AV再生装置
【課題】従来のAV再生装置は画像が生成されるスクリーンとスクリーンの両側部又は上下に配設される円錐形電磁スピーカから構成される。そのような構成はスクリーン上の視覚情報と発生した音との間につながりを生み出すことはない。
【解決手段】AV再生装置1は表示スクリーン11と音声周波数信号で変調された超音波ビームを生成するスクリーン11の周囲に配置される2つ又はそれ以上の変換器素子13から構成される。大気中での非線形効果によりスクリーンに垂直に伝播する音ビームが生成される。音と視覚のそのような一体化によりユーザは表示スクリーン11を視ているときにあたかも音が表示スクリーンから発生しているように感じることができ、また関係のない人たちをめったに又は決して妨害することなく音を目的のユーザに向けることができる。超音波変換器アレーは独立した変換器素子13又は2つ又はそれ以上の変換器素子のサブアレーから出来上がっている。
【解決手段】AV再生装置1は表示スクリーン11と音声周波数信号で変調された超音波ビームを生成するスクリーン11の周囲に配置される2つ又はそれ以上の変換器素子13から構成される。大気中での非線形効果によりスクリーンに垂直に伝播する音ビームが生成される。音と視覚のそのような一体化によりユーザは表示スクリーン11を視ているときにあたかも音が表示スクリーンから発生しているように感じることができ、また関係のない人たちをめったに又は決して妨害することなく音を目的のユーザに向けることができる。超音波変換器アレーは独立した変換器素子13又は2つ又はそれ以上の変換器素子のサブアレーから出来上がっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に表示ユニット、例えば自動車に搭載される表示ユニット又はTV受像機セット、コンピュータ又は携帯電話等の民生用電子機器の品目に搭載される表示装置に関し、特に音発生システムを有する表示ユニットに関する。そのようなユニットはここにおいてはAV再生装置と称する。
【背景技術】
【0002】
従来のAV再生装置は画像が生成されるスクリーンと前記スクリーンの両側部又は前記スクリーンの上下に配設される円錐形電磁スピーカから構成される。不幸なことに、そのような構成は前記スクリーン上の視覚情報と発生した音との間につながりを生み出すことはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザにとっては音があたかも表示ユニットから発生していると感じることが望ましく、これまでこれを成し遂げようとするためにいくつかの努力がなされてきた。例えば、アメリカ特許No.5,400,414には圧電―ポリマ膜からなる電気機械変換器が開示されている。この膜は透明でありTV受像機のスクリーン、額に入れられた写真のガラスの窓枠その他に適用される。そのような構成はAV一体化を成し遂げるが、発生した音は目的とするユーザと他の人たちの両方に聴こえる。この理由としては音声発生システムは全方向性であるからである。この問題を解決するひとつの方法はイヤホン又はヘッドホンを用いることである。しかしながら、常にイヤホン又はヘッドホンを長い間着用するのは快適とは言えない。そのうえ、特定の人たち、例えば車の運転者にとってはイヤホン又はヘッドホンを運転中に着用するのは安全とは言えない。
【0004】
本発明は新規かつ有用なAV再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は従来の表示ユニットに用いられる音発生システムに対照させて、音発生システムの別の公知の型が所謂“パラメトリックスピーカ”であるとの観察により動機づけられている。パラメトリックスピーカは超音波変換器アレーを用いている(即ち、アレーは複数の変換器素子からなる)。アレーは印加された電子信号の制御のもと、狭い超音波ビームを大気中に伝送することができる。超音波ビームは音声信号を用いてAM変調されており、音声信号は超音波変換器アレーを駆動する電子信号を変調する。AM変調された超音波ビームは入力音声信号に対応する可聴音を生成するように非線形音響効果の故にビームが大気中を伝播するのにともない自発的に復調される。パラメトリックスピーカはこの現象を利用して音スポットライトの位置にいる人たちのみに聴こえる音スポットライトを生み出す。
【0006】
一般的に言えば、本発明は視覚表示スクリーン、超音波ビームを発生する超音波変換器アレーからなり又表示スクリーンの周囲に配置される2又はそれ以上の素子からなるAV再生装置を提案するものである。少なくとも変換器アレーの一部は空乏又は透明でありそれを介して表示スクリーンを視ることができる。パラメトリック制御信号(可聴周波数信号により変調された超音波信号)が変換器アレーに印加されると、指向性の超音波ビームが生成される。大気中の非線形効果により可聴周波数が復調され、その効果としてスクリーンに垂直に伝播する音声ビームが生成される。
【0007】
そのような音と視覚の一体化によりユーザが表示スクリーンを視ているときあたかも表示スクリーンから音が発生しているとユーザが感じとることができることとなり又目的とするユーザに向かって音を投射することができ、そしてめったに又は決して関係のない人たちを妨害することはない。
【0008】
超音波変換器アレーは独立した変換器素子から構成でき又は変換器素子(例えば、互いに密接に隣接している変換器素子)の2又はそれ以上のサブアレーから構成することができる。
【0009】
同一のパラメトリック信号は例えば共通の増幅器を介して個々のサブアレーに印加される。代わりに、異なるパラメトリック信号を例えば、夫々個々の増幅器を介して異なるサブアレーに印加することもできる。各増幅器の利得は同一に選ばれる。代わりに、夫々の利得は音ビームをひとつの角度から別の角度に案内するように選ばれる。
【0010】
2つのサブアレーを配置する可能性があり、前記2つのサブアレーは左右のステレオチャンネルから夫々派性する制御信号を受信するように配置される。
【0011】
変換器素子は別々に形成できそして表示スクリーンとの関係において取り付けられる(例えば、表示スクリーンの筐体上に取り付けられる)。代わりに、変換器素子は一体化できる、例えば表示スクリーンの筐体内に埋め込むことができる。
【0012】
変換器素子のアレーは様々な形状をすることができる。前記各変換器素子は円錐形インピーダンス層を有する各圧電ユニモルフ又はバイモルフとする可能性もある。代わりに、変換器アレーはパラメトリック制御信号により駆動されるように膜に取り付けられた制御回路を具備する膜から構成することができる。例えば、膜は膜上に位置しパラメトリック制御信号を受信するように配置された圧電材料により駆動される。
【0013】
かわりに、膜は膜上に配置する第1導電材料と膜から離れて配置される第2導電材料との間の静電力により駆動できる。第1及び第2導電材料はパラメトリック制御信号により決定される電圧差を受信するように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいくつかの実施例はテレビジョン受像機であり装置の表示スクリーンはテレビジョン受像機のスクリーンである。
【0015】
本発明の別の実施例においては、AV再生装置は車、バス又は飛行機のような乗り物に提供される。AV再生装置は自動車の座席の背面に配置することができる。かわりに、そのような装置は運転者の傍に個人用ナビゲーションシステムとして配置できる。AV再生装置における表示スクリーンの役割のひとつの可能性としては乗り物のミラー、例えばリヤーミラーとすることができ、そして変換器アレーとしては運転者のみに聴こえる可聴音を生成するように配置される。
【0016】
本発明の更なる実施例は例えばラップトップ又はデスクトップコンピュータのようなコンピュータの表示ユニットである。表示ユニットは表示スクリーンおよび弾性懸架具の手段によりデイスプレイユニットの周囲に沿ってデイスプレイユニット上に弾性をもって取り付けられる保護カバーを形成する角型透明パネルから構成できる。超音波変換器は保護カバーの周囲に取り付けまたは一体化できる。
【0017】
更なる可能性においては、前記装置は民生用電子機器の可搬品目であり、例えば移動無線電話又は携帯電話である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、図1を参照するに、本発明の第1実施例である表示スクリーン11と制御素子12(例えば、制御信号を入力するためのボタン又は他の機器)を有するテレビジョン受像機1が図示されている。表示スクリーンの周りには少なくともひとつのリング内で互いに隣接するPZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子13が分配されている。素子13は2次元領域(例えば、すべての素子13を含む最小の2次元凸状殻と正確に定義できる)に及ぶ素子のアレーを集合的に形成していると考えることができる。アレーの一部分は空乏であり表示スクリーンは前記空乏部を介して視ることができる。
【0019】
素子13はテレビジョン受像機と一体化できる(例えば、テレビジョン受像機の筐体に永久的に埋めこまれる)。代わりに、それらはスクリーンの角部の周囲に筐体に取り外し可能に取り付けることができる。パラメトリック信号が増幅器を介して変換器アレーに印加されると、素子13は大気中に指向性の第1(超音波)波を生成する。浮揚した超音波間の非線形相互作用により指向性の第2(可聴)波を生み出す。
【0020】
アレーの中心空乏部にもかかわらず我々の実験によれば中心における復調された音圧レベル(SPL)は未だ従来の表示装置におけるものよりも強いことが示されている。アレーの寸法、即ち素子13の密度を調整することにより主ビームにおける復調されたSPLと表示スペースを均一とすることができる。このことは、図1の実施例により発生される音場を示す図2において略線的に図示されている。曲線14は再生増幅された音波(即ち、復調された超音波)を示し、そして地点Aではそれらは接近して均一である。主要可聴音場は線分“a”と“b”の間の範囲に制約されていて、このことは高度に指向性を有する音声ビームが成し遂げられていることを意味している。これらの結果はそのようなAV装置が(i)ユーザがあたかも表示デイスプレイを視ているときあたかも表示デイスプレイから音が発生しているかのようにユーザが感じ、(ii)目的のユーザに対して音声を投射し関係のない人たちをめったに(又は決して)妨害しないという機能を成し遂げることができることを示している。
【0021】
ところが図1において、PZTユニモルフ/バイモルフ変換器素子は互いに隣接するように配置されて空乏中心部を有するアレーを形成し、図1に図示するように、別の第2実施例が図3に示されている。ここでは、全部で8つのサブアレー15が存在する(サブアレーの数はこの数字に限定されているがサブアレーの数は他にもあり、特に2以上のどんな数字でもよい)。各サブアレーは密接に互いに隣り合った超音波変換器素子を例えばハニカム構造の形で含むことができる。サブアレー15はテレビジョン受像機の4つの角に取り付けられる。各サブアレー内での隣り合う素子の間隔はサブアレー間の間隔よりも小さいものとなっている。
【0022】
選択的ではあるが、第2実施例のサブアレーのすべては同一のパラメトリック信号(即ち、音声信号により変調された超音波信号)が供給される。この場合、パラメトリック信号は共通の増幅器により各サブアレーに伝送される。代わりに、図4に示すように、パラメトリック信号は信号を8つの異なるチャンネルに分割するユニット17に伝送され、その各々は夫々個々の可変増幅器G1,・・・,G8に伝送されそしてその後夫々のサブアレーのひとつに伝送される。ユニット17は可変増幅器G1,・・・,G8の利得を制御する。各増幅器G1,・・・,G8の利得は同一に選択される。代わりに、利得は各増幅器G1,・・・,G8で異なるように選択もできる(利得は実数値に制限される、即ち選択的には増幅器G1,・・・,G8は複素利得値を提供できる)。各増幅器G1,・・・,G8の利得値の調整は例えばパラメトリックスピーカの分野において公知の技術に従って行われ、音声ビームはひとつの角度から別の角度へと案内される。
【0023】
図3(全ての利得G1,・・・,G8が等しい場合)の第2実施例に似ているシステムのための実験的SPLが図5に示されている。しかしながら、図3の実施例においてはスクリーンの周囲に、リングにおいて略等しく離間された8つのサブアレーが存在し、前記サブアレーの各々はリング内の6つの変換器素子により囲繞された単一の中心変換器から構成されており、図5のデータを生成するために用いられるバージョンではスクリーンの周囲のリング内で略等しく離間された6つのサブアレーが存在し、そしてサブアレーの各々は変換器素子の4つの同軸リングから構成されている。即ち、5つの素子を有する第1リング(即ち、最低の半径のリング)、11個の素子の第2リング、17個の素子の第3リングそして24個の素子の第4リングである。
【0024】
図6に略線的に示すように、これらの結果はAV再生装置に平行な平面上の線分19に沿って移動しかつそれから1.5m離間した測定マイクロホンを移動することにより得られた。“0cm”として図5に図示される位置はスクリーンの中心から直接前方に(音の伝播方向において)位置するマイクロホンに対応する。
【0025】
図5に示すように、中心位置での超音波SPLは他の位置(特におよそ+20cmと−20cmの位置)のものより小さい。しかしながら、復調されたSPLはしたがって弱くなっている。換言すれば、そのような構成は音声ビームの中心近くでの超音波エネルギを可聴周波数エネルギへの変換効率を達成する。主要な音ビームにおいては復調されたSPLは均一になる傾向がある。
【0026】
いくつかの実施例においてアレーの空乏部分の幅を増加する価値があることに注目する。このことは復調された音声信号が高いSPLを有するピーク内で領域を広げる効果を有し、それにより多くの聴取者をカバーする高指向性の音声ビームを生成することとなる。
【0027】
図7は本発明のひとつの実施例であるAV再生装置のひとつの適用を示す。AV再生装置1は乗り物2の各座席21の背面に配設されており、この乗り物2は車両又はバス又は飛行機でもよい。乗り物内の個人は個人の前の装置のみにより生成されるTV番組を視聴しまた音楽を聴くことができる。その結果として、個人はその好みに応じてTV又はラジオ番組を選択できる。そして音は指向性をもつビームとして個人に伝送されるので乗り物内での個々の隣人は妨害されることはない。生成された音を単一の個人(例えば、イヤホン又はヘッドホン)に限定する従来のいくつかの方法と対照するに、この出願ではユーザは如何なる潜在的に不快な装置を装着する必要はない。そのうえ、イヤホン又はヘッドホンを使用するのと異なりスクリーン上の視覚情報と対応する音声音との間で図7の出願においてはつながりがある。換言すれば、ユーザはあたかも表示スクリーンから音が生成されているように感じる。
【0028】
図7において各AV再生装置1は各座席の背面に位置するように図示されているが本発明はこの点に限定されるものではない。例えば、装置1のスクリーンが方向情報(例えば、地図)を表示するために用いられそして音発生システムは方向命令を生成するために用いられる個人用ナビゲーションシステムとして働く乗り物の運転者に最も接近して配置することができる。
【0029】
別の可能性としては装置1の表示スクリーンの役割は乗り物のミラーとしてである(むしろ電子信号に基づいて発生する画像である)。この場合、パラメトリックスピーカは自動車のミラーとともに(選択的には一体化して)形成され、運転者のみに可聴音が聴こえるように運転者に対向している。
【0030】
図8はラップトップ又はデスクトップコンピュータ3の表示ユニットである本発明の更なる実施例を略線的に示す分解図である。コンピュータ3は視覚表示スクリーン31とその前面の保護カバーを形成する角型透明パネル33から構成される。透明保護カバー33は弾性懸架具32、例えば発泡ゴムを介してカバー33の周囲に沿って表示ユニット上に弾性をもって配設されている。弾性懸架具は保護カバー33をコンピュータの表示ユニットに接続するように機能して更に望ましくない振動から表示ユニットを遮断する。実施例の超音波変換器素子34は保護カバーの囲繞する周囲に配設されてそれを介して表示スクリーン31を視認できる中心空乏部を有する2次元変換器アレーをともに定義する。
【0031】
図8の実施例は個人用マルチメデアシステムとして機能できる。この場合、指向性を持った音がパラメトリック信号を変換アレーに入力することによりユーザに対して放射される。ユーザは音と視覚のメッセージが一体化されているのであたかも表示スクリーン31から音が発生しているように感じる。音装置がコンピューターデイスプレイの傍に配置されている従来のコンピュータに対照して注目してよい。
【0032】
図8の実施例の変形例においては、図9に図示するように、保護カバー33を囲む周囲に設置される2つのサブアレー35から構成される。2つのチャンネルからの音声源信号が前置処理され変調されてパラメトリック信号を形成し、その後2つの超音波変換サブアレー35の夫々の入力としれ増幅される。この構成によりステレオ音声効果が成し遂げられる。1つのサブアレーは左チャンネル超音波スピーカとして機能し、他のサブアレーは右チャンネル超音波スピーカとして機能する。
【0033】
各種の変換器素子又はアレーが本発明の実施例による超音波変換器素子として用いることができる。
【0034】
ひとつの可能性は変換アレーが圧電ユニモルフ/バイモルフ素子を円錐形インピーダンス層から構成される商用PZT超音波トランスミッターから形成されることである。本発明におけるパラメトリックスピーカ装置は独立した超音波素子、特に電気的に平行に接続しているとするならば、から出来上がっている。
【0035】
代わりに、変換器素子として膜型素子が採用できる。適当な膜型変換器がシンガポール特許出願No.200300490−0(その開示はここに参考のために取り込まれている)に開示されている。図10(a)は膜型素子から構成される別の適当なモノリシック変換器アレー4を示す。変換器4において膜は少なくとも2つの層から構成される;例えば金属、プラスチックそしてシリコンのような広い材料の範囲から選択される裏張り層42;そして圧電セラミック材料のような機能材料である活性層41からなる。膜の下には背面空乏43が設けられている。共振点におけるモノリシック圧電膜が振動すると超音波が大気中に放射される。
【0036】
図10(b)は容量性膜から構成される別の適当な変換器アレー5を図示する。容量性超音波変換器アレーは図10(a)に似ている一般的な構造を有し、そこでは膜51が多数の背面空乏を有するフレームに伸長されている。図10(b)における膜51は導通したとき正の容量性プレートとして機能できる。代わりに、非導通のときには導体層が膜上に堆積される。接地プレート52が膜51に対向している。2つのプレートの間には小さな間隙を用いるのが好ましい。
【0037】
分離膜型変換器(例えば図10(a)及び図10b)におけるようなもの)は図1の変換器素子13の各々として用いられる。代わりに、単一の膜は、膜の異なる領域が独立した膜要素を構成することを意味する幾何学的配置を有する多数の変換器素子13のあいだに伸長している。同様に、分離膜型変換器は図3の各サブアレー15の夫々の変換器のために用いられるか又はその代わりに、分離膜は各サブアレーの全ての変換器上に伸長されている。
【0038】
いくつかの本発明の実施例において、超音波変換器素子はスクリーンの保護カバーから離れているが、図10(a)と図10(b)の膜型超音波変換アレーは実施例の保護カバーと一体化できる。保護カバーは例えば変換器の背面空乏を形成するためにパターン化できる基板として役立つ。その後、セラミック系圧電材料(例えばPZT,鉛ジルコネート酸塩チタン酸塩)及び/又はポリマ系圧電材料(例えばPVDF、ポリ(フッ化ビニリデン))を基板に接合し保護カバーの周囲に超音波変換器アレーを形成する
【0039】
小さな薄いパラメトリックスピーカは可搬型民生用電子機器と一体化でき(i)視聴しているときあたかも表示スクリーンから音が発生しているとユーザが感じることができ(ii)音を目的のユーザに殆ど(又は決して)関係のない人たちを妨害することなく放射できる個人用AV装置を形成する。
【0040】
例えば、図11は本発明の実施例を示すもので、それは層の背後でスクリーン上に生成された視覚情報を観察できる筐体上に設置される透明保護層62を従来の形で含む筐体61から構成される移動無線電話又は携帯電話である。パラメトリックスピーカ63(例えば図10との関連で上述した膜型)は保護層62内に組み込まれている(例えば隠れている)。例えば浅い穴状アレーなどの様々なパターンが直接保護層62に形成され機能材料のシートが次いでパターン化された基板に接合され増幅されたパラメトリック信号がアレーに入力されたときパラメトリックスピーカとして機能する超音波変換器アレーを形成する。
【0041】
代わりに、パラメトリック信号は図12に示すように表示スクリーン66の角で携帯電話上に独立した超音波変換器素子又はサブアレー67を互いに隣接するよう配設することにより形成できる。電話は小型カメラ64と電話を操作するためのボタン65を有してなる。電話は折りたたみ可能に構成されている。この場合、個人用AV再生装置はそれが動作状態にはないときは主要モジュール内に隠されている。
【0042】
本発明のいくつかの例示的な実施例を上述してきたが熟練した読者には明らかであるように多くの変形例がここにおいて開示された発明の概念から逸脱することなしに本発明の範囲内で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施例である隣接し、離間されたPZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子のリングにより囲まれる画面を有するテレビジョン受像機を示す図である。
【図2】図1の実施例において音生成を略線的に示す図である。
【図3】本発明の第2実施例である画面とスクリーンの4つの角の周囲に分配される変換器素子の8つのサブアレーを有するテレビジョン受像機を示す図である。
【図4】図3の個々のサブアレーにどのようにしてパラメトリック信号が印加されるかを略線的に示す図である。
【図5】図3の実施例により生成される音圧レベル(SPL)対位置の実験結果を示す図である。
【図6】図5の実験結果を生み出す過程を略線的に示す図である。
【図7】本発明の実施例である自動車に配置されるデイスプレイユニットを略線的に示す図である。
【図8】本発明の実施例であるラップトップ/デスクトップコンピュータを示す図である。
【図9】本発明の更なる実施例による音の発生を示す図である。
【図10】図10(a),図10(b)よりなり本発明の実施例に好適な膜型超音波変換器アレーを示す図である。
【図11】本発明の更なる実施例である移動無線電話又は携帯電話を示す図である。
【図12】本発明の更なる実施例である表示スクリーンの角に取り付けられたパラメトリックスピーカを有する携帯電話を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…テレビジョン受像機、2…乗り物、3…コンピュータ、4…モノリシック変換器アレー、5…別の適当な変換器アレー、6…移動無線電話又は携帯電話、11…表示スクリーン、12…制御素子、13…PZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子、14…曲線、a,b…線分、A…位置、15…サブアレー、G1,・・・,G8…可変増幅器、17…ユニット、19…線分、21…座席、31…表示スクリーン、32…弾性懸架具、33…透明保護カバー、34…超音波変換器素子、35…サブアレー、41…活性層、42…裏打ち層、43…背面空乏、51…膜、52…接地プレート、61…筐体、62…透明保護層、63…パラメトリック層、64…小型カメラ、65…ボタン、67…サブアレー
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に表示ユニット、例えば自動車に搭載される表示ユニット又はTV受像機セット、コンピュータ又は携帯電話等の民生用電子機器の品目に搭載される表示装置に関し、特に音発生システムを有する表示ユニットに関する。そのようなユニットはここにおいてはAV再生装置と称する。
【背景技術】
【0002】
従来のAV再生装置は画像が生成されるスクリーンと前記スクリーンの両側部又は前記スクリーンの上下に配設される円錐形電磁スピーカから構成される。不幸なことに、そのような構成は前記スクリーン上の視覚情報と発生した音との間につながりを生み出すことはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザにとっては音があたかも表示ユニットから発生していると感じることが望ましく、これまでこれを成し遂げようとするためにいくつかの努力がなされてきた。例えば、アメリカ特許No.5,400,414には圧電―ポリマ膜からなる電気機械変換器が開示されている。この膜は透明でありTV受像機のスクリーン、額に入れられた写真のガラスの窓枠その他に適用される。そのような構成はAV一体化を成し遂げるが、発生した音は目的とするユーザと他の人たちの両方に聴こえる。この理由としては音声発生システムは全方向性であるからである。この問題を解決するひとつの方法はイヤホン又はヘッドホンを用いることである。しかしながら、常にイヤホン又はヘッドホンを長い間着用するのは快適とは言えない。そのうえ、特定の人たち、例えば車の運転者にとってはイヤホン又はヘッドホンを運転中に着用するのは安全とは言えない。
【0004】
本発明は新規かつ有用なAV再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は従来の表示ユニットに用いられる音発生システムに対照させて、音発生システムの別の公知の型が所謂“パラメトリックスピーカ”であるとの観察により動機づけられている。パラメトリックスピーカは超音波変換器アレーを用いている(即ち、アレーは複数の変換器素子からなる)。アレーは印加された電子信号の制御のもと、狭い超音波ビームを大気中に伝送することができる。超音波ビームは音声信号を用いてAM変調されており、音声信号は超音波変換器アレーを駆動する電子信号を変調する。AM変調された超音波ビームは入力音声信号に対応する可聴音を生成するように非線形音響効果の故にビームが大気中を伝播するのにともない自発的に復調される。パラメトリックスピーカはこの現象を利用して音スポットライトの位置にいる人たちのみに聴こえる音スポットライトを生み出す。
【0006】
一般的に言えば、本発明は視覚表示スクリーン、超音波ビームを発生する超音波変換器アレーからなり又表示スクリーンの周囲に配置される2又はそれ以上の素子からなるAV再生装置を提案するものである。少なくとも変換器アレーの一部は空乏又は透明でありそれを介して表示スクリーンを視ることができる。パラメトリック制御信号(可聴周波数信号により変調された超音波信号)が変換器アレーに印加されると、指向性の超音波ビームが生成される。大気中の非線形効果により可聴周波数が復調され、その効果としてスクリーンに垂直に伝播する音声ビームが生成される。
【0007】
そのような音と視覚の一体化によりユーザが表示スクリーンを視ているときあたかも表示スクリーンから音が発生しているとユーザが感じとることができることとなり又目的とするユーザに向かって音を投射することができ、そしてめったに又は決して関係のない人たちを妨害することはない。
【0008】
超音波変換器アレーは独立した変換器素子から構成でき又は変換器素子(例えば、互いに密接に隣接している変換器素子)の2又はそれ以上のサブアレーから構成することができる。
【0009】
同一のパラメトリック信号は例えば共通の増幅器を介して個々のサブアレーに印加される。代わりに、異なるパラメトリック信号を例えば、夫々個々の増幅器を介して異なるサブアレーに印加することもできる。各増幅器の利得は同一に選ばれる。代わりに、夫々の利得は音ビームをひとつの角度から別の角度に案内するように選ばれる。
【0010】
2つのサブアレーを配置する可能性があり、前記2つのサブアレーは左右のステレオチャンネルから夫々派性する制御信号を受信するように配置される。
【0011】
変換器素子は別々に形成できそして表示スクリーンとの関係において取り付けられる(例えば、表示スクリーンの筐体上に取り付けられる)。代わりに、変換器素子は一体化できる、例えば表示スクリーンの筐体内に埋め込むことができる。
【0012】
変換器素子のアレーは様々な形状をすることができる。前記各変換器素子は円錐形インピーダンス層を有する各圧電ユニモルフ又はバイモルフとする可能性もある。代わりに、変換器アレーはパラメトリック制御信号により駆動されるように膜に取り付けられた制御回路を具備する膜から構成することができる。例えば、膜は膜上に位置しパラメトリック制御信号を受信するように配置された圧電材料により駆動される。
【0013】
かわりに、膜は膜上に配置する第1導電材料と膜から離れて配置される第2導電材料との間の静電力により駆動できる。第1及び第2導電材料はパラメトリック制御信号により決定される電圧差を受信するように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいくつかの実施例はテレビジョン受像機であり装置の表示スクリーンはテレビジョン受像機のスクリーンである。
【0015】
本発明の別の実施例においては、AV再生装置は車、バス又は飛行機のような乗り物に提供される。AV再生装置は自動車の座席の背面に配置することができる。かわりに、そのような装置は運転者の傍に個人用ナビゲーションシステムとして配置できる。AV再生装置における表示スクリーンの役割のひとつの可能性としては乗り物のミラー、例えばリヤーミラーとすることができ、そして変換器アレーとしては運転者のみに聴こえる可聴音を生成するように配置される。
【0016】
本発明の更なる実施例は例えばラップトップ又はデスクトップコンピュータのようなコンピュータの表示ユニットである。表示ユニットは表示スクリーンおよび弾性懸架具の手段によりデイスプレイユニットの周囲に沿ってデイスプレイユニット上に弾性をもって取り付けられる保護カバーを形成する角型透明パネルから構成できる。超音波変換器は保護カバーの周囲に取り付けまたは一体化できる。
【0017】
更なる可能性においては、前記装置は民生用電子機器の可搬品目であり、例えば移動無線電話又は携帯電話である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、図1を参照するに、本発明の第1実施例である表示スクリーン11と制御素子12(例えば、制御信号を入力するためのボタン又は他の機器)を有するテレビジョン受像機1が図示されている。表示スクリーンの周りには少なくともひとつのリング内で互いに隣接するPZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子13が分配されている。素子13は2次元領域(例えば、すべての素子13を含む最小の2次元凸状殻と正確に定義できる)に及ぶ素子のアレーを集合的に形成していると考えることができる。アレーの一部分は空乏であり表示スクリーンは前記空乏部を介して視ることができる。
【0019】
素子13はテレビジョン受像機と一体化できる(例えば、テレビジョン受像機の筐体に永久的に埋めこまれる)。代わりに、それらはスクリーンの角部の周囲に筐体に取り外し可能に取り付けることができる。パラメトリック信号が増幅器を介して変換器アレーに印加されると、素子13は大気中に指向性の第1(超音波)波を生成する。浮揚した超音波間の非線形相互作用により指向性の第2(可聴)波を生み出す。
【0020】
アレーの中心空乏部にもかかわらず我々の実験によれば中心における復調された音圧レベル(SPL)は未だ従来の表示装置におけるものよりも強いことが示されている。アレーの寸法、即ち素子13の密度を調整することにより主ビームにおける復調されたSPLと表示スペースを均一とすることができる。このことは、図1の実施例により発生される音場を示す図2において略線的に図示されている。曲線14は再生増幅された音波(即ち、復調された超音波)を示し、そして地点Aではそれらは接近して均一である。主要可聴音場は線分“a”と“b”の間の範囲に制約されていて、このことは高度に指向性を有する音声ビームが成し遂げられていることを意味している。これらの結果はそのようなAV装置が(i)ユーザがあたかも表示デイスプレイを視ているときあたかも表示デイスプレイから音が発生しているかのようにユーザが感じ、(ii)目的のユーザに対して音声を投射し関係のない人たちをめったに(又は決して)妨害しないという機能を成し遂げることができることを示している。
【0021】
ところが図1において、PZTユニモルフ/バイモルフ変換器素子は互いに隣接するように配置されて空乏中心部を有するアレーを形成し、図1に図示するように、別の第2実施例が図3に示されている。ここでは、全部で8つのサブアレー15が存在する(サブアレーの数はこの数字に限定されているがサブアレーの数は他にもあり、特に2以上のどんな数字でもよい)。各サブアレーは密接に互いに隣り合った超音波変換器素子を例えばハニカム構造の形で含むことができる。サブアレー15はテレビジョン受像機の4つの角に取り付けられる。各サブアレー内での隣り合う素子の間隔はサブアレー間の間隔よりも小さいものとなっている。
【0022】
選択的ではあるが、第2実施例のサブアレーのすべては同一のパラメトリック信号(即ち、音声信号により変調された超音波信号)が供給される。この場合、パラメトリック信号は共通の増幅器により各サブアレーに伝送される。代わりに、図4に示すように、パラメトリック信号は信号を8つの異なるチャンネルに分割するユニット17に伝送され、その各々は夫々個々の可変増幅器G1,・・・,G8に伝送されそしてその後夫々のサブアレーのひとつに伝送される。ユニット17は可変増幅器G1,・・・,G8の利得を制御する。各増幅器G1,・・・,G8の利得は同一に選択される。代わりに、利得は各増幅器G1,・・・,G8で異なるように選択もできる(利得は実数値に制限される、即ち選択的には増幅器G1,・・・,G8は複素利得値を提供できる)。各増幅器G1,・・・,G8の利得値の調整は例えばパラメトリックスピーカの分野において公知の技術に従って行われ、音声ビームはひとつの角度から別の角度へと案内される。
【0023】
図3(全ての利得G1,・・・,G8が等しい場合)の第2実施例に似ているシステムのための実験的SPLが図5に示されている。しかしながら、図3の実施例においてはスクリーンの周囲に、リングにおいて略等しく離間された8つのサブアレーが存在し、前記サブアレーの各々はリング内の6つの変換器素子により囲繞された単一の中心変換器から構成されており、図5のデータを生成するために用いられるバージョンではスクリーンの周囲のリング内で略等しく離間された6つのサブアレーが存在し、そしてサブアレーの各々は変換器素子の4つの同軸リングから構成されている。即ち、5つの素子を有する第1リング(即ち、最低の半径のリング)、11個の素子の第2リング、17個の素子の第3リングそして24個の素子の第4リングである。
【0024】
図6に略線的に示すように、これらの結果はAV再生装置に平行な平面上の線分19に沿って移動しかつそれから1.5m離間した測定マイクロホンを移動することにより得られた。“0cm”として図5に図示される位置はスクリーンの中心から直接前方に(音の伝播方向において)位置するマイクロホンに対応する。
【0025】
図5に示すように、中心位置での超音波SPLは他の位置(特におよそ+20cmと−20cmの位置)のものより小さい。しかしながら、復調されたSPLはしたがって弱くなっている。換言すれば、そのような構成は音声ビームの中心近くでの超音波エネルギを可聴周波数エネルギへの変換効率を達成する。主要な音ビームにおいては復調されたSPLは均一になる傾向がある。
【0026】
いくつかの実施例においてアレーの空乏部分の幅を増加する価値があることに注目する。このことは復調された音声信号が高いSPLを有するピーク内で領域を広げる効果を有し、それにより多くの聴取者をカバーする高指向性の音声ビームを生成することとなる。
【0027】
図7は本発明のひとつの実施例であるAV再生装置のひとつの適用を示す。AV再生装置1は乗り物2の各座席21の背面に配設されており、この乗り物2は車両又はバス又は飛行機でもよい。乗り物内の個人は個人の前の装置のみにより生成されるTV番組を視聴しまた音楽を聴くことができる。その結果として、個人はその好みに応じてTV又はラジオ番組を選択できる。そして音は指向性をもつビームとして個人に伝送されるので乗り物内での個々の隣人は妨害されることはない。生成された音を単一の個人(例えば、イヤホン又はヘッドホン)に限定する従来のいくつかの方法と対照するに、この出願ではユーザは如何なる潜在的に不快な装置を装着する必要はない。そのうえ、イヤホン又はヘッドホンを使用するのと異なりスクリーン上の視覚情報と対応する音声音との間で図7の出願においてはつながりがある。換言すれば、ユーザはあたかも表示スクリーンから音が生成されているように感じる。
【0028】
図7において各AV再生装置1は各座席の背面に位置するように図示されているが本発明はこの点に限定されるものではない。例えば、装置1のスクリーンが方向情報(例えば、地図)を表示するために用いられそして音発生システムは方向命令を生成するために用いられる個人用ナビゲーションシステムとして働く乗り物の運転者に最も接近して配置することができる。
【0029】
別の可能性としては装置1の表示スクリーンの役割は乗り物のミラーとしてである(むしろ電子信号に基づいて発生する画像である)。この場合、パラメトリックスピーカは自動車のミラーとともに(選択的には一体化して)形成され、運転者のみに可聴音が聴こえるように運転者に対向している。
【0030】
図8はラップトップ又はデスクトップコンピュータ3の表示ユニットである本発明の更なる実施例を略線的に示す分解図である。コンピュータ3は視覚表示スクリーン31とその前面の保護カバーを形成する角型透明パネル33から構成される。透明保護カバー33は弾性懸架具32、例えば発泡ゴムを介してカバー33の周囲に沿って表示ユニット上に弾性をもって配設されている。弾性懸架具は保護カバー33をコンピュータの表示ユニットに接続するように機能して更に望ましくない振動から表示ユニットを遮断する。実施例の超音波変換器素子34は保護カバーの囲繞する周囲に配設されてそれを介して表示スクリーン31を視認できる中心空乏部を有する2次元変換器アレーをともに定義する。
【0031】
図8の実施例は個人用マルチメデアシステムとして機能できる。この場合、指向性を持った音がパラメトリック信号を変換アレーに入力することによりユーザに対して放射される。ユーザは音と視覚のメッセージが一体化されているのであたかも表示スクリーン31から音が発生しているように感じる。音装置がコンピューターデイスプレイの傍に配置されている従来のコンピュータに対照して注目してよい。
【0032】
図8の実施例の変形例においては、図9に図示するように、保護カバー33を囲む周囲に設置される2つのサブアレー35から構成される。2つのチャンネルからの音声源信号が前置処理され変調されてパラメトリック信号を形成し、その後2つの超音波変換サブアレー35の夫々の入力としれ増幅される。この構成によりステレオ音声効果が成し遂げられる。1つのサブアレーは左チャンネル超音波スピーカとして機能し、他のサブアレーは右チャンネル超音波スピーカとして機能する。
【0033】
各種の変換器素子又はアレーが本発明の実施例による超音波変換器素子として用いることができる。
【0034】
ひとつの可能性は変換アレーが圧電ユニモルフ/バイモルフ素子を円錐形インピーダンス層から構成される商用PZT超音波トランスミッターから形成されることである。本発明におけるパラメトリックスピーカ装置は独立した超音波素子、特に電気的に平行に接続しているとするならば、から出来上がっている。
【0035】
代わりに、変換器素子として膜型素子が採用できる。適当な膜型変換器がシンガポール特許出願No.200300490−0(その開示はここに参考のために取り込まれている)に開示されている。図10(a)は膜型素子から構成される別の適当なモノリシック変換器アレー4を示す。変換器4において膜は少なくとも2つの層から構成される;例えば金属、プラスチックそしてシリコンのような広い材料の範囲から選択される裏張り層42;そして圧電セラミック材料のような機能材料である活性層41からなる。膜の下には背面空乏43が設けられている。共振点におけるモノリシック圧電膜が振動すると超音波が大気中に放射される。
【0036】
図10(b)は容量性膜から構成される別の適当な変換器アレー5を図示する。容量性超音波変換器アレーは図10(a)に似ている一般的な構造を有し、そこでは膜51が多数の背面空乏を有するフレームに伸長されている。図10(b)における膜51は導通したとき正の容量性プレートとして機能できる。代わりに、非導通のときには導体層が膜上に堆積される。接地プレート52が膜51に対向している。2つのプレートの間には小さな間隙を用いるのが好ましい。
【0037】
分離膜型変換器(例えば図10(a)及び図10b)におけるようなもの)は図1の変換器素子13の各々として用いられる。代わりに、単一の膜は、膜の異なる領域が独立した膜要素を構成することを意味する幾何学的配置を有する多数の変換器素子13のあいだに伸長している。同様に、分離膜型変換器は図3の各サブアレー15の夫々の変換器のために用いられるか又はその代わりに、分離膜は各サブアレーの全ての変換器上に伸長されている。
【0038】
いくつかの本発明の実施例において、超音波変換器素子はスクリーンの保護カバーから離れているが、図10(a)と図10(b)の膜型超音波変換アレーは実施例の保護カバーと一体化できる。保護カバーは例えば変換器の背面空乏を形成するためにパターン化できる基板として役立つ。その後、セラミック系圧電材料(例えばPZT,鉛ジルコネート酸塩チタン酸塩)及び/又はポリマ系圧電材料(例えばPVDF、ポリ(フッ化ビニリデン))を基板に接合し保護カバーの周囲に超音波変換器アレーを形成する
【0039】
小さな薄いパラメトリックスピーカは可搬型民生用電子機器と一体化でき(i)視聴しているときあたかも表示スクリーンから音が発生しているとユーザが感じることができ(ii)音を目的のユーザに殆ど(又は決して)関係のない人たちを妨害することなく放射できる個人用AV装置を形成する。
【0040】
例えば、図11は本発明の実施例を示すもので、それは層の背後でスクリーン上に生成された視覚情報を観察できる筐体上に設置される透明保護層62を従来の形で含む筐体61から構成される移動無線電話又は携帯電話である。パラメトリックスピーカ63(例えば図10との関連で上述した膜型)は保護層62内に組み込まれている(例えば隠れている)。例えば浅い穴状アレーなどの様々なパターンが直接保護層62に形成され機能材料のシートが次いでパターン化された基板に接合され増幅されたパラメトリック信号がアレーに入力されたときパラメトリックスピーカとして機能する超音波変換器アレーを形成する。
【0041】
代わりに、パラメトリック信号は図12に示すように表示スクリーン66の角で携帯電話上に独立した超音波変換器素子又はサブアレー67を互いに隣接するよう配設することにより形成できる。電話は小型カメラ64と電話を操作するためのボタン65を有してなる。電話は折りたたみ可能に構成されている。この場合、個人用AV再生装置はそれが動作状態にはないときは主要モジュール内に隠されている。
【0042】
本発明のいくつかの例示的な実施例を上述してきたが熟練した読者には明らかであるように多くの変形例がここにおいて開示された発明の概念から逸脱することなしに本発明の範囲内で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施例である隣接し、離間されたPZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子のリングにより囲まれる画面を有するテレビジョン受像機を示す図である。
【図2】図1の実施例において音生成を略線的に示す図である。
【図3】本発明の第2実施例である画面とスクリーンの4つの角の周囲に分配される変換器素子の8つのサブアレーを有するテレビジョン受像機を示す図である。
【図4】図3の個々のサブアレーにどのようにしてパラメトリック信号が印加されるかを略線的に示す図である。
【図5】図3の実施例により生成される音圧レベル(SPL)対位置の実験結果を示す図である。
【図6】図5の実験結果を生み出す過程を略線的に示す図である。
【図7】本発明の実施例である自動車に配置されるデイスプレイユニットを略線的に示す図である。
【図8】本発明の実施例であるラップトップ/デスクトップコンピュータを示す図である。
【図9】本発明の更なる実施例による音の発生を示す図である。
【図10】図10(a),図10(b)よりなり本発明の実施例に好適な膜型超音波変換器アレーを示す図である。
【図11】本発明の更なる実施例である移動無線電話又は携帯電話を示す図である。
【図12】本発明の更なる実施例である表示スクリーンの角に取り付けられたパラメトリックスピーカを有する携帯電話を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…テレビジョン受像機、2…乗り物、3…コンピュータ、4…モノリシック変換器アレー、5…別の適当な変換器アレー、6…移動無線電話又は携帯電話、11…表示スクリーン、12…制御素子、13…PZTユニモルフ又はバイモルフ超音波変換器素子、14…曲線、a,b…線分、A…位置、15…サブアレー、G1,・・・,G8…可変増幅器、17…ユニット、19…線分、21…座席、31…表示スクリーン、32…弾性懸架具、33…透明保護カバー、34…超音波変換器素子、35…サブアレー、41…活性層、42…裏打ち層、43…背面空乏、51…膜、52…接地プレート、61…筐体、62…透明保護層、63…パラメトリック層、64…小型カメラ、65…ボタン、67…サブアレー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚表示スクリーンと超音波ビームを発生する超音波変換器素子のアレーからなり、前記超音波変換器素子のアレーは前記表示スクリーンの周囲に配置される2又はそれ以上の変換器素子から構成されることを特徴とするAV再生装置。
【請求項2】
前記変換器素子は密接に隣接する2又はそれ以上のサブアレーとして配列されることを特徴とする請求項1に記載のAV再生装置。
【請求項3】
変換器素子のサブアレーの各々の増幅器と前記増幅器のそれぞれの利得を独立して制御する制御器から構成されることを特徴とする請求項1に記載のAV再生装置。
【請求項4】
2つのサブアレーが配設され、前記2つのサブアレーは左右のステレオチャンネルからそれぞれ発生する制御信号を受信するように配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のAV再生装置。
【請求項5】
表示スクリーンのための筐体からさらに構成され、前記変換器素子は前記表示スクリーンの前記筐体内で一体とされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項6】
前記変換器素子の各々は各圧電ユニモルフ又はバイモルフ素子と円錐形インピーダンス層から構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項7】
前記変換器アレーはパラメトリック制御信号受信するために配置された圧電物質により駆動される膜から構成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項8】
前記変換器アレーは前記膜上に位置する第1導体物質と前記膜から離れて位置する第2導体物質間の静電力により駆動される膜から構成され、前記第1と第2導電物質はパラメトリック制御信号により決定される電圧差を有するように配置されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項9】
前記AV再生装置はテレビジョン受像機であり、前記AV再生装置の表示スクリーンはテレビジョン受像機のスクリーンであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項10】
前記AV再生装置は乗り物内に配置されることを特徴とする請求項9に記載のAV再生装置。
【請求項11】
前記AV再生装置は乗り物の席の背面に配置されることを特徴とする請求項10に記載のAV再生装置。
【請求項12】
前記表示スクリーンは前記乗り物の運転者によって視られるように配置されることを特徴とする請求項10に記載のAV再生装置。
【請求項13】
前記AV再生装置はナビゲーションシステムであり、前記表示スクリーンはナビゲーション情報を表示するために配置され前記変換器アレーは音声ナビゲーション命令を伝達するよう配置されていることを特徴とする請求項12に記載のAV再生装置。
【請求項14】
前記表示スクリーンは乗り物の案内ミラーであることを特徴とする請求項12に記載のAV再生装置。
【請求項15】
前記装置はコンピュータの表示ユニットであることを特徴とする請求項1乃至8又は10乃至14の何れかに1項に記載のAV再生装置。
【請求項16】
前記表示ユニットは前記表示スクリーンの前面を覆って弾性を有して取り付けられる透明保護パネルから構成され、前記超音波変換器素子は前記保護パネルを囲繞する周囲に配置されていることを特徴とする請求項15に記載のAV再生装置。
【請求項17】
前記AV再生装置は移動無線電話又は携帯電話であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項1】
視覚表示スクリーンと超音波ビームを発生する超音波変換器素子のアレーからなり、前記超音波変換器素子のアレーは前記表示スクリーンの周囲に配置される2又はそれ以上の変換器素子から構成されることを特徴とするAV再生装置。
【請求項2】
前記変換器素子は密接に隣接する2又はそれ以上のサブアレーとして配列されることを特徴とする請求項1に記載のAV再生装置。
【請求項3】
変換器素子のサブアレーの各々の増幅器と前記増幅器のそれぞれの利得を独立して制御する制御器から構成されることを特徴とする請求項1に記載のAV再生装置。
【請求項4】
2つのサブアレーが配設され、前記2つのサブアレーは左右のステレオチャンネルからそれぞれ発生する制御信号を受信するように配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のAV再生装置。
【請求項5】
表示スクリーンのための筐体からさらに構成され、前記変換器素子は前記表示スクリーンの前記筐体内で一体とされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項6】
前記変換器素子の各々は各圧電ユニモルフ又はバイモルフ素子と円錐形インピーダンス層から構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項7】
前記変換器アレーはパラメトリック制御信号受信するために配置された圧電物質により駆動される膜から構成されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項8】
前記変換器アレーは前記膜上に位置する第1導体物質と前記膜から離れて位置する第2導体物質間の静電力により駆動される膜から構成され、前記第1と第2導電物質はパラメトリック制御信号により決定される電圧差を有するように配置されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項9】
前記AV再生装置はテレビジョン受像機であり、前記AV再生装置の表示スクリーンはテレビジョン受像機のスクリーンであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のAV再生装置。
【請求項10】
前記AV再生装置は乗り物内に配置されることを特徴とする請求項9に記載のAV再生装置。
【請求項11】
前記AV再生装置は乗り物の席の背面に配置されることを特徴とする請求項10に記載のAV再生装置。
【請求項12】
前記表示スクリーンは前記乗り物の運転者によって視られるように配置されることを特徴とする請求項10に記載のAV再生装置。
【請求項13】
前記AV再生装置はナビゲーションシステムであり、前記表示スクリーンはナビゲーション情報を表示するために配置され前記変換器アレーは音声ナビゲーション命令を伝達するよう配置されていることを特徴とする請求項12に記載のAV再生装置。
【請求項14】
前記表示スクリーンは乗り物の案内ミラーであることを特徴とする請求項12に記載のAV再生装置。
【請求項15】
前記装置はコンピュータの表示ユニットであることを特徴とする請求項1乃至8又は10乃至14の何れかに1項に記載のAV再生装置。
【請求項16】
前記表示ユニットは前記表示スクリーンの前面を覆って弾性を有して取り付けられる透明保護パネルから構成され、前記超音波変換器素子は前記保護パネルを囲繞する周囲に配置されていることを特徴とする請求項15に記載のAV再生装置。
【請求項17】
前記AV再生装置は移動無線電話又は携帯電話であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のAV再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−189691(P2007−189691A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−3550(P2007−3550)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3550(P2007−3550)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]