキンソン病であり、上記rAAVビリオンが線条内に投与され、ここで上記核酸配列がAADCをコードする、項目7に記載の方法。
(項目9) 被検体における神経変性疾患を処置するための方法であって、方法は以下:
(a)組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを含有する調製物を提供する工程であって、ここで上記ビリオンが形質導入される細胞において発現して、被検体に治療的効果を提供し得る核酸配列を含んでいる、工程;および、
(b)対流増加送達(CED)を使用して被検体のCNSに調製物を送達する工程であって、ここでビリオンが神経細胞を形質導入し、そして核酸配列が発現されて、神経変性疾患を処置するために適切な治療的効果を被検体において提供する、工程、
を包含する、方法。
(項目10) 上記神経変性疾患がパーキンソン病である、項目9に記載の方法。
(項目11) 形質導入される細胞において発現され得る上記核酸配列が、AADCまたはその機能的フラグメントをコードする、項目9に記載の方法。
(項目12) 上記被検体に少なくとも1つのさらなる治療用化合物を投与する工程をさらに包含する、項目9〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13) 上記少なくとも1つのさらなる治療用化合物が、L−ドパである、項目12に記載の方法。
(項目14) L−ドパ、および必要に応じてカルビドパを上記被検体に投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目15) 被検体の脳におけるドパミン活性のレベルを測定する方法であって、方法は、以下;
(a)被検体に標識されたトレーサを投与する工程であって、ここで細胞に対するトレーサの結合がドパミン活性の指標である、工程;および、
(b)標識されたトレーサを結合する細胞の数を測定するために被検体の脳を画像化する工程であって、これによって被検体の脳におけるドパミン活性のレベルを測定する工程、
を包含する、方法。
(項目16) 上記標識されたトレーサが、6−[18F]−フルオロ−L−m−チロシン(18F−FMT)である、項目15に記載の方法。
(項目17) 上記画像化が、陽子射出断層撮影法(PET)画像化である、項目15に記載の方法。
(項目18) 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを含む調製物を被検体の頭蓋腔に送達するための、対流増加送達(CED)の使用。
(項目19) 上記CEDが浸透圧ポンプまたは注入ポンプである、項目18に記載の使用。
(項目20) 神経変性疾患の処置のための第1医薬の調製における導入遺伝子を保有するrAAVビリオンの使用であって、ここで該第1医薬は、神経変性疾患を患う被験体のCNS内に対流増加送達(CED)を介して送達される、使用。
(項目21) 神経変性疾患を処置する方法における使用のための第1医薬および第2医薬の製造における、第1治療化合物および第2治療化合物の使用であって、ここで、この第1医薬は治療性ポリペプチドをコードする導入遺伝子を包含する組換えAAV(rAAV)ビリオンを含み、この第1医薬は対流増加送達(CED)によって被験体に投与され、そしてここで、この第2医薬は被験体に全身性に投与される治療化合物を含有する、使用。
(項目22) 上記神経変性疾患がパーキンソン病である、項目21に記載の使用。
(項目23) 上記導入遺伝子が芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)である、項目21〜22のいずれか1つに記載の使用。
(項目24)第2医薬がL−ドパ、および必要に応じてカルビドパを含有する、項目21〜23のいずれか1つに記載の使用。
(項目25) 上記CEDが浸透圧ポンプまたは注入ポンプである、項目21〜24のいずれか1つに記載の使用。
(項目26) 上記第1医薬が線条に送達される、項目21〜25のいずれか1つに記載の使用。
【0017】
本発明のこれらおよび他の実施態様は、本明細書中の開示を考慮して、当業者に容易に考え付く。
【発明の効果】
【0018】
被検体の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に指示がなければ、当該分野の技術範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学、および組換えDNA技術の従来の方法を使用する。このような技術は、参考文献に十分に説明される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(最新版);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、最新版);DNA Cloning:A Practical Approach,第IおよびII巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編,最新版);Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);CRC Handbook of Parvoviruses,第IおよびII巻(P.Tijessen編);Fundamental Virology,第2版,第IおよびII巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。
【0020】
本明細書および添付の請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に他を指示しない限り、複数の表示を含む。
【0021】
(定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が用いられ、そして以下に示すように定義されることが意図される。
【0022】
「遺伝子移入」または「遺伝子送達」は、宿主細胞に外来DNAを確実に挿入するための方法または系をいう。このような方法は、組み込まれていない移入DNAの一過性発現、移入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製および発現、または宿主細胞のゲノムDNAへの移入された遺伝子材料の組み込みを生じ得る。遺伝子移入は、後天性疾患および遺伝性疾患の処置への独特のアプローチを提供する。多くの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、米国特許第5,399,346号を参照のこと。
【0023】
「ベクター」とは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのような、任意の遺伝エレメントを意味する。これは適切な制御エレメントと結合した場合に複製可能であり、そして細胞間で遺伝子配列を移入し得る。従って、この用語はクローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。
【0024】
「組換えウイルス」とは、例えば、粒子への異種核酸構築物の付加または挿入によって、遺伝的に改変されているウイルスを意味する。
【0025】
「AAVビリオン」とは、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVキャプシドタンパク質コートと結合した直鎖状の一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子を意味する。これに関して、相補的センス(例えば、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖)のいずれかの一本鎖AAV核酸分子は、任意の1つのAAVビリオンにパッケージされ得、そして両鎖は等しく感染性である。
【0026】
「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、本明細書中では、両側にAAV ITRが隣接している目的の異種核酸配列をキャプシド化している、AAVタンパク質外皮から構成される感染性の複製欠損性ウイルスとして定義される。rAAVビリオンは、その中に導入されるAAVベクター、AAVヘルパー機能、および付属機能を有している適切な宿主細胞において産生される。この様式において、宿主細胞は、引き続く遺伝子送達のために、AAVベクター(目的の組換えヌクレオチド配列を含む)を感染性組換えビリオン粒子にパッケージするために必要なAAVポリペプチドをコードし得るようにされる。
【0027】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みをいうために使用され、そして細胞は、外因性DNAが細胞膜内部に導入された場合に「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技術が、一般に当該分野で公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、ElsevierおよびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術は、適切な宿主細胞内に1つ以上の外因性DNA部分(例えば、ヌクレオチド組み込みベクターおよび他の核酸分子)を導入するために使用され得る。
【0028】
用語「宿主細胞」は、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、アクセサリ機能ベクター、または他の移入DNAのレシピエントであり得るか、レシピエントであったか、またはレシピエントとして使用される、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を示す。この用語は、トランスフェクトされた本来の細胞の子孫を含む。従って、本明細書中で使用される「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞をいう。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な変異に起因して、本来の親細胞と、形態学においてもしくはゲノムにおいて、または全体的なDNAの相補性において必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0029】
本明細書中で使用される用語「細胞株」は、インビトロでの継続的または延長された増殖および分裂を行い得る細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の祖先細胞に由来するクローン集団である。自発的または誘導された変化が、このようなクローン集団の保存または移動の間に核型において生じ得ることは当該分野でさらに公知である。従って、この細胞株由来の細胞は、祖先細胞または培養物と正確に同一でなくてもよいといわれ、そしてこの細胞株は、このような改変体を含むといわれる。
【0030】
用語「異種」は、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常はともに連結されていない、および/または特定の細胞と通常は関連していない配列を示す。従って、核酸構築物またはベクターの「異種」領域は、他の分子に関連して天然では見出されない別の核酸分子の内の、またはこれに結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の異種領域は、コード配列に関連して天然では見出されない配列に隣接したコード配列を含み得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然で見出されない構築物である(例えば、ネイティブの遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、細胞内に通常は存在しない構築物で形質転換した細胞は、本発明の目的のために異種であると考えられる。対立遺伝子改変または天然に存在する変異事象は、本明細書で使用されるように、異種DNAを生じない。
【0031】
「コード配列」または特定のタンパク質を「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下におかれる場合、インビトロまたはインビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)そして翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端での開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端での翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、原核生物または真核生物のmRNAからのcDNA、原核生物または真核生物のDNAからのゲノムDNA配列、およびさらに合成DNA配列を包含し得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常コード配列の3’側に位置する。
【0032】
「核酸」配列とは、DNA配列またはRNA配列をいう。この用語は、例えば、以下のDNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含むが、これらに限定されない配列を表す:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン(aziridinylcytosine)、プソイドイソシトシン(pseudoisocytosine)、5−(カルボキシヒドロキシル−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル(methylpseudouracil)、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
【0033】
用語、DNA「制御配列」とは、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的にいい、これはレシピエント細胞においてコード配列の複製、転写、および翻訳を集合的に提供する。選択されたコード配列が適切な宿主細胞において複製、転写、および翻訳され得る限り、これらの制御配列のすべてが常に存在する必要はない。
【0034】
用語「プロモーター領域」は、通常の意味において、調節配列が、RNAポリメラーゼと結合し得、そして下流の(3’方向)コード配列の転写を開始し得る遺伝子由来であるDNA調節配列を含むヌクレオチド領域をいうために、本明細書中で使用される。
【0035】
「作動可能に連結される(た)」とは、このように記載された成分がそれらの通常の機能を行うように構成されている、エレメントの配置をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらし得る。制御配列は、それらがその発現に指向するように機能する限り、コード配列と連続する必要はない。従って、例えば、介在性の非翻訳であるが転写される配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてプロモーター配列は、コード配列となお「作動可能に連結される」と考えられ得る。
【0036】
「単離される(た)」により、ヌクレオチド配列をいう場合、同じ型の他の生物学的高分子の実質的非存在下で示された分子が存在することが意味される。従って、「特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子」とは、対象となるポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいう;しかし、この分子は、組成物の基本的な特徴に有害な影響を及ぼさない、いくつかのさらなる塩基または部分を含んでいてもよい。
【0037】
本出願全体を通して、特定の核酸分子におけるヌクレオチド配列の相対的位置を記載する目的で、例えば、特定のヌクレオチド配列が別の配列に関して「上流」、「下流」、「3’」、または「5’」に配置されると記載される場合、これは、当該分野において慣習的にそのようにいわれる、DNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖における配列の位置であると理解される。
【0038】
「遺伝子」とは、転写または翻訳された後に、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードし得る少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドをいう。本明細書中に記載される任意のポリヌクレオチド配列を使用して、それらが関連する遺伝子のより大きなフラグメントまたは全長コード配列を同定し得る。より大きなフラグメント配列を単離する方法は当業者に公知である。
【0039】
2つの核酸フラグメントは、本明細書中に記載されるように「選択的にハイブリダイズ」すると考えられる。2つの核酸分子の間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一な核酸配列は、完全に同一な配列が標的分子にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する。完全に同一の配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知のハイブリダイゼーションアッセイを使用して評価され得る(例えば、サザンブロット、ノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor、N.Y.を参照のこと)。このようなアッセイは、選択性の変化する程度を使用して、例えば、低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまで変化する条件を使用して行われ得る。低ストリンジェンシーの条件が使用される場合、非特異的結合の非存在が、部分的程度の配列同一性すら欠如する二次プローブ(例えば、標的分子と約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を使用して評価され得、その結果、非特異的結合事象の非存在下では二次プローブは、標的にハイブリダイズしない。
【0040】
ハイブリダイゼーションベースの検出系が利用される場合、標的核酸配列に相補的な核酸プローブ、次いで、このプローブおよび標的配列が、ハイブリッド分子を互いに形成するように「選択的にハイブリダイズする」か、または結合する適切な条件の選択により選択される。「中程度にストリンジェント」な条件下で標的配列に選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、代表的に、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、代表的に、選択された核酸プローブの配列と約90〜95%を超える配列同一性を有する、少なくとも約10〜14のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブ/標的ハイブリダイゼーションのために有用な、プローブおよび標的が特異的程度の配列同一性を有するハイブリダイゼーション条件は、当該分野で公知であるとおり、決定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach、B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Pressを参照のこと)。
【0041】
ハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件に関しては、多くの等価な条件を使用して、例えば、以下の因子を変化させることにより特定のストリンジェンシーを確立し得ることは、当該分野で周知である:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメーター、ならびに洗浄条件を変化させること。特定のハイブリダイゼーション条件のセットの選択は、当該分野で選択された以下の標準的な方法である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
【0042】
用語「芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ」または「AADC」とは、ドパをドパミンにカルボキシル基を除去するポリペプチドをいう。従って、この用語は、全長AADCポリペプチド、その活性なフラグメントまたは機能的ホモログを含む。
【0043】
所定のポリペプチドの「機能的ホモログ」または「機能的等価物」とは、ネイティブなポリペプチド配列から誘導された分子、ならびに組換え生成されたか、または化学合成されたポリペプチドを含む。これらは、所望の結果を達成するように参照分子と類似の様式で機能する。従って、AADCの機能的ホモログは、活性の完全性が残存する限り、それらのポリペプチドの誘導体およびアナログを含む−そのアミノ末端もしくはカルボキシ末端の内部でまたはそれらの末端で生じる任意の単一のまたは複数のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含む。
【0044】
核酸およびアミノ酸の「配列同一性」または「相同性」を決定するための技術もまた、当該分野で公知である。代表的には、このような技術は、遺伝子についてのmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされたアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列と第2のヌクレオチドもしくはアミノ酸配列とを比較することを含む。一般に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列の、ヌクレオチド対ヌクレオチドもしくはアミノ酸対アミノ酸のそれぞれの正確な対応をいう。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「パーセント同一性」を決定することにより比較され得る。2つの配列のパーセント同一性(核酸またはアミノ酸の配列にかかわらず)は、2つの整列された配列間の正確なマッチの数をより短い配列の長さで割って、そして100を乗じた数である。核酸配列の適切な整列は、SmithおよびWaterman、Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff、Atlas of Protein Sequences and Structure、M.O.Dayhoff編、5増補、3:353−358、National Biomedical Research Foundation、Washington,DC.USAにより開発されたスコアリングマトリクスを使用する事によりアミノ酸配列に適用され得、そしてGribskov、Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により正規化され得る。配列のパーセント同一性を決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実行は、Genetics Computer Group(Madison,WI)により、「BestFit」ユーティリティーアプリケーションにおいて提供される。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual、バージョン8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)に記載される。本発明の文脈でパーセント同一性を確立する好ましい方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発され、University of Edinburghにより著作権保護され、そしてIntelliGenetics,Inc(Mountain View,CA)により配給されるMPSRCHプログラムパッケージを使用することである。総合ソフトウェアパッケージから、Smith−Watermanアルゴリズムは、デフォルトパラメーター(例えば、gap open penaltyが12、gap extension penaltyが1、およびgapが6)がスコアリング表のために使用される場合に利用され得る。生成したデータから、「Match」値は、「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を算出するための他の適切なプログラムは、一般的に、当該分野で公知である(例えば、別の整列プログラムは、BLASTであり、デフォルトパラメーターが使用される)。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用され得る:genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non−redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見出され得る:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLAST。
【0045】
あるいは、相同性は、相同な領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、次いで、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、そして消化したフラグメントのサイズ決定により決定され得る。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、上記の方法を使用して決定されるように、これらの配列が、規定された長さの分子に対して少なくとも約80〜85%、好ましくは、少なくとも約90%、そして最も好ましくは、少なくとも約95〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される実質的に相同は、特定されたDNA配列またはポリペプチド配列に完全な同一性を示す配列もいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定のシステムについて規定されるストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当業者の技術範囲内である。例えば、Sambrookら、前出;DNA Cloning、前出;Nucleic Acid Hybridization、前出を参照のこと。
【0046】
「対流増加送達(Convection−enhanced delivery)」とは、薬剤の任意の非手動送達をいう。本発明の文脈において、AAVの対流増加送達(CED)の例は、注入ポンプまたは浸透圧ポンプにより達成され得る。
【0047】
用語「中枢神経系」または「CNS」は、脳の全ての細胞および組織ならびに脊椎動物の脊髄を含む。従って、この用語は、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(cereobrospinal fluid)(CFS)、間隙腔、骨、軟骨などを含むが、これらに限定されない。「頭蓋腔」とは、頭蓋(skull)(頭蓋(cranium))の下部の領域をいう。CNSの領域は、種々の行動および/または機能と関連している。例えば、脳の脳幹神経節は、運動機能(特に随意運動)と関連している。脳幹神経節は、6つの対形成した核から構成される:尾状核、被殻、淡蒼球(globus pallidus)(または淡蒼球(pallidum))、側坐核(nucleus accumbens)、視床下核および黒質。尾状核および被殻は、内包により分離されているが、細胞構築、化学的特性および生理学的特性を共有し、そしてしばしば、線条体といわれ、または単に「線条」といわれる。黒質は、パーキンソン患者において変性しており、脳幹神経節への主要なドパミン作動性入力を提供する。
【0048】
用語「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして脊椎動物、好ましくは、哺乳動物をいう。哺乳動物としては、マウス、類人猿、ヒト、家畜、競技用動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「有効量」は、有益な、または所望の結果をもたらすに十分な量である。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬において投与され得る。
【0050】
用語「標識されたトレーサー」とは、インビボでの規定された活性を追跡または検出するために使用され得る任意の分子をいう。例えば、好ましいトレーサーは、ドパミンを利用する細胞に結合するトレーサーである。好ましくは、標識されたトレーサーは、例えば、陽子射出断層撮影法(PET)スキャニングまたは他のCNS画像化技術により、動物全体で見出され得るトレーサーである。適切な標識としては、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質(酵素を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
(本発明の一般的全体像)
本発明の中心は、ウイルスベクター(例えば、AAV)を動物のCNSに効率的に送達することを可能にする方法の開発である。以前、研究者らは、脳の広範な領域にウイルスベクターを送達させることにほとんど成功していなかった。対流増加送達デバイス(例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプ)を使用すると、ウイルスベクターは脳の大きな領域にわたる多くの細胞に送達され得る。さらに、送達されたベクターは、CNS細胞(例えば、ニューロン細胞またはグリア細胞)中で導入遺伝子を効率的に発現する。
【0052】
本明細書中で記載されるウイルスベクター送達の方法を使用すると、CNS障害(例えば、パーキンソン病)のための新規な遺伝子治療処置が考案され得る。1つの実施態様において、パーキンソン病(PD)は、全身的なL−ドパおよび/またはカルビドパ治療と、AADC(ドパミン代謝に関与する酵素)をコードする導入遺伝子を運ぶAAVベクターのCNS投与(例えば、CEDを介して)とを組み合わせることにより処置され得る。
【0053】
本発明の利点としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)ウイルスベクター(例えば、AAV)のCNSへの効率的かつ広範な送達;(ii)ウイルスベクターによって運ばれた核酸(例えば、導入遺伝子)の発現;(iii)プロドラッグの投与と組み合わせた1つの導入遺伝子の送達を含むパーキンソン病の治療レジメンの同定;および(iv)PETスキャンを使用してCNS遺伝子治療を非侵襲的にモニターする能力。
【0054】
(ウイルスベクターの構築)
本発明の実施において有用な遺伝子送達ビヒクルは、分子生物学分野で周知の方法論を利用して構築され得る(例えば、AusubelまたはManiatis、前出を参照のこと)。代表的には、導入遺伝子を有するウイルスベクターは、導入遺伝子、適切な調節エレメントおよび細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の生成に必要なエレメントをコードするポリヌクレオチドからアセンブルされる。例えば、好ましい実施態様において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが使用される。
【0055】
(一般的方法)
ウイルスベクターのヌクレオチド成分を得る好ましい方法は、PCRである。PCRのための一般的手順は、MacPhersonら、PCR:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press(1991)に教示されている。各適用反応のためのPCR条件は、経験的に決定され得る。多くのパラメーターが反応の出来に影響を及ぼす。これらのパラメーターの中には、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+およびATP濃度、pHならびにプライマー、テンプレートおよびデオキシリボヌクレオチドの相対的濃度がある。例示的なプライマーは、実施例において以下に記載される。増幅後に、得られるフラグメントをアガロースゲル電気泳動、次いで、エチジウムブロマイド染色および紫外線照射での可視化により検出し得る。
【0056】
ポリヌクレオチドを得るための別の方法は、酵素消化による。例えば、ヌクレオチド配列は、適切な認識制限酵素を用いた適切なベクターの消化により生成され得る。次いで、得られるフラグメントは、適切であれば、ともに連結され得る。
【0057】
ポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法を使用してベクターゲノムに挿入される。例えば、挿入DNAおよびベクターDNAは、適切な条件下で制限酵素と接触させ、互いに対形成し得る各分子上に相補的末端または平滑末端を作製し、そしてこれをリガーゼを用いて連結し得る。あるいは、合成核酸リンカーをポリヌクレオチドの末端に連結し得る。これらの合成リンカーは、ベクターDNAにおける特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。他の手段は、当該分野で公知であり、かつ利用可能である。
【0058】
(レトロウイルスおよびアデノウイルスベクター)
多数の、ウイルスに基づく系が遺伝子送達に用いられてきた。例えば、レトロウイルス系が、公知であり、そして一般に組み込まれた欠損プロウイルス(「ヘルパー」)を有するパッケージング株を使用する。このプロウイルスは、ウイルスの全遺伝子を発現するがパッケージングシグナル(psi配列として公知)の欠失により自分自身のゲノムをパッケージし得ない。従って、この細胞株は空のウイルス外殻を生成する。プロデューサー株は、パッケージング株から誘導され得る。このパッケージング株は、ヘルパーに加えて、ウイルスの複製およびパッケージングのためにcisに必要な配列(長末端反復配列(LTR)として公知)を含むウイルスベクターを含む。目的の遺伝子は、ベクターに挿入され得、そしてレトロウイルスヘルパーにより合成されたウイルス外殻にパッケージングされ得る。次いで、この組換えウイルスは、単離されそして被験体に送達され得る。(例えば、米国特許第5,219,740号を参照のこと)。代表的なレトロウイルスベクターとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:例えば米国特許第5,219,740号に記載されるLHL、N2、LNSAL、LSHLおよびLHL2ベクターのようなベクター、ならびに本明細書中に記載される改変N2ベクターのような、これらのベクターの誘導体。レトロウイルスベクターは、当該分野で周知の技術を用いて構築され得る。例えば、米国特許第5,219,740号;Mannら(1983)Cell 33:153〜159を参照のこと。
【0059】
アデノウイルスに基づく系は、遺伝子送達のために開発されており、そして本明細書に記載の方法による送達のために適切である。ヒトアデノウイルスは、レセプター媒介エンドサイトーシスにより細胞に入る二本鎖DNAウイルスである。これらのウイルスは、遺伝子移入に特によく適応する。なぜなら、それらは、増殖および操作が容易であり、そしてインビボおよびインビトロにおいて広範な宿主域を示すからである。例えば、アデノウイルスは、造血起源、リンパ起源および骨髄系起源のヒト細胞に感染し得る。さらに、アデノウイルスは、休止状態の標的細胞および複製中の標的細胞に感染する。宿主ゲノムに組み込むレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは染色体外で存続し、これにより挿入変異誘発に関連する危険性が最小になる。このウイルスは、容易に高力価で生成され、そして安定であり、精製されかつ貯蔵され得る。複製コンピテントな形態でさえ、アデノウイルスは、低レベルの罹患率しか生じず、そしてヒトの悪性疾患には関連しない。従って、これらの利点を利用するアデノウイルスベクターが開発されてきた。アデノウイルスベクターおよびそれらの使用の詳細については、例えば、Haj−Ahmad and Graham(1986)J.Virol.57:267〜274;Bettら(1993)J.Virol.67:5911〜5921;Mitterederら(1994)Human Gene Therapy 5:717−729;Sethら(1994)J.Virol.68:933〜940;Barrら(1994)Gene Therapy 1:51〜58;Berkner,K.L.(1988)BioTechniques 6:616〜629;Richら(1993)Human Gene Therapy 4:461〜476を参照のこと。
【0060】
(AAV 発現ベクター)
好ましい実施態様において、ウイルスベクターは、AAVベクターである。「AAVベクター」とは、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを制限することなく含む、アデノ随伴ウイルス血清型由来のベクターを意味する。AAVベクターは、全体または部分、好ましくはrep遺伝子および/またはcap遺伝子を欠失し、ただし、隣接する機能的なITR配列は保持する、AAV野生型遺伝子の1つ以上を有し得る。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングに必須である。従って、AAVベクターは、本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージングのためcisに必要な少なくともそれらの配列(例えば、機能的ITR)を含むことが規定される。このITRは、野生型ヌクレオチド配列には必要でなく、そして、この配列が機能的レスキュー、複製およびパッケージングを提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変化されてもよい。
【0061】
AAV発現ベクターは、公知の技術を用いて構築され、少なくとも、転写開始領域、目的のDNAおよび転写終結領域を含む制御エレメントを、転写の方向に作動可能に連結された成分として提供する。制御エレメントは、哺乳動物筋細胞において機能的であるように選択される。作動可能に連結された成分を含む生じた構築物は、機能的AAV ITR配列に結合(5’および3’)している。
【0062】
「アデノ随伴ウイルス逆方向末端配列」または「AAV ITR」とは、AAVゲノムのそれぞれの末端で見出される、DNA複製起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとしてcisに一緒に機能する当該分野で認識されている領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコード配列と一緒に、2つの隣接するITRに間に挟まれたヌクレオチド配列からの効率的な切除およびレスキューならびに哺乳動物ゲノムへのこの配列の組み込みを提供する。
【0063】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。AAV−2配列については、例えば、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5;793−801;Berns,K.I.「パルボウイルスおよびそれらの複製」、Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。本明細書中に使用される「AAV ITR」は、記載された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により、改変され得る。さらに、AAV ITRは、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを含むがこれらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAVベクターにおいて選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合、ITRが意図されたように機能(すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列の切除およびレスキューを可能にし、そして異種配列の、レシピエント細胞ゲノムへの組み込みを可能にする)している限り、必ずしも同一であるか、または同一のAAV血清型もしくは単離物に由来している必要はない。
【0064】
さらに、AAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得、この血清型は、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを含むがこれらに限定されない。さらに、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合、ITRが意図されたように機能(すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターからの目的の配列の切除およびレスキューを可能にし、そしてDN分子のレシピエント細胞への組み込みを可能にする)している限り、それらが必ずしも同一であるか、または同一のAAV血清型もしくは単離物に由来している必要はない。
【0065】
AAVベクターにおける使用のための適切なDNA分子は、約5キロベース(kb)未満のサイズであり、そして、例えば、レシピエント被験体から欠損または消失しているタンパク質をコードする遺伝子、または所望の生物学的または治療的効果(例えば、抗細菌機能、抗ウイルス機能、または抗腫瘍機能)を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。好ましいDNA分子は、ドパミン代謝に関連する分子、例えば、AADCまたはTHを含む。AAV−AADCベクターおよびAAV−THベクターは、例えば、Bankiewiczら(1997)Exper’t Neurol.144:147〜156;Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527〜2535、および国際公開 WO95/28493(1995年10月26日公開)に記載されている。
【0066】
選択されたヌクレオチド配列(例えば、AADCまたは目的の別の遺伝子)は、被験体においてインビボでその転写または発現を指向する制御エレメントに作動可能に連結される。このような制御エレメントは、選択された遺伝子と通常関連する制御配列を含み得る。あるいは、異種制御配列が用いられ得る。有用な異種制御配列には、一般的に、哺乳動物もしくはウイルスの遺伝子をコードする配列に由来する制御配列が含まれる。例としては、SV40早期プロモーター;マウス乳腺癌ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、CMV極初期プロモーター領域(CMVIE));ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター;合成プロモーター;ハイブリッドプロモーター;などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非ウイルス遺伝子(例えば、マウスメタロチオネイン遺伝子)由来の配列もまた、本明細書中での使用を見出す。このようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego,CA)から市販されている。
【0067】
本発明の目的のためには、異種プロモーターおよび他の制御エレメント(例えば、CNS特異的プロモーターおよび誘導性プロモーター、エンハンサーなど)の両方が、特に有用である。異種プロモーターの例としては、CMBプロモーターが挙げられる。CNS特異的プロモーターの例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)由来の遺伝子から単離されたプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの例としてはエクジソン、テトラサイクリン、低酸素症およびアウフィン(aufin)についてのDNA応答性エレメントが挙げられる。
【0068】
AAV ITRに結合された目的のDNA分子を有するAAV発現ベクターは、選択された配列(単数または複数)を、そこから主要なAAVオープンリーディングフレーム(「ORF」)が切り取られているAAVゲノム中に直接挿入することにより構築され得る。複製およびパッケージング機能を可能にするに十分な部分のITRが残される限り、AAVゲノムの他の部分もまた欠失させ得る。このような構築物は、当該分野において周知の技術を使用して設計され得る。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号;国際公開第WO 92/01070号(1992年1月23日公開)および同第WO 93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowskiら(1988) Molec.Cell.Biol. 8:3988−3996;Vincentら(1990) Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533−539;Muzyczka,N.(1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97−129;Kotin,R.M.(1994) Human Gene Therapy 5:793−801;ShellingおよびSmith(1994) Gene Therapy 1:165−169;ならびにZhouら(1994) J.Exp.Med. 179:1867−1875を参照のこと。
【0069】
あるいは、AAV ITRは、ウイルスゲノムまたはAAV ITRを含むAAVベクターから切り取られ、そして標準的な連結技術(例えば、Sambrookら(前出)に記載の連結技術)を使用して、別のベクターに存在する選択された核酸構築物の5’および3’に融合され得る。例えば、連結は、20mM Tris−Cl(pH7.5)、10mM MgCl2、10mM DTT、33μg/ml BSA、10mM〜50mM NaCl、そして40μM ATP、0℃の0.01〜0.02(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「粘着末端」連結用)か、または1mM ATP、14℃の0.3〜0.6(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「平滑末端」連結用)のいずれか、において達成され得る。分子間「粘着末端」連結は、通常、30〜100μg/mlの総DNA濃度(5〜100nMの総末端濃度)にて実行される。ITRを含むAAVベクターは、例えば、米国特許第5,139,941号に記載されている。特に、アメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」)から、受託番号53222、53223、53224、53225、および53226の下で入手可能ないくつかのAAVベクターが上記特許明細書に記載されている。
【0070】
さらに、キメラ遺伝子は、1つ以上の選択された核酸配列の5’および3’に配置されたAAV ITR配列を含むように合成的に産生され得る。哺乳動物CNS細胞におけるキメラ遺伝子配列の発現のために好ましいコドンが使用され得る。完全なキメラ配列が、標準的な方法によって調製された重複オリゴヌクレオチドから組み立てられる。例えば、Edge,Nature(1981)292:756;Nambairら、Science(1984)223:1299;Jayら、J.Biol.Chem.(1984)259:6311を参照のこと。
【0071】
rAAVビリオンを産生するため、AAV発現ベクターが、トランスフェクションのような公知の技術を用いて適切な宿主細胞に導入される。多くのトランスフェクション技術が当該分野で一般的に公知である。例えば、Grahamら (1973) Virology, 52:456、Sambrookら (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davisら (1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。特に適切なトランスフェクション方法は、リン酸カルシウム共沈殿(Grahamら(1973)Virol.52:456−467)、培養した細胞中への直接マイクロインジェクション(Capecchi,M.R.(1980)Cell 22:479−488)、エレクトロポレーション(Shigekawaら (1988)BioTechniques 6:742−751)、リポソーム媒介遺伝子移入(Manninoら(1988)BioTechniques 6:682−690)、脂質媒介形質導入(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417)、および高速度マイクロプロジェクタイルを使用する核酸送達(Kleinら(1987)Nature 327:70−73)を包含する。
【0072】
本発明の目的のために、rAAVビリオンを産生するために適切な宿主細胞は微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含み、それは、異種DNA分子のレシピエントとして使用され得るか、または使用されている。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。このように、本明細書中に使用される「宿主細胞」は、通常、外因性DNA配列によってトランスフェクトされた細胞をいう。安定なヒト細胞株293(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションから受託番号ATCC CRL1573で容易に入手可能)に由来する細胞が本発明の実施において好ましい。特に、ヒト細胞株293は、アデノウイルス5型のDNAフラグメントで形質転換したヒト胚腎細胞株であり(Grahamら、(1977) J. Gen. Virol. 36:59)、アデノウイルスE1aおよびE1b遺伝子を発現する(Aielloら(1979)Virology 94:460)。293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、そしてrAAVビリオンを産生するための特に便利なプラットフォームを提供する。
【0073】
(AAVヘルパー機能)
上記のAAV発現ベクターを含む宿主細胞は、AAV ITRに隣接するヌクレオチド配列を複製しそしてキャプシド形成してrAAVビリオンを産生するために、AAVヘルパー機能を提供し得るようにならなければならない。AAVヘルパー機能は、通常、AAV遺伝子産物を提供するために発現され得るAAV由来コード配列である。次いで、この遺伝子産物は、増殖性AAV複製のためにトランスで機能する。AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターに欠損している必要なAAV機能を相補するために本明細書中で使用される。このように、AAVヘルパー機能は、1つまたは両方の主要なAAV ORF、つまりrepおよびcapコード領域、またはその機能的ホモログを含む。
【0074】
Rep発現産物は、とりわけ、AAVのDNA複製起点の認識、結合およびニッキング、DNAヘリカーゼ活性、ならびにAAV(または、他の異種の)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されてきた。このCap発現産物は、必須のパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターに欠損しているAAV機能をトランスで相補するために本明細書中で使用される。
【0075】
用語「AAVヘルパー構築物」は、一般に、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを作製するために用いられるAAVベクターに欠失しているAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子をいう。AAVへルパー構築物は、通常、溶解性のAAV複製に必須である欠損AAV機能を相補するためAAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子の一過性発現を提供するために用いられる。しかし、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そしてそれ自身を複製もパッケージングもし得ない。AAVへルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。多数のAAVヘルパー構築物が記載されている。これは、例えば、Rep発現産物およびCap発現産物の両方をコードする、通常用いられるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29−45である。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822〜3828;およびMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936〜2945を参照のこと。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードする多数の他のベクターが記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照のこと。
【0076】
「AAV repコード領域」とは、複製タンパク質Rep 78、Rep 68、Rep 52、およびRep 40をコードするAAVゲノムの当該分野で認識された領域を意味する。これらのRep発現産物は、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニッキング、DNAヘリカーゼ活性、ならびにAAV(または、他の異種の)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されてきた。Rep発現産物は、AAVゲノムを複製するのに集団的に必要である。AAV repコード領域の記載については、例えば、Muzyczka, N. (1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97−129;およびKotin, R.M. (1994) Human Gene Therapy 5:793−801を参照のこと。AAV repコード領域の適切なホモログは、AAV−2 DNA複製を媒介することも知られているヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)rep遺伝子(Thomsonら、(1994) Virology 204:304−311)を含む。
【0077】
「AAV capコード領域」とは、キャプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3、あるいはそれらの機能的ホモログをコードするAAVゲノムの当該分野で認識された領域を意味する。これらのCap発現産物は、ウイルスゲノムをパッケージングするのに集団的に必要とされるパッケージング機能を供給する。AAV capコード領域の記載については、例えば、 Muzyczka, N. およびKotin, R.M.(上記)を参照のこと。
【0078】
AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前、または同時のいずれかで、AAVヘルパー構築物で宿主細胞をトランスフェクトすることにより宿主細胞に導入される。このように、AAVヘルパー構築物は、増殖性AAV感染のために必要な欠損AAV機能を相補するために、AAV repおよび/またはcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供するために使用される。AAVヘルパー構築物は、AAV ITRを欠損しており、そして、自身を複製もパッケージすることをもし得ない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。RepおよびCapの両方の発現産物をコードする、一般に使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45のような多くのAAVヘルパー構築物が記載されている。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936−2945を参照のこと。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多くの他のベクターが記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照のこと。
【0079】
AAV発現ベクターおよびAAVヘルパー構築物の両方が、1つ以上の任意の選択マーカーを含むように構築され得る。適切なマーカーには、選択マーカーを含む核酸構築物でトランスフェクトされている細胞が適切な選択培地中で増殖される場合、それらの細胞に抗生物質耐性もしくは感受性を与えるか、色を与えるか、または抗原特徴を変化させる遺伝子が挙げられる。本発明の実施に有用ないくつかの選択マーカー遺伝子は、G418(Sigma, St. Louis, MOから入手可能)に対する耐性を与えることによって哺乳動物細胞での選択を可能にするハイグロマイシンB耐性遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする)を含む。他の適切なマーカーは当業者に公知である。
【0080】
(AAV付属機能)
宿主細胞(またはパッケージング細胞)はまた、rAAVビリオンを産生するために、非AAV由来の機能すなわち「付属機能」を提供し得るようにならなければならない。付属機能は、AAVがその複製を依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞機能である。このように、付属機能は、少なくとも、AAV遺伝子転写、時期特異的なAAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、およびAAVキャプシドアセンブリの合成の活性化に関連するものを含む、AAV複製に必要な非AAVタンパク質およびRNAを含む。ウイルスベースの付属機能は、公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0081】
特に、付属機能は、当業者に公知である方法を使用して宿主細胞に導入され得、次いで発現され得る。一般に、付属機能は、関連のないヘルパーウイルスでの宿主細胞の感染によって提供される。アデノウイルス;単純ヘルペスウイルス1型および2型のようなヘルペスウイルス;ならびにワクシニアウイルスを含む、多くの適切なヘルパーウイルスが公知である。任意の種々の公知の薬剤を使用した細胞同期化により提供される付属機能のような非ウイルス付属機能も、本発明における使用を見出す。例えば、Bullerら(1981)J.Virol.40:241−247;McPhersonら(1985)Virology 147:217−222;Schlehoferら(1986)Virology 152:110−117を参照のこと。
【0082】
あるいは、付属機能は、付属機能ベクターを使用して提供され得る。付属機能ベクターは、1つ以上の付属機能を提供するヌクレオチド配列を含む。付属機能ベクターは、宿主細胞中の効率的なAAVビリオン産生を支持するために、適切な宿主細胞に導入され得る。付属機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、またはコスミドの形態であり得る。付属ベクターはまた、適切な制御エレメントおよび酵素と会合する場合、宿主細胞において転写され得るか、または発現され得て付属機能を提供し得る、1つ以上の線状化DNAまたはRNAフラグメントの形態であり得る。例えば、1997年5月15日公開の国際公開番号WO97/17548を参照のこと。
【0083】
付属機能を提供する核酸配列は、アデノウイルス粒子のゲノムのような天然源から得られ得るか、または、当該分野で公知の組換え方法または合成方法を使用して構築され得る。この意味で、アデノウイルス由来付属機能は、広範に研究されており、付属機能に関連する多数のアデノウイルス遺伝子が、同定され、そして部分的に特徴づけられている。例えば、Carter,B.J.(1990)「アデノ随伴ウイルスヘルパー機能」 CRC Handbook of Parvoviruses、第一巻(P.Tijssen編);およびMuzyczka,N.(1992)Curr.Topics.Microbiol.and Immunol.158:97−129を参照のこと。特に、初期アデノウイルス遺伝子領域E1a、Ea2、E4、VAI RNAおよび、潜在的に、E1bは、付属プロセスに参加していると考えられる。Janikら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925−1929。ヘルペスウイルス由来付属機能が記載されている。例えば、Youngら(1979)Prog.Med.Virol.25:113を参照のこと。ワクシニアウイルス由来付属機能もまた、記載されている。例えば、Carter,B.J.(1990)、上記、Schlehoferら、(1986)Virology 152:110−117を参照のこと。
【0084】
宿主細胞のヘルパーウイルスでの感染、または宿主細胞の付属機能ベクターでのトランスフェクションの結果として、AAV Repおよび/またはCapタンパク質を産生するためにAAVヘルパー構築物をトランス活性化する付属機能が発現される。Rep発現産物は、AAV発現ベクターから組換えDNA(目的のDNAを含む)を切り出す。Repタンパク質はまた、AAVゲノムを2倍にするために作用する。発現したCapタンパク質はキャプシドへと組み立てられ、そして組換えAAVゲノムはキャプシド中にパッケージされる。このように、増殖性AAV複製が起こり、そしてDNAはrAAVビリオンにパッケージされる。
【0085】
組換えAAV複製の後、rAAVビリオンは、CsCl勾配のような種々の従来の精製方法を使用して宿主細胞から精製され得る。さらに、感染が付属機能を発現するために用いられる場合、残りのヘルパーウイルスは、公知の方法を使用して不活性化され得る。例えば、アデノウイルスは、例えば、20分以上、約60℃の温度まで加熱することによって不活性化され得る。この処理はヘルパーのみを効率的に不活性化する。なぜなら、AAVは非常に熱安定性であるが、一方ヘルパーアデノウイルスは熱不安定性であるからである。
【0086】
次いで、得られたrAAVビリオンは、被験体のCNS(例えば、頭蓋腔)へのDNA送達のための使用に用意される。
【0087】
(ウイルスベクターの送達)
ウイルスベクターの送達方法としては、動脈内経路、筋肉内経路、静脈内経路、経鼻経路および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、rAAVビリオンは、インビボ形質導入技術またはインビトロ形質導入技術のいずれかを用いてCNSの細胞中に導入され得る。インビトロで形質導入された場合、所望のレシピエント細胞は、被験体から取り出され、rAAVビリオンで形質導入され、そしてその被験体に再導入される。あるいは、同系または異系の細胞が不適切な免疫応答を被験体において産生しない場合、それらの細胞が使用され得る。
【0088】
形質導入細胞の被験体への送達および導入のための適切な方法が記載されている。例えば、組換えAAVビリオンは、CNS細胞と(例えば、適切な培地中で)組み合わせられることによって細胞はインビトロで形質導入され得、そして目的のDNAを有する細胞に対するスクリーニングは、サザンブロットおよび/またはPCRのような従来技術を使用して、または選択マーカーを使用することによってスクリーニングされ得る。次いで、形質導入細胞は、薬学的組成物に処方され得(以下にさらに十分に記載される)、そしてその組成物は、グラフティング(grafting)、筋肉内、静脈内、皮下および腹腔内注射といった種々の技術により被験体に導入され得る。
【0089】
インビボ送達については、rAAVビリオンが、薬学的組成物に処方され、そして一般に、非経口的に(例えば、骨格筋または心筋への直接的な筋肉内注射によってか、またはCNSへの注射によって)投与される。
【0090】
しかし、従来の方法(例えば、注射)は、ウイルスベクターの被験体の脳への広範な送達を提供することが示されていないので、ウイルスベクターを対流増加送達(CED:convection−enhanced delivery)系を介してCNSに効率的に送達する発見が、本発明の中心をなす。本発明者らは、CEDがウイルスベクター(例えば、AAV)を動物の脳(例えば、線条体)の広い領域に対して効率的に送達し得ることを初めて記載し、そして初めてそれを実証する。以下に詳細に記載されそして例示されるように、これらの方法は、種々のウイルスベクター、例えば、レポーター遺伝子(例えば、チミジンキナーゼ(tk))または治療的遺伝子(例えば、AADCおよびtk)を有するAAVベクター、に適している。
【0091】
任意の対流増加送達デバイスが、ウイルスベクターの送達に適切であり得る。好ましい実施態様において、このデバイスは、浸透ポンプまたは注入ポンプである。浸透ポンプおよび注入ポンプの両方は、種々の供給元から市販されている(例えば、Alzet Corporation,Hamilton Corporation,Alza,Inc.,Palo Alto,California)。代表的には、ウイルスベクターは、以下のように、CEDデバイスを介して送達される。カテーテル、カニューレまたは他の注射デバイスが、選択した被験体のCNS組織に挿入される。本明細書中の教示から、当業者は、CNSのどの一般の領域が適切な標的であるかを容易に決定し得る。例えば、PDを処置するためにAAV−AADCを送達する場合、線条体が、脳の標的にするには適切な領域である。定位マップ(stereotactic map)およびポジショニングデバイスが利用可能である(例えば、ASI Instruments,Warren MIから)。ポジショニングはまた、被験体の脳のCT画像化および/またはMRI画像化により得られた解剖学的マップを使用して行われ、これは選択した標的への注射デバイスの誘導を補助し得る。さらに、本明細書に記載される方法は、脳の比較的に広い領域がウイルスベクターを吸収するように行われ得るので、注入カニューレをほとんど必要としない。外科的合併症は穿通の回数に関連するので、本明細書に記載される方法はまた、従来の送達技術において見られた副作用を減少させるのに役立つ。
【0092】
薬学的組成物は、目的のタンパク質の治療的な有効量(すなわち、問題の疾患状態の症状を低減もしくは改善するに充分な量、または所望の有益性を与えるに充分な量)を産生するに充分な遺伝物質を含む。この薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能な賦形剤を含む。このような賦形剤は、それ自身がその組成物を受ける個体にとって有害な抗体の産生を誘導せず、そして過度な毒性なく投与され得る、任意の薬学的薬剤を含む。薬学的に受容可能な賦形剤としては、ソルビトール、Tween80、ならびに水、生理的食塩水、グリセロール、およびエタノールのような液体が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩は、本明細書においては、例えば、塩酸塩、臭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような無機酸塩;ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような有機酸塩を含み得る。さらに、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質は、このようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の詳細な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(MackPub.Co.,N.J.1991)で入手可能である。
【0093】
本明細書の教示から当業者に明らかであるように、添加されなければならないウイルスベクターの有効量は経験的に決定され得る。投与は、処置過程を通して連続的または断続的に1用量にて行われ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に周知であり、そしてウイルスベクター、治療組成物、標的細胞、および処置されている被験体により変化する。単回投与および複数回投与が、処置する医師により選択されている用量レベルおよびパターンで行われ得る。
【0094】
1より多いトランスジーンが、送達されるウイルスベクターにより発現され得ることが理解されるべきである。あるいは、別々のベクター(各々が1以上の異なるトランスジーンを発現する)がまた、本明細書に記載されるようにCNSに送達され得る。さらに、本発明の方法により送達されるウイルスベクターが、他の適切な組成物および治療と組み合わせられることもまた意図される。例えば、以下の実施例で詳細に記載されるように、パーキンソン病は、AADCを発現するAAVベクターをCNSに(例えば、尾状核または線条体の被殻に)同時投与することによって処置され得、そしてさらなる薬剤(例えば、ドパミン前駆体(例えば、L−ドパ)、ドパミン合成のインヒビター(例えば、カルビドパ)、ドパミン異化作用のインヒビター(例えば、MaOBインヒビター)、ドパミンアゴニストもしくはドパミンアンタゴニスト)が、AADCをコードするベクターの投与の前に、それに続いて、またはそれと同時に投与され得る。例えば、L−ドパ(および必要に応じてカルビドパ)が、全身的に投与され得る。このようにして、PD患者において自然に枯渇しているドパミンが、L−ドパをドパミンに変換し得るAADCの発現によって明らかに回復される。トランスジーン(例えば、AADC)が誘導性プロモーターの制御化にある場合、このトランスジーンの発現を調節するために、ムリステロン(muristerone)、ポナステロン(ponasteron)、テトラシリン(tetracyline)またはアウフィン(aufin)のような、全身送達される特定の化合物が投与され得る。
【0095】
(CNS障害の処置)
治療的トランスジーンを発現するウイルスベクターを使用して、治療的なタンパク質またはペプチドを提供することによって種々のCNS障害を処置し得る。好ましい実施態様において、ウイルスベクターは、本明細書に記載されるCED法を介してCNSに送達される。なぜなら、これらの方法は、広範囲に分布するウイルスベクターの第1の効果的様式をCNSに提供するからである。処置され得る障害の限定されない例としては、腫瘍、発作および神経変性疾患から生じる障害が挙げられる。
【0096】
(パーキンソン病)
本発明の好ましい実施態様において、酵素AADCを提供するウイルスベクターが、パーキンソン病の処置のために使用される。上記したように、パーキンソン病は、ドパミン作用性黒質線状体ニューロンの選択的な損失から生じ、その結果、黒質からの線条体への入力の損失を生じる。PDの動物モデルが、例えば、ドパミン作用性細胞を破壊する6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)でラットまたは霊長類を処置することによってか、または神経毒である1−メチル−4−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロピリジン(MPTP)(これはパーキンソン病様の疾患を生じる)で霊長類を病変させることによって作製されている。
【0097】
本発明は、パーキンソン病患者(例えば、MPTPで病変したサル)のドパミン作用性活性が、AADCのトランスジーンを有するウイルスベクターを、L−ドパおよび(必要に応じてカルビドパ)の全身的(例えば、経口)投与と組み合わせて投与することによって回復され得るという初めての証拠を提供する。パーキンソン病のための遺伝子治療に関する以前の示唆は、疾患の進行に伴うチロシンヒドロキシラーゼの欠乏について焦点を当ててきた。したがって、これらの示唆により、インサイチュでドパミンを生成するためには、少なくとも3つのトランスジーン(チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子;補因子ビオプリテン(bioptrene)であるGTP−シクロヒドロキシラーゼ−1の遺伝子;およびAADCの遺伝子)の首尾のよい発現による黒質線状体経路におけるドパミン合成の回復が要求される。3つの遺伝子を適切なレベルで送達することに付随する問題に加えて、このアプローチを使用してドパミンレベルの調節を制御することは困難である。
【0098】
本発明者らは、L−ドパと組み合わせた1つのトランスジーン(例えば、AADC)が治療的有用性を提供することを実証した。AADCはドパミン生合成の最終工程に関与する酵素であり、これは、L−ドパをドパミンに変換する。従って、ドパミン作用性活性を回復するためのAADC治療的アプローチの明らかな利点は、たった1つの遺伝子が送達されなければならず、そしてドパミンレベルの調節がL−ドパの末梢レベルを制御することによって可能であることである。さらに、AADC遺伝子だけを送達することによって、L−ドパはプロドラッグとして使用され、線条体におけるドパミンレベルを調節し得る。
【0099】
AAVベクターによって送達されるAADCをコードするヌクレオチドは、主に、線条体ニューロンで発現されるようなので、別の重要な治療的利点は、L−ドパに関する機構を緩衝する処置の提供である。運動異常症のような多くの副作用が、パーキンソン病(Parkinsonian)のヒトの脳の非効率な緩衝作用に起因する。本明細書に記載される方法は、代謝されないL−ドパがニューロンに貯蔵されることを可能にすることによってこの問題を回避する。以下に例示されるように、MPTP処置された線条体へのAADCの送達が、線条体ニューロンによる、L−ドパのドパミンへの変換、引き続くDOPACおよびHVAへの代謝を可能にする。FMT PETデータに基いて、FMTが線条体ニューロン領域において可視化されたので、線条体ニューロンはまたドパミンを貯蔵し得るようである。事実、AADC遺伝子の転入の後でのL−ドパのドパミンへの変換速度は、頑強でありかつ正常な線条体で見られたものより優れていた(例えば、図7を参照のこと)。さらに、パーキンソン病は進行性の障害ではあるが、進行中の変性プロセスは、線条体ニューロンでのAADC発現に影響しないようである。なぜなら、これらは、代表的に、特発性パーキンソン病によって影響されないからである。
【0100】
特発性パーキンソン病に罹患する患者のドパミン作用系の変性は、均一ではない。黒質線状体経路は中脳辺縁系経路より非常に速い速度で変性し、これは、この2つの経路の活性の間の平衡異常を有する患者を残す。この疾患が進行するにつれ、黒質線状体経路の変性を補償するには、より高レベルのL−ドパが必要とされるが、これはまた、核の側坐核(accumbens)および中脳辺縁系の他の部分において、さらにより高いドパミンレベルを生じる。このような過剰刺激は、幻覚のようなL−ドパ処置に関連するいくつかの副作用の原因となり得る。同様に、MPTPは、中脳辺縁系ドパミン作用性系を相対的に乏しくした(例えば、図7を参照のこと、尾状核および被殻においてはドパミン作用性神経支配が存在せず、部分的な病変が核の側坐核に見られる)。図7に示されるように、AAV−AADCは、この平衡異常をほぼ正常な均衡まで回復し得る。したがって、AADC酵素レベルの回復後に、より低用量のL−ドパが必要とされ、そしてL−ドパのドパミンへの変換速度を改善することが可能である。これは、順々に、中脳辺縁系の過剰刺激を減少し得、その結果、L−ドパ/カルビドパに関連する副作用をより少なくする。
【0101】
上記で説明したように、AAV−AADCベクターは、任意の適切な方法によって送達され得る。これらの方法としては、例えば、インジェクション、グラフティング、注入、このベクターを有する細胞の移植などが挙げられる。好ましい実施態様において、このベクターは、本明細書に記載されるCED法によって送達される。以下に例示するように、このような送達方法は、CNSニューロンでの広範囲の分布および発現を提供して、それによってPDについての新規な処置レジメを提供する。
【0102】
(画像化)
本発明はまた、酵素または他の分子のインビボでの活性を決定する方法を提供する。さらに詳細には、標的とされる活性を特異的に追跡するトレーサーが選択されそして標識される。好ましい実施態様において、このトレーサーは、ドパミン活性(例えば、ドパミンを利用する細胞に結合するフルオロ−L−m−チロシン(FMT))を追跡する。選択したトレーサーに適切な標識としては、分光器的、光化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物が挙げられる。本発明において有用な標識としては、放射標識(例えば、18F、3H、125I、35S、32Pなど)、酵素、比色標識、蛍光色素などが挙げられる。好ましい実施態様において、標識18Fは、ドパミン活性を定量するためにFMTとともに使用される。
【0103】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。例えば、放射標識は、画像化技術、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出され得る。好ましい実施態様において、この標識は、画像化技術(例えば、陽子射出断層投影法(PET))によって、被験体の脳においてインビボで検出される。PET技術は、以下の実施例3に詳細に議論される。
【0104】
(実施例)
以下は、本発明を実施するための特定の実施態様の例である。この実施例は、例示の目的のみのために提供され、そしていかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0105】
使用される数値(例えば、量、温度など)について正確さを確保するための試みがなされたが、当然、若干の実験的な誤差および偏差は許容されるべきである。
【0106】
(実施例1:AAV−tkの構築および生成)
AAV−tkベクターを、pUCベースのプラスミド(Roche Molecular Biochemicalsから入手可能)におけるサイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターの転写制御下に単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を配置することにより構築した。β−グロブリンのイントロンをtk遺伝子の上流に直接的に配置し、そしてヒト成長ホルモンのポリAを下流に配置した。このカセット全体を、遺伝子の発現、複製、およびウイルス粒子へのパッケージングに必要とされるAAVの逆方向末端配列(ITR)に隣接させた。
【0107】
組換えAAVビリオンを、以下のように、ヒト293細胞(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(受諾番号ATCC CRL1573)から容易に入手可能)中で産生した。この293細胞株を、完全DMEM(Biowhittaker)(4.5g/L グルコース、10% 熱失活ウシ胎仔血清(FCS;Hyclone)、および2mM グルタミンを含む)中で培養した。サブコンフルエントな293細胞を、リン酸カルシウム沈殿(例えば、Sambrookらを参照のこと)により、ITRに隣接したAAV−tk発現カセットならびにAAV(pw1909(AAV rep遺伝子およびcap遺伝子を含む))とアデノウイルス(pLadenol(E2a、E4、およびアデノウイルスVA1RNA遺伝子およびVA11RNA遺伝子を含む))との両方に由来するヘルパープラスミドで同時トランスフェクトした。6時間後、この培地を、血清を含まないDMEMに交換し、そしてインキュベーションを37℃、5% CO2にて72時間続けた。ペレット化した細胞を、Tris緩衝液(100mM Tris/150mM NaCl,pH8.0)中で凍結/融解を3回行って溶解させ、そして溶解物を10,000g、15分間の遠心分離によって細胞片から清澄化した。非ウイルスタンパク質をペレットにするために、CaCl2を最終濃度25mMまで添加し、そして0℃にて1時間インキュベートした後に、この清澄化した溶解物を10,000gで15分間遠心分離した。得られた上清にポリエチレングリコール8000(PEG)を添加した(最終濃度=8%);この溶液を0℃にて3時間インキュベートし、そして3000×gで30分間遠心分離した。ベクターを含むペレットを、50mM Hepes Na/150mM NaCl/25mM EDTA(pH8.0)中で可溶化させ、そして10,000×gで15分間遠心分離してペレットにし、そして不溶性物質を除去した。
【0108】
塩化セシウム等密度(isopycnic)勾配遠心分離を行い、そしてAAV−tkを、得られた勾配から平均密度1.38g/mlを有する画分を単離することにより回収した。ベクターを濃縮するためにPEGを再び使用した。次いで、これを25mM Hepes Na/150mM NaCl(pH7.4)中に再懸濁し、そして記載したように遠心分離して不溶性物質を除去した。このストックをDNAse処理し、そしてベクター力価を定量的ドットブロットハイブリダイゼーションにより決定した。
【0109】
(実施例2:AAV−tkのインビボ送達:用量および方法)
脳への導入に適切な用量のAAVを決定するために、以下の研究を行った。AAVベクターに対する用量応答を試験するために、その比較的に大きな同構造組織の領域ゆえに、ならびに線条体は、神経変性疾患および他の中枢神経系障害の処置に対する標的なので線条体を使用した。
【0110】
さらに、ベクターをCNSに送達する効率的な方法を決定した。治療剤の単純な定位的インジェクションは、脳において限られた容積の分布を生じることが示されている(Krollら,(1996)Neurosurgery 38:746−754)。したがって、頭蓋内送達の間の圧力勾配を維持するために、低速度注入ポンプを使用した。低分子、中程度分子、および大きな分子の脳への送達に関する以前の研究により、低速度注入ポンプが、広範でかつ均質な組織分布を生じることが実証されている。
【0111】
ベクターの頭蓋内インジェクションを投与するにはどの方法が最も効率的であるかを研究するために、Harvard注入ポンプ(Harvard Apparatus Inc.,Holliston,MA)またはAlzet皮下浸透ポンプ(Alza Scientific Products,Palo Alto,CA)を使用することによって、ラットに2.5×1010粒子のAAVを与えた。雌性Sprague−Dawleyラット(250〜300g)(Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から)を、ケタミン(体重1kgあたり100mg)およびキシラジン(体重1kgあたり10mg)の腹腔内注射により麻酔し、そして手術のために調製した。手術の間、鎮静を、イソフルラン(isofluorane)(Attrane.Omeda PPD Inc.,Liberty,NJ)を用いて維持し、そしてO2流速を0.3〜0.5L/mで維持した。各々のラットの頭部を耳棒(earbar)で定位装置(Small Animal Stereotactic Frame;ASI Instruemnts,Warren,MI)にて固定し、そして皮膚を通じて正中切開して頭蓋骨を露出させた。小さな歯科用ドリルを使用して、ブレグマから1mm前方および正中線から2.6mm後方の頭蓋骨に穿孔を作製した。注入ポンプまたは皮下浸透ポンプを使用して、ベクターを左半球の深さ5mmに送達した。
【0112】
投薬研究のために、3つの群の動物(一群あたり6匹の動物)が存在した。各々の動物に、AAV−ktを、Harvard注入ポンプを使用して8μl/hの速度にて2.5時間連続して投与した。ローディングチャンバー(Teflonチュービング1/16th「OD×0.03」ID)および付属注入チャンバー(1/16「OD×0.02」ID)を、総容量20μlの人工脳脊髄液(csf)(148mM NaCl,3mM KCl,1.4mM CaCl2・2H2O,0〜8mM MgCl2・6H2O,1.3mM Na2HPO4・H2O,0.2mM Na2HPO4・H2O)中2.5×108、2.5×109、または2.5×1010粒子のAAV−ktで満たした。融合シリカ(fused silica)にはめ込んだ27ゲージ針により送達を行い、これを注入の後に徐々に15mで取り除いた。
【0113】
あるいは、ベクターを6匹の動物の1つの群に送達するために、皮下浸透ポンプを使用した。各々のラットに、AAV−tkをAlzet浸透ポンプ(モデル番号2001D)(ALZA Scientific Products,Palo Alto,CA)を使用して8μl/hの速度にて24時間連続して投与した。このポンプのリザーバーおよび付属カテーテル(ポリエチレン60チュービング)を、総容量200μlの人工脳脊髄液(csf)(Harvard Apparatus,Inc.,Holliston,Mass)中2.5×1010粒子のAAV−tkで満たした。融合シリカにはめ込んだ27ゲージカニューレにより送達を行った。定位配置の後、このカニューレを小さなステンレス綱ねじおよび歯科用接着剤で頭蓋骨に固定し、そしてポンプを背中の肩甲中央領域(mid−scapular area)の皮下に移植した。手術部位を解剖学的層(anatomical layer)にて9mmの創傷クリップを用いて閉じた。24時間後、カテーテルを留めてそして密封してポンプを除去したが、代わりに移植したカニューレを残した。バーホール(burr hole)は骨ろうで充填した。
【0114】
全ての外科的手順、動物の世話および飼育、ならびに組織の回収を、Berkeley Antibody Co.(Berkeley,CA)のRichmondの施設にて行った。
【0115】
(組織学)
動物を、ペントバルビタール過剰量(用量)で安楽死させ、そして氷冷PBSおよび4%中性緩衝化パラホルムアルデヒドを用いて上行大動脈を介して灌流した。脳を頭蓋骨から取り出し、同じ固定液中での24時間の液浸によって次の固定を行い、30%スクロースで平衡化し、そして−70℃のイソペンタン中で凍結した。次いで、これらを低温槽に配置し、そして40ミクロンの切片を前頭葉前部の皮質から中脳まで連続的に収集した。各々の脳は約150切片を生じ、これは、前方−後方(AP)が6〜8mmの長さであった。慣用的な組織学的分析のために、全てのIP切片をH&Eで染色した。一般的な細胞密度を測定するために、異なる脳領域を示す、選択した切片をクリスタルバイオレットで染色した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
(PCR分析)
1群あたり2匹を有するラットのさらなる2つの群を、ベクターの組織分布を決定する目的のために、2.5×1010個の粒子のAAV−tkで処置した。上記のように、一方の群は、注入によってベクターを受け、そして他方は、浸透ポンプによって受けた。動物を、3週間後にCO2吸入を使用して安楽死させ、そして各ラットから、右脳、左脳、脊髄、右目、左目、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、卵巣、胸腺、リンパ節、骨髄、および脚の筋肉を含む15の器官および組織からサンプルを採集した。滅菌技術を使用し、そして組織を各サンプル間で変化するディスポーザブル縫合糸除去キットを使用して収集した。組織を、液体N2中で迅速に凍結し、そしてそれらをゲノムDNAについて処理するまで−70℃で保存した。PCRを、Perkin ElmerのGeneAmp PCR Core Kit、およびtk配列由来の2つの30マーのオリゴ(5’−AAGTCATCGGCTCGGGTACGTAGACGATATC−3’(配列番号1)および5’−ATAGCAGCTACAATCCAGCTACCATTCTGC−3’(配列番号2))を使用して実施した。反応を、PTC−100熱サイクラー(MJ Reserach,Inc.)において実施し、そしてベクターが存在するサンプル中で生成物あたり158bpを得た。
【0118】
(免疫組織化学)
免疫組織化学を使用して、H&Eを用いて染色した直後に、切片毎におけるトランスジーン発現を検出した。従って、全12個の切片のうち1つをPBSで洗浄し、3%H2O2で30分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックして、dH2OおよびPBSで再びリンスし、そしてブロッキング溶液(PBS中の10%ヤギ血清+0.01%Triton−X100)中で30分間インキュベートした。次に、サンプルを、多角形(polygonal)の抗tk抗体(Yale)(1:1000)中で1時間インキュベートし、PBS中で3回洗浄し、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Vector)(1:300)中で1時間インキュベートし、そして再び洗浄した。抗体結合を、Streptavidin西洋ワサビペルオキシダーゼ(1:300)およびVIP色原体(Vector)を用いて可視化した。
【0119】
(定量分析)
トランスジーン発現を、Ken−a−visionマイクロプロジェクターを使用して、ARTZIIグラフタブレット(graphic tablet)上でtk−免疫染色した切片を投影することによって各脳について定量した。NIH画像1.6プログラムを使用して、画像を獲得および分析した。各脳についての陽性細胞の推定総数を、以下の式を使用して、100倍の倍率で決定した:
総tk細胞数=(n1+n2+n3...)×12×k
n=陽性細胞/切片
k:Ambercrombie方程式(1946)から誘導される補正係数
k=T/(T+D) T=切片の厚さ(40μ)、D 細胞直径(16μ);k=0.71。
tk−免疫反応性領域の容量を、50倍の倍率で投影した獲得された画像を使用してtk発現の面積を測定し、そして以下のように算出することによって決定した。
【0120】
【数1】
【0121】
(ここで、L=染色のAP距離(μ)=n×12×40uかつn=染色した切片の数)。
【0122】
どれほどのウイルスが脳組織を効率的に形質導入するために必要であるかを決定するために、Harvard注入ポンプを介して2.5×108、2.5×109、または2.5×1010個のAAV−tk粒子を受けたラット間で、免疫染色した切片の比較を実施した。
【0123】
測定される全てのパラメーターを用いて、明瞭な用量応答を観察した。最も高い力価を受けた動物由来の注入された組織は、中程度の用量群についての10mm3の容量および低用量群についての1mm3未満の容量と比較して、平均300mm3の組織(すなわち、成体ラット大脳半球の約60%(Leydenら(1998)Behav.Brain Res.87:59〜67))において、トランスジーン発現を実証した(図1a)。容量を、群間で有意な差もまた共に示した染色の平均面積および距離から算出した(図1b、c)。形質導入した組織の容量における発現は一様ではなかったが、染色の勾配を示した。注入部位を直接的に囲む領域は強力に標識されたが、一方、針管からの距離が増大するにつれ、検出され得る陽性細胞はより少なかった(図2)。最後に、図1dは、平均169,000と推定される、高用量群からの切片におけるtk陽性細胞の総数が、中程度の用量群のその総数よりも約10倍高いことを示す。
【0124】
(注入対浸透ポンプ送達)
免疫染色した脳切片の比較は、2つのポンプのベクターを送達する能力における類似性および相違性を実証した。平均容量、面積、AP距離、および陽性細胞の推定総数によって測定されるように、2つの群間のtk発現における有意な差異は存在しなかった(図3a〜d)。浸透ポンプ送達群中での全サンプルの針管の周囲のいくつかの組織の損失が存在したので(データは示さず)、推定される陽性細胞の数についての、この群の真の平均値は、より高いものであり得る。そして、両方の送達方法が著しいトランスジーン発現を生じた間に、標識されるようになる細胞の型において差異が存在した。ベクターを注入された組織は、ニューロンにおいてほとんど独占的にtkを発現し(図4a、b)、そして浸透ポンプを介してベクターを受けた組織は、ニューロンおよび注入の部位の近傍の反応性グリア細胞において発現を示した(図4c、d)。
【0125】
(組織分布)
組換えAAVが頭蓋内送達の部位から離れた位置で検出され得るか否かを決定するために、PCR分析を、高用量のベクターを受けた3匹のラットの各々由来の15の異なる器官および組織において実施した。送達方法(注入または浸透ポンプ)に関わらず、tk遺伝子から458bpのPCR産物を、Southernブロット分析を使用して、脊髄、脾臓、および脳の両半球において検出し得た(図6)。このラットのうちの1匹において、ベクターのセットを、腎臓由来の組織においても検出した。
【0126】
(毒性)
毒性が任意の送達方法に関連するか否かを評価するために、組織病理学を、各群由来のH&E切片に対して実施し、そしてその結果を表1に要約する。組織形態全体を十分に保存し、そして凍結または他の人為結果は存在しなかった。注入送達の群において、組織の損傷は、仮に存在したとしても最小であった。細胞性浸潤はなく、針管における壊死はなく、そして数匹の動物において最小の皮質性壊死が存在した。新たな出血を、高用量のラットのうちの1匹において見出し、そしてヘモジデリン沈着(過去における中程度の出血を示す)を、高用量動物のうちの4匹において見出した。あるいは、深刻な損傷が、針管、細胞性浸潤、およびヘモジデリン沈着の周りの大きな壊死性領域を含む浸透ポンプ送達群の全ての動物において見られた。
【0127】
従って、2.5×1010個のAAV−tk粒子の、8μl/時間で2.5時間での注入は、組織の300mm3の容量に対してAAVベクターを部分的に分布させるために十分である。この領域において、発現の勾配は、注入部位の直接的な周囲を強力に染色することによって観察され、そしてより遠くで陽性細胞がより少なくなる。分布は、2つの異なるポンプ送達系が比較される場合、用量(粒子数)の関数であるようであるが、送達時間またはサンプル容量の関数でなないようである:2.5×1010個の粒子の分布は、浸透ポンプ(容量=200μl、速度=8μl/時間、時間=24時間)か、または注入ポンプ(容量=20μl、速度=8μl/時間、時間=2.5時間)によって送達される場合に同じであった。さらに、著しく異なるレベルの発現を、3つの注入送達群の間で観察した。ここで、サンプル容量、速度、および送達時間は、一定に保たれ、そして粒子数のみが可変であった。
【0128】
AAVの対流を増強する送達を用いて得られたこれらの結果は、大きな高分子(例えば、ラット脳に対する超磁性体(supramagnetic)粒子)のCED研究から得られる結果と一致する(Krollら(1996)Neurosurg.38:746〜754、米国特許第5,720,720号)。磁気共鳴画像および組織化学染色を使用したKrollらは、組織中の粒子の分布を最大化することにおいて、用量が最も重要な変数であることを実証した。Krollは、注入容量が小さい(2μl)かもしくは中程度である(24μl)か否か、または注入速度が低い(6μl/時間)かもしくは高い(72μl/時間)か否かに関わらず、5.3から26.5μgへの粒子の増加が、組織中のこれらの分布の容量において5倍程度の増加を生じたことを報告した。
【0129】
細胞型特異性に関して、AAVがニューロンを形質導入し得、そして現在の研究がこの知見を確証することは、以前に報告されている。発現がニューロンにおいて非常に顕著であるという事実は、CMVプロモーターを使用するAAV遺伝子治療ベクターが、パーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の処置において有用であることを示唆する。活性なグリオーシスが存在する乱れた組織の小領域を除いては、成熟グリア細胞において発現は見られなかった。しかし、本発明者らは、AAV−CMV−tkベクターがグリア細胞において十分に発現され、そしてプロドラッグガンシクロビルと組合わせて得られる場合、これが、ヌードマウスにおける実験的なグリオームを処置することにおいて有用であることを以前に実証した。tk「自殺」遺伝子は、分裂細胞に対して毒性であると考えられるので、これは、標的腫瘍細胞に対してのみ危険を引き起こし、ニューロンの周囲に対しては危険を引き起こさないべきである。最後に、本研究に使用されるCMVプロモーターは、ニューロンにおける強力なトランスジーン発現を可能にする一方、細胞型特異的プロモーターの選択は、稀突起膠細胞およびグリア細胞のような他のCNS成分へのAAVの標的化を可能にする。
【0130】
本研究はまた、脳に送達されるAAVが、主に中枢神経系において含まれることを示す。他は、脳の2つの半球の間のウイルスの逆行性輸送、および循環する大脳脊髄液を介して脊髄に至るウイルスの能力を実証した。脾臓におけるベクターの外見は奇妙であり、そして2つの機構を示唆する。1つは、ウイルスが注入プロセスの間の血流に進入することであり、脾臓を介して循環され、ここで、ウイルスは「除去される」。しかし、これが事実ならば、AAVによって誘導されることが示される他の組織が、ウイルスを取り込むこともまた予測される。別の可能性のある機構は、樹状細胞によって示される機構であり得る。これらの細胞は、主に皮膚において見出され、外来物質を取り込み、循環へ進入し、そして脾臓において濃縮され、ここでこの外来物質はさらなるプロセシングまたは破壊を待ちながら長期間の間存在し得る。いずれの場合において、本発明者らは、送達の経路(筋肉内、静脈内、およびこの頭蓋内を含む)に関わらず、ベクターは、脾臓において常に検出されることを見出した。
【0131】
要約すると、高用量のAAVベクターの緩慢な頭蓋内注入は、齧歯類モデルにおける有意な部分または脳を形質導入することが示された。AAVを使用して、種々の中枢神経障害(腫瘍、発作から生じる損傷、および神経変性疾患を含む)を標的し得る。
【0132】
(実施例3:パーキンソン病の遺伝子治療)AADCをコードする導入遺伝子を保有するAAVベクターの対流増加送達は、以下のように、サルにおけるMPTP誘導性パーキンソン病において、ドパミン作用系を回復させることを示す。
【0133】
(動物)
パーキンソン病症状の進行に基づく移植のための候補としてアカゲザル(n=4、3〜5kg)を選択した。安定な過剰に病変したヘミパーキンソン(hemi−parkinsonian)症候群が達成されるまで、動物に2.5〜3.5mgのMPTP−HLCを、右内頸動脈を通じて注入(同側性といわれる)し、続いて0.3mg/kgのMPTP−HCLを4I.V.用量注入(対側性といわれる)することにより病変させた(Eberling,(1998)Brain Res.805:259〜262)。霊長類MPTPモデルは、ヒトへの試行の前に、評価の金本位制モデルであると考えられる(Lagston(1985)Trends Pharmcol.Sci.6:375〜378)。MPTPは、CNS中でモノアミンオキシダーゼBによりMPP+に転換される。MPP+は、パーキンソン病で見られるように、黒質ドパミン作用性ニューロンの退化および黒質線条体ドパミン経路の欠損をもたらす強力な神経毒素である。MPTP病変動物を、手術前の5ヶ月間に、臨床的な評定尺度および活性のモニタリングを使用して、週に一度臨床的に評価した。
【0134】
MPTP投与後、これらの動物は、一般的な緩慢、運動緩徐、硬直、平衡障害、および屈曲姿勢により明らかとなるパーキンソン病の臨床的徴候を発症させた。全てのサルにおいて右腕よりも左腕のほうが使用頻度が減少し、そして全て震えの徴候を示した。臨床的な評定尺度を用いて、全てのサルは、MPTP期間の後5ヶ月の間に、重篤で安定なパーキンソン症候群評点(23±1.7、23±1.2、24±1.7、19±3)に移和した。
【0135】
(ベクター産生)
1.pAAV−AADC:
1.5kbのBamHI/PvuIIヒトAADC cDNA(Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527〜2535)をAAV発現カセットpV4.1c中のBamHI/HindII部位にクローン化した。この発現カセットは、CMVプロモーター、CMVスプライスドナーおよびヒトβグロビンスプライスアクセプター部位からなるキメライントロン、ヒト成長ホルモンポリアデニル化配列、および隣接AAV ITR(逆方向末端反復)を含む(Herzog,R.W.ら、(1999)Nature Medicine 5:56〜63)。
【0136】
2.pAAV−LacZ:
ベクターpAAV−LacZを以下のように構築した。pSub201(Samulskiら(1987)J.Virol 61:3096−3101)のAAVコード領域を、XbaI部位間でEcoRIリンカーと置換して、プラスミドpAS203を生成した。pCMVβ(CLONETECH)のEcoRI〜HindIIIフラグメントを平滑末端化し、そしてKlenow処理したpAS203のEcoRI部位にクローン化し、そしてpAAv−lacZを生成した。
【0137】
3.pHLp19:
プラスミドH19は、AAVベクターの産生を増強する一方、複製コンピテントな偽野生型ウイルスの産生を抑制するように設計された改変型AAV−2ゲノムをコードする。このプラスミドは、cap遺伝子の3’位に移動されたP5プロモーターを含み、そしてそのプロモーターは、主にFLPリコンビナーゼ(recombinase)認識配列からなる5’非翻訳領域により置換される。pH19を、AAVゲノムの3’末端および5’末端の間の任意の相同性領域を除去するように構築した。さらに、pH19 P5プロモーターの7塩基対のTATAボックスを、その配列をGGGGGGGへ変異させることによって破壊した。
【0138】
pH19を、AAV−2プロウイルスであるpSM620由来のAAV−2配列を使用して、いくつかの処理工程において構築した。pSM620を、SmaIおよびPvuIIを用いて消化し、そしてSmaIフラグメントをコードする4543bpのrep遺伝子およびcap遺伝子をpUC119のSmaI部位中にクローン化し、7705bpのプラスミドであるpUCrepcapを生成した。次いで、rep遺伝子およびcap遺伝子と隣接する残ったままのITR配列を、以下のオリゴヌクレオチド:
145A;5’−GCT CGG TAC CCG GGC GGA GGG GTG GAG TCG−3’(配列番号3)
145B;5’−TAA TCA TTA ACT ACA GCC CGG GGA TCC TCT−3’(配列番号4)
を使用して、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発により欠失させた。
【0139】
得られたプラスミド、pUCRepCapMutated(pUCRCM)(7559bp)は、任意のITR配列(4389bp)をもたないAAV−2ゲノム全体を含む。変異誘発性オリゴヌクレオチドにより一部導入されたSrfI部位は、この構築物において、rep遺伝子およびcap遺伝子と隣接する。AAV配列は、AAV−2の146〜4,534位に対応する。
【0140】
Eco47III部位をP5プロモーターの3’末端で導入し、P5プロモーター配列の切除を容易にした。これを行うために、pUCRCMは、プライマーP547(5’−GGT TTG AAC GAG CGC TCG CCA TGC−3’)(配列番号5)を用いて変異誘発した。得られた7559bpのプラスミドは、pUCRCM47IIIと呼んだ。
【0141】
pBSIIsk+のポリリンカーを、BSSHIIで元のものからの切除、およびオリゴヌクレオチドblunt1およびblunt2で置換することにより変えた。得られたプラスミド、bluntscriptは、2830bpの長さであり、そして新規のポリリンカーは、制限部位EcoRV、HpaI、SrfI、PmeIおよびEco47IIIをコードする。blunt1および2の配列は、以下である:
blunt1;5’−CGC GCC GAT ATC GTT AAC GCC CGG GCG TTT AAA CAG CGC TGG−3’(配列番号6)
blunt2;5’−CGC GCC AGC GCT GTT TAA ACG CCC GGG CGT TAA CGA TAT CGG−3’(配列番号7)。
【0142】
pH1は、pUCRCM由来のSmaIフラグメントをコードする、4398bpのrepおよびcap遺伝子をpBluntscriptのSmaI部位に連結することによって構築され、その結果、HpaI部位は、rep遺伝子に近位であった。pH1は、7228bpの長さである。
【0143】
pH2は、pH1のP5プロモーターがpGN1909の5’非翻訳領域により置換されることを除くと、pH1と同一である。これを行うために、pW1909lacZ由来の5’非翻訳領域をコードする329bpのAscI(blunt)−SfiIフラグメントをpH1の6831bpのSmaI(部分的)−SfiIフラグメント中に連結してpH2を作製した。pH2は、7156bpの長さである。
【0144】
pUCRCM47III由来のp5プロモーターをコードする、172bpのSmaI−Eco43IIIフラグメントのpH2中のEco47III部位への挿入により、P5プロモーターをpH2の3’末端に付加した。3つのAAVプロモーター全ての転写方向が同じになるように、このフラグメントを合わせた。この構築物は、7327bpの長さである。
【0145】
P5の3’側のTATAボックス(AAV−2は、255〜261に位置し、配列は、TATTTAA)を、変異誘発性オリゴヌクレオチド5DIVE2(5’−TGT GGT CAC GCT GGG GGG GGG GGC CCG AGT GAG CAC G−3’)(配列番号8)を用いて、配列をGGGGGGGに変化させることにより除去した。得られた構築物pH19は、7328bpの長さである。
【0146】
4.プラデノ5(pladeno5):
プラデノ5は、293細胞中にトランスフェクトされる場合、AAVベクター産生のためのアデノウイルスヘルパー機能の完全なセットを提供するプラスミドである。これは、本質的に、アデノウイルス2由来のE2A、E4およびVA RNA領域およびプラスミド骨格から構成される。このプラスミドを、以下のように構築した。
【0147】
pBSIIs/k+を、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発および以下のオリゴヌクレオチド:
5’−CCG CTA CAG GGC GCG ATA TCA GCT CAC TCA A−3’(配列番号9)
を使用して、ポリリンカーおよび単一のEcoRV部位を有するα相補性カセットをコードする637bp領域を置換するために改変した。制限部位BamHI、KpnI、SrfI、XbaI、ClaI、Bstl107I、SalI、PmeIおよびNdeIをコードするポリリンカーを、次いでEcoRV部位中にクローン化した(5’−GGA TCC GGT ACC GCC CGG GCT CTA GAA TCG ATG TAT ACG TCG ACG TTT AAA CCA TAT G−3’)(配列番号10)。
【0148】
アデノウイルス−2 DNAを消化し、そしてE2A領域(アデノウイルス−2ゲノムの22,233〜27,568位に対応する5,335bpのKpnI−SrfIフラグメント)をコードする制限フラグメント、およびVA RNA(アデノウイルス−2ゲノムの10,426〜11,157位に対応する、731bpのEcoRV−SacIIフラグメント)をコードする制限フラグメントを単離した。E2AフラグメントをポリリンカーのSalI部位とKpnI部位との間に組込んだ。最初に、アデノウイルス−2の21,606〜35,470位(遺伝子の5’末端をコードする)に対応する13,864bpのBamHI−AvrIIフラグメント、およびアデノウイルス−2の35,371〜35,833位(遺伝子の3’末端をコードする)に対応する462bpのAvrIIおよびSrfI消化されたPCRフラグメントを、pBSII/k+のBamHI部位とSmaI部位との間に連結させることによって、pBSII/k+中でE4領域をアセンブリした。PCRフラグメントを産生するために使用されるオリゴヌクレオチドは、E4プロモーターおよびアデノウイルス末端反復の連結部にSrfI部位を導入するように設計した。その連結部は、配列5’−AGA GGC CCG GGC GTT TTA GGG CGG AGT AAC TTG C−3’(配列番号11)および5’−ACA TAC CCG CAG GCG TAG AGA C−3’(配列番号12)を有する。インタクトなE4領域を、SrfIおよびSpeIで切断することによって除去し、そしてアデノウイルス−2の32,644〜35,833位に対応する3,189bpフラグメントを、SrfI部位とXbaI部位との間のE2A中間体中にクローン化した。最終には、SacII部位のT4ポリメラーゼ媒介平滑末端改変の後、VA RNAフラグメントをBstl107部位中に挿入した。プラデノ5中の遺伝子を、E2AおよびE4プロモーターの5’末端が隣接するように整列させ、これは、互いに逆方向で転写する領域を生じる。このVA RNA遺伝子は、E4遺伝子の3つのプライム末端に位置し、E4遺伝子の方向へ転写する。このプラスミドは、11,619bpの長さである。
【0149】
(AAVベクター産生)
HEK293細胞株(Graham,F.L.、Smiley,J.,Russel,W.C.,およびNaiva,R.(1977)Characteristics of a human cell line trasnformed by DNA from human adenovirus type 5.J.Gen.Virol.36:59〜72)を、4.5g/リットルのグルコース、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、および2mMのグルタミンを含む完全DMEM(Bio Whittaker)中で、空気中5%CO2において37℃で培養した。40のT225フラスコにそれぞれ2.5×106細胞を播種し、そして3日間増殖させて70〜80%のコンフルエンシー(フラスコあたり約1.5×107細胞)までトランスフェクトさせた。
【0150】
Matsushitaら(Matsudhita,T.、Elliger,S.、Elliger,C.、Podsakoff,G.、Villarreal,L.、Kurtzman,G.J.、Iwaki,Y.、およびColosi,P.(1998)「Adeno−asociated virus vectors can be efficiently produced without helper virus」Gene Therapy 5:938〜945)によって記載されるトランスフェクション方法および精製方法を、少々改変して、AAVベクター産生に用いた。このベクター産生過程は、HEK293細胞の、フラスコあたりそれぞれ20μgの以下の3つのプラスミド:AAV−AADCプラスミド、AAVヘルパープラスミド(pHLP19、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子を含む)、およびアデノウイルスヘルパープラスミド(プラデノ5、以前ではpVAE2AE4−2(4)として公知であり、そしてE2A、E4および精製アデノウイルス−2由来のVA RNA遺伝子から構成される)での、リン酸カルシウム法(Wigler,Mら(1980)Transformation of mammalian cells with an amplifiable dominant−acting gene.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567〜3570)を用いた、6時間の同時トランスフェクションを含む。トランスフェクションの後、培地を交換し、そして3日後に細胞を採集した。次いで、細胞ペレットを3サイクルの凍結−解凍溶解(断続的にボルテックスしながら、ドライアイス−エタノール槽と37℃槽との間で交互にする)に供した。細胞細片を遠心分離で除去した(10,000g、15分間)。上清を2回遠心分離して、残っている懸濁物を除去し、そして続いてBenzonaseR(200u/ml)で37℃で1時間処理し、細胞DNAの混入を減少させた。インキュベーションの後、上清をCaCl2 25mMにし、そして氷上に1時間置いた。生じた沈殿物を遠心分離(10,000g、15分間)で除去し、そして廃棄した。次いで、この上清をPEG(8000) 10%にし、そして氷上に3時間置いた。この沈殿物を遠心分離(3000g、30分間)で収集し、そして20 T225フラスコあたり50mM NaHEPES、0.15M NaCl、25mM EDTA(pH8.0)の4ml中に再懸濁した。固体CsClを添加して、1.4g/mlの密度にし、そしてサンプルをBeckman T170ローターで、150,000gで24時間、遠心分離した。AAV含有画分をプールし、1.4g/mlのCsCl密度に調整し、そしてBeckman NVT65ローターで、350,000gで16時間遠心分離した。次いで、AAVを含む画分を濃縮し、そして賦形剤緩衝液(PBS中5%ソルビトール)に対してダイアフィルトレートした。精製したAAV−AADCベクターの力価を、定量的ドットブロット分析を用いて決定し、そしてベクターストックを、−80℃で保存した。
【0151】
(ウイルス注入)
手術室において滅菌野を作り、注入システムを準備した。注入カニューレを生理食塩水でフラッシュし、針と管材との間の界面の完全性を評価した。滅菌注入カニューレとローディングラインを、そのシステム中での空気泡の集積を妨げるように極度の注意を払って、適切なフィッティングを用いて接続した。非滅菌性オイル注入ラインを、以前に記載されたように用意し、そしてオイルを満たした1mlの気密Hamiltonシリンジを、Harvard注入ポンプに取り付けた。6つの注入カニューレを、微量透析(microdialysis)ホルダーにはめ込み(1ホルダーあたり3つのカニューレ)、そして定位タワーにマウントした。オイルラインおよびローディングラインの結合後に、針カニューレにAAVをプライムし、そしてこの注入システムを、手術テーブルに移した。最初の注入速度を、0.1pl/分に設定し、このラインを視覚的に検査して、このシステムを通る液体のスムースな流れを確実にし、そしてこのカニューレを、それらの標的部位にまで手動で下げた。最終的な視覚検査を行い、この注入システム中の任意の空気泡についてチェックした。
【0152】
このカニューレシステムは、以下の3つの構成からなった:(i)滅菌注入カニューレ;(ii)AAV−AADCまたはAAV−LacZ(コントロール)を収容した滅菌ローディングライン;および(iii)オリーブオイルを含む非滅菌注入ライン。各ラインの準備を、簡単に本明細書中に記載する。この注入カニューレは、シリカガラス(外径、.016”、内径、.008”;Polymicro Technologies,Phoenix,AZ)を備え付けた27G針(外径、.03”;内径、.06”;Terumo Corp.,Elkton,MD)からなり、そしてこれを、そのシリカの遠位端がTeflon管材(.03”ID,Upchurch Scientific,Seattle,WA)から約15mm延びるように、その管材中に置いた。この針を、スーパーグルー(superglue)を用いてその管材に固定し、そしてこのシステムを使用前に漏れについてチェックした。この管材の近位端に、Tefzelフィッティングおよびフェルールを取り付け、隣接するローディングラインを接続した。
【0153】
ローディングラインおよび注入ラインは、Tefzel 1/1 6”フェルール、ユニオン、および雄型Luerロックアダプター(Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA)を遠位端に備えた、50cmに切断したTeflon管材(外径、.062”;内径、.03”)からなった。この滅菌ローディングラインは、1000ml容量まで収容し、そして使用前に生理食塩水をプライムした。
【0154】
その動物に、最初にKetamine(Ketaset;10mg/kg、i.m.)を用いて鎮静させ、挿管し、そして手術の用意をした。静脈ラインを、橈側皮静脈または伏在静脈に位置付けした22ゲージのカテーテルを用いて確立し、等張液を5〜10ml/kg/時間で送達した。イソフルラン(Aerrane,Omeda PPD Inc.、Liberty,NJ)を、その動物が麻酔の安定な水準を維持するまで、1〜3%で送達した。頭部を、ベースラインのMRIスキャンの間に得られたプリセット値に従って、MRIコンパチブル定位フレーム中に置いた。この動物に、皮下心電図電極、直腸消息子を取り付け、そして身体を循環水ブランケットで覆い、コア温度を36〜38℃に維持した。心電図および心拍数(Silogic ECG−60、Stewartstown,PAを使用する)、ならびに体温を、この手順の間に連続的にモニタリングした。頭部を、Betadineおよび70%エタノールで前処理し、滅菌野を作製し、電気焼灼器(Surgistat Electrosurgery,Valleylab,Inc.,Boulder,CO)を用いて、皮膚、筋肉および筋膜を通して正中切開を行った。
【0155】
筋膜および筋肉の穏やかな収縮は、皮質の侵入部位にわたる頭蓋の露出を可能にした。片側の開頭術を、Dremel歯科用ドリルを用いて行い、標的部位の上の硬膜の3cm×2cmの領域を露出させた。ホルダーに取り付けた複数の針カニューレを、線条体の標的部位に定位的に誘導した。ICA MPTA注入と同側の半球へのAAVの片側注入のための外科的変数を、表2に要約する。
【0156】
【表2】
【0157】
注入の約15分後に、このカニューレアセンブリを、1mm/分の速度で、皮質を離れるまで上昇させた。この皮質を、生理食塩水でリンスし、骨縁をロンガー(ronguer)で削り取り、そして創傷部位を解剖学的層中に閉じた。鎮痛薬(Numorphan,1M)および抗生物質(Flocillin,1M)を、外科的プロトコルの一環として投与した。動物を、麻酔からの十分な回復についてモニタリングし、それらのホームかご(home cage)中に置き、そして手術後約5日間、臨床的に観察(2回/日)した。総神経外科手術時間は、1動物あたり4.5時間であった。
【0158】
線条体内AAV投与の後、動物を、異常な行動のいずれかの徴候について評価した。動物を、獣医学技術者によって、臨床的観察形態を用いて、1日に2回、観察および評価した。すべてのサルは、手術から2時間以内に回復し、そしてそれら自体を維持し得た(栄養補給および毛づくろいを含む)。手術後の全8週間の間に、いずれの有害な効果の徴候も存在しなかった。
【0159】
(磁気共鳴画像法)
標的部位の可視化は、尾状核または被殻内の細胞の正確な配置のために必須である。MRIと組み合わせた定位的手順を用いて、所望の標的にされた構造内にカニューレを正確に配置した。すべての動物を、手術前にスキャンして、各個々の動物についての標的移植部位の正確な定位座標を作成した。PETスキャンニングのために使用される同じ基準マーカーを、MRI画像およびPET画像の相互重ね合わせ(co−registration)のためにフレーム上に置いた。手短には、スキャンニング手順の間、この動物を、ケタミン(Ketaset,7mg/kg、im)およびキシラジン(Rompun,3mg/kg,im)の混合物を用いて鎮静させた。この動物を、MRIコンパチブル定位フレーム中に置き、イヤーバーおよびアイバー測定を記録し、そしてIVラインを確立した。60の冠状画像(1mm)および15の矢状画像(3mm)を、GE Signa 1.5 Tesla機械を用いて撮影した。磁気共鳴画像を、T1重み付けし、スポイルグラスシークエンスを、反復時間(TR)=700ms、エコー時間(TE)=20ms、およびフリップ角30’で用いて、3つの平面中に得た。視野は、192マトリックスおよび2NEX(シグナル情報あたりの平均数)で15cmであった。ベースラインスキャンニング時間は約20分であった。標的にされた構造(例えば、尾状核)の前後分布および内側外側分布を、冠状MR画像を用いて決定した。外科的座標を、尾状核および被殻の拡大した冠状画像(1.5×)から決定した。
【0160】
(陽子射出断層撮影法(PET))
全ての4匹の動物は、2つのPETスキャン、MPTP病変の確立後のベースラインスキャン、およびAAV−AADCまたはAAV−LacZのいずれかの注入の7〜8週間後での第2のスキャンを受けた。PETの前に、各動物は、1.5Tマグネットおよび定位フレーム(これは、外部基準マーカーの使用を通じて、PETおよびMRデータセットの間の相互重ね合わせを可能にした)を用いる磁気共鳴(MR)画像法を受けた。PET研究を、PET−600システム、平面中で2.6mmの解像度、ならびに遮断ギャップを低減させることによって、電流研究のために6mmから3mmに増加させた調整可能な軸解像度を有するシングルスライストモグラフで行った。このトモグラフの特徴は、以前に記載されている(Budingerら(1991)Nucl.Med.Biol.23(6):659〜667;Valk.(1990)Radiology 176(3):783〜790)。サルに挿管し、そしてイソフルランで麻酔し、定位フレーム中に置き、そしてPETスキャナー中に位置付けし、線条を通過する冠状脳スライスを画像化した。サルを、定位フレームでの前方−後方スケール、およびトモグラフに接続したレーザー光を用いて各研究について同じ方法で位置付けした。スキャナー中に位置付けした後、5分の透過スキャンを得て、フォトン減衰について修正し、そして動物の配置をチェックした。次いで、このサルに、10〜15mCiのAADCトレーサー、6−[18F]フルロ−L−m−チロシン(FMT)を注射し、そして画像化を開始した。画像化を60分間続け、その時間にこのサルを再配置して、最初に対して尾側の第2のスライス6mmを画像化した。
【0161】
PETおよびMRデータセットを、相互重ね合わせし、そして目的の領域(RO)を、MRに関して50〜60分(スライス1)および65〜75分(スライス2)で収集したPETデータ上に、対側の半球(ICA MPTP注入と反対側)中の線条について描いた。ROの鏡像を、同側(MPTP注入の側)の半球中に作成し、そして放射能カウント(cm2/秒)を各ROIについて決定した。線条体カウントを、各研究について2つのスライスについて平均をとった。FMT取り込み非対称比を、各動物について各時点で算出した。これは、同側(病変)線条についてのカウントを、対側(非病変)線条についてのカウントから差し引き、そして同側線条および対側線条についての平均カウントで割ることによって算出した。非対称比における動物間の可変性を低減するために、変化スコアを、各動物についてのベースライン研究についての非対称比から、第2のPET研究からの非対称比を差し引くことによって算出した。不対t検定を用いて、AAV−AADCおよびAAV−LacZサルについてのペット非対称比における変化を比較した。
【0162】
予測されるように、すべての4匹のサルは、ベースラインにて、同側線条よりも対側線条(これは、無視できるほどの取り込みを示した)においてより大きなFMT取り込みを示した。第2のPET研究の時点で、AAV−AADC処理したサルは、同側の線条における増加したFMT取り込みを示したが、AAV−LacZ処理した動物は、ベースラインからの変化を示さなかった(図7)。ベースラインから第2のPET研究へのFMT取り込み非対称性における変化は、AAV−LacZサルについて(これは、両方の時点でより大きな対側FMT取り込みを示した)よりも、AAV−AADCサルについて(これは、第2の研究の時点でほとんど非対称性を示さなかった)有意に大きかった(p<0.01)(図8)。
【0163】
(剖検)
動物を、ペントバルビタールナトリウム(25mg/kg、i.v.)で深く麻酔し、そしてAAV投与の8〜9週後、および術後のPETスキャンの1週間後に屠殺した。屠殺の日に、血液サンプルを採取し、そして動物を、L−ドパ/カルビドパ調製物(Sinemet 250/25)で処理した。血漿および頸部CSFを部検の時点で回収した。脳を、Sinemet投与の30〜45分後に取り出し、脳基質中に置き、そして3〜6mmスライスに冠状に切片化した。各サル由来の1つの3mm厚線条体脳スライスを、−70℃のイソペンタン中ですぐに凍結し、そして生化学分析のために凍結保存した。残りの6mm厚のスライスを、ホルマリン中に72時間に後固定し、PBS中で12時間洗浄し、そして上行スクロース勾配(10〜20〜30%)で調整し、そして凍結した。
【0164】
(組織学的分析)
ホルマリン固定した脳スライスを、低温槽中で30μm厚冠状切片に切断した。凍結した切片を、尾状核の吻端のレベルで始めて、尾〜黒質のレベルまでの様々の連で回収した。各切片を、70℃での不凍液中に保存および維持した。連続切片を、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ドパデカルボキシラーゼ(DDC)またはβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)免疫反応性(IR)について染色した。12番目毎の切片を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、そして3% H2O2中で20分間インキュベートし、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。PBS中での洗浄の後、この切片をブロッキング溶液(THについて10%の正常なウマ血清、またはDDCおよびβ−galについて10%の正常なヤギ血清、ならびにPBS中0.1% Triton−X 100)中で30分間インキュベートし、続いて一次抗体溶液−TH(マウスモノクローナル、Chemicon,1:1000)、DDC(ウサギpolygonal,Chemicon,1:2000)、またはβ−gal(ウサギpolygonal,Cortex Blochem,1:5000)中で24時間インキュベートした。次いで、切片を、THについてビオチン化抗マウスIgG二次抗体中で1時間、またはDDCおよびβ−gal(Vector Labs,1:300)について抗ウサギIgG二次抗体中で1時間インキュベートした。抗体結合を、ストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Labs,1:300)、およびニッケルを含有するDAB色素原(Vector Labs)で可視化した。次いで、切片をカバーガラスで覆い、そして光学顕微鏡下で試験した。組織をパンチングした後、新しく凍結したブロックを、20umで切片化した。切片を、DDC−IRについてH&Eで染色した。
【0165】
尾状核、被殻および淡蒼球内のAAV感染細胞の総数の定量評価を、光学解像手順を用いることによって決定した。光学解像系は、Prior H128コンピュータ制御x−y−zモーター付ステージに固く連結されたLeitz Otholux 11顕微鏡、高感度Sony 3CCDビデオカメラシステム(Sony,Japan)およびMacintosh G−3コンピュータを備えるコンピュータ補助画像解析システムからなった。すべての分析を、NeuroZoomソフトウェア(La Jolla,CA)を用いて行った。各連の測定の前に、装置を較正した。尾状核、被殻および淡蒼球中のポジティブニューロンの領域を、低倍率(2.5×対物レンズ)で概略を取った。線条内のAAV感染した細胞の分散した存在のために、概略を取った領域の1%を、0.95開口数を有する63×PLAN−NEOFLUAR液浸系対物レンズを使用する、ディセクターカウンティングフレーム(1 505 1IM2)の系統的ランダム設計で測定した。パイロット実験に基づいて、等間隔に置かれた少なくとも4つの切片をサンプリングした。ディセクター原理を使用することによって、200までのAADCポジティブニューロンを、すべての測定について、一定、系統的、およびランダムな設計手順を使用することによって、光学的スキャンニングによってサンプリングした。切片の平均厚を、23ミクロンで測定した。一旦切片の頂部の焦点が合うと、z−−平面を1〜2gm下げた。次いで、3つの5 lim厚ディセクターを通して焦点を下げる間にカウントした。底禁制平面が分析に決して含められないことを確実にするように注意を払った。構造物の容量を、標準的な手順に従って算定した。試験された構造物中の陽性細胞の総数を、式N=Nv×Vs(ここで、Nvは数値密度であり、そしてVsは構造物の容量である)を用いることによって算定した。
【0166】
TH−IR染色は、全てのサルにおける同側の黒質中の黒質線状体線維および細胞体の確実な減少を示した。対側は、線条および黒質中においてTHおよびAADC−IRの可変性の減少を示した。
【0167】
DDC−IRは、AAV−LacZで処理したサルにおいてのみ、TH−IRに類似した。AAVAADC処理したサルは、同側で強いAADC染色を示した。この染色は、対側で見られた染色に勝った。高密度のAADC−IR細胞が、AAV−AADC処理動物のうちの1匹中の80%の線条および100%の淡蒼球を通じて見られた。立体的解析は、被殻において1mm3あたり18,384細胞、尾状核において1mm3あたり15,126細胞、そして淡蒼球において1mm3あたり9,511細胞を示した。AAV感染細胞の総数は、少なくとも16×106細胞であると評価された。他のAAV−AADC処理したサルにおいて、AADC−IR細胞は、60%を超える同側線条(尾状核において1mm3あたり7,515細胞、そして被殻において1mm3あたり15,352細胞、そして淡蒼球において1mm3あたり3,850細胞を有する)中で見られた。対側線条においては、AADC細胞は見られなかった。AAV/LacZ処理したサルは、同側線条体でも対側線条体でもAADC−IRを示さなかった。
【0168】
AAVに感染した細胞は、神経形態を有するようであった。感染した細胞の平均直径は、被殻において9±2.3μm、および14.6±9μmであった。多くのLac−ZおよびAADC細胞は、典型的な中程度の棘状の神経形態を有した。AAV感染した細胞は、ニューロンマーカーNeu−Nについて陽性であった。AAV−AADC処理したサルにおいて、4−6Neu−N−陽性細胞のうちの1つは、尾状核および被殻においてAADC陽性であり、そして3−4Neu−N−陽性細胞のうちの1つは、淡蒼球においてAADC陽性であった。Lac−ZまたはAADC処理したサル中のAAV感染した細胞のどれも、GFAP陽性ではなかった。
【0169】
カニューレ路に隣接する領域を、NissiおよびH&E染色で染色した。細胞傷害性の徴候は観察されなかった。カニューレからの距離にかかわらず、血管周囲カフィングは観察されなかった。Neu−N免疫染色を用いて対側と比較した場合に、注入部位に近くでニューロン細胞減少の徴候は存在しなかった。GFAP免疫染色は、AAV処理した線条内で異常なグリア反応を検出し得なかった。
【0170】
(生化学分析)
脳領域を、マイクロパンチャーを用いて新しく凍結したブロックから取り出し、L−ドパおよびドパミン代謝物の組織レベル、ならびにAADCの活性およびAAV−ベクターの存在を評価した。脳領域は、線条および皮質を含んだ。
【0171】
凍結したマイクロパンチを回収し、1%エタノールおよび0.02%EDTA(Fisher Scientific)を含む0.1M過塩素酸(Fisher Scientific)の300pl中で超音波処理によってホモジナイズした。50plのホモジネートを、タンパク質分析(BCA Protein Assay Kit Pierce#23225)のために取り出し、そして残りを、最大の速度で1.5分間、微量遠心分離中で遠心分離した。30〜50plのホモジネートを、以下を用いるHPLCによってカテコールアミン分析のために使用した:Ultrasphere C−18イオン対、5p、4.6×250mmカラム(Beckman 235329);Waters 717plusオートサンプラー(4℃)、Waters510ポンプ(0.9mv/分)、および電流滴定電気化学検出器(Decade)(Eox.0.82Vに設定した)。このカラムおよび検出セルを、31℃に設定した。移動相は、2L HPLCグレード水、2.2g1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩(Fisher Scientific)、0.17g EDTA、12mlトリエチルアミン(Fisher Scientific)、pHを8ml 85%リン酸(Fisher Scientific)で2.5に調整した、および60mlアセトニトリル(J.T.Baker)を含んだ。検出器の出力を記録し、Waters Millennium 32 Chromatography Managerで分析した。
【0172】
(AADC分析)
AADC活性を、Nagatsuら(1979)Anal.Biochem.100:160〜165の方法の適用によって決定した。手短には、組織(10mg/ml)を、0.04mMピリキシルホスフェート(AADC補因子)および0.2mMパルジリンを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.4)中でホモジナイズした。サンプルを、37℃にて5分間プレインキュベートし、そして反応をL−ドパの添加(最終濃度:100μM)によって開始した。インキュベーションを20分間行い、そして0.02mlの濃縮した過塩素酸の添加によって反応を停止した。遠心分離の後、上清のドパミン濃度を、電気化学検出を用いるHPLCを使用して決定した(例えば、Boomsaら(1988)Clin.Chem.Acta 178−59−69を参照のこと)。組織ペレット中のタンパク質濃度を、BCA Protein Assay Kit(Pierce#23225)を用いて決定した。結果を、タンパク質のnM/時間/mgとして表す。凍結した組織パンチは、標準的なプロトコルに従って処理した。
【0173】
すべてのサルの皮質領域は、可変のレベルのL−ドパを示したが、それらは各サル内で一致した。予測されるように、皮質内でL−ドパからドパミンへの脱カルボキシル化は存在しなかったが、MPTP投与の対側での線条において、L−ドパは、ドパミンに変換され、そしてさらにHVAに代謝された。AAV−Lac−ZサルのMPTP処理した線条において、L−ドパはドパミンに変換されず、HVAにも代謝されなかった。L−ドパの組織レベルはまた、AAV−Lac−Z処理したサルの皮質においてと同じレベルのままであった。AAV−AADC処理したサルのMPTP処理した線条において、L−ドパは、ドパミンおよびHVAに変換され、そしてこの領域中のL−ドパの組織レベルは、低減された。
【0174】
AADC活性は、AAV−LacZ処理したサルの皮質領域において、およびMPTP処理した線条において非常に低かった。L−ドパは、対側の線条においてドパミンに変換され、これは、高レベルのAADC活性を示唆する。AAV−AADC感染したサルのMPTP処理した線条からの組織パンチは、残されたL−ドパのトレースのみを有する非常に高いドパミンレベルを含んだ。
【0175】
これらの結果は、注入されたAAV−AADCベクターおよび全身のL−ドパの組合せが、PDの処置のための有望な治療であることを実証する。
【0176】
従って、本発明は、CNS障害(例えば、パーキンソン病)のための新規かつ効率的な処置方法を提供する。さらに、本発明はまた、インビボでドパミン活性を決定するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1(パネルA〜D)は、頭蓋内注入ポンプ送達後のラットにおける用量応答(AAV−tk導入遺伝子の発現)を示す。組織容量(図1A);平均面積(図1B);長さ(図1C)、および導入遺伝子を発現する細胞の数(図1D)が示される。
【図2】図2は、AAVベクターの注入後のラット脳組織の標識を示す、ハーフトーン複写である。
【図3】図3(パネルA〜D)は、注入ポンプ(IP)または浸透圧ポンプ(OP)のいずれかを介したAAV−tkの頭蓋内送達を示す。組織容量(図3A);平均面積(図3B)、長さ(図3C)、および導入遺伝子を発現する細胞の数(図3D)が示される。
【図4A】図4Aは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Aは、ニューロンにおけるtkの発現を示す。
【図4B】図4Bは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Bは、ニューロンにおけるtkの発現を示す。
【図4C】図4Cは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Cは、浸透圧ポンプ注入の部位付近のニューロンおよびグリアにおける発現を示す。
【図4D】図4Dは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Dは、浸透圧ポンプ注入の部位付近のニューロンおよびグリアにおける発現を示す。
【図5】図5は、AAV−tkベクターを注入された被検体由来の組織の、サザンブロット分析を示す、ハーフトーン複写である。
【図6】図6は、MPTP病変サルの脳のAADCに対する免疫染色を示す。左側(コントロール)は、制限された染色を示し、一方で右側(AAV−AADC処置)は、広範なAADC免疫染色を示す。
【図7】図7は、1側性のMPTP病変サルの脳におけるドパミン活性を示すFMT PET走査である。左側(基線)は、病変部位における制限された活性を示し、一方で右側(AAV−AADC投与の8週間後)は、正常なレベルのドパミン活性を示す。
【図8】図8(パネルA〜C)は、MPTP病変サルにおけるL−ドパレベルの生化学的分析を示す。パネルAは、L−ドパが、AACD酵素によってドパミンに変換されることを示す。皮質領域においては、MPTP処置にもかかわらず、L−ドパのドパミンへの変換はわずかであるかまたは全くなかった。線条は、AADCに富み、従って、L−ドパの大半がこの領域においてドパミンに変換された。MPTP投与に対して同側性線条において、ドパミンへのL−ドパの変換は損なわれ、AAV−LacZ処置サルにおける皮質活性と類似であった。両方のAAV−AADC処置動物が、ほぼ正常なL−ドパのドパミンへの変換を示す。パネルBは、HVA分析を示す。HVAは、ドパミン異化代謝産物の代謝産物である。皮質領域は、L−ドパをドパミンへ変換し得ないので、HVAレベルは低い。パネルAにおいて示されるように、線条はL−ドパをドパミンへと変換し、従って、ドパミンは、この領域においてHVAへと異化代謝される。AADC活性は、AAV−LacZ処置サルにおいて回復されなかったので、MTPT同側性線条におけるHVAレベルは低い。HVAレベルは、MPTP同側性線条において、AAV−AADC処置サルにおいて有意に上昇した。パネルCは、異なるL−ドパ投与後の組織パンチにおいて測定されたL−ドパレベルを示す。異なるL−ドパ吸収に起因して、組織レベルではサル間で異なる。しかし、これは、各被検体間で類似である。L−ドパの組織レベルは、AADC酵素が回復されたので、AAV−AADC処置サルのMPTP同側性線条において劇的に減少した。この領域におけるAADCの活性は、非常に強力である。なぜなら、L−ドパの組織レベルが対側性線条におけるレベルよりも低いからである。
【図9】図9は、インビトロでのAADC酵素の活性を示すグラフである。材料および方法において記載されるように、組織パンチをL−ドパと共にインキュベートした。AADC酵素活性を、L−ドパのドパミンへの変換の速度を測定することによって決定した。皮質領域は、低レベルのAADCを含む。対側性線条におけるAADC活性は高い。しかし、脳のこの側にはいくつかのドパミン作用性病変が存在するので、このレベルは変動し得る。MPTP同側性線条におけるAADC活性は、AAV−Lac−Z処置サルにおいて有意に減少されるが、これは、AAV−DDCサルにおいて完全に回復される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、ウイルスベクターのCNSへの効率的な送達に関する。より詳細には、本発明は、中枢神経系(CNS)障害(特に、神経伝達物質であるドパミンに関与する中枢神経系障害)の処置のための遺伝子治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
CNS障害は、主な公衆衛生問題である。パーキンソン病(PD)のみで、合衆国において100万人を超える人々が罹患している。臨床的に、PDは、突発的な運動、歩行困難、体位不安定性、硬直、および震えにおける減少によって特徴付けられる。パーキンソン病は、ドパミンの有効性の減少をもたらす脳の黒質における色素沈着ニューロンの変性によって引き起こされる。ドパミンの変性した代謝はまた、脳の特定領域におけるドパミンの増大を示す神経分裂病患者においても関係している。
【0003】
現在、多くのCNS障害(例えば、PD)は、治療剤の全身投与によって処置される。しかし、全身投与はしばしば、血液脳関門を通過するための薬物の不能性が理由で、そして多くの薬物は末梢性の副作用を引き起こすので、有効ではない。従って、多くの潜在的に有用な化合物(例えば、タンパク質)は、全身的に投与され得ない。これらの化合物が血液脳関門を貫通する際に首尾よい場合、これらはまた、中枢神経系の副作用もまた誘導し得る。現在、PDの処置は、しばしば、ドパをドパミンへと脱カルボキシル化させる酵素である芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)の末梢インヒビターであるカルビドパのような化合物との組み合わせにおける、ドパミン前駆体であるL−ドパの経口投与を含む。しかし、患者の大半において、罹患した脳領域におけるAADCの生成は、PDの進行につれて減少し、結果として、より多用量のL−ドパが必要とされ、患者の治療的効果を減少させ、そして副作用を増大させる。
【0004】
現在の全身的療法の制限を考慮すると、遺伝子送達は、PDのようなCNS障害の処置のための有望な方法である。遺伝子移入目的のために多くのウイルスに基いた系が記載されている(例えば、この目的のために現在最も広範に使用されるウイルスベクター系であるレトロウイルス系)。種々のレトロウイルス系の説明については、例えば、特許文献1;非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;ならびに、非特許文献5を参照のこと。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)系は、遺伝子治療における使用のための優れた候補として存在する。AAVは、Dependovirus属に属するヘルパー依存性DNAパルボウイルスである。AAVは、増殖性感染を起こすために、無関係のヘルパーウイルス(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、または痘疹のいずれか)との感染を必要とする。ヘルパーウイルスは、AAV複製の大半の工程に必要である付属機能(accessory function)を供給する。AAVの概説については、例えば、非特許文献6を参照のこと。
【0006】
AAVは広範な組織に感染し、そして他のウイルスベクターで観察された、動物モデルにおける細胞傷害性効果および有害な免疫反応を誘発しなかった(例えば、非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13を参照のこと)。AAVは、非分裂組織を形質導入し得るので、AAVは、遺伝子を中枢神経系(CNS)に送達するために十分に適合され得る。特許文献2は、AAVベクターを作製する方法を記載する。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にある治療用遺伝子を含むAAVベクターは、哺乳動物の脳を形質導入すること、および疾患のモデルにおいて機能的効果を有することが示されている。
【0007】
導入遺伝子を保有するAAVベクターは、例えば、非特許文献14;特許文献3(1995年10月26日公開);特許文献4(1995年12月21日公開);非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17に記載されている。しかし、AAVベクターのCNSへの送達は、困難であることが証明されている。AAVは、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子をマウスの実験的神経膠腫に移入させるために使用されており、そしてAAV−tkが、ガンシクロビルの細胞殺傷効果に対してこれらの脳腫瘍を感受性にさせる能力が実証されている。非特許文献18;非特許文献19。ヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH)遺伝子(アミノ酸チロシンのドパへの変換に関与する酵素)を含むAAV−CMVベクターの、成体ラット脳への注入は、ニューロンおよびグリアの両方の形質導入をもたらした(非特許文献20;非特許文献21)。同じベクターのサル線条への送達は、2.5ヶ月までの間に強力なTH発現をもたらした(Duringら、前出)。さらに、AAV−CMV−THは、パーキンソン病のげっ歯目モデルにおいて試験され、ここでこれは6−ヒドロキシドパミン病変ラットの回転挙動において有意な改善を引き起こした(非特許文献22;非特許文献23)。
【0008】
しかし、これらがCNSを標的化するためのAAVの可能性を実証するような報告である一方で、それらはまた、CNSへのAAVベクターの直接的注射が、限られた数のトランスフェクトされた細胞をもたらし、そしてこのトランスフェクトされた細胞が注射経路付近の狭い領域に集中発生することを実証した(例えば、Duringら、前出;Fanら、前出を参照のこと)。CNSへの複数回の注射は、所望されない合併症を引き起こすので、最少数の注射部位を使用して脳のより広い領域にAAVベクターを送達する方法についての必要性が残存する。さらに、注射されるベクターの用量と脳組織におけるその得られる分布との間の関係は、以前に報告されていない。
【0009】
さらに、PDの遺伝子治療は、ドパミン合成に関与する酵素をコードする少なくとも2つの遺伝子(すなわち、THおよびAADC)の送達に集中されてきた。これらの方法は、上記に議論された送達問題のすべての対象であり、そしてさらに、これらの方法は、両方の遺伝子が適切な量で発現されることを必要とする。従って、L−ドパと組み合わせてAAV−AADCを使用するPDの処置もまた、実証されていない。
【特許文献1】米国特許第5,219,740号明細書
【特許文献2】米国特許第5,677,158号明細書
【特許文献3】国際公開第95/28493号パンフレット
【特許文献4】国際公開第95/34670号パンフレット
【非特許文献1】MillerおよびRosman(1989)BioTechniques 7:980-990
【非特許文献2】Miller,A.D.(1990)Human Gene Therapy 1:5-14
【非特許文献3】Scarpaら、(1991)Virology 180:849-852
【非特許文献4】Burnsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037
【非特許文献5】Boris−LawrieおよびTemin(1993)Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109
【非特許文献6】BernsおよびBohenzky(1987)Advances in Virus Research(Academic Press,Inc.)32:243−307
【非特許文献7】Muzyczka(1992)Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97−129
【非特許文献8】Flotteら(1993)PNAS USA 90:10613−10617
【非特許文献9】Kass−eiserら(1992)Gene Therapy 1:395−402
【非特許文献10】Yangeら、PNAS USA 91:4407−4411
【非特許文献11】Conradら(1996)Gene Therapy 3:658−668
【非特許文献12】Yangら(1996)Gene Therapy 3:137−144
【非特許文献13】Brynesら(1996)J.Neurosci.16:3045−3055
【非特許文献14】Kaplittら(1994)Nature Genetics 8:148−153
【非特許文献15】Duringら(1998)Gene Therapy 5:820−827
【非特許文献16】Mandelら(1998)J.Neurosci.18:4271−4284
【非特許文献17】Szcypkaら(1999)Neuron 22:167−178
【非特許文献18】Okadaら(1996)Gene Therapy 3:959−964
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【非特許文献20】Kaplittら(1995)VIRAL VECTORS、GENE THERAPY AND NEUROSCIENCE APPLICATION、KaplittおよびLoewy編、12:193−210、Academic Press、San Diego
【非特許文献21】Bankiewiczら(1997)Exper.Neurol.144:147−156
【非特許文献22】Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527−2537
【非特許文献23】Mandelら(1997)PNAS USA 94:14083−14088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検体の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、対流増加送達(convention−enhanced delivery)(CED)を使用する、被検体(例えば、ヒト)の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えAAV(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供する。CEDは、例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプのいずれかを使用することによって実施され得る。好ましい実施態様において、導入遺伝子は、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)またはその活性フラグメントをコードする。この導入遺伝子がAADCをコードする場合、CNSの線条内へrAAVビリオンを投与することが好ましい。
【0012】
別の局面において、本発明は、組換えAAVビリオンをCNS障害を有する被検体に送達するための方法を提供する。rAAVビリオンは、適切な治療用ポリペプチドをコードし、そしてCEDを使用して被検体のCNSに投与される。好ましい実施態様において、CNS障害は、パーキンソン病(PD)であり、rAAVビリオンは、CNSの線条に投与され、そしてこの核酸配列は、AADCをコードする。
【0013】
別の局面においては、被検体における神経変性疾患を処置するための方法が提供される。形質導入された細胞において発現可能な治療用核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンの調製物は、対流増加送達(CED)を使用して、CNSに投与される。1つの実施態様において、神経変性疾患はPDであり、そして治療用ポリペプチドはAADCである。なお別の実施態様において、神経変性疾患を処置する方法はまた、少なくとも1つのさらなる治療用化合物を被検体に投与する工程、例えば、L−ドパおよび必要に応じてカルビドパを、全身的に投与する工程を含む。
【0014】
なお別の局面において、被検体のCNSにおけるドパミン活性のレベルを測定する方法が提供される。標識されたトレーサが、被検体に投与される。トレーサは、好ましくは、ドパミンを利用する細胞に結合する化合物であり、そして標識は、好ましくは、ラジオアイソトープ(例えば、6−[18F]−フルオロ−L−m−チロシン(18F−FMT))である。標識の検出は、トレーサの結合を介したドパミン活性の指標である。好ましくは、例えば、陽子射出断層撮影法(PET)走査を使用することによって、被検体のCNSは画像化される。
【0015】
神経変性疾患を処置する方法における使用のための、第1および第2の医薬の製造における第1および第2の治療用化合物の使用(ここで、第1の医薬は、治療用ポリペプチドをコードする導入遺伝子を含有する組換えAAV(rAAV)ビリオンを含み、この第1の医薬は、対流増加送達(CED)によって被検体に投与され、そしてここでこの第2の医薬は、被検体に全身的に投与される治療用化合物を含む)もまた、提供される。
【0016】
本発明はさらに、以下の項目を提供する。
(項目1) 被検体に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、この方法は、対流増加送達(CED)を介してrAAVビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでrAAVビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。
(項目2) 上記投与する工程が、浸透圧ポンプを使用して実施される、項目1に記載の方法。
(項目3) 上記投与する工程が、注入ポンプを使用して実施される、項目1に記載の方法。
(項目4) 上記核酸配列が、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードする、項目1に記載の方法。
(項目5) 上記被検体がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目6) 上記rAAVビリオンが、線条内に投与される、項目1に記載の方法。
(項目7) CNS障害を有する患者に組換えAAVビリオンを送達するための方法であって、方法は対流増加送達(CED)を介してビリオンを被検体のCNS内に投与する工程を包含し、ここでビリオンが治療用ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、方法。
(項目8) 上記CNS障害がパーキンソン病であり、上記rAAVビリオンが線条内に投与され、ここで上記核酸配列がAADCをコードする、項目7に記載の方法。
(項目9) 被検体における神経変性疾患を処置するための方法であって、方法は以下:
(a)組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを含有する調製物を提供する工程であって、ここで上記ビリオンが形質導入される細胞において発現して、被検体に治療的効果を提供し得る核酸配列を含んでいる、工程;および、
(b)対流増加送達(CED)を使用して被検体のCNSに調製物を送達する工程であって、ここでビリオンが神経細胞を形質導入し、そして核酸配列が発現されて、神経変性疾患を処置するために適切な治療的効果を被検体において提供する、工程、
を包含する、方法。
(項目10) 上記神経変性疾患がパーキンソン病である、項目9に記載の方法。
(項目11) 形質導入される細胞において発現され得る上記核酸配列が、AADCまたはその機能的フラグメントをコードする、項目9に記載の方法。
(項目12) 上記被検体に少なくとも1つのさらなる治療用化合物を投与する工程をさらに包含する、項目9〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13) 上記少なくとも1つのさらなる治療用化合物が、L−ドパである、項目12に記載の方法。
(項目14) L−ドパ、および必要に応じてカルビドパを上記被検体に投与する工程をさらに包含する、項目13に記載の方法。
(項目15) 被検体の脳におけるドパミン活性のレベルを測定する方法であって、方法は、以下;
(a)被検体に標識されたトレーサを投与する工程であって、ここで細胞に対するトレーサの結合がドパミン活性の指標である、工程;および、
(b)標識されたトレーサを結合する細胞の数を測定するために被検体の脳を画像化する工程であって、これによって被検体の脳におけるドパミン活性のレベルを測定する工程、
を包含する、方法。
(項目16) 上記標識されたトレーサが、6−[18F]−フルオロ−L−m−チロシン(18F−FMT)である、項目15に記載の方法。
(項目17) 上記画像化が、陽子射出断層撮影法(PET)画像化である、項目15に記載の方法。
(項目18) 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを含む調製物を被検体の頭蓋腔に送達するための、対流増加送達(CED)の使用。
(項目19) 上記CEDが浸透圧ポンプまたは注入ポンプである、項目18に記載の使用。
(項目20) 神経変性疾患の処置のための第1医薬の調製における導入遺伝子を保有するrAAVビリオンの使用であって、ここで該第1医薬は、神経変性疾患を患う被験体のCNS内に対流増加送達(CED)を介して送達される、使用。
(項目21) 神経変性疾患を処置する方法における使用のための第1医薬および第2医薬の製造における、第1治療化合物および第2治療化合物の使用であって、ここで、この第1医薬は治療性ポリペプチドをコードする導入遺伝子を包含する組換えAAV(rAAV)ビリオンを含み、この第1医薬は対流増加送達(CED)によって被験体に投与され、そしてここで、この第2医薬は被験体に全身性に投与される治療化合物を含有する、使用。
(項目22) 上記神経変性疾患がパーキンソン病である、項目21に記載の使用。
(項目23) 上記導入遺伝子が芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)である、項目21〜22のいずれか1つに記載の使用。
(項目24)第2医薬がL−ドパ、および必要に応じてカルビドパを含有する、項目21〜23のいずれか1つに記載の使用。
(項目25) 上記CEDが浸透圧ポンプまたは注入ポンプである、項目21〜24のいずれか1つに記載の使用。
(項目26) 上記第1医薬が線条に送達される、項目21〜25のいずれか1つに記載の使用。
【0017】
本発明のこれらおよび他の実施態様は、本明細書中の開示を考慮して、当業者に容易に考え付く。
【発明の効果】
【0018】
被検体の中枢神経系(CNS)への導入遺伝子を保有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを送達するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に指示がなければ、当該分野の技術範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学、および組換えDNA技術の従来の方法を使用する。このような技術は、参考文献に十分に説明される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(最新版);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、最新版);DNA Cloning:A Practical Approach,第IおよびII巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編,最新版);Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編,最新版);CRC Handbook of Parvoviruses,第IおよびII巻(P.Tijessen編);Fundamental Virology,第2版,第IおよびII巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。
【0020】
本明細書および添付の請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容が明確に他を指示しない限り、複数の表示を含む。
【0021】
(定義)
本発明を記載する際に、以下の用語が用いられ、そして以下に示すように定義されることが意図される。
【0022】
「遺伝子移入」または「遺伝子送達」は、宿主細胞に外来DNAを確実に挿入するための方法または系をいう。このような方法は、組み込まれていない移入DNAの一過性発現、移入されたレプリコン(例えば、エピソーム)の染色体外複製および発現、または宿主細胞のゲノムDNAへの移入された遺伝子材料の組み込みを生じ得る。遺伝子移入は、後天性疾患および遺伝性疾患の処置への独特のアプローチを提供する。多くの系が、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、米国特許第5,399,346号を参照のこと。
【0023】
「ベクター」とは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどのような、任意の遺伝エレメントを意味する。これは適切な制御エレメントと結合した場合に複製可能であり、そして細胞間で遺伝子配列を移入し得る。従って、この用語はクローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。
【0024】
「組換えウイルス」とは、例えば、粒子への異種核酸構築物の付加または挿入によって、遺伝的に改変されているウイルスを意味する。
【0025】
「AAVビリオン」とは、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVキャプシドタンパク質コートと結合した直鎖状の一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子を意味する。これに関して、相補的センス(例えば、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖)のいずれかの一本鎖AAV核酸分子は、任意の1つのAAVビリオンにパッケージされ得、そして両鎖は等しく感染性である。
【0026】
「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、本明細書中では、両側にAAV ITRが隣接している目的の異種核酸配列をキャプシド化している、AAVタンパク質外皮から構成される感染性の複製欠損性ウイルスとして定義される。rAAVビリオンは、その中に導入されるAAVベクター、AAVヘルパー機能、および付属機能を有している適切な宿主細胞において産生される。この様式において、宿主細胞は、引き続く遺伝子送達のために、AAVベクター(目的の組換えヌクレオチド配列を含む)を感染性組換えビリオン粒子にパッケージするために必要なAAVポリペプチドをコードし得るようにされる。
【0027】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みをいうために使用され、そして細胞は、外因性DNAが細胞膜内部に導入された場合に「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技術が、一般に当該分野で公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、ElsevierおよびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術は、適切な宿主細胞内に1つ以上の外因性DNA部分(例えば、ヌクレオチド組み込みベクターおよび他の核酸分子)を導入するために使用され得る。
【0028】
用語「宿主細胞」は、AAVヘルパー構築物、AAVベクタープラスミド、アクセサリ機能ベクター、または他の移入DNAのレシピエントであり得るか、レシピエントであったか、またはレシピエントとして使用される、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を示す。この用語は、トランスフェクトされた本来の細胞の子孫を含む。従って、本明細書中で使用される「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列でトランスフェクトされた細胞をいう。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的な、または意図的な変異に起因して、本来の親細胞と、形態学においてもしくはゲノムにおいて、または全体的なDNAの相補性において必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0029】
本明細書中で使用される用語「細胞株」は、インビトロでの継続的または延長された増殖および分裂を行い得る細胞の集団をいう。しばしば、細胞株は、単一の祖先細胞に由来するクローン集団である。自発的または誘導された変化が、このようなクローン集団の保存または移動の間に核型において生じ得ることは当該分野でさらに公知である。従って、この細胞株由来の細胞は、祖先細胞または培養物と正確に同一でなくてもよいといわれ、そしてこの細胞株は、このような改変体を含むといわれる。
【0030】
用語「異種」は、コード配列および制御配列のような核酸配列に関する場合、通常はともに連結されていない、および/または特定の細胞と通常は関連していない配列を示す。従って、核酸構築物またはベクターの「異種」領域は、他の分子に関連して天然では見出されない別の核酸分子の内の、またはこれに結合した核酸のセグメントである。例えば、核酸構築物の異種領域は、コード配列に関連して天然では見出されない配列に隣接したコード配列を含み得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然で見出されない構築物である(例えば、ネイティブの遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、細胞内に通常は存在しない構築物で形質転換した細胞は、本発明の目的のために異種であると考えられる。対立遺伝子改変または天然に存在する変異事象は、本明細書で使用されるように、異種DNAを生じない。
【0031】
「コード配列」または特定のタンパク質を「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下におかれる場合、インビトロまたはインビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)そして翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端での開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端での翻訳停止コドンによって決定される。コード配列は、原核生物または真核生物のmRNAからのcDNA、原核生物または真核生物のDNAからのゲノムDNA配列、およびさらに合成DNA配列を包含し得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常コード配列の3’側に位置する。
【0032】
「核酸」配列とは、DNA配列またはRNA配列をいう。この用語は、例えば、以下のDNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含むが、これらに限定されない配列を表す:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン(aziridinylcytosine)、プソイドイソシトシン(pseudoisocytosine)、5−(カルボキシヒドロキシル−メチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル(methylpseudouracil)、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
【0033】
用語、DNA「制御配列」とは、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを集合的にいい、これはレシピエント細胞においてコード配列の複製、転写、および翻訳を集合的に提供する。選択されたコード配列が適切な宿主細胞において複製、転写、および翻訳され得る限り、これらの制御配列のすべてが常に存在する必要はない。
【0034】
用語「プロモーター領域」は、通常の意味において、調節配列が、RNAポリメラーゼと結合し得、そして下流の(3’方向)コード配列の転写を開始し得る遺伝子由来であるDNA調節配列を含むヌクレオチド領域をいうために、本明細書中で使用される。
【0035】
「作動可能に連結される(た)」とは、このように記載された成分がそれらの通常の機能を行うように構成されている、エレメントの配置をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらし得る。制御配列は、それらがその発現に指向するように機能する限り、コード配列と連続する必要はない。従って、例えば、介在性の非翻訳であるが転写される配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてプロモーター配列は、コード配列となお「作動可能に連結される」と考えられ得る。
【0036】
「単離される(た)」により、ヌクレオチド配列をいう場合、同じ型の他の生物学的高分子の実質的非存在下で示された分子が存在することが意味される。従って、「特定のポリペプチドをコードする単離された核酸分子」とは、対象となるポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子をいう;しかし、この分子は、組成物の基本的な特徴に有害な影響を及ぼさない、いくつかのさらなる塩基または部分を含んでいてもよい。
【0037】
本出願全体を通して、特定の核酸分子におけるヌクレオチド配列の相対的位置を記載する目的で、例えば、特定のヌクレオチド配列が別の配列に関して「上流」、「下流」、「3’」、または「5’」に配置されると記載される場合、これは、当該分野において慣習的にそのようにいわれる、DNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖における配列の位置であると理解される。
【0038】
「遺伝子」とは、転写または翻訳された後に、特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードし得る少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドをいう。本明細書中に記載される任意のポリヌクレオチド配列を使用して、それらが関連する遺伝子のより大きなフラグメントまたは全長コード配列を同定し得る。より大きなフラグメント配列を単離する方法は当業者に公知である。
【0039】
2つの核酸フラグメントは、本明細書中に記載されるように「選択的にハイブリダイズ」すると考えられる。2つの核酸分子の間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一な核酸配列は、完全に同一な配列が標的分子にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する。完全に同一の配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知のハイブリダイゼーションアッセイを使用して評価され得る(例えば、サザンブロット、ノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor、N.Y.を参照のこと)。このようなアッセイは、選択性の変化する程度を使用して、例えば、低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまで変化する条件を使用して行われ得る。低ストリンジェンシーの条件が使用される場合、非特異的結合の非存在が、部分的程度の配列同一性すら欠如する二次プローブ(例えば、標的分子と約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を使用して評価され得、その結果、非特異的結合事象の非存在下では二次プローブは、標的にハイブリダイズしない。
【0040】
ハイブリダイゼーションベースの検出系が利用される場合、標的核酸配列に相補的な核酸プローブ、次いで、このプローブおよび標的配列が、ハイブリッド分子を互いに形成するように「選択的にハイブリダイズする」か、または結合する適切な条件の選択により選択される。「中程度にストリンジェント」な条件下で標的配列に選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、代表的に、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、代表的に、選択された核酸プローブの配列と約90〜95%を超える配列同一性を有する、少なくとも約10〜14のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブ/標的ハイブリダイゼーションのために有用な、プローブおよび標的が特異的程度の配列同一性を有するハイブリダイゼーション条件は、当該分野で公知であるとおり、決定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach、B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Pressを参照のこと)。
【0041】
ハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件に関しては、多くの等価な条件を使用して、例えば、以下の因子を変化させることにより特定のストリンジェンシーを確立し得ることは、当該分野で周知である:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメーター、ならびに洗浄条件を変化させること。特定のハイブリダイゼーション条件のセットの選択は、当該分野で選択された以下の標準的な方法である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
【0042】
用語「芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ」または「AADC」とは、ドパをドパミンにカルボキシル基を除去するポリペプチドをいう。従って、この用語は、全長AADCポリペプチド、その活性なフラグメントまたは機能的ホモログを含む。
【0043】
所定のポリペプチドの「機能的ホモログ」または「機能的等価物」とは、ネイティブなポリペプチド配列から誘導された分子、ならびに組換え生成されたか、または化学合成されたポリペプチドを含む。これらは、所望の結果を達成するように参照分子と類似の様式で機能する。従って、AADCの機能的ホモログは、活性の完全性が残存する限り、それらのポリペプチドの誘導体およびアナログを含む−そのアミノ末端もしくはカルボキシ末端の内部でまたはそれらの末端で生じる任意の単一のまたは複数のアミノ酸の付加、置換および/または欠失を含む。
【0044】
核酸およびアミノ酸の「配列同一性」または「相同性」を決定するための技術もまた、当該分野で公知である。代表的には、このような技術は、遺伝子についてのmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされたアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列と第2のヌクレオチドもしくはアミノ酸配列とを比較することを含む。一般に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列もしくはポリペプチド配列の、ヌクレオチド対ヌクレオチドもしくはアミノ酸対アミノ酸のそれぞれの正確な対応をいう。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「パーセント同一性」を決定することにより比較され得る。2つの配列のパーセント同一性(核酸またはアミノ酸の配列にかかわらず)は、2つの整列された配列間の正確なマッチの数をより短い配列の長さで割って、そして100を乗じた数である。核酸配列の適切な整列は、SmithおよびWaterman、Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff、Atlas of Protein Sequences and Structure、M.O.Dayhoff編、5増補、3:353−358、National Biomedical Research Foundation、Washington,DC.USAにより開発されたスコアリングマトリクスを使用する事によりアミノ酸配列に適用され得、そしてGribskov、Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により正規化され得る。配列のパーセント同一性を決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実行は、Genetics Computer Group(Madison,WI)により、「BestFit」ユーティリティーアプリケーションにおいて提供される。この方法のためのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual、バージョン8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,WIから入手可能)に記載される。本発明の文脈でパーセント同一性を確立する好ましい方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発され、University of Edinburghにより著作権保護され、そしてIntelliGenetics,Inc(Mountain View,CA)により配給されるMPSRCHプログラムパッケージを使用することである。総合ソフトウェアパッケージから、Smith−Watermanアルゴリズムは、デフォルトパラメーター(例えば、gap open penaltyが12、gap extension penaltyが1、およびgapが6)がスコアリング表のために使用される場合に利用され得る。生成したデータから、「Match」値は、「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を算出するための他の適切なプログラムは、一般的に、当該分野で公知である(例えば、別の整列プログラムは、BLASTであり、デフォルトパラメーターが使用される)。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用され得る:genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non−redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見出され得る:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLAST。
【0045】
あるいは、相同性は、相同な領域間で安定な二重鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、次いで、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、そして消化したフラグメントのサイズ決定により決定され得る。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、上記の方法を使用して決定されるように、これらの配列が、規定された長さの分子に対して少なくとも約80〜85%、好ましくは、少なくとも約90%、そして最も好ましくは、少なくとも約95〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書中で使用される実質的に相同は、特定されたDNA配列またはポリペプチド配列に完全な同一性を示す配列もいう。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定のシステムについて規定されるストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験において同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当業者の技術範囲内である。例えば、Sambrookら、前出;DNA Cloning、前出;Nucleic Acid Hybridization、前出を参照のこと。
【0046】
「対流増加送達(Convection−enhanced delivery)」とは、薬剤の任意の非手動送達をいう。本発明の文脈において、AAVの対流増加送達(CED)の例は、注入ポンプまたは浸透圧ポンプにより達成され得る。
【0047】
用語「中枢神経系」または「CNS」は、脳の全ての細胞および組織ならびに脊椎動物の脊髄を含む。従って、この用語は、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(cereobrospinal fluid)(CFS)、間隙腔、骨、軟骨などを含むが、これらに限定されない。「頭蓋腔」とは、頭蓋(skull)(頭蓋(cranium))の下部の領域をいう。CNSの領域は、種々の行動および/または機能と関連している。例えば、脳の脳幹神経節は、運動機能(特に随意運動)と関連している。脳幹神経節は、6つの対形成した核から構成される:尾状核、被殻、淡蒼球(globus pallidus)(または淡蒼球(pallidum))、側坐核(nucleus accumbens)、視床下核および黒質。尾状核および被殻は、内包により分離されているが、細胞構築、化学的特性および生理学的特性を共有し、そしてしばしば、線条体といわれ、または単に「線条」といわれる。黒質は、パーキンソン患者において変性しており、脳幹神経節への主要なドパミン作動性入力を提供する。
【0048】
用語「被験体」、「個体」または「患者」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして脊椎動物、好ましくは、哺乳動物をいう。哺乳動物としては、マウス、類人猿、ヒト、家畜、競技用動物およびペットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「有効量」は、有益な、または所望の結果をもたらすに十分な量である。有効量は、1回以上の投与、適用、または投薬において投与され得る。
【0050】
用語「標識されたトレーサー」とは、インビボでの規定された活性を追跡または検出するために使用され得る任意の分子をいう。例えば、好ましいトレーサーは、ドパミンを利用する細胞に結合するトレーサーである。好ましくは、標識されたトレーサーは、例えば、陽子射出断層撮影法(PET)スキャニングまたは他のCNS画像化技術により、動物全体で見出され得るトレーサーである。適切な標識としては、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、色素、およびタンパク質(酵素を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
(本発明の一般的全体像)
本発明の中心は、ウイルスベクター(例えば、AAV)を動物のCNSに効率的に送達することを可能にする方法の開発である。以前、研究者らは、脳の広範な領域にウイルスベクターを送達させることにほとんど成功していなかった。対流増加送達デバイス(例えば、浸透圧ポンプまたは注入ポンプ)を使用すると、ウイルスベクターは脳の大きな領域にわたる多くの細胞に送達され得る。さらに、送達されたベクターは、CNS細胞(例えば、ニューロン細胞またはグリア細胞)中で導入遺伝子を効率的に発現する。
【0052】
本明細書中で記載されるウイルスベクター送達の方法を使用すると、CNS障害(例えば、パーキンソン病)のための新規な遺伝子治療処置が考案され得る。1つの実施態様において、パーキンソン病(PD)は、全身的なL−ドパおよび/またはカルビドパ治療と、AADC(ドパミン代謝に関与する酵素)をコードする導入遺伝子を運ぶAAVベクターのCNS投与(例えば、CEDを介して)とを組み合わせることにより処置され得る。
【0053】
本発明の利点としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)ウイルスベクター(例えば、AAV)のCNSへの効率的かつ広範な送達;(ii)ウイルスベクターによって運ばれた核酸(例えば、導入遺伝子)の発現;(iii)プロドラッグの投与と組み合わせた1つの導入遺伝子の送達を含むパーキンソン病の治療レジメンの同定;および(iv)PETスキャンを使用してCNS遺伝子治療を非侵襲的にモニターする能力。
【0054】
(ウイルスベクターの構築)
本発明の実施において有用な遺伝子送達ビヒクルは、分子生物学分野で周知の方法論を利用して構築され得る(例えば、AusubelまたはManiatis、前出を参照のこと)。代表的には、導入遺伝子を有するウイルスベクターは、導入遺伝子、適切な調節エレメントおよび細胞形質導入を媒介するウイルスタンパク質の生成に必要なエレメントをコードするポリヌクレオチドからアセンブルされる。例えば、好ましい実施態様において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが使用される。
【0055】
(一般的方法)
ウイルスベクターのヌクレオチド成分を得る好ましい方法は、PCRである。PCRのための一般的手順は、MacPhersonら、PCR:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press(1991)に教示されている。各適用反応のためのPCR条件は、経験的に決定され得る。多くのパラメーターが反応の出来に影響を及ぼす。これらのパラメーターの中には、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+およびATP濃度、pHならびにプライマー、テンプレートおよびデオキシリボヌクレオチドの相対的濃度がある。例示的なプライマーは、実施例において以下に記載される。増幅後に、得られるフラグメントをアガロースゲル電気泳動、次いで、エチジウムブロマイド染色および紫外線照射での可視化により検出し得る。
【0056】
ポリヌクレオチドを得るための別の方法は、酵素消化による。例えば、ヌクレオチド配列は、適切な認識制限酵素を用いた適切なベクターの消化により生成され得る。次いで、得られるフラグメントは、適切であれば、ともに連結され得る。
【0057】
ポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法を使用してベクターゲノムに挿入される。例えば、挿入DNAおよびベクターDNAは、適切な条件下で制限酵素と接触させ、互いに対形成し得る各分子上に相補的末端または平滑末端を作製し、そしてこれをリガーゼを用いて連結し得る。あるいは、合成核酸リンカーをポリヌクレオチドの末端に連結し得る。これらの合成リンカーは、ベクターDNAにおける特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。他の手段は、当該分野で公知であり、かつ利用可能である。
【0058】
(レトロウイルスおよびアデノウイルスベクター)
多数の、ウイルスに基づく系が遺伝子送達に用いられてきた。例えば、レトロウイルス系が、公知であり、そして一般に組み込まれた欠損プロウイルス(「ヘルパー」)を有するパッケージング株を使用する。このプロウイルスは、ウイルスの全遺伝子を発現するがパッケージングシグナル(psi配列として公知)の欠失により自分自身のゲノムをパッケージし得ない。従って、この細胞株は空のウイルス外殻を生成する。プロデューサー株は、パッケージング株から誘導され得る。このパッケージング株は、ヘルパーに加えて、ウイルスの複製およびパッケージングのためにcisに必要な配列(長末端反復配列(LTR)として公知)を含むウイルスベクターを含む。目的の遺伝子は、ベクターに挿入され得、そしてレトロウイルスヘルパーにより合成されたウイルス外殻にパッケージングされ得る。次いで、この組換えウイルスは、単離されそして被験体に送達され得る。(例えば、米国特許第5,219,740号を参照のこと)。代表的なレトロウイルスベクターとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:例えば米国特許第5,219,740号に記載されるLHL、N2、LNSAL、LSHLおよびLHL2ベクターのようなベクター、ならびに本明細書中に記載される改変N2ベクターのような、これらのベクターの誘導体。レトロウイルスベクターは、当該分野で周知の技術を用いて構築され得る。例えば、米国特許第5,219,740号;Mannら(1983)Cell 33:153〜159を参照のこと。
【0059】
アデノウイルスに基づく系は、遺伝子送達のために開発されており、そして本明細書に記載の方法による送達のために適切である。ヒトアデノウイルスは、レセプター媒介エンドサイトーシスにより細胞に入る二本鎖DNAウイルスである。これらのウイルスは、遺伝子移入に特によく適応する。なぜなら、それらは、増殖および操作が容易であり、そしてインビボおよびインビトロにおいて広範な宿主域を示すからである。例えば、アデノウイルスは、造血起源、リンパ起源および骨髄系起源のヒト細胞に感染し得る。さらに、アデノウイルスは、休止状態の標的細胞および複製中の標的細胞に感染する。宿主ゲノムに組み込むレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは染色体外で存続し、これにより挿入変異誘発に関連する危険性が最小になる。このウイルスは、容易に高力価で生成され、そして安定であり、精製されかつ貯蔵され得る。複製コンピテントな形態でさえ、アデノウイルスは、低レベルの罹患率しか生じず、そしてヒトの悪性疾患には関連しない。従って、これらの利点を利用するアデノウイルスベクターが開発されてきた。アデノウイルスベクターおよびそれらの使用の詳細については、例えば、Haj−Ahmad and Graham(1986)J.Virol.57:267〜274;Bettら(1993)J.Virol.67:5911〜5921;Mitterederら(1994)Human Gene Therapy 5:717−729;Sethら(1994)J.Virol.68:933〜940;Barrら(1994)Gene Therapy 1:51〜58;Berkner,K.L.(1988)BioTechniques 6:616〜629;Richら(1993)Human Gene Therapy 4:461〜476を参照のこと。
【0060】
(AAV 発現ベクター)
好ましい実施態様において、ウイルスベクターは、AAVベクターである。「AAVベクター」とは、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを制限することなく含む、アデノ随伴ウイルス血清型由来のベクターを意味する。AAVベクターは、全体または部分、好ましくはrep遺伝子および/またはcap遺伝子を欠失し、ただし、隣接する機能的なITR配列は保持する、AAV野生型遺伝子の1つ以上を有し得る。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングに必須である。従って、AAVベクターは、本明細書において、ウイルスの複製およびパッケージングのためcisに必要な少なくともそれらの配列(例えば、機能的ITR)を含むことが規定される。このITRは、野生型ヌクレオチド配列には必要でなく、そして、この配列が機能的レスキュー、複製およびパッケージングを提供する限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変化されてもよい。
【0061】
AAV発現ベクターは、公知の技術を用いて構築され、少なくとも、転写開始領域、目的のDNAおよび転写終結領域を含む制御エレメントを、転写の方向に作動可能に連結された成分として提供する。制御エレメントは、哺乳動物筋細胞において機能的であるように選択される。作動可能に連結された成分を含む生じた構築物は、機能的AAV ITR配列に結合(5’および3’)している。
【0062】
「アデノ随伴ウイルス逆方向末端配列」または「AAV ITR」とは、AAVゲノムのそれぞれの末端で見出される、DNA複製起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとしてcisに一緒に機能する当該分野で認識されている領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコード配列と一緒に、2つの隣接するITRに間に挟まれたヌクレオチド配列からの効率的な切除およびレスキューならびに哺乳動物ゲノムへのこの配列の組み込みを提供する。
【0063】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。AAV−2配列については、例えば、Kotin,R.M.(1994)Human Gene Therapy 5;793−801;Berns,K.I.「パルボウイルスおよびそれらの複製」、Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)を参照のこと。本明細書中に使用される「AAV ITR」は、記載された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により、改変され得る。さらに、AAV ITRは、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを含むがこれらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAVベクターにおいて選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合、ITRが意図されたように機能(すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列の切除およびレスキューを可能にし、そして異種配列の、レシピエント細胞ゲノムへの組み込みを可能にする)している限り、必ずしも同一であるか、または同一のAAV血清型もしくは単離物に由来している必要はない。
【0064】
さらに、AAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得、この血清型は、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAVX7などを含むがこれらに限定されない。さらに、AAV発現ベクター中の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’および3’ITRは、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合、ITRが意図されたように機能(すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターからの目的の配列の切除およびレスキューを可能にし、そしてDN分子のレシピエント細胞への組み込みを可能にする)している限り、それらが必ずしも同一であるか、または同一のAAV血清型もしくは単離物に由来している必要はない。
【0065】
AAVベクターにおける使用のための適切なDNA分子は、約5キロベース(kb)未満のサイズであり、そして、例えば、レシピエント被験体から欠損または消失しているタンパク質をコードする遺伝子、または所望の生物学的または治療的効果(例えば、抗細菌機能、抗ウイルス機能、または抗腫瘍機能)を有するタンパク質をコードする遺伝子を含む。好ましいDNA分子は、ドパミン代謝に関連する分子、例えば、AADCまたはTHを含む。AAV−AADCベクターおよびAAV−THベクターは、例えば、Bankiewiczら(1997)Exper’t Neurol.144:147〜156;Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527〜2535、および国際公開 WO95/28493(1995年10月26日公開)に記載されている。
【0066】
選択されたヌクレオチド配列(例えば、AADCまたは目的の別の遺伝子)は、被験体においてインビボでその転写または発現を指向する制御エレメントに作動可能に連結される。このような制御エレメントは、選択された遺伝子と通常関連する制御配列を含み得る。あるいは、異種制御配列が用いられ得る。有用な異種制御配列には、一般的に、哺乳動物もしくはウイルスの遺伝子をコードする配列に由来する制御配列が含まれる。例としては、SV40早期プロモーター;マウス乳腺癌ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、CMV極初期プロモーター領域(CMVIE));ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター;合成プロモーター;ハイブリッドプロモーター;などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非ウイルス遺伝子(例えば、マウスメタロチオネイン遺伝子)由来の配列もまた、本明細書中での使用を見出す。このようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego,CA)から市販されている。
【0067】
本発明の目的のためには、異種プロモーターおよび他の制御エレメント(例えば、CNS特異的プロモーターおよび誘導性プロモーター、エンハンサーなど)の両方が、特に有用である。異種プロモーターの例としては、CMBプロモーターが挙げられる。CNS特異的プロモーターの例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)およびニューロン特異的エノラーゼ(NSE)由来の遺伝子から単離されたプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの例としてはエクジソン、テトラサイクリン、低酸素症およびアウフィン(aufin)についてのDNA応答性エレメントが挙げられる。
【0068】
AAV ITRに結合された目的のDNA分子を有するAAV発現ベクターは、選択された配列(単数または複数)を、そこから主要なAAVオープンリーディングフレーム(「ORF」)が切り取られているAAVゲノム中に直接挿入することにより構築され得る。複製およびパッケージング機能を可能にするに十分な部分のITRが残される限り、AAVゲノムの他の部分もまた欠失させ得る。このような構築物は、当該分野において周知の技術を使用して設計され得る。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号;国際公開第WO 92/01070号(1992年1月23日公開)および同第WO 93/03769(1993年3月4日公開);Lebkowskiら(1988) Molec.Cell.Biol. 8:3988−3996;Vincentら(1990) Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533−539;Muzyczka,N.(1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97−129;Kotin,R.M.(1994) Human Gene Therapy 5:793−801;ShellingおよびSmith(1994) Gene Therapy 1:165−169;ならびにZhouら(1994) J.Exp.Med. 179:1867−1875を参照のこと。
【0069】
あるいは、AAV ITRは、ウイルスゲノムまたはAAV ITRを含むAAVベクターから切り取られ、そして標準的な連結技術(例えば、Sambrookら(前出)に記載の連結技術)を使用して、別のベクターに存在する選択された核酸構築物の5’および3’に融合され得る。例えば、連結は、20mM Tris−Cl(pH7.5)、10mM MgCl2、10mM DTT、33μg/ml BSA、10mM〜50mM NaCl、そして40μM ATP、0℃の0.01〜0.02(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「粘着末端」連結用)か、または1mM ATP、14℃の0.3〜0.6(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「平滑末端」連結用)のいずれか、において達成され得る。分子間「粘着末端」連結は、通常、30〜100μg/mlの総DNA濃度(5〜100nMの総末端濃度)にて実行される。ITRを含むAAVベクターは、例えば、米国特許第5,139,941号に記載されている。特に、アメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」)から、受託番号53222、53223、53224、53225、および53226の下で入手可能ないくつかのAAVベクターが上記特許明細書に記載されている。
【0070】
さらに、キメラ遺伝子は、1つ以上の選択された核酸配列の5’および3’に配置されたAAV ITR配列を含むように合成的に産生され得る。哺乳動物CNS細胞におけるキメラ遺伝子配列の発現のために好ましいコドンが使用され得る。完全なキメラ配列が、標準的な方法によって調製された重複オリゴヌクレオチドから組み立てられる。例えば、Edge,Nature(1981)292:756;Nambairら、Science(1984)223:1299;Jayら、J.Biol.Chem.(1984)259:6311を参照のこと。
【0071】
rAAVビリオンを産生するため、AAV発現ベクターが、トランスフェクションのような公知の技術を用いて適切な宿主細胞に導入される。多くのトランスフェクション技術が当該分野で一般的に公知である。例えば、Grahamら (1973) Virology, 52:456、Sambrookら (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davisら (1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。特に適切なトランスフェクション方法は、リン酸カルシウム共沈殿(Grahamら(1973)Virol.52:456−467)、培養した細胞中への直接マイクロインジェクション(Capecchi,M.R.(1980)Cell 22:479−488)、エレクトロポレーション(Shigekawaら (1988)BioTechniques 6:742−751)、リポソーム媒介遺伝子移入(Manninoら(1988)BioTechniques 6:682−690)、脂質媒介形質導入(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417)、および高速度マイクロプロジェクタイルを使用する核酸送達(Kleinら(1987)Nature 327:70−73)を包含する。
【0072】
本発明の目的のために、rAAVビリオンを産生するために適切な宿主細胞は微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含み、それは、異種DNA分子のレシピエントとして使用され得るか、または使用されている。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を含む。このように、本明細書中に使用される「宿主細胞」は、通常、外因性DNA配列によってトランスフェクトされた細胞をいう。安定なヒト細胞株293(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションから受託番号ATCC CRL1573で容易に入手可能)に由来する細胞が本発明の実施において好ましい。特に、ヒト細胞株293は、アデノウイルス5型のDNAフラグメントで形質転換したヒト胚腎細胞株であり(Grahamら、(1977) J. Gen. Virol. 36:59)、アデノウイルスE1aおよびE1b遺伝子を発現する(Aielloら(1979)Virology 94:460)。293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、そしてrAAVビリオンを産生するための特に便利なプラットフォームを提供する。
【0073】
(AAVヘルパー機能)
上記のAAV発現ベクターを含む宿主細胞は、AAV ITRに隣接するヌクレオチド配列を複製しそしてキャプシド形成してrAAVビリオンを産生するために、AAVヘルパー機能を提供し得るようにならなければならない。AAVヘルパー機能は、通常、AAV遺伝子産物を提供するために発現され得るAAV由来コード配列である。次いで、この遺伝子産物は、増殖性AAV複製のためにトランスで機能する。AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターに欠損している必要なAAV機能を相補するために本明細書中で使用される。このように、AAVヘルパー機能は、1つまたは両方の主要なAAV ORF、つまりrepおよびcapコード領域、またはその機能的ホモログを含む。
【0074】
Rep発現産物は、とりわけ、AAVのDNA複製起点の認識、結合およびニッキング、DNAヘリカーゼ活性、ならびにAAV(または、他の異種の)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されてきた。このCap発現産物は、必須のパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、AAVベクターに欠損しているAAV機能をトランスで相補するために本明細書中で使用される。
【0075】
用語「AAVヘルパー構築物」は、一般に、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入ベクターを作製するために用いられるAAVベクターに欠失しているAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子をいう。AAVへルパー構築物は、通常、溶解性のAAV複製に必須である欠損AAV機能を相補するためAAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子の一過性発現を提供するために用いられる。しかし、ヘルパー構築物は、AAV ITRを欠き、そしてそれ自身を複製もパッケージングもし得ない。AAVへルパー構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。多数のAAVヘルパー構築物が記載されている。これは、例えば、Rep発現産物およびCap発現産物の両方をコードする、通常用いられるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29−45である。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822〜3828;およびMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936〜2945を参照のこと。Rep発現産物および/またはCap発現産物をコードする多数の他のベクターが記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照のこと。
【0076】
「AAV repコード領域」とは、複製タンパク質Rep 78、Rep 68、Rep 52、およびRep 40をコードするAAVゲノムの当該分野で認識された領域を意味する。これらのRep発現産物は、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニッキング、DNAヘリカーゼ活性、ならびにAAV(または、他の異種の)プロモーターからの転写の調節を含む多くの機能を有することが示されてきた。Rep発現産物は、AAVゲノムを複製するのに集団的に必要である。AAV repコード領域の記載については、例えば、Muzyczka, N. (1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97−129;およびKotin, R.M. (1994) Human Gene Therapy 5:793−801を参照のこと。AAV repコード領域の適切なホモログは、AAV−2 DNA複製を媒介することも知られているヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)rep遺伝子(Thomsonら、(1994) Virology 204:304−311)を含む。
【0077】
「AAV capコード領域」とは、キャプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3、あるいはそれらの機能的ホモログをコードするAAVゲノムの当該分野で認識された領域を意味する。これらのCap発現産物は、ウイルスゲノムをパッケージングするのに集団的に必要とされるパッケージング機能を供給する。AAV capコード領域の記載については、例えば、 Muzyczka, N. およびKotin, R.M.(上記)を参照のこと。
【0078】
AAVヘルパー機能は、AAV発現ベクターのトランスフェクションの前、または同時のいずれかで、AAVヘルパー構築物で宿主細胞をトランスフェクトすることにより宿主細胞に導入される。このように、AAVヘルパー構築物は、増殖性AAV感染のために必要な欠損AAV機能を相補するために、AAV repおよび/またはcap遺伝子の少なくとも一過性の発現を提供するために使用される。AAVヘルパー構築物は、AAV ITRを欠損しており、そして、自身を複製もパッケージすることをもし得ない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であり得る。RepおよびCapの両方の発現産物をコードする、一般に使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45のような多くのAAVヘルパー構築物が記載されている。例えば、Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;およびMcCartyら(1991)J.Virol.65:2936−2945を参照のこと。Repおよび/またはCap発現産物をコードする多くの他のベクターが記載されている。例えば、米国特許第5,139,941号を参照のこと。
【0079】
AAV発現ベクターおよびAAVヘルパー構築物の両方が、1つ以上の任意の選択マーカーを含むように構築され得る。適切なマーカーには、選択マーカーを含む核酸構築物でトランスフェクトされている細胞が適切な選択培地中で増殖される場合、それらの細胞に抗生物質耐性もしくは感受性を与えるか、色を与えるか、または抗原特徴を変化させる遺伝子が挙げられる。本発明の実施に有用ないくつかの選択マーカー遺伝子は、G418(Sigma, St. Louis, MOから入手可能)に対する耐性を与えることによって哺乳動物細胞での選択を可能にするハイグロマイシンB耐性遺伝子(アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする)を含む。他の適切なマーカーは当業者に公知である。
【0080】
(AAV付属機能)
宿主細胞(またはパッケージング細胞)はまた、rAAVビリオンを産生するために、非AAV由来の機能すなわち「付属機能」を提供し得るようにならなければならない。付属機能は、AAVがその複製を依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞機能である。このように、付属機能は、少なくとも、AAV遺伝子転写、時期特異的なAAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、およびAAVキャプシドアセンブリの合成の活性化に関連するものを含む、AAV複製に必要な非AAVタンパク質およびRNAを含む。ウイルスベースの付属機能は、公知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0081】
特に、付属機能は、当業者に公知である方法を使用して宿主細胞に導入され得、次いで発現され得る。一般に、付属機能は、関連のないヘルパーウイルスでの宿主細胞の感染によって提供される。アデノウイルス;単純ヘルペスウイルス1型および2型のようなヘルペスウイルス;ならびにワクシニアウイルスを含む、多くの適切なヘルパーウイルスが公知である。任意の種々の公知の薬剤を使用した細胞同期化により提供される付属機能のような非ウイルス付属機能も、本発明における使用を見出す。例えば、Bullerら(1981)J.Virol.40:241−247;McPhersonら(1985)Virology 147:217−222;Schlehoferら(1986)Virology 152:110−117を参照のこと。
【0082】
あるいは、付属機能は、付属機能ベクターを使用して提供され得る。付属機能ベクターは、1つ以上の付属機能を提供するヌクレオチド配列を含む。付属機能ベクターは、宿主細胞中の効率的なAAVビリオン産生を支持するために、適切な宿主細胞に導入され得る。付属機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、またはコスミドの形態であり得る。付属ベクターはまた、適切な制御エレメントおよび酵素と会合する場合、宿主細胞において転写され得るか、または発現され得て付属機能を提供し得る、1つ以上の線状化DNAまたはRNAフラグメントの形態であり得る。例えば、1997年5月15日公開の国際公開番号WO97/17548を参照のこと。
【0083】
付属機能を提供する核酸配列は、アデノウイルス粒子のゲノムのような天然源から得られ得るか、または、当該分野で公知の組換え方法または合成方法を使用して構築され得る。この意味で、アデノウイルス由来付属機能は、広範に研究されており、付属機能に関連する多数のアデノウイルス遺伝子が、同定され、そして部分的に特徴づけられている。例えば、Carter,B.J.(1990)「アデノ随伴ウイルスヘルパー機能」 CRC Handbook of Parvoviruses、第一巻(P.Tijssen編);およびMuzyczka,N.(1992)Curr.Topics.Microbiol.and Immunol.158:97−129を参照のこと。特に、初期アデノウイルス遺伝子領域E1a、Ea2、E4、VAI RNAおよび、潜在的に、E1bは、付属プロセスに参加していると考えられる。Janikら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925−1929。ヘルペスウイルス由来付属機能が記載されている。例えば、Youngら(1979)Prog.Med.Virol.25:113を参照のこと。ワクシニアウイルス由来付属機能もまた、記載されている。例えば、Carter,B.J.(1990)、上記、Schlehoferら、(1986)Virology 152:110−117を参照のこと。
【0084】
宿主細胞のヘルパーウイルスでの感染、または宿主細胞の付属機能ベクターでのトランスフェクションの結果として、AAV Repおよび/またはCapタンパク質を産生するためにAAVヘルパー構築物をトランス活性化する付属機能が発現される。Rep発現産物は、AAV発現ベクターから組換えDNA(目的のDNAを含む)を切り出す。Repタンパク質はまた、AAVゲノムを2倍にするために作用する。発現したCapタンパク質はキャプシドへと組み立てられ、そして組換えAAVゲノムはキャプシド中にパッケージされる。このように、増殖性AAV複製が起こり、そしてDNAはrAAVビリオンにパッケージされる。
【0085】
組換えAAV複製の後、rAAVビリオンは、CsCl勾配のような種々の従来の精製方法を使用して宿主細胞から精製され得る。さらに、感染が付属機能を発現するために用いられる場合、残りのヘルパーウイルスは、公知の方法を使用して不活性化され得る。例えば、アデノウイルスは、例えば、20分以上、約60℃の温度まで加熱することによって不活性化され得る。この処理はヘルパーのみを効率的に不活性化する。なぜなら、AAVは非常に熱安定性であるが、一方ヘルパーアデノウイルスは熱不安定性であるからである。
【0086】
次いで、得られたrAAVビリオンは、被験体のCNS(例えば、頭蓋腔)へのDNA送達のための使用に用意される。
【0087】
(ウイルスベクターの送達)
ウイルスベクターの送達方法としては、動脈内経路、筋肉内経路、静脈内経路、経鼻経路および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、rAAVビリオンは、インビボ形質導入技術またはインビトロ形質導入技術のいずれかを用いてCNSの細胞中に導入され得る。インビトロで形質導入された場合、所望のレシピエント細胞は、被験体から取り出され、rAAVビリオンで形質導入され、そしてその被験体に再導入される。あるいは、同系または異系の細胞が不適切な免疫応答を被験体において産生しない場合、それらの細胞が使用され得る。
【0088】
形質導入細胞の被験体への送達および導入のための適切な方法が記載されている。例えば、組換えAAVビリオンは、CNS細胞と(例えば、適切な培地中で)組み合わせられることによって細胞はインビトロで形質導入され得、そして目的のDNAを有する細胞に対するスクリーニングは、サザンブロットおよび/またはPCRのような従来技術を使用して、または選択マーカーを使用することによってスクリーニングされ得る。次いで、形質導入細胞は、薬学的組成物に処方され得(以下にさらに十分に記載される)、そしてその組成物は、グラフティング(grafting)、筋肉内、静脈内、皮下および腹腔内注射といった種々の技術により被験体に導入され得る。
【0089】
インビボ送達については、rAAVビリオンが、薬学的組成物に処方され、そして一般に、非経口的に(例えば、骨格筋または心筋への直接的な筋肉内注射によってか、またはCNSへの注射によって)投与される。
【0090】
しかし、従来の方法(例えば、注射)は、ウイルスベクターの被験体の脳への広範な送達を提供することが示されていないので、ウイルスベクターを対流増加送達(CED:convection−enhanced delivery)系を介してCNSに効率的に送達する発見が、本発明の中心をなす。本発明者らは、CEDがウイルスベクター(例えば、AAV)を動物の脳(例えば、線条体)の広い領域に対して効率的に送達し得ることを初めて記載し、そして初めてそれを実証する。以下に詳細に記載されそして例示されるように、これらの方法は、種々のウイルスベクター、例えば、レポーター遺伝子(例えば、チミジンキナーゼ(tk))または治療的遺伝子(例えば、AADCおよびtk)を有するAAVベクター、に適している。
【0091】
任意の対流増加送達デバイスが、ウイルスベクターの送達に適切であり得る。好ましい実施態様において、このデバイスは、浸透ポンプまたは注入ポンプである。浸透ポンプおよび注入ポンプの両方は、種々の供給元から市販されている(例えば、Alzet Corporation,Hamilton Corporation,Alza,Inc.,Palo Alto,California)。代表的には、ウイルスベクターは、以下のように、CEDデバイスを介して送達される。カテーテル、カニューレまたは他の注射デバイスが、選択した被験体のCNS組織に挿入される。本明細書中の教示から、当業者は、CNSのどの一般の領域が適切な標的であるかを容易に決定し得る。例えば、PDを処置するためにAAV−AADCを送達する場合、線条体が、脳の標的にするには適切な領域である。定位マップ(stereotactic map)およびポジショニングデバイスが利用可能である(例えば、ASI Instruments,Warren MIから)。ポジショニングはまた、被験体の脳のCT画像化および/またはMRI画像化により得られた解剖学的マップを使用して行われ、これは選択した標的への注射デバイスの誘導を補助し得る。さらに、本明細書に記載される方法は、脳の比較的に広い領域がウイルスベクターを吸収するように行われ得るので、注入カニューレをほとんど必要としない。外科的合併症は穿通の回数に関連するので、本明細書に記載される方法はまた、従来の送達技術において見られた副作用を減少させるのに役立つ。
【0092】
薬学的組成物は、目的のタンパク質の治療的な有効量(すなわち、問題の疾患状態の症状を低減もしくは改善するに充分な量、または所望の有益性を与えるに充分な量)を産生するに充分な遺伝物質を含む。この薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能な賦形剤を含む。このような賦形剤は、それ自身がその組成物を受ける個体にとって有害な抗体の産生を誘導せず、そして過度な毒性なく投与され得る、任意の薬学的薬剤を含む。薬学的に受容可能な賦形剤としては、ソルビトール、Tween80、ならびに水、生理的食塩水、グリセロール、およびエタノールのような液体が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩は、本明細書においては、例えば、塩酸塩、臭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような無機酸塩;ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などのような有機酸塩を含み得る。さらに、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質は、このようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の詳細な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(MackPub.Co.,N.J.1991)で入手可能である。
【0093】
本明細書の教示から当業者に明らかであるように、添加されなければならないウイルスベクターの有効量は経験的に決定され得る。投与は、処置過程を通して連続的または断続的に1用量にて行われ得る。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は、当業者に周知であり、そしてウイルスベクター、治療組成物、標的細胞、および処置されている被験体により変化する。単回投与および複数回投与が、処置する医師により選択されている用量レベルおよびパターンで行われ得る。
【0094】
1より多いトランスジーンが、送達されるウイルスベクターにより発現され得ることが理解されるべきである。あるいは、別々のベクター(各々が1以上の異なるトランスジーンを発現する)がまた、本明細書に記載されるようにCNSに送達され得る。さらに、本発明の方法により送達されるウイルスベクターが、他の適切な組成物および治療と組み合わせられることもまた意図される。例えば、以下の実施例で詳細に記載されるように、パーキンソン病は、AADCを発現するAAVベクターをCNSに(例えば、尾状核または線条体の被殻に)同時投与することによって処置され得、そしてさらなる薬剤(例えば、ドパミン前駆体(例えば、L−ドパ)、ドパミン合成のインヒビター(例えば、カルビドパ)、ドパミン異化作用のインヒビター(例えば、MaOBインヒビター)、ドパミンアゴニストもしくはドパミンアンタゴニスト)が、AADCをコードするベクターの投与の前に、それに続いて、またはそれと同時に投与され得る。例えば、L−ドパ(および必要に応じてカルビドパ)が、全身的に投与され得る。このようにして、PD患者において自然に枯渇しているドパミンが、L−ドパをドパミンに変換し得るAADCの発現によって明らかに回復される。トランスジーン(例えば、AADC)が誘導性プロモーターの制御化にある場合、このトランスジーンの発現を調節するために、ムリステロン(muristerone)、ポナステロン(ponasteron)、テトラシリン(tetracyline)またはアウフィン(aufin)のような、全身送達される特定の化合物が投与され得る。
【0095】
(CNS障害の処置)
治療的トランスジーンを発現するウイルスベクターを使用して、治療的なタンパク質またはペプチドを提供することによって種々のCNS障害を処置し得る。好ましい実施態様において、ウイルスベクターは、本明細書に記載されるCED法を介してCNSに送達される。なぜなら、これらの方法は、広範囲に分布するウイルスベクターの第1の効果的様式をCNSに提供するからである。処置され得る障害の限定されない例としては、腫瘍、発作および神経変性疾患から生じる障害が挙げられる。
【0096】
(パーキンソン病)
本発明の好ましい実施態様において、酵素AADCを提供するウイルスベクターが、パーキンソン病の処置のために使用される。上記したように、パーキンソン病は、ドパミン作用性黒質線状体ニューロンの選択的な損失から生じ、その結果、黒質からの線条体への入力の損失を生じる。PDの動物モデルが、例えば、ドパミン作用性細胞を破壊する6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)でラットまたは霊長類を処置することによってか、または神経毒である1−メチル−4−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロピリジン(MPTP)(これはパーキンソン病様の疾患を生じる)で霊長類を病変させることによって作製されている。
【0097】
本発明は、パーキンソン病患者(例えば、MPTPで病変したサル)のドパミン作用性活性が、AADCのトランスジーンを有するウイルスベクターを、L−ドパおよび(必要に応じてカルビドパ)の全身的(例えば、経口)投与と組み合わせて投与することによって回復され得るという初めての証拠を提供する。パーキンソン病のための遺伝子治療に関する以前の示唆は、疾患の進行に伴うチロシンヒドロキシラーゼの欠乏について焦点を当ててきた。したがって、これらの示唆により、インサイチュでドパミンを生成するためには、少なくとも3つのトランスジーン(チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子;補因子ビオプリテン(bioptrene)であるGTP−シクロヒドロキシラーゼ−1の遺伝子;およびAADCの遺伝子)の首尾のよい発現による黒質線状体経路におけるドパミン合成の回復が要求される。3つの遺伝子を適切なレベルで送達することに付随する問題に加えて、このアプローチを使用してドパミンレベルの調節を制御することは困難である。
【0098】
本発明者らは、L−ドパと組み合わせた1つのトランスジーン(例えば、AADC)が治療的有用性を提供することを実証した。AADCはドパミン生合成の最終工程に関与する酵素であり、これは、L−ドパをドパミンに変換する。従って、ドパミン作用性活性を回復するためのAADC治療的アプローチの明らかな利点は、たった1つの遺伝子が送達されなければならず、そしてドパミンレベルの調節がL−ドパの末梢レベルを制御することによって可能であることである。さらに、AADC遺伝子だけを送達することによって、L−ドパはプロドラッグとして使用され、線条体におけるドパミンレベルを調節し得る。
【0099】
AAVベクターによって送達されるAADCをコードするヌクレオチドは、主に、線条体ニューロンで発現されるようなので、別の重要な治療的利点は、L−ドパに関する機構を緩衝する処置の提供である。運動異常症のような多くの副作用が、パーキンソン病(Parkinsonian)のヒトの脳の非効率な緩衝作用に起因する。本明細書に記載される方法は、代謝されないL−ドパがニューロンに貯蔵されることを可能にすることによってこの問題を回避する。以下に例示されるように、MPTP処置された線条体へのAADCの送達が、線条体ニューロンによる、L−ドパのドパミンへの変換、引き続くDOPACおよびHVAへの代謝を可能にする。FMT PETデータに基いて、FMTが線条体ニューロン領域において可視化されたので、線条体ニューロンはまたドパミンを貯蔵し得るようである。事実、AADC遺伝子の転入の後でのL−ドパのドパミンへの変換速度は、頑強でありかつ正常な線条体で見られたものより優れていた(例えば、図7を参照のこと)。さらに、パーキンソン病は進行性の障害ではあるが、進行中の変性プロセスは、線条体ニューロンでのAADC発現に影響しないようである。なぜなら、これらは、代表的に、特発性パーキンソン病によって影響されないからである。
【0100】
特発性パーキンソン病に罹患する患者のドパミン作用系の変性は、均一ではない。黒質線状体経路は中脳辺縁系経路より非常に速い速度で変性し、これは、この2つの経路の活性の間の平衡異常を有する患者を残す。この疾患が進行するにつれ、黒質線状体経路の変性を補償するには、より高レベルのL−ドパが必要とされるが、これはまた、核の側坐核(accumbens)および中脳辺縁系の他の部分において、さらにより高いドパミンレベルを生じる。このような過剰刺激は、幻覚のようなL−ドパ処置に関連するいくつかの副作用の原因となり得る。同様に、MPTPは、中脳辺縁系ドパミン作用性系を相対的に乏しくした(例えば、図7を参照のこと、尾状核および被殻においてはドパミン作用性神経支配が存在せず、部分的な病変が核の側坐核に見られる)。図7に示されるように、AAV−AADCは、この平衡異常をほぼ正常な均衡まで回復し得る。したがって、AADC酵素レベルの回復後に、より低用量のL−ドパが必要とされ、そしてL−ドパのドパミンへの変換速度を改善することが可能である。これは、順々に、中脳辺縁系の過剰刺激を減少し得、その結果、L−ドパ/カルビドパに関連する副作用をより少なくする。
【0101】
上記で説明したように、AAV−AADCベクターは、任意の適切な方法によって送達され得る。これらの方法としては、例えば、インジェクション、グラフティング、注入、このベクターを有する細胞の移植などが挙げられる。好ましい実施態様において、このベクターは、本明細書に記載されるCED法によって送達される。以下に例示するように、このような送達方法は、CNSニューロンでの広範囲の分布および発現を提供して、それによってPDについての新規な処置レジメを提供する。
【0102】
(画像化)
本発明はまた、酵素または他の分子のインビボでの活性を決定する方法を提供する。さらに詳細には、標的とされる活性を特異的に追跡するトレーサーが選択されそして標識される。好ましい実施態様において、このトレーサーは、ドパミン活性(例えば、ドパミンを利用する細胞に結合するフルオロ−L−m−チロシン(FMT))を追跡する。選択したトレーサーに適切な標識としては、分光器的、光化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物が挙げられる。本発明において有用な標識としては、放射標識(例えば、18F、3H、125I、35S、32Pなど)、酵素、比色標識、蛍光色素などが挙げられる。好ましい実施態様において、標識18Fは、ドパミン活性を定量するためにFMTとともに使用される。
【0103】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。例えば、放射標識は、画像化技術、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出され得る。好ましい実施態様において、この標識は、画像化技術(例えば、陽子射出断層投影法(PET))によって、被験体の脳においてインビボで検出される。PET技術は、以下の実施例3に詳細に議論される。
【0104】
(実施例)
以下は、本発明を実施するための特定の実施態様の例である。この実施例は、例示の目的のみのために提供され、そしていかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0105】
使用される数値(例えば、量、温度など)について正確さを確保するための試みがなされたが、当然、若干の実験的な誤差および偏差は許容されるべきである。
【0106】
(実施例1:AAV−tkの構築および生成)
AAV−tkベクターを、pUCベースのプラスミド(Roche Molecular Biochemicalsから入手可能)におけるサイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターの転写制御下に単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を配置することにより構築した。β−グロブリンのイントロンをtk遺伝子の上流に直接的に配置し、そしてヒト成長ホルモンのポリAを下流に配置した。このカセット全体を、遺伝子の発現、複製、およびウイルス粒子へのパッケージングに必要とされるAAVの逆方向末端配列(ITR)に隣接させた。
【0107】
組換えAAVビリオンを、以下のように、ヒト293細胞(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(受諾番号ATCC CRL1573)から容易に入手可能)中で産生した。この293細胞株を、完全DMEM(Biowhittaker)(4.5g/L グルコース、10% 熱失活ウシ胎仔血清(FCS;Hyclone)、および2mM グルタミンを含む)中で培養した。サブコンフルエントな293細胞を、リン酸カルシウム沈殿(例えば、Sambrookらを参照のこと)により、ITRに隣接したAAV−tk発現カセットならびにAAV(pw1909(AAV rep遺伝子およびcap遺伝子を含む))とアデノウイルス(pLadenol(E2a、E4、およびアデノウイルスVA1RNA遺伝子およびVA11RNA遺伝子を含む))との両方に由来するヘルパープラスミドで同時トランスフェクトした。6時間後、この培地を、血清を含まないDMEMに交換し、そしてインキュベーションを37℃、5% CO2にて72時間続けた。ペレット化した細胞を、Tris緩衝液(100mM Tris/150mM NaCl,pH8.0)中で凍結/融解を3回行って溶解させ、そして溶解物を10,000g、15分間の遠心分離によって細胞片から清澄化した。非ウイルスタンパク質をペレットにするために、CaCl2を最終濃度25mMまで添加し、そして0℃にて1時間インキュベートした後に、この清澄化した溶解物を10,000gで15分間遠心分離した。得られた上清にポリエチレングリコール8000(PEG)を添加した(最終濃度=8%);この溶液を0℃にて3時間インキュベートし、そして3000×gで30分間遠心分離した。ベクターを含むペレットを、50mM Hepes Na/150mM NaCl/25mM EDTA(pH8.0)中で可溶化させ、そして10,000×gで15分間遠心分離してペレットにし、そして不溶性物質を除去した。
【0108】
塩化セシウム等密度(isopycnic)勾配遠心分離を行い、そしてAAV−tkを、得られた勾配から平均密度1.38g/mlを有する画分を単離することにより回収した。ベクターを濃縮するためにPEGを再び使用した。次いで、これを25mM Hepes Na/150mM NaCl(pH7.4)中に再懸濁し、そして記載したように遠心分離して不溶性物質を除去した。このストックをDNAse処理し、そしてベクター力価を定量的ドットブロットハイブリダイゼーションにより決定した。
【0109】
(実施例2:AAV−tkのインビボ送達:用量および方法)
脳への導入に適切な用量のAAVを決定するために、以下の研究を行った。AAVベクターに対する用量応答を試験するために、その比較的に大きな同構造組織の領域ゆえに、ならびに線条体は、神経変性疾患および他の中枢神経系障害の処置に対する標的なので線条体を使用した。
【0110】
さらに、ベクターをCNSに送達する効率的な方法を決定した。治療剤の単純な定位的インジェクションは、脳において限られた容積の分布を生じることが示されている(Krollら,(1996)Neurosurgery 38:746−754)。したがって、頭蓋内送達の間の圧力勾配を維持するために、低速度注入ポンプを使用した。低分子、中程度分子、および大きな分子の脳への送達に関する以前の研究により、低速度注入ポンプが、広範でかつ均質な組織分布を生じることが実証されている。
【0111】
ベクターの頭蓋内インジェクションを投与するにはどの方法が最も効率的であるかを研究するために、Harvard注入ポンプ(Harvard Apparatus Inc.,Holliston,MA)またはAlzet皮下浸透ポンプ(Alza Scientific Products,Palo Alto,CA)を使用することによって、ラットに2.5×1010粒子のAAVを与えた。雌性Sprague−Dawleyラット(250〜300g)(Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から)を、ケタミン(体重1kgあたり100mg)およびキシラジン(体重1kgあたり10mg)の腹腔内注射により麻酔し、そして手術のために調製した。手術の間、鎮静を、イソフルラン(isofluorane)(Attrane.Omeda PPD Inc.,Liberty,NJ)を用いて維持し、そしてO2流速を0.3〜0.5L/mで維持した。各々のラットの頭部を耳棒(earbar)で定位装置(Small Animal Stereotactic Frame;ASI Instruemnts,Warren,MI)にて固定し、そして皮膚を通じて正中切開して頭蓋骨を露出させた。小さな歯科用ドリルを使用して、ブレグマから1mm前方および正中線から2.6mm後方の頭蓋骨に穿孔を作製した。注入ポンプまたは皮下浸透ポンプを使用して、ベクターを左半球の深さ5mmに送達した。
【0112】
投薬研究のために、3つの群の動物(一群あたり6匹の動物)が存在した。各々の動物に、AAV−ktを、Harvard注入ポンプを使用して8μl/hの速度にて2.5時間連続して投与した。ローディングチャンバー(Teflonチュービング1/16th「OD×0.03」ID)および付属注入チャンバー(1/16「OD×0.02」ID)を、総容量20μlの人工脳脊髄液(csf)(148mM NaCl,3mM KCl,1.4mM CaCl2・2H2O,0〜8mM MgCl2・6H2O,1.3mM Na2HPO4・H2O,0.2mM Na2HPO4・H2O)中2.5×108、2.5×109、または2.5×1010粒子のAAV−ktで満たした。融合シリカ(fused silica)にはめ込んだ27ゲージ針により送達を行い、これを注入の後に徐々に15mで取り除いた。
【0113】
あるいは、ベクターを6匹の動物の1つの群に送達するために、皮下浸透ポンプを使用した。各々のラットに、AAV−tkをAlzet浸透ポンプ(モデル番号2001D)(ALZA Scientific Products,Palo Alto,CA)を使用して8μl/hの速度にて24時間連続して投与した。このポンプのリザーバーおよび付属カテーテル(ポリエチレン60チュービング)を、総容量200μlの人工脳脊髄液(csf)(Harvard Apparatus,Inc.,Holliston,Mass)中2.5×1010粒子のAAV−tkで満たした。融合シリカにはめ込んだ27ゲージカニューレにより送達を行った。定位配置の後、このカニューレを小さなステンレス綱ねじおよび歯科用接着剤で頭蓋骨に固定し、そしてポンプを背中の肩甲中央領域(mid−scapular area)の皮下に移植した。手術部位を解剖学的層(anatomical layer)にて9mmの創傷クリップを用いて閉じた。24時間後、カテーテルを留めてそして密封してポンプを除去したが、代わりに移植したカニューレを残した。バーホール(burr hole)は骨ろうで充填した。
【0114】
全ての外科的手順、動物の世話および飼育、ならびに組織の回収を、Berkeley Antibody Co.(Berkeley,CA)のRichmondの施設にて行った。
【0115】
(組織学)
動物を、ペントバルビタール過剰量(用量)で安楽死させ、そして氷冷PBSおよび4%中性緩衝化パラホルムアルデヒドを用いて上行大動脈を介して灌流した。脳を頭蓋骨から取り出し、同じ固定液中での24時間の液浸によって次の固定を行い、30%スクロースで平衡化し、そして−70℃のイソペンタン中で凍結した。次いで、これらを低温槽に配置し、そして40ミクロンの切片を前頭葉前部の皮質から中脳まで連続的に収集した。各々の脳は約150切片を生じ、これは、前方−後方(AP)が6〜8mmの長さであった。慣用的な組織学的分析のために、全てのIP切片をH&Eで染色した。一般的な細胞密度を測定するために、異なる脳領域を示す、選択した切片をクリスタルバイオレットで染色した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
(PCR分析)
1群あたり2匹を有するラットのさらなる2つの群を、ベクターの組織分布を決定する目的のために、2.5×1010個の粒子のAAV−tkで処置した。上記のように、一方の群は、注入によってベクターを受け、そして他方は、浸透ポンプによって受けた。動物を、3週間後にCO2吸入を使用して安楽死させ、そして各ラットから、右脳、左脳、脊髄、右目、左目、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、卵巣、胸腺、リンパ節、骨髄、および脚の筋肉を含む15の器官および組織からサンプルを採集した。滅菌技術を使用し、そして組織を各サンプル間で変化するディスポーザブル縫合糸除去キットを使用して収集した。組織を、液体N2中で迅速に凍結し、そしてそれらをゲノムDNAについて処理するまで−70℃で保存した。PCRを、Perkin ElmerのGeneAmp PCR Core Kit、およびtk配列由来の2つの30マーのオリゴ(5’−AAGTCATCGGCTCGGGTACGTAGACGATATC−3’(配列番号1)および5’−ATAGCAGCTACAATCCAGCTACCATTCTGC−3’(配列番号2))を使用して実施した。反応を、PTC−100熱サイクラー(MJ Reserach,Inc.)において実施し、そしてベクターが存在するサンプル中で生成物あたり158bpを得た。
【0118】
(免疫組織化学)
免疫組織化学を使用して、H&Eを用いて染色した直後に、切片毎におけるトランスジーン発現を検出した。従って、全12個の切片のうち1つをPBSで洗浄し、3%H2O2で30分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックして、dH2OおよびPBSで再びリンスし、そしてブロッキング溶液(PBS中の10%ヤギ血清+0.01%Triton−X100)中で30分間インキュベートした。次に、サンプルを、多角形(polygonal)の抗tk抗体(Yale)(1:1000)中で1時間インキュベートし、PBS中で3回洗浄し、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(Vector)(1:300)中で1時間インキュベートし、そして再び洗浄した。抗体結合を、Streptavidin西洋ワサビペルオキシダーゼ(1:300)およびVIP色原体(Vector)を用いて可視化した。
【0119】
(定量分析)
トランスジーン発現を、Ken−a−visionマイクロプロジェクターを使用して、ARTZIIグラフタブレット(graphic tablet)上でtk−免疫染色した切片を投影することによって各脳について定量した。NIH画像1.6プログラムを使用して、画像を獲得および分析した。各脳についての陽性細胞の推定総数を、以下の式を使用して、100倍の倍率で決定した:
総tk細胞数=(n1+n2+n3...)×12×k
n=陽性細胞/切片
k:Ambercrombie方程式(1946)から誘導される補正係数
k=T/(T+D) T=切片の厚さ(40μ)、D 細胞直径(16μ);k=0.71。
tk−免疫反応性領域の容量を、50倍の倍率で投影した獲得された画像を使用してtk発現の面積を測定し、そして以下のように算出することによって決定した。
【0120】
【数1】
【0121】
(ここで、L=染色のAP距離(μ)=n×12×40uかつn=染色した切片の数)。
【0122】
どれほどのウイルスが脳組織を効率的に形質導入するために必要であるかを決定するために、Harvard注入ポンプを介して2.5×108、2.5×109、または2.5×1010個のAAV−tk粒子を受けたラット間で、免疫染色した切片の比較を実施した。
【0123】
測定される全てのパラメーターを用いて、明瞭な用量応答を観察した。最も高い力価を受けた動物由来の注入された組織は、中程度の用量群についての10mm3の容量および低用量群についての1mm3未満の容量と比較して、平均300mm3の組織(すなわち、成体ラット大脳半球の約60%(Leydenら(1998)Behav.Brain Res.87:59〜67))において、トランスジーン発現を実証した(図1a)。容量を、群間で有意な差もまた共に示した染色の平均面積および距離から算出した(図1b、c)。形質導入した組織の容量における発現は一様ではなかったが、染色の勾配を示した。注入部位を直接的に囲む領域は強力に標識されたが、一方、針管からの距離が増大するにつれ、検出され得る陽性細胞はより少なかった(図2)。最後に、図1dは、平均169,000と推定される、高用量群からの切片におけるtk陽性細胞の総数が、中程度の用量群のその総数よりも約10倍高いことを示す。
【0124】
(注入対浸透ポンプ送達)
免疫染色した脳切片の比較は、2つのポンプのベクターを送達する能力における類似性および相違性を実証した。平均容量、面積、AP距離、および陽性細胞の推定総数によって測定されるように、2つの群間のtk発現における有意な差異は存在しなかった(図3a〜d)。浸透ポンプ送達群中での全サンプルの針管の周囲のいくつかの組織の損失が存在したので(データは示さず)、推定される陽性細胞の数についての、この群の真の平均値は、より高いものであり得る。そして、両方の送達方法が著しいトランスジーン発現を生じた間に、標識されるようになる細胞の型において差異が存在した。ベクターを注入された組織は、ニューロンにおいてほとんど独占的にtkを発現し(図4a、b)、そして浸透ポンプを介してベクターを受けた組織は、ニューロンおよび注入の部位の近傍の反応性グリア細胞において発現を示した(図4c、d)。
【0125】
(組織分布)
組換えAAVが頭蓋内送達の部位から離れた位置で検出され得るか否かを決定するために、PCR分析を、高用量のベクターを受けた3匹のラットの各々由来の15の異なる器官および組織において実施した。送達方法(注入または浸透ポンプ)に関わらず、tk遺伝子から458bpのPCR産物を、Southernブロット分析を使用して、脊髄、脾臓、および脳の両半球において検出し得た(図6)。このラットのうちの1匹において、ベクターのセットを、腎臓由来の組織においても検出した。
【0126】
(毒性)
毒性が任意の送達方法に関連するか否かを評価するために、組織病理学を、各群由来のH&E切片に対して実施し、そしてその結果を表1に要約する。組織形態全体を十分に保存し、そして凍結または他の人為結果は存在しなかった。注入送達の群において、組織の損傷は、仮に存在したとしても最小であった。細胞性浸潤はなく、針管における壊死はなく、そして数匹の動物において最小の皮質性壊死が存在した。新たな出血を、高用量のラットのうちの1匹において見出し、そしてヘモジデリン沈着(過去における中程度の出血を示す)を、高用量動物のうちの4匹において見出した。あるいは、深刻な損傷が、針管、細胞性浸潤、およびヘモジデリン沈着の周りの大きな壊死性領域を含む浸透ポンプ送達群の全ての動物において見られた。
【0127】
従って、2.5×1010個のAAV−tk粒子の、8μl/時間で2.5時間での注入は、組織の300mm3の容量に対してAAVベクターを部分的に分布させるために十分である。この領域において、発現の勾配は、注入部位の直接的な周囲を強力に染色することによって観察され、そしてより遠くで陽性細胞がより少なくなる。分布は、2つの異なるポンプ送達系が比較される場合、用量(粒子数)の関数であるようであるが、送達時間またはサンプル容量の関数でなないようである:2.5×1010個の粒子の分布は、浸透ポンプ(容量=200μl、速度=8μl/時間、時間=24時間)か、または注入ポンプ(容量=20μl、速度=8μl/時間、時間=2.5時間)によって送達される場合に同じであった。さらに、著しく異なるレベルの発現を、3つの注入送達群の間で観察した。ここで、サンプル容量、速度、および送達時間は、一定に保たれ、そして粒子数のみが可変であった。
【0128】
AAVの対流を増強する送達を用いて得られたこれらの結果は、大きな高分子(例えば、ラット脳に対する超磁性体(supramagnetic)粒子)のCED研究から得られる結果と一致する(Krollら(1996)Neurosurg.38:746〜754、米国特許第5,720,720号)。磁気共鳴画像および組織化学染色を使用したKrollらは、組織中の粒子の分布を最大化することにおいて、用量が最も重要な変数であることを実証した。Krollは、注入容量が小さい(2μl)かもしくは中程度である(24μl)か否か、または注入速度が低い(6μl/時間)かもしくは高い(72μl/時間)か否かに関わらず、5.3から26.5μgへの粒子の増加が、組織中のこれらの分布の容量において5倍程度の増加を生じたことを報告した。
【0129】
細胞型特異性に関して、AAVがニューロンを形質導入し得、そして現在の研究がこの知見を確証することは、以前に報告されている。発現がニューロンにおいて非常に顕著であるという事実は、CMVプロモーターを使用するAAV遺伝子治療ベクターが、パーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の処置において有用であることを示唆する。活性なグリオーシスが存在する乱れた組織の小領域を除いては、成熟グリア細胞において発現は見られなかった。しかし、本発明者らは、AAV−CMV−tkベクターがグリア細胞において十分に発現され、そしてプロドラッグガンシクロビルと組合わせて得られる場合、これが、ヌードマウスにおける実験的なグリオームを処置することにおいて有用であることを以前に実証した。tk「自殺」遺伝子は、分裂細胞に対して毒性であると考えられるので、これは、標的腫瘍細胞に対してのみ危険を引き起こし、ニューロンの周囲に対しては危険を引き起こさないべきである。最後に、本研究に使用されるCMVプロモーターは、ニューロンにおける強力なトランスジーン発現を可能にする一方、細胞型特異的プロモーターの選択は、稀突起膠細胞およびグリア細胞のような他のCNS成分へのAAVの標的化を可能にする。
【0130】
本研究はまた、脳に送達されるAAVが、主に中枢神経系において含まれることを示す。他は、脳の2つの半球の間のウイルスの逆行性輸送、および循環する大脳脊髄液を介して脊髄に至るウイルスの能力を実証した。脾臓におけるベクターの外見は奇妙であり、そして2つの機構を示唆する。1つは、ウイルスが注入プロセスの間の血流に進入することであり、脾臓を介して循環され、ここで、ウイルスは「除去される」。しかし、これが事実ならば、AAVによって誘導されることが示される他の組織が、ウイルスを取り込むこともまた予測される。別の可能性のある機構は、樹状細胞によって示される機構であり得る。これらの細胞は、主に皮膚において見出され、外来物質を取り込み、循環へ進入し、そして脾臓において濃縮され、ここでこの外来物質はさらなるプロセシングまたは破壊を待ちながら長期間の間存在し得る。いずれの場合において、本発明者らは、送達の経路(筋肉内、静脈内、およびこの頭蓋内を含む)に関わらず、ベクターは、脾臓において常に検出されることを見出した。
【0131】
要約すると、高用量のAAVベクターの緩慢な頭蓋内注入は、齧歯類モデルにおける有意な部分または脳を形質導入することが示された。AAVを使用して、種々の中枢神経障害(腫瘍、発作から生じる損傷、および神経変性疾患を含む)を標的し得る。
【0132】
(実施例3:パーキンソン病の遺伝子治療)AADCをコードする導入遺伝子を保有するAAVベクターの対流増加送達は、以下のように、サルにおけるMPTP誘導性パーキンソン病において、ドパミン作用系を回復させることを示す。
【0133】
(動物)
パーキンソン病症状の進行に基づく移植のための候補としてアカゲザル(n=4、3〜5kg)を選択した。安定な過剰に病変したヘミパーキンソン(hemi−parkinsonian)症候群が達成されるまで、動物に2.5〜3.5mgのMPTP−HLCを、右内頸動脈を通じて注入(同側性といわれる)し、続いて0.3mg/kgのMPTP−HCLを4I.V.用量注入(対側性といわれる)することにより病変させた(Eberling,(1998)Brain Res.805:259〜262)。霊長類MPTPモデルは、ヒトへの試行の前に、評価の金本位制モデルであると考えられる(Lagston(1985)Trends Pharmcol.Sci.6:375〜378)。MPTPは、CNS中でモノアミンオキシダーゼBによりMPP+に転換される。MPP+は、パーキンソン病で見られるように、黒質ドパミン作用性ニューロンの退化および黒質線条体ドパミン経路の欠損をもたらす強力な神経毒素である。MPTP病変動物を、手術前の5ヶ月間に、臨床的な評定尺度および活性のモニタリングを使用して、週に一度臨床的に評価した。
【0134】
MPTP投与後、これらの動物は、一般的な緩慢、運動緩徐、硬直、平衡障害、および屈曲姿勢により明らかとなるパーキンソン病の臨床的徴候を発症させた。全てのサルにおいて右腕よりも左腕のほうが使用頻度が減少し、そして全て震えの徴候を示した。臨床的な評定尺度を用いて、全てのサルは、MPTP期間の後5ヶ月の間に、重篤で安定なパーキンソン症候群評点(23±1.7、23±1.2、24±1.7、19±3)に移和した。
【0135】
(ベクター産生)
1.pAAV−AADC:
1.5kbのBamHI/PvuIIヒトAADC cDNA(Fanら(1998)Human Gene Therapy 9:2527〜2535)をAAV発現カセットpV4.1c中のBamHI/HindII部位にクローン化した。この発現カセットは、CMVプロモーター、CMVスプライスドナーおよびヒトβグロビンスプライスアクセプター部位からなるキメライントロン、ヒト成長ホルモンポリアデニル化配列、および隣接AAV ITR(逆方向末端反復)を含む(Herzog,R.W.ら、(1999)Nature Medicine 5:56〜63)。
【0136】
2.pAAV−LacZ:
ベクターpAAV−LacZを以下のように構築した。pSub201(Samulskiら(1987)J.Virol 61:3096−3101)のAAVコード領域を、XbaI部位間でEcoRIリンカーと置換して、プラスミドpAS203を生成した。pCMVβ(CLONETECH)のEcoRI〜HindIIIフラグメントを平滑末端化し、そしてKlenow処理したpAS203のEcoRI部位にクローン化し、そしてpAAv−lacZを生成した。
【0137】
3.pHLp19:
プラスミドH19は、AAVベクターの産生を増強する一方、複製コンピテントな偽野生型ウイルスの産生を抑制するように設計された改変型AAV−2ゲノムをコードする。このプラスミドは、cap遺伝子の3’位に移動されたP5プロモーターを含み、そしてそのプロモーターは、主にFLPリコンビナーゼ(recombinase)認識配列からなる5’非翻訳領域により置換される。pH19を、AAVゲノムの3’末端および5’末端の間の任意の相同性領域を除去するように構築した。さらに、pH19 P5プロモーターの7塩基対のTATAボックスを、その配列をGGGGGGGへ変異させることによって破壊した。
【0138】
pH19を、AAV−2プロウイルスであるpSM620由来のAAV−2配列を使用して、いくつかの処理工程において構築した。pSM620を、SmaIおよびPvuIIを用いて消化し、そしてSmaIフラグメントをコードする4543bpのrep遺伝子およびcap遺伝子をpUC119のSmaI部位中にクローン化し、7705bpのプラスミドであるpUCrepcapを生成した。次いで、rep遺伝子およびcap遺伝子と隣接する残ったままのITR配列を、以下のオリゴヌクレオチド:
145A;5’−GCT CGG TAC CCG GGC GGA GGG GTG GAG TCG−3’(配列番号3)
145B;5’−TAA TCA TTA ACT ACA GCC CGG GGA TCC TCT−3’(配列番号4)
を使用して、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発により欠失させた。
【0139】
得られたプラスミド、pUCRepCapMutated(pUCRCM)(7559bp)は、任意のITR配列(4389bp)をもたないAAV−2ゲノム全体を含む。変異誘発性オリゴヌクレオチドにより一部導入されたSrfI部位は、この構築物において、rep遺伝子およびcap遺伝子と隣接する。AAV配列は、AAV−2の146〜4,534位に対応する。
【0140】
Eco47III部位をP5プロモーターの3’末端で導入し、P5プロモーター配列の切除を容易にした。これを行うために、pUCRCMは、プライマーP547(5’−GGT TTG AAC GAG CGC TCG CCA TGC−3’)(配列番号5)を用いて変異誘発した。得られた7559bpのプラスミドは、pUCRCM47IIIと呼んだ。
【0141】
pBSIIsk+のポリリンカーを、BSSHIIで元のものからの切除、およびオリゴヌクレオチドblunt1およびblunt2で置換することにより変えた。得られたプラスミド、bluntscriptは、2830bpの長さであり、そして新規のポリリンカーは、制限部位EcoRV、HpaI、SrfI、PmeIおよびEco47IIIをコードする。blunt1および2の配列は、以下である:
blunt1;5’−CGC GCC GAT ATC GTT AAC GCC CGG GCG TTT AAA CAG CGC TGG−3’(配列番号6)
blunt2;5’−CGC GCC AGC GCT GTT TAA ACG CCC GGG CGT TAA CGA TAT CGG−3’(配列番号7)。
【0142】
pH1は、pUCRCM由来のSmaIフラグメントをコードする、4398bpのrepおよびcap遺伝子をpBluntscriptのSmaI部位に連結することによって構築され、その結果、HpaI部位は、rep遺伝子に近位であった。pH1は、7228bpの長さである。
【0143】
pH2は、pH1のP5プロモーターがpGN1909の5’非翻訳領域により置換されることを除くと、pH1と同一である。これを行うために、pW1909lacZ由来の5’非翻訳領域をコードする329bpのAscI(blunt)−SfiIフラグメントをpH1の6831bpのSmaI(部分的)−SfiIフラグメント中に連結してpH2を作製した。pH2は、7156bpの長さである。
【0144】
pUCRCM47III由来のp5プロモーターをコードする、172bpのSmaI−Eco43IIIフラグメントのpH2中のEco47III部位への挿入により、P5プロモーターをpH2の3’末端に付加した。3つのAAVプロモーター全ての転写方向が同じになるように、このフラグメントを合わせた。この構築物は、7327bpの長さである。
【0145】
P5の3’側のTATAボックス(AAV−2は、255〜261に位置し、配列は、TATTTAA)を、変異誘発性オリゴヌクレオチド5DIVE2(5’−TGT GGT CAC GCT GGG GGG GGG GGC CCG AGT GAG CAC G−3’)(配列番号8)を用いて、配列をGGGGGGGに変化させることにより除去した。得られた構築物pH19は、7328bpの長さである。
【0146】
4.プラデノ5(pladeno5):
プラデノ5は、293細胞中にトランスフェクトされる場合、AAVベクター産生のためのアデノウイルスヘルパー機能の完全なセットを提供するプラスミドである。これは、本質的に、アデノウイルス2由来のE2A、E4およびVA RNA領域およびプラスミド骨格から構成される。このプラスミドを、以下のように構築した。
【0147】
pBSIIs/k+を、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発および以下のオリゴヌクレオチド:
5’−CCG CTA CAG GGC GCG ATA TCA GCT CAC TCA A−3’(配列番号9)
を使用して、ポリリンカーおよび単一のEcoRV部位を有するα相補性カセットをコードする637bp領域を置換するために改変した。制限部位BamHI、KpnI、SrfI、XbaI、ClaI、Bstl107I、SalI、PmeIおよびNdeIをコードするポリリンカーを、次いでEcoRV部位中にクローン化した(5’−GGA TCC GGT ACC GCC CGG GCT CTA GAA TCG ATG TAT ACG TCG ACG TTT AAA CCA TAT G−3’)(配列番号10)。
【0148】
アデノウイルス−2 DNAを消化し、そしてE2A領域(アデノウイルス−2ゲノムの22,233〜27,568位に対応する5,335bpのKpnI−SrfIフラグメント)をコードする制限フラグメント、およびVA RNA(アデノウイルス−2ゲノムの10,426〜11,157位に対応する、731bpのEcoRV−SacIIフラグメント)をコードする制限フラグメントを単離した。E2AフラグメントをポリリンカーのSalI部位とKpnI部位との間に組込んだ。最初に、アデノウイルス−2の21,606〜35,470位(遺伝子の5’末端をコードする)に対応する13,864bpのBamHI−AvrIIフラグメント、およびアデノウイルス−2の35,371〜35,833位(遺伝子の3’末端をコードする)に対応する462bpのAvrIIおよびSrfI消化されたPCRフラグメントを、pBSII/k+のBamHI部位とSmaI部位との間に連結させることによって、pBSII/k+中でE4領域をアセンブリした。PCRフラグメントを産生するために使用されるオリゴヌクレオチドは、E4プロモーターおよびアデノウイルス末端反復の連結部にSrfI部位を導入するように設計した。その連結部は、配列5’−AGA GGC CCG GGC GTT TTA GGG CGG AGT AAC TTG C−3’(配列番号11)および5’−ACA TAC CCG CAG GCG TAG AGA C−3’(配列番号12)を有する。インタクトなE4領域を、SrfIおよびSpeIで切断することによって除去し、そしてアデノウイルス−2の32,644〜35,833位に対応する3,189bpフラグメントを、SrfI部位とXbaI部位との間のE2A中間体中にクローン化した。最終には、SacII部位のT4ポリメラーゼ媒介平滑末端改変の後、VA RNAフラグメントをBstl107部位中に挿入した。プラデノ5中の遺伝子を、E2AおよびE4プロモーターの5’末端が隣接するように整列させ、これは、互いに逆方向で転写する領域を生じる。このVA RNA遺伝子は、E4遺伝子の3つのプライム末端に位置し、E4遺伝子の方向へ転写する。このプラスミドは、11,619bpの長さである。
【0149】
(AAVベクター産生)
HEK293細胞株(Graham,F.L.、Smiley,J.,Russel,W.C.,およびNaiva,R.(1977)Characteristics of a human cell line trasnformed by DNA from human adenovirus type 5.J.Gen.Virol.36:59〜72)を、4.5g/リットルのグルコース、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、および2mMのグルタミンを含む完全DMEM(Bio Whittaker)中で、空気中5%CO2において37℃で培養した。40のT225フラスコにそれぞれ2.5×106細胞を播種し、そして3日間増殖させて70〜80%のコンフルエンシー(フラスコあたり約1.5×107細胞)までトランスフェクトさせた。
【0150】
Matsushitaら(Matsudhita,T.、Elliger,S.、Elliger,C.、Podsakoff,G.、Villarreal,L.、Kurtzman,G.J.、Iwaki,Y.、およびColosi,P.(1998)「Adeno−asociated virus vectors can be efficiently produced without helper virus」Gene Therapy 5:938〜945)によって記載されるトランスフェクション方法および精製方法を、少々改変して、AAVベクター産生に用いた。このベクター産生過程は、HEK293細胞の、フラスコあたりそれぞれ20μgの以下の3つのプラスミド:AAV−AADCプラスミド、AAVヘルパープラスミド(pHLP19、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子を含む)、およびアデノウイルスヘルパープラスミド(プラデノ5、以前ではpVAE2AE4−2(4)として公知であり、そしてE2A、E4および精製アデノウイルス−2由来のVA RNA遺伝子から構成される)での、リン酸カルシウム法(Wigler,Mら(1980)Transformation of mammalian cells with an amplifiable dominant−acting gene.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567〜3570)を用いた、6時間の同時トランスフェクションを含む。トランスフェクションの後、培地を交換し、そして3日後に細胞を採集した。次いで、細胞ペレットを3サイクルの凍結−解凍溶解(断続的にボルテックスしながら、ドライアイス−エタノール槽と37℃槽との間で交互にする)に供した。細胞細片を遠心分離で除去した(10,000g、15分間)。上清を2回遠心分離して、残っている懸濁物を除去し、そして続いてBenzonaseR(200u/ml)で37℃で1時間処理し、細胞DNAの混入を減少させた。インキュベーションの後、上清をCaCl2 25mMにし、そして氷上に1時間置いた。生じた沈殿物を遠心分離(10,000g、15分間)で除去し、そして廃棄した。次いで、この上清をPEG(8000) 10%にし、そして氷上に3時間置いた。この沈殿物を遠心分離(3000g、30分間)で収集し、そして20 T225フラスコあたり50mM NaHEPES、0.15M NaCl、25mM EDTA(pH8.0)の4ml中に再懸濁した。固体CsClを添加して、1.4g/mlの密度にし、そしてサンプルをBeckman T170ローターで、150,000gで24時間、遠心分離した。AAV含有画分をプールし、1.4g/mlのCsCl密度に調整し、そしてBeckman NVT65ローターで、350,000gで16時間遠心分離した。次いで、AAVを含む画分を濃縮し、そして賦形剤緩衝液(PBS中5%ソルビトール)に対してダイアフィルトレートした。精製したAAV−AADCベクターの力価を、定量的ドットブロット分析を用いて決定し、そしてベクターストックを、−80℃で保存した。
【0151】
(ウイルス注入)
手術室において滅菌野を作り、注入システムを準備した。注入カニューレを生理食塩水でフラッシュし、針と管材との間の界面の完全性を評価した。滅菌注入カニューレとローディングラインを、そのシステム中での空気泡の集積を妨げるように極度の注意を払って、適切なフィッティングを用いて接続した。非滅菌性オイル注入ラインを、以前に記載されたように用意し、そしてオイルを満たした1mlの気密Hamiltonシリンジを、Harvard注入ポンプに取り付けた。6つの注入カニューレを、微量透析(microdialysis)ホルダーにはめ込み(1ホルダーあたり3つのカニューレ)、そして定位タワーにマウントした。オイルラインおよびローディングラインの結合後に、針カニューレにAAVをプライムし、そしてこの注入システムを、手術テーブルに移した。最初の注入速度を、0.1pl/分に設定し、このラインを視覚的に検査して、このシステムを通る液体のスムースな流れを確実にし、そしてこのカニューレを、それらの標的部位にまで手動で下げた。最終的な視覚検査を行い、この注入システム中の任意の空気泡についてチェックした。
【0152】
このカニューレシステムは、以下の3つの構成からなった:(i)滅菌注入カニューレ;(ii)AAV−AADCまたはAAV−LacZ(コントロール)を収容した滅菌ローディングライン;および(iii)オリーブオイルを含む非滅菌注入ライン。各ラインの準備を、簡単に本明細書中に記載する。この注入カニューレは、シリカガラス(外径、.016”、内径、.008”;Polymicro Technologies,Phoenix,AZ)を備え付けた27G針(外径、.03”;内径、.06”;Terumo Corp.,Elkton,MD)からなり、そしてこれを、そのシリカの遠位端がTeflon管材(.03”ID,Upchurch Scientific,Seattle,WA)から約15mm延びるように、その管材中に置いた。この針を、スーパーグルー(superglue)を用いてその管材に固定し、そしてこのシステムを使用前に漏れについてチェックした。この管材の近位端に、Tefzelフィッティングおよびフェルールを取り付け、隣接するローディングラインを接続した。
【0153】
ローディングラインおよび注入ラインは、Tefzel 1/1 6”フェルール、ユニオン、および雄型Luerロックアダプター(Upchurch Scientific,Oak Harbor,WA)を遠位端に備えた、50cmに切断したTeflon管材(外径、.062”;内径、.03”)からなった。この滅菌ローディングラインは、1000ml容量まで収容し、そして使用前に生理食塩水をプライムした。
【0154】
その動物に、最初にKetamine(Ketaset;10mg/kg、i.m.)を用いて鎮静させ、挿管し、そして手術の用意をした。静脈ラインを、橈側皮静脈または伏在静脈に位置付けした22ゲージのカテーテルを用いて確立し、等張液を5〜10ml/kg/時間で送達した。イソフルラン(Aerrane,Omeda PPD Inc.、Liberty,NJ)を、その動物が麻酔の安定な水準を維持するまで、1〜3%で送達した。頭部を、ベースラインのMRIスキャンの間に得られたプリセット値に従って、MRIコンパチブル定位フレーム中に置いた。この動物に、皮下心電図電極、直腸消息子を取り付け、そして身体を循環水ブランケットで覆い、コア温度を36〜38℃に維持した。心電図および心拍数(Silogic ECG−60、Stewartstown,PAを使用する)、ならびに体温を、この手順の間に連続的にモニタリングした。頭部を、Betadineおよび70%エタノールで前処理し、滅菌野を作製し、電気焼灼器(Surgistat Electrosurgery,Valleylab,Inc.,Boulder,CO)を用いて、皮膚、筋肉および筋膜を通して正中切開を行った。
【0155】
筋膜および筋肉の穏やかな収縮は、皮質の侵入部位にわたる頭蓋の露出を可能にした。片側の開頭術を、Dremel歯科用ドリルを用いて行い、標的部位の上の硬膜の3cm×2cmの領域を露出させた。ホルダーに取り付けた複数の針カニューレを、線条体の標的部位に定位的に誘導した。ICA MPTA注入と同側の半球へのAAVの片側注入のための外科的変数を、表2に要約する。
【0156】
【表2】
【0157】
注入の約15分後に、このカニューレアセンブリを、1mm/分の速度で、皮質を離れるまで上昇させた。この皮質を、生理食塩水でリンスし、骨縁をロンガー(ronguer)で削り取り、そして創傷部位を解剖学的層中に閉じた。鎮痛薬(Numorphan,1M)および抗生物質(Flocillin,1M)を、外科的プロトコルの一環として投与した。動物を、麻酔からの十分な回復についてモニタリングし、それらのホームかご(home cage)中に置き、そして手術後約5日間、臨床的に観察(2回/日)した。総神経外科手術時間は、1動物あたり4.5時間であった。
【0158】
線条体内AAV投与の後、動物を、異常な行動のいずれかの徴候について評価した。動物を、獣医学技術者によって、臨床的観察形態を用いて、1日に2回、観察および評価した。すべてのサルは、手術から2時間以内に回復し、そしてそれら自体を維持し得た(栄養補給および毛づくろいを含む)。手術後の全8週間の間に、いずれの有害な効果の徴候も存在しなかった。
【0159】
(磁気共鳴画像法)
標的部位の可視化は、尾状核または被殻内の細胞の正確な配置のために必須である。MRIと組み合わせた定位的手順を用いて、所望の標的にされた構造内にカニューレを正確に配置した。すべての動物を、手術前にスキャンして、各個々の動物についての標的移植部位の正確な定位座標を作成した。PETスキャンニングのために使用される同じ基準マーカーを、MRI画像およびPET画像の相互重ね合わせ(co−registration)のためにフレーム上に置いた。手短には、スキャンニング手順の間、この動物を、ケタミン(Ketaset,7mg/kg、im)およびキシラジン(Rompun,3mg/kg,im)の混合物を用いて鎮静させた。この動物を、MRIコンパチブル定位フレーム中に置き、イヤーバーおよびアイバー測定を記録し、そしてIVラインを確立した。60の冠状画像(1mm)および15の矢状画像(3mm)を、GE Signa 1.5 Tesla機械を用いて撮影した。磁気共鳴画像を、T1重み付けし、スポイルグラスシークエンスを、反復時間(TR)=700ms、エコー時間(TE)=20ms、およびフリップ角30’で用いて、3つの平面中に得た。視野は、192マトリックスおよび2NEX(シグナル情報あたりの平均数)で15cmであった。ベースラインスキャンニング時間は約20分であった。標的にされた構造(例えば、尾状核)の前後分布および内側外側分布を、冠状MR画像を用いて決定した。外科的座標を、尾状核および被殻の拡大した冠状画像(1.5×)から決定した。
【0160】
(陽子射出断層撮影法(PET))
全ての4匹の動物は、2つのPETスキャン、MPTP病変の確立後のベースラインスキャン、およびAAV−AADCまたはAAV−LacZのいずれかの注入の7〜8週間後での第2のスキャンを受けた。PETの前に、各動物は、1.5Tマグネットおよび定位フレーム(これは、外部基準マーカーの使用を通じて、PETおよびMRデータセットの間の相互重ね合わせを可能にした)を用いる磁気共鳴(MR)画像法を受けた。PET研究を、PET−600システム、平面中で2.6mmの解像度、ならびに遮断ギャップを低減させることによって、電流研究のために6mmから3mmに増加させた調整可能な軸解像度を有するシングルスライストモグラフで行った。このトモグラフの特徴は、以前に記載されている(Budingerら(1991)Nucl.Med.Biol.23(6):659〜667;Valk.(1990)Radiology 176(3):783〜790)。サルに挿管し、そしてイソフルランで麻酔し、定位フレーム中に置き、そしてPETスキャナー中に位置付けし、線条を通過する冠状脳スライスを画像化した。サルを、定位フレームでの前方−後方スケール、およびトモグラフに接続したレーザー光を用いて各研究について同じ方法で位置付けした。スキャナー中に位置付けした後、5分の透過スキャンを得て、フォトン減衰について修正し、そして動物の配置をチェックした。次いで、このサルに、10〜15mCiのAADCトレーサー、6−[18F]フルロ−L−m−チロシン(FMT)を注射し、そして画像化を開始した。画像化を60分間続け、その時間にこのサルを再配置して、最初に対して尾側の第2のスライス6mmを画像化した。
【0161】
PETおよびMRデータセットを、相互重ね合わせし、そして目的の領域(RO)を、MRに関して50〜60分(スライス1)および65〜75分(スライス2)で収集したPETデータ上に、対側の半球(ICA MPTP注入と反対側)中の線条について描いた。ROの鏡像を、同側(MPTP注入の側)の半球中に作成し、そして放射能カウント(cm2/秒)を各ROIについて決定した。線条体カウントを、各研究について2つのスライスについて平均をとった。FMT取り込み非対称比を、各動物について各時点で算出した。これは、同側(病変)線条についてのカウントを、対側(非病変)線条についてのカウントから差し引き、そして同側線条および対側線条についての平均カウントで割ることによって算出した。非対称比における動物間の可変性を低減するために、変化スコアを、各動物についてのベースライン研究についての非対称比から、第2のPET研究からの非対称比を差し引くことによって算出した。不対t検定を用いて、AAV−AADCおよびAAV−LacZサルについてのペット非対称比における変化を比較した。
【0162】
予測されるように、すべての4匹のサルは、ベースラインにて、同側線条よりも対側線条(これは、無視できるほどの取り込みを示した)においてより大きなFMT取り込みを示した。第2のPET研究の時点で、AAV−AADC処理したサルは、同側の線条における増加したFMT取り込みを示したが、AAV−LacZ処理した動物は、ベースラインからの変化を示さなかった(図7)。ベースラインから第2のPET研究へのFMT取り込み非対称性における変化は、AAV−LacZサルについて(これは、両方の時点でより大きな対側FMT取り込みを示した)よりも、AAV−AADCサルについて(これは、第2の研究の時点でほとんど非対称性を示さなかった)有意に大きかった(p<0.01)(図8)。
【0163】
(剖検)
動物を、ペントバルビタールナトリウム(25mg/kg、i.v.)で深く麻酔し、そしてAAV投与の8〜9週後、および術後のPETスキャンの1週間後に屠殺した。屠殺の日に、血液サンプルを採取し、そして動物を、L−ドパ/カルビドパ調製物(Sinemet 250/25)で処理した。血漿および頸部CSFを部検の時点で回収した。脳を、Sinemet投与の30〜45分後に取り出し、脳基質中に置き、そして3〜6mmスライスに冠状に切片化した。各サル由来の1つの3mm厚線条体脳スライスを、−70℃のイソペンタン中ですぐに凍結し、そして生化学分析のために凍結保存した。残りの6mm厚のスライスを、ホルマリン中に72時間に後固定し、PBS中で12時間洗浄し、そして上行スクロース勾配(10〜20〜30%)で調整し、そして凍結した。
【0164】
(組織学的分析)
ホルマリン固定した脳スライスを、低温槽中で30μm厚冠状切片に切断した。凍結した切片を、尾状核の吻端のレベルで始めて、尾〜黒質のレベルまでの様々の連で回収した。各切片を、70℃での不凍液中に保存および維持した。連続切片を、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、ドパデカルボキシラーゼ(DDC)またはβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)免疫反応性(IR)について染色した。12番目毎の切片を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、そして3% H2O2中で20分間インキュベートし、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。PBS中での洗浄の後、この切片をブロッキング溶液(THについて10%の正常なウマ血清、またはDDCおよびβ−galについて10%の正常なヤギ血清、ならびにPBS中0.1% Triton−X 100)中で30分間インキュベートし、続いて一次抗体溶液−TH(マウスモノクローナル、Chemicon,1:1000)、DDC(ウサギpolygonal,Chemicon,1:2000)、またはβ−gal(ウサギpolygonal,Cortex Blochem,1:5000)中で24時間インキュベートした。次いで、切片を、THについてビオチン化抗マウスIgG二次抗体中で1時間、またはDDCおよびβ−gal(Vector Labs,1:300)について抗ウサギIgG二次抗体中で1時間インキュベートした。抗体結合を、ストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼ(Vector Labs,1:300)、およびニッケルを含有するDAB色素原(Vector Labs)で可視化した。次いで、切片をカバーガラスで覆い、そして光学顕微鏡下で試験した。組織をパンチングした後、新しく凍結したブロックを、20umで切片化した。切片を、DDC−IRについてH&Eで染色した。
【0165】
尾状核、被殻および淡蒼球内のAAV感染細胞の総数の定量評価を、光学解像手順を用いることによって決定した。光学解像系は、Prior H128コンピュータ制御x−y−zモーター付ステージに固く連結されたLeitz Otholux 11顕微鏡、高感度Sony 3CCDビデオカメラシステム(Sony,Japan)およびMacintosh G−3コンピュータを備えるコンピュータ補助画像解析システムからなった。すべての分析を、NeuroZoomソフトウェア(La Jolla,CA)を用いて行った。各連の測定の前に、装置を較正した。尾状核、被殻および淡蒼球中のポジティブニューロンの領域を、低倍率(2.5×対物レンズ)で概略を取った。線条内のAAV感染した細胞の分散した存在のために、概略を取った領域の1%を、0.95開口数を有する63×PLAN−NEOFLUAR液浸系対物レンズを使用する、ディセクターカウンティングフレーム(1 505 1IM2)の系統的ランダム設計で測定した。パイロット実験に基づいて、等間隔に置かれた少なくとも4つの切片をサンプリングした。ディセクター原理を使用することによって、200までのAADCポジティブニューロンを、すべての測定について、一定、系統的、およびランダムな設計手順を使用することによって、光学的スキャンニングによってサンプリングした。切片の平均厚を、23ミクロンで測定した。一旦切片の頂部の焦点が合うと、z−−平面を1〜2gm下げた。次いで、3つの5 lim厚ディセクターを通して焦点を下げる間にカウントした。底禁制平面が分析に決して含められないことを確実にするように注意を払った。構造物の容量を、標準的な手順に従って算定した。試験された構造物中の陽性細胞の総数を、式N=Nv×Vs(ここで、Nvは数値密度であり、そしてVsは構造物の容量である)を用いることによって算定した。
【0166】
TH−IR染色は、全てのサルにおける同側の黒質中の黒質線状体線維および細胞体の確実な減少を示した。対側は、線条および黒質中においてTHおよびAADC−IRの可変性の減少を示した。
【0167】
DDC−IRは、AAV−LacZで処理したサルにおいてのみ、TH−IRに類似した。AAVAADC処理したサルは、同側で強いAADC染色を示した。この染色は、対側で見られた染色に勝った。高密度のAADC−IR細胞が、AAV−AADC処理動物のうちの1匹中の80%の線条および100%の淡蒼球を通じて見られた。立体的解析は、被殻において1mm3あたり18,384細胞、尾状核において1mm3あたり15,126細胞、そして淡蒼球において1mm3あたり9,511細胞を示した。AAV感染細胞の総数は、少なくとも16×106細胞であると評価された。他のAAV−AADC処理したサルにおいて、AADC−IR細胞は、60%を超える同側線条(尾状核において1mm3あたり7,515細胞、そして被殻において1mm3あたり15,352細胞、そして淡蒼球において1mm3あたり3,850細胞を有する)中で見られた。対側線条においては、AADC細胞は見られなかった。AAV/LacZ処理したサルは、同側線条体でも対側線条体でもAADC−IRを示さなかった。
【0168】
AAVに感染した細胞は、神経形態を有するようであった。感染した細胞の平均直径は、被殻において9±2.3μm、および14.6±9μmであった。多くのLac−ZおよびAADC細胞は、典型的な中程度の棘状の神経形態を有した。AAV感染した細胞は、ニューロンマーカーNeu−Nについて陽性であった。AAV−AADC処理したサルにおいて、4−6Neu−N−陽性細胞のうちの1つは、尾状核および被殻においてAADC陽性であり、そして3−4Neu−N−陽性細胞のうちの1つは、淡蒼球においてAADC陽性であった。Lac−ZまたはAADC処理したサル中のAAV感染した細胞のどれも、GFAP陽性ではなかった。
【0169】
カニューレ路に隣接する領域を、NissiおよびH&E染色で染色した。細胞傷害性の徴候は観察されなかった。カニューレからの距離にかかわらず、血管周囲カフィングは観察されなかった。Neu−N免疫染色を用いて対側と比較した場合に、注入部位に近くでニューロン細胞減少の徴候は存在しなかった。GFAP免疫染色は、AAV処理した線条内で異常なグリア反応を検出し得なかった。
【0170】
(生化学分析)
脳領域を、マイクロパンチャーを用いて新しく凍結したブロックから取り出し、L−ドパおよびドパミン代謝物の組織レベル、ならびにAADCの活性およびAAV−ベクターの存在を評価した。脳領域は、線条および皮質を含んだ。
【0171】
凍結したマイクロパンチを回収し、1%エタノールおよび0.02%EDTA(Fisher Scientific)を含む0.1M過塩素酸(Fisher Scientific)の300pl中で超音波処理によってホモジナイズした。50plのホモジネートを、タンパク質分析(BCA Protein Assay Kit Pierce#23225)のために取り出し、そして残りを、最大の速度で1.5分間、微量遠心分離中で遠心分離した。30〜50plのホモジネートを、以下を用いるHPLCによってカテコールアミン分析のために使用した:Ultrasphere C−18イオン対、5p、4.6×250mmカラム(Beckman 235329);Waters 717plusオートサンプラー(4℃)、Waters510ポンプ(0.9mv/分)、および電流滴定電気化学検出器(Decade)(Eox.0.82Vに設定した)。このカラムおよび検出セルを、31℃に設定した。移動相は、2L HPLCグレード水、2.2g1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩(Fisher Scientific)、0.17g EDTA、12mlトリエチルアミン(Fisher Scientific)、pHを8ml 85%リン酸(Fisher Scientific)で2.5に調整した、および60mlアセトニトリル(J.T.Baker)を含んだ。検出器の出力を記録し、Waters Millennium 32 Chromatography Managerで分析した。
【0172】
(AADC分析)
AADC活性を、Nagatsuら(1979)Anal.Biochem.100:160〜165の方法の適用によって決定した。手短には、組織(10mg/ml)を、0.04mMピリキシルホスフェート(AADC補因子)および0.2mMパルジリンを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.4)中でホモジナイズした。サンプルを、37℃にて5分間プレインキュベートし、そして反応をL−ドパの添加(最終濃度:100μM)によって開始した。インキュベーションを20分間行い、そして0.02mlの濃縮した過塩素酸の添加によって反応を停止した。遠心分離の後、上清のドパミン濃度を、電気化学検出を用いるHPLCを使用して決定した(例えば、Boomsaら(1988)Clin.Chem.Acta 178−59−69を参照のこと)。組織ペレット中のタンパク質濃度を、BCA Protein Assay Kit(Pierce#23225)を用いて決定した。結果を、タンパク質のnM/時間/mgとして表す。凍結した組織パンチは、標準的なプロトコルに従って処理した。
【0173】
すべてのサルの皮質領域は、可変のレベルのL−ドパを示したが、それらは各サル内で一致した。予測されるように、皮質内でL−ドパからドパミンへの脱カルボキシル化は存在しなかったが、MPTP投与の対側での線条において、L−ドパは、ドパミンに変換され、そしてさらにHVAに代謝された。AAV−Lac−ZサルのMPTP処理した線条において、L−ドパはドパミンに変換されず、HVAにも代謝されなかった。L−ドパの組織レベルはまた、AAV−Lac−Z処理したサルの皮質においてと同じレベルのままであった。AAV−AADC処理したサルのMPTP処理した線条において、L−ドパは、ドパミンおよびHVAに変換され、そしてこの領域中のL−ドパの組織レベルは、低減された。
【0174】
AADC活性は、AAV−LacZ処理したサルの皮質領域において、およびMPTP処理した線条において非常に低かった。L−ドパは、対側の線条においてドパミンに変換され、これは、高レベルのAADC活性を示唆する。AAV−AADC感染したサルのMPTP処理した線条からの組織パンチは、残されたL−ドパのトレースのみを有する非常に高いドパミンレベルを含んだ。
【0175】
これらの結果は、注入されたAAV−AADCベクターおよび全身のL−ドパの組合せが、PDの処置のための有望な治療であることを実証する。
【0176】
従って、本発明は、CNS障害(例えば、パーキンソン病)のための新規かつ効率的な処置方法を提供する。さらに、本発明はまた、インビボでドパミン活性を決定するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】図1(パネルA〜D)は、頭蓋内注入ポンプ送達後のラットにおける用量応答(AAV−tk導入遺伝子の発現)を示す。組織容量(図1A);平均面積(図1B);長さ(図1C)、および導入遺伝子を発現する細胞の数(図1D)が示される。
【図2】図2は、AAVベクターの注入後のラット脳組織の標識を示す、ハーフトーン複写である。
【図3】図3(パネルA〜D)は、注入ポンプ(IP)または浸透圧ポンプ(OP)のいずれかを介したAAV−tkの頭蓋内送達を示す。組織容量(図3A);平均面積(図3B)、長さ(図3C)、および導入遺伝子を発現する細胞の数(図3D)が示される。
【図4A】図4Aは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Aは、ニューロンにおけるtkの発現を示す。
【図4B】図4Bは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Bは、ニューロンにおけるtkの発現を示す。
【図4C】図4Cは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Cは、浸透圧ポンプ注入の部位付近のニューロンおよびグリアにおける発現を示す。
【図4D】図4Dは、tk導入遺伝子を保有するベクターを注入されたCNS組織を示す、ハーフトーン複写である。図4Dは、浸透圧ポンプ注入の部位付近のニューロンおよびグリアにおける発現を示す。
【図5】図5は、AAV−tkベクターを注入された被検体由来の組織の、サザンブロット分析を示す、ハーフトーン複写である。
【図6】図6は、MPTP病変サルの脳のAADCに対する免疫染色を示す。左側(コントロール)は、制限された染色を示し、一方で右側(AAV−AADC処置)は、広範なAADC免疫染色を示す。
【図7】図7は、1側性のMPTP病変サルの脳におけるドパミン活性を示すFMT PET走査である。左側(基線)は、病変部位における制限された活性を示し、一方で右側(AAV−AADC投与の8週間後)は、正常なレベルのドパミン活性を示す。
【図8】図8(パネルA〜C)は、MPTP病変サルにおけるL−ドパレベルの生化学的分析を示す。パネルAは、L−ドパが、AACD酵素によってドパミンに変換されることを示す。皮質領域においては、MPTP処置にもかかわらず、L−ドパのドパミンへの変換はわずかであるかまたは全くなかった。線条は、AADCに富み、従って、L−ドパの大半がこの領域においてドパミンに変換された。MPTP投与に対して同側性線条において、ドパミンへのL−ドパの変換は損なわれ、AAV−LacZ処置サルにおける皮質活性と類似であった。両方のAAV−AADC処置動物が、ほぼ正常なL−ドパのドパミンへの変換を示す。パネルBは、HVA分析を示す。HVAは、ドパミン異化代謝産物の代謝産物である。皮質領域は、L−ドパをドパミンへ変換し得ないので、HVAレベルは低い。パネルAにおいて示されるように、線条はL−ドパをドパミンへと変換し、従って、ドパミンは、この領域においてHVAへと異化代謝される。AADC活性は、AAV−LacZ処置サルにおいて回復されなかったので、MTPT同側性線条におけるHVAレベルは低い。HVAレベルは、MPTP同側性線条において、AAV−AADC処置サルにおいて有意に上昇した。パネルCは、異なるL−ドパ投与後の組織パンチにおいて測定されたL−ドパレベルを示す。異なるL−ドパ吸収に起因して、組織レベルではサル間で異なる。しかし、これは、各被検体間で類似である。L−ドパの組織レベルは、AADC酵素が回復されたので、AAV−AADC処置サルのMPTP同側性線条において劇的に減少した。この領域におけるAADCの活性は、非常に強力である。なぜなら、L−ドパの組織レベルが対側性線条におけるレベルよりも低いからである。
【図9】図9は、インビトロでのAADC酵素の活性を示すグラフである。材料および方法において記載されるように、組織パンチをL−ドパと共にインキュベートした。AADC酵素活性を、L−ドパのドパミンへの変換の速度を測定することによって決定した。皮質領域は、低レベルのAADCを含む。対側性線条におけるAADC活性は高い。しかし、脳のこの側にはいくつかのドパミン作用性病変が存在するので、このレベルは変動し得る。MPTP同側性線条におけるAADC活性は、AAV−Lac−Z処置サルにおいて有意に減少されるが、これは、AAV−DDCサルにおいて完全に回復される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載される、組換えAAVビリオンを送達するための方法。
【請求項1】
明細書に記載される、組換えAAVビリオンを送達するための方法。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【公開番号】特開2006−298926(P2006−298926A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140195(P2006−140195)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【分割の表示】特願2000−550525(P2000−550525)の分割
【原出願日】平成11年5月26日(1999.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.Macintosh
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【分割の表示】特願2000−550525(P2000−550525)の分割
【原出願日】平成11年5月26日(1999.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.Macintosh
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【出願人】(398051143)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (21)
【Fターム(参考)】
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