説明

APローカルの動的スイッチング

APローカルの動的スイッチングを実現するための技術が、レイヤ2スイッチングを含む。これは、特定の無線局からのトラフィックをローカルに切り換えるべきかどうかをAPが決定できるようにするのに十分な無線局関連データをAPに提供することにより達成することができる。或いは、無線局は、トラフィック自体に基づいてトラフィックをローカルで切り換えるかどうかを決定することができる。例えば、APが音声トラフィックをローカルに切り換えて、ボイスオーバーIPなどの音声送信にとって特に悪影響な待ち時間を避けることが望ましい。ローカルに切り換えるべきでないトラフィックは、上流へレイヤ2トンネリングされる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アクセスポイント(AP)は、無線クライアントがネットワークに接続するために使用する装置である。実施構成によって、APが独立型エンティティとして機能する場合もあれば、分散ハードウェアと共同して機能する場合もある。分散ハードウェアは、APの管理及び無線クライアントへのネットワークの接続性の提供に使用する無線スイッチを含むことができる。無線ドメインとは、関連する情報を交換するとともにこの情報を使用して十分な情報を得た上での決定を行うように構成された無線スイッチのグループのことであると言うことができる。公知の装置としては、ネットワーク無線設備の一部である(無線AP又はクライアント装置などの)局が挙げられる。
【0002】
Trapeze Networks社(Trapeze)は、MOBILITY DOMAIN(商標)無線ドメインにおいてMOBILITY POINT(登録商標)(MP(登録商標))APを使用する。MP(登録商標)APは、MOBILITY EXCHANGE(登録商標)(MX(登録商標))無線スイッチに結合される。Trapezeは、MOBILITY DOMAIN(商標)を使用して、MX(登録商標)スイッチの集合に問い合わせを行う。このMX(登録商標)スイッチの集合は、RF環境と局関連情報とを共有する。MX(登録商標)スイッチは、この情報を使用して、以下に限定されるわけではないが、一例として、ローミング、自動チャネル選択、欠陥のあるAPの検知、侵入検知及び/又は対策の開始を含む機能をサポートする。本出願において後述する新しい特徴を含むTrapeze固有の実施構成に関するいくつかの追加の詳細が、本出願が優先権を主張する仮出願において限定的な意味ではなく一例として提供される。
【0003】
代表的な実施構成では、スイッチングは、予想通りにスイッチにより行われる。しかし一方、APにおいてネイティブスイッチングを行うこともできる。APローカルのスイッチングを集中管理に同調させることは重要な問題である。ハイブリッドスイッチング、すなわち、スイッチ側でのスイッチングと組み合わせたAPローカルのスイッチングを実現することも重要な問題である。
【0004】
これらは、無線アクセスポイントの認証に関連する問題及び課題のほんの一部であり、従来技術における弱点を実施例により明らかにすることが意図されている。関連技術の前述の実施例及びこれに関する限定は、例示目的のものであり、排他的なものではない。当業者であれば、明細書を読み図面を検討することにより関連技術のその他の限定が明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0005】
詳細な説明において以下さらに説明する概念を選択したものを単純化した形で紹介するために本概要を示す。本概要は、特許請求の対象の重要な特徴又は本質的特徴を特定することを意図されたものではなく、また特許請求の対象の範囲を限定するために使用されることを意図されたものでもない。
【0006】
APローカルの動的スイッチングを実行するための技術は、レイヤ2スイッチングを含む。これは、特定の無線局からのトラフィックをローカルに切り換えるべきかどうかをAPが決定できるようにするのに十分な無線局関連データをAPに提供することにより達成することができる。或いは、無線局は、トラフィック自体に基づいてトラフィックをローカルで切り換えるかどうかを決定することができる。例えば、APが音声トラフィックをローカルに切り換えて、ボイスオーバーIPなどの音声送信にとって特に悪影響な待ち時間を避けることが望ましい。ローカルに切り換えるべきでないトラフィックは、上流へレイヤ2トンネリングされる。
【0007】
提案するシステムは、数ある利点の中でも特に、帯域幅の有効利用、待ち時間の削減、ネットワーク効率、信頼性を提供することができる。当業者であれば、以下の説明を読み図面のいくつかの図を検討することにより本明細書で説明する技術の上記の及びその他の利点が明らかになるであろう。
【0008】
特許請求の対象の実施形態を図面に示す。しかしながら、実施形態及び図面は、本発明を限定するものではなく例示的なものであり、これらは、特許請求の対象の実施例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アンテザードアクセスポイント(UAP)メッシュを含むシステムの例を示す図である。
【図2】APローカルの動的スイッチングシステムの例を示す図である。
【図3A】切り換えをAP側でローカルに行うか或いはスイッチ側で行うかの決定時に考え得る様々な要素を限定的な意味ではなく一例として示す図である。
【図3B】切り換えをAP側でローカルに行うか或いはスイッチ側で行うかの決定時に考え得る様々な要素を限定的な意味ではなく一例として示す図である。
【図3C】切り換えをAP側でローカルに行うか或いはスイッチ側で行うかの決定時に考え得る様々な要素を限定的な意味ではなく一例として示す図である。
【図3D】切り換えをAP側でローカルに行うか或いはスイッチ側で行うかの決定時に考え得る様々な要素を限定的な意味ではなく一例として示す図である。
【図4】APローカルの動的スイッチングが可能なAPの例を示す図である。
【図5】APローカルの動的スイッチング法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、いくつかの特定の詳細を提示して、特許請求の対象の実施形態を完全に理解できるようにする。しかしながら、当業者であれば、特定の詳細の1又はそれ以上を伴わずに、或いは他の構成要素と組み合わせることなどにより、特許請求の対象を実現できることを理解するであろう。その他の場合、特許請求の対象の様々な実施形態の態様を曖昧にしないように、周知の実施構成又は動作については図示せず、或いは詳細には説明しない。
【0011】
図1は、アンテザード(untethered)アクセスポイント(UAP)メッシュを含むシステム100の例を示す図である。図1の例では、システム100は、ネットワーク102、無線スイッチ104、(まとめてAP106として示す)1又はそれ以上のAP106−1から106−N、及びUAPメッシュ108を含む。オーバレイスイッチングモデルは、いくつかの点で本明細書で説明する技術に置き換えられているが、ローカルスイッチングの実施構成からオーバレイモデルのいずれの機能も取り除かれないようにすることが望ましい。
【0012】
オーバレイスイッチモデルは、(MX(登録商標)などの)上流スイッチへトンネリングを行うAPを含み、これによりスイッチが複雑なポリシ及びフォワーディングの決定をローカルに行えるようになる。上流スイッチへの切り替えを集中化することにより、(シンAPモデルをサポートする)APのスイッチングコードは比較的単純なままにされてきた。APは、それ自体がサブネット上に存在し、そこから上流スイッチに到達できることを少なくとも理解している。オーバレイモデルの利点として、APコード及び構成を単純なままにしておくこと、すなわちAPを上流スイッチに接続する任意のアクセスネットワークにのせて無線ネットワークを配備できるようになることが挙げられ(クライアントトラフィックがトンネリングされるため、このクライアントトラフィックがアクセスネットワークに配慮することはなく、AP上の局は、APが利用できるLANとは全く異なるLAN上に存在することができる)、スイッチは、スイッチ自体の間にトンネルを形成し、クライアントトラフィックをこのトンネルに送って、任意のAP上の任意の所定のクライアントが加わることのできるVLANの選択肢をさらに拡げることができるということが挙げられる。しかしながら、オーバレイネットワークは以下の問題点、すなわち全てのトラフィックが上流スイッチを通過しなくてはならず、この上流スイッチがAPから非常に遠くにあること、トラフィックをトンネリングする際のMTU及びその他のミドルボックスの問題に関する複雑さ、及びAP側で利用可能な分散したコンピュータの転送パワー(一般に、転送物をエッジスケールへより良く転送する設計)の恩恵を受けないことという問題点を有する。
【0013】
ネットワーク102は、インターネットプロトコル(IP)ネットワークを含むことができる。ある実施形態では、ネットワーク102は、無線スイッチ104が結合される有線バックボーンである。或いは一方で、ネットワーク102は、バックボーンネットワークが結合され、或いはバックボーンネットワークの代替として機能するネットワーク、又はその他の任意のネットワークに相当するものであってもよい。従ってネットワーク102は、例えばインターネットを含むことができる。
【0014】
無線スイッチ104は、通常AP106に接続された線である。従って、実施構成にもよるが、「無線」スイッチは、有線ネットワークへの及び/又は有線ネットワークからの無線トラフィックのためのスイッチであると考えることができる。無線スイッチ104は、必ずしも何かに無線接続されているわけではない。AP106の各々は、個々のスイッチが単一のAPのみに結合された線になるようにそれぞれのスイッチに結合された線であってもよい。従って、図1の例では、複数の形で1又はそれ以上のAP106を示しているが、スイッチあたりのAPの数は実施構成及び/又は実施形態に固有のものであることを理解されたい。AP及び無線スイッチ104は、単一の装置に結合されるものであってもよい。しかしながら、この説明では、APと無線スイッチとが別個の装置であるかのように機能することにより、APの機能がスイッチの機能から区別されている。
【0015】
無線スイッチ104は、無線局及びUAPメッシュをローカルに管理するためのツール全てを有していてもいなくてもよい。例えば、無線スイッチ104からさらに上流に(AAAサーバーなどの)追加の管理機能が存在してもよい。これらのサービスが無線スイッチ104を越えて行われることは重要な問題ではないため、説明を簡単にするために、無線スイッチ104は、ローカルに或いは上流の構成要素を利用してこれらの機能の全てを行うものとする。このため、(図1以外の)図には、無線スイッチ104からさらに上流の構成要素は示していない。
【0016】
無線データは、限定的な意味ではないが、一例として局関連データ及びRF環境データを含むことができる。局及びRFデータは、無線スイッチ104により使用され、以下に限定されるわけではないが、一例としてローミング、自動チャネル選択、欠陥のあるAPの検知、侵入検知、及び対策の開始を含む機能をサポートする。無線スイッチ104は、無線データをその他の無線スイッチ(図示せず)と共有することができる。
【0017】
無線スイッチ104は、AP106(及びUAPメッシュ108内のAP)を制御する。ある実施形態では、AP106は(トランシーバなどの)無線送受信器を含み、この無線送受信器を使用して、無線スイッチ104の機能へのユーザ及び局のアクセスに対して無線ネットワークの接続性を提供する。IEEE802.11という脈絡の中では、局は、任意のIEEE802.11のエンティティ又は他の関連する規格における同等物であり、ローミングタイプ又は固定タイプであってもよい。この定義はAPを含むこともできる。
【0018】
図1の例では、AP106の各々は、UAPメッシュ108の少なくとも一部を有線ネットワークにつなぎ止める。AP106は、無線スイッチ104(又はシステム100の他の上流の構成要素)とUAPメッシュ108との間の境界装置として取り扱うことができる。これにより、プロキシアドレス解決プロトコル(プロキシARP)を使用して、(APが無線スイッチ104にとってのアンカーの機能を果たすUAPなどの)遠隔装置の代わりにAP106がARP要求に応答できるようになるので、無線資源のより効率的な利用が可能となる。
【0019】
本発明を限定しない802.11の実施構成では、AP106の各々は、無線インターフェースから標準的な802.3フレームである有線インターフェースへのパケットの切り替えをサポートする。APのスイッチング経路は、802.1qのタグ付きパケットをサポートしてもしなくてもよく、MAC又はユーザベースのACLをサポートしてもしなくてもよい。(ポート、VLAN、又はVPORTベースのACLを必要としてもしなくてもよい。)APがローカルスイッチングとオーバレイとを同時にサポートすることが望ましい。しかしながら、サポートしたとしても、パケットをローカルに及びオーバレイモードで同時に切り替えることは必要条件ではない。例えば、AP上の所定のVLANは、ローカルに、或いはオーバレイモードで切り替えることができる。
【0020】
図1の例では、UAPメッシュ108は、無線スイッチ104又はAP106に有線接続していない複数の潜在的に別個のAPを示すことが意図されている。このため、無線メッシュにおけるAPは「アンテザード(untethered)」と呼ばれる。UAPメッシュ108内のどの局も、UAPであるか、或いは他の何らかの無線局であるかに関わらず、AP106、及び局からAP106へのノードのチェーンを構成するゼロ又はそれ以上のUAPで無線スイッチ104につながれている。チェーンの中で無線スイッチ104により近いAPは、アンカリング下流局と呼ばれる。任意の所定の局については、UAPメッシュ108は、トラフィックが局と無線スイッチ104との間を通過するためのループを認めるべきではないので、局から無線スイッチ104への経路はスパニングツリー(spanning tree)と呼ばれる。
【0021】
UAPメッシュ108内のUAPがオンラインで提供される場合、UAPは、最適な経路を通って無線スイッチ104に到達しようとする。(注意:最適な経路が要求されるものの、実際には実行されるアルゴリズム及び/又は環境要素次第で最適な経路が実現できてもできなくてもよい。)AP106の1つからのUAPの距離を測定するための複数の測定基準が存在する。例えば1つの測定基準は時間であってもよい。すなわち、パケットがUAPと、UAPをつなぐAPとの間を移動するのに要する時間のことである。このような測定基準は正確に機能することはできるものの、この測定基準は、通常、トラフィックの輻輳又は劣化した受信信号の強度などの環境要素次第で異なるものとなる。説明を簡単にすると、本明細書で使用する測定基準とは、UAPとそれをつなぐAP(AAP)との間のホップの数のことであり、これは多くの潜在的な測定基準のほんの1つにすぎないことを理解されたい。従って、UAPがAAPから1ホップ離れている場合、このUAPはワンホップUAPと呼ばれる。一般に、UAPがAAPからNホップ離れている場合、このUAPはN−ホップUAPと呼ばれる。
【0022】
UAPメッシュ108のUAPは、コンピュータ可読媒体に組み込まれるAPローカルスイッチングエンジンを含むことができるという利点がある。APローカルスイッチングエンジンは、局スイッチングレコード(SSR)を使用して、(パケット、フレーム、データグラムなどの)所定のメッセージユニットをどのように切り換えるかを決定することができる。これにより、少なくともいくつかのトラフィックを、UAPメッシュ108内で効率良く切り換えできるようになる。さらに、他のトラフィックがローカルに切り換えられる間に、いくつかのトラフィックをスイッチへ逆トンネリングできるという利点がある。どのトラフィックが逆トンネリングされるか、及びどのトラフィックがローカルに切り換えられるかは、本明細書に記載の教示を使用することにより利用可能になる実施構成固有の決定事項である。
【0023】
SSRは、上流スイッチで利用可能なあらゆる情報を含むことができる。本発明を限定しない実施形態では、局関連及び認証に付随するスイッチが利用可能なデータは、局MAC、VLAN数、VLAN名、ローカルスイッチフラグ、タグ付きフラグ、無線ポート、(VLANへの無線ポートのマッピングに使用される)無線タグ、(局MACにマッピングされる入口及び出口ACLなどの)ACL、及び/又はプロキシARPフラグを含む。(注意:プロキシARPは、ローカルスイッチングが有効である場合にのみ受け入れられる。)特定のVLANに対してローカルスイッチングを可能にする例示の実施形態では(他の例については、図3Aから図3Dを参照しながら後述する)、ローカルスイッチングがAPに対して有効でありかつAPがVLAN名で指定されたVLANに接続されている場合、ローカルスイッチフラグがTRUEに設定される。.1qタグを介して局のVLANに到達可能な場合、タグ付きフラグがTRUEに設定される。このフラグがTRUEになると、VLANナンバーは.1qタグ値と見なされる。この情報により、APはVLANを作成し、指定されたタグ値のVLANに指定された無線ポート及び有線ポートを追加することができる。次に、APは、そのネットワークポートから学習のパケットを送り、潜在的にあらゆる中間スイッチを更新する。
【0024】
特許請求の対象の態様についてIEEE802.11規格に関連して説明しており、さらにいくつかの実施形態は、802.11という脈絡の中で実現される特定の特徴を有するものであるが、特許請求の対象自体は、802.11のネットワークに限定されるものではなく、一般的には任意の適用可能な無線ネットワークにも適用することができ、また将来の技術的な拡張により、無線スイッチ、AP、及び/又は局の間の区別が曖昧になる限りにおいて、特許請求の対象は、このようなスイッチ、AP、及び局がどのようにパッケージされ、結合され、又はラベル付けされているかに関係なくこれらの特徴を示す構成要素を含むものであると考えられることが、本明細書で行われる説明に照らして理解されるであろう。
【0025】
例示の実施形態では、UAPメッシュ108はスパニングツリーから作成される。UAPメッシュ108内の個々の局は、最適な経路に沿って無線スイッチ104へ到達しようとする。最適な経路が線までのホップ数で測定されると仮定すると、第1の局のトラフィックがUAPを通過し、そこから線までの経路に沿って進む場合、UAPを通過する第2の局のトラフィックは、そこから線まで同じ経路を選ぶことになる。全ての局が最適な経路を選ぶので、これらの局は、線(wire)におけるAPをルートノードとするツリーの端ノードとして表される。従って、APメッシュは、個々の局のためのスパニングツリーとして機能する。スパニングツリーは個々のノードにおいてどん欲(greedy)であり、結果として、必然的に効率的な(恐らくは最適化された)ツリーフローとなる。
【0026】
無線資源が比較的乏しいので、UAPなどの無線ノードを通過する有線スイッチまでのデータの量を減らすことは少なくとも部分的に有利である。有線資源を節約する必要はそれほどない。しかしながら、有線資源の保護は、それにも関わらず多くの場合価値のあることである。従って、APに関して本明細書に記載した教示は、AP106(図1)などの有線AP、又はUAPメッシュ108(図1)のUAPなどの無線APに適用可能である。このため、後の図面では、定義により無線とされるUAPである(すなわち、UAPは「アンテザード」APである)と具体的に特定しない限り、APは有線APであっても、又は無線APであってもよい。
【0027】
図2は、APローカルの動的スイッチングシステム200の例を示す図である。システム200は、無線スイッチ202と、スイッチ202に結合されたAP204と、AP204に無線で結合された2つの局206−1及び206−2(まとめて無線局206として示す)とを含む。例示の実施形態では、スイッチ202は、AP204にSSR形式でデータを提供し、このデータは、無線局206に関する(或いは、より一般的にはAP204を介してスイッチ202に結合された無線局に関する)様々なデータを含むことができる。SSRは、AP204におけるネイティブスイッチング又は無線スイッチ202におけるスイッチングを容易にするのに十分なデータを含む任意のデータ構造であってもよい。AP204は、以下に限定されるわけではないが、一例としてSSID、メッセージに関連するデータのクラス、メッセージを送信する局に関連するVLAN、メッセージを送信する局のユーザに関連する認証データ、又は何らかの他の要素を使用して、ネイティブにスイッチングを行うかどうかを決定する。
【0028】
例示の実施形態では、無線スイッチ202は、AP204がローカルスイッチングを行うであろうこと、及びAPがいずれのVLAN(利用可能な場合)に接続されているかを理解している。しかしながら、これは絶対条件ではない。
【0029】
例示の実施形態では、AP204はレイヤ2スイッチである。例示の実施形態では、AP204は、トンネル208を介して無線スイッチ202に結合される。従って、無線スイッチ202におけるレイヤ2スイッチングのためのメッセージを無線スイッチ202へトンネリングすることができる。複数のレイヤ3プロトコルをサポートするのは困難であると考えられる。従って、スイッチングをレイヤ2に保つことにより、システム200は(IPなどの)特定のレイヤ3プロトコルを有する必要がなくなる。さらに、ルータにポリシを含むレイヤ3のバックボーンを有する場合、スイッチングはポリシを無視することができる。レイヤ2スイッチングは、これらの問題を少なくとも軽減し、或いは排除するという利点がある。
【0030】
AP204はスイッチング装置であるため、例示の実施形態では、無線スイッチ202は、マルチキャストのためのパケット複製を行う必要はない。従って、単一のマルチキャストパケットが無線スイッチ202からAP204へ送信され、必要に応じてAP204により複製される。
【0031】
図2の例では、局206−2がメッセージ210、212をAP204へ送信する。AP204は、AP204が利用可能なデータに基づいてメッセージを異なる方法で処理する。図2の例では、AP204がトンネル208を介してメッセージ210をスイッチ202へ送信する。図2の実施例では、AP204がメッセージ212に対してAPローカルのスイッチングを行い、メッセージ212を局206−1へ送信する。スイッチ202においてメッセージ210を切り替え、局206−1へ送信することができる。AP204がローカルに、或いは(トンネリングなどにより)スイッチ202において切り換えを行うかどうかを決定する際に考え得る様々な要素のいくつかの例について、限定的な意味ではないが、一例として図3Aから図3Dにおいて検討する。
【0032】
図3Aは、APローカルの動的スイッチングをSSIDごとに行うシステム300Aの例を示す図である。システム300Aは、AP302及び局304−1から304−3まで(まとめて局304として示す)を含む。例示のみを目的として、AP302は、2つの仮想AP(VAP)306−1及び306−2(まとめてVAP306として示す)を含む。当業者であれば理解できるように、APは複数のSSIDをブロードキャストするか、或いは処理することができる。APが2以上のSSIDをブロードキャストするか、或いは処理する場合、APは、複数のAPとして論理的に取り扱われ、それぞれのSSIDに関連付けられた論理APの各々をVAPと呼ぶことができる。図3Aの例では、AP302は、可能であればVAP306−1を介してトラフィックをローカルに切り替え、上流スイッチングのためにVAP306−2を介してトラフィックを上流へ渡す。本発明を限定しない実施形態では、AP302が単一のSSIDを処理する場合でも、AP302はSSIDごとにAPローカルの動的スイッチングを行い、1つの結果しか見込まれない場合でも決定は動的なものとなる。
【0033】
図3Bは、VLANごとにAPローカルの動的スイッチングを行うシステム300Bの例を示す図である。システム300Bは、AP312及び局314−1から314−3まで(まとめて局314として示す)を含む。局は、VLAN316−1と316−2(まとめてVLAN316として示す)とに分割される。例示のみを目的として、局314−1及び314−2はVLAN316−1の一部とし、局314−3はVLAN316−2の一部とする。図3Bの例では、AP312は、可能であればVLAN316−1からトラフィックをローカルに切り替え、上流スイッチングのためにトラフィックをVLAN316−2から上流へ渡す。
【0034】
図3Cは、クラスごとにAPローカルの動的スイッチングを行うシステム300Cの例を示す図である。システム300Cは、AP322及び局324−1から324−2まで(まとめて局324として示す)を含む。例示のみを目的として、局324−1は、データトラフィック326及び音声トラフィック328を局324−2へ送信する。図3Cの例では、AP322は、可能な場合音声トラフィック328をローカルに切り替え、上流スイッチングのためにデータトラフィック326を上流へ渡す。これにより、データトラフィックよりも時間に依存しがちな音声トラフィックをより速く送信することができ、一方でデータトラフィックの集中管理を維持することができるという利点が得られる。
【0035】
図3Dは、ユーザごとにAPローカルの動的スイッチングを行うシステム300Dの例を示す図である。システム300Dは、AP332及び局334−1から334−2まで(まとめて局334として示す)を含む。局334の各々には、それぞれの関連付けられたユーザ336−1から336−3まで(まとめてユーザ336として示す)が存在する。(AAA主導のスイッチングなどの)ユーザ認証に基づくAPローカルの動的スイッチングを示すためにユーザ336及びAAAエンジン338を例示のみの目的で示す。図3Dの例では、ユーザ336−1はAPローカルのスイッチングの実行を許可されているため、AP332は、可能であれば局334−1からローカルにトラフィックを切り換える。しかしながら、ユーザ336−3はAPローカルスイッチングの実行を許可されていないため、AP332は、上流スイッチングのために局334−3からのトラフィックを上流へ渡す。これにより、何人かのユーザはより速い送信を行うことができ、一方で他のユーザの集中管理を維持することができるという利点が得られる。限定的な意味ではないが、一例としてAPローカルスイッチングの実行を許可されたユーザを従業員とし、一方APローカルスイッチングの実行を許可されていないユーザをゲストとしてもよい。別の例として、APローカルスイッチングの実行を許可されたユーザを第1の会社の従業員とし、一方APローカルスイッチングの実行を許可されていないユーザを第2の会社の従業員としてもよく、この場合第1の会社の方が上位の(又は少なくとも異なる)アクセス権を有する。
【0036】
図3Aから図3Dまでの例は、APローカルの動的スイッチングを実行するための可能な技術のほんの一部を示すことが意図されている。図3Aから図3Dまでに示しているかどうかにかかわらずこれらの技術を単独で、或いは図3Aから図3Dまでに示しているかどうかにかかわらず他の技術と組み合わせて使用することができる。
【0037】
図4は、APローカルの動的スイッチングが可能なAP400の例を示す図である。AP400は、プロセッサ402、オプションのイーサネット(登録商標)インターフェース404、無線406、動的スイッチングモジュール408、及び局スイッチングレコード(SSR)データベース410を含み、これらはバス412を介して共に結合される。本明細書に示す教示の範囲から逸脱することなく、バス412以外の何らかの手段を介して様々な構成要素を結合することができる。例えば、AP400はイーサネットを使用せず、APは有線インターフェースを有していないUAPであるため、或いは他の何らかの理由のため、イーサネットインターフェース404はオプションとなっている。無線は、802.11無線、又は他の何らかの無線であってもよい。
【0038】
例示の実施形態では、動的スイッチングモジュール408は、不揮発性記憶装置及び/又はメモリなどのコンピュータ可読媒体により実行される。SSRデータベース410は、不揮発性記憶装置及び/又はメモリなどのコンピュータ可読媒体により実行される。動作中、動的スイッチングモジュール408の複数の部分を、不揮発性記憶装置からメモリにロードし、プロセッサ402により実行することができる。別の実施形態では、動的スイッチングモジュール408は、専用プロセッサ(図示せず)を有することができる。プロセッサが共有されたものであるか、或いは専用のものであるかに関わらず、動的スイッチングモジュール408とプロセッサとは、まとめて動的スイッチングエンジンと呼ばれる。
【0039】
図4の実施例では、動作中、AP400は、下流局に関連付けられたSSRを上流スイッチから受け取る。SSRは、SSRデータベース410に記憶される。下流局は、直接的に、又は介在する無線メッシュのノードを介して間接的に、無線リンクを介してAP400に動作的に接続される。動的スイッチングエンジンはSSRを使用して、下流局から受け取ったトラフィックに対してAP400においてAPローカルのスイッチングを行うか、或いは上流スイッチに向けてトラフィックを上流へ送るかを決定する。
【0040】
図5は、APローカルの動的スイッチング法の例についてのフローチャート500を示す図である。図5の例では、フローチャート500は、オプションのモジュール502から開始し、ここで無線局に関連するデータが受け取られる。データは、例えばAPにおいて受け取られる。簡単に説明すれば、モジュール502の代わりに(或いはこれに加えて)、トラフィックに関連するデータを使用して、トラフィックをAPローカルに切り換えるかどうかに関する決定を行うことができるため、モジュール502はオプションとなっている。
【0041】
図5の例では、フローチャート500はモジュール504へと続き、ここで無線局からレイヤ2トラフィックが受け取られる。トラフィックがレイヤ2であるため、本システムは、(IPなどの)任意のレイヤ3プロトコル、又は複数のレイヤ3プロトコルを使用して動作することができるという利点が得られる。
【0042】
図5の例では、フローチャート500は決定ポイント506へ進み、ここでトラフィックをローカルにレイヤ2スイッチするかどうかが決定される。無線局に関連するデータ(モジュール502などを参照のこと)、又はトラフィック自体に関連するデータを使用して、トラフィックをローカルに切り換えるかどうかに関する決定を行うことができる。例えば、無線局は特定のVLANに関連付けられているため、無線局にAPローカルスイッチングを認めることができる。第2の例として、トラフィックは、多くの場合音声トラフィックが有するような比較的高い優先権を有することができる。トラフィックが比較的高い優先権を有する場合、ローカルに切り換えを行って、トラフィックをより迅速に宛先に到達させるための決定を行うことができる。第2の例では、モジュール502はオプションである。
【0043】
図5の例では、トラフィックをローカルにレイヤ2スイッチすると決定した場合(506−Y)、フローチャート500はモジュール508へ進み、ここでトラフィックはローカルにレイヤ2スイッチされ、その後モジュール510へ進み、ここでトラフィックが宛先へ向けて送られる。トラフィックを切り替え、送信し終わると、フローチャート500は終了する。
【0044】
図5の例では、トラフィックをローカルにレイヤ2スイッチしないと決定した場合(506−N)、フローチャート500はモジュール512へ進み、ここでトラフィックは上流へレイヤ2トンネリングされる。恐らく、トラフィックはさらに上流で切り替えられることになる。ローカルに切り替えられることのないトラフィックを上流でレイヤ2トンネリングし終わると、フローチャート500は終了する。
【0045】
本明細書で使用するAPとは、標準的な(テザード)AP又はUAPのことを意味する。区別すべき場合、APは、必要に応じて「(テザード)AP」又は「UAP」と呼ぶことができる。本明細書で使用する「実施形態」という用語は、限定的な意味ではないが、一例として、例示の役割を果たす実施形態のことを意味する。
【0046】
構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で対象物について説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義される対象物は、必ずしも上述した特定の特徴又は行為に限定されるものではないということを理解されたい。むしろ、上述の特定の特徴及び行為は、特許請求の範囲を実現する形式例として開示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線と、
プロセッサと、
前記無線と前記プロセッサとに結合されたコンピュータ可読媒体により実行される動的スイッチングモジュールと、
無線局に関連するSSRを含む前記動的スイッチングモジュールに結合された局スイッチングレコード(SSR)データベースと、
を含むアクセスポイント(AP)装置であって、
動作中、
トラフィックは、前記無線局から前記無線で受け取られ、
前記プロセッサは、前記動的スイッチングモジュールを実行し、
前記動的スイッチングモジュールは、前記トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換えるか、或いは前記トラフィックを上流へ渡すかを決定し、
前記トラフィックは、前記決定に従って送られる、
ことを特徴とするアクセスポイント(AP)装置。
【請求項2】
動作中、前記SSRは、上流ソースから前記無線で受け取られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記SSRは、局MAC、SSID、VLAN名、AAAデータ、及びユーザデータから成る群の1又はそれ以上から選択されるデータを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
動作中、前記動的スイッチングモジュールが、前記トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換えると決定した場合、前記トラフィックは、前記無線で下流の宛先に送られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
動作中、前記動的スイッチングモジュールが、前記トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換えると決定した場合、前記トラフィックは、前記無線で上流の宛先に送られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
動作中、前記動的スイッチングモジュールが前記トラフィックを上流へ渡すと決定した場合、前記トラフィックは、上流スイッチにおけるスイッチングのために前記無線で送られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
イーサネットインターフェースをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
動作中、前記SSRは、上流ソースから前記イーサネットインターフェースを介して受け取られる、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
動作中、前記トラフィックは、前記決定に従って前記イーサネットインターフェースを介して送られる、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
動作中、前記動的スイッチングモジュールが、前記トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換えると決定した場合、前記トラフィックは、前記イーサネットインターフェースを介して上流の宛先に送られる、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
動作中、前記動的スイッチングモジュールが前記トラフィックを上流へ渡すと決定した場合、前記トラフィックは、上流スイッチにおけるスイッチングのために前記イーサネットインターフェースを介して送られる、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
無線スイッチと、
レイヤ2トンネルを介して前記無線スイッチに結合されたアクセスポイント(AP)と、
トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換えるか、或いは上流スイッチングのために前記トラフィックを前記無線スイッチへ向けて前記レイヤ2トンネルを介して上流へ送るかどうかを決定することができる動的スイッチングエンジンと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
動作中、前記動的スイッチングエンジンは、前記トラフィックの送信者に関連する特徴に基づいて、トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換える、
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
動作中、前記動的スイッチングエンジンは、前記トラフィックのターゲットの特徴に基づいて、トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換える、
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
動作中、前記動的スイッチングエンジンは、前記トラフィックの特徴に基づいて、トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換える、
ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
動作中、前記動的スイッチングエンジンは、前記トラフィックが音声データを含む場合、トラフィックを前記APにおいてローカルに切り換える、
ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
無線局からレイヤ2トラフィックを受け取るステップと、
前記トラフィックをAPローカルに切り換えるかどうかを決定するステップと、
前記トラフィックがAPローカルに切り替えられないと決定された場合、前記トラフィックを上流へレイヤ2トンネリングするステップと、
前記トラフィックがAPローカルに切り替えられると決定された場合、前記トラフィックをAPローカルにレイヤ2スイッチするとともに前記レイヤ2スイッチトラフィックを前記トラフィックに関連する宛先へ向けて送るステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記無線局に関連するデータを受け取るステップと、
前記無線局に関連する前記データを使用して、前記トラフィックをAPローカルに切り換えるかどうかを決定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記トラフィックの特徴に基づいて、前記トラフィックをAPローカルに切り換えるかどうかを決定するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記レイヤ2スイッチトラフィックは、下流の宛先へ向けて送られる、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−540678(P2009−540678A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514429(P2009−514429)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/013757
【国際公開番号】WO2007/146274
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505265115)トラピーズ ネットワークス インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Trapeze Networks, Inc.
【Fターム(参考)】