説明

AD変換装置、AD変換装置を用いた電流検出器及び電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置

【課題】ΔΣ型AD変換器のディジタル信号のサンプリング回数を増やすことができる回路構成とし、精度の良いAD変換装置および電流検出器を提供する。
【解決手段】ΔΣ型AD変換器511がタイミング生成回路20とAD変換時間計測カウンタ221とAD変換時間保持部231とAD変換データセレクタ241とAD変換完了信号セレクタ251を備え、AD変換データ生成部が181,182,・・・,18mと複数チャネル並列化され、1チャネルあたりのディジタル信号のサンプリング回数を増やす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換装置、前記AD変換装置を用いてモータ等の制御を行うための電流検出器及び前記電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個のAD変換器で構成されるAD変換装置は、1個ずつ順次AD変換を行っていて、全てのAD変換が完了するまでに時間がかかるという課題があった。この課題を解決するために、従来のAD変換装置は、複数個のAD変換器を一斉に変換スタートさせ、AD変換完了時に発生する複数のAD変換完了信号の論理積をとり、ディジタル信号処理手段(上位演算器)への割込み信号として生成していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は従来技術におけるAD変換装置を示す回路図である。
図5において、ディジタル信号処理手段1はAD変換スタート信号4をAD変換器201,202,・・・20nに時刻toで与え,AD変換動作を開始させる。これにより,AD変換器201,202,・・・20nから出力される各AD変換完了信号301,302,・・・,30nは、ANDゲート3に入力され、論理積がとられる。ANDゲート3から出力される信号は、全てのAD変換器201,202,・・・20nがその変換動作を完了したことを意味し、ディジタル信号処理手段1に割込み信号2として入力される。
【0004】
図6はこのような従来のAD変換装置における動作を示すタイミング図であり、時刻taからtbの期間においてAD変換完了信号301,302,・・・,30nの何れかがローレベルの状態であり、時刻tbに全てのAD変換完了信号301,302,・・・,30nがハイレベルの状態となったことを示す。
【0005】
このように、従来のAD変換装置は、一回の割込み信号により全てのAD変換器のAD変換データを読み込むので、効率よくAD変換データを収集できるようになっていた。
【0006】
また、AD変換装置の例として、AD変換器にΔΣ型AD変換器を用いるものがあった(例えば、特許文献2の図4参照)。このΔΣ型AD変換器は、一般的な逐次比較型AD変換器で構成されるAD変換装置がノイズの影響を受け易いということやAD変換器内部に出力ビットと同ビット数のDA変換器を内蔵しているため高価であるという問題を解決するものであった。
【0007】
図7は従来のΔΣ型AD変換器5の回路図である。
図7において、41はΔΣ変調器であり、アナログ信号EAを入力しΔΣ変調を行い、符号パルスEOを出力する。141はディジタルフィルタであり、符号パルスEOを入力とし、ディジタル信号として出力する。151は平均化回路であり、ディジタルフィルタ141から出力されるディジタル信号の、PWMキャリアの周期に等しい期間での平均値を求め、ディジタル信号EDとして出力する。
また、ΔΣ型変調器41はEAとEOの減算を行う減算回路401と、この減算結果を積分する積分回路411と、この積分結果と基準レベルを比較し、クロック421に同期して符号パルスEOを出力する比較回路431から構成される。
以上のように構成されるΔΣ変調器41の出力は、アナログ信号EAにノイズが発生しても、積分回路411により平均化されるため急激な変化はしない。
【0008】
このように、従来のΔΣ型AD変換器5を用いたAD変換装置は、アナログ信号にノイズが重畳した場合もディジタル信号出力への影響を軽減することができた。また、AD変換器をΔΣ型AD変換器とすることにより、安価なAD変換装置を提供することができた。
さらに、ΔΣ型AD変換器を用いたAD変換装置を、ディジタルサーボ制御装置の電流検出器に適用していた(例えば、特許文献2の図1参照)。これは、一般的な逐次比較型AD変換器で構成されるAD変換装置をディジタルサーボ制御装置の電流検出器に適用した場合、パワー素子のスイッチングノイズのディジタル電流検出信号への重畳を防ぐため、スイッチングを行わないタイミングで、各電流検出信号をサンプルホールドし、AD変換を行う必要があるという問題と、高価なAD変換器を用いるためディジタルサーボ制御装置のコストが増大するという問題を解決したものであった。
【0009】
図8は従来の電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図である。
図8において、電動機11は三相電動機を例にとっている。
まず、電流検出手段13は、三相電動機11に供給される三相の内2つの電流をアナログ的に検出し、第一の電流検出信号iA1,第二の電流検出信号iA2を出力する。
第一のΔΣ型AD変換器51と第二のΔΣ型AD変換器52はそれぞれ第一の電流検出信号iA1,第二の電流検出信号iA2を入力し、それぞれディジタル化を行い、第一のディジタル電流検出信号iD1,第二のディジタル電流検出信号iD2を出力する。
位置検出手段12は、電動機11の回転子と固定子の相対的な位置を検出し、その位置検出信号S1を出力する。
ディジタル信号処理手段9は、第一のディジタル電流検出信号iD1,第二のディジタル電流検出信号iD2,位置検出信号S1およびディジタル指令信号C1を入力し、これらを演算処理することにより第一のPWM指令信号P1,第二のPWM指令信号P2,第三のPWM指令信号P3,第四のPWM指令信号P4,第五のPWM指令信号P5,第六のPWM指令信号P6を出力する。また、ディジタル信号処理手段9は電流アンプ、速度アンプ、位置アンプとPWM発生回路とを含んだ回路をディジタル回路、またはDSPやマイコン等を用いたソフトウェアにより構成される。
電力変換手段10は、三相ブリッジ構成の6組のパワー素子と還流ダイオードにより構成され、それぞれに対応した第一,第二,第三,第四,第五,第六のPWM指令信号P1,P2,P3,P4,P5,P6に応じて電動機印加電圧をPWM制御する。
【0010】
以下に、従来の電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置の動作について説明する。
第一のΔΣ型AD変換器51と第二のΔΣ型AD変換器52は、ΔΣ型AD変換器5により構成され、それぞれ第一,第二の電流検出信号iA1,iA2をAD変換によりディジタル化を行い、第一,第二のディジタル電流検出信号iD1,iD2を出力する。このiD1,iD2と位置検出信号S1とディジタル指令信号C1により、電動機11のディジタル制御を行う。
【0011】
図9は従来の電流検出器における動作を示すタイミング図である。第一,第二のΔΣ型AD変換器51,52に用いるΔΣ型AD変換器5がディジタル電流検出信号を出力する様子を、図9を用いて説明する。
図9に示す第一のPWM指令信号P1は、PWMキャリア毎に生成されるPWM信号であり、電流は第一の電流検出信号iA1である。
ΔΣ型AD変換器5は、上記PWMキャリアの周期に等しい期間に、iA1をディジタル化したディジタル信号を複数回サンプリングする。この図9では、例としてPWMキャリアの周期に等しい期間に4回のサンプリングを行う場合について示している。
すなわち、iA1のディジタル化したディジタル信号を4回サンプリングし、その4回のサンプリングの平均値を図7の平均化回路151で求め、これをディジタル電流検出信号iD1としている。
【0012】
このように、従来の電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置は、ΔΣ型AD変換器がPWMキャリア周期に等しい期間に、電流検出信号のディジタル化した結果を複数回サンプリングし、その平均値をディジタル電流検出信号として出力する構成とすることにより、電動機に供給される駆動電流の平均値を求め、電動機の制御性の向上を実現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭59−211132号公報(第3頁、図4、図5)
【特許文献2】特許第3412434号(第6頁、図1、図4、第7頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、一般的にΔΣ型AD変換器は、1ビットのAD変換器でサンプリングを行い、平均化処理によりAD変換データを得る方式であるため、AD変換データには量子化誤差が含まれており、サンプリング回数が少ない程、AD変換精度が悪いことが知られている。
従来のΔΣ型AD変換器を用いたAD変換装置は、一定時間内でのサンプリング回数は限られており、アナログ信号EAに対するディジタル信号EDのAD変換精度が悪いという問題があった。これに対してAD変換精度を上げるためにサンプリング回数を増やすとAD変換時間が増大するという問題があった。
また、従来の電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置は、PWMキャリア周期内にAD変換を完了してディジタル信号EDを更新しなければならないので、サンプリング回数は限られており、このため電流検出精度が悪いという問題があった。
さらに、ΔΣ型AD変換器の各々変換時間にはばらつきがあり、複数のΔΣ型AD変換器を用いたAD変換装置では、従来のAD変換装置のように、単にAD変換完了信号の論理積をとるだけでは対応できない場合があり、どのAD変換器の変換時間が長いか、調整時に判別し、それにあわせて調整が必要など余分な作業が発生するなどの問題があった。
【0015】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、精度の良いAD変換装置、前記AD変換装置を用いた電流検出器及び前記電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、アナログ信号がそれぞれ入力され、AD変換スタート信号によりAD変換を開始し、AD変換の終了によりAD変換完了信号をそれぞれ出力する複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nと、前記複数のΔΣ型AD変換器から出力されるAD変換完了信号71,72,7nから1つの割込み信号7を生成する論理回路と、前記割込み信号7の受信により前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nのAD変換データ61,62,6nを読み込み演算処理を行うディジタル信号処理手段21とを備えたAD変換装置において、前記ΔΣ型AD変換器511,512,51nはΔΣ変調器41と前記ΔΣ変調器41の出力EOに複数並列に接続されたAD変換データ生成部181,182,18mと、前記ディジタル信号処理手段21から出力される起動トリガ23により動作を開始するタイミング生成回路20と、前記タイミング生成回路20から時間差をもって出力される複数のAD変換スタート信号121,122,12mと、前記AD変換スタート信号に基づき前記AD変換データ生成部181,182,18mから出力される複数のAD変換データ161,162,16mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換データ161,162,16mから1つのAD変換データ61を選択するAD変換データセレクタ241と、
前記複数のAD変換データ生成部から出力される複数のAD変換完了信号171,172,17mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換完了信号171,172,17mから1つのAD変換完了信号71を選択するAD変換完了信号セレクタ251と、前記AD変換スタート信号121入力によりカウントを開始するAD変換時間計測カウンタ221と、前記AD変換完了信号171によりAD変換時間を保持するAD変換時間保持部231を備え、前記論理回路は前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nより出力される複数のAD変換時間81を比較し、前記AD変換時間が最も長いΔΣ型AD変換器を選択する比較器22と、
前記比較器22から出力される割込み選択信号8に基づき前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51mより出力される複数のAD変換完了信号71,72,77nから1つの割込み信号を選択する割込み信号セレクタ19で構成されたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記AD変換データ生成部はディジタルフィルタ141と平均化回路151で構成され、ディジタルフィルタ141は前記ΔΣ変調器41の出力EOを複数回サンプリングし、平均化回路151はその平均値を出力することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記ΔΣ型変調器41はアナログ信号101と前記EOの減算を行う減算回路401と、この減算結果を積分する積分回路411と、この積分結果と基準レベルを比較し、クロック421に同期して符号パルスEOを出力する比較回路431から構成されることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、電動機11に供給される電流を検出し検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置における電流検出器において、
前記電流検出器は前記電動機11に供給される電流をアナログ的に検出して電流検出信号iA1,iA2を出力する電流検出手段13と、前記電流検出信号をディジタル化してディジタル電流検出信号iD1,iD2を出力するAD変換装置からなり、前記AD変換装置が請求項1記載のAD変換装置から構成されたことを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、電動機11と、前記電動機の回転子と固定子の相対的な位置を検出する位置検出手段と、前記電動機に供給される電流を検出する電流検出器と、検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置において、前記電流検出器が請求項4記載の電流検出器からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、請求項3に記載の発明によると、ディジタル信号のサンプリング回数を増やすことができ、AD変換精度を向上させることができる。また、調整時にAD変換時間が最も長いAD変換器を選別するなど余分な作業を行わなくてよい。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によると、ディジタル信号のサンプリング回数を増やすことができ、AD変換精度を向上させることができる。
また、請求項4に記載の発明によると、高精度なAD変換装置を用いているので、精度良く電流検出を行うことができる。
また、請求項5に記載の発明によると、精度良く電流検出を行うことができるので、高精度なディジタルサーボ制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例を示すAD変換装置の回路図
【図2】第1実施例における動作を示すタイミング図
【図3】本発明の第2実施例を示す電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図
【図4】第2実施例における動作を示すタイミング図
【図5】従来のAD変換装置の回路図
【図6】従来のAD変換装置における動作を示すタイミング図
【図7】従来のΔΣ型AD変換器の回路図
【図8】従来の電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図
【図9】従来の電流検出器における動作を示すタイミング図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の第一実施例を示すAD変換装置の回路図である。
図1において、511はΔΣ型AD変換器で、アナログ信号101を入力しΔΣ変調器41にてΔΣ変調を行い、符号パルスEOを出力する。また、ΔΣ型変調器41はアナログ信号101とEOの減算を行う減算回路401と、この減算結果を積分する積分回路411と、この積分結果と基準レベルを比較し、クロック421に同期して符号パルスEOを出力する比較回路431から構成される。
141はディジタルフィルタであり、符号パルスEOを入力しディジタル信号として出力する。151は平均化回路であり、ディジタルフィルタ141から出力されるディジタル信号の、AD変換スタート信号121の入力からAD変換が完了しAD変換完了信号171が出力されるまでの期間での平均値を求め、AD変換データ161として出力する。181はAD変換データ生成部で、ディジタルフィルタ141と平均化回路151で構成される。
また、AD変換データ生成部181と同じ構成の回路が181,182,・・・,18mと複数チャネル並列に比較回路431の出力に接続されており、AD変換データ生成部182はAD変換スタート信号122を受けてAD変換完了信号172およびAD変換データ162を出力し、AD変換データ生成部18mはAD変換スタート信号12mを受けてAD変換完了信号17mおよびAD変換データ16mを出力する。20はタイミング生成回路であり、ディジタル信号処理手段21から入力される起動トリガ23により動作を開始し、AD変換スタート信号121,122,・・・,12mおよびチャネル選択信号91を出力する。241はAD変換データセレクタで、チャネル選択信号91 が1の時にAD変換データ161を,2の時にAD変換データ162を,・・・,mの時にAD変換データ16mを選択し、AD変換データ61を出力する。251はAD変換完了信号セレクタで、チャネル選択信号91が1の時に AD変換完了信号171を,2の時にAD変換完了信号172を,・・・,mの時にAD変換完了信号17mを選択し、AD変換完了信号71を出力する。221はAD変換時間計測カウンタであり、AD変換スタート信号121の立ち上がりで0値に一度クリアされ、その後システムクロックCPによりカウントアップを行い、AD変換完了信号171の立ち上がりでAD変換時間保持部231にカウンタ値を保持し、AD変換時間81を出力する。
【0022】
同様にΔΣ型AD変換器511と同じ構成の回路が511,512,・・・,51nと複数個並列に並んでおり、ΔΣ型AD変換器512はアナログ信号102と起動トリガ23を入力し、AD変換データ62とAD変換完了信号72とAD変換時間82を出力し、ΔΣ型AD変換器51nはアナログ信号10nと起動トリガ23を入力し、AD変換データ6nとAD変換完了信号7nとAD変換時間8nを出力する。
22は比較器で、AD変換時間81,82,・・・,8nを比較し、最もAD変換時間の遅いものを判別し、割込み選択信号8を出力する。19は割込み信号セレクタで、割込み信号8が1の時にAD変換完了信号71を,2の時にAD変換完了信号72を,・・・,nの時にAD変換完了信号7nを選択し、割込み信号7を出力する。ディジタル信号処理手段21は割込み信号7の立ち下がりを受けると、AD変換データ61,62,・・・,6nを読み込み、演算処理を行う。
【0023】
本発明が従来技術と異なる部分は、ΔΣ型AD変換器511がタイミング生成回路20とAD変換時間計測カウンタ221とAD変換時間保持部231とAD変換データセレクタ241とAD変換完了信号セレクタ251を備えた部分と、AD変換データ生成部が複数チャネル並列化された部分181,182,・・・,18mと、複数のΔΣ型AD変換器からなるAD変換装置において割込み信号を生成する論理回路が比較器22と割込み信号セレクタ19で構成されている部分である。
【0024】
次に本発明の動作について説明する。
図2は第一実施例における動作を示すタイミング図である。
図2において、AD変換スタート信号121の立ち上がりでΔΣ型AD変換器511における1チャネル目のAD変換が開始する。同様にAD変換スタート信号121から一定の時間差をもってAD変換スタート信号122,・・・,12mが発生し、2チャネル目,・・・,mチャネル目のAD変換が順次開始する。
1チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は1チャネル目を選択しており、AD変換データ161はAD変換データ61へAD変換完了信号171はAD変換完了信号71へ出力される。
同様に2チャネル目,・・・,mチャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は2チャネル目,・・・,mチャネル目を選択しており、AD変換データ162,・・・,16mはAD変換データ61へAD変換完了信号172,・・・,17mはAD変換完了信号71へ出力される。また、AD変換時間81はAD変換完了信号171の立ち上がりで保持される。
【0025】
同様に、ΔΣ型AD変換器512,・・・,51nよりそれぞれAD変換データ62,・・・,6nおよびAD変換完了信号72,・・・,7nおよびAD変換時間82,・・・,8nが出力される。ここで、ΔΣ型AD変換器511,512,・・・,51nは製造バラツキによりAD変換時間にかなりの差を生じるが、割込み選択信号8により最も遅いAD変換完了信号が割込み信号7として選択されるので、全てのAD変換が完了したときにディジタル信号処理手段21に割込みをかけ、AD変換データ61,62,・・・,6nを読み込むことができる。
また、図に示すように、m回割込みが発生する間に1チャネルあたりAD変換を1回完了すればよいので、1チャネルあたりのAD変換時間を長く取ることができ、その分サンプリング回数を増やすことが可能になる。
【0026】
このように、AD変換データ生成部181,182,・・・,18mを複数チャネル並列化した構成となっているので、サンプリング回数を増やすことでき、AD変換精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の第二実施例を示す電流検出器を用いたディジタルサーボ制御装置のシステム構成図である。
図3において、電動機11は、三相電動機を例にとって以下説明を行う。
まず、電流検出手段13は、三相電動機11に供給される三相の内2つの電流をアナログ的に検出し、第一の電流検出信号iA1,第二の電流検出信号iA2を出力する。
第一のΔΣ型AD変換器511と第二のΔΣ型AD変換器512はそれぞれ第一の電流検出信号iA1,第二の電流検出信号iA2を入力し、それぞれディジタル化を行い、第一のディジタル電流検出信号iD1,第二のディジタル電流検出信号iD2を出力する。
位置検出手段12は、電動機11の回転子と固定子の相対的な位置を検出し、その位置検出信号S1を出力する。
22は比較器で、AD変換時間81,82を比較し、AD変換時間の遅いものを判別し、割込み選択信号8を出力する。19は割込み信号セレクタで、割込み選択信号8が1の時にAD変換完了信号71を,2の時にAD変換完了信号72を選択し、割込み信号7を出力する。ディジタル信号処理手段9は第一のディジタル電流検出信号iD1,第二のディジタル電流検出信号iD2,位置検出信号S1およびディジタル指令信号C1を入力し、割込み信号7の立ち下がりを受けると、これらを演算処理することにより第一のPWM指令信号P1,第二のPWM指令信号P2,第三のPWM指令信号P3,第四のPWM指令信号P4,第五のPWM指令信号P5,第六のPWM指令信号P6を出力する。また、ディジタル信号処理手段9は電流アンプ、速度アンプ、位置アンプとPWM発生回路とを含んだ回路をディジタル回路、またはDSP,マイコン等を用いたソフトウェアにより構成される。
電力変換手段10は、三相ブリッジ構成の6組のパワー素子と還流ダイオードにより構成され、それぞれに対応した第一,第二,第三,第四,第五,第六のPWM指令信号P1,P2,P3,P4,P5,P6に応じて電動機印加電圧をPWM制御する。
本発明が従来技術と異なる部分は、タイミング生成回路20とAD変換時間計測カウンタ221とAD変換時間保持部231とAD変換データセレクタ241とAD変換完了信号セレクタ251を備え、AD変換データ生成部が複数チャネル並列化されたΔΣ型AD変換器181,182,・・・,18mを適用した部分と、
割込み信号を生成する論理回路が比較器22と割込み信号セレクタ19で構成されている部分である。
【0028】
次に本発明の動作について説明する。
図4は第二実施例における動作を示すタイミング図である。
図4において、第一のΔΣ型AD変換器511と第二のΔΣ型AD変換器512は、AD変換データ生成部181,182,183,184を4チャネル並列化した場合を例にとって以下説明を行う。
AD変換スタート信号121の立ち上がりでΔΣ型AD変換器511における1チャネル目のAD変換が開始する。同様にAD変換スタート信号121から一定の時間差をもってAD変換スタート信号122,・・・,124が発生し、2チャネル目,・・・,4チャネル目のAD変換が順次開始する。予めAD変換時間を予測して周期を設定しておき、設定値に従いチャネルを切り換えることによって1チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は1チャネル目を選択し、AD変換データ161はAD変換データ61へAD変換完了信号171はAD変換完了信号71へ出力される。
同様に2チャネル目,・・・,4チャネル目のAD変換が完了した時、チャネル選択信号91は2チャネル目,・・・,4チャネル目を選択しており、AD変換データ162,・・・,164はAD変換データ61へAD変換完了信号172,・・・,174はAD変換完了信号71へ出力される。また、AD変換時間81はAD変換完了信号171の立ち上がりで保持される。
【0029】
同様に、ΔΣ型AD変換器512よりAD変換データ62およびAD変換完了信号72およびAD変換時間82が出力される。ここで、ΔΣ型AD変換器511,512は製造バラツキによりAD変換時間にかなりの差を生じるが、割込み選択信号8により遅い方のAD変換完了信号が割込み信号7として選択されるので、両方のAD変換が完了したときにディジタル信号処理手段9に割込みをかけ、ディジタル電流検出信号iD1,iD2を読み込むことができる。
第一のPWM指令信号P1は、PWMキャリア毎に生成されるPWM信号であり、電流は第一の電流検出信号iA1である。
ΔΣ型AD変換器511は、上記PWMキャリアの周期にADデータ生成部のチャネル数を掛けた期間に、iA1をディジタル化したディジタル信号を複数回サンプリングする。この図4では、例としてPWMキャリアの周期の4倍の期間に16回のサンプリングを行う場合について示している。
すなわち、iA1のディジタル化したディジタル信号を16回サンプリングし、その16回のサンプリングの平均値を平均化回路151が求め、これをディジタル電流検出信号iD1としている。
【0030】
このように、AD変換データ生成部を4チャネル並列化した構成となっているので、サンプリング回数を4倍に増やすことでき、電流検出精度を向上させることができる。

【符号の説明】
【0031】
1,9,21 ディジタル信号処理手段
2,7 割込み信号
3 ANDゲート
4,121,122,・・・,12m AD変換スタート信号
5,51,52,511,512,513 ΔΣ型AD変換器
8 割込み選択信号
10 電力変換手段
11 電動機
12 位置検出手段
13 電流検出手段
19 割込み信号セレクタ
20 タイミング生成回路
22 比較器
23 トリガ信号
41 ΔΣ変調器
61,62,・・・,6n,161,162,・・・,16m AD変換データ
71,72,・・・,7n AD変換完了信号
81,82,・・・,8n AD変換時間
91 チャネル選択信号
101,102,・・・,10n アナログ信号
141 ディジタルフィルタ
151 平均化回路
171,172,・・・,17m,301,302,・・・,30n AD変換完了信号
181,182,・・・,18m AD変換データ生成部
201,202,・・・,20n AD変換器
221 AD変換時間計測カウンタ
231 AD変換時間保持部
241 AD変換データセレクタ
251 AD変換完了信号セレクタ
401 減算回路
411 積分回路
421 クロック
431 比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号がそれぞれ入力され、AD変換スタート信号によりAD変換を開始し、AD変換の終了によりAD変換完了信号をそれぞれ出力する複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nと、前記複数のΔΣ型AD変換器から出力されるAD変換完了信号71,72,7nから1つの割込み信号7を生成する論理回路と、前記割込み信号7の受信により前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nのAD変換データ61,62,6nを読み込み演算処理を行うディジタル信号処理手段21とを備えたAD変換装置において、
前記ΔΣ型AD変換器511,512,51nはΔΣ変調器41と前記ΔΣ変調器41の出力EOに複数並列に接続されたAD変換データ生成部181,182,18mと、前記ディジタル信号処理手段21から出力される起動トリガ23により動作を開始するタイミング生成回路20と、
前記タイミング生成回路20から時間差をもって出力される複数のAD変換スタート信号121,122,12mと、前記AD変換スタート信号に基づき前記AD変換データ生成部181,182,18mから出力される複数のAD変換データ161,162,16mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換データ161,162,16mから1つのAD変換データ61を選択するAD変換データセレクタ241と、
前記複数のAD変換データ生成部から出力される複数のAD変換完了信号171,172,17mと、前記タイミング生成回路20から出力されるチャネル選択信号91に基づき前記複数のAD変換完了信号171,172,17mから1つのAD変換完了信号71を選択するAD変換完了信号セレクタ251と、
前記AD変換スタート信号121入力によりカウントを開始するAD変換時間計測カウンタ221と、
前記AD変換完了信号171によりAD変換時間を保持するAD変換時間保持部231を備え、
前記論理回路は前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51nより出力される複数のAD変換時間81を比較し、前記AD変換時間が最も長いΔΣ型AD変換器を選択する比較器22と、
前記比較器22から出力される割込み選択信号8に基づき前記複数のΔΣ型AD変換器511,512,51mより出力される複数のAD変換完了信号71,72,77nから1つの割込み信号を選択する割込み信号セレクタ19で構成されたことを特徴とするAD変換装置。
【請求項2】
前記AD変換データ生成部はディジタルフィルタ141と平均化回路151で構成され、前記ディジタルフィルタ141は前記ΔΣ変調器41の出力EOを複数回サンプリングし、前記平均化回路151はその平均値を出力することを特徴とする請求項1記載のAD変換装置。
【請求項3】
前記ΔΣ型変調器41はアナログ信号101と前記EOの減算を行う減算回路401と、この減算結果を積分する積分回路411と、この積分結果と基準レベルを比較し、クロック421に同期して符号パルスEOを出力する比較回路431から構成されることを特徴とする請求項1記載のAD変換装置。
【請求項4】
電動機11に供給される電流を検出し検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置における電流検出器において、
前記電流検出器は前記電動機11に供給される電流をアナログ的に検出して電流検出信号iA1,iA2を出力する電流検出手段13と、前記電流検出信号をディジタル化してディジタル電流検出信号iD1,iD2を出力するAD変換装置からなり、前記AD変換装置が請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のAD変換装置から構成されたことを特徴とする電流検出器。
【請求項5】
電動機11と、前記電動機の回転子と固定子の相対的な位置を検出する位置検出手段と、前記電動機に供給される電流を検出する電流検出器と、検出電流信号とディジタル指令信号C1に基づき演算処理を行うディジタル信号処理手段9と、前記ディジタル信号処理手段の演算処理結果に基づき電動機印加電圧をPWM制御する電力変換手段10とを備えたディジタルサーボ制御装置において、
前記電流検出器が請求項4記載の電流検出器からなることを特徴とするディジタルサーボ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−206567(P2010−206567A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50136(P2009−50136)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】