説明

ADP−受容体抗血小板物質と抗高血圧薬の組合せ投与による脳梗塞の予防

【課題】新規な脳梗塞予防の製剤の組み合わせ。
【解決手段】 本発明は、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質(たとえばクロピドグレル)と、抗高血圧薬、たとえばアンギオテンシンAII拮抗剤(イルベサルタンなど)、ACE抑制剤(ホシノプリルなど)またはNEP/ACE抑制剤(オマパトリラトなど)を組合せて患者に投与することによる、脳梗塞の予防法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質[たとえばクロピドグレル(clopidogrel)]と、抗高血圧薬、たとえばアンギオテンシンII拮抗剤[イルベサルタン(inrbesartan)など]ACE抑制剤[ホシノプリル(fosinopril)など]またはNEP/ACE抑制剤[オマパトリラト(omapatrilat)など]の新規組合せ、並びに該組合せを使用する脳梗塞の発病を予防または抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チクロピジン(ticlopidine)塩酸塩は、血小板凝集抑制剤としてU.S.特許No.4591592に開示され、米国において商品名「Ticlid(登録商標)」でロッシュ・ラボラトリーズから市販され、そして式:
【化1】

の構造と、5−[(2−クロロフェニル)メチル]−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン塩酸塩の化学名を有する。
【0003】
クロピドグレルは、チエノ−[3,2−c]ピリジン誘導体であって、式:
【化2】

の構造と、(4)−(S)−α−(o−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5−酢酸メチルの化学名を有し、かつその医薬的に許容しうる酸付加塩、好ましくは水素硫酸塩(hydrogen sulfate salt)を包含し、そして、AubertらのU.S.特許No.4529596およびBadorcらのU.S.特許No.4847265において、血小板凝集抑制活性および抗血栓活性を有することから、動脈および静脈血栓症の抑制または予防に有用であることが開示されている。
【0004】
HerbertらのU.S.特許No.5576328には、心筋梗塞、不規則または持続性の狭心症、経皮トランスルミナル(transluminal)冠血管形成(PTCA)後の急性再閉塞、PTCA後の再狭窄、血栓発作、一過性脳虚血発作、可逆虚血性神経学的欠損、および間欠性跛行などの虚血性事態(ischemic event)の二次予防に、クロピドグレルを使用しうることが開示されている。
1997年8月21日公開のWO97/29753に、クロピドグレルおよびアスピリンを含有する医薬組成物が開示されている。
【0005】
BernhartらのU.S.特許No.5270317に、アンギオテンシンII拮抗剤活性を有する一連のN−置換複素環式誘導体が開示されている。Bernhartらの開示によれば、かかる化合物は、種々の心臓血管疾患、特に高血圧、心不全および静脈不全の処置、並びに緑内障、糖尿病網膜症および中枢神経系の種々の疾患の処置に使用できるとある。また、かかる化合物は、他の活性な作用物質、たとえば精神安定薬、β−ブロッキング化合物、カルシウム拮抗剤、または利尿薬と組合せて使用できる旨が開示されている。
【0006】
DelaneyらのU.S.特許No.4722810および5223516には、選択的中性エンドペプチダーゼ抑制剤が教示され、そして、DelaneyらのU.K.特許出願No.2207351およびHaslangerらのU.S.特許No.4749688には、高血圧の処置のため、選択的中性エンドペプチダーゼ抑制剤単独使用またはこれとアンギオテンシン変換酵素抑制剤との組合せ使用が開示されている。選択的中性エンドペプチダーゼ抑制剤とアンギオテンシン変換酵素抑制剤の組合せ投与による、うっ血性心不全の処置が、SeymourのU.S.特許No.5225401に開示されている。
【0007】
中性エンドペプチダーゼおよびアンギオテンシン変換酵素抑制活性の両方を有する化合物については、FlynnらのU.S.特許No.5366973、ヨーロッパ特許出願No.481522およびPCT特許出願WO93/16103およびWO94/10193;Warshawskyらのヨーロッパ特許出願No.534363、534396および534492;Founie−Zaluskiのヨーロッパ特許出願No.524553;Barrishらのヨーロッパ特許出願No.599444;Karanewskyのヨーロッパ特許出願No.595610;Roblらのヨーロッパ特許出願No.629627;RoblのU.S.特許No.5362727およびU.S.特許出願No.153854(1993年11月18日出願)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によれば、哺乳類の脳梗塞の発病を予防または抑制する方法が提供され、該方法において、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質(たとえばクロピドグレル)を、脳梗塞(血栓発作としても公知)の発病を抑制するのに治療上有効な量で、抗高血圧薬と組合せて投与する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
さらに本発明は、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質(たとえばクロピドグレル)と抗高血圧薬の新規組合せを提供する。
本発明の組合せおよび方法で使用しうるADP−受容体ブロッキング物質としては、クロピドグレル、チクロピジン等が挙げられる。
本発明の組合せおよび方法で、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と組合せて使用しうる抗高血圧薬としては、アンギオテンシンII拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)抑制剤またはNEP/ACE抑制剤が挙げられる。
【0010】
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と抗高血圧薬の組合せは、ADP−誘発血小板凝集の抑制以外のメカニズムによって作用するが、このことは、血小板凝集、血栓形成および虚血性事態に伴う病気の処置において驚くべきかつユニークなコンセプトであり、この点は該組合せが、組合せ成分のそれぞれ単独を用いたときに得られると思われるものを越える、付加的な抗血小板凝集効果、抗虚血効果および抗血栓効果を付与しうるからである。副作用が少なくかつ商品コストの低減に拘らず、所望の結果を達成する上で、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と抗高血圧薬のそれぞれを低量で使用しうることが予想される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に示す定義は、特別な場合に特に他の限定がない限り、本明細書を通じて用いる語句に適用される。
語句“ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質”とは、血小板ADP−受容体ブロッキングによってADP−誘発血小板凝集を抑制する、クロピドグレルおよび/またはチクロピジンを含む薬物を指称し、他のメカニズムで血小板凝集を抑制するアスピリンなどの薬物は含まない。
【0012】
本発明で用いる語句“クロピドグレル”は、遊離酸形状のクロピドグレル、その酢酸エステルを含むエステル、および/またはその水素硫酸塩を含む全ての医薬的に許容しうる塩を包含する。
本発明で用いる語句“チクロピジン”は、チクロピジンの全ての医薬的に許容しうる塩を包含し、塩酸塩が挙げられる。
本発明で用いる語句“脳梗塞”とは、一次または二次血栓発作を指称する。
【0013】
語句“抗高血圧薬”とは、抗血小板物質と共に、一次または二次脳梗塞の発病の抑制に寄与する、アンギオテンシンII拮抗剤、ACE抑制剤およびNEP/ACE抑制剤を含む種々の抗高血圧作用物質を指称することを理解すべきである。
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質(たとえばクロピドグレルまたはチクロピジン)と抗高血圧薬の組合せは、相互の重量比が約1000:1〜0.001:1、好ましくは約0.05:1〜100:1の範囲内となるように使用される。
【0014】
本発明での使用に好適なアンギオテンシンII受容体拮抗剤(本発明において、アンギオテンシンII拮抗剤またはAII拮抗剤とも称する)としては、これらに限定されるものでないが、イルベサルタン(irbesartan)(そのKおよびNa塩などの塩を含む)(BernhartらのU.S.特許No.5270317に開示)、ロサータン(losartan)、バルサータン(valsartan)、テルミサータン(telmisartan)、カンデサータン(candesartan)、タソサータン(tasosartan)またはエプロサータン(eprosartan)が挙げられ、イルベサルタンまたはロサータンが好ましい。
【0015】
本発明で使用しうるアンギオテンシン変換酵素抑制剤としては、置換プロリン誘導体などのメルカプト(−S−)成分を含有するもの、たとえばOndettiらのU.S.特許No.4046889に開示のいずれか[カプトプリル(captopril)、すなわち、1−[(2S)−3−メルカプト−2−メチルプロピオニル]−L−プロリンが好ましい];および置換プロリン化合物のメルカプトアシル誘導体、たとえばU.S.特許No.4316906に開示のいずれか[ゾフェノプリル(zofenopril)が好ましい]が挙げられる。
【0016】
本発明で使用しうるメルカプト含有ACE抑制剤の他の具体例としては、「Clin. Exp. Pharmacol. Physiol.」(10:131、1983年)に開示のレンチアプリル(rentiapril)[サンテンのフェンチアプリル(fentiapril)];並びに式:
【化3】

のピボプリル(pivopril)、および式:
【化4】

のYS980が挙げられる。
【0017】
本発明で使用しうるアンギオテンシン変換酵素抑制剤の他の具体例としては、U.S.特許No.4374829に開示のいずれか[N−(1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニル−L−プロリン、すなわちエナラプリル(enalapril)が好ましい];U.S.特許No.4452790に開示のホスホネート置換アミノもしくはイミノ酸またはその塩のいずれか[(S)−1−[6−アミノ−2−[[ヒドロキシ−(4−フェニルブチル)ホスフィニル]オキシ]−1−オキソヘキシル]−L−プロリンまたはセロナプリル(ceronapril)が好ましい];U.S.特許No.4168267に開示のホスフィニルアルカノイルプロリン化合物[ホシノプリル(fosinopril)が好ましい];U.S.特許No.4337201に開示のホスフィニルアルカノイル置換プロリン化合物のいずれか;およびU.S.特許No.4432971に開示のホスホンアミデート化合物が挙げられる。
【0018】
本発明で使用しうるACE抑制剤の他の具体例としては、ヨーロッパ特許No.80822および60668に開示のビーチャムのBRL36378;「CA.」(102:72588v)および「Jap. J. Pharmacol.」(40:373、1986年)に開示のチュウガイのMC−838;U.K.特許No.2103614に開示のチバ−ガイギーのCGS14824[3−([1−エトキシカルボニル−3−フェニル−(1S)−プロピル]アミノ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1−(3S)−ベンズアゼピン−1・酢酸HCl]およびU.S.特許No.4473575に開示の同CGS16617[3(S)−[[(1S)−5−アミノ−1−カルボキシペンチル]アミノ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸];「Eur. Therap. Res.」(39:671、1986年)および(40:543、1986年)に開示のセタプリル(cetapril)(ダイニッポンのアラセプリル(alacepril));ヨーロッパ特許No.79−022および「Curr. Ther. Res.」(40:74、1986年)に開示のラミプリル(ramipril)(ヘキスト);「Arzneimittelforschung」(35:1254、1985年)に開示のRu44570(ヘキスト);「J. Cardiovasc. Pharmacol.」(9:39、1987年)に開示のシラザプリル(cilazapril)(ホフマン・ラ・ロッシュ);「FEBS Lett.」(165:201、1984年)に開示のRo 31−2201(ホフマン−ラ・ロッシュ);U.S.特許No.4385051に開示のリシノプリル(lisinopril)(メルク)、インダラプリル(indalapril)(デラプリル(delapril));「J. Cardiovasc. Pharmacol.」(5:643、655、1983年)に開示のインドラプリル(indolapril)(シェリング);「Acta. Pharmacol. Toxicol.」(59(Supp.5):173、1986年)に開示のスピラプリル(spirapril)(シェリング);「Eur. J. Clin. Pharmacol.」(31:519、1987年)に開示のペリンドプリル(perindopril)(セルビア);U.S.特許No.4344949に開示のキナプリル(quinapril)(ワーナー・ランバート)および「Pharmacologist」(26:243、266、1984年)に開示のCI925(ワーナー・ランバート)([3S−[2[R(*)R(*)]]3R(*)]−2−[2−[[1−(エトキシカルボニル)−3−フェニルプロピル]アミノ]−1−オキソプロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシ−3−イソキノリンカルボン酸HCl);「J. Med. Chem.」(26:394、1983年)に開示のWY−44221(ウィース)が挙げられる。
【0019】
好ましいACE抑制剤は、ホシノプリル、並びにカプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、ベナザプリル、トランドラプリル、フェンチアプリル、ラミプリルおよびモエキシプリル(moexipril)である。
またNEP/ACE抑制剤(選択的または二元作用中性エンドペプチダーゼ抑制剤とも称す)も、中性エンドペプチダーゼ(NEP)抑制活性およびアンギオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有する点で、本発明で使用することができる。本発明での使用に好適なNEP/ACE抑制剤の具体例としては、U.S.特許No.5508272、5362727、5366973、5225401、4722810、5223516、5552397、4749688、5504080、5612359および5525723およびヨーロッパ特許出願No.0481522、0534363A2、534396および534492に開示のものが挙げられる。
【0020】
上記U.S.特許において、好ましいものとして指定されているNEP/ACE抑制剤が好ましい。特に好ましいのは、クロピドグレルと組合せる、アンギオテンシンII拮抗剤のロサータンもしくはイルベサルタン、またはNEP/ACE抑制剤のオマパトリラト(U.S.特許No.5508272に開示)である。
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質は、ACE抑制剤またはAII拮抗剤またはNEP/ACE抑制剤との組合せ使用において、該抗血小板物質とACE抑制剤またはAII拮抗剤またはNEP/ACE抑制剤の重量比が約0.1:1〜50:1、好ましくは約0.2:1〜20:1の範囲内となるように使用される。
【0021】
また本発明に従って使用される薬物または化合物は、脳梗塞を予防または治療する公知の治療剤の1種以上といっしょに又は組合せて使用しうることも理解されよう。かかる公知治療剤としては、たとえば、これらに限定されるものでないが、HMG CoAレダクターゼ抑制剤を含むなどのコレステロール降下薬、好ましくはプラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトバスタチン、フルバスタチンおよびセリバスタチンが挙げられる。
【0022】
本発明での使用に好適な他のコレステロール降下薬としては、これらに限定されるものでないが、フィブリン酸誘導体などの抗高リポたんぱく血剤、たとえばフェノフィブレート、ジェムフィブロジル、クロフィブレート、ベザフィブレート、シプロフィブレート、クリノフィブレート等、U.S.特許No.3674836に開示のプロブコールおよび関連化合物(プロブコールおよびジェムフィブロジルが好ましい);胆汁酸金属イオン封鎖剤、たとえばコレスチラミン、コレスチポールおよびDEAE−セファデックス(Secholex(登録商標)、Polidexide(登録商標);並びにクロフィブレート、リポスタビル(ローン−ポウレンク)、エーザイE−5050(N−置換エタノールアミン誘導体)、イマニキシル(imanixil)(HOE−402)、テトラヒドロリプスタチン(THL)、イスチグマスタニルホスホリルコリン(istigmastanylphosphorylchoine)(SPC、ロッシュ)、アミノシクロデキストリン(タナベ・セイヤク)、アジノモトAJ−814(アズーレン誘導体)、メリナミド(スミトモ)、サンド58−035、アメリカン・ジアナミドCL−277082およびCL−283546(ジ置換尿素誘導体)、ニコチン酸、アシピモックス(acipimox)、アシフラン(acifran)、ネオマイシン、U.S.特許No.4759923に開示の如くポリ(ジアリルメチルアミン)誘導体、U.S.特許No.4027009に開示の如く第4アミンポリ(ジアリルジメチルアンモニウム・クロリド)およびイオノン化合物、および他の公知の血清コレステロール降下薬が挙げられる。
【0023】
本発明の組合せの中に、必要に応じてアスピリンを含ませてもよい。
本発明方法の実施に際し、ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質を抗高血圧薬と組合せて、哺乳類、たとえばサル、イヌ、ネコ、ラット、ヒト等に投与することができ、またそのものを通常の全身性投与製剤、たとえば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤または注射剤に組込むことができる。またかかる投与剤形は、必要な担体物質、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、抗菌剤、増量材(たとえばマンニトール)、酸化防止剤(アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム)等を含有するだろう。経口投与剤形が好ましいが、非経口用剤形も十分満足な結果が得られる。
【0024】
投与量は、患者の年令、体重および症状、並びに投与方式、投与剤形、生活規制および所望の結果に応じて調整しなければならない。
クロピドグレルは、約10〜1000mg、好ましくは約25〜600mg、最も好ましくは約50〜100mgの経口1日用量で使用される。
チクロピジンは、1997PDRに記載されるような1日用量で(250mg、1日2回)使用されてよいが、本発明によれば、約10〜1000mg、好ましくは約25〜800mgの1日用量が採用されてよい。
【0025】
選択的または二元作用中性エンドペプチダーゼ抑制剤は、1日当り約0.03〜100mg/体重(kg)の用量範囲で投与することができ、1日当り約0.3〜300mg/体重(kg)の用量範囲が好ましい。アンギオテンシンII拮抗剤またはACE抑制剤は、約0.001〜75mg/体重(kg)の用量範囲で投与することができ、約0.1〜15mg/体重(kg)の用量範囲が好ましく、あるいはフィジシャンズ・デスク・リファレンス(the Physicians’ Desk Reference)1998(52版)で指図されている。
経口投与の場合、HMG CoAレダクターゼ抑制剤を、フィジシャンズ・デスク・リファレンス1998(52版)に示されるように、たとえばロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチンまたはセリバスタチンに採用される用量で、たとえば約0.1〜2000mg、好ましくは約0.2〜200mgの範囲内の量で用いることにより、満足な結果を得ることができる。
【0026】
好ましくは経口投与剤形、たとえば錠剤またはカプセル剤は、クロピドグレルまたはチクロピジンを約10〜500mgの量で、抗高血圧薬を約0.1〜1000mgの量で含有する。
他の血清コレステロール降下薬が存在するとき、かかる降下薬を、そのそれぞれについて、フィジシャンズ・デスク・リファレンスに示されるような通常の用量で、たとえば約0.1〜7500mg、好ましくは約2〜4000mg範囲内の量で使用される。
【0027】
アスピリンが存在する場合(ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質および抗高血圧薬と共に使用)、アスピリンを約1〜500mg、好ましくは約20〜100mg範囲内の1日用量で、かつアスピリンとADP−受容体ブロッキング抗血小板物質の重量比が約0.02:1〜1000:1、好ましくは約0.04:1〜20:1の範囲内となるように使用する。
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と抗高血圧薬、および必要に応じて脳梗塞の予防または治療用薬物は、同じ経口投与剤形の中に混合して使用する、あるいは別々の経口投与剤形にて同じに投与されてよい。
【0028】
かかる組成物(製剤組合せ)は、上述の投与剤形にて1日1回の単一用量または2〜4回の分割用量で投与されてよい。患者への投与は低用量組合せで開始し、徐々に増量して高用量組合せとすることが得策と思われる。
上記範囲内の活性物質の一方または両方を含有し、残りが許容製薬実務に係る生理学的に許容しうる担体または他の物質である各種寸法の、たとえば総量約2〜2000mgの錠剤を製造することができる。これらの錠剤は、勿論、分別用量に備えるための刻み目を入れることができる。ゼラチンカプセル剤も同様に処方することができる。
【0029】
また液体製剤は、活性物質の一方または両方を、1〜4杯の茶さじで所望用量が得られるように、医薬投与に許容される通常の液体ビヒクルに溶解または懸濁することにより、製造することができる。
かかる投与剤形は、1日当り1〜4回投与の生活規制で患者に投与することができる。
他の改変によれば、用量スケジュールをより細かく調整するため、活性物質を別々に個々の投与単位で、同時にまたは注意深く時間調整して、投与されてもよい。活性物質のそれぞれは、上記と同様な方法で、分離単位投与剤形にて別々に処方することができる。
【0030】
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と抗高血圧薬および任意成分の固定した組合せがより便宜であり、また特に経口投与用の錠剤またはカプセル剤形状において好ましい。
組成物の処方に際し、上記量の活性物質を、個々の種類に単位投与剤形にて、許容製薬実務に従い、生理学的に許容しうるビヒクル、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、フレーバー等と調合する。
【0031】
錠剤の中に組込むことができる佐剤の具体例は以下のもの、すなわち、トラガカントゴム、アカシアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムまたはセルロースなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、アスパルターメ(aspartame)、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤;オレンジ、ペパーミント、冬緑油またはチェリーなどのフレーバーである。単位投与剤形がカプセル剤のとき、それは上記種類の物質以外に、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。コーチングとして、あるいは投与単位の物理形態を改変するのに、種々の他の物質を存在させてもよい。たとえば、錠剤またはカプセル剤をシェラック、シュガーまたはこれらの両方で被覆してもよい。シロップのエリキシル剤は、活性化合物、担体の水、アルコール等、可溶化剤のグリセロール、甘味剤のスクロース、保存剤のメチルおよびプロピルパラベン、染料およびフレーバー(たとえばチェリーまたはオレンジ)を含有しうる。
【0032】
上記活性物質の幾つかは、一般的に公知の、医薬的に許容しうる塩、たとえばアルカリ金属塩および他の一般的塩基性塩または酸付加塩等を形成する。従って、塩基物質への言及は、親化合物に実質的に等価することが知られている一般の塩を包含することが意図される。
上述の製剤は、長期にわたって、すなわち、脳梗塞の可能性が続く限り、投与される。かかる製剤にあって、2週間ごと、1週間ごと、1月ごとに所定用量を付与しうる徐放性剤形も採用することができる。最小限度の薬理効果を達成するのに、少なくとも3日間の投与期間が必要である。
【実施例】
【0033】
次に挙げる実施例は、本発明の好ましい具体例である。
血小板凝集や血栓形成を抑制する、経口投与に好適な製剤を、下記の記載に従って製造する。
【0034】
実施例1
それぞれ75mgのクロピドグレル(以下に記載)および150mgのイルベサルタン(1998PDRに記載)を含有するカプセル剤を製造する。
成分 量(mg/カプセル)
クロピドグレル・水素硫酸塩 ..... 75
ラクトース(含水、NF) ..... 約108
微結晶セルロース(NF) ..... 約13
予めゲル化したスターチ(NF) ..... 10.5
ポリエチレングリコール6000(NF) ..... 7.5
水添ヒマシ油(NF) ..... 3.3
【0035】
上記含水ラクトース、クロピドグレル・水素硫酸塩、予備ゲル化スターチおよびポリエチレングリコール6000を、ビン型ブレンダーにて7rpmで約15分間ブレンドすることにより、クロピドグレル錠剤を製造する。
次にブレンド混合物を篩にかけ(スクリーン1.25mm)、ビン型ブレンダーにて7rpmで約30分間ブレンドする。かかるブレンドを、練り装置を備えたローラー圧縮機を用いて圧縮する。ミルド粗砕物は1mmから20mm範囲の粒子を含有し、これをビン型ブレンダーにて7rpmで、微結晶セルロース(1.25mmスクリーンに通す)および水添ヒマシ油と共に約30分間ブレンドする。このブレンドを、240mg錠剤に圧縮する。
かかるクロピドグレル錠剤と、別途150mgイルベサルタン錠剤を粉砕して粉末とし、これを単一カプセルに充填する。
【0036】
実施例2
それぞれ75mgのクロピドグレル・水素硫酸塩(実施例1に記載の錠剤)および20mgのホシノプリル(1998PDRに記載の錠剤)を含有するカプセル剤を、該クロピドグレル錠剤とホシノプリル錠剤を粉砕し、次いで得られる粉末を単一カプセルに充填することによって製造する。
【0037】
実施例3および4
血小板凝集および血栓形成を抑制し、経口投与に好適な製剤を、以下の記載に従って製造する。
それぞれ75mgのクロピドグレル・水素硫酸塩(実施例1によって製造)と約10mgのオマパトリラト(実施例3)または約20mgのオマパトリラト(実施例4)を含有するカプセル剤を、下記成分から製造する。
【0038】
量(mg/カプセル)
成分 実施例3 実施例4
クロピドグレル(実施例1) 75 75
オマパトリラト 10 20
ラクトース(含水、NF) 約151.1 約99.9
微結晶セルロース(NF) 50.0 50.0
予備ゲル化スターチ(NF) 25.0 25.0
スターチ・グリコール酸ナトリウム(NF) 12.5 12.5
コロイダル二酸化珪素(NF) 5.0 5.0
ステアリン酸マグネシウム(NF) 0.6 0.6
精製水(USP) 適量 適量
または注射用水(USP) 適量 適量
カプセルシェル(灰色、不透明、サイズ#0) 1カプセル 1カプセル
【0039】
上記オマパトリラトおよびコロイダル二酸化珪素を適当なブレンダーにて、含水ラクトース、微結晶セルロース、予備ゲル化スターチ、および一部のスターチ・グリコール酸ナトリウムとブレンドする。得られるブレンドを水といっしょに湿式粗砕する。この潤滑粗砕物を適当な乾燥機で乾燥する。該粗砕物に残部のスターチ・グリコール酸ナトリウムを加え、混合する。粗砕物にステアリン酸マグネシウムを加え、混合する。得られるブレンドを、粉砕したクロピドグレル錠剤といっしょに、カプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADP−受容体ブロッキング抗血小板物質と抗高血圧薬を含む、脳梗塞を予防、抑制または治療するための製剤組合せ。
【請求項2】
クロピドグレル、その遊離カルボン酸型、またはその医薬的に許容される塩であるADP−受容体ブロッキング抗血小板物質、並びにテルミサータン、バルサータン、カンデサータン、タソサータン、エプロサータン、ホシノプリル、リシノプリル、カプトプリル、キナプリル、トランドラプリル、ラミプリル、ベナザプリル、およびオマパトリラトから選択される抗高血圧薬を含む、脳梗塞を予防、抑制または治療するための製剤組合せ。
【請求項3】
抗高血圧薬が、ホシノプリル、ラミプリルまたはオマパトリラトである請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
クロピドグレルと抗高血圧薬の重量比が、0.001:1〜1000:1の範囲内にある請求項2に記載の組合せ。
【請求項5】
クロピドグレルと、ホシノプリル、ラミプリルまたはオマパトリラトである抗高血圧薬の重量比が、0.001:1〜1000:1の範囲内にある請求項2に記載の組合せ。
【請求項6】
脳梗塞が、一次または二次虚血性事態である請求項1または2に記載の製剤組合せ。

【公開番号】特開2010−159300(P2010−159300A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98640(P2010−98640)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2000−554379(P2000−554379)の分割
【原出願日】平成11年6月9日(1999.6.9)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】