説明

AC−DC電源制御装置

【課題】計算機装置のAC−DC変換効率特性が、搭載するAC−DC電源ユニットによって1つに決まってしまうという問題と、電源の冗長性を有する計算機装置において、運用上のAC−DC変換効率が、AC−DC電源ユニット1台で稼動する場合のAC−DC変換効率よりも低くなる問題。
【解決手段】1台の計算機装置にAC−DC変換効率特性の異なる2台のAC−DC電源ユニットを搭載し、計算機装置のDC負荷の大きさに応じて変換効率の優れたAC−DC電源ユニットに切替え、稼動させるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC−DC変換効率特性の異なる2台の電源ユニットの組み合わせによる電力消費効率の改善、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に計算機装置では電力会社等から供給されるAC電源をDC電源に変換するAC−DC電源ユニットを電源として利用している。AC−DC電源ユニットは、AC−DC変換時に電力損失が発生するため電源製造業者はAC−DC変換効率の改善に努めている。一方で、AC−DC電源ユニットを構成する回路の特性から、AC−DC電源ユニットの変換効率はDC負荷によって変化し、また、一般的には電源の定格(最大供給電力)の大きさにより異なる変換効率特性を有する。あるDC負荷における計算機装置が消費するAC電力量はこの変換効率特性によって決まる。通常、計算機装置はある1つの定格値をもったAC−DC電源ユニットを搭載するため、搭載したAC−DC電源ユニットによって変換効率が決まる。AC−DC電源ユニットの変換効率特性は、DC負荷が定格の50%前後における効率が最も高く、また0〜20%ではDC負荷が低いほど効率は著しく低くなる特徴をもつ。
【0003】
また、冗長性を有する計算機装置では一般に複数のAC−DC電源ユニットを同時に稼動させる。例えば、定格800WのAC−DC電源ユニットを必要とする計算機装置の冗長電源では、定格が同じ2台のAC−DC電源ユニットを搭載し、2台を同時に稼動させる。このとき、一般に、計算機装置のDC負荷は2台のAC−DC電源ユニットに対して等配分されるため、計算機装置のDC負荷がAC−DC電源ユニットの定格の50%である場合は、1台あたりのDC負荷は定格の25%となり、AC−DC変換効率は1台のAC−DC電源ユニットのみで稼動させた場合と比べ低い。このような理由により、一般に、計算機装置でAC−DC電源ユニットを冗長化した場合のAC−DC変換効率は、冗長化しない場合に比べ低いという特徴がある。
【0004】
計算機装置のAC−DC電源ユニット制御に関する背景技術として、特開2006−302059号公報(特許文献1)がある。この公報には、複合型計算機装置の稼動状態、つまりDC負荷の大きさによってAC−DC電源ユニットの稼働台数を決める手段が記載されている。また、特開2009−201244号公報(特許文献2)がある。この公報には、複合型計算機装置に変換効率特性の異なる複数のAC−DC電源ユニットを搭載し、変換効率特性を考慮したAC−DC電源ユニットの稼働台数決定手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−302059号公報
【特許文献2】特開2009−201244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
計算機装置のAC−DC変換効率特性が、搭載するAC−DC電源ユニットによって1つに決まってしまうという問題と、電源の冗長性を有する計算機装置において、運用上のAC−DC変換効率が、AC−DC電源ユニット1台で稼動する場合のAC−DC変換効率よりも低くなる問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1台の計算機装置に2台のAC−DC変換効率特性の異なるAC−DC電源ユニットを搭載し、計算機装置のDC負荷の大きさに応じて変換効率の優れたAC−DC電源ユニットに切替え、稼動させるよう制御することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のAC−DC電源制御装置は、定格(最大供給電力)の大きさにより変換効率特性が異なるというAC−DC電源の一般的特性に着目し、変換効率特性の異なる2台のAC−DC電源ユニットを計算機装置に搭載し、変換効率良いAC−DC電源ユニットを稼動させることによって単一種のAC−DC電源ユニットでは実現できない高いAC−DC変換効率特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態による計算機装置のブロック図である。
【図2】図1の計算機装置に設けられたAC−DC電源制御装置の機能を示すブロック図である。
【図3】図1の計算機装置に搭載されたAC−DC電源ユニット1とAC−DC電源ユニット2のAC−DC変換効率特性を示すグラフである。
【図4】実施形態における計算機装置の各AC−DC電源ユニットDC12V出力部に設けられたコンパレータの、計算機装置負荷状態とコンパレータ出力の関係を示す表である。
【図5】実施形態におけるPS_ON信号の変化を示す表である。
【図6】実施形態における計算機装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態におけるAC−DC電源制御動作の詳細を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【0011】
本実施例では、DC負荷の大きさに応じて変換効率の優れたAC−DC電源ユニットを稼動させるAC−DC電源制御装置を有する計算機装置(100)の例を説明する。
【0012】
図1は本実施例の計算機装置(100)の構成図、図2は図1の計算機装置(100)に設けられたAC−DC電源制御装置の機能を示す図の例である。
【0013】
図1に示すように、本実施例において計算機装置(100)は計算機能を有する主基板101、これにDC12V電源を供給するAC−DC電源ユニット1および2(102、103)、また、データ保存用のHDD(104)から構成される。本実施例ではAC−DC電源ユニット1(102)の定格電力を450W,また、AC−DC電源ユニット2(103)の定格電力を800Wとする。
【0014】
主基板は1つまたは複数のCPU(105)とMemory(106)を有し、また、計算機装置(100)のCPU(105)、Memory(106)等のデバイス動作や電源を制御するChipset(107)から構成される。Chipset(107)には本発明のAC−DC電源制御装置の制御部となるBMC(Baseboard Management Controller)(108)が管理信号(116)を介して接続されている。BMC(108)にはリモート管理信号(113)を通じて、管理端末(109)が接続される。管理端末(109)はBMC(108)に対してAC−DC電源制御装置の設定(後述の電力監視部1および2(114、115)に対する設定)などを行うために用いる。
【0015】
AC−DC電源ユニット1および2(102、103)が供給するDC12V電源が主基板101に接続される部分には、電源監視部1および2(114、115)を有する。電源監視部1および2(114、115)には、電力・監視設定信号(110)がBMC(108)から接続される。また、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)には、電源状態信号(112)がBMCから接続される。電力・監視設定信号(110)と電源状態信号(112)の詳細は図2にて説明する。
【0016】
図2は、計算機装置(100)に設けられたAC−DC電源制御装置の機能を示す図である。AC−DC電源制御装置は主基板上のChipset(107)/BMC(108)/電力監視部1および2(114、115)と、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)で構成される。
【0017】
図3は、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)のAC−DC変換効率特性の例を示すグラフである。本実施例では、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)のAC−DC変換効率は、計算機装置(100)の負荷Lに応じて以下の特徴を有する。
【0018】
(A) 0[W]≦L≦100[W]:
AC−DC電源ユニット2(103)のAC−DC変換効率が優れる
(B)100[W]≦L≦280[W]:
AC−DC電源ユニット1(102)のAC−DC変換効率が優れる
(C)280[W]≦L≦800[W]:
AC−DC電源ユニット2(103)のAC−DC変換効率が優れる
計算機装置(100)の負荷Wに応じてAC−DC変換効率の優れたAC−DC電源ユニットを稼動させることが、本発明のAC−DC電源制御装置が行う電源制御であるため、図2に示すAC−DC電源制御装置は計算機装置(100)の負荷Wに応じて以下のようにAC−DC電源ユニット1および2(102、103)の稼動制御を行う。
【0019】
(D)L<100[W] :AC−DC電源ユニット2(103)
(E)100[W]≦L<280[W]:AC−DC電源ユニット1(102)
(F)280[W]≦L :AC−DC電源ユニット2(103)
図2に示すように、電力監視部1および2(114、115)はA/Dコンバータ(129、130)と、コンパレータ(131、132、135、136)で構成される。A/Dコンバータ1および2(129、130)は、DC12V電源の出力電流を監視し、出力電流値に電圧12Vを掛け合わせた電力値をデジタル値に変換してコンパレータ1H/1L(131/132)および、コンパレータ2H/2L(135/136)に対して入力する。コンパレータ1H/1L(131/132)および、コンパレータ2H/2L(135/136)は、それぞれがAC−DC電源制御に必要な閾値を保持するレジスタ(PS1_上閾値(133)、PS1_下閾値(134)、PS2_上閾値(137)、PS2_下閾値(138))を有し、電力監視設定信号(110−1)によって、値を書き込むことができる。また、コンパレータ1H/1L(131/132)および、コンパレータ2H/2L(135/136)は、これらのレジスタ(PS1_上閾値(133)、PS1_下閾値(134)、PS2_上閾値(137)、PS2_下閾値(138))に保持された閾値と、A/Dコンバータ1および2(129、130)が出力するDC12V電源の出力電力を比較し、出力電力の方が大きい場合はHigh、小さい場合はLowの信号を、電力監視信号(110−2)としてBMC(108)に対して出力する。
【0020】
本実施例では、図3のAC−DC変換効率特性から、以下のように閾値を定義する。
【0021】
(a)PS1_上閾値 = PS2_上閾値 = 280W
(b)PS1_下閾値 = PS2_下閾値 = 100W
図4は、上述した本実施例における計算機装置(100)の各AC−DC電源ユニットDC12V出力部に設けられたコンパレータの、計算機装置負荷状態とBMC(108)に対する出力の関係を示す表である。
【0022】
図5は、本実施例におけるAC−DC電源ユニット1および2(102、103)に対してON/OFFを指示する信号(PS_ONと呼ぶ)の、計算機装置電源ON/OFFや、負荷変動による変化を示す表である。図1におい111として示されたPS_ON信号は、図2に示すように111−1〜111−5の信号で構成される。Chipset_PS_ON(111−1)は、Chipsetが出す、計算機装置(100)を起動するための信号である。BMC_PS1_ON(111−2)およびBMC_PS2_ON(111−3)は、BMC(108)が出す稼動する電源(AC−DC電源ユニット1または2(102、103))を選択的に起動/停止を制御するための信号である。また、PS1_ON(111−4)およびPS2_ON(111−5)は、それぞれANDゲート(139)において、Chipset_PS_ON(111−1)とBMC_PS1_ON(111−2)、Chipset_PS_ON(111−1)とBMC_PS2_ON(111−3)の論理積をとった値を、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)に入力する信号である。111−1〜111−5の各信号は、電源ONの場合にHigh,OFFの場合にLowをとるものとする。
【0023】
本実施例はPS_ON(111)の切替えによってAC−DC電源制御、すなわちAC−DC電源ユニット1および2(102、103)の稼動制御を行う。
【0024】
図1に示すように、AC−DC電源ユニット1および2(102、103)は電源の稼動状態を示す電源状態信号(112)を有する。電源状態信号(112)はAC−DC電源ユニットがBMC(108)に対して発し、AC−DC電源ユニットが稼動しているか、停止しているかを伝える。また、電源状態信号(112)は図2に示すように各AC−DC電源ユニットに一本ずつ有り、AC−DC電源ユニット1(102)の稼動状態を示すPS1_Good(112−1)、AC−DC電源ユニット2(103)の稼動状態を示すPS2_Good(112−2)と呼ぶ。
【0025】
PS1_Good(112−1)およびPS2_Good(112−2)は、PS1_ON(111−4)およびPS2_ON(111−5)がLowからHighになって、それぞれに対応したAC−DC電源ユニットのDC12V出力準備が完了するとHighに切替わり、PS1_ON(111−4)およびPS2_ON(111−5)がHighからLowになると、Lowに切替わる。
【0026】
また、各AC−DC電源ユニットが障害によってDC12Vを出力できない状態になったときもPS1_ON(111−4)およびPS2_ON(111−5)はLowを示すものとする。
【0027】
図6は、本実施例における計算機装置(100)を起動した後のAC−DC電源制御(AC−DC電源ユニット1および2(102、103)の稼動制御)を行う動作のフローチャートを示す。AC−DC電源制御は以下のようにして行う。図6でPS1はAC−DC電源ユニット1(102)、PS2はAC−DC電源ユニット2(103)をあらわす。
【0028】
まず、S1で計算機装置(100)を起動すると、Chipset_PS_ONはHighになり、また、BMC(108)は定格電力の大きいAC−DC電源ユニット2(103)を起動するために、BMC_PS2_ONをHighに切替え、AC−DC電源ユニット2(103)が起動する。
【0029】
BMC(108)はAC−DC電源ユニット2(103)の起動後、PS2_Good(112−2)がHighになったことを確認してからコンパレータ2H/2L(135/136)によるAC−DC電源ユニット2(103)の電力監視を開始する。このとき、コンパレータ1H/1L(131/132)によるAC−DC電源ユニット1(102)の電力監視は開始しない。
【0030】
次にS2で、計算機装置負荷が100W≦負荷<280Wになると、S3でA/Dコンバータ2がDC12V出力の変動を感知し、コンパレータ2H/2L(135/136)のBMC(108)に対する出力値が変化する。
【0031】
その後S4で、BMC(108)はコンパレータ2H/2L(135/136)の値変化に基づきBMC_PS1_ONをHigh(ON)に変更する。このタイミングで、コンパレータ2H/2L(135/136)の値の確認は一時的に停止する。これは、AC−DC電源ユニットの切替中は一時的にAC−DC電源ユニット1(102)とAC−DC電源ユニット2(103)の両方が稼動している状態が発生し、計算機の負荷が各AC−DC電源ユニットに分散され、AC−DC電源ユニットに対する負荷が下がったと誤認識される可能性があるためである。コンパレータ2H/2L(135/136)の値の確認は、次にAC−DC電源ユニット2が起動する時(S17)まで停止を継続する。
【0032】
そしてS5で、AC−DC電源ユニット1(102)のPS1_ONがHigh(ON)に切替わり、AC−DC電源ユニット1(102)の起動が開始される。AC−DC電源ユニット1(102)の起動が完了し、PS1_Good(112−1)がHighに切替わる。また、PS1_Good(112−1)がHighになるとBMC(108)はS6でBMC_PS2_ONをLowに変更し、S7でAC−DC電源ユニット2(103)が停止する。
【0033】
BMC(108)はS8でPS2_Good(112−2)がLowになったことを検知すると、その1秒後にS9でコンパレータ1H/1L(131/132)によるAC−DC電源ユニット1(102)の電力監視を開始する。ここで、1秒間の間隔をあける理由は、PS2_Good(112−2)がLowになった後もAC−DC電源ユニット2(103)のDC12V出力は短時間継続され、ゼロになるまでに1秒未満の時間を要するためである。コンパレータ1H/1L(131/132)の電力監視は、AC−DC電源ユニット2(103)のDC12V出力が完全にゼロになった後に開始しなければならないため、1秒間の間隔をあける。
【0034】
その後、S10で計算機装置(100)の負荷が変動し、計算機装置負荷が100W>負荷または、負荷≧280Wになると、再度AC−DC電源ユニットの切替を行う。切替動作は上述のS2〜S9と同様の動作で、S10〜S17の通りである。
【0035】
すなわち、計算機装置負荷が100W>負荷または、負荷≧280Wになると、S11でA/Dコンバータ1がDC12V出力の変動を感知し、コンパレータ1H/1L(131/132)のBMC(108)に対する出力値が変化する。
【0036】
その後S12で、BMC(108)はコンパレータ1H/1L(131/132)の値変化に基づきBMC_PS2_ONをHigh(ON)に変更する。このタイミングで、コンパレータ1H/1L(131/132)の値の確認は一時的に停止する。コンパレータ1H/1L(131/132)の値の確認は、次にAC−DC電源ユニット1(102)が起動する時(S9)まで停止を継続する。
【0037】
そしてS13で、AC−DC電源ユニット2(103)のPS2_ONがHigh(ON)に切替わり、AC−DC電源ユニット2(103)の起動が開始される。AC−DC電源ユニット2(103)の起動が完了し、PS2_Good(112−2)がHighに切替わる。また、PS2_Good(112−2)がHighになるとBMC(108)はS14でBMC_PS1_ONをLowに変更し、S15でAC−DC電源ユニット1(102)が停止する。
【0038】
BMC(108)はS16でPS1_Good(112−1)がLowになったことを検知すると、その1秒後にS17でコンパレータ2H/2L(135/136)によるAC−DC電源ユニット2(103)の電力監視を開始する。
【0039】
そして再度、計算機装置負荷が100W≦負荷<280WになるとS2に戻り、AC−DC電源ユニット2(103)からAC−DC電源ユニット1(102)への切替を上述の通り行う。
【0040】
AC−DC電源制御はこのS2〜S9、S10〜S17の動作の繰り返しである。
【0041】
さて、上記においてはAC−DC電源ユニット1および2(102、103)が正常に動作しているときのAC−DC電源制御を説明した。本発明では、計算機装置(100)の稼働中にAC−DC電源ユニット1(102)またはAC−DC電源ユニット2(103)のいずれか一台が故障した場合の冗長性を持たせることも可能である。以下に冗長性を持たせる手段について説明する。ここで、冗長性とはAC−DC電源ユニット1(102)またはAC−DC電源ユニット2(103)の片方だけが稼動しているときに、その稼働中のAC−DC電源ユニットが故障しても、稼動していない他方のAC−DC電源ユニットが電力供給を補い、計算機装置(100)を停止させないことをいう。
【0042】
一般にAC−DC電源ユニットは、停止状態から計算機装置(100)に供給するDC12Vの出力が可能になるまでに、0.5秒前後またはそれ以上の時間を要する。このため、AC−DC電源ユニット1(102)またはAC−DC電源ユニット2(103)の片方だけが稼動しているときに、その稼働中のAC−DC電源ユニットが故障し、DC12Vの出力が停止すると計算機装置(100)も停止してしまう。
【0043】
ここで本発明のAC−DC電源制御装置に冗長性を持たせるためには、公知の技術である電源のコールドリダンダント機能を利用する。電源のコールドリダンダント機能とは、複数のAC−DC電源ユニットを有する計算機装置(100)において、計算機装置(100)を稼動させるのに最小の数のAC−DC電源ユニットだけを稼動させ、稼動していない残りのAC−DC電源ユニットは、稼働中のAC−DC電源ユニットの故障に備え最低限の通電状態で待機する機能である。待機電源の最低限の通電状態とは、稼働中のAC−DC電源ユニットが故障した場合に、計算機装置(100)を停止させないだけ十分に早く待機電源にDC12V出力を開始させるために必要な電力をAC−DC電源ユニット内部の電気回路に供給することである。一般に、電源のコールドリダンダント機能の待機電源の消費電力は数W程度である。
【0044】
本実施例において電源のコールドリダンダント機能を利用した電源の冗長化を行う場合、以下の2点を考慮する必要がある。
【0045】
(X)図6に示したAC−DC電源制御のフローチャートにおいて、稼動させないAC−DC電源ユニットは停止させた状態にしているが、停止ではなく、電源のコールドリダンダント機能の待機状態にする。
【0046】
(Y)定格800WのAC−DC電源ユニット2(103)が故障した場合は、定格450WのAC−DC電源ユニット1(102)だけで計算機装置(100)に対する電力を供給する必要があるが、計算機装置(100)の負荷が450Wを超える場合は計算機装置の稼動を継続できなくなるため、アラートを発行して計算機装置(100)の最大負荷を450Wに抑えるように縮退運転に切替える。
【0047】
(Y)のアラート発行には図2に示すPS1_Alert(117)およびPS2_Alert(118)を利用する。PS1_Alert(117)およびPS2_Alert(118)はそれぞれAC−DC電源ユニット1および2(102、103)が有し、AC−DC電源ユニットが故障した場合に、AC−DC電源ユニットがChipset(107)およびBMC(108)に対して発行する信号である。正常時はLow,異常時はHighとなる。
【0048】
Chipset(107)およびBMC(108)は、AC−DC電源ユニット1またはAC−DC電源ユニット2の故障時にPS1_Alert(117)またはPS2_Alert(118)がHighになったことを検知すると、計算機装置(100)を縮退運転に切替える。公知の技術である縮退運転とは、CPU(105)やMemory(106)等に対して割り込み信号を発行し、CPU(105)やMemory(106)を動作クロック低減等によって消費電力を抑えた稼動状態にすることである。
【0049】
また、図7に示した本実施形態のAC−DC電源制御動作のタイミングチャートにおいて、T2,T3,T6、T7の負荷変動ではAC−DC電源ユニットの切替え(PS1からPS2へ、あるいは、PS2からPS1への切替)を行っているが、短時間の一時的に閾値(PS1_上閾値(133)、PS1_下閾値(134)、PS2_上閾値(137)、PS2_下閾値(138))を超える負荷変動に対してもAC−DC電源ユニットの切替えを行うと、切替の多発によってAC−DC電源ユニット切替中に発生するAC−DC電源ユニット1とAC−DC電源ユニット2の両方が稼動している状態の時間比率が増加し、本発明によるAC−DC変換効率の改善効果を十分に得られないことが想定される。
【0050】
このような場合を考慮してBMC(108)は、AC−DC電源ユニット切替のポリシーを設定できるようなプログラムを組み込んでもよい。つまり、計算機装置(100)のT2,T3,T6あるいはT7のような負荷変動に対して直ちにAC−DC電源ユニットの切替を開始するのではなく、たとえば、(M)コンパレータ1H/1L(131/132)あるいは、コンパレータ2H/2L(135/136)の値変化が発生してから、10秒未満で変化前の値に戻る場合はAC−DC電源ユニットの切替を行わず、変化後の値が10秒以上継続した場合にAC−DC電源ユニットの切替を行う。
【0051】
(N)コンパレータ1H/1L(131/132)あるいは、コンパレータ2H/2L(135/136)の値変化について、一定時間(例えば10秒間)の間において閾値(PS1_上閾値(133)、PS1_下閾値(134)、PS2_上閾値(137)、PS2_下閾値(138))を超える変動の時間割合をカウントしておき、変更後の値が時間割合で80%(例えの場合は8秒)を超えるとAC−DC電源ユニットの切替を行う。
【0052】
このように制御することによって、AC−DC電源ユニットの不要な切替多発を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
100…計算機装置、101…主基板、102…AC−DC電源ユニット1(450W)、103…AC−DC電源ユニット2(800W)、104…HDD、105…CPU、106…Memory、107…Chipset、108…BMC(BaseboardManagementController)、109…管理端末、110…電力監視・設定信号、110−1…電力監視設定信号、110−2…電力監視信号、111…PS_ON信号、111−1…Chipset_PS_ON、111−2…BMC_PS1_ON、111−3…BMC_PS2_ON、111−4…PS1_ON、111−5…PS2_ON、112…電源状態信号、112−1…PS1_Good、112−2…PS2_Good、113…リモート管理信号、114…電力監視部1、115…電力監視部2、116…管理信号、117…PS1_Alert、118…PS2_Alert、121…DC12V、129…A/Dコンバータ1、130…A/Dコンバータ2、131…コンパレータ1H、132…コンパレータ1L、133…PS1_上閾値レジスタ、134…PS1_下閾値レジスタ、135…コンパレータ2H、136…コンパレータ2L、137…PS2_上閾値レジスタ、138…PS2_下閾値レジスタ、139…ANDゲート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の計算機装置にAC−DC変換効率特性の異なる2台のAC−DC電源ユニットを搭載し、計算機装置のDC負荷の大きさに応じて変換効率の優れたAC−DC電源ユニットに切替え、稼動させるよう制御することを特徴とするAC−DC電源制御装置。
【請求項2】
前記AC−DC電源ユニット制御手段に、AC−DC電源ユニットのDC負荷のA/Dコンバータを用いた電流測定を利用することを特徴とする請求項1のAC−DC電源制御装置。
【請求項3】
前記AC−DC電源ユニット制御手段に、AC−DC電源ユニットのDC負荷と、制御するための閾値をコンパレータ回路によって比較し、AC−DC電源ユニットの切替を判断することを特徴とする請求項1のAC−DC電源制御装置。
【請求項4】
前記AC−DC電源ユニット制御手段において、異なる2台のAC−DC電源ユニットのAC−DC変換効率特性曲線の交点となるDC負荷の値を、制御するための閾値とすることを特徴とする請求項1のAC−DC電源制御装置。
【請求項5】
前記AC−DC電源ユニット制御手段において、正常時は異なる2台のAC−DC電源ユニットのうち1台だけしか稼動させていないにも関わらず、稼働中のAC−DC電源ユニットが故障した場合にも計算機装置としての稼動を継続することができる冗長性を有することを特徴とする請求項1のAC−DC電源制御装置。
【請求項6】
前記AC−DC電源ユニット制御手段において、短時間の一時的に閾値を超える負荷変動に対してはAC−DC電源ユニットの切替を行わないよう、負荷変動に対するAC−DC電源ユニット切替のポリシーを設定する機能を有することを特徴とする請求項1のAC−DC電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230511(P2012−230511A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97773(P2011−97773)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】