説明

ALCパネルの製造方法

【課題】ALCパネルの表面を均一に押圧し、ケバ立ちによる微細凹凸を均一に減少させることができ、優れた外観品質のALCパネルを得ることができる。
【解決手段】
蒸気養生後のALCパネル10の微細凹凸13を有する表面11にローラー20を押し付け、ローラー20によりALCパネル10の幅Wよりも短い幅でALCパネル10の表面11を押圧して圧密面を形成する工程を備え、この押圧工程において、微細凹凸13の凸部先端からALCパネル10へのローラー20の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として押圧するALCパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物の外壁材等として用いられるALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)の製造では、一般的に、ケイ石、生石灰、セメントなどの主成分と発泡剤であるアルミ粉末を混合して原料スラリーを作成し、その原料スラリーを補強鉄筋が配置されている型枠内に注入し、発泡・硬化させて半硬化状態になった軽量気泡コンクリートブロックを得る。その後、その軽量気泡コンクリートブロックを型枠内から取り出し、所定の張力で緊張させたピアノ線等のワイヤカッターで所定の大きさのパネル状に切断し、半硬化状態のALCパネルを得る。次いで、その切断された半硬化状態のALCパネルをオートクレーブで蒸気養生した後、適宜表面加工等を施して製品化される。
【0003】
この製造工程において、半硬化状態のALCパネルの表面には、ワイヤカッターで切断される過程で、微細な凹凸のケバ立ちが鱗状に生ずる。一般的な切断方法であるワイヤ固定緊張方式においては、切断時の半硬化状態のALCパネルの硬さ等にもよるが、凸部の生成周期は、切断時の半硬化状態のALCパネルとワイヤカッターとの相対移動方向に1mmから3mm程度の距離となり、又、凸部の頂部と凹部の底部との高低差は0.2mmから1mm程度となる。このケバ立ちは、切断時の半硬化状態のALCパネルの硬さ以外の要因でも、その大きさや発生周期が変化し、例えば切断に使用するワイヤカッターの直径、切断時の半硬化状態のALCパネルとワイヤカッターとの相対速度等が影響することが分かっている。
【0004】
ALCパネルの表面に生じたケバ立ちは、そのままの状態では外観品質を低下させる原因となる。また、ALCパネルの施工後に塗料などの表面仕上げ材を塗布する場合に、ケバ立ちが多過ぎると、表面仕上げ材の付着力を阻害してしまうので、ケバ立ちを箒などで払い落とす等の下地処理が必要となり、施工効率が低下する。そのため、ALCパネルの表面に表面加工を施して、ケバ立ちを減少させる処理が行われる。
【0005】
斯様なALCパネルの表面のケバ立ちを減少させる技術として、特許文献1には、上下に相対し、パネル幅よりも長い水平な一対のローラー間にALCパネルを通過させ、ALCパネルの表面をローラーで押圧する方法が開示されている。前記技術では、上部ローラーと下部ローラーの表面を弾性体で被覆し、押圧機構で上部ローラーを下向きに押圧しながら上部ローラーと下部ローラー間にALCパネルを通過させ、ALCパネル表面のケバ立ちを折り取って減少させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-300720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の方法は、ALCパネルの幅よりも長いローラーでALCパネルの全面を一度に押圧するものであるが、係る構成では、ALCパネルに変形や捩れ等がある場合に、ローラーによる押圧力をALCパネルの表面に均一に付加することが困難となる。そのため、ALCパネル表面のケバ立ちによる微細凹凸を均一に減少させることができず、外観品質が損なわれてしまう。また、特許文献1のローラーでALCパネルの全面を一度に押圧する構成では、ローラーが長く接触面が広いため、高い圧力で押圧すると部分的に圧力が集中してALCパネルが破壊される場合もある。そのため、ローラーの圧力をケバ立ちを折り取る程度の圧力とせざるを得ないが、斯様な構成ではケバ立ちの減少程度が制限され、ALCパネルの表面を平滑にすることは難しい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、ALCパネルに変形や捩れ等がある場合にも、押圧する領域において、ALCパネルの表面を均一に押圧し、ケバ立ちによる微細凹凸を均一に減少させることができると共に、局所的に押圧力を加えてALCパネル表面を圧密して十分に平滑にすることができ、優れた外観品質のALCパネルを得ることができるALCパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のALCパネルの製造方法は、蒸気養生後のALCパネルの微細凹凸を有する表面に回転体を押し付け、前記回転体により前記ALCパネルの幅よりも短い幅で前記ALCパネルの表面を押圧して圧密面を形成する工程を備えることを特徴とする。
前記構成では、回転体によりALCパネルの幅よりも短い幅でALCパネルの表面を押圧するので、ALCパネルの変形や捩れ等の影響を回避して押圧することが可能となり、ALCパネルの表面全面或いは表面の一部など押圧する領域において、ALCパネルの表面を均一に押圧し、ケバ立ちによる微細凹凸を均一に減少させることができると共に、局所的に押圧力を加えてALCパネル表面を圧密して十分に平滑にすることができる。従って、押圧された面は光沢を有する従来にない平滑面が得られ、優れた外観品質のALCパネルを得ることができる。
【0010】
また、本発明のALCパネルの製造方法は、前記押圧工程において、前記微細凹凸の凸部先端から前記ALCパネルへの前記回転体の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として押圧することを特徴とする。
前記構成により、ケバ立ちの凸部を除去できると同時に凹部までも除去することができ、所要領域のALCパネル表面の微細凹凸をほぼ完全に除去し、高度な平滑化を図ることができる。従って、平滑化の向上により、ALCパネルの外観品質を向上することができる。
【0011】
また、本発明のALCパネルの製造方法は、前記押圧工程により、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成し、前記平滑化領域と前記残存する微細凹凸領域を所定パターンで表面に有するALCパネルとすることを特徴とする。
前記構成では、平滑化領域を形成することにより、ケバ立ちの多過ぎによる下地処理の必要など施工効率の低下を防止できると同時に、微細凹凸領域を残存させることにより、微細凹凸領域を意匠的に利用し、平滑化領域と微細凹凸領域を表面に有する美観に優れたALCパネルを得ることができる。
【0012】
また、本発明のALCパネルの製造方法は、前記押圧工程において、押圧領域の幅が30mm未満である前記回転体の複数を押圧領域間の幅が20mm〜100mmとなるように間隔を開けて並列配置し、前記複数の回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成することを特徴とする。
前記構成では、所定間隔を開けて並列配置される複数の回転体を同時に押し付けて押圧することにより、平滑化領域と微細凹凸領域による美観に優れたALCパネルを効率的な製造工程で得ることができる。また、押圧領域の幅が30mm未満である回転体の複数を押圧領域間の幅が20mm〜100mmとなるように間隔を開けて並列配置することにより、微細凹凸の残存する領域が過多になることを防止できると共に、ALCパネルの表面の大きな凹凸や捩れの影響で押圧が不十分な箇所が生じて外観品質を損ねることを確実に防止できる。
【0013】
また、本発明のALCパネルの製造方法は、前記回転体を押し付けて押圧する、若しくは所定間隔を開けて並列配置される複数の前記回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成する第1の工程と、前記回転体若しくは前記複数の回転体とは別の前記回転体を押し付けて押圧する、又は前記回転体若しくは前記複数の回転体とは別の所定間隔を開けて並列配置される複数の前記回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記第1の工程による前記微細凹凸の残存する領域に、前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成する第2の工程を行うことを特徴とする。
前記構成では、別の回転体若しくは別の複数の回転体による押圧により、ALCパネルの表面加工の自由度を増大することができると共に、より複雑で多様な模様のALCパネルを得ることができ、ALCパネルの意匠選択の自由度を大幅に増大することができる。
【0014】
また、本発明のALCパネルの製造方法は、前記押圧工程において、前記ALCパネルの微細凹凸を有する一方側の表面に前記回転体を押し付けて押圧し、前記一方側の表面に前記微細凹凸を全面に亘って平滑化した領域を形成すると共に、前記ALCパネルの微細凹凸を有する他方側の表面に前記回転体を押し付けて押圧し、前記他方側の表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成し、前記一方側の表面に全面に亘って平滑化領域を有し、且つ前記他方側の表面に平滑化領域と微細凹凸残存領域を所定パターンで有するALCパネルとすることを特徴とする。
前記構成では、意匠的な模様が求められるALCパネルの表面に平滑化領域と微細凹凸の残存する領域による美観に優れる模様を形成することができると共に、隠れる側の表面など意匠的な美観の要求されない表面では、不要なケバ立ちを可能な限り抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のALCパネルの製造方法は、回転体によりALCパネルの幅よりも短い幅でALCパネルの表面を押圧するので、ALCパネルの変形や捩れ等の影響を回避して押圧することが可能となり、ALCパネルの表面全面或いは表面の一部など押圧する領域において、ALCパネルの表面を均一に押圧し、ケバ立ちによる微細凹凸を均一に減少させることができると共に、局所的に押圧力を加えてALCパネル表面を圧密して十分に平滑にすることができる。従って、優れた外観品質のALCパネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のALCパネルの製造工程を説明する斜視説明図。
【図2】回転体と回転体で転圧されるALCパネル表面の状態を示す断面説明図。
【図3】(a)は回転体による転圧加工前のALCパネル表面のケバ立ちの状態を示す説明図、(b)は回転体による転圧加工後のALCパネル表面のケバ立ちの状態を示す説明図。
【図4】第2実施形態のALCパネルの製造工程を説明する斜視説明図。
【図5】第3実施形態のALCパネルの製造工程を説明する斜視説明図。
【図6】第4実施形態のALCパネルの製造工程を説明する斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態のALCパネルの製造方法〕
本発明による第1実施形態のALCパネルの製造方法について説明する。先ず、通常のALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)の製造と同様に、例えばケイ石、生石灰、セメントなどの主成分と発泡剤であるアルミ粉末を混合して原料スラリーを作成し、原料スラリーを補強鉄筋が配置されている型枠内に注入し、発泡・硬化させて半硬化状態の軽量気泡コンクリートブロックを得る。その後、軽量気泡コンクリートブロックを型枠内から取り出し、所定の張力で緊張させたピアノ線等のワイヤカッターで所定の大きさのパネル状に切断し、半硬化状態のALCパネルを得る。次いで、その切断された半硬化状態のALCパネルをオートクレーブで蒸気養生し、硬化状態のALCパネルを得る。この蒸気養生により硬化状態とされたALCパネルの表面には、ワイヤカッターで切断される過程で生じた微細な凹凸のケバ立ちが残存している。
【0018】
そして、図1及び図2に示すように、蒸気養生後のALCパネル10の微細凹凸13を有する表面11に、回転体である円柱形のローラー20を押し付け、ローラー20で転圧することにより、ALCパネル10の表面11を押圧して圧密面を形成するように加工する。ローラー20は、軸支部21で回転可能に保持されており、ALCパネル10に押し付けられ、そのままALCパネル10に対して圧力を付与しながら移動することにより、押圧加工面12を形成するようになっている。図1の例では、ALCパネル10の長手方向(図中の二点鎖線矢印の方向)にローラー20を移動して転圧加工している。
【0019】
前記押圧の圧力は、ALCパネル10の表面11のケバ立ち、即ち微細凹凸13の状況により適宜設定するが、圧密面を形成可能で且つALCパネル10を押し潰さない圧力とすることが可能であり、0.1〜1.0N/mm程度とすると好適である。また、概ねALCパネル表面11の微細凹凸13の先端からALCパネル10へのローラー20の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として調整して押圧すると好適である。また、食い込み深さを一定量にするため、例えば0.5mmとなるようにストッパーを付けて置くことも好適である。押付け圧力を発生する加圧機構としては、エアシリンダー、バネなどを適宜使用すると良好であり、エアシリンダー又はバネ等で軸支部21を付勢することにより、ローラー20をALCパネル表面11に押し付けることが可能である。特に、エアシリンダーを用いると、圧力調整を容易に行えるのでより好ましい。
【0020】
ローラー20の軸方向の長さであるローラー20の幅に対応する押圧領域の幅Pは、押圧の進行方向に対して直交する方向の長さであるALCパネル10の幅Wよりも短くなっており、ローラー20をALCパネル10の長さ方向に進行させ、その後にローラー20をALCパネル10の幅方向にずらしてALCパネル10の長さ方向に進行させる動作を複数回繰り返して順次加工するようになっている。この押圧の繰り返し動作では、ローラー20を押圧領域の幅Pと同一かそれ以内の距離だけずらして行う等により、ALCパネル表面11の全面に亘って押圧加工面12を形成する構成、又は、ローラー20の押圧領域の幅Pを超える距離だけずらして行う等により、ALCパネル表面11に微細凹凸13を平滑化した領域と微細凹凸13の残存する領域を形成し、所定パターンの平滑化領域と微細凹凸領域を表面11に有するALCパネル10とする構成とすることが可能である。
【0021】
ローラー20の幅或いはこれと対応する押圧領域の幅Pは、30mm以上であるとALCパネル10の表面11の大きな凹凸や捩れの影響で転圧が不十分な箇所が生じ、外観品質を損ねる可能性が高くなることから、30mm未満とすることが好ましい。また、ローラー20の材質は、ALCパネル表面11に適当な圧力を加えて接触させても変形などの不具合を生じない強度を有するものを選定すればよいが、金属を用いることが好ましい。
【0022】
図3(a)はローラー20による転圧加工前のALCパネル表面11のケバ立ちの状態、即ち微細凹凸13を有する領域を示しており、図3(b)はローラー20による転圧加工後のALCパネル表面11のケバ立ちの状態、即ちローラー20で転圧されて平滑化領域となっている押圧加工面12を示している。図3(b)に示す通り、ローラー20の転圧でケバ立ちが殆ど分からなくなるまで平滑化することが可能である。本実施形態のローラー20の転圧により、ケバ立ちは折り取られて、脆弱材であるALCパネル10の母材に押し込まれて平滑化が達成され、押圧加工面12は圧密された状態で非常に平滑な面となる。
【0023】
第1実施形態のALCパネル10の製造方法では、ローラー20によりALCパネル10の幅Wよりも短い幅PでALCパネル表面11を押圧するので、ALCパネル10の変形や捩れの影響を回避して押圧することが可能となり、ALCパネル表面11の全面或いは一部など押圧する領域において、ALCパネル10の表面11を均一に押圧し、ケバ立ちによる微細凹凸13を均一に減少させることができる。また、局所的に押圧力を加えてALCパネル表面を圧密して十分に平滑にすることができる。従って、優れた外観品質のALCパネル10を得ることができる。
【0024】
また、押圧工程において、微細凹凸13の凸部先端からALCパネル10へのローラー20の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として押圧する場合には、ケバ立ちの凸部を除去できると同時に凹部までも除去することができ、所要領域のALCパネル表面11の微細凹凸13をほぼ完全に除去し、高度な平滑化を図ることができる。また、平滑化領域と微細凹凸13の残存する領域を表面11に有するALCパネル10とする場合には、平滑化領域により、ケバ立ちの多過ぎによる下地処理の必要など施工効率の低下を防止できると同時に、所定パターンの微細凹凸13の残存する領域と平滑化領域により、意匠的な美観に優れるALCパネル10を提供することができる。
【0025】
〔第2実施形態のALCパネルの製造方法〕
次に、本発明による第2実施形態のALCパネルの製造方法について説明する。第2実施形態では、図4に示すように、第1実施形態に於ける回転体であるローラー20及び軸支部21に代えて、回転体として球体30を用い、これを回転可能に保持する球体保持部31を用いる。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0026】
第2実施形態では、図4に示すように、蒸気養生後のALCパネル10の微細凹凸を有する表面11に、回転体である球体30を押し付け、球体30で転圧することにより、ALCパネル10の表面11を押圧して圧密面を形成するように加工する。球体30は、略半球形の球体保持部31で回転可能に保持されており、ALCパネル10に押し付けられ、そのままALCパネル10に対して圧力を付与しながら移動することにより、押圧加工面12を形成するようになっている。
【0027】
前記押圧の圧力は、ALCパネル10の表面11のケバ立ち、即ち微細凹凸13の状況により適宜設定するが、圧密面を形成可能で且つALCパネル10を押し潰さない圧力とすることが可能であり、0.1〜1.0N/mm程度とすると好適である。また、概ねALCパネル表面11の微細凹凸13の先端からALCパネル10へのローラー20の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として調整して押圧すると好適である(図3参照)。押付け圧力を発生する加圧機構としては、第1実施形態と同様に、エアシリンダー、バネなどを適宜使用し、エアシリンダー又はバネ等で球体保持部31を付勢する。
【0028】
球体30による押圧領域の幅Pは、押圧の進行方向に対して直交する方向の長さであるALCパネル10の幅Wよりも短くなっており、球体30をALCパネル10の長さ方向に進行させ、その後に球体30をALCパネル10の幅方向にずらしてALCパネル10の長さ方向に進行させる動作を複数回繰り返して順次加工する。この押圧の繰り返し動作では、球体30を押圧領域の幅Pと同一かそれ以内の距離だけずらして行う等により、ALCパネル表面11の全面に亘って押圧加工面12を形成する構成、又は、ローラーの押圧領域の幅Pを超える距離だけずらして行う等により、ALCパネル表面11に微細凹凸13を平滑化した領域と微細凹凸13の残存する領域を形成し、所定パターンの平滑化領域と微細凹凸領域を表面11に有するALCパネル10とする構成とすることが可能である。尚、球体30による押圧領域の幅Pを30mm未満とすると好ましいこと、球体30の材質は所要のものであれば適宜であって金属が好ましいことは第1実施形態と同様である。
【0029】
第2実施形態のALCパネル10の製造方法も第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0030】
〔第3実施形態のALCパネルの製造方法〕
次に、本発明による第3実施形態のALCパネルの製造方法について説明する。第3実施形態では、図5に示すように、第1実施形態の単独のローラー20に代えて、第1実施形態に於ける回転体であるローラー20aを所定間隔を開けて複数並列配置し、この並列配置のローラー20aをALCパネル10の微細凹凸13を有する表面11に同時に押し付けて押圧するものである。所定間隔を開けて並列配置される複数(図示例では3個)のローラー20aは、それぞれ回転可能に軸支部21aで保持されており、ALCパネル10の表面11に同時に押し付けられ、そのままALCパネル10に対して圧力を付与しながら移動することにより、複数条の押圧加工面12を形成するようになっている。
【0031】
前記押圧の圧力は、第1実施形態と同様に、適宜設定可能であるが、圧密面を形成可能で且つALCパネル10を押し潰さない圧力とすることが可能であり、0.1〜1.0N/mm程度とすると好適である。また、概ねALCパネル表面11の微細凹凸13の先端からALCパネル10へのローラー20aの食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として調整して押圧すると好適である。また、押付け圧力を発生する加圧機構も第1実施形態と同様の構成とすることが可能である。
【0032】
ローラー20aの軸方向の長さである各ローラー20aの幅に対応する押圧領域の幅Pは、押圧の進行方向に対して直交する方向の長さであるALCパネル10の幅Wよりも短くなっており、一群の回転体である複数のローラー20aをALCパネル10の長さ方向に同時に進行させ、その後に、一群の回転体である複数のローラー20aをALCパネル10の幅方向にずらしてALCパネル10の長さ方向に進行させる動作を複数回繰り返して順次加工する。この押圧の繰り返し動作では、直前の押圧動作でローラー20a・20a間に残存した微細凹凸13の領域(ローラー20による押圧領域間の幅Lの領域)を直後の押圧動作で押圧して圧密面を形成し平滑化するように複数のローラー20aをずらして行う等により、ALCパネル表面11の全面に亘って押圧加工面12を形成する構成、又は、(押圧領域の幅P×回転体であるローラー20aの個数)+(回転体であるローラー20aによる押圧領域間の幅L×(回転体であるローラー20aの個数−1))の幅を超える距離だけ複数のローラー20aをずらして行う等により、ALCパネル表面11に微細凹凸13を平滑化した領域と微細凹凸13の残存する領域を形成し、所定パターンの平滑化領域と微細凹凸領域を表面11に有するALCパネル10とする構成とすることが可能である。
【0033】
尚、ALCパネル10の幅Wの全体に対応して、回転体であるローラー20aを所定間隔を開けて複数並列配置し、一度の押圧加工により、所定パターンの平滑化領域と微細凹凸領域を表面11に有するALCパネル10を形成するようにすることも可能である。
【0034】
各ローラー20aの幅或いはこれと対応する押圧領域の幅Pは、30mm以上であるとALCパネル10の表面11の大きな凹凸や捩れの影響で転圧が不十分な箇所が生じ、外観品質を損ねる可能性が高くなることから、30mm未満とすることが好ましい。また、ローラー20a・20a間の距離に対応する回転体による押圧領域間の幅Lは、同様に、狭すぎるとALCパネル10の表面11の大きな凹凸や捩れの影響で転圧が不十分な箇所が生じ、外観品質を損ねる可能性が高くなることから、20mm以上とすることが好ましく、又、広すぎると、微細凹凸13の残存する領域が多過ぎることになるので、100mm以下とすることが好ましい。また、ローラー20aの材質は、第1実施形態と同様であり、その他の構成も第1実施形態と同様である。
【0035】
第3実施形態のALCパネル10の製造方法は、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、所定間隔を開けて並列配置される複数のローラー20aを同時に押し付けて押圧することにより、平滑化領域と微細凹凸領域を有する美観に優れたALCパネル10を効率的な製造工程で得ることができる。また、微細凹凸13の残存する領域が過多になるこうとを防止できると共に、ALCパネル表面11の大きな凹凸や捩れの影響で転圧が不十分な箇所が生じて外観品質を損ねることを確実に防止できる。
【0036】
〔第4実施形態のALCパネルの製造方法〕
次に、本発明による第4実施形態のALCパネルの製造方法について説明する。第4実施形態では、図6に示すように、第3実施形態の一群の回転体である複数のローラー20aによる押圧工程と、第1実施形態のローラー20と同一の単独のローラー20bによる押圧工程を併せて行うものである。前記一群の回転体である複数のローラー20a及びその軸支部21aの構成は第3実施形態と同一であり、ローラー20b及びその軸支部21bの構成は第1実施形態のローラー20及び軸支部21と同一である。尚、本実施形態で特に言及しない構成は、第1、第3実施形態と同様の構成を適宜採用することができる。
【0037】
本実施形態では、例えば一群の回転体である所定間隔を開けて並列配置されている複数のローラー20aをALCパネル10の長さ方向に同時に進行させ、複数のローラー20aをALCパネル表面11に同時に押し付けて押圧することにより、ALCパネルの表面に圧密面で微細凹凸13を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成する。また、必要に応じて、一群の回転体である複数のローラー20aをALCパネル10の幅方向に所要幅ずらしてALCパネル10の長さ方向に進行させる動作を複数回繰り返して順次加工し、ALCパネルの表面に微細凹凸13を平滑化した領域と微細凹凸13の残存する領域を形成する。
【0038】
その後、複数の回転体である複数のローラー20aとは別の回転体である単独のローラー20bを、前記複数のローラー20aによる押圧工程で微細凹凸13が残存した領域において、ローラー20bをALCパネル表面11に押し付けて押圧しながらALCパネル10の長さ方向に進行させ、幅P1の帯状の押圧領域を形成する。これにより、複数のローラー20aによる押圧工程で微細凹凸13が残存した領域の一部分を平滑化して、圧密面で微細凹凸13を平滑化した領域と微細凹凸の残存する領域を形成し、複数のローラー20aで形成された圧密面の平滑化領域と、単独のローラー20bで形成された圧密面の平滑化領域と、微細凹凸13の残存する領域を表面11に有するALCパネル10を得る。
【0039】
尚、単独のローラー20bで先に押圧加工を施した後に、所定間隔を開けて並列配置された複数のローラー20aによる押圧加工を施す構成、或いは単独のローラー20bで先に押圧加工を施した後に、押圧領域の幅が異なる単独のローラーで押圧加工を施す構成、或いは所定間隔を開けて並列配置された複数のローラー20aで押圧加工を施した後に、異なる間隔を開けて並列配置された複数のローラー、若しくはローラー20aとは幅の異なるローラーを並列配置された複数のローラー、若しくはこれらを組み合わせた複数のローラーで押圧加工を施す構成としてもよい。
【0040】
第4実施形態のALCパネル10の製造方法は、第1、第3実施形態と同様の効果を奏する。また、別のローラー20b若しくは別の複数のローラーによる押圧により、ALCパネル10の表面加工の自由度を増大することができると共に、より複雑で多様な模様のALCパネル10を得ることができ、ALCパネル10の意匠選択の自由度を大幅に増大することができる。
【0041】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも包含し、下記変形例も包含する。
【0042】
例えば上記第1〜第4実施形態では、ローラー20又は球体30の回転体を移動してALCパネル10の表面11を押圧する構成としたが、ローラー20又は球体30の回転体を定置し、この回転体に対してALCパネル10を移動して表面11を押圧されるようにする構成とすることも可能である。即ち、ローラー20の回転方向にローラー20とALCパネル10を相対移動させる構成、或いは球体30とALCパネル10を相対移動させる構成等、回転体とALCパネル10を相対的に移動させる構成であればよい。また、第3、第4実施形態では回転体としてローラー20a、20bを用いる構成により説明したが、第3、第4実施形態ではローラー20a、20bに代えて、球体30等の他の回転体を用いることも可能である。
【0043】
また、ローラー20又は球体30の回転体がALCパネル10の表面11との摩擦で回転する構成とする他に、ローラー20又は軸支した球体30の軸を回動するモーター等を設け、これらを動力で回動して押圧する構成としてもよい。また、本発明の回転体には、ローラー20又は球体30以外にも、回転可能でALCパネル10の表面11を押圧可能なものであれば適用可能であり、その構造、大きさ、形状などは適時変更することが可能である。
【0044】
また、ALCパネル10の表面11に対する回転体による押圧加工は、ALCパネル10の表側の表面11と裏側の表面11の双方にすると好適であるが、表側と裏側の一方のみに回転体による押圧加工を施す構成とすることも可能である。また、表側の表面11と裏側の表面11の双方に回転体による押圧加工を施す場合に、表側と裏側の表面11に異なる表面加工を施してもよい。例えば表側と裏側の一方の表面11を所定パターンの平滑化領域と微細凹凸領域を有する表面11とし、他方の表面11を全面が平滑化領域である表面11とする構成とすると、所要の表面11に美観に優れる模様を形成すると共に、不要なケバ立ちを可能な限り抑制することができて好適である。また、ALCパネル表面11に平滑化領域と微細凹凸領域を設ける場合に、回転体によって加工する平滑化領域は必要に応じて適宜設定可能である。
【0045】
〔実施例〕
第1実施形態のALCパネルの製造方法により製造したALCパネルの例について説明する。ケバ立ちの高さである微細凹凸の高さをレーザー変位計で測定し、測定結果を十点平均粗さ(JISB0601)で表した値(ここでは十点平均粗さの単位をmmとした。測定基準距離は40mmとした)が、0.6mmであるALCパネルに対して、ローラー20による転圧加工を実施した。ALCパネルの寸法は幅600mm、厚さ100mmである。加工条件として、ローラー20を直径50mm、幅10mmの円柱形とし、転圧対象となるALCパネル表面のケバ立ち先端(微細凹凸の凸部)に対するローラー20の食い込み深さを0.5mm、押圧力を30N(ローラー20の幅方向の単位長さあたりの押圧力は3N/mm)とした。
【0046】
その結果、ローラー20による転圧加工後の平滑化領域におけるケバ立ち高さ(微細凹凸の高さ)は、十点平均粗さで0.1mmとなり、その加工面には目視によるケバ立ちは認められず、非常に平滑であった。また、加工面に内部気泡の露出は認められず、ローラー20の転圧により良好な圧密面が形成されていた。また、加工中に切削粉などは発生せず、粉塵による作業環境の悪化は認められなかった。
【0047】
〔比較例〕
上記実施例に用いたものと同じALCパネル(ケバ立ちの十点平均粗さ0.6mm)に対して、特許文献1(特開平11-300720)で開示された方法により加工した。加工条件として、ローラーを直径150mmとして表面を厚さ10mmの白ゴムによりライニングすると共に、その押圧力をエアシリンダーによる押し付けにて1,800N(ローラーの長さ方向の単位長さあたりの押し付け力は3N/mmであり、実施例の単位長さ当たりの押圧力に合わせた)
【0048】
その結果、加工後のケバ立ち高さ(微細凹凸の高さ)は、十点平均粗さで0.45mmとなり、加工面のケバ立ちを目視で観察したところ、加工前後で大きな違いを確認出来なかった。加工面に内部気泡の露出は認められなかったが、ケバ立ちが折り取られた跡が凹部として残り、外観品質が低下した。また、加工後のALCパネル表面には折り取られたケバ立ちが粉となって多量に残っていた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば建築物の外壁材等として用いられるALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)を製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…ALCパネル 11…ALCパネルの表面 12…押圧加工面 13…微細凹凸 20、20a、20b…ローラー 21、21a、21b…軸支部 30…球体 31…球体保持部 W…ALCパネルの幅 P、P1…押圧領域の幅 L…回転体の押圧領域間の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気養生後のALCパネルの微細凹凸を有する表面に回転体を押し付け、前記回転体により前記ALCパネルの幅よりも短い幅で前記ALCパネルの表面を押圧して圧密面を形成する工程を備えることを特徴とするALCパネルの製造方法。
【請求項2】
前記押圧工程において、前記微細凹凸の凸部先端から前記ALCパネルへの前記回転体の食い込み深さを0.1mm以上1.0mm未満として押圧することを特徴とする請求項1記載のALCパネルの製造方法。
【請求項3】
前記押圧工程により、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成し、前記平滑化領域と前記残存する微細凹凸領域を所定パターンで表面に有するALCパネルとすることを特徴とする請求項1又は2記載のALCパネルの製造方法。
【請求項4】
前記押圧工程において、押圧領域の幅が30mm未満である前記回転体の複数を押圧領域間の幅が20mm〜100mmとなるように間隔を開けて並列配置し、
前記複数の回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成することを特徴とする請求項3記載のALCパネルの製造方法。
【請求項5】
前記押圧工程において、
前記回転体を押し付けて押圧する、若しくは所定間隔を開けて並列配置される複数の前記回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記ALCパネルの表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成する第1の工程と、
前記回転体若しくは前記複数の回転体とは別の前記回転体を押し付けて押圧する、又は前記回転体若しくは前記複数の回転体とは別の所定間隔を開けて並列配置される複数の前記回転体を同時に押し付けて押圧することにより、前記第1の工程による前記微細凹凸の残存する領域に、前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成する第2の工程を行うことを特徴とする請求項3又は4記載のALCパネルの製造方法。
【請求項6】
前記押圧工程において、
前記ALCパネルの微細凹凸を有する一方側の表面に前記回転体を押し付けて押圧し、前記一方側の表面に前記微細凹凸を全面に亘って平滑化した領域を形成すると共に、
前記ALCパネルの微細凹凸を有する他方側の表面に前記回転体を押し付けて押圧し、前記他方側の表面に前記微細凹凸を平滑化した領域と前記微細凹凸の残存する領域を形成し、
前記一方側の表面に全面に亘って平滑化領域を有し、且つ前記他方側の表面に平滑化領域と微細凹凸残存領域を所定パターンで有するALCパネルとすることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載のALCパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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