説明

ACS治療システム

【解決手段】腹腔内圧(IAP)を連続的に監視してACSの発症を防止するためのACS治療システムである。自動ACS治療システムは、尿抜取り機器と、IAP調整回路と、尿抜取り機器に接続されてIAP調整回路にIAP値を供給するIAPモニターと、腹腔液除去機器とを備えている。腹腔液除去機器は、能動吸引機器に接続可能であり、その能動吸引機器は、IAP調整回路により起動されると、腹腔液除去機器を介して腹腔から液体を抜き取る。IAP値に基づき、IAP調整回路は、能動吸引機器を制御してそれをオンすると共に腹腔から液体を排出させるような制御信号を送ることができる。IAP値があるレベルまで達すると、IAP調整回路は、能動吸引機器をオフすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の請求項は、2007年2月21日提出の米国仮出願第60/890,853号について優先権を主張し、またその内容全体を援用してここに開示があるものとする。
【背景技術】
【0002】
液体蘇生法は、しばしば静脈内(IV)カテーテルを介して、24時間、12リットルもの液体を与えるものであるが、血管が露出して裂傷を負った外傷患者において、血圧を維持し、血管の虚脱を回避し、全身血管機能を維持するために、採用される。通常、この液体は、しばしばフォーリーカテーテルを介して、尿という形で体から排除される。体に供給される液体と、体から排出される尿とのバランスを安定化するために、患者に利尿剤を与えて、排尿作用を刺激することもある。体に液体を供給することと、体から尿を排除することの双方のこのプロセスは、顕著な介入として特徴付けられる。
【0003】
しかしながら、外傷患者は、しばしば排尿が困難であり、また、乏尿症(液体吸入との関係で少ない量の尿が分泌されること)又は無尿症(腎臓による尿の分泌が完全に抑止されること)を患っている可能性がある。麻酔の効果又は他の原因により腎臓が機能停止しているような非外傷患者も、乏尿症又は無尿症を患う可能性がある。尿の生成の不足により、体内に過度の液体が溜まると、それは細胞の組織や表層から腹腔内に吐き出されてくる傾向がある。この液体が腹腔内の間質空間を満たすと、腹腔内の上昇した腹腔内圧力(IAP)、これは腹腔内高血圧(IAH)と称される、により、腔の鼓脹や腹腔内の他の生体器官の圧迫が起こる可能性がある。この上昇した圧力は、血管を圧迫し、それらの器官への血液の供給を制限し、それにより器官の機能障害及び不全、つまり腹部仕切り症候群(ACS)と称される症状が引き起こされる。IAH及びACSの他の原因としては、腹腔内血液、腹膜炎、腹水、及びガス性腸拡張がある。IAH及びACSにより悪影響を受ける主な器官系としては、心臓血管、腎臓、肺、胃腸、及び中枢神経の各系がある。
【0004】
利尿剤の効果及び患者により生成される尿の量は様々であるので、液体蘇生法は、液体の入力と出力の微妙かつ正確なバランスを必要としており、それには何らかの監視が必要であり、それにより患者を管理し、利尿剤の効果及び生成される尿の量が分かったうえで、適した量の液体が投与されることとなる。故に、IAPは、患者の潜在的生理学的状態についての重要な診断的及び予後徴候的指標であるはずである。高い値が出れば、腹腔を開いて圧力を解放するために、開腹(腹部手術)が必要であることを示していることとなろう。故に、正しいIAP測定が非常に重要である。
【0005】
IAPを測定するいくつかの技法が文献に記述されてきている。IAPを間接的に検出し、測定する簡単な方法の1つは、留置的尿カテーテルシステムを介して膀胱の圧力を測定することである。膀胱は、受動的レザバー(貯蔵タンク)として機能し、膀胱内の容量が概ね100mL以下であるときには正確に腹腔内圧力を反映する。膀胱圧力は、患者の尿カテーテル排出システムに接続された従来の圧力変換器又はモニターを使用することにより、容易にかつ信頼性が高く測定できるので、膀胱圧力の測定は、選択できる方法となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膀胱圧力の連続測定は、IAH及びACSのリスクがある各患者の検査の一部として行われるべきであり、IAPの測定は、器官系平衡と関係した他の評価材料と関連付けられるべきである。しかしながら、膀胱圧力の多くの測定は、それを行う医療専門家により手作業で行われており、またその有効性ほどは頻繁に行われていない。更に、上昇したIAPというのは腎臓の機能障害を示す可能性があるものであるが、現在では、IAPを利用してACSを管理、防止するようなシステムは存在しない。
【0007】
従って、IAPと任意の他のパラメータの連続的な測定値を得て、それらのパラメータに応じた能動的フィードバックシステムにおける連続的及び自動的治療を提供して、IAH及びACSの発症を防ぐ必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上から、連続的に液体蘇生法を管理して患者のために自動的に介入するACS治療システムが、ここに記述され、最小侵襲技法を使用するACS治療が提供される。自動ACS治療システムは、基本的に、IAP調整回路と、尿抜取り機器に接続され、腹腔内の圧力を示すIAP値をIAP調整回路に供給する腹腔内圧モニターと、IAP調整回路の制御の下で、腹腔から液体を抜き去る腹腔液除去機器とを備えている。腹腔液除去機器は、IAP調整回路により起動状態にあるときにその腹腔液除去機器を通して腹腔から液体を抜き去る能動吸引機器に接続され、IAP調整回路に腹腔液量値を提供するように構成できる。ACS治療システムは、また、膀胱から尿を抜き取る尿抜取り機器と、尿抜取り機器を介して尿を受け取り、全尿出力を測定し、その値をIAP調整回路に提供する尿出力モニターとを備えることが可能である。
【0009】
液体蘇生の間、静脈内(IV)カテーテルを使用して液体を体に投与してもよい。カテーテルは、液体配給源に接続され、また、体内に挿入される。ACS治療システムは、体に配給される液体の量を制御及び監視して、液体量値をIAP調整回路に提供する液体制御及び監視機器も備えることができる。IVカテーテルは、利尿剤配給源にも接続され、体に利尿剤を投与するために使用することもできる。ACS治療システムは、体に配給される利尿剤の量を制御及び監視して、利尿剤量値をIAP調整回路に提供する利尿剤制御及び監視機器も備えることができる。
【0010】
ACS治療システムは、能動的フィードバックシステムである。全尿出力、IAP値、腹腔液量値、液体量値及び利尿剤量値のうちの1つ以上に基づいて、IAP調整回路は、能動吸引機器を制御する制御信号を送ることができる。例えば、IAP値が、腹腔内圧が大きすぎることを示していれば、IAP調整回路は、能動吸引機器をオンして、腹腔から液体を排出させる。IAP値、及び/又は腹腔から排出された液体の量が、腹腔液量値により決定されたあるレベルに達したら、又は所定時間が経過したら、IAP調整回路は、能動吸引機器をオフし、腹腔からの液体の排出を終了させる。
【0011】
IAPモニターは、患者の膀胱の内側で拡張化する膨張性素子を備えることが可能である。膀胱壁に接触したときのバルーンが受ける抵抗が、膨張性内腔を通して、IAPモニター内に配置された圧力変換器又はセンサーにより検出される。
【0012】
腹腔液除去機器は、腹膜透析(PD)カテーテルとすることができる。PDカテーテルは、小さな切開部を通して腹腔内に挿入される、両端に孔を有した一本の管である。PDカテーテルは、能動吸引機器が起動しているときに腹腔から過度の液体を取り出すのに使用される。
【0013】
液体配給源は、IVカテーテルを通じで体に液体を供給する。IAP調整回路により受け取られたフィードバック(監視情報)により、IAP調整回路は、異なるタイプのIV液体がIVカテーテルを通して体に配給されるべきか否かを判定できる。例えば、IAP調整回路が、多くの量の液体が腹腔から排除されつつある、又はIAP調整回路により監視されるパラメータにより検出することが可能な何らかの他の合併症が起こっている、と判断した場合には、IAP調整回路は、異なるタイプのIV液体が使用されるべきであること、又はIV液体がよりゆっくりと与えられるべきであることを視覚的又は聴覚的に示す。あるいは、IAP調整回路は、液体スイッチに制御信号を与え、自動的に液体を変更するか、又は配給速度を変更する。
【0014】
IAP調整回路は、1つ以上のアナログ入力、クロック回路からの経過時間信号を受け取るA/D変換器と、その入力信号を受け取り、ACS治療システムの各構成部を制御するプロセッサーと、使用者が開始時間を入力して全経過時間を決定できると共に、使用者がパラメータ及びプログラム情報を入力できるユーザーインターフェースとを備えることが可能である。IAPや投与されるべき液体及び利尿剤を監視し、腹腔から液体を抜き取る制御を行い、又は投与されるべき液体又は利尿剤の量又はタイプの制御を行うように、IAP調整回路により実行できるアルゴリズムには多くの数が存在する。IAP調整回路は、また、連続的に監視され算出された1つ以上のパラメータを印刷するため、及び/又は表示するため、及び格納するための連続印刷機器又はグラフ表示器、及びメモリを備え、IAP、尿出力、腹腔液除去、投与されるべき液体及び利尿剤、並びにそれらの関係のうちの1つ以上の時間的な変化を示すことができるようになっている。
【0015】
これらの又は他の実施形態、方法、特徴、及び利点は、最初に概説される添付図面と併せて、以下の発明のより詳細な説明を参照すると、当業者にはより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、連続的及び自動的ACS治療システムの一実施形態を示す図である。
【図2】図2は、IAPモニター及びフォーリーカテーテルの例を示す図である。
【図3】図3は、IAPモニター及びフォーリーカテーテルの他の例を示す図である。
【図4】図4は、腹腔から液体を抽出するための穿刺針の使用を示す図である。
【図5a】図5aは、腹腔に挿入するためのスリーブ内の大面積腹腔液除去素子を示す図である。
【図5b】図5bは、スリーブから外されて、腹腔内で展開した大面積腹腔液除去素子を示す図である。
【図6】図6は、IAP調整回路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきである。図面は、必然的に拡縮されたものではないが、選択された実施形態を描いており、本発明の範囲を限定する意図ではない。詳細な説明は、発明の原理の例を描写するものであり、それを限定するものではない。この説明により、当業者は、発明を創出し利用できるようになるであろうし、この説明は、発明のいくつかの実施形態、適用例、各種態様、択一的形態及び使用を記述しており、また現時点において発明を実施するためのベストモードと考えられるものも含まれている。
【0018】
ここに記述された実施形態は、液体蘇生法の全般的介入を管理及び調整し、患者のために自動的に介入し、それにより最小侵襲技法を使用してACS治療を提供する連続的ACS治療システムに関する。ここに記述する実施形態は、例えば、腹腔を切開するような他の全般的介入方法と比較して有利であると信じられる。それらの実施形態は、切開する必要性をなくしているからである。ここに記述されるようなACS治療システムは、例えば、鈍的外傷を負った患者、手術が行われた患者、何らかの理由で液体が導入されてIAHになってしまった非手術及び非外傷患者のように、何らかのいくつかの原因によるIAPの管理のために使用できる。
【0019】
図1は、一実施形態による自動ACS治療システムを示す図である。図1において、フォーリーカテーテル102(連続的に尿を排出するために膀胱内に挿入されるフレキシブルプラスチック管)のような尿抜取り機器が、膀胱から尿を抜き取るために使用される。しかし、他の尿抜取り方法も採用できる。カテーテル102が膀胱104に挿入され、そのカテーテルの遠位端のバルーン106が膨張し、膀胱内でそのカテーテルを固定する。
【0020】
ACS治療システム100は、カテーテル102を通して尿を受け取り、全尿出力Uvolを測定する尿出力モニター108を備えている。尿出力モニター108は、尿のためのレザバー110と、全尿量値を連続的に提供することにより、又は全尿量値を周期的に提供することにより、実時間で全尿量値Uvolを判定するために尿レベルを感知する電子“眼”112とを備えている。いずれの場合もここで定義される“連続的”監視と考えられる。尿出力モニターの一例は、米国特許第4,343,316に記述されており、その全内容は援用されてここに開示されているものとする。また、商業的に得られる尿出力モニターとしては、Bard CRITICORE(登録商標) Monitorがある。しかし、時間及び尿出力を連続的に測定するものであれば他の如何なる手段も採用できる。尿出力モニター108は、任意に、IAP調整回路114にUvol値を提供する。
【0021】
加えて、腹腔内圧(IAP)モニター118が、任意に排出ラインを介して、カテーテル102に接続され、膀胱104内の圧力を測定することにより間接的にIAPを評価している。IAPモニター118は、後により詳細に議論する。IAPモニター118は、IAP調整回路114に動作的に接続され、腹腔内の圧力を示すPAC値を、連続的に提供するか、又は周期的に提供することにより、IAP調整回路114にそれを供給している。いずれの場合もここで定義されるPAC値の“連続的”監視と考えられる。
【0022】
腹膜透析(PD)カテーテル120のような腹腔液除去機器が、腹腔122から液体を抜き取るために使用される。しかし、他の液体抜取り方法も採用できる。カテーテル120は腹腔122内に挿入され、また能動吸引機器124に接続される。能動吸引機器124は、制御ポンプと、抜取り液を保持するためのレザバーを有している。起動されると、能動吸引機器124は、カテーテル120を介して腹腔122から液体を抜き取る。能動吸引機器124は、腹腔液量値Avolを監視して、連続的に提供することにより、又は周期的に提供することにより、そのAvol値をIAP調整回路114に供給する。いずれの場合もここで定義されるAvol値の“連続的”監視と考えられる。
【0023】
静脈内(IV)カテーテル128が、体130に液体を投与するために任意に使用される。しかし、他の液体配給方法も採用できる。カテーテル128は、液体配給源132に接続され、また体内に挿入される。挿入されると、重力又は他の手段が利用されて、液体が体内に配給される。液体制御及び監視機器134が、体に配給される液体の量を任意に制御及び監視し、連続的に提供することにより、又は周期的に提供することにより、液量値FvolをIAP調整回路114に供給する。いずれの場合もここで定義されるFvol値の“連続的”監視と考えられる。
【0024】
IVカテーテル128は、体130に利尿剤を投与するために任意に使用される。しかし、他の利尿剤配給方法も採用できる。カテーテル128は、利尿剤配給源136に接続される。利尿剤制御及び監視機器116が、体に配給される利尿剤の量を任意に制御及び監視し、連続的に提供することにより、又は周期的に提供することにより、利尿剤量値DvolをIAP調整回路114に供給する。いずれの場合もここで定義されるDvol値の“連続的”監視と考えられる。
【0025】
ここに記述される実施形態によるACS治療システムは、能動的フィードバックシステムである。全尿出力Uvol、IAP値PAC、腹腔液量値Avol、液体量値Fvol及び利尿剤量値Dvolのうちの1つ以上に基づいて、IAP調整回路114は、能動吸引機器124を制御する制御信号を送ることができる。例えば、IAP値PACが、腹腔内圧が大きすぎることを示していれば、IAP調整回路114は、能動吸引機器124をオンして、カテーテル120を通じて腹腔122から液体を排出させる。言い換えれば、IAP調整回路114は、動作的にカテーテル120に接続され、カテーテル120を介した腹腔液の除去を制御している。IAP値、及び/又は腹腔から排出された液体の量が、Avol値により決定されたあるレベルに達したら、又は所定時間が経過したら、IAP調整回路114は、能動吸引機器124をオフし、腹腔からの液体の排出を終了させる。あるいは、液体が腹腔から排出され、IAP値PACが許容レベルに戻った後は、IAP調整回路は、制御信号138を利尿剤制御及び監視機器116に送り、患者に投与されるべき利尿剤の量を制限する。当業者であれば、ここに記述の実施形態によるACS治療システム100を利用した多くの異なる制御操作が可能であることが理解できるであろう。
【0026】
体130の中の尿膀胱104の周りには多くの内蔵器官がある。液体の形成により腹腔122の圧力が上昇すると、腹腔が拡がり、これらの器官を膀胱104の方へ押すこととなる。故に、膀胱104内の圧力が直接的にIAPと関連することとなる。膀胱104内の圧力は、カテーテル102をあ介して監視可能であり、それにより現在のIAPの量を間接的に測定できることになる。上述のように、IAPモニター118がカテーテル102に接続されており、膀胱内の圧力を測定することにより、IAPを間接的に評価することができる。
【0027】
ACS治療システムに使用するのに適した方法で、カテーテル102を介してIAPを間接的に測定するのに利用できる方法は多く存在する。例えば、IAPモニター118を使用し、膀胱自体に直接液体を注入することなく、IAPレベルを自動的に実時間で読み取ることができる。そのようなIAPモニターの例が、2006年7月13日に出願された国際特許出願PCT/US06/27264号、名称“腹腔内圧監視システム(Intra-Abdominal Pressure Monitoring System)”に記述されており、この出願は援用されて全内容がここに開示されているものとする。そこで、その出願においては、膀胱内で膨張させられたフォーリーカテーテルのバルーン、又は別個のバルーンが使用されて、膀胱内に直接液体を注入する必要なく、膀胱内の圧力が判定され、IAPの評価値が提供されている。
【0028】
図2は、ACS治療システムで使用されるIAPモニター200及びフォーリーカテーテル210の例を示す図である。図2において、膨張性素子202が患者の膀胱204内で拡がり、IAPを監視する。この例では、カテーテルシャフト206に搭載された、適当な大きさと形状を有する膨張性素子(例えばバルーン)202が、液体又は空気を使用して患者の膀胱204内で拡張する。膀胱壁に接触したときのバルーン202が受ける抵抗が、膨張性内腔を通して、圧力変換器又はセンサーにより検出される。なお、一実施形態においては、その圧力変換器又はセンサーは、IAPモニター200内に配置される(図2に示すように)。膨張性素子202の具体的なデザインとしては、球形、マルチローブ形、楕円、棒状等、各種の形状及び/又は大きさが考えられる。更に、膨張性素子202は、留め具としての役割も果たし、カテーテル210が患者の膀胱204から滑り落ちてしまうことを防止している(これはフォーリーカテーテルの端部の膨張性素子の標準機能である)。しかし、この留め具の機能は、別個の素子によっても達成できる。
【0029】
図2において、システムの機能を例示するために、膨張性素子202は膀胱204内で膨張するようになっている。この特定の例においては、IAPモニター200は、液体/空気補償チャンバー及び圧力センサーを有しており、管212を介して膨張ポート208に取り付けられ、膨張管腔に接続されている。圧力センサーは、配線で読出し部(例えば表示器、メモリー等)に接続されるか、又は無線で接続される。一般的には、圧力センサーは、IAP調整回路に情報(例えばIAP測定値PAC)を送信する。膨張ポート208は、当業者に知られている膨張バルブを備えている。液体/空気補償チャンバーは、IAPモニター200内に配置されているか(図2のように)、又は単独で備わっており、プログラムで制御される小型ポンプと、膨張時間、感知時間、オンオフサイクルの周期等の動作パラメータをプログラムして制御するための組込み回路と、液体/空気レザバーとを備えている。液体/空気補償チャンバーは、バルーン202を通じての液体/空気のいかなる拡散も補償し、しっかりとしたその基線を保証している。ポンプはバッテリで駆動されてもよい。示された例では、排出及び感知機能は分離されており、すなわち尿出力率は独立に監視される。感知素子は、膀胱の容積に妥協することなく連続して膨張することはないので、IAP調整回路の制御の下での監視要求によりプログラムされたように、不連続測定値が自動的に生成される。カテーテル210の遠位端の膨張性素子202は、膨張した状態で示されており、実質的に膀胱204に接触しており、圧力測定値を圧力センサーに与えている。前述のように、この例では、カテーテル210の尿管腔は開放されたままの状態で、取り付けられた排出管214に液体が流れるようになっているので、圧力の測定は、膀胱204からの尿の排出と同時に行われる。カテーテルの手元端は、上述のように手元接続部材に取り付けられており、それにより尿の収集は、圧力の読み取りと同時にも行うことができる。
【0030】
図3は、IAPモニター300及びフォーリーカテーテル310の他の例を示す図である。図3においては、圧力測定に使用されるポート302は、3ウェイフォーリーカテーテル304の第二液体管腔306となっている。この実施形態では、入口ポート302を介して第二液体管腔306に接続されたバイバス管腔308を通じて、液体又は空気が注入される。液体/空気は、球310内に満ちてそれを膨張させる。液体/気体が、液体注入器312により送られ、IAP調整回路の制御の下で、圧力がインライン圧力変換器又はIAPモニター300により測定される。第二球320が膨張した後、IAP調整回路により制御可能なバルブ314が、球からの逆流を防止するために使用され、IAPを反映した圧力が測定される。液体/空気は、IAP調整回路の制御の下でバルブ314を開放して液体注入器312(ここではシリンジとして示される)により抜き取ることにより、除去される。図2及び3に示されたIAPモニターのいずれも図1のIAP調整回路114により制御可能であり、それにより感知素子を膨張させ、その後、IAPの連続的測定ができるということが理解されるべきである。
【0031】
上述のように、腹腔液除去機器が腹腔から液体を抜き取るために使用される。腹腔液除去機器の一例としては、腹膜透析(PD)カテーテルがある。図1を参照すると、PDカテーテル120が示されており、そのPDカテーテルは、小さな切開部を通して腹腔内に挿入される、両端に孔を有した一本の管である。透析のための通常の使用においては、PDカテーテル120は、腹腔内に洗浄透析液を注入するのに使用される。その溶液は、腹腔を画定する膜である腹膜を通して、体から余分な液体や老廃物を押出す。つまり、透析液が、その後、管を通じて腹腔から抜き取られると、余分な液体や老廃物も同時に除去される。PDカテーテルは、液体を注入するために使用されるのではなく、能動吸引機器124が起動されたときに腹腔から余分な液体を押し出すことのみに使用されてもよい。
【0032】
PDカテーテルは、腹腔内の液体を除去する単なる一例にすぎないことに注意すべきである。穿刺術は、腹腔から液体を除去する他の方法である。図4は、腹腔から液体を抽出するための穿刺針402の使用を示す図である。まず、管404の遠位端に接続された穿刺針402が腹壁を通して挿入される。管404は、その手元端において、能動吸引機器406に接続されている。IAP調整回路が、IAPを下げるために腹腔から液体が抜かれるべきと判断したときには、能動吸引機器406は起動され、液体が穿刺針402を通じて除去される。
【0033】
負の圧力又は浸透により液体を抜き取ることができる大面積素子(例えばスポンジ又は膜)のような他の液体除去機器も使用できる。そのような負の圧力のスポンジとしては、www.kci1.comに記述されたKCI(登録商標)Vacuum Assisted Closure(VAC(登録商標)))があるが、その全内容は援用されここに記述されているものとする。図5aは、大面積腹腔液除去素子502を示す図である。図5aにおいて、液体を導くことができるスポンジ又は膜502のような素子が、腹腔504内に置かれている。そのような素子502を腹腔504内に通すために必要な切開を最小にするために、その素子は、初めは小さな直径に圧縮され、切開部を通過する。図5aの例においては、素子502は、挿入の間、スリーブ508内に圧縮される。図5bに示すように、腹腔内に入ってしまうと、スリーブ508は、引き戻され、それにより素子502は扇状に拡がり、又は膨張し、大面積を回復する。排出管506が、素子502及び能動吸引機器510に接続されている。能動吸引機器510が起動されると、素子502及びカテーテル506を介して腹腔から液体が除去される。素子502を除去する前に、スリーブ508がその素子に被せられ、切開を通して除去できるように素子は圧縮される。
【0034】
図1を再び参照すると、液体配給源132は、カテーテル128を介して体に液体を供給する。しかしながら、ACS治療システム100は、IAP調整回路114により受け取られるフィードバックを利用して、異なるタイプのIV液(例えば、異なる液体蘇生法プロトコル140、142)が、カテーテル128を介して体に配給されるべきか否かを判定するようにしてもよい。使用することが可能な異なるタイプのIV液としては、ラセミ乳酸化リンガー、L乳酸化リンガー、ケトンリンガー、ピルビン酸塩リンガー、ヘタサーチ、及び高浸透圧食塩水があるが、それらの限定されるわけではない。例えば、IAP調整回路114が、大量の液体が腹腔から除去されつつある、又はIAP調整回路114により監視されるパラメータにより検出することが可能な何らかの他の合併症が起こっている、と判断した場合には、IAP調整回路は、異なるタイプのIV液体が使用されるべきであること、又はIV液体がよりゆっくりと与えられるべきであることを視覚的又は聴覚的に示す。あるいは、IAP調整回路114は、液体スイッチ(液体制御及び監視機器134内に任意に置かれる)に制御信号144を与え、自動的に液体を変更するか、又は配給速度を変更する。
【0035】
図6は、IAP調整回路600の例を示す図であり、そのIAP調整回路600は、尿量値Uvol、IAP値PAC、腹腔液出力値Avol、利尿剤量値Dvol、及び液量値Fvolの1つ以上がアナログ形式の場合に、それらを受け取るA/D変換器602を備えている。これらのパラメータの1つ以上のデジタル値は、クロック回路616からの経過時間信号614と共に、プロセッサー612に送られる。IAP調整回路600は、使用者が開始時間620を設定できて全経過時間614が決定できるように、また、使用者が閾値IAP値PAC_maxのような他のいろいろなパラメータを入力できるようにユーザーインターフェース618を備えている。なお、閾値IAP値PAC_maxというは、それを超えるとプロセッサー612が、能動吸引機器に対して、腹腔から液体を抜き取るように自動的に指示を与えるような値である。ユーザーインターフェース618により、また使用者は、ACSを管理するようなIAP調整回路600をプログラムすることができる。簡単な例としては、使用者は、PAC_maxを入力し、IAP値PACがPAC_max以上になったときに、能動吸引機器対して吸引制御信号Sctlを自動的に送るようにプロセッサー612をプログラムする。言い換えれば、プロセッサーにより実行されるアルゴリズムは、“if PAC ? PAC_max、 then Sctl = asserted”と読める。他の例では、使用者は、周期的時間間隔を入力し、その周期的時間間隔ごとにIAP監視を制御してIAPを読み取るようにプロセッサーをプログラムしてもよい。当業者であれば、IAPや投与されるべき液体及び利尿剤を監視し、腹腔から液体を抜き取る制御を行い、又は投与されるべき液体又は利尿剤の量又はタイプの制御を行うように、IAP調整回路により実行できるアルゴリズムには多くの数が存在することが認識できるであろう。
【0036】
IAP調整回路600は、また、連続的に監視され算出された1つ以上のパラメータを印刷するため、及び/又は表示するため、及び格納するための連続印刷機器624又はグラフ表示器626、及びメモリを備え、IAP、尿出力、腹腔液除去、投与されるべき液体及び利尿剤、並びにそれらの関係のうちの1つ以上の時間的な変化を示すことができるようになっている。表示器又は印刷器は、パラメータの連続的(接続)グラフを提供できるし、又は各周期的時間における点データも提供できる。いずれの場合もここで定義される“連続的”表示又は印刷と考えられる。
【0037】
本発明は記述され、また本発明の特定の例が描写されてきた。本発明は、特定の各種態様や例示的図面に関して記述されてきたが、当業者は、本発明がそれらの記述された各種態様や図面に限定されるものではない、ということが認識できるであろう。加えて、上述の方法及びステップは、各事象がある順序で起こることを示しているが、当業者は、それらのステップの順序は変更でき、かかる変更も発明の各種対応ということになる、ということを認識できるであろう。更に、上述のように順番に行えると共に、各ステップは、可能であるならば平行して同時に実行できる。故に、本発明の各種の態様、すなわち、請求項に見られる発明の開示、又はそれと等価なものの精神の範囲内にある限りは、この特許は同様にそれらの各種態様にも掛ってくるものとして意図している。最後に、本明細書において引用した全ての公知文献及び特許出願は、それらの各公知文献や特許出願が、ここに具体的に個々に記載されているが如きにその全体が援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔内圧(IAP)を測定してその指示値を提供するように構成されたIAPモニターと、
患者の腹腔から液体を除去するように構成された腹腔液除去機器と、
前記IAPモニター及び前記腹腔液除去機器に動作的に接続され、前記IAPモニターから前記IAPの指示値を受け取り、前記腹腔液除去機器を通じた腹腔からの液体の除去を制御するように構成されたIAP調整回路と、
を備えたことを特徴とする腹部仕切り症候群(ACS)治療システム。
【請求項2】
前記IAPモニターに接続され、前記患者から尿を排出するように構成された尿抜取り機器を更に備え、
前記IAPモニターは、前記尿抜取り機器を介した膀胱圧力の測定により、IAPの前記指示値を測定するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項3】
前記尿抜取り機器は、フォーリーカテーテルであることを特徴とする請求項2に記載のACS治療システム。
【請求項4】
前記腹腔液除去機器は、腹膜透析(PD)カテーテルであることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項5】
前記腹腔液除去機器は、穿刺針であることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項6】
前記腹腔液除去機器は、大面積腹腔液除去素子であることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項7】
前記尿抜取り機器に接続され、前記患者から排出される全尿量を測定してその指示値を提供するように構成された尿出力モニターを更に備えることを特徴とする請求項2に記載のACS治療システム。
【請求項8】
前記尿出力モニターは、前記患者から排出される前記全尿量の指示値を前記IAP調整回路に提供するように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のACS治療システム。
【請求項9】
前記腹腔液除去機器及び前記IAP調整回路に接続され、前記IAP調整回路の制御の下で、前記腹腔液除去機器を介して前記腹腔から液体を抜き取るように構成された能動吸引機器を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項10】
前記能動吸引機器は、前記腹腔から排出された全腹腔液量の指示値を前記IAP調整回路に提供するように構成されたことを特徴とする請求項9に記載のACS治療システム。
【請求項11】
前記IAP調整回路は、前記IAPの指示値を受け取り、当該IAPの指示値が第一所定閾値と一致しているか、又は超えているときに、第一制御信号を前記能動吸引機器に送って前記腹腔液除去機器を介して前記腹腔から液体を抜き取らせるように構成されたプロセッサーを備えることを特徴とする請求項10に記載のACS治療システム。
【請求項12】
前記プロセッサーは、排出された全腹腔液量の指示値が、所定閾値と一致しているか、又は超えているときに、第二制御信号を前記能動吸引機器に送って前記腹腔液除去機器を介しての前記腹腔からの液体の抜き取りを終了させるように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のACS治療システム。
【請求項13】
前記プロセッサーは、所定時間が経過したときに、第二制御信号を前記能動吸引機器に送って前記腹腔液除去機器を介しての前記腹腔からの液体の抜き取りを終了させるように構成されていることを特徴とする請求項11に記載のACS治療システム。
【請求項14】
前記患者に液体を提供するための液体配給源と、
前記液体配給源及び前記IAP調整回路に接続され、前記患者に投与される液体の量を制御及び監視し、前記患者に投与された液体の量の指示値を前記IAP調整回路に提供するように構成された液体制御及び監視機器と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項15】
前記液体配給源に接続され、前記患者に液体を投与するように構成されたIVカテーテルを更に備えることを特徴とする請求項14に記載のACS治療システム。
【請求項16】
前記患者に利尿剤を提供するための利尿剤配給源と、
前記利尿剤配給源及び前記IAP調整回路に接続され、前記患者に投与される利尿剤の量を制御及び監視し、前記患者に投与された利用剤の量の指示値を前記IAP調整回路に提供するように構成された利尿剤制御及び監視機器と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項17】
前記利尿剤配給源に接続され、前記患者に利尿剤を投与するように構成されたIVカテーテルを更に備えることを特徴とする請求項16に記載のACS治療システム。
【請求項18】
前記尿抜取り機器は、膀胱内で膨張するバルーンを備え、前記IAPモニターは、前記バルーンを膨張させるための膨張管腔を介して膨張機器及び前記バルーンに接続され、前記IAPモニターは、前記膀胱内で膨張したバルーンにより感知された圧力を検出するように構成された圧力センサーを備えることを特徴とする請求項2に記載のACS治療システム。
【請求項19】
前記IAP調整回路は、前記IAPを連続的に表示するように構成された表示機器を備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項20】
前記IAP調整回路は、使用者がIAP閾値を入力できるように構成されたユーザーインターフェースを備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項21】
前記IAP調整回路は、前記腹腔からの液体の除去を制御するように使用者が前記IAP調整回路をプログラムできるように構成されたユーザーインターフェースを備えることを特徴とする請求項1に記載のACS治療システム。
【請求項22】
前記液体制御及び監視機器は、複数の液体配給源の間で切り替えるように構成され、前記IAP調整回路は、受け取った監視値に応じて、前記複数の液体配給源の間で切り替えるように前記液体制御及び監視機器をプログラム制御するように構成されたことを特徴とする請求項14に記載のACS治療システム。
【請求項23】
IAPを測定してその指示値を提供するように構成された腹腔内圧(IAP)モニターと、
患者の腹腔から液体を除去するように構成された腹腔液除去機器と、
前記IAPモニター及び前記腹腔液除去機器に動作的に接続され、前記IAPモニターから前記IAPの指示値を受け取り、前記腹腔液除去機器を通じた腹腔からの液体の除去を制御するように構成されたIAP調整回路と、
前記IAPモニターに接続され、前記患者から尿を排出するように構成された尿抜取り機器と、
前記尿抜取り機器に接続され、前記患者から排出される全尿量を測定してその指示値を提供するように構成された尿出力モニターと、
前記腹腔液除去機器及び前記IAP調整回路に接続され、前記IAP調整回路の制御の下で、前記腹腔液除去機器を介して前記腹腔から液体を抜き取るように構成された能動吸引機器と、
前記患者に液体を提供するように構成された液体配給源と、
前記患者に利尿剤を提供するように構成された利尿剤配給源と、
を備えたことを特徴とする腹部仕切り症候群(ACS)治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529865(P2010−529865A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550970(P2009−550970)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/054199
【国際公開番号】WO2008/103625
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】