説明

ACDシステム及び輻輳抑制制御方法

【課題】短期間に着信が集中することにより発生する構内交換機及びACD装置の輻輳を抑制、防止して、コールセンターのサービスを維持することができるようにする。
【解決手段】コールセンターに設置されるACDシステムは、ACD装置101と、複数の内線電話機108と、ISDN回線やIP回線の外線を収容するIP交換機100よりなり、ISDN回線やIP回線からのACD着信呼を複数の内線電話機108の1つに分配着信させて電話受付業務を行う。そして、IP交換機100は、ACD着信呼を内線電話機に分配着信させるときに、ACD着信情報をキューイングする手段と、ACD着信情報のキューイング数を監視し、キューイング数が予め定義された閾値を超えた場合に、ACD着信呼を切断する手段と、ACD着信呼を切断する場合に、切断復旧シーケンスの実行を遅延させる手段とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACDシステム及び輻輳抑制制御方法に係り、特に、電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステム及びコールセンターへの着信の集中による輻輳を抑制する輻輳抑制制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輻輳を抑制する制御に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、ISDN交換装置において、回線交換呼とパケット交換呼との負荷バランスを維持しつつ、輻輳時のトラフィックを抑制するために、回線交換呼の数が予め定めた閾値を超えたとき、端末からの呼設定信号SETUPに対して解放完了信号RELCMPを返送して発信規制を行うというものである。
【0003】
しかし、この従来技術は、短期間に着信が集中する場合、新たな着信による呼設定信号SETUPに対して解放完了信号RELCMPを返送する処理が繰り返されることになるため、輻輳を抑制、防止することが困難なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−268687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コールセンター用のACDシステムにおける輻輳の抑制に前述した従来技術を適用したとしても、着信が集中した場合に、輻輳を抑制、防止することが困難であるという問題を解決することができない。
【0006】
本発明の目的は、前述したような問題に鑑みて、短期間に着信が集中することにより発生する構内交換機及びACD装置の輻輳を抑制、防止して、コールセンターのサービスを維持することができるようにしたコールセンター用のACDシステム及び輻輳抑制制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば前記目的は、電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステムにおいて、オペレータが使用する複数の内線電話機と、公衆網からの回線を収容する構内交換機と、公衆網の回線からの着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させる指示を行うACD装置とを備え、前記構内交換機は、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させるときに、ACD装置への着信情報をキューイングする手段と、ACD装置への着信情報のキューイング数を監視する手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行う手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させる手段とを備え、前記公衆網の回線から着信があったとき前記キューイング数が予め定義された閾値を超えていた場合、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させて、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行うことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コールセンター用のACDシステムにおいて、短期間の着信集中によりACDシステムを構成する構内交換機及びACD装置に発生する輻輳を、集中する着信数を制限し抑制、防止することができるので、コールセンターのサービスを維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態によるコールセンター用のACDシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】ACD装置への着信情報のキューイング数の閾値と、キューイングされている着信情報のキューイング数とを格納したテーブルの構成例を示す図である。
【図3】切断復旧シーケンスの実行を遅延させる場合に参照して使用する制御データとなる各種のタイマー値を格納したテーブルの構成例を示す図である。
【図4】ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えていたことにより、IP交換機がISDN回線を切断する処理動作を説明するシーケンスチャートである。
【図5】ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えていたことにより、IP交換機がISDN回線を切断する処理動作の他の例を説明するシーケンスチャートである。
【図6】ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作を説明するシーケンスチャートである。
【図7】ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作の他の例を説明するシーケンスチャートである。
【図8】IP公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えていたことにより、IP交換機がIP回線を切断する処理動作を説明するシーケンスチャートである。
【図9】IP公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作を説明するシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるACDシステム及び輻輳抑制制御方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態によるコールセンター用のACDシステムの構成例を示すブロック図である。
【0012】
本発明の実施形態によるコールセンター用のACDシステムは、図1に示すように、構内交換機であるIP交換機100と、業務の種類毎に設けられ、オペレータが使用する電話機への着信を均等に分配する制御を行うACD装置101と、IP通信網106と、受付業務用の受付台として複数のIP電話機108−1、108−nと、顧客等の加入者電話103−1、103−nが接続されるISDN公衆網104やIP公衆網105とのインタフェースであるIP−GW(IPゲートウェイ)107−1〜107−nとを備えて構成されている。そして、このACDシステムは、コールセンター内に設けられている。
【0013】
前述において、IP交換機100と複数のACD装置101とは、LAN102等の通信回線を介して接続されている。IP交換機100には、顧客等の加入者電話103−1、103−nが接続されているISDN公衆網104やIP公衆網105が、IP通信網106及びIP−GW107−1〜107−nを介して接続されており、また、受付業務用の受付台としてIP電話機108−1、108−nが、IP通信網106を介して接続されている。
【0014】
そして、IP交換機100は、顧客等の加入者電話103−1、103−nからの着信をIP電話機108−1、108−nに接続して通話を管理する機能を有しており、ISDN公衆網104やIP公衆網105を介して顧客等の加入者電話103−1、103−nの1つから複数のACD装置の1つへの着信を受け付けると、そのACD装置101への着信情報をキューイングし、そのACD装置101へ接続先となる受付業務用の受付台としてIP電話機108−1、108−nをどの電話機とするかの問合せを行う。IP交換機100は、ACD装置101から接続可能なIP電話機108−1、108−nの情報を受信すると、受信したIP電話機108−1、108−nの1つと顧客等の加入者電話103との間の通話制御を行う。
【0015】
また、IP交換機100は、メモリ、HDD等による記憶装置、CPU等による情報処理機能を備えていて、前述で説明したような通話の制御を行うと共に、記憶装置に格納された後述する本発明での機能を実現させるためのプログラムをメモリにロードして、そのプログラムをCPUに実行させることにより、後述する本発明での各処理機能を構築している。
【0016】
図1に示して説明した本発明の実施形態によるACDシステムは、収容する公衆網の回線として、ISDN公衆網、IP公衆網からの回線を例に挙げているが、本発明は、他の形式の公衆網からの回線を収容することもできる。
【0017】
図2はACD装置101への着信情報のキューイング数の閾値と、キューイングされている着信情報のキューイング数とを格納したテーブル200の構成例を示す図である。このテーブル200に格納されるデータは、本発明の実施形態において、着信数を制限して輻輳を抑制するために使用する制御データとなるものである。
【0018】
図2に示すテーブル200に格納される着信情報のキューイング数の閾値とキューイングされている着信情報のキューイング数との対は、複数のACD装置101のそれぞれに対応して格納されており、図2には、n台のACD装置101のそれぞれに対応したキューイング数閾値201−1とキューイング数202−1との対〜キューイング数閾値201−nとキューイング数202−nとの対が格納されている状態を示している。そして、キューイング数閾値201−1〜201−nは、ACD装置101への着信情報を同時にキューイングすることができる着信情報個数の最大値であり、キューイング数202−1〜202−nは、ACD装置101への着信情報をキューイングしている現在のACD着信情報個数である。
【0019】
前述したようなテーブル200は、IP交換機101内に格納されて管理されている。また、テーブル200に格納されているキューイング数閾値は、ACD装置101毎に、運用条件により、管理者等により自由に書き換え可能な値である。
【0020】
図3は切断復旧シーケンスの実行を遅延させる場合に参照して使用する制御データとなる各種のタイマー値を格納したテーブル300の構成例を示す図である。
【0021】
図3に示すテーブル300に格納されるタイマー値は、「切断」メッセージを送出するまでの時間である切断メッセージ送信待ちタイマー値301と、「解放」メッセージを送出するまでの時間である開放メッセージ送出待ちタイマー値302と、「解放完了」メッセージを送出するまでの時間である開放完了メッセージ送出待ちタイマー値303と、ISDNでの切断メッセージと同様な意味を持つ「BYE」メッセージを送出するまでの時間であるBYEメッセージ送出待ちタイマー値304とである。
【0022】
前述したようなテーブル300は、IP交換機101内に格納されて管理されている。また、テーブル300に格納されている各タイマー値は、運用条件により、管理者等により自由に書き換え可能な値である。
【0023】
図4はISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えていたことにより、IP交換機がISDN回線を切断する処理動作を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。
【0024】
(1)ISDN公衆網に収容されている加入者電話103−1がコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルし発信すると、IP交換機100は、ISDN公衆網104から呼設定メッセージを受信する。この呼設定メッセージには、ISDN公衆網104の空き通話チャネルの情報と業務対応のACD装置101を指定する情報とを含んでいる(ステップ400、401)。
【0025】
(2)IP交換機100は、呼設定メッセージ受信により、受信したメッセージに含まれる空き状態のISDN回線チャネルを捕捉し、呼設定メッセージ受信への応答情報として呼設定受付メッセージをISDN公衆網へ送信する(ステップ402、403)。
【0026】
(3)IP交換機100は、ISDN公衆網104からの着信がACD装置101の1つを指定した着信であることを、受信した呼設定メッセージにより解析すると、テーブル200内の対応するACD装置のキューイング数閾値とキューイング数とを比較し、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えているか否かにより、そのACD装置101への着信が可能か否かを判定する(ステップ404)。
【0027】
(4)ステップ404の判定で、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えておらず、ACD装置への着信が可能であった場合、IP交換機100は、IP電話機108−1〜108−nのどの電話機に接続したらよいかを問い合わせる接続先問合せメッセージを指定されたACD装置101へ送信し、接続先問合せを行った着信情報をキューイングすると共に、テーブル200内の対応するACD装置101の接続先問合せを行った着信情報のキューイング数202に1を加算して更新する。なお、キューイング数202は、ACD装置101から接続可能なIP電話機の情報を受信すると1が減算される(ステップ405)。
【0028】
(5)ステップ404の判定で、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えていて、ACD装置への着信ができない場合、IP交換機100は、テーブル300内の切断メッセージ送信待ちタイマー値301を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ406)。
【0029】
(6)IP交換機100は、設定した切断メッセージ送信待ちタイマー値による時間が経過して満了したことを判断すると、ISDN公衆網104へ通話チャネルの切断を要求する切断メッセージを送信し、ISDN公衆網104から切断メッセージに対する応答として送信されてくるチャネルの開放を行う旨を示す解放メッセージを受信する(ステップ407〜409)。
【0030】
(7)ここで、IP交換機100は、ステップ409で受信した解放メッセージによる切断復旧手順を実行せずに一旦無視する(ステップ410)。
【0031】
(8)ISDN公衆網104は、ステップ409の処理で解放メッセージを送信したことに対して、IP交換機100から何の応答もないことにより、再送手順により解放メッセージを再送する備えを行って、その後、ISDN公衆網104の再送手順により解放メッセージをIP交換機100に再送する(ステップ411)。
【0032】
(9)IP交換機100は、再送されてきた解放メッセージを受信すると、テーブル300内の解放完了メッセージ送信待ちタイマー値303を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ412)。
【0033】
(10)IP交換機100は、設定した解放完了メッセージ送信待ちタイマー値による時間が経過して満了したことを判断すると、ISDN公衆網104へ通話チャネルを開放する指示である解放完了メッセージを送信して、ISDN公衆網104にチャネルを開放させ、自身も、ISDN回線チャネルを解放する(ステップ413〜415)。
【0034】
図5はISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えていたことにより、IP交換機がISDN回線を切断する処理動作の他の例を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。ここで説明する例は、ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があり、キューイング数の閾値を超えていたことによりIP交換機がISDN回線を切断する処理を行う途中で、加入者電話側から呼接続が切断された場合の処理動作である。
【0035】
(1)ISDN公衆網に収容されている加入者電話103−1がコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルし発信すると、図4に示して説明したシーケンスでのステップ400〜406と同一の処理が実行され、IP交換機100は、切断メッセージ送信待ちタイマー値301を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ500〜506)。
【0036】
(2)ここで、IP交換機100は、設定した切断メッセージ送信待ちタイマー値のタイマーの満了を判断する前に、加入者電話103により回線の切断が行われ、これにより、ISDN公衆網104から切断メッセージを受信したものとする(ステップ507、508)。
【0037】
(3)IP交換機100は、加入者電話103による回線切断によりISDN公衆網104から切断メッセージを受信すると、テーブルデータ300内の解放メッセージ送信待ちタイマー値302を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ509)。
【0038】
(4)IP交換機100は、設定した開放メッセージ送信待ちタイマー値による時間が経過して満了したことを判断すると、ステップ508でのISDN公衆網104からの切断メッセージの受信に対する応答として、ISDN公衆網104へ通話チャネルの解放を指示する開放メッセージを送信する(ステップ510、511)。
【0039】
(5)ISDN公衆網104は、開放メッセージを受信したことにより、通話チャネルの解放を実行し、通話チャネルを開放が完了したことを報告する開放完了メッセージをIP交換機100に送信する(ステップ512)。
【0040】
(6)IP交換機100は、ISDN公衆網104から解放完了メッセージを受信することにより、自身も、ISDN回線チャネルを解放する(ステップ513)。
【0041】
図6はISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。
【0042】
(1)ISDN公衆網に収容されている加入者電話103−1がコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルし発信すると、図4に示して説明したシーケンスでのステップ400〜405と同一の処理が実行されて、ACD装置101への着信が可能であれば、IP交換機100は、接続先問合せメッセージをACD装置101へ送信する(ステップ600〜604)。
【0043】
(2)ACD装置101は、IP交換機100からの接続先問合せに対して、IP電話機108の全てがビジーとなっていてIP電話機108に分配着信できないと判断した場合、IP交換機100に切断指示を送信する(ステップ605)。
【0044】
(3)IP交換機100は、ACD装置101より切断指示を受信すると、図4に示して説明したシーケンスでのステップ406〜415と同一の処理を実行し、テーブル300内の切断メッセージ送信待ちタイマー値301を抽出設定する処理以降の処理を実行する(ステップ606〜615)。
【0045】
図7はISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったときキューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作の他の例を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。ここで説明する例は、ISDN公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があり、キューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作の途中で、加入者電話側から呼接続が切断された場合の処理動作である。
【0046】
(1)ISDN公衆網に収容されている加入者電話103−1がコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルし発信すると、図4に示して説明したシーケンスでのステップ400〜406と同一の処理が実行され、IP交換機100は、切断メッセージ送信待ちタイマー値301を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ700〜706)。
【0047】
(2)ここで、IP交換機100は、設定した切断メッセージ送信待ちタイマー値のタイマーの満了を判断する前に、加入者電話103により回線の切断が行われ、これにより、ISDN公衆網104から切断メッセージを受信したものとする(ステップ707、708)。
【0048】
(3)IP交換機100は、ISDN公衆網104から切断メッセージを受信すると、図5に示して説明したシーケンスでのステップ509〜513と同一の処理を実行し、テーブル300内の開放メッセージ送信待ちタイマー値303を抽出設定する処理以降の処理を実行する(ステップ709〜713)。
【0049】
図8はIP公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったとき、キューイング数が閾値を超えていたことによりIP交換機がIP回線を切断する処理動作を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。
【0050】
(1)IP公衆網に収容されている加入者電話103−nがコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルし発信すると、IP交換機100は、IP公衆網105から呼設定と同様な意味を持つINVITEメッセージを受信する。このINVITEメッセージには、IP公衆網105の空きIP回線チャネルの情報と業務対応のACD装置101を指定する情報とを含んでいる(ステップ800、801)。
【0051】
(2)IP交換機100は、INVITEメッセージの受信により、受信したメッセージに含まれる空き状態のIP回線チャネルを捕捉し、INVITEメッセージ受信への応答情報として100TryingメッセージをIP公衆網105へ送信する(ステップ802、803)。
【0052】
(3)IP交換機100は、IP公衆網105からの着信がACD装置101の1つを指定した着信であることを、受信したINVITEメッセージにより解析すると、テーブル200内の対応するACD装置のキューイング数閾値とキューイング数とを比較し、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えているか否かにより、そのACD装置101への着信が可能か否かを判定する(ステップ804)。
【0053】
(4)ステップ404の判定で、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えておらず、ACD装置への着信が可能であった場合、IP交換機100は、IP電話機108−1、108−nのどの電話機に接続したらよいかを問い合わせる接続先問合せメッセージを指定されたACD装置101へ送信し、接続先問合せを行った着信情報をキューイングすると共に、テーブル200内の対応するACD装置101の接続先問合せを行った着信情報のキューイング数202に1を加算して更新する。なお、キューイング数202は、ACD装置101から接続可能なIP電話機の情報を受信すると1が減算される(ステップ805)。
【0054】
(5)ステップ804の判定で、キューイング数202がキューイング数閾値201を超えていて、ACD装置への着信ができない場合、IP交換機100は、テーブル300内の通話チャネルの切断を要求するBYEメッセージ送信待ちタイマー値304を抽出し、自身の中に抽出したタイマー値の設定を行いタイマーの満了を待つ(ステップ806)。
【0055】
(6)IP交換機100は、設定したBYEメッセージ送信待ちタイマー値による時間が経過して満了したことを判断すると、IP公衆網105へ通話チャネルの切断を要求するBYEメッセージを送信し、IP公衆網105からBYEメッセージに対する応答として送信されてくるチャネルの開放を行う旨を示す200OKメッセージを受信する(ステップ807〜809)。
【0056】
(7)IP交換機100は、IP公衆網105から200OKメッセージを受信することにより、自身も、IP回線チャネルを解放する(ステップ810)。
【0057】
図9はIP公衆網を介して加入者電話から複数のACD装置の1つへ着信があったとき、キューイング数が閾値を超えておらず、IP交換機がIP電話機に接続するときに、IP電話機に着信させることができなかった場合の処理動作を説明するシーケンスチャートであり、次に、これについて説明する。
【0058】
(1)IP公衆網に収容されている加入者電話103−nがコールセンター用の電話番号(ACDシステムのACD装置の1つを指定している)をダイヤルして発信すると、図8に示して説明したシーケンスでのステップ800〜805と同一の処理が実行されて、ACD装置101への着信が可能であった場合、IP交換機100は、接続先問合せメッセージをACD装置101へ送信する(ステップ900〜904)。
【0059】
(2)ACD装置101は、IP交換機100からの接続先問合せに対して、IP電話機108の全てがビジーとなっていてIP電話機108に分配着信できないと判断した場合、IP交換機100に切断指示を送信する(ステップ905)。
【0060】
(3)IP交換機100は、ACD装置101より切断指示を受信すると、図8に示して説明したシーケンスでのステップ806〜810と同一の処理を実行し、テーブル300内のBYEメッセージ送信待ちタイマー値304を抽出設定する処理以降の処理を実行する(ステップ906〜910)。
【0061】
前述した本発明の実施形態によれば、コールセンター用のACDシステムにおいて、短期間の着信集中によりACDシステムを構成するIP交換機及びACD装置に発生する輻輳を、IP交換機及びACD装置の性能を高めることなく、切断復旧シーケンスの実行を遅延させることにより、集中する着信数を制限し抑制、防止することができ、コールセンターのサービスを維持することができ、また、不完了呼となるACD着信呼を減少させることができる。
【符号の説明】
【0062】
100 IP交換機
101 ACD装置
102 LAN
103−1〜103−n 加入者電話
104 ISDN公衆網
105 IP公衆網
106 IP通信網
107−1〜107−n IPゲートウェイ
108−1〜108−n IP電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステムにおいて、
オペレータが使用する複数の内線電話機と、公衆網からの回線を収容する構内交換機と、公衆網の回線からの着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させる指示を行うACD装置とを備え、
前記構内交換機は、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させるときに、ACD装置への着信情報をキューイングする手段と、ACD装置への着信情報のキューイング数を監視する手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行う手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させる手段とを備え、
前記公衆網の回線から着信があったとき前記キューイング数が予め定義された閾値を超えていた場合、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させて、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行うことを特徴とするACDシステム。
【請求項2】
電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステムにおいて、
オペレータが使用する複数の内線電話機と、公衆網からの回線を収容する構内交換機と、公衆網の回線からの着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させる指示を行うACD装置とを備え、
前記構内交換機は、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させるときに、ACD装置への着信情報をキューイングする手段と、ACD装置への着信情報のキューイング数を監視する手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行う手段と、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させる手段とを備え、
前記公衆網の回線から着信があったとき前記キューイング数が予め定義された閾値を超えておらず、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させようとしたときに、前記着信呼を前記複数の内線電話機へ分配着信させることができず、前記ACD装置から切断指示を受けた場合、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させて、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行うことを特徴とするACDシステム。
【請求項3】
前記公衆網が、ISDN網またはIP網、あるいは、ISDN網及びIP網の両者であることを特徴とする請求項1または2記載のACDシステム。
【請求項4】
電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステムにおける輻輳抑制制御方法方法において、
前記ACDシステムは、オペレータが使用する複数の内線電話機と、公衆網からの回線を収容する構内交換機と、公衆網の回線からの着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させる指示を行うACD装置とを備え、
前記構内交換機は、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させるときに、ACD装置への着信情報をキューイングし、ACD装置への着信情報のキューイング数を監視して、前記キューイング数が予め定義された閾値を超えていた場合、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させて、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行うことを特徴とする輻輳抑制制御方法。
【請求項5】
電話受付業務を行うコールセンター用のACDシステムにおける輻輳抑制制御方法方法において、
前記ACDシステムは、オペレータが使用する複数の内線電話機と、公衆網からの回線を収容する構内交換機と、公衆網の回線からの着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させる指示を行うACD装置とを備え、
前記構内交換機は、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させるときに、ACD装置への着信情報をキューイングし、ACD装置への着信情報のキューイング数を監視して、前記キューイング数が予め定義された閾値を超えておらず、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼を前記複数の内線電話機に分配着信させようとしたときに、前記着信呼を前記複数の内線電話機へ分配着信させることができず、前記ACD装置から切断指示を受けた場合、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断復旧の処理の実行を遅延させて、前記公衆網の回線からの前記ACD装置への着信呼の切断を行うことを特徴とする輻輳抑制制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−114708(P2012−114708A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262432(P2010−262432)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】